JP4968869B2 - γ−アミノ酪酸の製造方法 - Google Patents

γ−アミノ酪酸の製造方法

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、γ−アミノ酪酸の製造方法、γ−アミノ酪酸を含有する食品又は飼料の製造方法、及びこの方法により得られる食品又は飼料に関する。
【0002】
【従来の技術】
蒸留酒及びアルコール製造過程の発酵醪を蒸留することにより副生するアルコール製造廃液は現在、家畜の飼料及び農地還元にその一部が使用されているが、その使用量も年々減少し、大部分は海洋に投棄されている。しかし、海洋投棄はロンドン条約の批准及び地球環境の保護の点から次第に困難になりつつある。アルコール製造廃液は排水処理に関する法律に基づいて処理しなければならないが、生物学的酸素要求量(BOD)が、米焼酎廃液で55,000〜68,000ppmと非常に高濃度である。アルコール製造廃液の処理方法としては、固液分離後、固形部分は濃縮及び/又は乾燥して焼却する方法、並びに液体部分は活性汚泥法、メタン発酵法、酵母処理法、又はこれらを組合せた方法を用いて微生物処理を行う方法等を挙げることができる。しかし、これらの方法を実施するにはいずれにおいても非常に大きな設備を必要とする欠点を有する。更に、糖蜜系の廃液においては、廃液中のメラノイジンを微生物処理により分解することが非常に困難であるという欠点も有する。
【0003】
アルコール製造廃液は穀類の分解物等からなる安全な素材なので、資源の再利用化による地球環境の保持の観点から有効利用することが多数試みられており、飼料、肥料、及び食品等への利用法が提案されている。例えば、肥料及び防虫剤への利用法、並びに食品への利用法が、それぞれ特開平5−168455号公報、及び特開昭63−258555号公報に開示されている。また、近年の健康食品ブームにより、アルコール製造廃液から機能性因子及び/又は機能性物質を単離する試みも行われている。これは乙類焼酎製造により副生するアルコール製造廃液について特によく行われており、豊富に含まれるクエン酸等の有機酸の健康食品への利用、抗酸化性、成長促進因子、α−トコフェロール、腸内細菌成長因子、抗脂肪肝作用、及び初代培養筋肉細胞成長促進等の生理活性物質の存在が報告されている〔化学と生物、第36巻、第2号、81〜82頁(1998年)〕。
【0004】
機能性物質の一つにγ−アミノ酪酸があり、これはグルタミン酸脱炭酸酵素の作用によりグルタミン酸から生成される。グルタミン酸脱炭酸酵素は微生物、植物、及び動物等に広く分布しており、哺乳動物では抑制性神経伝達との関連が示唆されている。γ−アミノ酪酸の機能としては、血圧降下作用、アルコール代謝促進作用、脳代謝促進作用、及び肥満防止作用が知られており、植物及び微生物由来のグルタミン酸脱炭酸酵素を作用させることにより得られるγ一アミノ酪酸高含有の様々な食品及びその製造方法が提案されている。
【0005】
植物由来のグルタミン酸脱炭酸酵素を作用させる方法として、未熟トマト、カボチャ、ニンジンの皮及びダイコンの磨砕物等を用いる方法が特開平3−224467号公報及び特開平3−244366号公報に開示されている。麹菌由来のものについては特開平11−103825号公報に、乳酸菌由来のものについては特開2000−14356号公報及び特開2000−210075号公報に開示されている。
【0006】
γ−アミノ酪酸を高生産する微生物の探索も行われており、最近ではグルタミン酸ナトリウムを添加した合成培地に乳酸菌を培養して3%以上生成させることができることが報告されている(日本農芸化学会誌、第75巻、臨時増刊号、第271頁・平成13年3月5日発行)。また、蒸煮大豆にリゾプス(Rhizopus)属に属するかびを用いて発酵後に嫌気処理することにより乾物100g当り1,000mg以上のγ−アミノ酪酸を含む大豆発酵物が得られたことが報告されている(日本農芸化学会誌、第75巻、臨時増刊号、第269頁、平成13年3月5日発行)。
【0007】
しかしながら、アルコール製造廃液からγ−アミノ酪酸を生成させる従来技術は現在まで見られない。また、天然物原料のみから得られるγ−アミノ酪酸を高含有する食品及び飼料の開発が求められていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アルコール発酵により得られる物、又はその後処理物から選択した原料に乳酸菌を作用させることにより機能性物質であるγ−アミノ酪酸を製造する方法、該方法を製造工程に包含する食品又は飼料の製造方法、及びγ−アミノ酪酸を含有する食品又は飼料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すると、第1の発明は発酵法によるアルコール製造廃物である蒸留酒の製造により副生する残渣を原料に、γ−アミノ酪酸生成能を有するラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)に属する乳酸菌を該原料1m1当り1×10〜2×10個作用させ、pHを4〜6に調整して、30〜37℃で1時間〜10日間培養することを特徴とするγ−アミノ酪酸の製造方法に関し、第2の発明は第1の発明を製造工程に包含する食品又は飼料の製造方法に関する。
【0010】
本発明者らは、天然物原料を用いてアルコール発酵により得られる物、又は
その後処理物より選択した原料(これらを総称する場合には、以下、アルコール発酵物等と略記する)に、微生物を作用させて有効利用する方法において鋭意検討を行った。その結果、アルコール発酵物等にγ−アミノ酪酸生成能を有する乳酸菌を作用させることにより、機能性物質であるγ−アミノ酪酸を多量に生産できること、更にアルコール発酵物等に30w/v%以下の範囲でL−グルタミン酸及び/又はその塩を添加することにより乳酸菌の生育阻害を起こさず、より高濃度のγ−アミノ酪酸を生産することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について具体的に説明する。
本発明で用いるアルコール発酵により得られる物とは、穀類及び/又は糖類等を少なくとも原料の一部としてアルコール発酵させて得られる物であれば特に限定はなく、液状の物、固形状の物であってもよい。例えば、液状の物として、醪を挙げることができる。また、その後処理物とは、アルコール発酵以降の工程により得られる物であれば特に限定はない。その例としては、醪を固液分離することにより得られる液部、このときに副生する残渣、並びに醪を蒸留することにより副生する残渣を挙げることができる。これらの中で醪を固液分離することにより、又は醪を蒸留することにより副生する残渣(これらを総称する場合には、以下、アルコール製造廃物と略記する)を用いるのが好ましい。アルコール製造廃物には、乙類焼酎、甲類焼酎、泡盛、白酒、ウォッカ、ブランデー、ウィスキー、ラム酒、及びジン等の蒸留酒の製造により副生する残渣、廃糖蜜、トウモロコシ等の原料から発酵法によって工業用アルコール製造を行う際に生じる蒸留後の残渣、並びに清酒、ビール、ワイン等の醸造酒及びみりんの製造により副生する残渣等を示す。これらの中で蒸留酒の製造により副生する残渣を用いるのがより好ましく、米焼酎、麦焼酎、芋焼酎、蕎麦焼酎、黒糖焼酎、及び泡盛等の焼酎の製造により副生する残渣が特に好適である。
【0012】
アルコール製造廃物は、固液分離を行わなくても用いることができるが、固形分を除去した上清、及び固液分離後の固形分を水に懸濁したものも用いることができ、更にこれらの濃縮液を用いることもできる。醸造酒及びみりんの製造により生じる残渣はそのままでも用いることができるが、アルコール分を含み、且つ固形分の割合の高いものが多いので、水に懸濁したもの、これを固液分離することにより得られる上清、又はこれらに含有するアルコールを除去したものを用いることが好ましい。懸濁、固液分離、及びアルコール除去は常法に従って行えばよい。これらが、本発明における後処理物の例である。
【0013】
前述のアルコール発酵物等にγ−アミノ酪酸生成能を有する乳酸菌を作用させてγ−アミノ酪酸を製造することができる。本発明で用いる乳酸菌はγ−アミノ酪酸生成能を有するものであれば特に限定はないが、例としてラクトバチルス(Lactobacillus、以下、L.と略記する)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属等に属するものを挙げることができる。これらの中でもラクトバチルス属に属するものが好ましく、この例として、ラクトバチルス ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス ブルガリカス(L.bulgaricus)、ラクトバチルス デルブリッキ(L.delbrueckii)、ラクトバチルス レイヒマニー(L.leichmannii)、ラクトバチルス プランタラム(L.plantarum)、ラクトバチルス ラクティス(L.lactis)、ラクトバチルス ヘルベティカス(L.helveticus)、ラクトバチルス アシドフィラス(L.acidophilus)、ラクトバチルス カゼイ(L.casei)、及びラクトバチルス ファーメンタム(L.fermentum)等を挙げることができる。これらの中で特にラクトバチルス ブレビスに属するものが好ましく、この例として、ラクトバチルス ブレビスIFO−12005、ラクトバチルス ブレビスIFO−3345、ラクトバチルス ブレビスIFO−3960、及びラクトバチルス ブレビスIFO−12520等を挙げることができる。
【0014】
乳酸菌はあらかじめ前培養したものを用いるのが好ましい。前培養は乳酸菌が増殖できる培地であれば特に限定はないが、その例として、グルコース、ペプトン、及び酵母エキスをそれぞれ1w/v%含有し、pHを5.0に調整した培地を挙げることができる。また、アルコール発酵物等を培地として用いてもよい。
これらの培地にはグルタミン酸及び/又はその塩を添加して前培養を行うことが好ましい。前培養した乳酸菌懸濁液はそのまま作用させることができるが、作用させる前に前処理を行ってもよい。該前処理方法としては、集菌、洗浄、水等に懸濁、担体結合法若しくは架橋法等による固定化、又はこれらを組合せた方法がある。これらの方法は常法に従って行えばよい。
【0015】
アルコール発酵物等にグルタミン酸及び/又はその塩を添加して乳酸菌を作用させてもよい。基質の含量を増加させることによりより多くのγ−アミノ酪酸を生成させることができる。添加量は特に制限はないが、30w/v%以下が好ましく、0.0超〜10w/v%がより好ましい。30w/v%より高いと乳酸菌の生育が阻害される。添加する方法は一度に全量添加する方法、又は複数回に分けて添加する方法のどちらでもよい。前者では溶解度以上に添加しても乳酸菌の作用を阻害せず、後者における1回当りの添加量は適宜選択すればよい。添加する時期は乳酸菌を作用させる前、又は作用させている間のどちらでもよい。更に、アルコール発酵物等に窒素源、無機塩、及び/又はビタミン類等を添加してもよい。これらの添加により乳酸菌の作用を更に高めることができる。アルコール発酵物等を液状とする場合には、pHは3〜7、好ましくは4〜6に調整する。pHが3未満又は7より大きいと乳酸菌中のグルタミン酸脱炭酸酵素活性が阻害され、所望のγ−アミノ酪酸生成量に到達することができない。前述のように調製したアルコール発酵物等は滅菌処理を行うのが好ましい。滅菌処理方法については特に限定はないが、その例として、低温保持殺菌法、高温保持殺菌法、及び高温高圧滅菌法等を挙げることができる。
【0016】
アルコール発酵物等に乳酸菌を作用させる菌数は特に制限はないが、作用させる菌数が少ないと乳酸菌の増殖に時間を要するために雑菌汚染が起こりやすくなり、菌数が多いと前培養に手間がかかり、要する費用も高くなる。このため、アルコール発酵物等の1m1当り乳酸菌を1×105〜2×109個作用させることが好ましい。作用させる方法としては、通気、かくはん、静置、若しくはこれらの組合せ等により作用させるバッチ法、又は前述のような固定化処理を行った乳酸菌をカラム等に充填して作用させる連続法等により実施すればよく、作用させる温度は20〜45℃、好ましくは30〜37℃で、時間は1時間〜10日間で適宜選択すればよい。乳酸菌を作用させているときに起こるpHの変化に対しては酸又はアルカリでpH調整を行ってもよく、pHの測定及び調整は常法に従って行えばよい。
【0017】
アルコール発酵物等中のグルタミン酸及びγ−アミノ酪酸の測定は、以下のようにして行うことができる。
まず、測定試料に等量の3%スルホサリチル酸を加えて生じた沈殿を除去後、pH2.2のクエン酸緩衝液で希釈してアミノ酸自動分析装置L−8500A〔(株)日立製作所製〕で測定する。
【0018】
乳酸菌を作用させた後、γ−アミノ酪酸の単離、そのまま又は後処理を行ってもよい。単離方法は遠心分離法及びカラムクロマトグラフィー法等の常法により行うことができる。後処理法としては、沈降分離法、遠心分離法、若しくはろ過法等を用いた固液分離による未分解顯粒及び乳酸菌菌体等の除去、常圧若しくは減圧下での濃縮、膜分離法、活性炭処理法、若しくは合成吸着剤処理法等による脱色及び/又は脱臭、アルコール、食塩若しくは糖類等の添加、凍結乾燥法、真空乾燥法、泡沫層乾燥法、若しくは噴霧乾燥法等による乾燥、圧縮破砕法、剪断破砕法、衝撃破砕法、衝撃式粉砕法、爆砕処理法、若しくは超音波粉砕法等による粉末化、又はこれらの組合せ等を挙げることができ、これらの方法は常法に従って実施すればよい。
【0019】
このようにしてアルコール発酵物等から、γ−アミノ酪酸を含有する生成物を得ることができる(以下、生成物という)。本発明で用いるアルコール発酵物等は前述のように穀類等の天然の食品素材を原料として発酵を行った結果生じる物である。したがって、得られる生成物はそのまま摂取することができるだけでなく、天然物由来の食品又は飼料の素材となる。アルコール発酵物等にグルタミン酸及び/又はその塩を加えることによりアルコール発酵物等に極めて高い濃度のγ−アミノ酪酸を生成させることができ、この生成物も同様に食品又は飼料を製造することができる。更に、γ−アミノ酪酸は高血圧及び各種脳傷害治療薬として用いられているので、前述の生成物はこれらの治療薬としての利用が可能になる。
【0020】
本発明でいう食品には特に限定はないが、例として、栄養補助食品、調味液、飲料、漬物、ジャム、及び酒類等を挙げることができる。栄養補助食品は生成物をそのまま摂取することができるだけでなく、転動造粒法、かくはん造粒法、流動層造粒法、気流造粒法、押出し造粒法、圧縮成型造粒法、解砕造粒法、噴射造粒法、又は噴霧造粒法等により造粒して粒状の固形物とし、更に必要に応じて糖衣等でコーティングを行って摂取することもできる。また、カプセル剤、顆粒剤、ゼリー剤、及びドリンク剤等の形態で供給することができ、これらは常法に従って製造することができる。調味液は、調味料原料に生成物、麹及び/又はプロテアーゼ製剤、食塩、並びに水を加えてかくはんし、このまま又は醤油酵母及び醤油乳酸菌を添加して熟成後、ろ過、滓引き、活性炭処理、殺菌、及び充填することにより得ることができる。飲料の例として、炭酸飲料は、生成物、香味料及び酸味料と糖類を調合した調合液と、除鉄、脱塩、精密ろ過、及び脱気工程を経た水とを混合し、冷却、カーボネーション、及び充填する方法により得ることができる。マーマレードは以下のような方法で得ることができる。柑橘類を洗浄して剥皮し、果肉部と外皮に分離する。整形、細切、加熱、水晒工程を経た外皮と、果肉部を破砕、次いで裏漉工程を経て得た果汁を混合し、生成物及び砂糖を加えて加熱する。この後、充填、密封、殺菌、及び冷却を順次行うことにより得ることができる。漬物の製造においては、様々な添加物若しくは調味液を添加する工程に生成物を添加する、調味液の調合成分の少なくとも一部に生成物を用いる、又はこれらの組合せにより用いることができる。添加物には、食塩、米糠、唐辛子、昆布、赤しそ、酢酸、砂糖、みりん、酒粕、及びみりん粕等があり、調味液には赤辛味噌、みりん、砂糖及び旨味調味料等からなる調味味噌、醤油、醤油諸味、みりん等からなる調合醤油、酢酸、砂糖、水、食塩等からなる調合酢、並びに米麹、砂糖、みりん、食塩等からなる調味麹等がある。このようにして得られた食品は、機能性物質であるγ−アミノ酪酸を含み且つ香味の優れたものであり、高血圧予防効果、アルコール代謝促進効果、脳代謝促進効果、及び肥満防止効果等を有する機能性食品である。
【0021】
また、生成物を用いてγ−アミノ酪酸を含有する酒類を得ることができる。その種類には特に限定はないが、清酒、ワイン、及びビール等の醸造酒、焼酎、ウィスキー、ブランデー、ラム、ジン、及びウォッカ等の蒸留酒、みりん、本直し、リキュール、並びに雑酒等を挙げることができる。これらの酒類の製造中に生成物を少なくとも一回添加すればよく、添加量は適宜選択すればよい。添加する時期は醸造酒の場合では任意の時期でよいが、発酵後期以降が好ましく、発酵終了後がより好ましい。蒸留酒では蒸留後の任意の時期に添加すればよい。みりん及び本直しでは製品充填までの任意の時期に添加すればよい。リキュールではアルコール、酸味料、及び香料等と生成物を混合し、殺菌工程及び製品充填工程等を経て得ることができる。このようにして得られる酒類はγ−アミノ酪酸による機能性が付与され、香味に優れたものである。
【0022】
本発明でいう飼料とは家畜飼料、養殖飼料、及びペット飼料を示す。生成物はこのまま前述の飼料として用いることができる他、通常用いられる少なくとも1種類以上の他の飼料原料と配合及び/又は成型することにより得ることができる。家畜飼料の配合に用いる原料は、穀物、精穀副産物、豆類、種実類、油粕、農産副産物、魚粕、乳、ホエー、乾草、サイレージ、根菜、わら、カルシウム剤、リン剤、食塩等を挙げることができる。養殖飼料の原料としては、魚粉、油粕、コーングルテンミール、デンプン質、米糠、ビタミン、及びミネラル等を挙げることができる。配合量は家畜、養殖魚、及びペットの種類に応じて適宜配合すればよく、成型方法は常法に従って実施すればよい。このようにして得られる飼料はアルコール発酵物等由来であるためバランスの取れた栄養価の高いものであり、更にγ−アミノ酪酸及び乳酸菌菌体による機能性が付与される。
【0023】
かくして本発明により、アルコール発酵物等よりのγ−アミノ酪酸の製造方法、並びにγ−アミノ酪酸を含有する食品又は飼料を提供することができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1
米及び米麹を原料に用い、通常の二段仕込みによって発酵させた醪を減圧蒸留した後、pH5.0に調整した米焼酎廃液を得た。この米焼酎廃液1,000mlを2リットル容三角フラスコに入れて120℃で15分間高温高圧滅菌後、乳酸菌としてラクトバチルス ブレビス IFO−12005の前培養液10mlを接種して30℃で2日間静置培養した。前培養液は、培地(グルコース、ペプトン、酵母エキス、及びL−グルタミン酸それぞれ1w/v%、pH5.0)60mlを入れた100ml容三角フラスコに、前述の乳酸菌1白金棒接種し、30℃で2日間前培養することにより得た。静置培養後、10,000×gで30分間遠分離を行うことにより固液分離を行い、得られた上清をロータリーエバポレーターで減圧濃縮、凍結乾燥、及び粉砕を順次行って生成物を得た。乾燥物中のγ−アミノ酪酸含量は、2.1g/100g−乾物であった(以下、本発明1という)
【0026】
実施例2
麦及び麦麹を原料とし、実施例1と同様の方法で得られた麦焼酎廃液を1,000mlずつ2リットル容三角フラスコに分注し、これに表1に示す量のL−グルタミン酸モノナトリウム(Monosodium L−glutamate、以下、MSGという)をそれぞれ添加してpH5に調整後、120℃で15分間高温高圧滅菌した。これに実施例1と同様に前培養したラクトバチルス ブレビス IFO−12005の前培養液10mlを接種し、30℃で表1に示す日数静置培養した。培養中は時々培養液中のpHを測定し、pHが5〜6の範囲になるように11.6N塩酸で調整した。培養液を実施例1と同様に固液分離後、得られた上清を凍結乾燥及び粉砕した。この生成物100g当りのγ−アミノ酪酸含量を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0004968869
【0028】
表1より、MSGを25g(本発明2)、50g(本発明3)、及び100g(本発明4)添加した麦焼酎廃液に乳酸菌を培養して得られたγ−アミノ酪酸は、それぞれ32、48、及び65g/100g−乾物であった。したがって、麦焼酎廃液にMSGを添加して乳酸菌を培養することによりγ−アミノ酪酸が著量生成されることが明らかになった。
【0029】
実施例3
本発明1に打錠機を用い、打錠時の圧力3,000Kg/cm2で常法に従い、1粒当り1gの粒状の固形物を作成した。該固形物は、アルコール製造廃液より得られたものであるので、アミノ酸、ビタミン、及びミネラル等の栄養価が高く、且つγ−アミノ酪酸を1粒当り21mg含有する天然原料由来の機能性を付与した栄養補助食品であり、食したところ香味の優れたものであった。
【0030】
実施例4
実施例1と同様にして米焼酎廃液からγ−アミノ酪酸含量が2.1g/100g−乾物の生成物を得た。該生成物を用い、表2に示す仕込配合で原材料を調合して95℃で殺菌後、1リットルのペットボトルに充填し、γ−アミノ酸含量0.05w/w%のみかん果汁入り飲料を得た。このようにして得られたみかん果汁入り飲料は、こく、旨味、及び濃厚感を呈する香味に優れたものであった。
【0031】
【表2】
Figure 0004968869
【0032】
実施例5
濃口生揚げ醤油1リットルに本発明4を10g添加してγ−アミノ酪酸を強化した醤油を得た。この醤油の分析値は、γ−アミノ酪酸0.64w/v%、ブリックス度36.9、全窒素1.75w/v%、食塩16.8w/v%、直接還元糖3.5w/v%、pH4.5、アルコール2.6v/v%、日本醤油研究所による色度No.11、及び比重1.16であり、香味は添加前のものと遜色なかった。
【0033】
実施例6
電気透析装置で一部脱塩した魚醤油1リットルに本発明3を20g添加してγ−アミノ酪酸を強化した魚醤油を得た。この分析値は、γ−アミノ酪酸0.8w/v%、pH5.3、ホルモール窒素0.7w/v%、及び食塩19.5w/v%であり、香味は添加前のものと遜色なかった。
【0034】
実施例7
赤ワイン1リットルに本発明4を10g添加してγ−アミノ酪酸を強化したワイン様の酒類を得た。この酒類の分析値は、γ−アミノ酪酸0.65w/v%、アルコール分11.1v/v%、エキス分3.68w/v%、pH3.5、及び総酸(酒石酸換算)0.58w/v%であり、香味は添加前のものと遜色なかった。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、穀類の分解物等の天然原料から成るアルコール発酵物等に乳酸菌を作用させることにより、機能性物質であるγ−アミノ酪酸を高濃度で生成させることができ、更にアルコール発酵物等にグルタミン酸及び/又はその塩を添加することにより、乳酸菌の生育を阻害することなく、γ−アミノ酪酸を生成させることができる。このようにして得られた生成物は栄養補助食品として摂取することができるだけでなく、医薬品原料として使用することも期待できる。本発明の生成物を食品又は飼料の製造に用いることにより、γ−アミノ酪酸を高含有する機能性食品及び機能性飼料を得ることができる。本発明はアルコール発酵物等の高度利用による資源再利用化を可能にしたものであり、更に廃棄物の量を減らし、地球環境の保全にも貢献できる。

Claims (3)

  1. 発酵法によるアルコール製造廃物である蒸留酒の製造により副生する残渣を原料に、γ−アミノ酪酸生成能を有するラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)に属する乳酸菌を該原料1m1当り1×10〜2×10個作用させ、pHを4〜6に調整して、30〜37℃で1時間〜10日間培養することを特徴とするγ−アミノ酪酸の製造方法。
  2. 該原料にグルタミン酸及び/又はその塩を30w/v%以下添加することを特徴とする請求項1記載のγ−アミノ酪酸の製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の製造方法を製造工程に包含することを特徴とする食品又は飼料の製造方法。
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