JP2004342235A - 光学記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】両面に記録層を有する光学記録媒体を製造するに際し、遅効性の光硬化接着剤を用いた場合でもスクリーン交換の必要がない光学記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】片面に記録層3、4を有する基板11、12同士を貼り合わせて両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5を製造する方法であって、基板11、12の記録層3、4が設けられている側に遅効性光硬化接着剤7を供給するとともにスピンコートして接着剤層を7’形成し、各接着剤層7’に、照射量を調整した光を照射した後に、これらの基板11、12の接着剤層7’同士を重ね合わせて貼り合わせを行う。これにより、スクリーンやスキージなどの消耗品を用いることなく、十分な強度を有する光学記録媒体5を得ることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】片面に記録層3、4を有する基板11、12同士を貼り合わせて両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5を製造する方法であって、基板11、12の記録層3、4が設けられている側に遅効性光硬化接着剤7を供給するとともにスピンコートして接着剤層を7’形成し、各接着剤層7’に、照射量を調整した光を照射した後に、これらの基板11、12の接着剤層7’同士を重ね合わせて貼り合わせを行う。これにより、スクリーンやスキージなどの消耗品を用いることなく、十分な強度を有する光学記録媒体5を得ることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は貼り合わせ構造を有する光学記録媒体の製造方法に係わり、特に、両面に記録層を有する光学記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年著しく生産量が伸びているDVD等の映像を記録できる大容量の光学記録媒体は、図4(a)および(b)に示すような構造をしており、図4(a)に示すように、片面にのみ記録層1を有する光学記録媒体2である場合と、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5である場合とがある(なお、これらの図においては、記録層1、3、4の凹凸を誇張して図示している)。
【0003】
これらの光学記録媒体2、5は、互いに製造方法が異なり、使用する光硬化接着剤として、片面にのみ記録層1を有する光学記録媒体2を製造する場合には速効性の光硬化接着剤6が使用され、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5を製造する場合には遅効性の光硬化接着剤7が使用される。
【0004】
速効性の光硬化接着剤6は、光が照射されると即時に硬化が完了する接着剤であり、光の照射強度と照射量とがある一定以上であれば即時に硬化が完了する。一方、遅効性の光硬化接着剤7は、光が照射されてもすぐには硬化が完了せずに徐々に硬化が進行して、ある時間が経過後に硬化が完了するタイプであり、硬化が完了するまでの時間は光の照射強度や照射量により変化する。
【0005】
片面にのみ記録層1を有する光学記録媒体2の製造方法においては、成型機を用いて、スタンパーとよばれる情報ピットが刻まれた原盤上に、溶融したポリカーボネイト樹脂を射出成形して、透明板上にピットが形成された基板8(図4(a)参照)を製作する。この基板8は記録層を有さない構造材としてのハーフディスクとして使用される。また、同様に製作した基板9上にアルミ膜などの反射膜をスパッタリングにより成膜した記録層1を有するハーフディスクを用意する。そして、これらの2枚のハーフディスクを、速効性の光硬化接着剤6によって所定の間隔を保持しながら貼り合わせる。
【0006】
この片面にのみ記録層1を有する光学記録媒体2の製造工程を、図5(a)〜(d)を参照しながら、さらに詳しく説明する。図5(a)に示すように、情報ピットを有する基板9に反射膜からなる記録層1を成膜した下基板の上に、接着剤層6’になる速効性の光硬化接着剤6をディスペンサ10で円環状に滴下する。光硬化接着剤6としては室温で粘度が400〜600mPasのものが使用される。この粘度が使用される理由は、通常、光硬化接着剤6をスピンさせて振り切ることで所定厚みにするスピン工程での最大回転数が3000rpm以下であり、許容振り切り時間が3秒以下であるために、接着剤層6’に要求される厚みである40〜80μmを達成することに必要とされる粘度であるからである。
【0007】
この円環状に滴下した光硬化接着剤6の上に記録層を有さない上ハーフディスク(基板8)を重ね(図5(b)参照)、その後、高速で回転するスピナーで、余分な光硬化接着剤6を振り切って所定の厚みの接着剤層6’を形成する(図5(c)参照)。図5(d)に示すように、最後に、記録層を有さないハーフディスク(基板8)側からランプ16などで光を照射して速効性の光硬化接着剤6を硬化させて、光学記録媒体2を完成させる。このように、片面にのみ記録層1を有する光学記録媒体2を製造する場合は、光硬化接着剤6を基板8、9間に延伸した後に、光硬化接着剤6に直接に光照射が可能であるので、速効性の光硬化接着剤6を使用できる。
【0008】
次に、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5の製造方法を説明する。
両面に記録層3、4がある光学記録媒体5を製造する場合には、片面だけに記録層1を有する光学記録媒体2と同じようにハーフディスク間に速効性の光硬化接着剤6を延伸しても、記録層3、4は光を透過させないために、光を直接に光硬化接着剤6に照射して、硬化させることができない。このために、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5を製造する際には速効性の光硬化接着剤6は使用できない。なぜならば、速効性の光硬化接着剤6では即時に硬化が完了して、硬化完了後は接着剤層6’に接着力が無くなるので、速効性の光硬化接着剤6を貼り合わせに使用するためには基板11、12間に光硬化接着剤6を充填した後に、硬化に必要な照射強度と照射量とを速効性の光硬化接着剤6に直接照射する必要があるからである。
【0009】
このために、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5を製造する場合における貼り合わせ工程では、通常は、図6(a)〜(f)に示すような方法で、遅効性の光硬化接着剤7を用いたスクリーン印刷を利用して行われる。ここで、スクリーン印刷法とは、接着剤を供給する工程において、図6(a)に示すようなスクリーン印刷機(図6(a)においては、スクリーン印刷機のスクリーン13およびスキージ14を示している)を用い、印刷パターンを決めるスクリーン13上に遅効性の光硬化接着剤7を載せて、スキージ14で圧力を加えて延ばすことで、記録層3を形成した基板11(または記録層4を形成した基板12)上に接着剤層7’を形成する工法である。スクリーン印刷工法を用いて接着剤層7’を形成した場合は、スクリーン13のメッシュパターンが接着剤層7’に残るので、一般には接着剤層7’はその平面度が鏡面までは無く、規則的な凸凹を有する粗面となる。
【0010】
この接着剤層7’にランプ16などで光を照射する(図6(b)参照)と光硬化接着剤7の硬化が始まるが、その硬化速度は光の照射量と照射強度にもより、遅効性の光硬化接着剤7は徐々に粘度が上昇する。硬化が進行して、ある程度の高粘度になるまでは、遅効性の光硬化接着剤7は粘着力を有しており、図6(c)に示すように、この段階で基板11、12同士を重ね合わせることで、光照射後でも基板11、12同士を接着させることができる。しかし、遅効性の光硬化接着剤7が十分に硬化していない状態で基板11、12同士を重ね合わせて、接着しただけでは外力が加えられた場合に基板11、12同士が外れて変形をおこし得る。このために、遅効性の光硬化接着剤7からなる接着剤層7’の硬化が進み、十分に硬くなるまでは、図6(d)に示すように、基板11、12を貼り合わせた貼合わせディスク20に重し15を載せておく必要がある。遅効性の光硬化接着剤7が完全に硬化するまでには、時間がかかるので、基板11、12のずれが生じないくらいに硬化した段階で、図6(e)に示すように、貼合わせディスク20が自重で歪まないように、ポール18に通すなどして縦置きにして、完全に硬化させる必要がある。ここで、図6(d)における17は、基板11、12を載せる台である。
【0011】
なお、このような貼り合わせ構造を有する従来の光学記録媒体の製造方法として、特許文献1、2などにも同様な光学記録媒体の製造方法が開示されている。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−340488号公報
【0013】
【特許文献2】
特開平11−66644号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5を製造する場合におけるスクリーン印刷法では、遅効性の光硬化接着剤7を塗布する際にスクリーン13とスキージ14とが擦れて、スクリーン13が摩耗するために、スクリーン13の使用回数が数千回と限られ、比較的頻繁にスクリーン13を交換する必要があり、製造コストが高めになってしまうという問題があった。
【0015】
また、上記問題を解消する手法として、遅効性の光硬化接着剤を基板にスピンコートすることも、1つの案として考えられていたが、遅効性の光硬化接着剤を基板にスピンコートしてみると、塗布された接着剤層がその表面が鏡面状となり、形成した接着剤層に十分な光照射を行った後に、接着剤層を有する基板同士を接着剤層が互いに対面するように接着した場合に、接着剤層に大きな気泡が生じることがあり、この場合には、光学記録媒体の機械特性が悪化して(すなわち、強度が低下したり、強度に著しい偏りを生じたりして)、使用に耐えられない物になることがあった。
【0016】
本発明は上記課題を解決するもので、両面に記録層を有する光学記録媒体を製造するに際し、遅効性の光硬化接着剤を用いた場合でもスクリーン交換の必要がない光学記録媒体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、片面に記録層を有する基板同士を貼り合わせて両面に記録層を有する光学記録媒体を製造する方法であって、基板の記録層が設けられている側に遅効性光硬化接着剤を供給するとともにスピンコートして接着剤層を形成し、各接着剤層に、照射量を調整した光を照射した後に、これらの基板の接着剤層同士を重ね合わせて貼り合わせを行うことを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、遅効性の光硬化接着剤を用いた場合でもスクリーン交換の必要がなく、低コストで光学記録媒体を製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の発明は、片面に記録層を有する基板同士を貼り合わせて両面に記録層を有する光学記録媒体を製造する方法であって、基板の記録層が設けられている側に遅効性光硬化接着剤を供給するとともにスピンコートして接着剤層を形成し、各接着剤層に、照射量を調整した光を照射した後に、これらの基板の接着剤層同士を重ね合わせて貼り合わせを行うことを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、スクリーンやスキージなどの消耗品を用いることなく基板に光硬化接着剤を所定の厚みや粘度で設けることができる。また、照射量を調整した光を照射することで、基板同士を接着した際に、接着剤層に大きな気泡が生じることを防止することが可能となる。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の光学記録媒体の製造方法において、スピンコートした接着剤層の厚さが20〜100μmであることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の光学記録媒体の製造方法において、遅効性光硬化接着剤の粘度が100〜5000mPasであることを特徴とする。
【0022】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の光学記録媒体の製造方法において、光の照射後で貼り合わせ直前の接着剤層の粘度が300〜8000mPasであることを特徴とする。
【0023】
請求項2〜4の発明によれば、記録層を有する基板同士の貼り合わせを接着剤層を介して行う際に、接着剤層が適当な粘度と厚みとを有する状態となり、大きな気泡が接着剤層に内包されたりすることを良好に防止することができて、良好な光学記録媒体を得ることができる。
【0024】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の光学記録媒体の製造方法において、貼り合わせ時に荷重をかけることを特徴とする。
この方法によれば、基板同士が外れたりずれたりして変形することを防止できる。
【0025】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の光学記録媒体の製造方法において、貼り合わせ後の光学記録媒体を縦置きにして保持することを特徴とする。
【0026】
この方法によれば、貼り合わせ後に光学記録媒体が自重で歪むことを防止することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
本発明は、遅効性光硬化接着剤を基板にスピンコートし、この基板に、照射量を調整した光を照射した後に、基板同士の貼り合わせを行うものである。
この場合に、遅効性光硬化接着剤を基板にスピンコートすることも、1つの案として考えられていたが、上述したように、遅効性の光硬化接着剤を基板にスピンコートした場合、塗布された接着剤層はその表面が鏡面状となる性質を有するために、形成した接着剤層に単に光照射を行うだけでは、この後に接着剤層を有する基板同士を接着剤層が互いに対面するように接着した場合に、図3(a)に示すように接着剤層に大きな気泡22が生じることがあり、この場合には、光学記録媒体の機械特性が悪化して(すなわち、強度が低下したり、強度に著しい偏りを生じたりして)、使用に耐えられないことがあった。
【0028】
しかしながら、本発明による製造方法によれば、製造コストが高いスクリーン印刷法と同等の機械特性、すなわち、光学記録媒体としての十分な強度が得られ、かつ、強度に著しい偏りを生じることなく、低コストの製造方法が提供できることがわかった。
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明による貼り合わせ構造を有する光学記録媒体の製造方法を示す。なお、従来の光学記録媒体の製造方法で用いたものと同様な機能のものには同符号を付す。
【0030】
まず、図1(a)に示すように、回転手段としてのスピナー21上に、記録層3が形成された基板11を、記録層3が上方となるようにセットして、その上に、100〜5000mPasの粘度を有する遅効性の光硬化接着剤7をディスペンサ10などにより環状に滴下する(接着剤供給工程)。この状態でスピナー21を回転させることにより、遅効性の光硬化接着剤7を基板11の全面に伸延させて20〜100μmの厚みの接着剤層7’を形成する(スピン工程)。
【0031】
この場合に、このスピンコートによる接着剤層7’の形成工程においては、遅効性の光硬化接着剤7の粘度が高いほど厚みが厚くなり、回転が高速であるほど厚みは薄くなり、回転時間が長いほど厚みは薄くなる傾向がある。すなわち、粘度、回転数、回転時間を最適化することにより必要な厚みを有する接着剤層7’を得ることができ、この接着剤層7’に適度な照射量を調整した状態で、遅効性の光硬化接着剤7に光照射を行うことで、接着剤層7’の硬化を徐々に始めることができる。
【0032】
すなわち、従来の製造方法においては、接着剤層7’に十分な光照射を行っていたので、接着剤層7’の硬化が急速に進み、貼り合わせを行う際には接着力は有しているが、流動性の無い状態になっており、このために、基板11の接着剤層7’に他の基板12を重ね合わせても、図3(a)に示すように、大きな気泡22が接着剤層7’に内包されていた。しかし、両方の基板11、12の面に記録層3、4を有する場合に、各遅効性の光硬化接着剤7からなる接着剤層7’に、照射量を調整した光を所定の設定範囲内の条件で照射した後に、これらの基板11、12の接着剤層7’、7’同士を重ね合わせて貼り合わせると、図3(b)に示すように、接着剤層7’内に細かい気泡23が分散して存在するにとどまり、その光学記録媒体5の機械特性には影響を及ぼさないことが分かった。
【0033】
ここで、遅効性光硬化接着剤7に光照射を行った場合の光照射量と、前記接着剤7の粘度変化との様子は模式的には図2のように表される。すなわち、光照射量を調整することで、貼り合わせ時の接着剤7の粘度と硬度とを変化させることができることが分かった。しかし、光照射量を変えると硬化完了までの時間が変わるので、生産タクトが長くなる場合があるという問題もある。接着剤7の硬化が完了するまでの過渡状態で基板11に塗布した接着剤7を他の基板12が対面するような姿勢で貼り合わせると、つぎのような現象が生じることがわかった。すなわち、接着剤層7への照射光量と貼り合わせまでの時間とを制御することで、接着剤7、7同士を重ねて貼り合わせた時に、貼り合わせ直後では接着剤層7’に図3(a)に示すような大きな気泡22が生じるが、接着剤層7’が適当な粘度と厚みを有していると、毛細管現象により大きな気泡22中へ接着剤7の浸透が行われる。そして、この接着剤7の浸透により大きな気泡22の隙間を接着剤により埋められることになる。つまりこの状態では、気泡の空気圧と接着剤7の浸透圧との両方のエントロピーが最小になるように気泡量と接着剤量とがバランスするために、図3(b)に示すような細分化された気泡23と接着剤7、7とが迷路のように入り組んだ状態になることが分かった。
【0034】
ただし、図3(a)、(b)は本発明による接着剤および気泡の状態を明示するために、記録層3,4を有さない透明基板を使用している。すなわち、実際に光学記録媒体5の製造の際には不透明の記録層3,4のために接着剤層7’の状態を外部から見ることはできない。このように製造した光学記録媒体の機械特性を測定したところ、従来のスクリーン印刷法により製造した光学記録媒体5の機械特性と同じであった。
【0035】
次に、本発明の実施の形態にかかる、より具体的な光学記録媒体の製造方法について説明する。
(実施の形態1)
ポリカーボネイトを射出成形して情報ピットを刻んだ基板11に、アルミニウム合金をスパッタリング装置で厚さ60nmに成膜して記録層3を形成し、この記録層3を形成した基板11の上に、粘度が460mPasである遅効性光硬化性接着剤7を環状に滴下して(図1(a)参照)、3000rpmで4秒間スピンを行った(図1(b)参照)。その結果、40μmの接着剤層7’の厚みを有するハーフディスク(接着剤塗布基板)31を得た。同様にして、記録層4を形成した基板12の上に、遅効性光硬化性接着剤7を環状に滴下してスピンを行い、もう一枚のハーフディスク32を準備した。
【0036】
そして、図1(c)に示すように2枚のハーフディスク31、32それぞれにランプ16で500cd/cm2の光照射を行った。この2枚のハーフディスク31、32を重ね合わせて(図1(d)参照)、完全に硬化するまで、重し34を載せて保持したところ、10分後に完全に硬化した。なお、張り合わせ直前の粘度は1000mPasであった。なお、図1(e)における35は載せ台である。
【0037】
このようにして製造した光学記録媒体5の機械特性を測定したところ、十分な強度を有するとともに、強度の偏りもなく、実用上は全く問題が無い特性であった。測定後に光学記録媒体5のハーフディスク31、32同士を剥離して、気泡の状態を調べたところ、接着剤層7’に大きな気泡23は含まれておらず、細かな気泡22だけが見出された。
(実施の形態2)
ポリカーボネイトを射出成形して情報ピットを刻んだ基板11に、アルミニウム合金をスパッタリング装置で厚さ60nmに成膜して記録層3を形成し、この記録層3を形成した基板11の上に、粘度が1000mPasである遅効性光硬化性接着剤7を環状に滴下して(図1(a)参照)、3000rpmで4秒間スピンを行った(図1(b)参照)。その結果、80μmの接着剤層7’の厚みを有するハーフディスク(接着剤塗布基板)31を得た。同様にして、記録層4を形成した基板12の上に、遅効性光硬化性接着剤7を環状に滴下してスピンを行い、もう一枚のハーフディスク32を準備した。
【0038】
そして、図1(c)に示すように2枚のハーフディスク31、32それぞれにランプ16で1000cd/cm2の光照射を行った。この2枚のハーフディスク31、32を重ね合わせて(図1(d)参照)、完全に硬化するまで、重し34を載せて保持したところ、20分後に完全に硬化した。なお、張り合わせ直前の粘度は3000mPasであった。
【0039】
このようにして製造した光学記録媒体5の機械特性を測定したところ、十分な強度を有するとともに、強度の偏りもなく、実用上は全く問題が無い特性であった。測定後に光学記録媒体5のハーフディスク31、32同士を剥離して、気泡の状態を調べたところ、接着剤層7’に大きな気泡23は含まれておらず、細かな気泡22だけが見出された。
【0040】
また、同様にして、スピンコートした接着剤層7’の厚さを変えて実験したが、この厚さとしては20〜100μmである場合が好ましいことがわかった。すなわち、スピンコートした接着剤層7’の厚さが20μmよりも薄い場合には、接着強度が不足し、また、スピンコートした接着剤層7’の厚さが100μmよりも厚い場合には、ハーフディスク(接着剤塗布基板)31、32を重ね合わせた状態でこれらのハーフディスク31、32の相対位置が変化し易くなるとともに、光学記録媒体5としての厚さを越えてしまうおそれがある。これに対して、スピンコートした接着剤層7’の厚さが20〜100μmである場合には、十分な接着強度が得られるとともに、ハーフディスク31、32の相対位置が変化することもなく、良好な品質を維持できた。
【0041】
また、同様にして、遅効性光硬化接着剤7の粘度が互いに異なるものを実験したが、この遅効性光硬化接着剤7の粘度としては100〜5000mPasである場合が好ましいことがわかった。すなわち、遅効性光硬化接着剤7の粘度が100mPasよりも小さい場合には、接着強度が不足し、また、遅効性光硬化接着剤7の粘度が5000mPasよりも大きい場合には、毛細管現象による大きな気泡22中への接着剤7の浸透が行われ難くなり、大きな気泡22が残った状態で遅効性光硬化接着剤7が硬化し、この結果、強度が不足するおそれがある。これに対して、遅効性光硬化接着剤7の粘度が100〜5000mPasである場合には、十分な接着強度が得られるとともに、気泡が良好に細分化され、機械的強度も良好に維持される。
【0042】
また、同様にして、光の照射後で貼り合わせ直前の接着剤層7’の粘度が互いに異なるものを実験したが、この貼り合わせ直前の接着剤層7’の粘度としては、300〜8000mPasである場合が好ましいことがわかった。すなわち、貼り合わせ直前の接着剤層7’の粘度が300mPasよりも小さい場合には、接着強度が不足し、また、貼り合わせ直前の接着剤層7’の粘度が8000mPasよりも大きい場合には、毛細管現象による大きな気泡22中への接着剤7の浸透が行われ難くなり、大きな気泡22が残った状態で遅効性光硬化接着剤7が硬化し、この結果、強度が不足するおそれがある。これに対して、貼り合わせ直前の接着剤層7’の粘度が300〜8000mPasである場合には、十分な接着強度が得られるとともに、気泡が良好に細分化され、機械的強度も良好に維持される。
【0043】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、基板の記録層が設けられている側に遅効性光硬化接着剤を供給するとともにスピンコートして接着剤層を形成することにより、スクリーンやスキージなどの消耗品を用いることなく、基板に光硬化接着剤を所定の厚みや粘度で設けることができる。また、照射量を調整した光を照射することで、基板同士を接着した際に、接着剤層に大きな気泡が生じることを防止することが可能となり、十分な強度を有する光学記録媒体を得ることができる。
【0044】
また、スピンコートした接着剤層の厚さが20〜100μmであるように刑したり、遅効性光硬化接着剤として粘度が100〜5000mPasであるものを用いたり、光の照射後で貼り合わせ直前の接着剤層の粘度が300〜8000mPasであるように構成することで、良好な強度の光学記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(e)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る光学記録媒体の製造工程を示す図
【図2】接着剤に対する照射光量と粘度との関係を示す図
【図3】(a)は比較例としての光学記録媒体を示す図、(b)は本発明の実施の形態により製造した光学記録媒体を示す図
【図4】(a)は片面だけに記録層を有する光学記録媒体を示す断面図、(b)は両面に記録層を有する光学記録媒体を示す断面図
【図5】(a)〜(d)はそれぞれ片面だけに記録層を有する光学記録媒体を製造する従来の製造工程を示す図
【図6】(a)〜(f)はそれぞれ両面に記録層を有する光学記録媒体を製造する従来の製造工程を示す図
【符号の説明】
3、4 記録層
5 光学記録媒体
7 遅効性光硬化接着剤
7’ 接着剤層
11、12 基板
【発明の属する技術分野】
本発明は貼り合わせ構造を有する光学記録媒体の製造方法に係わり、特に、両面に記録層を有する光学記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年著しく生産量が伸びているDVD等の映像を記録できる大容量の光学記録媒体は、図4(a)および(b)に示すような構造をしており、図4(a)に示すように、片面にのみ記録層1を有する光学記録媒体2である場合と、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5である場合とがある(なお、これらの図においては、記録層1、3、4の凹凸を誇張して図示している)。
【0003】
これらの光学記録媒体2、5は、互いに製造方法が異なり、使用する光硬化接着剤として、片面にのみ記録層1を有する光学記録媒体2を製造する場合には速効性の光硬化接着剤6が使用され、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5を製造する場合には遅効性の光硬化接着剤7が使用される。
【0004】
速効性の光硬化接着剤6は、光が照射されると即時に硬化が完了する接着剤であり、光の照射強度と照射量とがある一定以上であれば即時に硬化が完了する。一方、遅効性の光硬化接着剤7は、光が照射されてもすぐには硬化が完了せずに徐々に硬化が進行して、ある時間が経過後に硬化が完了するタイプであり、硬化が完了するまでの時間は光の照射強度や照射量により変化する。
【0005】
片面にのみ記録層1を有する光学記録媒体2の製造方法においては、成型機を用いて、スタンパーとよばれる情報ピットが刻まれた原盤上に、溶融したポリカーボネイト樹脂を射出成形して、透明板上にピットが形成された基板8(図4(a)参照)を製作する。この基板8は記録層を有さない構造材としてのハーフディスクとして使用される。また、同様に製作した基板9上にアルミ膜などの反射膜をスパッタリングにより成膜した記録層1を有するハーフディスクを用意する。そして、これらの2枚のハーフディスクを、速効性の光硬化接着剤6によって所定の間隔を保持しながら貼り合わせる。
【0006】
この片面にのみ記録層1を有する光学記録媒体2の製造工程を、図5(a)〜(d)を参照しながら、さらに詳しく説明する。図5(a)に示すように、情報ピットを有する基板9に反射膜からなる記録層1を成膜した下基板の上に、接着剤層6’になる速効性の光硬化接着剤6をディスペンサ10で円環状に滴下する。光硬化接着剤6としては室温で粘度が400〜600mPasのものが使用される。この粘度が使用される理由は、通常、光硬化接着剤6をスピンさせて振り切ることで所定厚みにするスピン工程での最大回転数が3000rpm以下であり、許容振り切り時間が3秒以下であるために、接着剤層6’に要求される厚みである40〜80μmを達成することに必要とされる粘度であるからである。
【0007】
この円環状に滴下した光硬化接着剤6の上に記録層を有さない上ハーフディスク(基板8)を重ね(図5(b)参照)、その後、高速で回転するスピナーで、余分な光硬化接着剤6を振り切って所定の厚みの接着剤層6’を形成する(図5(c)参照)。図5(d)に示すように、最後に、記録層を有さないハーフディスク(基板8)側からランプ16などで光を照射して速効性の光硬化接着剤6を硬化させて、光学記録媒体2を完成させる。このように、片面にのみ記録層1を有する光学記録媒体2を製造する場合は、光硬化接着剤6を基板8、9間に延伸した後に、光硬化接着剤6に直接に光照射が可能であるので、速効性の光硬化接着剤6を使用できる。
【0008】
次に、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5の製造方法を説明する。
両面に記録層3、4がある光学記録媒体5を製造する場合には、片面だけに記録層1を有する光学記録媒体2と同じようにハーフディスク間に速効性の光硬化接着剤6を延伸しても、記録層3、4は光を透過させないために、光を直接に光硬化接着剤6に照射して、硬化させることができない。このために、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5を製造する際には速効性の光硬化接着剤6は使用できない。なぜならば、速効性の光硬化接着剤6では即時に硬化が完了して、硬化完了後は接着剤層6’に接着力が無くなるので、速効性の光硬化接着剤6を貼り合わせに使用するためには基板11、12間に光硬化接着剤6を充填した後に、硬化に必要な照射強度と照射量とを速効性の光硬化接着剤6に直接照射する必要があるからである。
【0009】
このために、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5を製造する場合における貼り合わせ工程では、通常は、図6(a)〜(f)に示すような方法で、遅効性の光硬化接着剤7を用いたスクリーン印刷を利用して行われる。ここで、スクリーン印刷法とは、接着剤を供給する工程において、図6(a)に示すようなスクリーン印刷機(図6(a)においては、スクリーン印刷機のスクリーン13およびスキージ14を示している)を用い、印刷パターンを決めるスクリーン13上に遅効性の光硬化接着剤7を載せて、スキージ14で圧力を加えて延ばすことで、記録層3を形成した基板11(または記録層4を形成した基板12)上に接着剤層7’を形成する工法である。スクリーン印刷工法を用いて接着剤層7’を形成した場合は、スクリーン13のメッシュパターンが接着剤層7’に残るので、一般には接着剤層7’はその平面度が鏡面までは無く、規則的な凸凹を有する粗面となる。
【0010】
この接着剤層7’にランプ16などで光を照射する(図6(b)参照)と光硬化接着剤7の硬化が始まるが、その硬化速度は光の照射量と照射強度にもより、遅効性の光硬化接着剤7は徐々に粘度が上昇する。硬化が進行して、ある程度の高粘度になるまでは、遅効性の光硬化接着剤7は粘着力を有しており、図6(c)に示すように、この段階で基板11、12同士を重ね合わせることで、光照射後でも基板11、12同士を接着させることができる。しかし、遅効性の光硬化接着剤7が十分に硬化していない状態で基板11、12同士を重ね合わせて、接着しただけでは外力が加えられた場合に基板11、12同士が外れて変形をおこし得る。このために、遅効性の光硬化接着剤7からなる接着剤層7’の硬化が進み、十分に硬くなるまでは、図6(d)に示すように、基板11、12を貼り合わせた貼合わせディスク20に重し15を載せておく必要がある。遅効性の光硬化接着剤7が完全に硬化するまでには、時間がかかるので、基板11、12のずれが生じないくらいに硬化した段階で、図6(e)に示すように、貼合わせディスク20が自重で歪まないように、ポール18に通すなどして縦置きにして、完全に硬化させる必要がある。ここで、図6(d)における17は、基板11、12を載せる台である。
【0011】
なお、このような貼り合わせ構造を有する従来の光学記録媒体の製造方法として、特許文献1、2などにも同様な光学記録媒体の製造方法が開示されている。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−340488号公報
【0013】
【特許文献2】
特開平11−66644号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、両面に記録層3、4を有する光学記録媒体5を製造する場合におけるスクリーン印刷法では、遅効性の光硬化接着剤7を塗布する際にスクリーン13とスキージ14とが擦れて、スクリーン13が摩耗するために、スクリーン13の使用回数が数千回と限られ、比較的頻繁にスクリーン13を交換する必要があり、製造コストが高めになってしまうという問題があった。
【0015】
また、上記問題を解消する手法として、遅効性の光硬化接着剤を基板にスピンコートすることも、1つの案として考えられていたが、遅効性の光硬化接着剤を基板にスピンコートしてみると、塗布された接着剤層がその表面が鏡面状となり、形成した接着剤層に十分な光照射を行った後に、接着剤層を有する基板同士を接着剤層が互いに対面するように接着した場合に、接着剤層に大きな気泡が生じることがあり、この場合には、光学記録媒体の機械特性が悪化して(すなわち、強度が低下したり、強度に著しい偏りを生じたりして)、使用に耐えられない物になることがあった。
【0016】
本発明は上記課題を解決するもので、両面に記録層を有する光学記録媒体を製造するに際し、遅効性の光硬化接着剤を用いた場合でもスクリーン交換の必要がない光学記録媒体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、片面に記録層を有する基板同士を貼り合わせて両面に記録層を有する光学記録媒体を製造する方法であって、基板の記録層が設けられている側に遅効性光硬化接着剤を供給するとともにスピンコートして接着剤層を形成し、各接着剤層に、照射量を調整した光を照射した後に、これらの基板の接着剤層同士を重ね合わせて貼り合わせを行うことを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、遅効性の光硬化接着剤を用いた場合でもスクリーン交換の必要がなく、低コストで光学記録媒体を製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の発明は、片面に記録層を有する基板同士を貼り合わせて両面に記録層を有する光学記録媒体を製造する方法であって、基板の記録層が設けられている側に遅効性光硬化接着剤を供給するとともにスピンコートして接着剤層を形成し、各接着剤層に、照射量を調整した光を照射した後に、これらの基板の接着剤層同士を重ね合わせて貼り合わせを行うことを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、スクリーンやスキージなどの消耗品を用いることなく基板に光硬化接着剤を所定の厚みや粘度で設けることができる。また、照射量を調整した光を照射することで、基板同士を接着した際に、接着剤層に大きな気泡が生じることを防止することが可能となる。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の光学記録媒体の製造方法において、スピンコートした接着剤層の厚さが20〜100μmであることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の光学記録媒体の製造方法において、遅効性光硬化接着剤の粘度が100〜5000mPasであることを特徴とする。
【0022】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の光学記録媒体の製造方法において、光の照射後で貼り合わせ直前の接着剤層の粘度が300〜8000mPasであることを特徴とする。
【0023】
請求項2〜4の発明によれば、記録層を有する基板同士の貼り合わせを接着剤層を介して行う際に、接着剤層が適当な粘度と厚みとを有する状態となり、大きな気泡が接着剤層に内包されたりすることを良好に防止することができて、良好な光学記録媒体を得ることができる。
【0024】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の光学記録媒体の製造方法において、貼り合わせ時に荷重をかけることを特徴とする。
この方法によれば、基板同士が外れたりずれたりして変形することを防止できる。
【0025】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の光学記録媒体の製造方法において、貼り合わせ後の光学記録媒体を縦置きにして保持することを特徴とする。
【0026】
この方法によれば、貼り合わせ後に光学記録媒体が自重で歪むことを防止することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
本発明は、遅効性光硬化接着剤を基板にスピンコートし、この基板に、照射量を調整した光を照射した後に、基板同士の貼り合わせを行うものである。
この場合に、遅効性光硬化接着剤を基板にスピンコートすることも、1つの案として考えられていたが、上述したように、遅効性の光硬化接着剤を基板にスピンコートした場合、塗布された接着剤層はその表面が鏡面状となる性質を有するために、形成した接着剤層に単に光照射を行うだけでは、この後に接着剤層を有する基板同士を接着剤層が互いに対面するように接着した場合に、図3(a)に示すように接着剤層に大きな気泡22が生じることがあり、この場合には、光学記録媒体の機械特性が悪化して(すなわち、強度が低下したり、強度に著しい偏りを生じたりして)、使用に耐えられないことがあった。
【0028】
しかしながら、本発明による製造方法によれば、製造コストが高いスクリーン印刷法と同等の機械特性、すなわち、光学記録媒体としての十分な強度が得られ、かつ、強度に著しい偏りを生じることなく、低コストの製造方法が提供できることがわかった。
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明による貼り合わせ構造を有する光学記録媒体の製造方法を示す。なお、従来の光学記録媒体の製造方法で用いたものと同様な機能のものには同符号を付す。
【0030】
まず、図1(a)に示すように、回転手段としてのスピナー21上に、記録層3が形成された基板11を、記録層3が上方となるようにセットして、その上に、100〜5000mPasの粘度を有する遅効性の光硬化接着剤7をディスペンサ10などにより環状に滴下する(接着剤供給工程)。この状態でスピナー21を回転させることにより、遅効性の光硬化接着剤7を基板11の全面に伸延させて20〜100μmの厚みの接着剤層7’を形成する(スピン工程)。
【0031】
この場合に、このスピンコートによる接着剤層7’の形成工程においては、遅効性の光硬化接着剤7の粘度が高いほど厚みが厚くなり、回転が高速であるほど厚みは薄くなり、回転時間が長いほど厚みは薄くなる傾向がある。すなわち、粘度、回転数、回転時間を最適化することにより必要な厚みを有する接着剤層7’を得ることができ、この接着剤層7’に適度な照射量を調整した状態で、遅効性の光硬化接着剤7に光照射を行うことで、接着剤層7’の硬化を徐々に始めることができる。
【0032】
すなわち、従来の製造方法においては、接着剤層7’に十分な光照射を行っていたので、接着剤層7’の硬化が急速に進み、貼り合わせを行う際には接着力は有しているが、流動性の無い状態になっており、このために、基板11の接着剤層7’に他の基板12を重ね合わせても、図3(a)に示すように、大きな気泡22が接着剤層7’に内包されていた。しかし、両方の基板11、12の面に記録層3、4を有する場合に、各遅効性の光硬化接着剤7からなる接着剤層7’に、照射量を調整した光を所定の設定範囲内の条件で照射した後に、これらの基板11、12の接着剤層7’、7’同士を重ね合わせて貼り合わせると、図3(b)に示すように、接着剤層7’内に細かい気泡23が分散して存在するにとどまり、その光学記録媒体5の機械特性には影響を及ぼさないことが分かった。
【0033】
ここで、遅効性光硬化接着剤7に光照射を行った場合の光照射量と、前記接着剤7の粘度変化との様子は模式的には図2のように表される。すなわち、光照射量を調整することで、貼り合わせ時の接着剤7の粘度と硬度とを変化させることができることが分かった。しかし、光照射量を変えると硬化完了までの時間が変わるので、生産タクトが長くなる場合があるという問題もある。接着剤7の硬化が完了するまでの過渡状態で基板11に塗布した接着剤7を他の基板12が対面するような姿勢で貼り合わせると、つぎのような現象が生じることがわかった。すなわち、接着剤層7への照射光量と貼り合わせまでの時間とを制御することで、接着剤7、7同士を重ねて貼り合わせた時に、貼り合わせ直後では接着剤層7’に図3(a)に示すような大きな気泡22が生じるが、接着剤層7’が適当な粘度と厚みを有していると、毛細管現象により大きな気泡22中へ接着剤7の浸透が行われる。そして、この接着剤7の浸透により大きな気泡22の隙間を接着剤により埋められることになる。つまりこの状態では、気泡の空気圧と接着剤7の浸透圧との両方のエントロピーが最小になるように気泡量と接着剤量とがバランスするために、図3(b)に示すような細分化された気泡23と接着剤7、7とが迷路のように入り組んだ状態になることが分かった。
【0034】
ただし、図3(a)、(b)は本発明による接着剤および気泡の状態を明示するために、記録層3,4を有さない透明基板を使用している。すなわち、実際に光学記録媒体5の製造の際には不透明の記録層3,4のために接着剤層7’の状態を外部から見ることはできない。このように製造した光学記録媒体の機械特性を測定したところ、従来のスクリーン印刷法により製造した光学記録媒体5の機械特性と同じであった。
【0035】
次に、本発明の実施の形態にかかる、より具体的な光学記録媒体の製造方法について説明する。
(実施の形態1)
ポリカーボネイトを射出成形して情報ピットを刻んだ基板11に、アルミニウム合金をスパッタリング装置で厚さ60nmに成膜して記録層3を形成し、この記録層3を形成した基板11の上に、粘度が460mPasである遅効性光硬化性接着剤7を環状に滴下して(図1(a)参照)、3000rpmで4秒間スピンを行った(図1(b)参照)。その結果、40μmの接着剤層7’の厚みを有するハーフディスク(接着剤塗布基板)31を得た。同様にして、記録層4を形成した基板12の上に、遅効性光硬化性接着剤7を環状に滴下してスピンを行い、もう一枚のハーフディスク32を準備した。
【0036】
そして、図1(c)に示すように2枚のハーフディスク31、32それぞれにランプ16で500cd/cm2の光照射を行った。この2枚のハーフディスク31、32を重ね合わせて(図1(d)参照)、完全に硬化するまで、重し34を載せて保持したところ、10分後に完全に硬化した。なお、張り合わせ直前の粘度は1000mPasであった。なお、図1(e)における35は載せ台である。
【0037】
このようにして製造した光学記録媒体5の機械特性を測定したところ、十分な強度を有するとともに、強度の偏りもなく、実用上は全く問題が無い特性であった。測定後に光学記録媒体5のハーフディスク31、32同士を剥離して、気泡の状態を調べたところ、接着剤層7’に大きな気泡23は含まれておらず、細かな気泡22だけが見出された。
(実施の形態2)
ポリカーボネイトを射出成形して情報ピットを刻んだ基板11に、アルミニウム合金をスパッタリング装置で厚さ60nmに成膜して記録層3を形成し、この記録層3を形成した基板11の上に、粘度が1000mPasである遅効性光硬化性接着剤7を環状に滴下して(図1(a)参照)、3000rpmで4秒間スピンを行った(図1(b)参照)。その結果、80μmの接着剤層7’の厚みを有するハーフディスク(接着剤塗布基板)31を得た。同様にして、記録層4を形成した基板12の上に、遅効性光硬化性接着剤7を環状に滴下してスピンを行い、もう一枚のハーフディスク32を準備した。
【0038】
そして、図1(c)に示すように2枚のハーフディスク31、32それぞれにランプ16で1000cd/cm2の光照射を行った。この2枚のハーフディスク31、32を重ね合わせて(図1(d)参照)、完全に硬化するまで、重し34を載せて保持したところ、20分後に完全に硬化した。なお、張り合わせ直前の粘度は3000mPasであった。
【0039】
このようにして製造した光学記録媒体5の機械特性を測定したところ、十分な強度を有するとともに、強度の偏りもなく、実用上は全く問題が無い特性であった。測定後に光学記録媒体5のハーフディスク31、32同士を剥離して、気泡の状態を調べたところ、接着剤層7’に大きな気泡23は含まれておらず、細かな気泡22だけが見出された。
【0040】
また、同様にして、スピンコートした接着剤層7’の厚さを変えて実験したが、この厚さとしては20〜100μmである場合が好ましいことがわかった。すなわち、スピンコートした接着剤層7’の厚さが20μmよりも薄い場合には、接着強度が不足し、また、スピンコートした接着剤層7’の厚さが100μmよりも厚い場合には、ハーフディスク(接着剤塗布基板)31、32を重ね合わせた状態でこれらのハーフディスク31、32の相対位置が変化し易くなるとともに、光学記録媒体5としての厚さを越えてしまうおそれがある。これに対して、スピンコートした接着剤層7’の厚さが20〜100μmである場合には、十分な接着強度が得られるとともに、ハーフディスク31、32の相対位置が変化することもなく、良好な品質を維持できた。
【0041】
また、同様にして、遅効性光硬化接着剤7の粘度が互いに異なるものを実験したが、この遅効性光硬化接着剤7の粘度としては100〜5000mPasである場合が好ましいことがわかった。すなわち、遅効性光硬化接着剤7の粘度が100mPasよりも小さい場合には、接着強度が不足し、また、遅効性光硬化接着剤7の粘度が5000mPasよりも大きい場合には、毛細管現象による大きな気泡22中への接着剤7の浸透が行われ難くなり、大きな気泡22が残った状態で遅効性光硬化接着剤7が硬化し、この結果、強度が不足するおそれがある。これに対して、遅効性光硬化接着剤7の粘度が100〜5000mPasである場合には、十分な接着強度が得られるとともに、気泡が良好に細分化され、機械的強度も良好に維持される。
【0042】
また、同様にして、光の照射後で貼り合わせ直前の接着剤層7’の粘度が互いに異なるものを実験したが、この貼り合わせ直前の接着剤層7’の粘度としては、300〜8000mPasである場合が好ましいことがわかった。すなわち、貼り合わせ直前の接着剤層7’の粘度が300mPasよりも小さい場合には、接着強度が不足し、また、貼り合わせ直前の接着剤層7’の粘度が8000mPasよりも大きい場合には、毛細管現象による大きな気泡22中への接着剤7の浸透が行われ難くなり、大きな気泡22が残った状態で遅効性光硬化接着剤7が硬化し、この結果、強度が不足するおそれがある。これに対して、貼り合わせ直前の接着剤層7’の粘度が300〜8000mPasである場合には、十分な接着強度が得られるとともに、気泡が良好に細分化され、機械的強度も良好に維持される。
【0043】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、基板の記録層が設けられている側に遅効性光硬化接着剤を供給するとともにスピンコートして接着剤層を形成することにより、スクリーンやスキージなどの消耗品を用いることなく、基板に光硬化接着剤を所定の厚みや粘度で設けることができる。また、照射量を調整した光を照射することで、基板同士を接着した際に、接着剤層に大きな気泡が生じることを防止することが可能となり、十分な強度を有する光学記録媒体を得ることができる。
【0044】
また、スピンコートした接着剤層の厚さが20〜100μmであるように刑したり、遅効性光硬化接着剤として粘度が100〜5000mPasであるものを用いたり、光の照射後で貼り合わせ直前の接着剤層の粘度が300〜8000mPasであるように構成することで、良好な強度の光学記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(e)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る光学記録媒体の製造工程を示す図
【図2】接着剤に対する照射光量と粘度との関係を示す図
【図3】(a)は比較例としての光学記録媒体を示す図、(b)は本発明の実施の形態により製造した光学記録媒体を示す図
【図4】(a)は片面だけに記録層を有する光学記録媒体を示す断面図、(b)は両面に記録層を有する光学記録媒体を示す断面図
【図5】(a)〜(d)はそれぞれ片面だけに記録層を有する光学記録媒体を製造する従来の製造工程を示す図
【図6】(a)〜(f)はそれぞれ両面に記録層を有する光学記録媒体を製造する従来の製造工程を示す図
【符号の説明】
3、4 記録層
5 光学記録媒体
7 遅効性光硬化接着剤
7’ 接着剤層
11、12 基板
Claims (6)
- 片面に記録層を有する基板同士を貼り合わせて両面に記録層を有する光学記録媒体を製造する方法であって、基板の記録層が設けられている側に遅効性光硬化接着剤を供給するとともにスピンコートして接着剤層を形成し、各接着剤層に、照射量を調整した光を照射した後に、これらの基板の接着剤層同士を重ね合わせて貼り合わせを行うことを特徴とする光学記録媒体の製造方法。
- スピンコートした接着剤層の厚さが20〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の光学記録媒体の製造方法。
- 遅効性光硬化接着剤の粘度が100〜5000mPasであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学記録媒体の製造方法。
- 光の照射後で貼り合わせ直前の接着剤層の粘度が300〜8000mPasであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光学記録媒体の製造方法。
- 貼り合わせ時に荷重をかけることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光学記録媒体の製造方法。
- 貼り合わせ後の光学記録媒体を縦置きにして保持することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の光学記録媒体の製造方法。
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