JP2004351906A - ドクター装置 - Google Patents
ドクター装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004351906A JP2004351906A JP2003155811A JP2003155811A JP2004351906A JP 2004351906 A JP2004351906 A JP 2004351906A JP 2003155811 A JP2003155811 A JP 2003155811A JP 2003155811 A JP2003155811 A JP 2003155811A JP 2004351906 A JP2004351906 A JP 2004351906A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- doctor
- slider
- blade
- adjustment
- doctor device
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Rotary Presses (AREA)
Abstract
【課題】運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整後に位置ずれすることがなく、調整と確認を同時に行なうときも無理な作業姿勢とならず、オペレータの熟練度に左右され難く、位置調整を行なうための操作の負荷を軽減するドクター装置を提供する。
【解決手段】ドクター刃を保持するドクターホルダーと、前記ドクターホルダーを保持するスライダーと、前記スライダーを滑り面に接触して移動できるように保持するドクターベースと、前記スライダーと前記ドクターベースの相対的な位置の調節を前記移動により行ない所望の位置で停止可能な位置調整手段とを有するようにしたドクター装置。
【選択図】 図1
【解決手段】ドクター刃を保持するドクターホルダーと、前記ドクターホルダーを保持するスライダーと、前記スライダーを滑り面に接触して移動できるように保持するドクターベースと、前記スライダーと前記ドクターベースの相対的な位置の調節を前記移動により行ない所望の位置で停止可能な位置調整手段とを有するようにしたドクター装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷の技術分野に属する。特に、版胴に供給された余分なインキを掻き落とすドクター刃の刃先の位置を調節する技術分野に関する。
【0002】
【従来技術】
従来のグラビア印刷機等のドクター装置におけるドクター刃位置調整機構の一例を図5に示す。図5に示すように、ドクター刃位置調整機構はドクターベースの上面に設けられており、ハンドル付のネジをハンドルを回すことによりネジ軸方向に送る構造を有する。このネジがネジ軸方向に送られると、同じく上面に設けられたドクターホルダーの後端面を推し進めることになる。これにより、ドクターホルダーに保持されたドクター刃の位置調整が行なわれる。
【0003】
図5に示すように、ドクター刃位置調整機構は、左右一対の構成となっており、ドクター刃の左右各々について位置調整を行なうことができる。また、左右一対のクランププレートは、ドクターベースの上面にドクターホルダーを固定するための部材である。クランププレートの固定ネジを緩めて位置調整を行い、所望の位置に調節が済んだ後に、固定ネジを締め付けてドクターベースの位置が変動しないようにする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のドクター装置においては、下記の▲1▼〜▲7▼に示すような課題が存在する。
▲1▼従来方式では、クランププレートを緩める操作や締め付ける操作をグラビア印刷機等の運転中に行なうことは不可能であるため、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができない。
▲2▼また、クランププレートを大きく緩めたまま調整すると、調整後にクランププレートを締め付けるときに位置ずれすることがよくある。一方、緩め方が不足すると位置調整に要する力が大きくなる。
▲3▼ドクター刃の位置調整を行なうときには、版面の掻き取り状態を見て確認しながら調整する必要がある。ところが上述した従来方式では無理な作業姿勢において調整と確認を同時に行なうか(図2(B)参照)、ハンドル操作と版面確認とを別個に繰り返す必要がある。
▲4▼また、位置調整における左右のバランスは版面の掻き取り状態を見て調整するオペレータの熟練度に左右される。
▲5▼全幅が大きいドクターホルダーでは重量が大きくなり、滑り面での摩擦が増大し、従来方式ではハンドル操作の負荷が大きくなる。
▲6▼このハンドル操作の負荷を軽減するためには、ネジサイズを大きくすることが考えられるが、それに伴いネジピッチが粗くなるため、微妙な位置調整は困難となる。
▲7▼またハンドル操作の負荷を軽減するためには、ハンドルサイズを大きくすることが考えられるが、それに伴いドクター刃位置調整機構が大型化する。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものである。その目的は、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整後に位置ずれすることがなく、調整と確認を同時に行なうときも無理な作業姿勢とならず、オペレータの熟練度に左右され難く、位置調整を行なうための操作の負荷を軽減するドクター装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は下記の本発明によって解決される。すなわち、
本発明の請求項1に係るドクター装置は、ドクター刃を保持するドクターホルダーと、前記ドクターホルダーを保持するスライダーと、前記スライダーを滑り面に接触して移動できるように保持するドクターベースと、前記スライダーと前記ドクターベースの相対的な位置の調節を前記移動により行ない所望の位置で停止可能な位置調整手段とを有するようにしたものである。
【0007】
本発明によれば、ドクターホルダーをドクターベースに直接固定するクランププレート等の機構は存在しない。ドクターホルダーはスライダーを介してドクターベースに保持される。そのスライダーはドクターベースの滑り面に接触して移動できる。位置調整手段はその移動により相対的な位置の調節を行ない所望の位置で停止することができる。したがって、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整後に位置ずれすることがないドクター装置が提供される
【0008】
また本発明の請求項2に係るドクター装置は、請求項1に係るドクター装置において、前記位置調整手段はハンドルを回転操作することにより前記移動を行なう機構を有し、前記ハンドルの回転軸方向は前記移動方向に対して直角を成すようにしたものである。本発明によれば、ハンドルの回転操作により運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整と確認を同時に行なうときも無理な作業姿勢とならず、位置調整を行なうための操作の負荷が軽減する。
【0009】
また本発明の請求項3に係るドクター装置は、請求項2に係るドクター装置において、前記位置調整手段は前記ハンドルを回転可または回転不可のいずれかの状態とするためのストッパーを有するようにしたものである。本発明によれば、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整後に位置ずれすることがない。
【0010】
また本発明の請求項4に係るドクター装置は、請求項1に係るドクター装置において、前記位置調整手段はモータの回転駆動により前記移動を行なう機構を有し、前記モータはブレーキ付のモータであるようにしたものである。本発明によれば、位置調整を行なうための操作の負荷が軽減される。
【0011】
また本発明の請求項5に係るドクター装置は、請求項1〜4のいずれかに係るドクター装置において、前記ドクターの刃先の接触状態を圧力として検出する圧力検出手段と、前記圧力に基づいて前記接触状態をモニターするための表示を行なう状態表示手段を有するようにしたものである。本発明によれば、調整と確認を同時に行なうときも無理な作業姿勢とならず、オペレータの熟練度に左右され難くい。
【0012】
また本発明の請求項6に係るドクター装置は、請求項4または5に係るドクター装置において、前記ドクター刃の刃先の接触状態を圧力として検出する圧力検出手段と、前記圧力に基づいて前記位置の調節を行なう移動制御手段とを有するようにしたものである。本発明によれば、オペレータの熟練度に左右されず、位置調整を行なうための操作の負荷が軽減する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のドクター装置について実施の形態により説明する。本発明のドクター装置について構成の一例を図1に示す。図1(A)は上面図、図1(B)は側面図である。図1において、1はドクター刃、2はドクターホルダー、3はスライダー、4はドクターベース、5a,5bはピニオンギア、6a,6bはラックギア、7a,7bはガイド、8a,8bはL字型ブラケット、9a,9bはハンドル、10a,10bはストッパー、11a,11bは圧力センサである。
【0014】
ドクター刃1は、グラビア印刷機等においてインキパンやインキ供給装置からのインキを版胴表面に供給した後に、版胴表面上の余剰インキを掻き落とすために使用される。ドクター刃1は、0.15〜0.3mm程度の厚さを有する帯状鋼板を材料とし、そのすくなくとも一方の辺には刃が設けられている。
【0015】
ドクターホルダー2は、ドクター刃1を両面から挟んで保持するための2枚の板状部材と締め付け機構から構成される。締め付け機構は、一般的には、2枚の板状部材の一方にボルトのネジ孔を設け、他方にボルトの貫通孔を設けて、ボルトで締め付ける機構である。ドクターホルダー2はドクター刃1を保持した状態でグラビア印刷機等への取り付け取り外しを行なえるドクター装置の部分である。
【0016】
スライダー3は、ドクター装置においてドクターホルダー2を取り付け取り外し可能に保持する部分である。スライダー3とドクターホルダー2との結合は、前述と同様のボルトで締め付ける機構とすることができる。
【0017】
ドクターベース4は、スライダー3を滑り面に接触して移動できるように保持する。すなわち、スライダー3とドクターベース4とが接触する面は滑り面となっている。ドクターベース4は、エアーシリンダー等によって着位置と脱位置とに変位できるようにグラビア印刷機等のフレームに支持されている(図示せず)。着位置はドクター刃1の刃先を版胴に接触させる位置である。また、脱位置はドクター刃1の刃先が版胴から離れる位置である。
【0018】
ピニオンギア5a,5b、ラックギア6a,6b、ガイド7a,7b、L字型ブラケット8a,8b、ハンドル9a,9b、ストッパー10a,10bは、圧力センサ11a,11bは、スライダー3とドクターベース4の相対的な位置の調節を滑り面に接触する移動により行なうとともに、所望の位置で停止可能とする位置調整手段を構成する。位置調整手段は左右一対(符号における添字aの左側と添字bの右側)の構成となっており、ドクター刃の左右各々について別々に位置調整を行なうことができる。
【0019】
ハンドル9a,9bはドクターベース4に回転可能に支持されている。ハンドル9a,9bの回転軸とピニオンギア5a,5bの回転軸は結合している。この結合は、直接的な結合とすることができるが、減速機(図示せず)を介して結合することもできる。ハンドル9a,9bの操作による位置調整は、減速機を介することにより容易となる。操作に必要な力を弱め、精密な位置調整を行なうことができる。
【0020】
ピニオンギア5a,5bの回転変位はラックギア6a,6bによって直線変位に変換される。ガイド7a,7bはドクターベース4に支持されており、ラックギア6a,6bはガイド7a,7bによって変位可能な方向が限定されている。ラックギア6a,6bはグラビア印刷機等の版胴の軸方向に対して直角方向に変位することができる。すなわち、ラックギア6a,6bは版胴に向かって接近したり版胴から遠退く方向に変位する。
【0021】
ラックギア6a,6bは、L字型ブラケット8a,8bを介してスライダー3に結合している。したがって、ラックギア6a,6bの変位によりスライダー3が変位する。勿論、スライダー3の変位の方向は版胴に向かって接近したり版胴から遠退く方向である。
【0022】
ストッパー10a,10bは、ハンドル9a,9bを回転可または回転不可のいずれかの状態とするためのストッパーである。ストッパー10は図1に示す一例においては、ハンドル9a,9bの軸に作用するツマミ付のネジである。ストッパー10はドクターベース4に回転可能に支持されている。ストッパー10におけるネジを緩めその先端がハンドル9a,9bの軸から離れているときにはその軸は開放されて回転できる。ストッパー10におけるネジを締め付けその先端をハンドル9a,9bの軸に当接させて押し付けているときにはその軸は固定されて回転しない。
【0023】
圧力センサ11a,11bは、ラックギア6a,6bに設けられており、ラックギア6a,6bに作用する力(応力)を検出するセンサである。たとえば、ストレーンゲージを使用する検出システム(ゼロ調節、温度補償、表示、等を含む)のセンサを適用することができる。ラックギア6a,6bに作用する力は主としてスライダー3から作用する力である。スライダー3はドクターホルダー2を介してドクター刃1を保持するから、版胴からドクター刃1に作用する力がラックギア6a,6bに作用する力に含まれる。したがって、圧力センサ11a,11bは、ドクター刃1を版胴に接触させたときの反作用としての力を検出する。圧力センサ11a,11bが検出した力はディスプレイ(図3参照)によって表示が行なわれ、オペレータはそれをモニターすることができる。
【0024】
以上の構成において、次に本発明のドクター装置における動作について説明する。
まず、オペレータは、通常はドクター装置から離れた場所でドクター刃1をドクターホルダー2に保持させる。
次に、オペレータは、ドクター刃1を保持するドクターホルダー2をドクター装置まで搬送しドクター装置のスライダー3に保持させる。このとき以前において、ドクターベース4は、版胴にドクター刃1の刃先が接触しない脱位置となっている。またスライダー3とドクターベース4との相対的位置は適正な初期位置となっている
【0025】
次に、オペレータは、ドクター装置を操作し、版胴にドクター刃1の刃先が接触する着位置とする。このとき、スライダー3の初期位置においては、実際のドクター刃1の刃先は版胴に接触する直前の位置か接触状態が不十分の位置となっている。
【0026】
次に、オペレータは、ハンドル9aを操作を行なってスライダー3を版面に向けて前進させる。オペレータは、版面の掻き取り状態を視認して、また圧力センサ11a,11bの出力に基づくディスプレイの表示をモニターして、ドクター刃1の刃先と版胴との接触状態を判断する。版面の掻き取り状態、左右のバランス、等が適正でないときには修正する。すなわち、スライダー3とドクターベース4との相対的位置を保持させるための初期位置から実運転のための適正な位置に修正する。
なおドクター刃1の刃先と版胴との接触圧における絶対値は、一般的に、ドクターベース4を着位置または脱位置に変位させるためのエアーシリンダーに供給する空気圧を調節して行なう。
【0027】
上述の修正は以下の▲1▼,▲2▼のようにして行なう。▲1▼ストッパー10を操作してハンドル9a,9bの軸を開放し、その状態でハンドル9a,9bの操作により位置調整を行なう。このときにオペレータはディスプレイの表示だけでなくドクターベース4に設けられた目盛(スケール)を必要に応じて参照する。▲2▼適正な位置への修正後に、ストッパー10を操作してハンドル9a,9bの軸を固定し回転しないようにする。これにより、スライダー3を所望の位置で停止させることができる。
【0028】
上述のオペレータの操作において位置調整を行なうときには、ディスプレイをモニターするだけでなく版面の掻き取り状態を目で見て確認しながら調整するほうが好ましい。図1に示すように、本発明のドクター装置の位置調整手段においては、ハンドル9a,9bの回転軸方向はスライダー3すなわちドクター刃1の移動方向に対して直角を成している。したがって、図2(A)に示すように、本発明のドクター装置においては、無理な作業姿勢となることなしに調整と確認とを同時に行なうことができる。
【0029】
次に、上述のドクター装置の変形例について実施の形態により説明する。変形例のドクター装置について構成の一例を図3、図4に示す。上述の図1に示す本発明のドクター装置と、図3に示すその変形例との相違は、位置調整手段におけるピニオンギア5a,5bを駆動する機構の相違を主とするものである。また、図4(A)はドクター装置の変形例におけるデータの流れを示すブロック図であり、図4(B)は図3に示したドクター装置の図を併記した図である。
【0030】
特に説明がない限り、その他の構成は図1、図3、図4において共通であり同一部分には同一符号が付してある。図3、図4において、11aはA側圧力センサ(圧力センサ11aと同一)、11bはB側圧力センサ(圧力センサ11bと同一)、31a,31bはブレーキ付モータ、32a,32bは前後用押ボタン、33は刃先位置表示部、41aはA側圧力検出部、41bはB側圧力検出部、42は演算部、43aはA側モータ駆動部、43bはB側モータ駆動部である。
【0031】
ブレーキ付モータ31a,31bはドクターベース4に支持されている。ブレーキ付モータ31a,31bの出力軸とピニオンギア5a,5bの回転軸は結合している。ブレーキ付モータ31a,31bはモータとブレーキと減速機とを組合せたものを使用することができる。ブレーキ付モータ31a,31bにおいてモータの回転軸は減速機の入力軸に結合している。減速機の出力軸はブレーキ付モータ31a,31bの出力軸と一致している。また、ブレーキはモータの回転軸または減速機の出力軸に作用するブレーキ機構である。ブレーキはモータをドライブする出力がないときに作動してモータが回転しないようにする。
【0032】
前後用押ボタン32a,32bはマニュアル操作で位置調整を行なうときの押ボタンスイッチである。前後用押ボタン32a,32bはブレーキ付モータ31a,31bの動作モードを切替える指示入力のための押ボタンスイッチである。動作モードとしては、すくなくとも、正回転、逆回転、停止を含んでいる。
【0033】
図3に示す一例においては、前後用押ボタン32a,32bの各々は、2つの押ボタンから成る。一方の押ボタンはスライダー3を前進させるための押ボタンであって、その押ボタンを押しているときだけスライダー3は前進し続け押すのを止めると停止する。他方の押ボタンはスライダー3を後退させるための押ボタンであって、その押ボタンを押しているときだけスライダー3は後退し続け押すのを止めると停止する。勿論、スライダー3の可動範囲の限界位置に設けられたリミットスイッチ等による停止機構が作動すると、押しているときでも停止する。
【0034】
刃先位置表示部33は、圧力センサ11a,11bが検出した力(応力)そのものまたは変換した量を表示する。オペレータはその刃先位置表示部33の表示をモニターすることができる。圧力センサ11a,11bが検出した力にはドクター刃1を版胴に接触させたときの反作用としての力が含まれている。したがって、その検出した力に基づいて、ドクター刃1の刃先が版胴に接触しているか否か、接触圧が適正であるか否かという量に変換することができる。刃先位置表示部33はオペレータにとって判り易いようにそのような変換した量を表示する。
【0035】
また、刃先位置表示部33は、ブレーキ付モータ31a,31bの基準位置からの回転数を計数することによってスライダー3の絶対的な位置の表示を行う。これによりオペレータは、ドクター刃1が版胴に接触していないときでもドクター刃1の位置を知ることができる。
【0036】
A側圧力検出部41aはA側圧力センサ11aの変換増幅器であって、A側圧力センサ11aの出力信号をA側圧力データとして出力する。同様に、B側圧力検出部41bはB側圧力センサ11bの変換増幅器であって、B側圧力センサ11bの出力信号をB側圧力データとして出力する。
【0037】
演算装置42は、上述における圧力センサ11a,11bが検出した力に基づく変換した量の演算やスライダー3の絶対的な位置の演算、さらにドクター刃1の位置自動調整のため制御演算、刃先位置表示部33へのデータ出力、A側モータ駆動部43aとB側モータ駆動部43bへの指令出力、オペレータ操作部(図示せず)への入出力、等を行なう。演算部は、マイクロコンピュータ、プログラマブルシーケンスコントローラ、パーソナルコンピュータ、等のデータ処理装置のハードウェアとソフトウェアによって実現することができる。
【0038】
A側モータ駆動部43aはブレーキ付モータ31aのコントローラとドラーバーを合わせたものである。A側モータ駆動部43aは演算部42からの指令出力を入力し、その指令にしたがってブレーキ付モータ31aの駆動制御を行なう。同様に、B側モータ駆動部43bはブレーキ付モータ31bのコントローラとドラーバーを合わせたものである。B側モータ駆動部43bは演算部42からの指令出力を入力し、その指令にしたがってブレーキ付モータ31bの駆動制御を行なう。
【0039】
以上の構成において、次に本発明のドクター装置(変形例)における動作について説明する。
まず、オペレータは、通常はドクター装置から離れた場所でドクター刃1をドクターホルダー2に保持させる。
次に、オペレータは、ドクター刃1を保持するドクターホルダー2をドクター装置まで搬送しドクター装置のスライダー3に保持させる。このとき以前において、ドクターベース4は、版胴にドクター刃1の刃先が接触しない脱位置となっている。またスライダー3とドクターベース4との相対的位置は適正な初期位置となっている
【0040】
次に、オペレータは、ドクター装置を操作し、版胴にドクター刃1の刃先が接触する着位置とする。このとき、スライダー3の初期位置においては、実際のドクター刃1の刃先は版胴に接触する直前の位置か、接触状態が不十分な位置となっている。
【0041】
次に、オペレータは、自動制御で位置調整を行なう操作を行なう。すなわち、スライダー3を版面に向けて自動前進させる指示入力をドクター装置の操作部(図示せず)において行なう。自動前進の指示入力は操作部から演算部42に伝達される。
【0042】
なお、マニュアル操作で位置調整を行なうときには、前述の前後用押ボタン32a,32bを手動操作する。このときに操作は、ハンドル9a,9b(図1とその説明参照)を操作するときの操作と同様である。ただし、ストッパー10a,10bの代りにブレーキ付モータ31a,31bにおけるブレーキが自動で作動する。
【0043】
次に、演算部42はA側圧力検出部41aとB側圧力検出部41bが出力するA側圧力データとB側圧力データとを入力する。以降の制御過程は下記の▲1▼〜▲3▼の繰り返しとなる。
▲1▼演算部42はそのA側圧力データに基づいてドクター刃1のA側の刃先が版胴に接触した状態を示す圧力に変換し、変換済A側圧力データを得る。同様に、演算部42はそのB側圧力データに基づいてドクター刃1のB側の刃先が版胴に接触した状態を示す圧力に変換し、変換済B側圧力データを得る。
【0044】
▲2▼演算部42は変換済A側圧力データと変換済B側圧力データとを比較し、(変換済A側圧力データ)<(変換済B側圧力データ)ならばA側モータ駆動部43aに対し、スライダー3のA側を版面に向けて前進させる指令を出力する。また、(変換済A側圧力データ)>(変換済B側圧力データ)ならばB側モータ駆動部43bに対し、スライダー3のB側を版面に向けて前進させる指令を出力する。また、所定の許容誤差の範囲内で(変換済A側圧力データ)と(変換済B側圧力データ)が一致すればA側モータ駆動部43aとB側モータ駆動部43bに対し停止指令を出力する。
【0045】
▲3▼演算部42は、▲2▼において停止指令を出力しないときには▲1▼に戻って、以降の過程を繰り返す。停止指令を出力したときには位置調整の過程を終了する。
この位置調整の結果、ドクター刃1のA側とB側の刃先と版胴との接触状態は、接触圧力においてバランスがとれた状態となる。
【0046】
【発明の効果】
以上のようであるから、本発明の請求項1に係るドクター装置によれば、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整後に位置ずれすることがないドクター装置が提供される
また本発明の請求項2に係るドクター装置によれば、ハンドルの回転操作により運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整と確認を同時に行なうときも無理な作業姿勢とならず、位置調整を行なうための操作の負荷を軽減することができる。
また本発明の請求項3に係るドクター装置によれば、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整後に位置ずれすることがない。
また本発明の請求項4に係るドクター装置によれば、位置調整を行なうための操作の負荷を軽減することができる。
また本発明の請求項5に係るドクター装置によれば、調整と確認を同時に行なうときも無理な作業姿勢とならず、オペレータの熟練度に左右され難くすることができる。
また本発明の請求項6に係るドクター装置によれば、オペレータの熟練度に左右されず、位置調整を行なうための操作の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のドクター装置について構成の一例を示す図である。
【図2】ドクター装置を操作するオペレータの姿勢について従来と本発明を比較して示す説明図である。
【図3】本発明のドクター装置における構成の変形例を示す図である。
【図4】変形例のドクター装置についてデータの流れブロック図として示す図である。
【図5】従来のグラビア印刷機等のドクター装置におけるドクター刃位置調整機構の一例を図5に示す。
【符号の説明】
1 ドクター刃
2 ドクターホルダー
3 スライダー
4 ドクターベース
5a,5b ピニオンギア
6a,6b ラックギア
7a,7b ガイド
8a,8b L字型ブラケット
9a,9b ハンドル
10a,10b ストッパー
11a A側圧力センサ(圧力センサ11aと同一)
11b B側圧力センサ(圧力センサ11bと同一)
31a,31b ブレーキ付モータ
32a,32b 前後用押ボタン
33 刃先位置表示部
41a A側圧力検出部
41b B側圧力検出部
42 演算部
43a A側モータ駆動部
43b B側モータ駆動部
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷の技術分野に属する。特に、版胴に供給された余分なインキを掻き落とすドクター刃の刃先の位置を調節する技術分野に関する。
【0002】
【従来技術】
従来のグラビア印刷機等のドクター装置におけるドクター刃位置調整機構の一例を図5に示す。図5に示すように、ドクター刃位置調整機構はドクターベースの上面に設けられており、ハンドル付のネジをハンドルを回すことによりネジ軸方向に送る構造を有する。このネジがネジ軸方向に送られると、同じく上面に設けられたドクターホルダーの後端面を推し進めることになる。これにより、ドクターホルダーに保持されたドクター刃の位置調整が行なわれる。
【0003】
図5に示すように、ドクター刃位置調整機構は、左右一対の構成となっており、ドクター刃の左右各々について位置調整を行なうことができる。また、左右一対のクランププレートは、ドクターベースの上面にドクターホルダーを固定するための部材である。クランププレートの固定ネジを緩めて位置調整を行い、所望の位置に調節が済んだ後に、固定ネジを締め付けてドクターベースの位置が変動しないようにする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のドクター装置においては、下記の▲1▼〜▲7▼に示すような課題が存在する。
▲1▼従来方式では、クランププレートを緩める操作や締め付ける操作をグラビア印刷機等の運転中に行なうことは不可能であるため、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができない。
▲2▼また、クランププレートを大きく緩めたまま調整すると、調整後にクランププレートを締め付けるときに位置ずれすることがよくある。一方、緩め方が不足すると位置調整に要する力が大きくなる。
▲3▼ドクター刃の位置調整を行なうときには、版面の掻き取り状態を見て確認しながら調整する必要がある。ところが上述した従来方式では無理な作業姿勢において調整と確認を同時に行なうか(図2(B)参照)、ハンドル操作と版面確認とを別個に繰り返す必要がある。
▲4▼また、位置調整における左右のバランスは版面の掻き取り状態を見て調整するオペレータの熟練度に左右される。
▲5▼全幅が大きいドクターホルダーでは重量が大きくなり、滑り面での摩擦が増大し、従来方式ではハンドル操作の負荷が大きくなる。
▲6▼このハンドル操作の負荷を軽減するためには、ネジサイズを大きくすることが考えられるが、それに伴いネジピッチが粗くなるため、微妙な位置調整は困難となる。
▲7▼またハンドル操作の負荷を軽減するためには、ハンドルサイズを大きくすることが考えられるが、それに伴いドクター刃位置調整機構が大型化する。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものである。その目的は、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整後に位置ずれすることがなく、調整と確認を同時に行なうときも無理な作業姿勢とならず、オペレータの熟練度に左右され難く、位置調整を行なうための操作の負荷を軽減するドクター装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は下記の本発明によって解決される。すなわち、
本発明の請求項1に係るドクター装置は、ドクター刃を保持するドクターホルダーと、前記ドクターホルダーを保持するスライダーと、前記スライダーを滑り面に接触して移動できるように保持するドクターベースと、前記スライダーと前記ドクターベースの相対的な位置の調節を前記移動により行ない所望の位置で停止可能な位置調整手段とを有するようにしたものである。
【0007】
本発明によれば、ドクターホルダーをドクターベースに直接固定するクランププレート等の機構は存在しない。ドクターホルダーはスライダーを介してドクターベースに保持される。そのスライダーはドクターベースの滑り面に接触して移動できる。位置調整手段はその移動により相対的な位置の調節を行ない所望の位置で停止することができる。したがって、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整後に位置ずれすることがないドクター装置が提供される
【0008】
また本発明の請求項2に係るドクター装置は、請求項1に係るドクター装置において、前記位置調整手段はハンドルを回転操作することにより前記移動を行なう機構を有し、前記ハンドルの回転軸方向は前記移動方向に対して直角を成すようにしたものである。本発明によれば、ハンドルの回転操作により運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整と確認を同時に行なうときも無理な作業姿勢とならず、位置調整を行なうための操作の負荷が軽減する。
【0009】
また本発明の請求項3に係るドクター装置は、請求項2に係るドクター装置において、前記位置調整手段は前記ハンドルを回転可または回転不可のいずれかの状態とするためのストッパーを有するようにしたものである。本発明によれば、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整後に位置ずれすることがない。
【0010】
また本発明の請求項4に係るドクター装置は、請求項1に係るドクター装置において、前記位置調整手段はモータの回転駆動により前記移動を行なう機構を有し、前記モータはブレーキ付のモータであるようにしたものである。本発明によれば、位置調整を行なうための操作の負荷が軽減される。
【0011】
また本発明の請求項5に係るドクター装置は、請求項1〜4のいずれかに係るドクター装置において、前記ドクターの刃先の接触状態を圧力として検出する圧力検出手段と、前記圧力に基づいて前記接触状態をモニターするための表示を行なう状態表示手段を有するようにしたものである。本発明によれば、調整と確認を同時に行なうときも無理な作業姿勢とならず、オペレータの熟練度に左右され難くい。
【0012】
また本発明の請求項6に係るドクター装置は、請求項4または5に係るドクター装置において、前記ドクター刃の刃先の接触状態を圧力として検出する圧力検出手段と、前記圧力に基づいて前記位置の調節を行なう移動制御手段とを有するようにしたものである。本発明によれば、オペレータの熟練度に左右されず、位置調整を行なうための操作の負荷が軽減する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のドクター装置について実施の形態により説明する。本発明のドクター装置について構成の一例を図1に示す。図1(A)は上面図、図1(B)は側面図である。図1において、1はドクター刃、2はドクターホルダー、3はスライダー、4はドクターベース、5a,5bはピニオンギア、6a,6bはラックギア、7a,7bはガイド、8a,8bはL字型ブラケット、9a,9bはハンドル、10a,10bはストッパー、11a,11bは圧力センサである。
【0014】
ドクター刃1は、グラビア印刷機等においてインキパンやインキ供給装置からのインキを版胴表面に供給した後に、版胴表面上の余剰インキを掻き落とすために使用される。ドクター刃1は、0.15〜0.3mm程度の厚さを有する帯状鋼板を材料とし、そのすくなくとも一方の辺には刃が設けられている。
【0015】
ドクターホルダー2は、ドクター刃1を両面から挟んで保持するための2枚の板状部材と締め付け機構から構成される。締め付け機構は、一般的には、2枚の板状部材の一方にボルトのネジ孔を設け、他方にボルトの貫通孔を設けて、ボルトで締め付ける機構である。ドクターホルダー2はドクター刃1を保持した状態でグラビア印刷機等への取り付け取り外しを行なえるドクター装置の部分である。
【0016】
スライダー3は、ドクター装置においてドクターホルダー2を取り付け取り外し可能に保持する部分である。スライダー3とドクターホルダー2との結合は、前述と同様のボルトで締め付ける機構とすることができる。
【0017】
ドクターベース4は、スライダー3を滑り面に接触して移動できるように保持する。すなわち、スライダー3とドクターベース4とが接触する面は滑り面となっている。ドクターベース4は、エアーシリンダー等によって着位置と脱位置とに変位できるようにグラビア印刷機等のフレームに支持されている(図示せず)。着位置はドクター刃1の刃先を版胴に接触させる位置である。また、脱位置はドクター刃1の刃先が版胴から離れる位置である。
【0018】
ピニオンギア5a,5b、ラックギア6a,6b、ガイド7a,7b、L字型ブラケット8a,8b、ハンドル9a,9b、ストッパー10a,10bは、圧力センサ11a,11bは、スライダー3とドクターベース4の相対的な位置の調節を滑り面に接触する移動により行なうとともに、所望の位置で停止可能とする位置調整手段を構成する。位置調整手段は左右一対(符号における添字aの左側と添字bの右側)の構成となっており、ドクター刃の左右各々について別々に位置調整を行なうことができる。
【0019】
ハンドル9a,9bはドクターベース4に回転可能に支持されている。ハンドル9a,9bの回転軸とピニオンギア5a,5bの回転軸は結合している。この結合は、直接的な結合とすることができるが、減速機(図示せず)を介して結合することもできる。ハンドル9a,9bの操作による位置調整は、減速機を介することにより容易となる。操作に必要な力を弱め、精密な位置調整を行なうことができる。
【0020】
ピニオンギア5a,5bの回転変位はラックギア6a,6bによって直線変位に変換される。ガイド7a,7bはドクターベース4に支持されており、ラックギア6a,6bはガイド7a,7bによって変位可能な方向が限定されている。ラックギア6a,6bはグラビア印刷機等の版胴の軸方向に対して直角方向に変位することができる。すなわち、ラックギア6a,6bは版胴に向かって接近したり版胴から遠退く方向に変位する。
【0021】
ラックギア6a,6bは、L字型ブラケット8a,8bを介してスライダー3に結合している。したがって、ラックギア6a,6bの変位によりスライダー3が変位する。勿論、スライダー3の変位の方向は版胴に向かって接近したり版胴から遠退く方向である。
【0022】
ストッパー10a,10bは、ハンドル9a,9bを回転可または回転不可のいずれかの状態とするためのストッパーである。ストッパー10は図1に示す一例においては、ハンドル9a,9bの軸に作用するツマミ付のネジである。ストッパー10はドクターベース4に回転可能に支持されている。ストッパー10におけるネジを緩めその先端がハンドル9a,9bの軸から離れているときにはその軸は開放されて回転できる。ストッパー10におけるネジを締め付けその先端をハンドル9a,9bの軸に当接させて押し付けているときにはその軸は固定されて回転しない。
【0023】
圧力センサ11a,11bは、ラックギア6a,6bに設けられており、ラックギア6a,6bに作用する力(応力)を検出するセンサである。たとえば、ストレーンゲージを使用する検出システム(ゼロ調節、温度補償、表示、等を含む)のセンサを適用することができる。ラックギア6a,6bに作用する力は主としてスライダー3から作用する力である。スライダー3はドクターホルダー2を介してドクター刃1を保持するから、版胴からドクター刃1に作用する力がラックギア6a,6bに作用する力に含まれる。したがって、圧力センサ11a,11bは、ドクター刃1を版胴に接触させたときの反作用としての力を検出する。圧力センサ11a,11bが検出した力はディスプレイ(図3参照)によって表示が行なわれ、オペレータはそれをモニターすることができる。
【0024】
以上の構成において、次に本発明のドクター装置における動作について説明する。
まず、オペレータは、通常はドクター装置から離れた場所でドクター刃1をドクターホルダー2に保持させる。
次に、オペレータは、ドクター刃1を保持するドクターホルダー2をドクター装置まで搬送しドクター装置のスライダー3に保持させる。このとき以前において、ドクターベース4は、版胴にドクター刃1の刃先が接触しない脱位置となっている。またスライダー3とドクターベース4との相対的位置は適正な初期位置となっている
【0025】
次に、オペレータは、ドクター装置を操作し、版胴にドクター刃1の刃先が接触する着位置とする。このとき、スライダー3の初期位置においては、実際のドクター刃1の刃先は版胴に接触する直前の位置か接触状態が不十分の位置となっている。
【0026】
次に、オペレータは、ハンドル9aを操作を行なってスライダー3を版面に向けて前進させる。オペレータは、版面の掻き取り状態を視認して、また圧力センサ11a,11bの出力に基づくディスプレイの表示をモニターして、ドクター刃1の刃先と版胴との接触状態を判断する。版面の掻き取り状態、左右のバランス、等が適正でないときには修正する。すなわち、スライダー3とドクターベース4との相対的位置を保持させるための初期位置から実運転のための適正な位置に修正する。
なおドクター刃1の刃先と版胴との接触圧における絶対値は、一般的に、ドクターベース4を着位置または脱位置に変位させるためのエアーシリンダーに供給する空気圧を調節して行なう。
【0027】
上述の修正は以下の▲1▼,▲2▼のようにして行なう。▲1▼ストッパー10を操作してハンドル9a,9bの軸を開放し、その状態でハンドル9a,9bの操作により位置調整を行なう。このときにオペレータはディスプレイの表示だけでなくドクターベース4に設けられた目盛(スケール)を必要に応じて参照する。▲2▼適正な位置への修正後に、ストッパー10を操作してハンドル9a,9bの軸を固定し回転しないようにする。これにより、スライダー3を所望の位置で停止させることができる。
【0028】
上述のオペレータの操作において位置調整を行なうときには、ディスプレイをモニターするだけでなく版面の掻き取り状態を目で見て確認しながら調整するほうが好ましい。図1に示すように、本発明のドクター装置の位置調整手段においては、ハンドル9a,9bの回転軸方向はスライダー3すなわちドクター刃1の移動方向に対して直角を成している。したがって、図2(A)に示すように、本発明のドクター装置においては、無理な作業姿勢となることなしに調整と確認とを同時に行なうことができる。
【0029】
次に、上述のドクター装置の変形例について実施の形態により説明する。変形例のドクター装置について構成の一例を図3、図4に示す。上述の図1に示す本発明のドクター装置と、図3に示すその変形例との相違は、位置調整手段におけるピニオンギア5a,5bを駆動する機構の相違を主とするものである。また、図4(A)はドクター装置の変形例におけるデータの流れを示すブロック図であり、図4(B)は図3に示したドクター装置の図を併記した図である。
【0030】
特に説明がない限り、その他の構成は図1、図3、図4において共通であり同一部分には同一符号が付してある。図3、図4において、11aはA側圧力センサ(圧力センサ11aと同一)、11bはB側圧力センサ(圧力センサ11bと同一)、31a,31bはブレーキ付モータ、32a,32bは前後用押ボタン、33は刃先位置表示部、41aはA側圧力検出部、41bはB側圧力検出部、42は演算部、43aはA側モータ駆動部、43bはB側モータ駆動部である。
【0031】
ブレーキ付モータ31a,31bはドクターベース4に支持されている。ブレーキ付モータ31a,31bの出力軸とピニオンギア5a,5bの回転軸は結合している。ブレーキ付モータ31a,31bはモータとブレーキと減速機とを組合せたものを使用することができる。ブレーキ付モータ31a,31bにおいてモータの回転軸は減速機の入力軸に結合している。減速機の出力軸はブレーキ付モータ31a,31bの出力軸と一致している。また、ブレーキはモータの回転軸または減速機の出力軸に作用するブレーキ機構である。ブレーキはモータをドライブする出力がないときに作動してモータが回転しないようにする。
【0032】
前後用押ボタン32a,32bはマニュアル操作で位置調整を行なうときの押ボタンスイッチである。前後用押ボタン32a,32bはブレーキ付モータ31a,31bの動作モードを切替える指示入力のための押ボタンスイッチである。動作モードとしては、すくなくとも、正回転、逆回転、停止を含んでいる。
【0033】
図3に示す一例においては、前後用押ボタン32a,32bの各々は、2つの押ボタンから成る。一方の押ボタンはスライダー3を前進させるための押ボタンであって、その押ボタンを押しているときだけスライダー3は前進し続け押すのを止めると停止する。他方の押ボタンはスライダー3を後退させるための押ボタンであって、その押ボタンを押しているときだけスライダー3は後退し続け押すのを止めると停止する。勿論、スライダー3の可動範囲の限界位置に設けられたリミットスイッチ等による停止機構が作動すると、押しているときでも停止する。
【0034】
刃先位置表示部33は、圧力センサ11a,11bが検出した力(応力)そのものまたは変換した量を表示する。オペレータはその刃先位置表示部33の表示をモニターすることができる。圧力センサ11a,11bが検出した力にはドクター刃1を版胴に接触させたときの反作用としての力が含まれている。したがって、その検出した力に基づいて、ドクター刃1の刃先が版胴に接触しているか否か、接触圧が適正であるか否かという量に変換することができる。刃先位置表示部33はオペレータにとって判り易いようにそのような変換した量を表示する。
【0035】
また、刃先位置表示部33は、ブレーキ付モータ31a,31bの基準位置からの回転数を計数することによってスライダー3の絶対的な位置の表示を行う。これによりオペレータは、ドクター刃1が版胴に接触していないときでもドクター刃1の位置を知ることができる。
【0036】
A側圧力検出部41aはA側圧力センサ11aの変換増幅器であって、A側圧力センサ11aの出力信号をA側圧力データとして出力する。同様に、B側圧力検出部41bはB側圧力センサ11bの変換増幅器であって、B側圧力センサ11bの出力信号をB側圧力データとして出力する。
【0037】
演算装置42は、上述における圧力センサ11a,11bが検出した力に基づく変換した量の演算やスライダー3の絶対的な位置の演算、さらにドクター刃1の位置自動調整のため制御演算、刃先位置表示部33へのデータ出力、A側モータ駆動部43aとB側モータ駆動部43bへの指令出力、オペレータ操作部(図示せず)への入出力、等を行なう。演算部は、マイクロコンピュータ、プログラマブルシーケンスコントローラ、パーソナルコンピュータ、等のデータ処理装置のハードウェアとソフトウェアによって実現することができる。
【0038】
A側モータ駆動部43aはブレーキ付モータ31aのコントローラとドラーバーを合わせたものである。A側モータ駆動部43aは演算部42からの指令出力を入力し、その指令にしたがってブレーキ付モータ31aの駆動制御を行なう。同様に、B側モータ駆動部43bはブレーキ付モータ31bのコントローラとドラーバーを合わせたものである。B側モータ駆動部43bは演算部42からの指令出力を入力し、その指令にしたがってブレーキ付モータ31bの駆動制御を行なう。
【0039】
以上の構成において、次に本発明のドクター装置(変形例)における動作について説明する。
まず、オペレータは、通常はドクター装置から離れた場所でドクター刃1をドクターホルダー2に保持させる。
次に、オペレータは、ドクター刃1を保持するドクターホルダー2をドクター装置まで搬送しドクター装置のスライダー3に保持させる。このとき以前において、ドクターベース4は、版胴にドクター刃1の刃先が接触しない脱位置となっている。またスライダー3とドクターベース4との相対的位置は適正な初期位置となっている
【0040】
次に、オペレータは、ドクター装置を操作し、版胴にドクター刃1の刃先が接触する着位置とする。このとき、スライダー3の初期位置においては、実際のドクター刃1の刃先は版胴に接触する直前の位置か、接触状態が不十分な位置となっている。
【0041】
次に、オペレータは、自動制御で位置調整を行なう操作を行なう。すなわち、スライダー3を版面に向けて自動前進させる指示入力をドクター装置の操作部(図示せず)において行なう。自動前進の指示入力は操作部から演算部42に伝達される。
【0042】
なお、マニュアル操作で位置調整を行なうときには、前述の前後用押ボタン32a,32bを手動操作する。このときに操作は、ハンドル9a,9b(図1とその説明参照)を操作するときの操作と同様である。ただし、ストッパー10a,10bの代りにブレーキ付モータ31a,31bにおけるブレーキが自動で作動する。
【0043】
次に、演算部42はA側圧力検出部41aとB側圧力検出部41bが出力するA側圧力データとB側圧力データとを入力する。以降の制御過程は下記の▲1▼〜▲3▼の繰り返しとなる。
▲1▼演算部42はそのA側圧力データに基づいてドクター刃1のA側の刃先が版胴に接触した状態を示す圧力に変換し、変換済A側圧力データを得る。同様に、演算部42はそのB側圧力データに基づいてドクター刃1のB側の刃先が版胴に接触した状態を示す圧力に変換し、変換済B側圧力データを得る。
【0044】
▲2▼演算部42は変換済A側圧力データと変換済B側圧力データとを比較し、(変換済A側圧力データ)<(変換済B側圧力データ)ならばA側モータ駆動部43aに対し、スライダー3のA側を版面に向けて前進させる指令を出力する。また、(変換済A側圧力データ)>(変換済B側圧力データ)ならばB側モータ駆動部43bに対し、スライダー3のB側を版面に向けて前進させる指令を出力する。また、所定の許容誤差の範囲内で(変換済A側圧力データ)と(変換済B側圧力データ)が一致すればA側モータ駆動部43aとB側モータ駆動部43bに対し停止指令を出力する。
【0045】
▲3▼演算部42は、▲2▼において停止指令を出力しないときには▲1▼に戻って、以降の過程を繰り返す。停止指令を出力したときには位置調整の過程を終了する。
この位置調整の結果、ドクター刃1のA側とB側の刃先と版胴との接触状態は、接触圧力においてバランスがとれた状態となる。
【0046】
【発明の効果】
以上のようであるから、本発明の請求項1に係るドクター装置によれば、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整後に位置ずれすることがないドクター装置が提供される
また本発明の請求項2に係るドクター装置によれば、ハンドルの回転操作により運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整と確認を同時に行なうときも無理な作業姿勢とならず、位置調整を行なうための操作の負荷を軽減することができる。
また本発明の請求項3に係るドクター装置によれば、運転中にドクター刃の位置調整を行なうことができ、調整後に位置ずれすることがない。
また本発明の請求項4に係るドクター装置によれば、位置調整を行なうための操作の負荷を軽減することができる。
また本発明の請求項5に係るドクター装置によれば、調整と確認を同時に行なうときも無理な作業姿勢とならず、オペレータの熟練度に左右され難くすることができる。
また本発明の請求項6に係るドクター装置によれば、オペレータの熟練度に左右されず、位置調整を行なうための操作の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のドクター装置について構成の一例を示す図である。
【図2】ドクター装置を操作するオペレータの姿勢について従来と本発明を比較して示す説明図である。
【図3】本発明のドクター装置における構成の変形例を示す図である。
【図4】変形例のドクター装置についてデータの流れブロック図として示す図である。
【図5】従来のグラビア印刷機等のドクター装置におけるドクター刃位置調整機構の一例を図5に示す。
【符号の説明】
1 ドクター刃
2 ドクターホルダー
3 スライダー
4 ドクターベース
5a,5b ピニオンギア
6a,6b ラックギア
7a,7b ガイド
8a,8b L字型ブラケット
9a,9b ハンドル
10a,10b ストッパー
11a A側圧力センサ(圧力センサ11aと同一)
11b B側圧力センサ(圧力センサ11bと同一)
31a,31b ブレーキ付モータ
32a,32b 前後用押ボタン
33 刃先位置表示部
41a A側圧力検出部
41b B側圧力検出部
42 演算部
43a A側モータ駆動部
43b B側モータ駆動部
Claims (6)
- ドクター刃を保持するドクターホルダーと、
前記ドクターホルダーを保持するスライダーと、
前記スライダーを滑り面に接触して移動できるように保持するドクターベースと、
前記スライダーと前記ドクターベースの相対的な位置の調節を前記移動により行ない所望の位置で停止可能な位置調整手段と、
を有することを特徴とするドクター装置。 - 請求項1記載のドクター装置において、前記位置調整手段はハンドルを回転操作することにより前記移動を行なう機構を有し、前記ハンドルの回転軸方向は前記移動方向に対して直角を成すことを特徴とするドクター装置。
- 請求項2記載のドクター装置において、前記位置調整手段は前記ハンドルを回転可または回転不可のいずれかの状態とするためのストッパーを有することを特徴とするドクター装置。
- 請求項1記載のドクター装置において、前記位置調整手段はモータの回転駆動により前記移動を行なう機構を有し、前記モータはブレーキ付のモータであることを特徴とするドクター装置。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のドクター装置において、前記ドクター刃の刃先の接触状態を圧力として検出する圧力検出手段と、前記圧力に基づいて前記接触状態をモニターするための表示を行なう状態表示手段を有することを特徴とするドクター装置。
- 請求項4または5に記載のドクター装置において、前記ドクター刃の刃先の接触状態を圧力として検出する圧力検出手段と、前記圧力に基づいて前記位置の調節を行なう移動制御手段とを有することを特徴とするドクター装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003155811A JP2004351906A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | ドクター装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003155811A JP2004351906A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | ドクター装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004351906A true JP2004351906A (ja) | 2004-12-16 |
Family
ID=34050105
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003155811A Pending JP2004351906A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | ドクター装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004351906A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008229882A (ja) * | 2007-03-16 | 2008-10-02 | National Printing Bureau | ワイピングローラ用のドクターブレード自動調整装置 |
JP2010524733A (ja) * | 2007-05-02 | 2010-07-22 | ボブスト ソシエテ アノニム | 印刷機用の印刷装置を組み立てる方法、解体する方法、および、機能変換する方法ならびに搬送装置 |
JP2012162047A (ja) * | 2011-02-09 | 2012-08-30 | Toppan Printing Co Ltd | ドクター装置、グラビア塗布装置と塗布方法 |
-
2003
- 2003-05-30 JP JP2003155811A patent/JP2004351906A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008229882A (ja) * | 2007-03-16 | 2008-10-02 | National Printing Bureau | ワイピングローラ用のドクターブレード自動調整装置 |
JP2010524733A (ja) * | 2007-05-02 | 2010-07-22 | ボブスト ソシエテ アノニム | 印刷機用の印刷装置を組み立てる方法、解体する方法、および、機能変換する方法ならびに搬送装置 |
JP2012162047A (ja) * | 2011-02-09 | 2012-08-30 | Toppan Printing Co Ltd | ドクター装置、グラビア塗布装置と塗布方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CA2716477C (en) | Power assist device and control method therefor | |
EP2314377B1 (en) | Roll mill | |
US20110101139A1 (en) | Roll mill with automatic control of roll-to-roll distance and inter-roll pressure | |
JP4805427B2 (ja) | 心押装置 | |
JP2009034754A (ja) | パワーアシスト装置およびその制御方法 | |
CN102781638A (zh) | 切割装置 | |
KR100805157B1 (ko) | 3축 정밀이동이 가능한 수평식 드릴링머신 | |
JP2004351906A (ja) | ドクター装置 | |
JP5476594B2 (ja) | ロータリースクリーン装置 | |
JP4100563B2 (ja) | 凹版印刷機のワイピングローラ自動制御方法及び自動制御装置 | |
US6912954B2 (en) | Adjusting method and apparatus of ink fountain blade home position of printing press | |
JPS63134244A (ja) | 枚葉印刷機の印圧設定制御装置 | |
JP5400538B2 (ja) | ロールミル | |
JP3040806B2 (ja) | 顕微鏡装置 | |
JP2007098862A (ja) | 凹版印刷機のワイピング駆動装置 | |
JP2891516B2 (ja) | 圧延機におけるスピンドル支承装置 | |
JP2003285420A (ja) | 印刷機の版取扱方法及び装置 | |
JP2000190135A (ja) | 位置決め装置の位置決め方法 | |
JP4444391B2 (ja) | 剪断加工装置 | |
WO2004024377A1 (ja) | 鋼管端部の加工装置およびこれに用いられる刃物台調整方法並びにその装置 | |
JP3750106B2 (ja) | 鋼管端部の加工装置における刃物台調整方法および装置 | |
JP2908287B2 (ja) | 切断機における表示装置 | |
JP2004090204A (ja) | 切断装置 | |
JPH08224860A (ja) | ロールを負荷する方法と装置 | |
JPH0415493Y2 (ja) |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060511 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20071221 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20090729 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20091124 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |