JP4805427B2 - 心押装置 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、工作機械の主軸台に支持されたワークに、心押台の心押センターを押し付けてワークを支持する心押装置に係り、特に、低い心押推力によりワークを支持することができる心押装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋削加工を行う工作機械は、例えば、カムシャフト等のワークの端部をクランプ可能なチャックを有する主軸台を備えている。又、工作機械は、主軸台と対向するように往復動可能に配設され、かつワークの自由端のセンター孔に押し付けられる心押台を備えている。心押台は、送りねじ機構によって往復動する。送りねじ機構は、サーボモータにより作動する。心押台は、サーボモータにより、ねじ軸を介して前進する。ワークのセンター孔に心押台の心押センターが押し付けられると、ワークは、チャックと心押センターとによって所定の心押推力で支持される。
【0003】
特許文献1には、心押センターの心押推力を設定する方法が開示されている。この設定方法において、心押推力設定部で予め設定された心押推力は、トルク指令変換部により、駆動系の変速比、及びパラメータ設定部に設定された心押台摺動面抵抗や、送りねじ軸の受け部の摩擦トルクや、ねじ軸の効率を考慮して、サーボモータの駆動トルクに換算される。心押指令部が操作されると、心押台制御部が起動する。そして、サーボ制御部及び電力増幅部を介してサーボモータのトルクが制御され、心押台が駆動制御される。心押台制御部は、トルク指令変換部で換算された駆動トルクを、トルク制限値記憶部に記憶させ、トルク制限値をサーボ制御部へ送出する。サーボ制御部は、トルク制限値(駆動トルク)を上限として、サーボモータのトルク制限制御を行う。これにより、心押センターの心押推力が設定される。
【0004】
ところが、上記従来の心押装置において心押推力を設定する方法では、心押センターをワークに押し付ける前に、サーボモータのトルク値(電流値)を制限し、その後、心押センターをワークに押し付ける。このため、心押台の摺動面抵抗等の抵抗と同じトルク値か、それ以下のトルク制限値の設定では、心押台の動作が不可能であった。従って、ワークが合成樹脂等の強度の低い材料により形成されている場合には、心押センターの推力が過大になり、ワークが変形し、工具によるワークの加工精度が低下するおそれがあった。
先行技術文献
特許文献
[0005]
特許文献1:特開2006−346754号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0006]
本発明は、心押台をその摺動面抵抗等に抗して移動させるのに必要な推力以下の推力でワークを支持することのできる心押装置を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0007]
上記問題点を解決するために、本発明の第一の態様によれば、サーボモータにより送りねじ機構を介して往復動される心押台の心押センターを、ワークに押し付けてワークを支持する心押装置が提供される。心押装置は、ワークの支持に必要な心押推力をサーボモータのトルク制限値として設定する通常心押推力設定手段と、上記通常の心押推力よりも低い心押推力を手動操作により心押センターに付与する低心押推力設定手段であって、心押センターの先端をワークに押し付けるように作用する低心押推力設定手段と、前記ワークに付与される心押センターの心押推力を表示する表示手段と、表示手段の画面が低推力モードに切り換えられた状態で、心押センターの実際の推力が最大推力値を越える場合に手動操作を無効化する無効化手段とを備え、無効化手段は、更に、心押センターの実際の推力が最大推力値以下でかつ許容範囲外である場合に手動操作を無効化せず、心押センターの実際の推力が最大推力値以下でかつ許容範囲内である場合に手動操作を無効化する。
この構成によれば、手動操作される低推力設定手段によって、表示手段の画面に表示された心押推力を目視しながら、ワークに対し心押台の心押センターを通常の心押推力より低い心押推力で押し付けることができる。従って、心押台を移動させるのに必要な推力以下の低推力で心押センターをワークに押し付けることができ、強度の低いワークを適正に支持することができる。よって、ワークが低強度のものであっても、高精度加工を実現できる。
上記の心押装置において、前記低心押推力設定手段は、表示手段の画面を低推力モードに設定する低推力押付キーと、サーボモータを駆動するためのパルスを手動操作によって発生させる手動パルス発生器とを備え、前記心押センターをワークに押し付けて前記心押台及び前記心押センターを停止させることにより前記サーボモータの回転トルクが心押台の摺動抵抗の影響を受けないようにした状態で、前記サーボモータのエンコーダから出力されるフィードバック信号と、前記手動パルス発生器によって発生した指令信号との偏差に基づいて前記サーボモータを回転させることにより前記送りねじ機構を弾性変形させ、そのときの前記送りねじ機構の弾性反発力により、前記心押センターを前記ワークに低い心押推力で押し付けることが好ましい。
上記の心押装置において、前記手動パルス発生器によって発生された1パルス当たりの指令信号を変更するための倍率設定手段を備えることが好ましい。
[0008]
【図面の簡単な説明】
[0009]
[図1]本発明の心押装置を具体化した一実施形態を示す操作盤の正面図。
[図2]制御装置のブロック回路図。
[図3]工作機械を構成する主要な装置の簡略正面図。
[図4]心押台の低推力を調整する動作を説明するためのフローチャート。
[図5]手動パルス発生器による送りねじ機構の送り量と実測された心押センターの心押推力との関係を示すグラフ。
発明を実施するための形態
[0010]
図3に示すように、工作機械の機台11には、モータ10を備えた主軸台12が固定されている。モータ10の回転軸には、ワークWの端部をクランプするためのチャック13が備えられている。機台11には、案内レール14が設けられている。心押台15は、案内レール14上を水平方向に沿って往復動する。心押台15には、心押センター16が装着されている。心押センター16は、ワークWの自由端に形成されたセンター孔(図示しない)に押し付けられる。これにより、ワークWの自由端が支持される。
【0011】
機台11には、サーボモータ17が配置されている。サーボモータ17の回転軸には、ねじ軸18が連結されている。ねじ軸18の先端は、心押台15に取り付けられた雌ねじ体19に螺合されている。ねじ軸18及び雌ねじ体19によって、心押台15の送りねじ機構Kが構成されている。サーボモータ17には、モータ17の回転軸の回転角を検出するエンコーダ20が設けられている。エンコーダ20は、回転軸の回転角に比例したパルス信号をフィードバック信号Pfとして偏差カウンタ46に出力する。
【0012】
図1に示すように、操作盤21は、機台11の前面に設けられている。操作盤21の上部には、タッチパネル機能を有するとともに表示手段としての表示画面22を有する表示部22Aが設けられている。操作盤21の中間部には、心押センター16による推力を設定するための推力入力キー23が設けられている。表示部22Aには、ワークWに付与される心押センター16の推力の値を表示する推力表示部24が設けられている。
【0013】
操作盤21の下部には、前後進スイッチ25が設けられている。後述する通常推力押付モードの場合、前後進スイッチ25が中間位置から前進位置に切り替えられると、図3に示すサーボモータ17が回転し、心押台15がワークWに接近する方向に前進する。ワークWに心押センター16が押し付けられて、推力が推力入力キー23で設定された通常の設定値(例えば、1〜5kN(キロニュートン))に達すると、心押台15は、サーボモータ17のトルク出力を維持した状態で停止する。前後進スイッチ25が中立位置から後退位置に切り替えられると、サーボモータ17が逆回転されて、心押台15は、ワークWから離隔する方向に後退する。
【0014】
表示画面22には、機能メニューキー群26が設けられている。機能メニューキー群26には、通常推力押付キー27及び低推力押付キー28が設けられている。通常推力押付キー27がONされると、通常推力押付モードが設定されるため、表示画面22は、メニュー画面から通常推力押付モードを表す表示に切り換えられる。又、低推力押付キー28がONされると、低推力押付モードが設定されるため、表示画面22は、図1に示す低推力押付モードを表す表示に切り換えられる。
【0015】
操作盤21には、手動パルス発生器31が設けられている。手動パルス発生器31は、つまみ32aを有する操作ハンドル32と、軸33によって操作ハンドル32と連結されたエンコーダ34とによって構成されている。操作ハンドル32は操作盤21の表面に設けられ、エンコーダ34は操作盤21の裏面に取り付けられている。操作ハンドル32を手動回転すると、エンコーダ34から、操作ハンドル32の回転角に比例した数のパルス信号が出力される。このパルス信号は、CPU42を介して、指令信号Pcとして偏差カウンタ46に出力される。操作盤21には、移動量調整手段としての第1〜第4倍率設定キー35A〜35Dが設けられている。第1〜第4倍率設定キー35A〜35Dは、手動パルス発生器31によって出力された1パルス当たりの心押台15の移動量を、1倍、10倍、100倍又は千倍に変更するためのものである。1パルス当たりの移動量は、例えば、0.0001mmである。表示画面22には、第1〜第4倍率設定キー35A〜35Dによって選択された倍率を表示するための倍率表示部36が設けられている。表示画面22の上部には、アラームを表示するためのアラーム表示部37が設けられている。操作盤21の下部には、ブザー38が設けられている。
【0016】
次に、各種の制御を行うための制御システムについて図2に基づいて説明する。
図2に示すように、制御装置41には、各種のデータに基づいて所定の演算処理を行うためのCPU42が設けられている。制御装置41には、各種の動作を実行するための制御プログラムを記憶した読み出し専用のROM43が設けられるとともに、各種のデータを一時的に記憶するための読み出し及び書き込み可能なRAM44が設けられている。制御装置41には、推力入力キー23、前後進スイッチ25、エンコーダ34及び第1〜第4倍率設定キー35A〜35Dが接続されている。制御装置41には、表示部22Aが接続されている。表示部22Aの表示画面22には、通常推力押付キー27及び低推力押付キー28が表示される。又、制御装置41には、サーボアンプ45(電力増幅部)を介してサーボモータ17が接続されるとともに、ブザー38が接続されている。
【0017】
制御装置41には、サーボアンプ45の位置偏差カウンタ46が接続されている。偏差カウンタ46には、サーボモータ17のエンコーダ20から出力されたパルス信号よりなるフィードバック信号Pfが入力される。又、偏差カウンタ46には、手動パルス発生器31のエンコーダ34から出力されたパルス信号がCPU42を介して指令信号Pcとして入力される。偏差カウンタ46は、フィードバック信号Pfと指令信号Pcとの偏差ΔP(=Pf−Pc:溜まりパルスとも言う)を算出する。偏差ΔPは、電流増幅部47において増幅される。サーボモータ17は、増幅された偏差ΔPに基づき駆動される。
【0018】
CPU42が起動されると、制御装置41は、ROM43に記録されているコンピュータプログラムに従い、CPU42により実行される各種演算処理に基づき、心押動作等に必要な各種の処理を実行する。CPU42は、コンピュータプログラムを、制御装置41に内蔵されたROM43ではなく、コンピュータで読み取り可能な記録媒体を備えた外部記録装置に記録する。そして、CPU42は、この外部記憶装置からコンピュータプログラムを必要に応じて読み出す。
【0019】
制御装置41、CPU42及び第1〜第4倍率設定キー35A〜35D等は、倍率設定手段を構成している。又、操作盤21の推力入力キー23、推力表示部24、通常推力押付キー27及び制御装置41等は、通常心押推力設定手段を構成している。さらに、操作盤21の推力表示部24、低推力押付キー28、手動パルス発生器31、制御装置41及び偏差カウンタ46を含むサーボアンプ45等は、低心押推力設定手段を構成している。
【0020】
次に、上記の心押装置の動作について図4に示すフローチャートを中心に説明する。ワークWの心押センター16による心押動作は、チャック13によってワークWの端部がクランプされた状態で、操作盤21の各種キー、スイッチを操作することにより行われる。
【0021】
さて、金属棒等の通常の高強度材質からなるワークWの場合、通常モード下において推力入力キー23により所要の推力、例えば、1kN〜5kNの値が入力されて、RAM44の所定のエリアに設定される。この状態で、前後進スイッチ25を前進位置に切り替えると、心押センター16を有する心押台15がワークWに向かって移動する。そして、ワークWは、チャック13と心押センター16との間に設定された通常推力(1〜5kN)で保持される。心押センター16の通常推力は、背景の技術で述べたようにサーボモータ17のトルク制限制御を行うことにより設定される。
【0022】
ワークWを通常推力で保持した状態で、ワークWに対して切削等の加工を施すことができる。加工終了後、前後進スイッチ25を前記とは逆方向に、即ち後退位置に切り替えれば、心押台15が後退して、心押センター16がワークWから離間する。
【0023】
合成樹脂等の低強度のワークWの加工は以下のようにして行われる。ステップS1〜ステップS18は、低強度のワークWに対応した低推力による心押センター16の押し付け動作及びその関連動作を示す。以下、ステップS1〜ステップS18を、単に、S1〜S18と記載する。
【0024】
図3は、ワークWから心押センター16が離隔された状態を示している。この状態において、図4に示すように、S1において、図1に示す低推力押付キー28がONされると、表示画面22が低推力モード画面に切り換えられると共に、S2において、低推力押付キー28が消灯状態から点滅状態に切り換えられる。S3において、推力表示部24の表示が、通常モード下での設定値(通常推力:例えば、1〜5kN)から、低推力モード下での実際の推力の表示(初期状態では0.0kN)に切り換えられる。この推力表示の背景は、作業者が認識し易いように着色されている。
【0025】
S4において、作業者により操作ハンドル32がマイナス(−)方向に手動回転されると、エンコーダ34から、操作ハンドル32の回転角に応じた数のパルスが制御装置41に入力される。そして、このパルスに対し第1〜第4倍率設定キー35A〜35Dにより設定された倍率を乗算したものが、指令信号Pcとして偏差カウンタ46へ出力される。サーボモータ17は、偏差カウンタ46に入力された指令信号Pcに従い回転される。
【0026】
こうして、エンコーダ34からCPU42を介して指令信号Pcが偏差カウンタ46へ出力されると、偏差カウンタ46は、指令信号Pcとエンコーダ20からのフィードバック信号Pfとの偏差ΔP(溜まりパルス)を算出する。偏差ΔPが電流増幅部47に入力されると、サーボモータ17は、電流増幅部47から出力されると共に偏差ΔP等に基づき計算された駆動電流に従い回転される。サーボモータ17の回転に伴い、心押台15は、ワークWに向けて前進する。
【0027】
操作ハンドル32の手動回転により、心押センター16は、退避位置からワークWと接触する直前まで前進させられる。この際、作業者は、予め、第1〜第4倍率設定キー35A〜35Dを適宜選択設定することにより、一パルス当たりの心押センター16の移動量を調整することができる。このため、ワークWと心押センター16との間の距離に応じて倍率を変更することにより、迅速にかつ安全に、ワークWに心押センター16を誤って衝突させることなく、心押センター16をワークWに適正に接触させることができる。即ち、ワークWまでの距離が長いときは、高倍率で、高速で、心押センター16を移動させればよく、ワークWまでの距離が短くなるに従って、低倍率で、低速で、心押センター16を移動させればよい。
【0028】
心押センター16の先端がワークWに押し付けられて、心押台15及び心押センター16の前進が停止すると、作業者は、手動パルス発生器31の手動回転を一旦中止する。この動作により、サーボモータ17の回転が停止して、エンコーダ20からのフィードバック信号Pfは0となる。この状態において、操作ハンドル32が再び手動回転されると、エンコーダ34からパルスが指令信号Pcとして出力されるため、フィードバック信号Pfと指令信号Pcとの偏差ΔPが算出される。そして、この偏差ΔPに応じた駆動電流が、電流増幅部47からサーボモータ17に供給される。これにより、心押台15及び心押センター16を停止した状態で、サーボモータ17が微かに回動されるため、送りねじ機構Kのねじ軸18及び雌ねじ体19等が弾性(撓み)変形する。そして、送りねじ機構Kの弾性反発力により、心押センター16は、ワークWに対し低い推力で押し付けられる。
【0029】
心押台15及び心押センター16を停止した状態では、サーボモータ17の回転トルクは、心押台15の摺動抵抗の影響を受けない。このため、サーボモータ17の回転トルクとして、必要以上に大きな値を設定する必要がなくなる。このため、心押センター16の心押推力を低推力に設定することができる。
【0030】
以上のようにして、心押センター16は、送りねじ機構Kの弾性変形に基づく反発力による低推力で、ワークWに対して押し付けられる。このときの推力の数値は、推力表示部24に表示される。作業者は、推力表示部24に表示された数値が目標とする数値(例えば、0.8kN)となった場合に、操作ハンドル32の手動回転を停止する。操作ハンドル32の手動回転が停止されると、エンコーダ34からは新たに指令信号Pcが発生しないため、フィードバック信号Pfと指令信号Pcとの偏差ΔPが0になるように、サーボアンプによってサーボモータ17の回転が制御されて、所謂サーボロック状態となる。このとき、サーボモータ17には、送りねじ機構Kの弾性反発力を受けても偏差ΔPを0に保つために、即ち、サーボモータ17の回転角度位置を保つために、所定の駆動電流が供給され続ける。この結果、送りねじ機構Kのねじ軸18に所定の回転トルクが付与されると共に、送りねじ機構Kの弾性反発によって心押センター16に所定の推力が付与される。
【0031】
図5に示すように、手動パルス発生器31の操作に基づくエンコーダ34からの指令信号Pcによるサーボモータ17の回転量、即ち、指令された送りねじ機構Kの送り量(μm)がマイナス方向に増加すると、それにほぼ正比例して、実際に測定した心押センター16の推力が増加することが判った。心押センター16の推力を数回実側したが、ほぼ同じ結果が得られた。
【0032】
S5において、CPU42は、実際の推力Fxが予め設定された最大推力値Fmax(例えば、10kN)以下であるか否かを判別する。例えば、何らかの原因により、心押センター16が機台11の一部に接触した場合、サーボモータ17や伝達系に過大な負荷が作用するおそれがある。このため、実際の推力Fxが最大推力値Fmaxを越える場合、CPU42は、S6において、アラーム表示部37にアラームを表示し、ブザー38を作動する。これにより、心押センター16に異常が発生していることが、作業者に報知される。S7において、無効化手段としてのCPU42は、操作ハンドル32のマイナス方向への手動回転を無効化する。次に、S8において、作業者は、操作ハンドル32をプラス方向に手動で操作して、ワークWから離れる方向に心押台15を移動させる。これにより、実際の推力Fxが減少する。実際の推力Fxが最大推力Fmax以下になると、S9において、CPU42は、アラーム(ブザーを含む)の作動を停止してから、S4に戻る。このように、作業者は、操作ハンドル32をプラス方向に手動回転することにより心押台15を後退させることによって、心押センター16に発生した異常を解消することができる。
【0033】
一方、実際の推力Fxが最大推力値Fmax以下である場合、S10において、低推力押付キー28が作業者によって再度ONされると、S11において、CPU42は、実際の推力Fxが許容範囲(例えば、0.5kN〜1.0kN)内であるか否かを判断する。実際の推力Fxが許容範囲外である場合、S12において、CPU42は、アラーム表示部37にアラームを表示する。S13において、アラームを示すフラグが作業者によってリセットされると、S14において、CPU42は、アラーム(ブザーを含む)の動作を停止してから、S4に戻る。ここでは、実際の推力Fxが許容範囲外であるため、アラームが発生して、作業者にその旨が伝えられる。しかしながら、決して危険な状態であるわけではないため、CPU42は、操作ハンドル32の手動回転を無効化しない。
[0034]
S11において、実際の推力Fxが許容範囲内である場合、S15において、CPU42は、低推力押付キー28を点滅状態から点灯状態に切り換える。それと同時に、CPU42は、操作ハンドル32の手動回転による推力の調整を無効化する。結果として、心押センター16の実際の推力Fxが目標とする推力に設定される。次に、S16において、ワークWの加工が開始される。S17において、CPU42は、加工中のワークWに異常な過大推力が作用していないか、即ち、実際の推力Fxが設定された推力に対して許容範囲(例えば、±0.2kN)内であるか否かを判断する。実際の推力Fxが設定された推力に対して許容範囲内である限り、CPU42は、加工が正常に行われているものと判断して、ワークWの加工を最後まで完了させる。実際の推力Fxが設定された推力に対して許容範囲外になった場合、S18において、CPU42は、制御装置41からサーボモータ17に非常停止信号を出力し、ワークWの加工のための動作を非常停止させる。
[0035]
以下、本実施形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)操作盤21の表示画面22には、機能メニューキー群26が表示される。これら機能メニューキー群26のうち低推力押付キー28をONすることによって、作業者は、表示画面22を、低推力押付モードを表す表示に切り換える。又、操作盤21には、操作ハンドル32を有する手動パルス発生器31が設けられている。作業者が操作ハンドル32を手動回転することによって、エンコーダ34から、サーボモータ17を駆動させるためのパルスが発生する。偏差カウンタ46は、サーボモータ17のエンコーダ20からのフィードバック信号Pfと、手動パルス発生器31のエンコーダ34からの指令信号Pcとの偏差ΔPを算出する。さらに、ワークWに心押センター16を押し付けて、心押台15及び心押センター16を所定の位置に停止させることにより、サーボモータ17の回転トルクが心押台15の摺動抵抗の影響を受けない状態にする。この状態で、操作ハンドル32を手動回転してエンコーダ34から指令信号Pcを出力することにより、偏差カウンタ46は、フィードバック信号Pfと指令信号Pcとの偏差ΔPを算出する。この偏差ΔPに基づき、サーボモータ17が微かに回動することにより、送りねじ機構Kが弾性変形する。そして、このとき生じる送りねじ機構Kの弾性反発力によって、心押センター16がワークWに押し付けられる。このため、心押センター16をワークWに押し付けた後、操作ハンドル32の手動回転によって、心押センター16の推力を低い領域で容易に微調整することができる。
【0036】
(2)エンコーダ34から出力される1パルス当たりの指令信号Pcは、第1〜第4倍率設定キー35A〜35Dによって変更することができる。このため、心押センター16がワークWに接触するまでの間、心押台15の送り速度を、適正速度となるように容易に調整でき、また、推力の値を微調整することもできる。従って、作業者は、作業に好適な送り速度を選択でき、又、適正な推力の値に素早く調整することもできる。ひいては、作業の高能率化及び容易化に寄与することができる。
【0037】
(3)そして、心押センター16がワークWに係合した後、作業者は、推力表示部24に表示された実際の推力値を目視しながら操作ハンドル32を手動回転する。このようにすれば、低強度のワークWに適した低推力の心押圧力を得ることができる。従って、低強度のワークWに対して高い精度で加工することができる。
【0038】
(4)ワークWが低推力で心押しされたとしても、推力の値が許容範囲外であれば、CPU42は、アラーム表示部37にアラームを表示して、操作ハンドル32の手動回転を無効化する。従って、作業者は、操作ハンドル32の再操作を行うことにより、適切な低推力での心押し状態を実現することができる。
【0039】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態において、機能メニューキー群26を、タッチパネルに代えて、機械的なキーに変更してもよい。この場合、各キーに対応して、キー動作の有無等を表示することが好ましい。
【0040】
・心押センター16によりワークWに対し付与される実際の推力を、圧力センサにより検出してもよい。この場合、圧力センサは、心押台15と、心押台15に装着された心押センター16との間に介在されている。
【符号の説明】
【0041】
K…ねじ機構、W…ワーク、ΔP…偏差、Fx…推力、Pc…指令信号、Pf…フィードバック信号、15…心押台、16…心押センター、17…サーボモータ、20,34…エンコーダ、28…低推力押付キー、31…手動パルス発生器。
Claims (3)
- サーボモータにより送りねじ機構を介して往復動される心押台の心押センターを、ワークに押し付けてワークを支持する心押装置において、
ワークの支持に必要な心押推力をサーボモータのトルク制限値として設定する通常心押推力設定手段と、
上記通常の心押推力よりも低い心押推力を手動操作により心押センターに付与する低心押推力設定手段であって、前記心押センターの先端を前記ワークに押し付けるように作用する低心押推力設定手段と、
前記ワークに付与される心押センターの心押推力を表示する表示手段と、
前記表示手段の画面が低推力モードに切り換えられた状態で、前記心押センターの実際の推力が最大推力値を越える場合に前記手動操作を無効化する無効化手段とを備え、前記無効化手段は、更に、前記心押センターの実際の推力が最大推力値以下でかつ許容範囲外である場合に前記手動操作を無効化せず、前記心押センターの実際の推力が最大推力値以下でかつ前記許容範囲内である場合に前記手動操作を無効化することを特徴とする心押装置。 - 請求項1記載の心押装置において、
前記低心押推力設定手段は、
表示手段の画面を低推力モードに設定する低推力押付キーと、サーボモータを駆動するためのパルスを手動操作によって発生させる手動パルス発生器とを備え、
前記心押センターをワークに押し付けて前記心押台及び前記心押センターを停止させることにより前記サーボモータの回転トルクが心押台の摺動抵抗の影響を受けないようにした状態で、前記サーボモータのエンコーダから出力されるフィードバック信号と、前記手動パルス発生器によって発生した指令信号との偏差に基づいて前記サーボモータを回転させることにより前記送りねじ機構を弾性変形させ、そのときの前記送りねじ機構の弾性反発力により、前記心押センターを前記ワークに低い心押推力で押し付けることを特徴とする心押装置。 - 請求項2記載の心押装置は、更に、
前記手動パルス発生器によって発生された1パルス当たりの指令信号を変更するための倍率設定手段を備えることを特徴とする心押装置。
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