JP2004345101A - シームレスベルト製造用環状ダイ及びシームレスベルト製造方法及びシームレスベルト - Google Patents
シームレスベルト製造用環状ダイ及びシームレスベルト製造方法及びシームレスベルト Download PDFInfo
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Abstract
【課題】表面は硬度が低く、裏面は硬度が高くなるようにし、しかも層間剥離の生じにくいシームレスベルトの製造用環状ダイ、シームレスベルト製造方法、及び、そのシームレスベルトを提供すること。
【解決手段】第1押出機4から高硬度材料が供給される第1供給部2と、第2押出機5から低硬度材料が供給される第2供給部3と、高硬度材料及び低硬度材料により形成されるシームレスベルトが溶融押出される環状吐出口6と、第1供給部2から環状吐出口6へと材料を案内する第1環状経路21と、第2供給部3から第1環状経路21の合流位置Xへと低硬度材料を案内する第2環状経路31とを備え、合流位置Xにおいて、高硬度材料と低硬度材料とが合流し、環状吐出口6から、高硬度材料が裏面側、低硬度材料が表面側となり、かつ硬度が傾斜したシームレスベルトが溶融押し出し成形される。
【選択図】 図1
【解決手段】第1押出機4から高硬度材料が供給される第1供給部2と、第2押出機5から低硬度材料が供給される第2供給部3と、高硬度材料及び低硬度材料により形成されるシームレスベルトが溶融押出される環状吐出口6と、第1供給部2から環状吐出口6へと材料を案内する第1環状経路21と、第2供給部3から第1環状経路21の合流位置Xへと低硬度材料を案内する第2環状経路31とを備え、合流位置Xにおいて、高硬度材料と低硬度材料とが合流し、環状吐出口6から、高硬度材料が裏面側、低硬度材料が表面側となり、かつ硬度が傾斜したシームレスベルトが溶融押し出し成形される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やプリンタ等に用いられるシームレスベルトを製造するための環状ダイ及びシームレスベルト製造方法及びシームレスベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機やプリンタ等には、感光ドラム等の表面に形成された画像を転写材(紙等)に転写するための中間転写手段として、複数の支持ローラに巻回される導電性のベルトが用いられる。このベルトは、表面に付着したトナーをクリーニングしたり、電気抵抗がベルト全体で均一になることが要求されるため、接合部のない無端帯状のベルト、いわゆるシームレスベルトが好適に用いられる。一方、複写機やプリンタ等においては、形成される画像も白黒からカラーへ移行してきており、要求される品質レベルも高くなってきている。カラーの場合には、トナーを同じ場所に4回正確に転写させる必要があるが、単層構造のシームレスベルトでは、カラー用に要求される品質を満足することは難しい。これを図4により説明する。
【0003】
図4(a)は、単層構造のシームレスベルトの断面を示す。硬度の高いゴム材料(あるいは樹脂材料)で製造した場合、剛性が高いため、ベルトの長手方向 (周方向) には伸びにくく、この点においてはカラー用に好適である。しかし、ベルト表面の弾性がないため、トナー定着性が悪くなる。また、ベルト表面の弾性がないと、トナー以外の異物が入り込んできた時に、クッションとして受け止める余地がなくなり、その結果、ベルトや感光体を傷つけてしまう。
【0004】
(b)は、単層構造であるが硬度の低いゴム材料(あるいは樹脂材料)で製造したものである。トナーの定着性を考えると、ベルト表面は弾性を有するほうが好ましい。しかし、硬度が低いと、ベルトが長手方向に伸びてしまうため、カラートナーの転写には適さない。
【0005】
(c)は、2層構造のシームレスベルトであり、表面側は硬度の小さなゴム材料(あるいは樹脂材料)、裏面側は硬度の大きなゴム材料(あるいは樹脂材料)で形成している。これにより、上記(a)(b)の課題を解決でき、ベルト長手方向の伸びを押え、しかも表面は弾性を有している。 しかし、かかる2層構造だと層間で剥離する可能性があり、導電性も層によってばらつく。
【0006】
その他に、多層構造としたシームレスベルトとして、下記特許文献1,2が先行技術として知られている。特許文献1は、外側層と内側層とを同時に溶融押し出しして積層することで形成されたシームレスベルトを開示する。外側層と内側層とは、同一熱可塑性樹脂系で構成される。外側層と内側層の厚みの比率が、外側層/内側層=1/1〜1/20である。
【0007】
特許文献2は、ゴム層とエラストマー層の2層構造及び3層構造の導電性ベルトを開示する。また、ベルトはゴム層を形成した後にエラストマー層を形成してもよいし、その逆の順に形成しても良いことが記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特許第3328969号(特許請求の範囲等)
【特許文献2】
特開2000−167991号公報(図1、段落0038)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記先行技術は、以下説明するような課題を有する。すなわち、 特許文献1,2とも2層あるいは3層構造であるが、層と層がわかれており、層間剥離の可能性を有する。特に、特許文献2による製造方法では、各層を順番に形成していくため、層間剥離が生じやすいということができる。また、特許文献1による製造方法では、外側層と内側層とを同時に溶融押し出しして積層するものであるが、具体的な製造装置についての開示はない。ただし、外側層と内側層とを所定の比率になるように製造するものであるから、製造されるシームレスベルトの外側層と内側層とは層間(境界)が明確になっている構造であると思われる。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、表面は硬度が低く、裏面は硬度が高くなるようにし、しかも層間剥離の生じにくいシームレスベルトの製造用環状ダイ、シームレスベルト製造方法、及び、そのシームレスベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明に係るシームレスベルト製造用環状ダイは、
第1押出機から第1の硬度を有する第1ベルト形成材料が供給される第1供給部と、
第2押出機から第1の硬度よりも硬度の低い第2の硬度を有する第2ベルト形成材料が供給される第2供給部と、
前記第1・第2ベルト形成材料により形成されるシームレスベルトが溶融押出される環状吐出口と、
前記第1供給部から前記環状吐出口へとベルト形成材料を案内する第1環状経路と、
前記第2供給部から前記第1環状経路の合流位置へと前記第2ベルト形成材料を案内する第2環状経路とを備え、
前記合流位置において、前記第1ベルト形成材料と第2ベルト形成材料とが合流し、前記環状吐出口から、前記第1ベルト形成材料が裏面側、前記第2ベルト形成材料が表面側となるようなシームレスベルトが溶融押し出し成形されるように構成したことを特徴とするものである。
【0011】
この構成による環状ダイの作用・ 効果は、以下の通りである。
第1供給部からは、第1の硬度(硬度の高いほう)の第1ベルト形成材料が供給される。第2供給部からは、第2の硬度(硬度の低いほう)の第2ベルト形成材料が供給される。また環状吐出口が設けられ、ここからシームレスベルトが溶融押し出し成形される。第1供給部から供給される硬度の高い材料(ただし、本発明において硬度の高い・低いという表現は、相対的な関係を示すものであり絶対的なものではない。)は、第1環状経路により案内される。また、第2供給部から供給される硬度の低い材料は、第2環状経路により案内され、合流位置において第1環状経路に合流する。かかる経路構成によれば、合流位置に到達するまで、第1・第2ベルト形成材料は適切な温度環境下に置かれる。合流位置から環状吐出口に至るまでに、裏面側が硬度が高く、表面層は硬度が低くなったシームレスベルトが溶融押し出し成形される。また、硬度が高い層と低い層に完全に分離しているのではなく、裏面層から表面層に向けて硬度が傾斜した(硬度が徐々に変化するような状態のことを言う)シームレスベルトを得ることができる。その結果、表面は硬度が低く、裏面は硬度が高くなるようにし、しかも層間剥離の生じにくいシームレスベルトの製造用環状ダイを提供することができる。
【0012】
本発明の好適な実施形態として、 前記第1供給部から前記合流位置までの経路の距離をD1とし、前記第2供給部から前記合流位置までの経路の距離をD2とし、L1=D1−D2とした場合、(ただし、D1,D2は環状ダイの中心軸を含む平面で切断した断面にて測定した距離)
L1=30mm〜300mm
に設定したものがあげられる。
【0013】
L1<30mmだと、硬度が低い方の第2ベルト形成材料が余分な熱を受けて熱分解してしまうおそれがある。また、L1>300mmだと、硬度が低い方の第2ベルト形成材料が溶融していない状態で第1ベルト形成材料と混ざってしまう可能性がある。したがって、上記のごとくL1を設定することで、所望の品質のシームレスベルトを得ることができる。
【0014】
本発明の別の好適な実施形態として、前記合流位置から前記環状吐出口までの経路の距離をL2とした場合、
L2=30mm〜200mm
に設定したものがあげられる。
【0015】
L2<30mmだと、環状吐出口までの距離が短いために、硬度の傾斜したシームレスベルトを得ることが困難である。L2>200mmだと、第1・第2ベルト形成材料が完全に混ざってしまい、今度の異なる材料を用いた意味がなくなる。当然、所望の品質のシームレスベルトを得ることができない。
【0016】
本発明の更に別の好適な実施形態として、前記第2環状経路が前記第1環状経路に合流する位置での両経路の角度をδとした場合、(ただし、δは環状ダイの中心軸を含む平面で切断した断面にて見た角度)
δ=5゜〜60゜
に設定したものがあげられる。
【0017】
第2環状経路を合流させる場合の経路の角度δは、上記のごとく設定することが好ましい。δ<5゜は、構造的に設定することが困難である。δ>60゜だと、第2ベルト形成材料が急角度で第1ベルト形成材料の流れにぶつかるため、硬度が傾斜したシームレスベルトを製造することが難しい。
【0018】
本発明に係るシームレスベルト製造方法は、
第1押出機から第1の硬度を有する第1ベルト形成材料が供給されるステップと、
第2押出機から第1の硬度よりも硬度の低い第2の硬度を有する第2ベルト形成材料が供給されるステップと、
前記第1供給部から環状吐出口へと第1ベルト形成材料を第1環状経路により案内するステップと、
前記第2供給部から前記第1環状経路の合流位置へと前記第2ベルト形成材料を第2環状経路により案内するステップと、
前記合流位置において、前記第1ベルト形成材料と第2ベルト形成材料とを合流させ、前記環状吐出口から、前記第1ベルト形成材料が裏面側、前記第2ベルト形成材料が表面側となるようなシームレスベルトが溶融押し出し成形されるステップとを有することを特徴とするものである。
かかる構成による作用・ 効果は、既に述べた通りである。
【0019】
すなわち、 前記合流位置から前記環状吐出口に至る経路において、前記裏面側から前記表面側に向けて硬度が傾斜するように成形される。
【0020】
また、前記第1ベルト形成材料と前記第2ベルト形成材料とは、同種の材料であることが好ましい。同種の材料とは、例えば、熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂のことを言うものである。 同種の材料を使用することにより、硬度の傾斜した構造を製造しやすくなる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係るシームレスベルト製造用環状ダイの好適な実施形態を図面を用いて説明する。 図1は、環状ダイの縦断面図(中心軸を含む垂直平面で切断した断面)、図2は、環状ダイの平面図を示す。
【0022】
<環状ダイの構成>
環状ダイ1は、シームレスベルトを溶融押し出し成形するために用いられる。環状ダイ1は、 全体形状として、ほぼ円筒形を有している。 環状ダイ1は、円筒軸が垂直方向に向くように配置され、環状ダイ1の上部から材料が供給され、下部底面からシームレスベルトが溶融押し出し成形される。環状ダイ1の上部には、第1供給部2と第2供給部3とが設けられている。図2では、第1供給部2と第2供給部3とは、円周方向で90゜離れた位置に設けられている。ただし、これに限定されるものではない。
【0023】
第1供給部2には、第1押出機4が接続され、高硬度材料(第1ベルト形成材料に相当)が溶融され押し出し供給される。第1押出機4には、材料をペレット等の状態で供給するホッパ4aが設けられている。第2供給部3には、第2押出機5が接続され、低硬度材料(第2ベルト形成材料に相当)が溶融され押し出し供給される。第2押出機5にもホッパ5aが設けられている。なお、押出機4,5は、公知の構造のものでよい。
【0024】
図1に示すように、第1供給部2は、第2供給部3よりも少し高い位置にある。環状ダイ1の底部には、環状吐出口6が設けられ、ここからシームレスベルトが溶融押し出し成形される。第1供給部2から供給された高硬度材料を環状吐出口6へと案内するための経路が設けられている。第1供給部2から、まず水平経路20へと案内された後、上下向きの第1環状経路21へと導かれる。また、第2供給部3についても、まず水平経路30へと案内された後、上下向きの第2環状経路31へと導かれる。第2環状経路31は、第1環状経路21の外側に位置しており、径も大きい。第1環状経路21の途中に合流位置Xが設けられており、この位置で第2環状経路31が第1環状経路21に合流する。すなわち、 高硬度材料と低硬度材料とは、別々の経路にて環状ダイ1内部に導入されるが、合流位置Xにおいて合わさる。第2環状経路31の方が第1環状経路21より外側にあるから、製造されるシームレスベルトも外側(表面側)が低硬度材料により形成され、内側(裏面側)が高硬度材料により形成される。
【0025】
環状ダイ1の外周面と内部にはヒーターが設けられており、環状ダイ1を適切な温度に設定し、経路内を流れる材料を溶融させる。具体的には、環状ダイ1の外側にはバンドヒーターを設け、環状ダイ1の内部にはプレートヒーターを設ける。
【0026】
図1,2に示す環状ダイにより製造されるシームレスベルトの断面構造を図3に示す。断面の上側が表面側であり、トナーが転写される側である。断面の下側が裏面側であり、ローラに巻回される側である。表面側の方が硬度が低く、裏面側の方が硬度が高い。また、硬度が高い材料の層と、硬度が低い材料の層が明確に分かれているのではなく、段階的に(あるいは、徐々に)硬度が変化している。すなわち、 裏面側から表面側にかけて段階的に硬度が低くなっている(硬度が傾斜している)。かかる断面構造によれば、層間剥離という問題が生じることがない。図3は模式的に示す図であり、硬度の異なる複数の層に明確に分かれているということではなく、実際には上述したように硬度が徐々に変化しており明確な境界は存在するものではない。
【0027】
次に、環状経路に関する経路長さの適正な設定値について図1により説明する。まず、第1供給部2から合流位置Xまでの経路の距離をD1とする。水平経路20の距離をD11とし、水平経路20の高さの位置から合流位置Xまでの経路に沿った距離をD12とする。D1=D11+D12 とする。また、同様に第2供給部3から合流位置Xまでの経路の距離をD2とする。水平経路30の距離をD21とし、その高さの位置から合流位置Xまでの経路に沿った距離をD22とする。D2=D21+D22とする。そして、L1=D1−D2とすると、
L1=30mm〜300mm
となるように設定することが好ましい。L1<30mmだと、低硬度材料が余分に熱を受けて熱分解してしまうおそれがある。この点を詳しく説明する。高硬度材料と低硬度材料とでは、融点が異なるので、同じ設定温度で各押出機から押し出しすることは難しい。よって融点の低い低硬度材料のほうは熱周りを少なくするため、合流位置Xまでの距離は短くする必要がある。一方、融点の高い高硬度材料については、十分な熱周りを与えるため合流位置Xまでの距離は長くしておく必要がある。そこで上記の設定としている。
【0028】
また、L1>300mmだと、低硬度材料が溶融していない状態で高硬度材料と混ざってしまう可能性がある。したがって、上記のごとくL1を設定することで、所望の断面構造を有するシームレスベルトを得ることができる。
【0029】
次に、合流位置Xから環状吐出口6までの経路の距離をL2とすると、
L2=30mm〜200mm
に設定することが好ましい。
【0030】
L2<30mmだと、硬度の傾斜したシームレスベルトを得ることが困難である。これは距離が短すぎて、硬度を傾斜させるまでに至らないためである。また、L2>200mmだと、距離が長すぎてしまい、第1・第2ベルト形成材料が完全に混ざってしまい、硬度の異なる材料を用いた意味がなくなる。
【0031】
次に、第2環状経路31が第1環状経路21に合流する位置での両経路の角度をδとした場合(図1参照)、
δ=5゜〜60゜
に設定することが好ましい。
【0032】
δ<5゜は、構造的に設定することが困難である。δ>60゜だと、低硬度材料が急角度で高硬度材料の流れにぶつかるため、両者が混ざり合い、硬度が傾斜したシームレスベルトを製造することが困難になる。したがって、上記角度に設定することで、適切に硬度の傾斜したシームレスベルトを得ることができる。
【0033】
環状ダイ1の下方には、冷却マンドレル7が配置されており、環状吐出口6から溶融押し出し成形されるシームレスベルトを冷却させ、引取装置により引き取られていく。
【0034】
<材料について>
本発明に係るシームレスベルトを製造するために用いられるベルト形成材料について説明する。高硬度材料と低硬度材料とは、同種の材料を使用することが好ましい。同種の材料とすることで、硬度の傾斜をさせやすくなると考えられる。材料としては、熱可塑性樹脂が好適であり、次のようなものがあげられる。
【0035】
すなわち、 PBN(ポリブチレンナフタレート)、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネイト、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、セルロイド、プラスチックポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、飽和ポリエステル等がある。同種の材料であるので、例えば、高硬度材料・低硬度材料とも熱可塑性ポリウレタンが選択される。
【0036】
<実施例>
次に、表1に示すような、具体的な材料を使用してシームレスベルトを製造した例を説明する。まず、低硬度材料として、東洋紡績(株)の熱可塑性ポリエステルエラストマーである商品名ペルプレンEN−2034(あるいは、融点が216℃のポリエステルエラストマー)に導電剤を添加して導電調整を行ったものを用い、高硬度材料として、東洋紡績(株)のPB−560に導電剤を添加して導電調整を行ったものを用いた。すなわち、 熱可塑性ポリエステル同士の組み合わせである。導電剤は、ホッパ4aから投入することができるし、すでに導電調整を行ったPB−560を投入してもよい。導電剤の種類としては、イオン導電やカーボン導電によるものが例としてあげられる。物性値は、表1に示す通りである。
【0037】
【表1】
EN−2034は押し出し温度225℃であり、第2押出機5はφ40mmである。PB−560は押し出し温度265℃であり、第1押出機4はφ30mmである。ただし、各押出機の大きさは、これらに限定されるものではない。第1押出機4のホッパ4aからは、導電剤あるいは既に導電調整を行ったPB−560(高硬度材料)を投入する。第2押出機5のホッパ5aからは、導電剤あるいは既に導電調整を行ったEN−2034 (低硬度材料) を投入する。環状吐出口6からは、図3に示すような硬度が傾斜したシームレスベルトが押し出し成形される。なお、環状吐出口6の径はφ275mmであり、これをφ260mmの冷却マンドレル7に接触させ、冷却・固化する。
【0038】
実際に得られたシームレスベルトの物性値を表2に示す。
【0039】
【表2】
なお、実施例における測定・評価は次の通り行った。
1.体積抵抗率(Ω・cm)、表面抵抗率(Ω/□)
JIS K6911の「5.13 抵抗率」に準拠した方法で、アドバンテスト製のハイレジスタントメーターに三菱化学(株) 製のUR−100電極を取り付けて測定電圧500V,測定時間10秒で測定した。
2.硬度
JIS K6253のタイプDデュロメータ硬さ試験による。
【0040】
以上のように、同種の材料で硬度が異なるものを溶融押し出しすることにより、裏面側(内側)は硬度の高い材料、表面側 (外側)は硬度の低い材料とし、更に硬度を傾斜させることができる。これにより、シームレスベルトの長手方向は、硬度の高いほうの材料で変形が拘束される。また、表面は弾性を有しており、トナー転写性を確保している。
【0041】
同種の材料を溶融して押し出しているので、硬度の傾斜を容易に行うことができる。硬度を傾斜させるので、層間剥離の問題はない。また、転写ベルトの機能として、導電性も必要とされるが、かかる導電性も層によって分かれることがなく、安定した導電性が得られる。
【0042】
さらに、導電性の異なる材料を押出して内部構造を傾斜させることで、表面側と裏面側とで導電性についても傾斜をさせることができる。これにより、高機能なシームレスベルトを簡単に製造することができる。
【0043】
また、高硬度材料と低硬度材料の各押出機からの押し出し量を調整することで、硬度の傾斜の度合いを変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シームレスベルト製造用環状ダイの縦断面図
【図2】シームレスベルト製造用環状ダイの平面図
【図3】本発明に係るシームレスベルトの断面構造を示す図
【図4】従来技術に係るシームレスベルトの断面構造を示す図
【符号の説明】
1 環状ダイ
2 第1供給部
3 第2供給部
4 第1押出機
5 第2押出機
6 環状吐出口
7 冷却マンドレル
20 水平経路
21 第1環状経路
30 水平経路
31 第2環状経路
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やプリンタ等に用いられるシームレスベルトを製造するための環状ダイ及びシームレスベルト製造方法及びシームレスベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機やプリンタ等には、感光ドラム等の表面に形成された画像を転写材(紙等)に転写するための中間転写手段として、複数の支持ローラに巻回される導電性のベルトが用いられる。このベルトは、表面に付着したトナーをクリーニングしたり、電気抵抗がベルト全体で均一になることが要求されるため、接合部のない無端帯状のベルト、いわゆるシームレスベルトが好適に用いられる。一方、複写機やプリンタ等においては、形成される画像も白黒からカラーへ移行してきており、要求される品質レベルも高くなってきている。カラーの場合には、トナーを同じ場所に4回正確に転写させる必要があるが、単層構造のシームレスベルトでは、カラー用に要求される品質を満足することは難しい。これを図4により説明する。
【0003】
図4(a)は、単層構造のシームレスベルトの断面を示す。硬度の高いゴム材料(あるいは樹脂材料)で製造した場合、剛性が高いため、ベルトの長手方向 (周方向) には伸びにくく、この点においてはカラー用に好適である。しかし、ベルト表面の弾性がないため、トナー定着性が悪くなる。また、ベルト表面の弾性がないと、トナー以外の異物が入り込んできた時に、クッションとして受け止める余地がなくなり、その結果、ベルトや感光体を傷つけてしまう。
【0004】
(b)は、単層構造であるが硬度の低いゴム材料(あるいは樹脂材料)で製造したものである。トナーの定着性を考えると、ベルト表面は弾性を有するほうが好ましい。しかし、硬度が低いと、ベルトが長手方向に伸びてしまうため、カラートナーの転写には適さない。
【0005】
(c)は、2層構造のシームレスベルトであり、表面側は硬度の小さなゴム材料(あるいは樹脂材料)、裏面側は硬度の大きなゴム材料(あるいは樹脂材料)で形成している。これにより、上記(a)(b)の課題を解決でき、ベルト長手方向の伸びを押え、しかも表面は弾性を有している。 しかし、かかる2層構造だと層間で剥離する可能性があり、導電性も層によってばらつく。
【0006】
その他に、多層構造としたシームレスベルトとして、下記特許文献1,2が先行技術として知られている。特許文献1は、外側層と内側層とを同時に溶融押し出しして積層することで形成されたシームレスベルトを開示する。外側層と内側層とは、同一熱可塑性樹脂系で構成される。外側層と内側層の厚みの比率が、外側層/内側層=1/1〜1/20である。
【0007】
特許文献2は、ゴム層とエラストマー層の2層構造及び3層構造の導電性ベルトを開示する。また、ベルトはゴム層を形成した後にエラストマー層を形成してもよいし、その逆の順に形成しても良いことが記載されている。
【0008】
【特許文献1】
特許第3328969号(特許請求の範囲等)
【特許文献2】
特開2000−167991号公報(図1、段落0038)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記先行技術は、以下説明するような課題を有する。すなわち、 特許文献1,2とも2層あるいは3層構造であるが、層と層がわかれており、層間剥離の可能性を有する。特に、特許文献2による製造方法では、各層を順番に形成していくため、層間剥離が生じやすいということができる。また、特許文献1による製造方法では、外側層と内側層とを同時に溶融押し出しして積層するものであるが、具体的な製造装置についての開示はない。ただし、外側層と内側層とを所定の比率になるように製造するものであるから、製造されるシームレスベルトの外側層と内側層とは層間(境界)が明確になっている構造であると思われる。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、表面は硬度が低く、裏面は硬度が高くなるようにし、しかも層間剥離の生じにくいシームレスベルトの製造用環状ダイ、シームレスベルト製造方法、及び、そのシームレスベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明に係るシームレスベルト製造用環状ダイは、
第1押出機から第1の硬度を有する第1ベルト形成材料が供給される第1供給部と、
第2押出機から第1の硬度よりも硬度の低い第2の硬度を有する第2ベルト形成材料が供給される第2供給部と、
前記第1・第2ベルト形成材料により形成されるシームレスベルトが溶融押出される環状吐出口と、
前記第1供給部から前記環状吐出口へとベルト形成材料を案内する第1環状経路と、
前記第2供給部から前記第1環状経路の合流位置へと前記第2ベルト形成材料を案内する第2環状経路とを備え、
前記合流位置において、前記第1ベルト形成材料と第2ベルト形成材料とが合流し、前記環状吐出口から、前記第1ベルト形成材料が裏面側、前記第2ベルト形成材料が表面側となるようなシームレスベルトが溶融押し出し成形されるように構成したことを特徴とするものである。
【0011】
この構成による環状ダイの作用・ 効果は、以下の通りである。
第1供給部からは、第1の硬度(硬度の高いほう)の第1ベルト形成材料が供給される。第2供給部からは、第2の硬度(硬度の低いほう)の第2ベルト形成材料が供給される。また環状吐出口が設けられ、ここからシームレスベルトが溶融押し出し成形される。第1供給部から供給される硬度の高い材料(ただし、本発明において硬度の高い・低いという表現は、相対的な関係を示すものであり絶対的なものではない。)は、第1環状経路により案内される。また、第2供給部から供給される硬度の低い材料は、第2環状経路により案内され、合流位置において第1環状経路に合流する。かかる経路構成によれば、合流位置に到達するまで、第1・第2ベルト形成材料は適切な温度環境下に置かれる。合流位置から環状吐出口に至るまでに、裏面側が硬度が高く、表面層は硬度が低くなったシームレスベルトが溶融押し出し成形される。また、硬度が高い層と低い層に完全に分離しているのではなく、裏面層から表面層に向けて硬度が傾斜した(硬度が徐々に変化するような状態のことを言う)シームレスベルトを得ることができる。その結果、表面は硬度が低く、裏面は硬度が高くなるようにし、しかも層間剥離の生じにくいシームレスベルトの製造用環状ダイを提供することができる。
【0012】
本発明の好適な実施形態として、 前記第1供給部から前記合流位置までの経路の距離をD1とし、前記第2供給部から前記合流位置までの経路の距離をD2とし、L1=D1−D2とした場合、(ただし、D1,D2は環状ダイの中心軸を含む平面で切断した断面にて測定した距離)
L1=30mm〜300mm
に設定したものがあげられる。
【0013】
L1<30mmだと、硬度が低い方の第2ベルト形成材料が余分な熱を受けて熱分解してしまうおそれがある。また、L1>300mmだと、硬度が低い方の第2ベルト形成材料が溶融していない状態で第1ベルト形成材料と混ざってしまう可能性がある。したがって、上記のごとくL1を設定することで、所望の品質のシームレスベルトを得ることができる。
【0014】
本発明の別の好適な実施形態として、前記合流位置から前記環状吐出口までの経路の距離をL2とした場合、
L2=30mm〜200mm
に設定したものがあげられる。
【0015】
L2<30mmだと、環状吐出口までの距離が短いために、硬度の傾斜したシームレスベルトを得ることが困難である。L2>200mmだと、第1・第2ベルト形成材料が完全に混ざってしまい、今度の異なる材料を用いた意味がなくなる。当然、所望の品質のシームレスベルトを得ることができない。
【0016】
本発明の更に別の好適な実施形態として、前記第2環状経路が前記第1環状経路に合流する位置での両経路の角度をδとした場合、(ただし、δは環状ダイの中心軸を含む平面で切断した断面にて見た角度)
δ=5゜〜60゜
に設定したものがあげられる。
【0017】
第2環状経路を合流させる場合の経路の角度δは、上記のごとく設定することが好ましい。δ<5゜は、構造的に設定することが困難である。δ>60゜だと、第2ベルト形成材料が急角度で第1ベルト形成材料の流れにぶつかるため、硬度が傾斜したシームレスベルトを製造することが難しい。
【0018】
本発明に係るシームレスベルト製造方法は、
第1押出機から第1の硬度を有する第1ベルト形成材料が供給されるステップと、
第2押出機から第1の硬度よりも硬度の低い第2の硬度を有する第2ベルト形成材料が供給されるステップと、
前記第1供給部から環状吐出口へと第1ベルト形成材料を第1環状経路により案内するステップと、
前記第2供給部から前記第1環状経路の合流位置へと前記第2ベルト形成材料を第2環状経路により案内するステップと、
前記合流位置において、前記第1ベルト形成材料と第2ベルト形成材料とを合流させ、前記環状吐出口から、前記第1ベルト形成材料が裏面側、前記第2ベルト形成材料が表面側となるようなシームレスベルトが溶融押し出し成形されるステップとを有することを特徴とするものである。
かかる構成による作用・ 効果は、既に述べた通りである。
【0019】
すなわち、 前記合流位置から前記環状吐出口に至る経路において、前記裏面側から前記表面側に向けて硬度が傾斜するように成形される。
【0020】
また、前記第1ベルト形成材料と前記第2ベルト形成材料とは、同種の材料であることが好ましい。同種の材料とは、例えば、熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂のことを言うものである。 同種の材料を使用することにより、硬度の傾斜した構造を製造しやすくなる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係るシームレスベルト製造用環状ダイの好適な実施形態を図面を用いて説明する。 図1は、環状ダイの縦断面図(中心軸を含む垂直平面で切断した断面)、図2は、環状ダイの平面図を示す。
【0022】
<環状ダイの構成>
環状ダイ1は、シームレスベルトを溶融押し出し成形するために用いられる。環状ダイ1は、 全体形状として、ほぼ円筒形を有している。 環状ダイ1は、円筒軸が垂直方向に向くように配置され、環状ダイ1の上部から材料が供給され、下部底面からシームレスベルトが溶融押し出し成形される。環状ダイ1の上部には、第1供給部2と第2供給部3とが設けられている。図2では、第1供給部2と第2供給部3とは、円周方向で90゜離れた位置に設けられている。ただし、これに限定されるものではない。
【0023】
第1供給部2には、第1押出機4が接続され、高硬度材料(第1ベルト形成材料に相当)が溶融され押し出し供給される。第1押出機4には、材料をペレット等の状態で供給するホッパ4aが設けられている。第2供給部3には、第2押出機5が接続され、低硬度材料(第2ベルト形成材料に相当)が溶融され押し出し供給される。第2押出機5にもホッパ5aが設けられている。なお、押出機4,5は、公知の構造のものでよい。
【0024】
図1に示すように、第1供給部2は、第2供給部3よりも少し高い位置にある。環状ダイ1の底部には、環状吐出口6が設けられ、ここからシームレスベルトが溶融押し出し成形される。第1供給部2から供給された高硬度材料を環状吐出口6へと案内するための経路が設けられている。第1供給部2から、まず水平経路20へと案内された後、上下向きの第1環状経路21へと導かれる。また、第2供給部3についても、まず水平経路30へと案内された後、上下向きの第2環状経路31へと導かれる。第2環状経路31は、第1環状経路21の外側に位置しており、径も大きい。第1環状経路21の途中に合流位置Xが設けられており、この位置で第2環状経路31が第1環状経路21に合流する。すなわち、 高硬度材料と低硬度材料とは、別々の経路にて環状ダイ1内部に導入されるが、合流位置Xにおいて合わさる。第2環状経路31の方が第1環状経路21より外側にあるから、製造されるシームレスベルトも外側(表面側)が低硬度材料により形成され、内側(裏面側)が高硬度材料により形成される。
【0025】
環状ダイ1の外周面と内部にはヒーターが設けられており、環状ダイ1を適切な温度に設定し、経路内を流れる材料を溶融させる。具体的には、環状ダイ1の外側にはバンドヒーターを設け、環状ダイ1の内部にはプレートヒーターを設ける。
【0026】
図1,2に示す環状ダイにより製造されるシームレスベルトの断面構造を図3に示す。断面の上側が表面側であり、トナーが転写される側である。断面の下側が裏面側であり、ローラに巻回される側である。表面側の方が硬度が低く、裏面側の方が硬度が高い。また、硬度が高い材料の層と、硬度が低い材料の層が明確に分かれているのではなく、段階的に(あるいは、徐々に)硬度が変化している。すなわち、 裏面側から表面側にかけて段階的に硬度が低くなっている(硬度が傾斜している)。かかる断面構造によれば、層間剥離という問題が生じることがない。図3は模式的に示す図であり、硬度の異なる複数の層に明確に分かれているということではなく、実際には上述したように硬度が徐々に変化しており明確な境界は存在するものではない。
【0027】
次に、環状経路に関する経路長さの適正な設定値について図1により説明する。まず、第1供給部2から合流位置Xまでの経路の距離をD1とする。水平経路20の距離をD11とし、水平経路20の高さの位置から合流位置Xまでの経路に沿った距離をD12とする。D1=D11+D12 とする。また、同様に第2供給部3から合流位置Xまでの経路の距離をD2とする。水平経路30の距離をD21とし、その高さの位置から合流位置Xまでの経路に沿った距離をD22とする。D2=D21+D22とする。そして、L1=D1−D2とすると、
L1=30mm〜300mm
となるように設定することが好ましい。L1<30mmだと、低硬度材料が余分に熱を受けて熱分解してしまうおそれがある。この点を詳しく説明する。高硬度材料と低硬度材料とでは、融点が異なるので、同じ設定温度で各押出機から押し出しすることは難しい。よって融点の低い低硬度材料のほうは熱周りを少なくするため、合流位置Xまでの距離は短くする必要がある。一方、融点の高い高硬度材料については、十分な熱周りを与えるため合流位置Xまでの距離は長くしておく必要がある。そこで上記の設定としている。
【0028】
また、L1>300mmだと、低硬度材料が溶融していない状態で高硬度材料と混ざってしまう可能性がある。したがって、上記のごとくL1を設定することで、所望の断面構造を有するシームレスベルトを得ることができる。
【0029】
次に、合流位置Xから環状吐出口6までの経路の距離をL2とすると、
L2=30mm〜200mm
に設定することが好ましい。
【0030】
L2<30mmだと、硬度の傾斜したシームレスベルトを得ることが困難である。これは距離が短すぎて、硬度を傾斜させるまでに至らないためである。また、L2>200mmだと、距離が長すぎてしまい、第1・第2ベルト形成材料が完全に混ざってしまい、硬度の異なる材料を用いた意味がなくなる。
【0031】
次に、第2環状経路31が第1環状経路21に合流する位置での両経路の角度をδとした場合(図1参照)、
δ=5゜〜60゜
に設定することが好ましい。
【0032】
δ<5゜は、構造的に設定することが困難である。δ>60゜だと、低硬度材料が急角度で高硬度材料の流れにぶつかるため、両者が混ざり合い、硬度が傾斜したシームレスベルトを製造することが困難になる。したがって、上記角度に設定することで、適切に硬度の傾斜したシームレスベルトを得ることができる。
【0033】
環状ダイ1の下方には、冷却マンドレル7が配置されており、環状吐出口6から溶融押し出し成形されるシームレスベルトを冷却させ、引取装置により引き取られていく。
【0034】
<材料について>
本発明に係るシームレスベルトを製造するために用いられるベルト形成材料について説明する。高硬度材料と低硬度材料とは、同種の材料を使用することが好ましい。同種の材料とすることで、硬度の傾斜をさせやすくなると考えられる。材料としては、熱可塑性樹脂が好適であり、次のようなものがあげられる。
【0035】
すなわち、 PBN(ポリブチレンナフタレート)、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネイト、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、セルロイド、プラスチックポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、飽和ポリエステル等がある。同種の材料であるので、例えば、高硬度材料・低硬度材料とも熱可塑性ポリウレタンが選択される。
【0036】
<実施例>
次に、表1に示すような、具体的な材料を使用してシームレスベルトを製造した例を説明する。まず、低硬度材料として、東洋紡績(株)の熱可塑性ポリエステルエラストマーである商品名ペルプレンEN−2034(あるいは、融点が216℃のポリエステルエラストマー)に導電剤を添加して導電調整を行ったものを用い、高硬度材料として、東洋紡績(株)のPB−560に導電剤を添加して導電調整を行ったものを用いた。すなわち、 熱可塑性ポリエステル同士の組み合わせである。導電剤は、ホッパ4aから投入することができるし、すでに導電調整を行ったPB−560を投入してもよい。導電剤の種類としては、イオン導電やカーボン導電によるものが例としてあげられる。物性値は、表1に示す通りである。
【0037】
【表1】
EN−2034は押し出し温度225℃であり、第2押出機5はφ40mmである。PB−560は押し出し温度265℃であり、第1押出機4はφ30mmである。ただし、各押出機の大きさは、これらに限定されるものではない。第1押出機4のホッパ4aからは、導電剤あるいは既に導電調整を行ったPB−560(高硬度材料)を投入する。第2押出機5のホッパ5aからは、導電剤あるいは既に導電調整を行ったEN−2034 (低硬度材料) を投入する。環状吐出口6からは、図3に示すような硬度が傾斜したシームレスベルトが押し出し成形される。なお、環状吐出口6の径はφ275mmであり、これをφ260mmの冷却マンドレル7に接触させ、冷却・固化する。
【0038】
実際に得られたシームレスベルトの物性値を表2に示す。
【0039】
【表2】
なお、実施例における測定・評価は次の通り行った。
1.体積抵抗率(Ω・cm)、表面抵抗率(Ω/□)
JIS K6911の「5.13 抵抗率」に準拠した方法で、アドバンテスト製のハイレジスタントメーターに三菱化学(株) 製のUR−100電極を取り付けて測定電圧500V,測定時間10秒で測定した。
2.硬度
JIS K6253のタイプDデュロメータ硬さ試験による。
【0040】
以上のように、同種の材料で硬度が異なるものを溶融押し出しすることにより、裏面側(内側)は硬度の高い材料、表面側 (外側)は硬度の低い材料とし、更に硬度を傾斜させることができる。これにより、シームレスベルトの長手方向は、硬度の高いほうの材料で変形が拘束される。また、表面は弾性を有しており、トナー転写性を確保している。
【0041】
同種の材料を溶融して押し出しているので、硬度の傾斜を容易に行うことができる。硬度を傾斜させるので、層間剥離の問題はない。また、転写ベルトの機能として、導電性も必要とされるが、かかる導電性も層によって分かれることがなく、安定した導電性が得られる。
【0042】
さらに、導電性の異なる材料を押出して内部構造を傾斜させることで、表面側と裏面側とで導電性についても傾斜をさせることができる。これにより、高機能なシームレスベルトを簡単に製造することができる。
【0043】
また、高硬度材料と低硬度材料の各押出機からの押し出し量を調整することで、硬度の傾斜の度合いを変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シームレスベルト製造用環状ダイの縦断面図
【図2】シームレスベルト製造用環状ダイの平面図
【図3】本発明に係るシームレスベルトの断面構造を示す図
【図4】従来技術に係るシームレスベルトの断面構造を示す図
【符号の説明】
1 環状ダイ
2 第1供給部
3 第2供給部
4 第1押出機
5 第2押出機
6 環状吐出口
7 冷却マンドレル
20 水平経路
21 第1環状経路
30 水平経路
31 第2環状経路
Claims (8)
- 第1押出機から第1の硬度を有する第1ベルト形成材料が供給される第1供給部と、
第2押出機から第1の硬度よりも硬度の低い第2の硬度を有する第2ベルト形成材料が供給される第2供給部と、
前記第1・第2ベルト形成材料により形成されるシームレスベルトが溶融押出される環状吐出口と、
前記第1供給部から前記環状吐出口へとベルト形成材料を案内する第1環状経路と、
前記第2供給部から前記第1環状経路の合流位置へと前記第2ベルト形成材料を案内する第2環状経路とを備え、
前記合流位置において、前記第1ベルト形成材料と第2ベルト形成材料とが合流し、前記環状吐出口から、前記第1ベルト形成材料が裏面側、前記第2ベルト形成材料が表面側となるようなシームレスベルトが溶融押し出し成形されるように構成したことを特徴とするシームレスベルト製造用環状ダイ。 - 前記第1供給部から前記合流位置までの経路の距離をD1とし、前記第2供給部から前記合流位置までの経路の距離をD2とし、L1=D1−D2とした場合、(ただし、D1,D2は環状ダイの中心軸を含む平面で切断した断面にて測定した距離)
L1=30mm〜300mm
に設定したことを特徴とする請求項1に記載のシームレスベルト製造用環状ダイ。 - 前記合流位置から前記環状吐出口までの経路の距離をL2とした場合、
L2=30mm〜200mm
に設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載のシームレスベルト製造用環状ダイ。 - 前記第2環状経路が前記第1環状経路に合流する位置での両経路の角度をδとした場合、(ただし、δは環状ダイの中心軸を含む平面で切断した断面にて見た角度)
δ=5゜〜60゜
に設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシームレスベルト製造用環状ダイ。 - 第1押出機から第1の硬度を有する第1ベルト形成材料が供給されるステップと、
第2押出機から第1の硬度よりも硬度の低い第2の硬度を有する第2ベルト形成材料が供給されるステップと、
前記第1供給部から環状吐出口へと第1ベルト形成材料を第1環状経路により案内するステップと、
前記第2供給部から前記第1環状経路の合流位置へと前記第2ベルト形成材料を第2環状経路により案内するステップと、
前記合流位置において、前記第1ベルト形成材料と第2ベルト形成材料とを合流させ、前記環状吐出口から、前記第1ベルト形成材料が裏面側、前記第2ベルト形成材料が表面側となるようなシームレスベルトが溶融押し出し成形されるステップとを有することを特徴とするシームレスベルト製造方法。 - 前記合流位置から前記環状吐出口に至る経路において、前記裏面側から前記表面側に向けて硬度が傾斜するように成形されることを特徴とする請求項5に記載のシームレスベルト製造方法。
- 前記第1ベルト形成材料と前記第2ベルト形成材料とは、同種の材料であることを特徴とする請求項5又は6に記載のシームレスベルト製造方法。
- 第1の硬度を有する第1ベルト形成材料で形成される裏面側と、
第1の硬度よりも硬度の低い第2の硬度を有する第2ベルト形成材料で形成される表面側と、
前記裏面側から前記表面側に向けて硬度が傾斜していることを特徴とするシームレスベルト。
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JP2003141478A JP2004345101A (ja) | 2003-05-20 | 2003-05-20 | シームレスベルト製造用環状ダイ及びシームレスベルト製造方法及びシームレスベルト |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007172873A (ja) * | 2005-12-19 | 2007-07-05 | Kyocera Corp | 画像表示装置およびその製造方法 |
JP2009012428A (ja) * | 2007-07-09 | 2009-01-22 | Bridgestone Corp | 多層樹脂ベルトの製造方法およびそれにより得られる多層樹脂ベルト |
WO2009038039A1 (ja) * | 2007-09-18 | 2009-03-26 | Bridgestone Corporation | 多層樹脂ベルトの製造方法およびそれにより得られる多層樹脂ベルト |
CN114261047A (zh) * | 2021-12-21 | 2022-04-01 | 国铭铸管股份有限公司 | 一种热力管道用胶圈及其制备工艺 |
-
2003
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