JP2004351481A - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】連続鋳造機1で溶鋼を連続鋳造する際に、凝固状態判定装置16,17を用いて鋳片30の凝固完了位置32の幅方向形状を求め、当該形状に基づき、浸漬ノズル6からの溶鋼吐出流に対する、鋳型2の長辺に沿って鋳型の短辺側から浸漬ノズル側へ向かって水平方向に磁界を移動させることによって発生する制動力を調整し、鋳片の凝固完了位置の幅方向形状を制御する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の連続鋳造方法に関し、詳しくは、スラブ鋳片幅方向の凝固完了位置を制御しながらスラブ鋳片を連続鋳造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造によって製造される鋼のスラブ鋳片(以下、単に「鋳片」と記す)に要求される品質として、鋳片中心部の成分偏析(以下、「中心偏析」と記す)が少ないことが要求される。特に、建築構造用の厚鋼板や原油輸送用のラインパイプ材では、中心偏析が著しいと、水素誘起割れや溶接部の材料強度に多大な影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
この中心偏析は、鋳片の凝固収縮に起因して生じる、炭素、燐、硫黄等の溶質元素の濃化した濃化溶鋼の鋳片中心部への移動・集積によって発生する。そのため、中心偏析を軽減する方法として、連続鋳造機の対向するロールとの間隔を鋳片引き抜き方向の下流側ほど狭くし、鋳片の引き抜き方向に沿って鋳片の厚み方向に圧下力を作用させて鋳片を徐々に圧下し、鋳片中心部の体積を減少させ、鋳片の凝固収縮に起因して生じる濃化溶鋼の鋳片中心部への移動を防止する、所謂“軽圧下”が行われている。但し、軽圧下を行う場合に、隣り合うロールとの間で鋳片が溶鋼静圧によって膨らむ(「バルジング」と呼ぶ)と、鋳片の圧下が効率的に行われず、中心偏析の軽減効果が低下する。そこで、軽圧下する場合には、隣り合うロールとのロールピッチを小さくした専用のロールセグメント(以下、「軽圧下帯」と記す)を設けることが一般的である。
【0004】
このように、軽圧下帯はロール径が小さく、ロール本数が多いため、設備投資費が高いのみならず、その後の保守点検整備に費やす時間及び費用が嵩むため、通常、軽圧下帯の鋳造方向長さは必要最小限に抑えられている。従って、鋳片幅方向で凝固完了位置に差が生じ、鋳片の一部の部位が完全に凝固しないままで軽圧下帯から逸脱した場合には、この部位には圧下力が作用しないため、中心偏析が改善されずに却って増大する。
【0005】
このような鋳片の凝固完了位置が幅方向で異なる場合の未凝固層の形状としては、鋳片の短辺側の部位で未凝固層が鋳造方向に伸張したW形の形状が一般的に良く知られている。このW形の形状になる理由としては、(1)連続鋳造機の二次冷却帯における冷却用スプレー水の影響、(2)浸漬ノズルから吐出される溶鋼吐出流による凝固シェルの成長遅れが、知られている。このW形の形状では、軽圧下の有無に拘わらず、未凝固層の伸張した部位における中心偏析が悪化するため、W形の形状を平坦状の形状とすべく、従来種々の対策が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、センサーで未凝固層の幅方向形状を求め、基準とする形状との差に応じて、鋳片引き抜き速度又は鋳片幅方向の二次冷却強度を変更する方法が提案されている。しかしながら、鋳片引き抜き速度を減速した場合には、連続鋳造機の生産性が低下すると云う問題点が生じ、又、鋳片幅方向の二次冷却強度を変更するためには、流量制御の可能な二次冷却水回路を鋳片幅方向で複数、独立して設置する必要があり、二次冷却水回路の構造が複雑になると同時に、設備費が極めて高価になると云う問題点がある。
【0007】
一方、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流を制御することによってW形の形状を解消するには、例えば特許文献2に開示されたような、吐出口が下向きで且つ吐出口が鋳型幅とほぼ等しいサイズの扁平形浸漬ノズルを用いることで、溶鋼吐出流が、均一化されると同時に特定の凝固シェルの部位に衝突することがないため、解消可能である。しかしながら、このような浸漬ノズルでは、その形状が複雑で且つ大型であるため、慣用の円筒形浸漬ノズルに比べて格段に高価になると云う問題点がある。又、溶鋼の注入量が少なくなった場合には、扁平部全体に溶鋼が行き渡らず、鋳片幅方向で溶鋼吐出流に差が生じる可能性がある。即ち、鋳片引き抜き速度の変化に対応できない可能性がある。
【0008】
【特許文献1】
特公昭59−41829号公報
【0009】
【特許文献2】
特表平10−510216号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋼の連続鋳造において、確実に且つ安価に更に連続鋳造機の生産性を損なうことなく、連続鋳造鋳片の幅方向の凝固完了位置を最適な形状に制御することの可能な連続鋳造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための第1の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、連続鋳造機で溶鋼を連続鋳造する際に、凝固状態判定装置を用いて鋳片の凝固完了位置の幅方向形状を求め、当該形状に基づき、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に対する、鋳型の長辺に沿って鋳型の短辺側から浸漬ノズル側へ向かって水平方向に磁界を移動させることによって発生する制動力を調整し、鋳片の凝固完了位置の幅方向形状を所定の形状に制御することを特徴とするものである。
【0012】
第2の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、連続鋳造機で溶鋼を連続鋳造する際に、鋳片を挟んで送信用センサー及び受信用センサーを配置し、送信用センサー及び受信用センサーを鋳片幅方向に走査しながら送信用センサーから電磁超音波の横波を鋳片の厚み方向に送信し、受信用センサーにおける前記横波の透過波の有無又は透過波の伝播時間に基づいて鋳片の凝固完了位置の幅方向形状を求め、当該形状に基づき、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に対する、鋳型の長辺に沿って鋳型の短辺側から浸漬ノズル側へ向かって水平方向に磁界を移動させることによって発生する制動力を調整し、鋳片の凝固完了位置の幅方向形状を所定の形状に制御することを特徴とするものである。
【0013】
第3の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、第2の発明において、透過波の伝播時間から鋳片の平均温度を求め、求めた平均温度から凝固完了位置を推定することを特徴とするものである。
【0014】
第4の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、第2又は第3の発明において、前記送信用センサー及び受信用センサーは、鋳片を挟んでそれぞれ1個のみ配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
第5の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、第1ないし第4の発明の何れかにおいて、前記連続鋳造機には鋳片を軽圧下するための軽圧下帯が備えられており、鋳片の凝固完了位置を軽圧下帯の範囲内に制御して鋳片の中心偏析を低減することを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、凝固状態判定装置によって検出される、鋳片の凝固完了位置の幅方向形状に応じて、移動磁場の印加によって発生する、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に対する制動力を調整して連続鋳造するため、換言すれば、溶鋼吐出流に移動磁場によって発生する制動力を作用させて連続鋳造するため、溶鋼吐出流の流速が減速され、鋳片の短辺側の凝固シェルに溶鋼吐出流が衝突することが妨げられ、凝固シェルは鋳片幅方向で均等に成長し、未凝固層がW形になることが妨げられる。このように、移動磁場の強度を調整するだけで、W形の形状を解消することができるため、確実に且つ比較的安価な設備費で実施することができる。又、鋳片引き抜き速度は調整する必要がないため、連続鋳造機の生産性を損なうことがない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明を実施したスラブ連続鋳造機の概略図、図2は、図1に示すスラブ連続鋳造機の鋳型部位の概略斜視図、図3は、図1に示すスラブ連続鋳造機の鋳型部位の概略正面図である。
【0018】
図1に示すように、連続鋳造機1には、溶鋼を注入して凝固させるための鋳型2が設置されており、この鋳型2の下方には、対向する一対のロールを1組として複数組の鋳片支持ロール7が設置されている。そして、鋳片支持ロール7の下流側には、複数本の搬送ロール8と、搬送ロール8の上方に位置して鋳片30の鋳片引き抜き速度と同期するガス切断機9とが設置されている。又、鋳片支持ロール7には、鋳型2の直下から下流側に向かって、第1冷却ゾーン11a、11b、第2冷却ゾーン12a、12b、第3冷却ゾーン13a、13b、及び、第4冷却ゾーン14a、14bの合計8つに分割された冷却ゾーンからなる二次冷却帯10が設置されている。
【0019】
二次冷却帯10の各冷却ゾーンには、エアーミストスプレー用又は水スプレー用の複数個のスプレーノズル(図示せず)が設置されており、スプレーノズルから鋳片30の表面に二次冷却水が噴霧される。尚、各冷却ゾーンにおいて、連続鋳造機1の反基準面側(上面側)の冷却ゾーンをaで表示し、基準面側(下面側)の冷却ゾーンをbで表示している。又、冷却ゾーンの設置数は図1では合計8であるが、連続鋳造機1の機長等に応じて幾つに分割してもよい。
【0020】
鋳型2は、図2及び図3に示すように、相対する鋳型長辺3と、この鋳型長辺3内に内装された相対する鋳型短辺4とから構成され、この鋳型2の上方所定位置にタンディッシュ5が配置されている。タンディッシュ5の底部には上ノズル21が設置され、そして、上ノズル21の下面に接して、固定板22、摺動板23及び整流ノズル24からなるスライディングノズル18が配置され、更に、スライディングノズル18の下面に接して、下部に一対の吐出孔19を有する浸漬ノズル6が配置され、タンディッシュ5から鋳型2への溶鋼流出孔25が形成されている。浸漬ノズル6の内壁面へのアルミナ付着防止のために、上ノズル21、固定板22、浸漬ノズル6等から溶鋼流出孔25内にArガスや窒素ガス等の非酸化性ガスが吹き込まれている。
【0021】
鋳型長辺3の背面には、浸漬ノズル6を境として鋳型長辺3の幅方向左右で2つに分割された合計4基の移動磁場発生装置20が、その鋳造方向の中心位置を吐出孔19の直下位置とし、鋳型長辺3を挟んで対向して配置されている。それぞれの移動磁場発生装置20は電源(図示せず)と結線されており、電源から供給される電力により、移動磁場発生装置20から印加される磁場強度及び磁場移動方向がそれぞれ個別に制御されるようになっている。
【0022】
この移動磁場発生装置20により印加される磁場は移動磁場であり、浸漬ノズル6からの溶鋼吐出流31に制動力を与えるべく磁場を印加する場合には、図4に示すように、移動磁場の移動方向を鋳型短辺4側から浸漬ノズル6側とし、一方、浸漬ノズル6からの溶鋼吐出流31に加速力を与えるべく磁場を印加する場合には、図5に示すように、移動磁場の移動方向を浸漬ノズル6側から鋳型短辺4側とする。尚、図4及び図5は、磁場の移動方向を鋳型2の真上から示した図であり、図中の矢印が磁場の移動方向を表している。
【0023】
連続鋳造機1には、図1に示すように、鋳片支持ロール7の一部として鋳片30を軽圧下するための軽圧下帯15が設置されている。軽圧下帯15は複数組の鋳片支持ロール7で構成され、対向する鋳片支持ロール7とのロール間の間隔が鋳片30の鋳造方向下流側に向かって徐々に狭くなるように設定され、鋳片30に対して圧下力を付加することの可能な構造になっている。尚、図1は、軽圧下帯15内で鋳片30の凝固が完了する状態になっているが、図1は中心偏析を防止するために軽圧下帯15内で凝固を完了させている図であり、鋳片30の凝固完了位置32を連続鋳造機1の機端側、即ちガス切断機9側の鋳片支持ロール7の位置まで伸ばした操業も行われる。
【0024】
二次冷却帯10の下流側の鋳片支持ロール7の隙間には、鋳片30の凝固完了位置32を検出するための凝固状態判定装置の一部を構成する送信用センサー16(16a、16b)及び受信用センサー17(17a、17b)が、鋳造方向に3箇所設置されている。図1では、送信用センサー16及び受信用センサー17が鋳造方向に3箇所設置されているが、設置数は3に限る訳ではなく幾つでもよい。多いほど凝固完了位置32を精度良く検出することが可能であるが、後述するように、1つでも凝固完了位置32の鋳片幅方向形状を検出可能であり、検出精度と設備費との兼ね合いから適宜設置数を決めればよい。
【0025】
凝固状態判定装置は、鋳片30を挟んで対向配置させた送信用センサー16及び受信用センサー17からなるセンサー部と、送信用センサー16に送信信号を出力する送信出力系(図示せず)と、受信用センサー17にて受信した受信信号を処理する受信処理系(図示せず)と、からなっている。送信用センサー16及び受信用センサー17は、鋳片30の幅方向に移動可能な取り付け架台(図示せず)に取り付けられており、送信用センサー16と受信用センサー17とが同期して移動することにより、鋳片30の幅全体で凝固完了位置32を検出できる構成となっている。即ち、鋳片幅方向に走査可能であるので、凝固完了位置32の鋳片幅方向の状況を把握することができる。
【0026】
送信用センサー16は、送信信号を横波の電磁超音波として発信し、鋳片30を透過した横波電磁超音波の透過信号を受信用センサー17が受信する。この受信信号を処理することによって凝固完了位置32の検出が行なわれる。横波電磁超音波は、未凝固層29が鋳片30に残留している場合には鋳片30を透過せず、凝固が完了した時点以降で受信用センサー17に送信信号が伝播される。
【0027】
凝固状態判定装置のセンサー部の設置位置は、凝固完了位置32がそれよりも下流側に伸張して欲しくない位置の少し上流側位置、例えば軽圧下帯15の出口から0〜3m上流側等が望ましい。送信する電磁超音波に横波を用い、送信用センサー16及び受信用センサー17をこの位置に設置し、鋳片幅方向に送信用センサー16及び受信用センサー17を走査することで、鋳片幅方向各部位における透過信号の伝播時間から求められる、鋳片30の厚み方向の平均温度に基づいて、幅方向各部位の凝固完了位置32を求めることができるため、センサー部は鋳造方向に1箇所でも構わない。この場合、透過信号がぎりぎり到達した位置が、最も凝固完了位置32が鋳造方向下流側に伸張した位置となる。
【0028】
横波電磁超音波の場合、鋳片温度が低いほど透過速度は速くなる。鋳片幅方向においては、最も上流側の凝固完了位置32に相当する部位の鋳片厚み方向の平均温度が最も低くなり、従ってこの部位で伝播時間が最も短くなる。即ち、横波電磁超音波の伝播時間から、鋳片幅方向各部位の鋳片厚み方向における平均温度を求めることができるため、予め鋳片30の厚み方向における平均温度と凝固完了位置32との関係式を伝熱凝固計算等によって求めておくことで、伝播時間から求めた鋳片の平均温度から凝固完了位置32を推定することができる。このようにして鋳片30の幅方向各部位の凝固完了位置32を検出すること、即ち、未凝固層29の形状を検出することができる。
【0029】
このように構成される連続鋳造機1を用い、以下のようにして溶鋼を連続鋳造する。
【0030】
溶鋼26を取鍋(図示せず)からタンディッシュ5に注入し、タンディッシュ5内の溶鋼量が所定量になったなら、摺動板23を開き、溶鋼流出孔25を介して溶鋼26を鋳型2内に注入する。溶鋼26は、鋳型2内の溶鋼26に浸漬された吐出孔19から、鋳型短辺4に向かう溶鋼吐出流31となって鋳型2内に注入される。鋳型2内に注入された溶鋼26は鋳型2で冷却され、凝固シェル27を形成する。そして、鋳型2内に所定量の溶鋼26が注入されたなら鋳片支持ロール7の内の駆動ロール(「ピンチロール」と呼ぶ)を駆動して、外殻を凝固シェル27とし、内部に溶鋼26の未凝固層29を有する鋳片30の引き抜きを開始する。鋳片30は、鋳片支持ロール7に支持されつつ下方に連続的に引き抜かれる。引き抜き開始後は、溶鋼湯面28の位置を鋳型2内の略一定位置に制御しながら、鋳片引き抜き速度を増速して所定の鋳片引き抜き速度とする。鋳型2内の溶鋼湯面28の上にはモールドパウダー33を添加する。モールドパウダー33は溶融して、溶鋼26の酸化防止や、凝固シェル27と鋳型2との間に流れ込んで潤滑剤としての効果を発揮する。
【0031】
鋳片30は、軽圧下帯15において適宜な量の軽圧下量を付加されつつ二次冷却帯10で冷却され、凝固シェル27の厚みを増大して、やがて中心部まで凝固を完了する。その際に、送信用センサー16及び受信用センサー17を備えた凝固状態判定装置によって、鋳片30の幅方向の凝固完了位置32を検出する。
【0032】
検出された凝固完了位置32の鋳片幅方向の形状に応じて、その形状が所定の形状になるように、移動磁場発生装置20に供給する電力を調整する。前述したように、通常、凝固完了位置32の幅方向形状は鋳片短辺側で伸張したW形であるので、その形状を平坦状の形状とすべく、前述の図4に示した方向で移動磁場を移動させ、溶鋼吐出流31への制動力を強める。そして、鋳造中、検出される凝固完了位置32の鋳片幅方向の形状に応じて、適宜移動磁場発生装置20に供給する電力即ち磁場強度を調整する。
【0033】
中心偏析を低減する目的で鋳造する場合には、鋳片幅方向全体の凝固完了位置32を軽圧下帯15の範囲内に制御する必要があり、従って、例えば最も上流側の凝固完了位置32が軽圧下帯15の中央部位置程度となるように鋳片引き抜き速度及び二次冷却水量を調整し、更に、移動磁場発生装置20に供給する電力を変更し、最も下流側に伸張した凝固完了位置32を上流側に移動させる。中心偏析は、最も上流側の凝固完了位置32と最も下流側に伸張した凝固完了位置32との距離が小さいほど改善されるので、この距離が2m以下になるように制御することが好ましい。
【0034】
連続鋳造機1の生産性を上げるべく、最大鋳片引き抜き速度で鋳造する場合には、凝固完了位置32を連続鋳造機1の出側に位置させる必要があり、従って、例えば最も上流側の凝固完了位置32が図1に示す送信用センサー16aと送信用センサー16bとの間になるように鋳片引き抜き速度及び二次冷却水量を調整し、更に、最も下流側に伸張した凝固完了位置32が送信用センサー16bの位置を超えないように、移動磁場発生装置20に供給する電力を変更する。
【0035】
このようにして鋳造した鋳片30をガス切断機9により切断して鋳片30aを得る。
【0036】
以上説明したように、本発明によれば鋳片幅方向の凝固完了位置32の形状を平坦化しながら鋳片30を製造することが可能であり、中心偏析の改善並びに連続鋳造機1の生産性の向上等の副次的効果を得ることができる。
【0037】
尚、上記説明では軽圧下を実施する前提で説明したが、連続鋳造機1の生産性を上げるべく、最大鋳片引き抜き速度で鋳造する場合には、軽圧下を実施する必要はなく、軽圧下帯15も設置する必要がない。又、上記説明では2枚板構成のスライディングノズル18の例を挙げたが、3枚板構成のスライディングノズルについても上記に沿って本発明を適用することができる。
【0038】
【実施例】
表1に仕様を示す垂直曲げ型スラブ連続鋳造機(機長49.2m)を用い、C:0.11〜0.14質量%、Si:0.1〜0.2質量%、Mn:0.6〜0.8質量%、P:0.030質量%以下、S:0.03質量%以下、Cu:0.08質量%以下、sol.Al:0.015〜0.050質量%、N:0.008質量%以下の組成の440MPa級厚鋼板用炭素鋼を鋳造した。この連続鋳造機では、軽圧下帯が鋳型内の溶鋼湯面位置から14〜30mの範囲に配置してある。この連続鋳造機に設置されている移動磁場発生装置の仕様を表2に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
そして、鋳片引き抜き速度を1.4m/min(水準A)と1.6m/min(水準B)の2水準とし、移動方向を鋳型短辺側から浸漬ノズル側とした移動磁場の強度を、無印加も含めて3段階に設定して鋳造した。表3に各試験鋳造の鋳造条件を示す。尚、表3に示すEMLSモードとは、磁場の移動方向を鋳型短辺側から浸漬ノズル側として移動磁場を印加する方法である。
【0042】
【表3】
【0043】
連続鋳造機には、軽圧下帯の出口から2m上流側の位置に一対の送信用センサー及び受信用センサーを設置し、これらのセンサーを鋳片幅方向に走査させ、横波電磁超音波の伝播時間を計測した。そして、別途実験室内で高温鋳片を用いた実験により、鋳片の温度と横波電磁超音波の速度との関係を求めておき、この関係を用いて、試験鋳造での伝播時間を、その計測位置における鋳片の厚み方向の平均温度に換算した。更に、試験鋳造の鋳造条件下での伝熱凝固計算により、凝固完了位置以降の鋳片厚み方向の平均温度を、凝固完了位置から下流側への距離の関数として求め、この関数を用いて各計測位置における鋳片厚み方向の平均温度から凝固完了位置を求めた。
【0044】
図6に、水準Aの試験鋳造における凝固完了位置の鋳片幅方向形状を示す。尚、幅方向の形状は、幅方向左右でほぼ対称であったので、鋳片幅中央から鋳片短辺までの1/2幅で表示した。試験水準A−1は、移動磁場を印加しない場合であり、凝固完了位置は幅中央近傍で鋳型内溶鋼湯面位置から22.8m、鋳片幅中央から500mm離れた位置近傍で鋳型内溶鋼湯面位置から21.3m、鋳片短辺近傍では鋳型内溶鋼湯面位置から25.5mとなっており、最も上流側の凝固完了位置(鋳片幅中央から500mm離れた位置近傍に相当)と最も下流側に伸張した凝固完了位置(鋳片短辺近傍に相当)との距離(以下、「突出量」と記す)は4.2mであった。試験水準A−2は、磁束密度を0.03T(テスラ)とした場合であり、短辺側の凝固完了位置は鋳型内溶鋼湯面位置から23.4mの位置となって突出量が2.6mとなり、試験水準A−1に比較して突出量が少なくなった。試験水準A−3は、磁束密度を更に増加して0.06Tとした場合であり、短辺側の凝固完了位置は鋳片幅中央部とほぼ同位置となり、突出量は1.6mとなり更に少なくなった。
【0045】
図7に、水準Bの試験鋳造における凝固完了位置の鋳片幅方向形状を示す。試験水準B−1は、移動磁場を印加しない場合であり、凝固完了位置は幅中央近傍で鋳型内溶鋼湯面位置から24.5m、鋳片短辺近傍の鋳片幅中央から800mm離れた位置近傍では横波電磁超音波が透過せず、伝播時間を計測できなかった。横波電磁超音波は固相中は伝播するが、液相中は伝播しないので、この付近では未だ凝固が完了していなかったことが分かった。この連続鋳造機における軽圧下帯の下流側出口は鋳型内溶鋼湯面位置から30mであるので、試験水準B−1では鋳片短辺近傍の凝固完了位置は軽圧下帯の出口よりも下流側に突出していたと見られる。このような状態では、軽圧下帯の出口よりも下流側に突出した部位には有効な圧下が加えられないため、中心偏析が悪化する可能性が高い。
【0046】
試験水準B−2は、磁束密度を0.04Tとした場合であり、凝固完了位置の突出量は4.7mとなり、試験水準B−1に比較して突出量が少なくなった。そして、鋳片幅方向の全域で横波電磁超音波の透過が認められたことから、凝固完了位置は軽圧下帯を逸脱せず、鋳片幅全域に亘って有効な圧下力が作用したことが分かった。試験水準B−3は、磁束密度を更に増加して0.08Tとした場合であり、凝固完了位置の突出量は1.9mであり、更に少なくなった。
【0047】
以上の結果から、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に対して制動力が加わるように移動磁場を印加することで、凝固完了位置を鋳片幅方向で平坦化することが可能であることが分かった。
【0048】
凝固完了位置の鋳片幅制御による中心偏析の低減効果を確認するため、水準B−1及び水準B−3の鋳造条件で鋳造した鋳片を厚鋼板に圧延し、厚鋼板を超音波探傷試験して超音波探傷試験の合格率を移動磁場印加の有無で比較調査した。一般に、鋳片の中心偏析が悪化すると、厚鋼板の超音波探傷試験で不合格となる頻度が高くなることが知られている。表4に超音波探傷試験の結果を示す。
【0049】
【表4】
【0050】
表4に示すように、移動磁場を印加して鋳片幅方向の凝固完了位置を平坦化した鋳片の方が、超音波探傷試験の合格率が格段に高く、本発明方法によって鋳片の中心偏析が低減されることが確認できた。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、鋳片引き抜き速度の広い範囲において、鋳片幅方向の凝固完了位置の形状を平坦化しながら鋳造することができ、その結果、鋳片の中心偏析の低減、並びに、鋳片引き抜き速度上限値までの増速による生産性の向上等が可能となり、工業上有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施したスラブ連続鋳造機の概略図である。
【図2】図1に示すスラブ連続鋳造機の鋳型部位の概略斜視図である。
【図3】図1に示すスラブ連続鋳造機の鋳型部位の概略正面図である。
【図4】溶鋼吐出流に制動力を与えるべく移動磁場を印加する場合の磁場印加方法を模式的に示す図である。
【図5】溶鋼吐出流に加速力を与えるべく移動磁場を印加する場合の磁場印加方法を模式的に示す図である。
【図6】水準Aの試験鋳造における凝固完了位置の鋳片幅方向形状を示す図である。
【図7】水準Bの試験鋳造における凝固完了位置の鋳片幅方向形状を示す図である。
【符号の説明】
1 連続鋳造機
2 鋳型
5 タンディッシュ
6 浸漬ノズル
7 鋳片支持ロール
8 搬送ロール
9 ガス切断機
10 二次冷却帯
15 軽圧下帯
16 送信用センサー
17 受信用センサー
20 移動磁場発生装置
26 溶鋼
27 凝固シェル
28 溶鋼湯面
29 未凝固層
30 鋳片
31 溶鋼吐出流
32 凝固完了位置
Claims (5)
- 連続鋳造機で溶鋼を連続鋳造する際に、凝固状態判定装置を用いて鋳片の凝固完了位置の幅方向形状を求め、当該形状に基づき、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に対する、鋳型の長辺に沿って鋳型の短辺側から浸漬ノズル側へ向かって水平方向に磁界を移動させることによって発生する制動力を調整し、鋳片の凝固完了位置の幅方向形状を所定の形状に制御することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
- 連続鋳造機で溶鋼を連続鋳造する際に、鋳片を挟んで送信用センサー及び受信用センサーを配置し、送信用センサー及び受信用センサーを鋳片幅方向に走査しながら送信用センサーから電磁超音波の横波を鋳片の厚み方向に送信し、受信用センサーにおける前記横波の透過波の有無又は透過波の伝播時間に基づいて鋳片の凝固完了位置の幅方向形状を求め、当該形状に基づき、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に対する、鋳型の長辺に沿って鋳型の短辺側から浸漬ノズル側へ向かって水平方向に磁界を移動させることによって発生する制動力を調整し、鋳片の凝固完了位置の幅方向形状を所定の形状に制御することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
- 透過波の伝播時間から鋳片の平均温度を求め、求めた平均温度から凝固完了位置を推定することを特徴とする、請求項2に記載の鋼の連続鋳造方法。
- 前記送信用センサー及び受信用センサーは、鋳片を挟んでそれぞれ1個のみ配置されていることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の鋼の連続鋳造方法。
- 前記連続鋳造機には鋳片を軽圧下するための軽圧下帯が備えられており、鋳片の凝固完了位置を軽圧下帯の範囲内に制御して鋳片の中心偏析を低減することを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載の鋼の連続鋳造方法。
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