JP2004350570A - 麦汁およびモルトエキス、それらの製造方法ならびにそれを含む非アルコール性飲食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】可溶性固形分100g当りギャバを90mg以上含有することを特徴とする麦汁および可溶性固形分100g当りギャバを90mg以上含有することを特徴とする麦芽エキス(モルトエキス)、それらの製造方法ならびにそれを含む非アルコール性飲食品。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、それを飲むことにより高血圧症や血圧低下症の改善、鬱状態などの神経障害の改善などが期待できる、ギャバを高濃度で含む麦汁およびモルトエキス、それらの製造方法ならびにそれを含む非アルコール性飲食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ギャバ(GABA、すなわちガンマアミノ酪酸)は自然界に広く分布しているアミノ酸の一種で分子式はNH2CH2CH2CH2COOHである。生体内において、抑制系の神経伝達物質として作用することが知られている。また、血圧降下作用、精神安定作用、腎、肝機能改善作用、アルコール代謝促進作用などが知られている。しかし、胚芽米や緑茶など植物由来の食品に含まれる量は少なく、薬理作用を発揮するのに必要な量(30mg以上)を通常の食品から摂取するのは困難である。そこで、医薬品としてギャバの合成品を、脳の血流改善作用を基に、脳卒中等の後遺症改善薬として経口投与されている。また、健康食品では、米が発芽するときに、胚芽中でギャバが産出されるので、発芽玄米が売られている。この場合、茶碗一杯の量である80g摂取するとギャバが10mg程度とれるといわれている。また嫌気状態で緑茶のギャバ量を増やしたギャバロン茶というお茶があるが、ギャバ量は少ない。最近、グルタミン酸を乳酸菌の作用や米胚芽中の酵素の作用でギャバに変換した、高ギャバエキス(ギャバ含量2〜5%)が開発された。本発明者らによれば、ギャバを食品として高血圧や鬱的精神状態の改善に使う場合の推奨使用量は、1日あたり30mg以上、好ましくは50mg以上、とくに好ましくは100mg以上と考えられる。なお、ギャバは多く摂っても、余剰分は尿とともに体外に排出され過剰症はなく無害である。
【0003】
精神的、肉体的健康を保持するためには、ギャバを食品として日常的に摂取すると効果的であるが、現時点では特定の薬品や健康食品を買い求めて、それからギャバを意識的に摂取する必要がある。
【0004】
特許文献1によれば、発芽させた玄米に麹菌、酒酵母菌を混ぜ、これを発酵させたガンマアミノ酸含有健康酒が提案されている。しかし、この公報記載の内容は、実質的に単なるアイディアを開示するにとどまり、具体的内容は記載されていないに等しい。一般に発芽玄米中に含まれているギャバ含有量は12mg/100g程度であるから、発芽玄米を50g使用し、アルコール濃度15%の酒100mlを作ったとしてもそのギャバ含有量は6mg/100mlであり、薬理作用を充分期待できる量をそれから摂取しようと思えば、最低でも約500mlも飲まなければならない。
【0005】
特許文献2には、カボチャ粉砕溶液にグルタミン酸を、該溶液のpHが5.0〜6.5、好ましくは5.6〜6.0の範囲になる所定量加え、その加えたグルタミン酸をカボチャに存在する酵素によりγ−アミノ酪酸(ギャバ)に変換する操作を、複数回繰り返し行う方法が開示されている。
【0006】
本出願人は、先に特許文献3において、ギャバ60mgを含む清涼飲料50mlにアルコール濃度25%の焼酎20mlを加えた高ギャバ含有アルコール飲料を開示している。この発明により、はじめてギャバ含有量の高いアルコール飲料が提案されているが、麦汁中のギャバ含有量を高くしようという課題は誰からも未だ提案されていない。本発明の課題は、広く一般食品(清涼飲料を含む)に利用できる高ギャバ含有麦汁およびそれを濃縮した麦芽エキス(モルトエキス)を提供しようというものである。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−231501号公報
【特許文献2】
特開2001−252091号公報
【特許文献3】
特願2002−368986号
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ギャバ含有量が極めて高い麦汁およびモルトエキス、それらの製造方法ならびにそれを含む非アルコール性飲食品を提供する点にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、可溶性固形分100g当りギャバを90mg以上含有することを特徴とする麦汁に関する。
本発明の第2は、可溶性固形分100g当りギャバを90mg以上含有することを特徴とする麦芽エキス(モルトエキス)に関する。
本発明の第3は、可溶性固形分100g当りギャバを100mg以上含有することを特徴とする麦汁に関する。
本発明の第4は、可溶性固形分100g当りギャバを100mg以上含有することを特徴とする麦芽エキス(モルトエキス)に関する。
本発明の第5は、麦汁を製造する方法(例えば、1996年9月30日 株式会社 養賢堂発行、大塚謙一編著「醸造学」第77〜第86頁、麦汁製造の項)において、系中におけるグルタミン酸類の存在量に対してギャバの存在量が2倍(重量基準で)以上になるまで仕込み工程を行うことを特徴とする高ギャバ含有麦汁の製造方法に関する。
本発明の第6は、麦汁を製造する方法において、仕込み工程の開始前および/または仕込み工程中に、グルタミン酸類を添加することを特徴とする高ギャバ含有麦汁の製造方法に関する。
本発明の第7は、前記仕込み工程の開始前および/または仕込み工程中に、ビタミンB6を添加する請求項5または6いずれか記載の高ギャバ含有麦汁の製造方法に関する。
本発明の第8は、前記麦芽がジアスターゼ力(酵素力)が300以上の麦芽である請求項5または6いずれか記載の高ギャバ含有麦汁の製造方法に関する。
本発明の第9は、麦汁を製造する方法において、仕込み工程の開始前および/または仕込み工程中に、グルタミン酸デカルボキシラーゼを添加することを特徴とする高ギャバ含有麦汁の製造方法に関する。
本発明の第10は、麦汁を製造する方法において、仕込み工程の開始前および/または仕込み工程中に、とうもろこしタンパク質分解物および/または小麦タンパク質分解物を添加することを特徴とする高ギャバ含有麦汁の製造方法に関する。
本発明の第11は、請求項5〜10いずれか記載の製造方法により得られた麦汁をさらに濃縮することを特徴とする高ギャバ含有麦芽エキス(モルトエキス)の製造方法に関する。
本発明の第12は、請求項1〜4いずれか記載の麦汁または麦芽エキスを含有する非アルコール性飲食品に関する。
本発明の第13は、非アルコール性飲食品が、嗜好飲料である請求項12記載の非アルコール性飲食品に関する。
本発明の第14は、非アルコール性飲食品が、清涼飲料である請求項12記載の非アルコール性飲食品に関する。
本発明の第15は、非アルコール性飲食品が、液状甘味料である請求項12記載の非アルコール性飲食品に関する。
本発明の第16は、非アルコール性飲食品が、固形食品である請求項12記載の非アルコール性飲食品に関する。
なお、前記麦汁とは、麦芽を原料として仕込み工程によって得られた生成物を濾過して得られた液体であり、発酵前の麦汁のBrixは通常11程度である(1996年9月30日 株式会社 養賢堂発行、大塚謙一編著「醸造学」第77〜第86頁、麦汁製造の項参照)。麦芽エキス(モルトエキス)とは、麦汁を濃縮して通常Brix80程度の液糖状にしたもので、甘味料などに用いられる。ヨーロッパではモルトビバレッジと呼ばれる麦芽エキス(モルトエキス)を炭酸水で希釈した飲料が広く飲まれており、麦芽エキス(モルトエキス)を粉末化して、これに乳成分などをブレンドした粉末飲料はミロとして有名である。日本では、麦芽エキス(モルトエキス)は麦芽あめ、麦芽糖などとして菓子の原料などに古くから用いられている。麦芽エキス(モルトエキス)の主成分は、麦芽糖であるが、麦芽由来のビタミン、アミノ酸などの各種栄養成分が豊富に含まれた健康食品である。
また、グルタミン酸類とは、グルタミン酸やグルタミン酸塩(例えばグルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウムなど)を指すものである。
【0010】
本発明の高ギャバ含有麦汁やモルトエキスを製造するための原料としては、大麦を発芽させて得られた麦芽であるが、これのみでは得られた麦汁やモルトエキスのギャバ含有量が不足する場合には、麦芽や米胚芽を酵素処理してギャバ含有量を高めたエキスを発酵用原料に配合したり、麦汁を乳酸発酵したものを発酵用原料に配合したり、あるいはアミノ酸類とくにグルタミン酸類を発酵用原料に配合したりすることにより、ギャバ含有量を増強することができる。また、グルタミン酸類の添加と同様の要領により系にビタミンB6を添加することによりギャバ生成速度を2割ほど高めることにより、結果的にギャバ生成量を向上することができる。さらに、必要に応じて化学合成法により得られたギャバあるいは天然ギャバ含有物を濃縮精製したギャバを麦汁やモルトエキスに配合してもよい。これらの補強手段は、単独でもよいが併用することもできる。なお、前記アミノ酸類は、発酵に用いられる乳酸菌や米胚芽または麦芽中の酵素デカルボキシラーゼの作用によりギャバに変換される。
【0011】
高ギャバ含有麦汁またはモルトエキスを製造しようとする場合には、タンパク含有量とくにグルタミン酸類含有量の高い大麦を用いた麦芽を原料とすることが好ましい。必要に応じて、小麦を併用すると一層ギャバ含有量を高めることができる(小麦は大麦に較べてグルタミン酸含有量が多い)。タンパク含有量の1つの指標であるトータル窒素量は、麦芽では8〜14%であるから、この上限部分の麦芽を選択使用することが好ましい。また、トータル窒素の高い麦芽のなかでもアミノ酸類等の水溶性窒素化合物の割合の高い麦芽は好ましい。アミノ酸類等の水溶性窒素化合物は通常の麦芽では0.6〜0.8重量%程度しか含まれていないが、発芽を良くするなど麦芽製造工程を工夫し、充分な発芽期間や嫌気処理などをして、これを1重量%程度に高めたものを原料とすることが好ましい。
【0012】
発芽玄米も高ギャバ麦汁やモルトエキスの原料として有効なものの1つである。ただ、麦芽中のギャバが麦芽16g当り10mg程度であるのに対し、発芽玄米は、発芽玄米80g当り10mgと麦芽中の含有量に対し20%程度しか含まれていないため、ギャバの含有量を高めるためだけを考えれば麦芽を使用する方が有利ではあるが、発芽玄米には、ギャバ以外に美白効果があるフィチン酸や、抗酸化作用のあるフェルラ酸などが含まれているので、このような効果を期待して麦芽と発芽玄米を原料として併用することもできる。
【0013】
麦汁やモルトエキス中のギャバ含有量を高める方法の1つとして米胚芽や酵素処理した米胚芽を麦汁などの原料に配合することもできる。例えばオリザ油化製の商品名オリザギャバエキスは、酵素処理した米胚芽から抽出したギャバエキスであって、このギャバ含有量は700mg/100ml程度であるので、これを麦汁100ml当たり1ml加えることにより、麦汁中のギャバ含有量を7mg/100ml増加させることができる。
【0014】
また、麦汁やモルトエキス中のギャバ含有量を高める方法の1つとして、酵素処理した米胚芽由来のギャバや酵素処理したアミノ酸由来のギャバを麦汁やモルトエキスやその原料に配合することもできる。例えば、オリザ油化製の商品名オリザギャバエキスHC5は、グルタミン酸を米胚芽中のギャバ変換酵素でギャバに変換したエキス(ギャバ含有量5重量%)でこれを麦汁に0.2重量%添加することもできる。
【0015】
麦汁やモルトエキス中のギャバ含有量を高める方法の他の1つとして、(i)乳製品または乳製品に植物成分を添加したもの、および(ii)グルタミン酸(たとえばL−グルタミン酸)またはそのナトリウム塩もしくはこれらの少なくとも1種を含有する食品、との混合物よりなる発酵培地を乳酸菌により発酵させて得られる発酵培養物をアルコール飲料やその原料に配合する方法がある。例えば、太洋香料製の商品名ギャバラクトC−24(ギャバ含有量2重量%)を麦汁に0.5重量%添加することもできる。
【0016】
麦汁やモルトエキス中のギャバ含有量を高める方法の他の1つとして、乳酸発酵した麦汁由来のギャバを原料に配合することもできる。例えば麦汁100ml当たり、グルタミン酸1gを含む麦汁に乳酸菌(Lactobacillus brevis、Lactobacillus leichmannii、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacilluscasei、Lactobacillus bulgalicus、Lactobacillus lactisなど)を添加し、20℃で6時間乳酸発酵させるとグルタミン酸が乳酸菌の出す酵素のデカルボキシラーゼによりギャバに変換され、100ml当たり500mgのギャバを含有する発酵麦汁が得られる。これを通常の麦汁に任意割合添加することにより、麦汁やモルトエキス中のギャバ含有量を増加させることができる。また同時に乳酸発酵により生じる乳酸により別の風味を与えることもできる。
【0017】
前記植物成分としては、豆(豆乳などの形で利用)、人参、ピーマン、カボチャ、セロリ、ほうれん草、小松菜、キャベツ、トマト、さつまいも、じゃがいもなどがある。
【0018】
ギャバは麦には、殆ど含まれていないが、麦芽製造工程中に発生する。麦が発芽することにより、麦芽中のプロテアーゼが、タンパク分解を始め、グルタミン酸を発生させる。発生したグルタミン酸の一部はグルタミン酸デカルボキシラーゼの働きにより、ギャバに変換される。約7日間の製麦工程の最後に焙燥を行うが、この工程ではギャバは消失しない。(なお、焙燥とは、焙煎ほど高温ではない温度で乾燥することをいう。例えば、麦を焙煎すると香ばしい香りをもつ麦茶になるが、麦芽をそれより低い温度条件の焙燥処理をすると、ギャバは消失せず、酵素も失活しない。)麦汁製造工程においては、この麦芽を粉砕し、湯抽出を行う。試験で確認したところ、湯抽出により、出来た麦芽100%の麦汁中のギャバは可溶性固形分100g当り、66mgであった。これを1時間50℃におき、タンパク分解をさらにすすめたところ、可溶性固形分100g当りのギャバは75mgまで上昇した。これは、麦汁製造工程中において、グルタミン酸をギャバに変換する酵素であるグルタミン酸デカルボキシラーゼが働いていることを示す新たな知見である。これを応用したのが本発明である。グルタミン酸を麦汁当り40mg/100ml添加することにより、麦汁の可溶性固形分100g当りのギャバは137mgに増大した。グルタミン酸またはグルタミン酸Naなどのグルタミン酸類の添加量が多い程、また酵素反応時間が長い程、ギャバの生成量は増大する。また、この反応において、補酵素の役割を果たす、ビタミンB6を0.2mg/100ml程度加えることにより、ギャバの生成速度は2割程度早くなる。このようにして作った高ギャバ麦汁を80Brix程度まで濃縮することにより、高ギャバモルトエキスができる。可溶性固形分100g当り160mgのギャバを含む、通常の2倍量のギャバを含むモルトエキスが出来る。ギャバは10mg〜30mg程度でも効果を発揮すると言われているので、このモルトエキスを6〜19g含む食品は、高血圧症改善、鬱状態改善などに効果が期待できる。また、モルトエキスの主成分は吸収の良い、マルトースであり、各種ビタミン、アミノ酸が豊富であり、味が良く、疲労回復や栄養補給に最適である。
【0019】
高ギャバ麦汁をつくり、それを用いて高ギャバモルトエキスをつくることが出来ればこれを甘味料(麦芽糖)として用いて、様々な高ギャバ非アルコール性の飲食品の製造が可能となる。
【0020】
この種の非アルコール性飲食品としては、嗜好飲料、清涼飲料、粉末飲料(粉末を水にとかして飲むタイプのもので、得られる飲料は、嗜好飲料であったり、清涼飲料であったりする)、液状甘味料、固形食品などがある。嗜好飲料としては、コーヒー、紅茶、ココア、乳飲料、茶(日本茶、ウーロン茶など)、飲料水などがある。清涼飲料としては、炭酸飲料や酸性飲料などがある。炭酸飲料としては、たとえばコーラ飲料などの無果実炭酸飲料や、果実入り炭酸飲料などがある。酸性飲料としては、果実飲料やスポーツ飲料などの無果汁酸性飲料などがある。液状甘味料としては、はちみつ、麦芽あめなどのあめ類、メープルシロップなどのシロップ類などがあり、固形食品としては、パン、ケーキ、まんじゅう、せんべい、クッキー、コロッケなどを挙げることができる。本発明の麦汁や麦芽エキスをこれらに配合することにより高ギャバの飲食品を提供できる。
【0021】
本発明に用いる麦芽は、ジアスターゼ力が300以上の麦芽であることが好ましい。現在市販されている麦芽で通常入手し得るもっとも高いジアスターゼ力をもつものは、ジアスターゼ力が350のものであるが、本発明はこれに限らず、もっと高いジアスターゼ力をもつものであってもよい。ジアスターゼ力は、でんぷんを糖に変える酵素の能力の高さを示すものであり、グルタミン酸をギャバに変える能力そのものを指すものではないが、ジアスターゼ力が250といったジアスターゼ力の低い麦芽ではグルタミン酸をギャバに変える力が弱く、研究の結果、ジアスターゼ力が300より高い麦芽を用いるとグルタミン酸をギャバに変える能力が高いことが判ってきたのである。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0023】
ギャバ含有量の高い麦芽エキスを得るために、以下の麦芽100%よりなる麦芽エキスの製造を行った。
すなわち、粉砕したいろいろの麦芽原料に温水を加え、50℃で1〜2時間保持し、蛋白分解工程を経た後、65℃に昇温して糖化を行い、さらに75℃に昇温し、すべての酵素を失活させ24BRIXの麦汁を得た。その後煮沸し、減圧蒸留して70BRIXの麦芽エキスを得た。
前記麦芽原料としては、(A)ジアスターゼ力が250の麦芽、(B)ジアスターゼ力が350の麦芽、(C)前記(B)の麦芽にグルタミン酸40mg/100mlを添加したもの、(D)前記(B)の麦芽にビタミンB60.2mg/100mlを添加したもの、をそれぞれ用いた。
以下の表は、50℃で1時間保持したときの可溶性固形分100g当りのギャバ量(mg)、50℃で2時間保持したときの可溶性固形分100g当りのギャバ量(mg)を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
この試験から、
(1)ジアスターゼ力が350という高い麦芽を用いた場合には、通常の麦芽エキスの上限であるギャバ含量80mg/可溶性固形分100gを超える、高ギャバ含有麦芽エキスが得られる。
(2)50℃の蛋白分解工程を通常の時間の2倍に当る2時間行うと、更に高ギャバの麦芽エキスを得ることができる。
なお、表1の(B)のケースでは、この時のグルタミン酸量は、1時間の時点で、45mg/可溶性固形分100g、2時間の時点で37mg/可溶性固形分100gとなり、50℃の蛋白分解工程を通常の2倍の時間に当る2時間行うと、ギャバ含量はグルタミン酸含量の2.4倍(90÷37≒2.4)と2倍を超えることが分かる。
(3)グルタミン酸を添加すると、ギャバ含量が飛躍的に増えることがわかる。麦汁仕込み工程で、ギャバ変換酵素が働いていることがわかる、新知見である。
(4)ギャバ変換酵素であって、グルタミン酸デカルボキシラーゼの補酵素でもある、ビタミンB6を添加すると、ギャバ生成量は高まる。
【0026】
応用例1
190gの缶ミルクコーヒーの甘味料として、高ギャバモルトエキス(ギャバ含量160mg/100g)を19g使用する。一缶当りのギャバ含量は30.4mgとなる。コーヒーのリラックス効果とギャバの精神安定効果の相乗効果で、やすらぎ感の強い、精神的疲労を回復するプレミアムコーヒーが出来る。コーヒーの代わりにカフェインの少ないココアを用いることにより、ギャバの心を落ち着かせる効果により、安眠飲料ともなる。
【0027】
応用例2
高ギャバモルトエキス(ギャバ含量160mg/100g)を甘味料として16%含む120mlびんの炭酸入り栄養ドリンクを作った。一瓶当りのギャバ含量は、30mgである。このドリンクにはモルトエキス由来の各種ビタミン、アミノ酸が豊富に含まれ、天然素材からなる、肉体疲労、精神疲労回復に適した、健康飲料である。
【0028】
応用例3
高ギャバモルトエキス(ギャバ含量300mg/100g)をチューブに300g充填し、パンにつけて食べたり、コーヒー、紅茶の甘味料として、家庭で日常的に使用できるようにする。一日に4〜10g程度摂取することにより、日常生活のストレスに負けないやすらかな気持ちを維持でき、高血圧症の改善にも効果が期待できる。
【0029】
【発明の効果】
味も良く、栄養価も高い、伝統的自然甘味料である、モルトエキスにおける健康成分ギャバ含量を高めることができた。これにより、モルトエキスを用いた様々な高ギャバ食品が出来、おいしく摂取することにより、肉体的、精神的な健康を維持する助けとなる。
Claims (16)
- 可溶性固形分100g当りギャバを90mg以上含有することを特徴とする麦汁。
- 可溶性固形分100g当りギャバを90mg以上含有することを特徴とする麦芽エキス(モルトエキス)。
- 可溶性固形分100g当りギャバを100mg以上含有することを特徴とする麦汁。
- 可溶性固形分100g当りギャバを100mg以上含有することを特徴とする麦芽エキス(モルトエキス)。
- 麦汁を製造する方法において、系中におけるグルタミン酸類の存在量に対してギャバの存在量が2倍(重量基準で)以上になるまで仕込み工程を行うことを特徴とする高ギャバ含有麦汁の製造方法。
- 麦汁を製造する方法において、仕込み工程の開始前および/または仕込み工程中に、グルタミン酸類を添加することを特徴とする高ギャバ含有麦汁の製造方法。
- 前記仕込み工程の開始前および/または仕込み工程中に、ビタミンB6を添加する請求項5または6いずれか記載の高ギャバ含有麦汁の製造方法。
- 前記麦芽がジアスターゼ力(酵素力)が300以上の麦芽である請求項5または6いずれか記載の高ギャバ含有麦汁の製造方法。
- 麦汁を製造する方法において、仕込み工程の開始前および/または仕込み工程中に、グルタミン酸デカルボキシラーゼを添加することを特徴とする高ギャバ含有麦汁の製造方法。
- 麦汁を製造する方法において、仕込み工程の開始前および/または仕込み工程中に、とうもろこしタンパク質分解物および/または小麦タンパク質分解物を添加することを特徴とする高ギャバ含有麦汁の製造方法。
- 請求項5〜10いずれか記載の製造方法により得られた麦汁をさらに濃縮することを特徴とする高ギャバ含有麦芽エキス(モルトエキス)の製造方法。
- 請求項1〜4いずれか記載の麦汁または麦芽エキスを含有する非アルコール性飲食品。
- 非アルコール性飲食品が、嗜好飲料である請求項12記載の非アルコール性飲食品。
- 非アルコール性飲食品が、清涼飲料である請求項12記載の非アルコール性飲食品。
- 非アルコール性飲食品が、液状甘味料である請求項12記載の非アルコール性飲食品。
- 非アルコール性飲食品が、固形食品である請求項12記載の非アルコール性飲食品。
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