JP2004342470A - 半導体検査装置および半導体査方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ウエハ上に設置された制御電極およびアース電極の形状を変えて、制御電極で形成される電位障壁の高さを1mm以下にする。電子線の電流を制限する絞りまたは制御電極の孔形を非対称にし、制御電極により被検査ウエハ近傍の電界を検査ウエハと同電位または低い電位にし、同心円状孔を通過する電子線の収差成分である非対称孔を通過した電子線の方向を変化させる。
【選択図】 図9
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置の製造方法に係わり,特に半導体装置製造過程のウェハ上の回路パターン検査装置および検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の製造過程において,ウェハ上に形成される回路パターンの欠陥を検出する検査方法として,電子線を用いて回路パターンの画像を取得し、同一パターンの画像を比較してあらかじめ設定した閾値よりも明るさに差がある部分を回路パターンの欠陥として検出する欠陥検査装置が実用化されている。例えば、特開平5−258703号には、電子線を半導体ウエハに照射して、発生する二次電子を画像信号として取得する走査型電子顕微鏡技術が開示されている。この技術を用いて実用的なスループットを得るためには,非常に高速に画像を取得する必要が有るが、必要な画像のSN比を確保するために、通常の走査型電子顕微鏡の100倍以上(10nA以上)の電子線電流を用いることで,実用的な検査速度を維持しながら画像のSN比を確保している。このような電子線を用いた検査装置では、被検査試料の帯電状態の差に起因して画像に現れるコントラスト差を利用して欠陥を検出するため、光では検出できない欠陥、すなわち電気的欠陥が検出できるのがひとつの特長である。以下、帯電の違いにより生じるコントラストを電位コントラストと呼ぶ。ここで、電気的欠陥とは、導通すべき部分が電気的に絶縁されていたり、また絶縁されているべき場所がショートする等の欠陥を意味する。
【0003】
特開2000−208579号公報には、被検査対象である半導体ウエハを負に帯電させることにより、上記の検査技術を更に高感度化する手法が開示されている。ウエハを負に帯電するための手段としては、画像形成に用いる電子ビームとは別に設けられたフラッドガンを用いている。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】
しかしながら、特開2000−208579号公報に開示された技術では、今後予測される半導体プロセスで製造される半導体装置に対しては感度が十分ではないという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、被検査対象を正または負に帯電させて検査を行う半導体装置の検査装置/方法において、従来技術に比べて、高速,安定かつ明暗コントラストの大きい良質の画像を取得し、欠陥を高感度に検出することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の発明者らは、半導体ウエハの帯電状態を詳細に解析し、以下の知見を得た。以下、図1を用いて、ウエハの帯電状態について説明する。
【0007】
図1において、23が被検査対象である半導体基板、8が基板を帯電させるための制御電極、9が制御電極の上方に設けられるアース電極である。図中の実線は、制御電極8とアース電極9および基板により形成される電位の等高線である。図示されていないが、アース電極9は接地されている。また、アース電極9と制御電極8には、入射電子線36透過するための透過孔が設けられている。入射電子線36を一次電子線と呼ぶ場合もある。更にまた、アース電極9と制御電極8に替わってエネルギーフィルタが設けられる場合もある。
【0008】
一次電子線を半導体基板に照射すると、二次電子線が発生する。発生する二次電子数の入射電子数に対する比は二次電子放出効率と呼ばれている。二次電子放出効率は、入射電子線のエネルギーに応じて変わるが、二次電子放出効率が 1以上となる入射エネルギーの電子線を用いると、ウエハ表面では電子が欠乏状態となり、ウエハは一旦、正に帯電する。
【0009】
二次電子が発生した際に、制御電極8に負の電圧が印可されていると、発生した電界により、二次電子は基板方向に引き戻される。以下、基板に戻る二次電子を戻り二次電子、ウエハから出射した二次電子が再度ウエハに表面に戻される電位、つまり初期状態の帯電していない状態での二次電子が戻されるエネルギーに等しい電位を電位障壁と呼ぶ。図1の91、92は、戻り二次電子と電位障壁をそれぞれ示している。基板の負帯電は、戻り二次電子91により進行するが、帯電が進むにつれ発生する二次電子のエネルギーが高くなり障壁を通過する電子が増加する。帯電電位が障壁電位と同電位になると二次電子は障壁により戻されることが無くなり、最終的には、ウエハ表面の帯電は制御電極8により形成する障壁電位とほぼ同電位のところで飽和する。
【0010】
図1に示すように、従来実施されてきた制御電極やエネルギーフィルタを用いた帯電制御技術においては、試料に照射される電子線のビームスポットサイズに比べてかなり広い領域にわたって電位障壁が形成される。以下、本明細書では、エネルギーフィルタや電極により形成されるmmオーダー以上の電位障壁のことをマクロな電位障壁と称する。本発明者らは、研究の結果、マクロな電位障壁により基板を帯電させた場合、単位面積あたりの戻り二次電子の密度が低く、負に帯電する効率が低いという課題を発見した。これは、マクロな電位障壁を用いた場合、電位障壁がウエハ上方の高い位置に形成されるため、二次電子の戻る領域が入射電子線のビームスポットの大きさに比べて広大きくなるためである。言うまでもないが、分解能の観点から、入射電子線のビームスポットの大きさは小さい方が好ましい。
【0011】
本発明者らは、負帯電の効率を上げるための2種類の構成を考案した。一つは、非対称のビームスポット形状の電子ビームを用いることである。2つは、電位障壁が被検査試料上に、1mm以下になるように制御電極およびアース電極を配置することであり、制御電極およびアース電極と被検査試料表面間の距離をなるべく小さくする。好ましくは、制御電極およびアース電極と被検査試料表面間の距離が3mm以下となるように、試料ステージと制御電極、アース電極を配置する。これらの構成は、別個に実施しても負帯電の効率を向上する効果があるが、組み合わせて実施することにより、負帯電の効率が更に向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。実施例の装置構成を図9に示す。検査装置は大別して電子光学系101,試料室102,制御部103,画像処理部104より構成されている。
【0013】
電子光学系101は、電子銃1、電子線引き出し電極2,コンデンサレンズ3,アライメントコイル16,ブランキング用偏向器4,走査偏向器5,絞り6,対物レンズ7,制御電極8,アース電極9により構成されている。アース電極には、グランド電位つまり0(V)でななく、電圧が印可される場合もある。電位を変化させることで焦点の補正を行なうためである。試料室102は,X−Yステージ10,回転ステージ11,位置モニタ用測長器12,被検査基板高さ測定器13より構成されており,また2次電子検出器14が対物レンズ7の上方にあり,二次電子検出器14の出力信号はプリアンプ15で増幅されAD変換器16によりデジタルデータとなる。画像処理部105は画像記憶部18・19,演算部20,欠陥判定部21より構成されている。取り込まれた電子線画像及び光学画像は,モニタ22に表示される。検査装置各部の動作命令および動作条件は,制御部103から入出力される。予め制御部103に電子線発生時の加速電圧・電子線偏向幅・偏向速度・試料台移動速度・検出器の信号取り込みタイミング等々の条件が入力されている。また,位置モニタ用測長器12,被検査基板高さ測定器13の信号から補正信号を生成し,電子線が常に正しい位置に照射されるよう対物レンズ電源26や,走査信号発生器28に補正信号を送る。
【0014】
電子銃1には拡散補給型の熱電界放出電子源を用いた。これにより明るさ変動の少ない比較検査画像が得られ,かつ電子ビーム電流を大きくすることが可能で高速検査が可能になる。電子線は引出電極2に電圧を印加することで電子銃1から引き出される。電子線の加速は電子銃1に高圧の負の電位を印加することでなされる。これにより,電子線はその電位に相当するエネルギーで試料台10の方向に進み,コンデンサレンズ3で収束されて絞り6により通過する電流量が制限される。この絞りの孔を通過した電子ビームは対物レンズ7により細く絞られアース電極9の中心の孔と制御電極8の中心の孔を通ってX−Yステージ10の上に搭載された被検査基板23(ウェハあるいはチップ等)に照射される。ウエハ近傍の電界は制御電極電源29により制御電極8に電圧を印加することで制御する。被検査基板23には高圧電源25により負の電圧を印加できるようになっている。この高圧電源25を調節することにより被検査基板23への電子線照射エネルギーを最適な値に調節することが容易となる。画像形成にはXYステージ10を静止させ電子線201を二次元に走査する方法と,電子線は一次元走査し走査方向と直交する方向にXYステージ10を連続的に移動する方法のいずれかを選択できる。ある特定の場所を検査する場合にはステージを静止させて検査し,被検査基板23の広い範囲を検査するときはステージを連続移動して検査すると効率の良い検査が行える。
【0015】
試料室102に被検査基板23が移動すると,電子銃1からの電子線201で比較検査用の画像を取得して比較検査を実行する。被検査基板23の画像を取得するためには,細く絞った電子線201を該被検査基板23 に照射し二次電子および反射電子を発生させ,これらを電子線201の走査およびステージの移動と同期して検出することで被検査基板表面の画像を得る。本発明で述べるような自動検査では検査速度が速いことが必須となる。したがって通常のSEMのようにpAオーダのビーム電流を低速で走査することや,複数回走査は行わない。そこで,通常のSEMに比べ約100倍以上のたとえば100nAの大電流電子線を一回の走査により画像形成する構成とした。一枚の画像は1000x1000画素を10msecで取得するようにした。
【0016】
試料近傍ではウエハ上方にウエハの表面の電界を制御する制御電極8と制御電極8の上方にアース電極9が設置されており、電子線を照射して二次電子が発生しウエハから出射した二次電子がウエハ表面に再度戻るような障壁電位を制御電極により形成している。
ビーム電流I(A)、二次電子放出効率δ(δ>1)の電子ビームを用いてT(s)時間照射した場合に放出される二次電子数はI×δ×Tであり、ウエハ上方に設置された制御電極で形成される電位障壁により出射した二次電子が再度ウエハ表面に戻された場合、戻される領域の大きさを半径r(m)の真円と仮定すると、戻される二次電子の電流密度は、(I×δ×T)/(πr2)である。単位時間あたりの電荷の逃げをτ(1/s)としたとき、電荷の逃げはτ×(I×δ×T)となり、電荷の逃げを考慮したときの戻り二次電子の電流密度は、{(I×δ×T)×(1−τ)}/(πr2)となる。このT時間内に戻り二次電子によりウエハを効果的に負帯電させウエハの帯電電位を電位障壁の電位以上にするには、戻り二次電子の領域(r)を小さくすればよい。
【0017】
戻り二次電子の領域は、図1、2に示すように、電位障壁の高さに依存する。図1に示すように電位障壁がウエハより遠い位置に形成されている場合には二次電子の戻る領域は広がってしまう。一方、図2に示すように、制御電極8をウエハに近づけ電位障壁がウエハ上の近くに形成されている場合では、戻る二次電子の領域は狭くなり効果的に負に帯電させることが出来る。また、障壁の高さ位置は、制御電極と前記アース電極間の電界強度E1、制御電極とウエハ間の電界強度E2としたとき、制御電極の高さdに制御電極とウエハ間距離にE1に対するE2の比を乗じた(d×E1/E2)位置に形成する。そのため、電界強度を調整することで電位障壁の位置をウエハに近づけ効果的に負に帯電することが出来る。
このため、本発明の基本概念は、制御電極とウエハ間の距離d=2mm、制御電極孔径4mm、アース電極と制御電極の距離2mm、アース電極孔径2mmの形状で、制御電極の電圧を調整してd×E1/E2が1.0mmとなるようにし、障壁電位−4Vに設定することで実現した。
【0018】
ビームサイズ0.1μm2、ビーム電流100nAの電子ビームを用いて、二次電子放出効率が1.5であるウエハの100μm2の領域を10msで照射すると、放出される二次電子電流量は(I×δ×T)より100(nA)×1.5×10(ms)=1.5×10−9(A・s)となり、1.5×10−9(A・s)÷1.6×10−19(c)より9350×106個の電子が放出される。ウエハ上に電位障壁が形成されているため、二次電子はウエハ表面に戻され、戻り二次電子の領域がπr2(mm2)のとき、(二次電子数)÷(二次電子の戻る領域の面積)より、戻り二次電子の密度は、9350×106/πr2(個/mm2)となる。rは戻り領域の半径。単位時間当りの電荷の逃げ量τ(1/s)で、画像を形成に10ms要するため、リークする電荷量は戻り二次電子×τ×10×10−3(個)である。これより画像を形成したときの最終的な戻り二次電子の電流密度は、(9350×106×(1−τ×10×10−3))/πr2(個/mm2)である。単位時間当りの逃げ量をτ=0.9×102(1/s)とすると、電流密度は9350×105/πr2(個/mm2)となる。電位障壁高さは1mmであり、計算により、このときの二次電子が戻る領域の半径は0.5mmである。このとき電流密度は、1.2×109(個/mm2)である。基盤上に厚さ1.0μm、誘電率3である絶縁膜が形成されているので、ウエハは≒−4Vに帯電する。これにより、ウエハの帯電が−4Vの状態で、コントラストの高い画像を取得することが可能となった。
【0019】
電位障壁の高さが1mmより大きくした条件でウエハの画像を取得した場合には、コントラストが無く画像が暗いものに対し、今回障壁電位を1mm以下にすることで、コントラストの高い明瞭な負帯電の画像となった。障壁電位が1mmより大きい条件では、ウエハの負帯電が十分でないために二次電子の出射エネルギーが低く障壁電位を通過できないために、検出する二次電子が少なく画像が暗くなるという結果が得られた。
(実施例2)
次に、第2の実施例について図を用いて説明する。
図4は、図3に示される対称なビームプロファイルを持つ一次電子線が被検査試料に照射された場合の戻り二次電子と、電位障壁を模式的に示した図である。また図5は、図3の電子線を被検査試料に照射したときに形成される照射点近傍の電位状態を示している。図5において、横軸は、照射点を含む距離を、縦軸は電位を示す。二次電子放出効率が1以上で収束された電子ビームがウエハに入射したとき、その照射された点は正に帯電しμmオーダー以下の電位障壁が形成される。これは制御電極が形成するマクロな電位障壁と比較して非常に小さく、電子ビームが照射する周辺のμmオーダー領域に形成される。以下このμmオーダーの障壁をミクロな電位障壁と呼ぶ。このミクロな電位障壁が形成されると二次電子は、そのミクロな電位障壁のため、ウエハ表面に再配分される。この二次電子再配分により電子線が照射される点の周辺では、図4、7に示すように負に帯電する。
【0020】
電子ビーム電流Iで照射した点が+V0(V)で帯電し、その照射した周辺が二次電子再配分により−V1で負帯電したとき、正帯電した領域と負帯電した領域の境界での電位勾配は(V0+V1)/l1となる。l1は正帯電領域と負帯電領域との距離であり、本実施例では、電子ビームスポットの周囲であって、帯電電位が最大値V0(V)と最小値−V1(V)の和の2分の1、すなわち|V0+V1|/2になる点と、この点の外側に形成される帯電電位が−V1/2(V)となる点との距離と定義している。実際には、このような点は、電子ビームスポットの周囲に同心円状に形成される。従って、電子ビームスポットの周囲で帯電電位が|V0+V1|/2になる円の直径と、その外側の耐電電位が−V1/2(V)となる円の直径との差の1/2と定義しても良い。
【0021】
図7は、図6に示される非対称な電子ビームプロファイルを持つ一次電子線が被検査試料に照射された場合の戻り二次電子と、電位障壁を模式的に示した図である。図7の36は、電子ビームの収束された成分、37が収差成分を示す。ここで、収差とは電子レンズにより収束されきらなかった電子ビームの成分を意味するものとする。より具体的には、光軸から離れた物点から斜めに入った光が点とならず、彗星状に広がる成分のことであり、コマ収差とも呼ばれる。電子線の収差成分が照射された領域は正に帯電するが、その帯電量は、電子ビームの収束成分が照射された領域の耐電電位に比べて非常に小さい。電荷は帯電量の絶対値の大きい方に拡散し、その拡散速度は電位勾配に比例する。従って、電子線の収差成分が照射された領域の電位勾配は緩やかになり、収差成分が照射されなかった領域と電子ビームスポットの中心位置との間の電位勾配は非常に急峻になる。
【0022】
図8には、図6のような非対称なビームスポット形状を有する電子線を被検査試料に照射したときに形成される照射点近傍の電位状態を模式的に示した。収差成分が照射された電位勾配の大きさは、正帯電領域と負帯電領域との距離l1、l3、および帯電電位V1とV3により表現することができる。V3は収差成分により正帯電する領域の耐電電位の最大値である。l1は、電子ビームの収束成分が照射された領域における正帯電領域と負帯電領域との距離であり、定義は、図5のそれと同様である。l3は収差成分が照射された領域における正帯電領域と負帯電領域との距離であり、帯電電位がV3になる点とこの点の外側に形成される帯電電位が−V1/2(V)となる点との距離と定義される。実際には、帯電電位がV3になる位置と帯電電位が−V1/2(V)となる位置とはそれぞれ複数存在し、ある領域を形成するので、帯電電位がV3になる領域と帯電電位が−V1/2(V)となる領域との最短距離と定義しても良い。V3はV1と比較し非常に小さく、電位勾配(V3+V1)/l3は0に近くなる。このため再配分された二次電子による負電荷の逃げを抑制することができ、再配分された二次電子によりウエハは負帯電状態を維持できる。また、画像を形成する電子ビームの収差成分で予備的に照射するため、画像取得直前で予備照射することとなる。画像を取得してから予備照射するまでの時間は電荷の逃げと比較し十分小さく、負帯電状態を維持したまま画像を取得するため、コントラストの高い画像を得ることができる。
【0023】
下記に上記の原理に基づき課題を解決した装置構成例を、図面を参照しながら説明する。
本発明の基本概念は、絞り6の孔形に非対照部を設けることで実現する。上記構成において、絞り6の孔形は対称な同心円状部61と非対称部62とで成り立っている。この様子を図10に示す。この絞り6を通過し被検査基板23上の照射される電子線の形状がどのようなものになるかを説明する。同心円状部61の半径をR1、これを通過した電子線36の被検査基板23上の照射角をα1とする。また、非対称部62の同心円状部61の中心からの最遠点の距離をR2とし、これを通過した電子線36の光軸中心からの角度をα2とする。なお、被検査基板23には高圧電源25により負の電位が印加されており、電子線36、37は基板23直前で減速されるため実際の照射角は基板23直前で数倍に増大する。ここでは説明を簡単にする為に、高圧電源25がゼロ電位の場合について説明する。なお、負電位が印加されている場合は照射角等の値が一定の割合で拡大するだけである。
【0024】
同心円状部61を通過した電子線36はほぼ100nAの電流で被検査基板23上の直径はおよそ0.1μmまたはそれ以下になっている。この直径は、対物レンズ7とコンデンサレンズ3の球面収差と色収差およびビームの照射角で決まる回折収差、さらには空間電荷効果と電子源の光源の大きさで決定される。これらの収差のうち球面収差と色収差は絞り半径R1が大きいほど増大し、一方、回折収差と空間電荷効果はR1が小さいほど増大する。同心円状部61の半径R1は、電子線36が所定のビーム電流(例えば100nA)において、これらの収差が最小となるような条件に最適化されている。例えば15〜25μm程度である。一方、同心円状部の中心からの距離R2は収差を考慮した時の最適値R1より大きい。したがって非対称孔62を通過した電子線37は対物レンズ7の中心からより離れた角度を通過するために球面収差と色収差が大きくなる。特に球面収差は照射角の3乗に比例するために急激に大きくなる。球面収差とはレンズの中心軸から離れた軌道を通る電子線ほど焦点が短くなる収差と定義される。これらの電子線の概念図を図11と図12に示す。図11は絞り6と対物レンズ7を含んだ図で、非対称部62を通過した電子線37は同心円状部61を通過した電子線36よりも大きく回折されるため片側にすそを引く。図12は、被検査基板23の近傍を拡大した図で、電子線37は電子線36の一方向を照射することになる。図15は被検査基板23上に照射される電子の断面密度分布を示したものである。中心は鋭く立ちあがったピークを持ち、そのピークの片側はだれた分布を持つことになる。
【0025】
また、図13に示すようにウエハ上に設置した制御電極8の中心軸からずらして電子線を入射するとコマ収差が発生し、図14に示すよう、電子は軸上の中心を通過した電子線と軸外を通過した収差成分37がウエハ上を照射する。これにより、図15に示すような片側にすそを引いた電子ビームのプロファイルをもつ電子ビームを形成できる。
【0026】
図16には、本実施例の非対称なビームスポット形状の電子線が、被検査基板上を実際に走査されていく様子を示した。37が絞りの非対称部62を通過した電子線、即ち電子線の非対称部を示す。36が電子線の対称部である。実線で示した矢印が電子線の走査方向であり、白抜きの矢印が試料ステージの移動方向を示す。図16から判るように、電子線の非対称部は、電子線の対称部36に対して、電子線の走査方向と垂直方向かつステージ移動方向と逆方向に存在するように配置されている。この条件で画像を取得した場合、取得された画像のコントラストが高いものとなる。対照的に、電子線の非対称部を電子線の対称部36に対して、電子線の走査方向と垂直方向かつステージ移動方向と同方向に存在するように配置した条件下で画像を取得した場合には、負帯電が不十分であり、得られる画像のコントラストは低くなる。
【0027】
上記構成により、絶縁物を含む半導体回路パターンを観察した例を説明する。図17はSi基板40上に酸化膜38と導通孔39が形成されている構造を模式的に示したものである。ここでは導通孔39ついて説明する。図15に示すように中心部に鋭いピークを持った大電流の電子線36とその周囲の電子線37を含む電子線50は左から右に走査され、その周辺の電子線37はステージ24の移動方向と反対方向に照射されている。約100nAの電流量である電子線36の照射点における正の電位は高く、収差成分である電流量の少ない電子線37の照射点における正の電位は低い。その2つの電流量の異なる電子線36,37により形成される障壁の電位勾配は、これから走査する方向に対して緩やかになる。その電位勾配が緩やかなために、再配分された二次電子の移動は抑制される。この二次電子再配分による負の帯電の効果が高まる。
【0028】
これから電子線が走査する領域は負に帯電しており、取得される画像は負帯電の画像となる。一方、収差成分を有する電子線37がステージ24の移動方向と同方向に照射している場合には、電子線36,37により形成される緩やかな電位勾配はこれから走査するには形成されない。これから走査する方向の電位勾配は、電流量100nAの電子線36により照射された正の高い電位領域とその周囲の帯電してない領域により、急峻なものとなる。その急峻な電位勾配のため再配分された二次電子の移動速度は速くなる。ゆえに、これから走査する領域では、この二次電子の再配分による負の帯電の効果はなくなり、取得される画像は正帯電の画像となる。電子線50から電子線51までにビームを走査することにより、次の電子線52の走査する領域は負極性であるため、画像は図18のように負帯電の画像となる。正帯電のときは、非導通部は正に帯電し導通部は帯電しないためアース電位となる。正に帯電した領域では、障壁が形成されて二次電子はウエハ表面に戻され、二次電子が検出できず暗いものとなる。一方、アース電位である導通部では、二次電子が戻される障壁は形成されず、二次電子が検出され明るいものとなる。負帯電の場合においては、非導通部では負に帯電するため障壁が形成されず、二次電子は検出され明るいものとなる。非導通部ではアース電位となり障壁が形成され二次電子が戻されるため、二次電子が検出されず暗いものとなる。ゆえに正帯電を利用して検査した場合、導通部のホールは明るく、非導通部は暗くなる。高アスペクトホールを対象とした検査で正帯電を利用して検査すると、導通部であっても側壁が正に帯電し、奥底の二次電子が側壁に衝突するためにホール部が暗くなってしまい、欠陥検出が困難であった。
【0029】
正帯電では欠陥検出が困難であったホールウエハの検査において、電子ビームの収差成分を利用したウエハの負の帯電制御により、欠陥検出を可能とした。
【0030】
また、本実施例の検査装置においては、フラッドガン等、ウエハ帯電用の電子源を用いず、画像取得用の電子線を用いて被検査試料を帯電させている。したがって、帯電のための電子線照射と画像取得のための電子線照射の間に時間差が生じない。帯電用の電子源を用いて検査試料を帯電させる場合、画像取得用の電子線照射前に、帯電用の電子線を予備的に照射した後、画像形成用の電子線により画像を取得している。実際には、試料表面での電荷の逃げがあるため、画像形成用の電子線が照射される際には、試料表面の帯電電位は所望の電位とはなっていない。したがって、取得される画像はコントラストが小さく、よって検出感度も予測よりも低い。
【0031】
本実施例の検査装置は、帯電と画像取得用の電子線照射の間で時間差が無いので、従来技術と比較して、検出画像の電位コントラストも大きく、したがって欠陥検出の感度も高い。
更に、本実施例の検査装置は、上記帯電用の電子源を設ける必要がないため、装置の小型化・装置の調整の容易化を図る上で有利であり、更にはコストダウンの面でも有利である。
【0032】
【発明の効果】
本発明により,半導体の回路パターンの欠陥,異物,残渣等を電子線により検査する方法において,高アスペクトコンタクトホールやpn接合を有するさまざまな工程の半導体ウエハ上に対応して帯電を制御し、半導体ウェハの検査が可能となった。
これにより,製造過程で発生した従来装置で検出できない欠陥を発見可能にし,半導体プロセスにフィードバックすることにより半導体装置の不良率を低減し,信頼性を向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術の課題を説明する図。
【図2】本発明の原理を説明する図。
【図3】本発明の電子線の形状を説明する図。
【図4】本発明の原理を説明する図。
【図5】本発明の原理を説明する図。
【図6】本発明の電子線の形状を説明する図。
【図7】本発明の原理を説明する図。
【図8】本発明の原理を説明する図。
【図9】本発明の実施例の構成を示す図。
【図10】本発明の実施例を説明する図。
【図11】本発明の原理を説明する図。
【図12】本発明の原理を説明する図。
【図13】本発明の原理を説明する図。
【図14】本発明の原理を説明する図。
【図15】本発明の電子線の状態を説明する図。
【図16】本発明の動作状態を説明する図。
【図17】本発明の動作状態を説明する図。
【図18】本発明により取得した画像を説明する図。
【符号の説明】
1:電子銃
2引き出し電極
3:コンデンサレンズ
4:ブランキング用偏向器
5:走査偏向器
6:絞り
7:対物レンズ
8:制御電極
9:アース電極
10:X−Yステージ
11:回転ステージ
12:位置モニタ用測長器
13:光学式試料高さ測定器
14:二次電子検出器
15:プリアンプ
16:AD変換器
17:アライメントコイル
18:画像記憶部
19:画像記憶部
20:演算部
21:欠陥判定部
22:モニタ
23:被検査基板
24:ステージ
25:高圧電源
26:対物レンズ電源
27:補正制御回路
28:走査信号発生器
29:制御電極電源
36:(絞りの)同心円状孔を通過する電子線
37:(絞りの)非対称孔を通過する電子線電子線
46:(制御電極の)同心円状孔を通過する電子線
47:(制御電極の)非対称孔を通過する電子線電子線
61:(絞りの)同心円状孔
62:(絞りの)非対称孔
81:(制御電極の)同心円状孔
82:(制御電極の)非対称孔
91:ウエハ表面に戻される二次電子
92:制御電極により形成される電位障壁
101:電子光学系
102:試料室
103:予備室
104:制御部
105:画像処理部。
Claims (12)
- 被検査試料を保持する試料ステージと、電子線源と、該電子線源により発生した電子線を前記被検査試料上に集束する対物レンズと、前記試料近傍の電位勾配を制御する手段と、前記被検査試料上に照射される電子線のビームスポットの形状を制御する手段と、前記電子線の被検査試料への照射により生成された二次電子を検出する二次電子検出器と、前記被検査試料を負に帯電する手段とを有し、前記ビームスポット形状が非対称であることを特徴とする半導体検査装置。
- 請求項1に記載の半導体検査装置において、前記非対称なビームスポット形状は、円形状の対称部と、該対称部以外の非対称部とからなることを特徴とする半導体検査装置。
- 請求項1に記載の半導体検査装置において、前記ビームスポットの形状制御手段として、非対称な形状の絞り孔を有する絞りを備えたことを特徴とする半導体検査装置。
- 請求項2に記載の半導体検査装置において、
前記試料ステージを移動する手段とを有し、該試料ステージを移動する手段は、前記被検査試料の所望の検査箇所に対して、前記ビームスポットの非対称部が前記対称部よりも先に検査箇所に照射されるように前記ステージを移動することを特徴とする半導体検査装置。 - 請求項2に記載の半導体検査装置において、
前記円形状の対称部の中心に対し、前記非対称部とは逆側に前記試料ステージを移動する移動手段を備えたことを特徴とする半導体検査装置。 - 請求項4に記載の半導体検査装置において、
前記電子線源から放射された電子線を被検査試料上に走査させる手段を有し、該走査させる手段は、前記ステージの移動方向とは垂直な方向に電子線を走査することを特徴とする半導体検査装置。 - 被検査試料を保持する試料ステージと、電子線源と、該電子線源により発生した電子線を前記被検査試料上に集束する対物レンズと、前記被検査試料近傍の電位勾配を制御する手段と、前記電子線の被検査試料への照射により生成された二次電子を検出する二次電子検出器とを有し、
前記電位勾配を制御する手段により、前記制御電極と前記アース電極間の電界強度E1、制御電極とウエハ間の電界強度E2としたとき、制御電極とウエハ間距離にE1に対するE2の比を乗じたもの(d×E1/E2)が1.0mm以下の条件となる電極構成を特徴とする検査装置。 - 請求項7に記載の半導体検査装置において、前記電位勾配を制御する手段として、電子線が通過する通過孔を備えた制御電極と、該制御電極上に設置されかつ電子線が通過する通過孔を備えたアース電極とを有し、
前記制御電極の通過孔の大きさは前記アース電極の通過孔の大きさよりも大きいことを特徴とする半導体検査装置。 - 請求項7に記載の半導体検査装置において、前記制御手段により形成される所望の前記電位障壁を前記ウェハ上1mm以下の高さとなるよう前記制御手段の電圧および前記ウエハの印加電圧を調整したことを特徴とする半導体検査装置。
- 電子線を発生し、
該発生した電子線のビームスポット形状を、円形状の対称部と該対称部以外の非対称部とを備える形状に調整し、
該ビームスポット形状を調整された電子線を被検査試料の所望の位置に集束し、
前記非対称部が対称部よりも先に被検査箇所に照射されるように前記電子線を被検査試料上で相対移動し、
前記被検査試料から発生する二次電子を検出することを特徴とする半導体検査方法。 - 電子線を発生し、
該電子線を被検査試料上に照射し、
前記電子線照射による二次電子に対する電位障壁を、前記被検査試料上1mm以下の高さに形成し、
前記電子線を被検査試料上に走査し、
該走査による二次電子を検出することを特徴とする半導体検査方法。 - 請求項10または11に記載の半導体検査方法において、前記被検査試料を負に帯電することを特徴とする半導体検査方法。
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