JP2004345877A - 誘電体磁器組成物、並びにその製造方法、それを用いた誘電体磁器及び積層セラミック部品 - Google Patents

誘電体磁器組成物、並びにその製造方法、それを用いた誘電体磁器及び積層セラミック部品 Download PDF

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Abstract

【課題】積層セラミック部品を適度な大きさに形成できるように比誘電率εが15から25程度で、Cu、Agといった低抵抗導体の同時焼成による内装化、多層化ができる800〜1000℃以下の温度での焼成が可能で、かつ、低い誘電損失tanδ(高いQ値)を有し、共振周波数の温度係数τの絶対値が50ppm/℃以下である誘電体磁器組成物、誘電体磁器およびその製造方法を提供する。
【解決手段】誘電体磁器組成物は、一般式xZnTiO−(1−x−y)ZnTiO−yTiOで表され、xが0.15<x<0.8、yが0≦y≦0.2の範囲内である主成分100重量部に対して、ZnOが50〜75重量%、Bが5〜30重量%、SiOが6〜15重量%、Alが0.5〜5重量%、BaOが3〜10重量%である無鉛低融点ガラスを3重量部以上30重量部以下含有せしめてなる。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、比誘電率が15〜25程度で、共振周波数の温度係数τの絶対値が小さく、低抵抗導体であるAu、AgやCu等と同時焼成が可能で、積層セラミック部品に好適な低い誘電損失(高いQ値)を有する誘電体磁器及び該誘電体磁器を得るための組成物、その製造方法、ならびにそれを用いた積層セラミックコンデンサやLCフィルタ等の積層セラミック部品に関するものである。特に、本発明は、ZnTiO及びZnTiO更には必要に応じTiOを含む主成分、並びに特定のガラス成分からなる誘電体磁器組成物、及びその製造方法、ならびにそれを用いた誘電体磁器及び積層セラミック部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、マイクロ波回路の集積化に伴い、小型でかつ誘電損失(tanδ)が小さく誘電特性が安定した誘電体共振器が求められている。そのため誘電体共振器部品としては内部に層状に電極導体を構成した積層チップ部品の市場が拡大している。これら積層チップ部品の内部導体としてはAu、Pt、Pd等の貴金属が用いられてきたが、コストダウンの観点よりこれら導体材料より比較的安価なAgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする合金にかわりつつある。特にAgまたはAgを主成分とする合金はその直流抵抗が低いことから、誘電体共振器のQ特性を向上させることができる等の利点がありその要求が高まっている。しかしAgまたはAgを主成分とする合金は融点が960℃程度と低く、これより低い温度で安定に焼結できる誘電体材料が必要となる。
【0003】
また、誘電体共振器を用いて誘電体フィルタを形成する場合、誘電体材料に要求される特性は、(1)温度変化に対する特性の変動を極力小さくするため誘電体の共振周波数の温度係数τの絶対値が小さいこと、(2)誘電体フィルタに要求される挿入損失を極力小さくするため誘電体のQ値が高いこと、である。さらに携帯電話等で使用されるマイクロ波付近では誘電体の比誘電率εにより共振器の長さが制約を受けるために、素子の小型化には比誘電率εが高いことが要求される。ここで、誘電体共振器の長さは使用電磁波の波長が基準となる。比誘電率εの誘電体中を伝播する電磁波の波長λは、真空中の電磁波の伝播波長をλとするとλ=λ/(ε1/2となる。
【0004】
したがって素子は使用される誘電体材料の誘電率が大きいほど小型化できる。しかし素子が小さくなりすぎると要求される加工精度が厳しくなり現実の加工精度が低下し、かつ電極の印刷精度の影響を受けやすくなるため、用途等によって素子が小さくなりすぎないように、比誘電率εは適切な範囲(例えば15から25程度)のものが要求される。
【0005】
そこで、これらの要求を満足するために、1000℃以下で焼成可能な誘電体磁器としては、樹脂中に無機誘電体粒子を分散したもの(特許文献1)や、BaO−TiO−Nd系セラミックスとガラスの複合材料からなるガラスセラミックス(特許文献2)が知られている。また、TiOとZnOを含みさらに、B系ガラスを含有する誘電体磁器も知られている(特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−132621号公報
【特許文献2】
特開平10−330161号公報
【特許文献3】
特許第3103296号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示された素子では、焼成温度が400℃程度でありAg等を配線導体として用いての同時焼成による多層化、微細な配線化ができないという問題があった。
【0008】
また特許文献2に示されたガラスセラミックス材料は比誘電率εが40より大きいために素子が小さくなりすぎて要求される加工精度が厳しくなり現実の加工精度が低下し、かつ電極の印刷精度の影響を受けやすくなる問題点があった。
【0009】
さらに、特許文献3に記載されている組成では、実施例から分かるように、比誘電率εが25〜70程度と高く、誘電特性の温度係数も組成により大きく変動し絶対値が700ppm/℃を超えるものもある。高周波の誘電体部品を提供するには、適度な比誘電率で、誘電特性の温度依存性が小さく、かつ、高いQ値を有する材料が求められている。
【0010】
本発明の目的は、積層セラミック部品等を適度な大きさに形成できるように比誘電率εが15から25程度で、Cu、Agといった低抵抗導体の同時焼成による内装化、多層化ができる800〜1000℃以下の温度での焼成が可能で、かつ、低い誘電損失tanδ(高いQ値)を有し、共振周波数の温度係数τの絶対値が50ppm/℃以下である誘電体磁器、それを得るための誘電体磁器組成物、及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、このような誘電体磁器からなる誘電体層とCuまたはAgを主成分とする内部電極とを有する積層セラミックコンデンサやLCフィルタ等の積層セラミック部品を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ZnTiOと、ZnTiO及び更に必要に応じてTiOを含む混合物に対して、少なくともZnO、B、SiO、Al及びBaOを含むガラスを添加することにより、800から1000℃の焼成を行った後においてもZnTiO、ZnTiO及びTiOの生成相比を変動させることなく、15〜25の範囲のεと低い誘電損失tanδ(高いQ値)を得ることができること、また、ZnOを含むガラスを用いることでZnTiOとZnTiOからのZnO成分のガラス中への溶解を極力抑制することができるために組成変化による誘電特性の変動を抑制でき、配線導体としてCu及びAg等を用いた多層化、微細配線化が可能であることを知見し、本発明に至った。
【0012】
即ち、本発明は、一般式xZnTiO−(1−x−y)ZnTiO−yTiOで表され、xが0.15<x<0.8、yが0≦y≦0.2の範囲内である主成分100重量部に対して、ZnOが50〜75重量%、Bが5〜30重量%、SiOが6〜15重量%、Alが0.5〜5重量%、BaOが3〜10重量%である無鉛低融点ガラスを3重量部以上30重量部以下含有せしめてなる誘電体磁器組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、前記誘電体磁器組成物を焼成してなる、ZnTiO、ZnTiO、及びTiOの結晶相(但し、TiOの結晶相は無くともよい。以下同様。)とガラス相とからなる誘電体磁器に関する。
【0014】
さらに、本発明は、ZnO原料粉末とTiO原料粉末とを混合し、仮焼することにより、ZnTiO、ZnTiO及びTiOからなるセラミック粉末(但し、TiOの含有量は零であってもよい。以下同様。)を得、該セラミック粉末にZnOが50〜75重量%、Bが5〜30重量%、SiOが6〜15重量%、Alが0.5〜5重量%、BaOが3〜10重量%である無鉛低融点ガラスを混合することを特徴とする前記誘電体磁器組成物の製造方法に関する。
【0015】
さらに、本発明は、複数の誘電体層と、該誘電体層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備える積層セラミック部品において、前記誘電体層が前記誘電体磁器組成物を焼成して得られる誘電体磁器にて構成され、前記内部電極がCu単体若しくはAg単体、又はCu若しくはAgを主成分とする合金材料にて形成されていることを特徴とする積層セラミック部品に関する。
【0016】
ZnTiO、ZnTiO及び任意成分としてのTiOからなる結晶成分と特定のガラス成分とからなる組成とすることにより、1000℃以下の焼成温度で焼成可能であり、焼成後の誘電体磁器の比誘電率εが15〜25程度で、誘電損失が小さく、共振周波数の温度係数の絶対値が50ppm/℃以下とすることができる。これにより、CuもしくはAg単体、又はCuもしくはAgを主成分とする合金材料からなる内部電極を有する積層セラミック部品を提供することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の誘電体磁器組成物について具体的に説明する。本発明の誘電体磁器組成物は、ZnTiO、ZnTiO、及び任意成分としてのTiOからなる主成分とガラス成分を含有してなる誘電体磁器組成物であり、主成分は、一般式xZnTiO−(1−x−y)ZnTiO−yTiOで表され、xが0.15<x<0.8、yが0≦y≦0.2の範囲内であり、ガラス成分は、ZnOが50〜75重量%、Bが5〜30重量%、SiOが6〜15重量%、Alが0.5〜5重量%、BaOが3〜10重量%である無鉛低融点ガラスである。本発明の誘電体磁器組成物は、前記主成分100重量部に対して、ガラス成分を3重量部以上30重量部以下含有せしめてなる。
【0018】
前記組成においてxは0.15を超え0.8より小さいことが好ましい。xが0.15以下、あるいはxが0.8以上ではτの絶対値が50ppm/℃を超え好ましくない。
【0019】
また、前記組成においてyは0〜0.2の範囲であることが好ましい。TiOを含有することにより誘電率がやや増加する傾向にあるが、yが0.2以下の組成ではいずれも本発明の目的とする効果を得ることができる。yが0.2より大きい場合は、τが+50ppm/℃を超え好ましくない。
【0020】
また、本発明の誘電体磁器組成物は、セラミックス母材となる前記主成分100重量部に対してガラス成分の添加量が3〜30重量部の範囲であることが好ましい。ガラス成分の添加量が3重量部未満の場合は、焼成温度がAgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする合金の融点以上の温度となり、本発明の目的の一つであるこれらからなる電極の使用ができなくなるため好ましくない。ガラス成分の添加量が30重量部を超える場合は、ガラス溶出により良好な焼結ができなくなる傾向にある。
【0021】
また、本発明に用いるZnTiOは酸化亜鉛ZnOと酸化チタンTiOとをモル比2:1で混合し焼成することにより得ることができる。また、ZnTiOはZnOとTiOとをモル比1:1で混合し焼成することにより得ることができる。ZnTiO及びZnTiOの原料として、TiOとZnOの他に、焼成時に酸化物となるZn及び/又はTiを含有する硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、塩化物、及び有機金属化合物等を使用してもよい。
【0022】
本発明の誘電体磁器組成物では、特定のガラスを所定量含有することを特徴とする。ここで、本発明に用いるガラスとしては、ZnOが50〜75重量%、Bが5〜30重量%、SiOが6〜15重量%、Alが0.5〜5重量%、BaOが3〜10重量%の割合で含まれるものが使用され、これら酸化物成分を所定割合で配合したものを溶融、冷却し、ガラス化したものが使用される。
【0023】
ここで、本発明で使用するガラスの組成について以下に説明する。ZnOについては、50重量%未満ではガラスの軟化点が高くなることにより良好な焼結ができなくなる傾向にあり、75重量%超では所望温度でのガラス化が困難になる傾向にある。Bについては、5重量%未満ではガラスの軟化点が高くなることにより良好な焼結ができなくなる傾向にあり、30重量%超ではガラス溶出により良好な焼結ができなくなる傾向にある。SiOについては、6重量%未満及び15重量%超でガラスの軟化点が高くなることにより良好な焼結ができなくなる傾向にある。Alについては、0.5重量%未満では化学的耐久性が低くなる傾向にあり、5重量%超では所望温度でのガラス化が困難になる傾向にある。BaOについては、3重量%未満及び10重量%超で所望温度でのガラス化が困難になる傾向にある。またガラス中にPb、Biの成分を含むと本発明の誘電体磁器組成物のQ値が低下する傾向にある。
【0024】
本発明によれば、一般式xZnTiO−(1−x−y)ZnTiO−yTiOで表され、xが0.15<x<0.8、yが0≦y≦0.2の範囲内である主成分100重量部に対して、ZnOが50〜75重量%、Bが5〜30重量%、SiOが6〜15重量%、Alが0.5〜5重量%、BaOが3〜10重量%である無鉛低融点ガラスを3重量部以上30重量部以下含有させることにより、800〜1000℃の焼成温度で低温焼結可能である。このような誘電体磁器組成物を焼成して本発明の誘電体磁器を得ることが出来る。本発明の誘電体磁器の比誘電率εは、15〜25程度で、無負荷Q値が大きく、共振周波数の温度係数τの絶対値が50ppm/℃以下の特性を有する。誘電体磁器の組成は、焼成前の誘電体磁器組成物の各原料組成とほぼ同じであり、ZnTiO、ZnTiO、及びTiOの結晶相とガラス相とからなる。本発明の誘電体磁器組成物により、低温焼成が可能で、上記のような特性の誘電体磁器を得ることができる。
【0025】
本発明では、焼成前にZnTiO、ZnTiO、任意成分としてのTiOの各粒子及びガラス粒子は、個別に粉砕し混合されるか、あるいは、各原料粒子は混合された状態で粉砕されるが、焼成前のこれら原料粒子の平均粒子径は分散性を高め、高い無負荷Q値と安定した比誘電率εを得るために2.0μm以下、好ましくは1.0μm以下であることが好ましい。なお、平均粒子径を過度に小さくすると取り扱いが困難になる場合があるので、0.05μm以上とするのが好ましい。
【0026】
次に、本発明の誘電体磁器組成物及び誘電体磁器の製造方法について説明する。本発明の誘電体磁器組成物は、ZnO原料粉末とTiO原料粉末とを混合し、仮焼することにより、ZnTiO、ZnTiO及び任意成分としてのTiOからなるセラミック粉末を得、該セラミック粉末にZnOが50〜75重量%、Bが5〜30重量%、SiOが6〜15重量%、Alが0.5〜5重量%、BaOが3〜10重量%である無鉛低融点ガラスを混合することにより得られる。ZnTiO、ZnTiO及びTiOからなるセラミック粉末は、それぞれ単独で調製してもよいし、ZnOとTiOの原料比を調整して直接、ZnTiO、ZnTiO及びTiOが混合した粉末を得ても良い。
【0027】
ZnTiO、ZnTiOの各粉末を個別に調製し、本発明の誘電体磁器組成物を得る方法についてさらに説明する。まず、酸化亜鉛と酸化チタンを2:1のモル比率に秤量し、水、アルコール等の溶媒と共に湿式混合する。続いて、水、アルコール等を除去した後、粉砕し、酸素含有雰囲気(例えば空気雰囲気)下にて900〜1200℃で約1〜5時間程度仮焼する。このようにして得られた仮焼粉はZnTiOからなる。次に酸化チタンと酸化亜鉛を1:1のモル比率に秤量し、ZnTiOと同様な作製方法でZnTiOを作製する。これらZnTiO、ZnTiO、及びTiOからなる主成分を所定量秤量し、さらに、ZnOが50〜75重量%、Bが5〜30重量%、SiOが6〜15重量%、Alが0.5〜5重量%、BaOが3〜10重量%である無鉛低融点ガラスを主成分に対し所定の比率になるように秤量し、水、アルコール等の溶媒と共に湿式混合する。続いて、水、アルコール等を除去した後、粉砕して目的の誘電体磁器組成物となる誘電体磁器原料粉末を作製する。
【0028】
本発明の誘電体磁器組成物は焼成し、誘電体磁器のペレットとして誘電特性を測定する。詳しくは、前記誘電体磁器原料粉末にポリビニルアルコールの如き有機バインダーを混合して均質にし、乾燥、粉砕をおこなった後、ペレット形状に加圧成形(圧力100〜1000Kg/cm程度)する。得られた成形物を空気の如き酸素含有ガス雰囲気下にて800〜1000℃で焼成することにより、ZnTiO相、ZnTiO相、TiO相及びガラス相が共存する誘電体磁器を得ることができる。
【0029】
本発明の誘電体磁器組成物は、必要により適当な形状、及びサイズに加工、あるいはドクターブレード法等によるシート成形、及びシートと電極による積層化を行うことにより、各種積層セラミック部品の材料として利用できる。積層セラミック部品としては、積層セラミックコンデンサ、LCフィルタ、誘電体共振器、誘電体基板などが挙げられる。
【0030】
本発明の積層セラミック部品は、複数の誘電体層と、該誘電体層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えており、前記誘電体層が前記誘電体磁器組成物を焼成して得られる誘電体磁器にて構成され、前記内部電極がCu単体若しくはAg単体、又はCu若しくはAgを主成分とする合金材料にて形成されている。本発明の積層セラミック部品は、誘電体磁器からなる誘電体層と、Cu単体若しくはAg単体、又はCu若しくはAgを主成分とする合金材料とを、同時焼成することにより得られる。
【0031】
上記積層セラミック部品の一実施形態として、例えば図1及び図2に示したトリプレートタイプの共振器が挙げられる。図1は本発明に係る一実施形態のトリプレートタイプの共振器を示す模式的斜視図であり、図2はその模式的断面図である。図1及び図2に示すように、トリプレートタイプの共振器は、複数の誘電体層1と、該誘電体層間に形成された内部電極2と、該内部電極に電気的に接続された外部電極3とを備える積層セラミック部品である。トリプレートタイプの共振器は、内部電極2を中央部に配置して複数枚の誘電体層1を積層して得られる。内部電極2は、図に示した第1の面Aからこれに対向する第2の面Bまで貫通するように形成されており、第1の面Aのみ開放面で、第1の面Aを除く共振器の5面には外部電極3が形成されており、第2の面Bにおいて内部電極2と外部電極3が接続されている。内部電極2の材料は、CuまたはAgあるいは、それらを主成分とする合金材料で構成されている。本発明の誘電体磁器組成物は低温で焼成できるため、これらの内部電極の材料が使用できる。
【0032】
【実施例】
実施例1:
酸化チタン(TiO)0.33モル、酸化亜鉛(ZnO)0.66モルをエタノールと共にボールミルにいれ、12時間湿式混合した。溶液を脱媒後、粉砕し、空気雰囲気下1000℃で仮焼し、ZnTiO仮焼粉を得た。次にTiO0.5モル、ZnO0.5モルを同様な方法で湿式混合、仮焼してZnTiO仮焼粉を得た。これらZnTiO仮焼粉、ZnTiO仮焼粉とTiOを表1に示した配合量で調製したものを母材(主成分)とした。この母材100重量部に対して、ZnO 63.5重量%、SiO 8重量%、Al 1.5重量%、BaO 7重量%、B 20重量%から構成されるガラス粉末10重量部を添加したものをボールミルにいれ、24時間湿式混合した。溶液を脱媒後、平均粒子径が1μmになるまで粉砕し、この粉砕物に適量のポリビニルアルコール溶液を加えて乾燥後、直径12mm、厚み4mmのペレットに成形し、空気雰囲気下において、900℃で2時間焼成した。図3に作製した焼結体のX線回折図を示した。図3に示したように本発明の誘電体磁器組成物の焼結体においてもZnTiO相、ZnTiO相及び、TiO相が共存していることがわかる。
【0033】
こうして得られた誘電体磁器を直径7mm、厚み3mmの大きさに加工した後、誘電共振法によって、共振周波数7〜11GHzにおける無負荷Q値、比誘電率ε及び共振周波数の温度係数τを求めた。その結果を表2に示した。
【0034】
【表1】
Figure 2004345877
【0035】
【表2】
Figure 2004345877
【0036】
また前記母材とガラスの混合物100gに対して、結合剤としてポリビニルブチラール9g、可塑剤としてジブチルフタレート6g及び溶剤としてトルエン60gとイソプロピルアルコール30gを添加しドクターブレード法により厚さ100μmのグリーンシートを作製した。そして、このグリーンシートを、65℃の温度で200kg/cmの圧力を加える熱圧着により、22層積層した。その際、内部電極としてAgを印刷した層が厚み方向の中央部にくるように配置した。得られた積層体を900℃で2時間焼成した後、外部電極を形成して、トリプレートタイプの共振器を作製した。大きさは、幅4.9mm、高さ1.7mm、長さ8.4mmであった。
【0037】
得られたトリプレートタイプの共振器について共振周波数2GHzで無負荷Q値を評価した。その結果、トリプレートタイプの共振器としての無負荷Qは210であった。このように、本発明に係る誘電体磁器組成物を使用することにより、優れた特性を有するトリプレートタイプの共振器が得られた。
【0038】
実施例2、3:(xの影響)
上記実施例1と同様にZnTiO、ZnTiOとTiOを表1に示した配合量で混合したものを母材とし、この母材とガラスを表1に示した配合量で混合後、実施例1と同一条件でペレット形状の焼結体を作製して、実施例1と同様な方法で種々の特性を評価した。その結果を表2に示した。
【0039】
実施例4〜6:(yの影響)
上記実施例1と同様にZnTiO、ZnTiOとTiOを表1に示した配合量で混合したものを母材とし、この母材とガラスを表1に示した配合量で混合後、実施例1と同一条件でペレット形状の焼結体を作製して、実施例1と同様な方法で種々の特性を評価した。その結果を表2に示した。
【0040】
実施例7〜9:(粒径の影響)
上記実施例1と同様にZnTiO、ZnTiOとTiOを表1に示した配合量で混合したものを母材とし、この母材とガラスを表1に示した配合量で混合後、粒子径が表1記載の平均粒子径になるまで粉砕し、実施例1と同一条件でペレット形状の焼結体を作製して、実施例1と同様な方法で種々の特性を評価した。その結果を表2に示した。
【0041】
実施例10〜12:(ガラス組成の影響)
上記実施例1と同様にZnTiO、ZnTiOとTiOを表1に示した配合量で混合したものを母材とし、この母材と表1記載の種々の組成のガラスを表1に示した配合量で混合後、実施例1と同一条件でペレット形状の焼結体を作製して、実施例1と同様な方法で種々の特性を評価した。その結果を表2に示した。
【0042】
実施例13、14:(ガラス量の影響)
上記実施例1と同様にZnTiO、ZnTiOとTiOを表1に示した配合量で混合したものを母材とし、この母材とガラスを表1に示した配合量で混合後、実施例1と同一条件でペレット形状の焼結体を作製して、実施例1と同様な方法で種々の特性を評価した。その結果を表2に示した。
【0043】
比較例1、2:(xの影響)
上記実施例1と同様にZnTiO、ZnTiOとTiOを表1に示した配合量で混合したものを母材とし、この母材とガラスを表1に示した配合量で混合後、実施例1と同一条件でペレット形状の焼結体を作製した。しかしながらZnTiOのモル比xが0.15より小さいときは共振周波数の温度係数τが+50ppm/℃より大きくなり、またxが0.8より大きいときは共振周波数の温度係数τが−50ppm/℃より小さくなった。その結果を表2に示した。
【0044】
比較例3、4:(yの影響)
上記実施例1と同様にZnTiO、ZnTiOとTiOを表1に示した配合量で混合したものを母材とし、この母材とガラスを表1に示した配合量で混合後、実施例1と同一条件でペレット形状の焼結体を作製した。しかしながらTiOのモル比yが0.2より大きい条件では共振周波数の温度係数τが+50ppm/℃より大きくなった。その結果を表2に示した。
【0045】
比較例5〜19:(ガラス組成の影響)
上記実施例1と同様にZnTiO、ZnTiOとTiOを表1に示した配合量で混合したものを母材とし、この母材と表1記載の種々の組成のガラスを表1に示した配合量で混合後、実施例1と同一条件でペレット形状の焼結体を作製した。しかしながら本発明に使用したガラス組成の範囲外のガラス組成物を用いたときには、Q値が低下し共振周波数の温度係数τが−50ppm/℃より小さくなったり(比較例5,6)、硫酸溶液でガラスが溶解したり(比較例12)、1000℃以下で焼結しなかったり800℃以上でガラスが溶出したり(比較例7〜11,13〜19)した。その結果を表2に示した。
【0046】
比較例20、21:(ガラス量の影響)
上記実施例1と同様にZnTiO、ZnTiOとTiOを表1に示した配合量で混合したものを母材とし、この母材とガラスを表1に示した配合量で混合後、実施例1と同一条件でペレット形状の焼結体を作製した。しかしながらガラス量が3重量部より少ない場合は1000℃以下で焼結しなかった。またガラス量が30重量部より多い場合はガラスが900℃以上で溶出してセッターと反応した。その結果を表2に示した。
【0047】
【発明の効果】
本発明の誘電体磁器組成物を用いることにより、従来困難であったAgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする合金の融点以下での焼成が可能となり、電子部品を構成する場合これら金属を内装化、多層化するための内部導体として使用することができる。また本発明の誘電体磁器組成物を焼成して得られる誘電体磁器は、積層セラミック部品等を適度な大きさに形成できるように比誘電率εが15から25程度であり、低い誘電損失tanδ(高いQ値)を有し、共振周波数の温度係数τの絶対値が50ppm/℃以下である。本発明によれば、このような誘電体磁器を得るための誘電体磁器組成物及びその製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、このような誘電体磁器組成物を使用した誘電体層とAgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする合金を用いた内部電極とを有する積層セラミックコンデンサやLCフィルタ等の積層セラミック部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態のトリプレートタイプの共振器を示す模式的斜視図である。
【図2】図1の共振器の模式的断面図である。
【図3】実施例1で得られた本発明にかかる誘電体磁器組成物の焼結体のX線回折図である。
【符号の説明】
1 誘電体層
2 内部電極
3 外部電極

Claims (4)

  1. 一般式xZnTiO−(1−x−y)ZnTiO−yTiOで表され、xが0.15<x<0.8、yが0≦y≦0.2の範囲内である主成分100重量部に対して、ZnOが50〜75重量%、Bが5〜30重量%、SiOが6〜15重量%、Alが0.5〜5重量%、BaOが3〜10重量%である無鉛低融点ガラスを3重量部以上30重量部以下含有せしめてなる誘電体磁器組成物。
  2. 請求項1記載の誘電体磁器組成物を焼成してなる、ZnTiO、ZnTiO、及びTiOの結晶相(但し、TiOの結晶相は無くともよい)とガラス相とからなることを特徴とする誘電体磁器。
  3. ZnO原料粉末とTiO原料粉末とを混合し、仮焼することにより、ZnTiO、ZnTiO及びTiOからなるセラミック粉末(但し、TiOの含有量は零であってもよい)を得、該セラミック粉末にZnOが50〜75重量%、Bが5〜30重量%、SiOが6〜15重量%、Alが0.5〜5重量%、BaOが3〜10重量%である無鉛低融点ガラスを混合することを特徴とする請求項1記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
  4. 複数の誘電体層と、該誘電体層間に形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備える積層セラミック部品において、前記誘電体層が前記請求項1記載の誘電体磁器組成物を焼成して得られる誘電体磁器にて構成され、前記内部電極がCu単体若しくはAg単体、又はCu若しくはAgを主成分とする合金材料にて形成されていることを特徴とする積層セラミック部品。
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