JP2004339359A - セルロースエステルフィルム及びその製造方法 - Google Patents

セルロースエステルフィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】液晶画像表示装置における偏光板用保護フィルムなどに好適なセルロースエステルフィルムの弾性率を高くすることができて、偏光板の収縮を抑制することができる、平面性に優れたセルロースエステルフィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セルロースエステルフィルムは、セルロースエステルの重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで徐した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であり、かつ溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルムの搬送方向と直交する幅手方向(TD方向)に延伸するときのフィルム中に含有される残留溶媒量よりも、フィルムの搬送方向と同一方向(MD方向)に延伸するときの残留溶媒量の方が高い状態で延伸することにより製造するものである。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば液晶画像表示装置における偏光板の保護フィルムなどとして好適なセルロースエステルフィルム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、液晶画像表示装置(LCD)は、低電圧かつ低消費電力でIC回路への直結が可能であり、しかも薄型化が可能であるから、ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ等の表示装置として広く使用されている。ところで、このLCDの基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、LCDにおいては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によってLCDの性能が大きく左右される。偏光板は偏光子と、偏光子の両面に積層された保護フィルムとよりなる。
【0003】
LCD用偏光板の耐久性を向上させるためには、それを保護するフィルムの耐久性が非常に重要である。現在使用されている保護フィルムのうち、セルロースエステルフィルム、とりわけセルローストリアセテート(TAC)フィルムは、光学的な特徴や平面性に優れていることから高品質なLCD用偏光板には必要不可欠となっている。
【0004】
光学フィルムとしての例えばセルローストリアセテートフィルムは、一般に、溶液流延製膜法により製造されている。このセルローストリアセテートフィルムの製造方法は、まず、セルローストリアセテートを、例えばメチレンクロライド等のセルローストリアセテートに対する良溶媒と、例えばメタノール、エタノール、ブタノールあるいはシクロヘキサン等のセルローストリアセテートに対する貧溶媒とを加えた混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤を添加して、セルローストリアセテート溶液(以下、ドープとも呼ぶ)を調製し、ドープを、鏡面処理された表面を有する無限移行する無端の金属支持体(例えばベルトあるいはドラム、以下、支持体とも呼ぶ)上に流延ダイから均一に流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(以下、ウェブとも呼ぶ)が固化した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥装置あるいはテンターを通して乾燥させ、セルローストリアセテートフィルムを得るものである。
【0005】
ところで、近年、液晶画像表示装置(LCD)は種々のところに使用されるに伴って、LCDに使用される液晶画像表示素子すなわち偏光板についても高生産性化(生産量増大)が求められている。しかも、液晶画像表示装置(LCD)については薄型化が進んでおり、LCDに使用される偏光板についても薄膜化が要望されている。
【0006】
液晶画像表示装置(LCD)には偏光板が2枚使用され、液晶セルを挟むようにして、それらの偏光方向が直交するように配置される。この状態のLCDをさまざまな環境で使用した際、一部で偏光板の収縮やそれによる液晶セルのガラスとの剥離が起こるという問題がある。
【0007】
偏光板の収縮が起こる原因としては、そもそも偏光子が、上記の製造過程において非常に大きく延伸されたフィルムによって構成されることから、温度、湿度の影響を受け、延伸前の状態に戻ろうとする収縮力が働くためである。そして、偏光板保護フィルムであるセルロースエステルフィルムの弾性率を高くすることにより、偏光板の収縮を抑制することができる。
【0008】
ところで、従来、セルロースエステルのフィルムの分子量分布と平面性に関わる先行特許文献には、つぎのようなものがある。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−40792号公報
この特許文献1には、セルロースエステルの分子量分布Mw/Mnを1.0〜1.7に調整することにより、作製したフィルムの平面性を悪化させないというものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1は、セルロースエステルドープの流延(キャスト)の安定化、及び高速製膜を意図したものであった。
【0011】
ところで、上記の溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造において、剥離後のフィルムを高残留溶媒量状態で、フィルムの搬送方向と同一方向(MD方向)及びフィルム搬送方向と直交する方向すなわち幅手方向(TD方向)の両方に延伸してしまうと、剥離ロールによる剥離の際にせっかくMD方向に延伸して、TACの配向性を高めても、TD方向の延伸によってその配向性が乱れてしまい、弾性率向上の効果が低くなってしまう。また、分子量分布Mw/Mnの小さいセルロースエステルを含むセルロースエステルフィルムを高残留溶媒量の状態で長手方向(MD方向)に延伸すると、通常の分子量分布を有するセルロースエステルの場合よりも、長手方向(MD方向)へのいわゆるツレ(目視によるフィルムのうねり)が発生しやすい。この点、セルロースエステルフィルムを高残留溶媒量の状態で幅手方向(TD方向)に引っ張れば、その問題を解決し得るが、セルロースエステルフィルムの弾性率の向上のためには、それができないという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、分子量分布の小さいセルロースエステルを含むセルロースエステルフィルムについて、高残留溶媒量状態で長手方向(MD方向)の延伸を行なった後、低残留溶媒量状態で幅手方向(TD方向)の延伸を行なうことにより、偏光板保護フィルムであるセルロースエステルフィルムの弾性率を高くすることができて、偏光板の収縮を抑制することができる、平面性に優れたセルロースエステルフィルム、及びその製造方法を提供しようとすることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1によるセルロースエステルフィルムの発明は、セルロースエステルの重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで徐した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であり、かつ溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルムの搬送方向と直交する方向すなわち幅手方向(TD方向)に延伸するときのフィルム中に含有される残留溶媒量よりも、フィルムの搬送方向と同一方向(MD方向)に延伸するときの残留溶媒量の方が高い状態で延伸することにより製造したことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項2によるセルロースエステルフィルムの発明は、セルロースエステルの重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで徐した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であり、かつ溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルム中に含有される残留溶媒量が40%以上であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始し、かつ残留溶媒量が40%未満であるとき、TD方向に延伸することにより製造したことを特徴としている。
【0015】
つぎに、本発明の請求項3によるセルロースエステルフィルムの製造方法の発明は、セルロースエステルの重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで徐した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であり、かつ溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルムの幅手方向(TD方向)に延伸するときのフィルム中に含有される残留溶媒量よりも、フィルムの搬送方向(MD方向)に延伸するときの残留溶媒量の方が高い状態で延伸することを特徴としている。
【0016】
さらに、本発明の請求項4によるセルロースエステルフィルムの製造方法の発明は、セルロースエステルの重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで徐した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であり、かつ溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルム中に含有される残留溶媒量が40%以上であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始し、かつ残留溶媒量が40%未満であるとき、TD方向に延伸することを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項5の発明は、上記請求項3または4に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムをMD方向に延伸する延伸ゾーンのロールスパン(搬送ロールの配置間隔)が、1.0m以下であることを特徴としている。
【0018】
本発明の請求項6の発明は、上記請求項3〜5のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムをMD方向へ延伸している間のフィルム温度が7℃以上40℃以下であることを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
本発明において、対象となるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%のセルローストリアセテートはベース強度が強く、より好ましい。セルローストリアセテートは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。
【0021】
このセルロースエステルを溶解する溶剤(溶媒)としては、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましい。
【0022】
ここで、本発明の方法において用いる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの結合酢酸量によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの結合酢酸量55%では良溶剤になり、結合酢酸量60%では貧溶剤となってしまう。
【0023】
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
【0024】
ドープを調製する時のセルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、好ましい方法としては、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させ、さらに良溶剤と混合する方法があげられる。このとき加圧下で、溶剤の常温での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、撹拌しながら溶解する方法が、「ゲル」や「ママコ」と呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。
【0025】
溶剤比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95重量%、その他の溶剤は5〜30重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないうに定められる。
【0026】
溶解後、ドープは冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
【0027】
セルロースエステルフィルム中に、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、加工安定剤、及びマット剤などを含有させることにより、セルロースエステルフィルムに起因する液晶画像表示装置の性能を向上させることができる。
【0028】
これらの可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0029】
本発明で用いる可塑剤としては、特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたセルロースエステルフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0030】
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量は、セルロースエステルに対して1〜15重量%である。液晶画像表示部材用としては、寸法安定性の観点から5〜15重量%がさらに好ましく、特に好ましくは、7〜12重量%である。また、セルロースエステルに対して凝固点が20℃以下の可塑剤の含有量は1〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは、3〜7重量%である。
【0031】
本発明において、好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたもので、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶画像表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0032】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0033】
また本発明において、セルロースエステルフィルムに滑り性の向上、巻取り後のブロッキング防止等の目的でマット剤として加える微粒子は、主ドープに添加してもよいが、添加液に加えるのが生産性の上からは好ましい。
【0034】
本発明に用いられる微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。その中でも、微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。これらの例としては、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されているものがあり、使用することができる。さらに、二酸化ケイ素微粒子の1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛比重が70g/リットル以上の二酸化ケイ素微粒子であることが好ましい。これらを満足する二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972Vがあり、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいために、特に好ましい。
【0035】
本発明において、上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0036】
つぎに、本発明のセルロースエステルフィルムを製造する方法について、詳しく説明する。
【0037】
まず、セルロースエステルを、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤を添加してセルロースエステル溶液(ドープ)を調製し、ドープを鏡面処理された表面を有するエンドレス支持体上に流延ダイから流延(キャスト)してドープ膜(ウェブ)を得る。
【0038】
流延(キャスト)される側の支持体の表面温度は、10〜55℃、溶液の温度は、25〜60℃、さらに溶液の温度を支持体の温度より0℃以上高くするのが好ましく、5℃以上に設定するのがさらに好ましい。溶液温度、支持体温度は、高いほど溶媒の乾燥速度が速くできるので好ましいが、あまり高すぎると発泡したり、平面性が劣化する場合がある。支持体の温度のさらに好ましい範囲は、20〜40℃、溶液温度のさらに好ましい範囲は、35〜45℃である。
【0039】
そして、ウェブがエンドレス支持体の下面に至りほぼ一巡したところで、剥離ロールにより剥離する。支持体の上下の移送経路の表裏両側に、支持体上に流延されたドープを加熱乾燥してウェブを形成する加熱乾燥装置をそれぞれ配置するのが、好ましい。
【0040】
また、剥離する際の支持体温度を10〜40℃、さらに好ましくは、15〜30℃にすることでフィルムと支持体との密着力を低減できるので、好ましい。
【0041】
支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は高い方が良いが、セルロースエステルの単位重量あたりの紫外線吸収剤の含有量が多く、かつ薄膜化されたセルロースエステルフィルムでは、剥離の際にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましく、さらに好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。
【0042】
剥離後のウェブは、テンター乾燥装置に導入する。そこで、ウェブの両側縁部をクリップで把持して延伸するとともにウェブを乾燥する。さらにウェブは、側面から見て千鳥配置せられた複数の移送ロールで移送して乾燥装置に導入する。乾燥装置内では上下に交互に配置せられた複数の乾燥用ロールによってウェブが蛇行させられ、その間にウェブは温風によって乾燥し、乾燥後のウェブは、セルロースエステルフィルムとして巻き取り機に巻き取られる。
【0043】
セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、エンドレス支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式または、クリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。
【0044】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0045】
エンドレス支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常20〜25kg/mで剥離が行なわれるが、従来よりも薄膜化されている本発明の製造方法によるセルロースエステルフィルムは、剥離の際にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましく、さらに好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。
【0046】
また巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0047】
上記の金属製エンドレス支持体は、例えばステンレス鋼製のエンドレスベルトであるが、この周回金属製エンドレス支持体の代わりに回転する金属ドラム支持体が設けられていてもよい。
【0048】
なお、本発明によるルロースエステルフィルムは、上記溶液流延製膜法によって作製した後、延伸したセルロースエステルフィルムの乾燥後の膜厚が、20〜80μmの範囲であるのが、好ましい。その理由は、セルロースエステルフィルム全体の膜厚が薄すぎると、偏光板の保護フィルムとしての強度が不足し、偏光板の寸法安定性や湿熱での保存安定性が悪化する。膜厚が厚いと偏光板が厚くなり、液晶ディスプレイの薄膜化が困難になる。これらを両立するセルロースエステルフィルムの膜厚は20〜80μmで、好ましくは20〜60μm、さらに好ましくは30〜50μmであり、最も好ましいのは35〜45μmである。
【0049】
本発明の請求項1記載のセルロースエステルフィルムの発明は、セルロースエステルの重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで徐した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であり、かつ溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルムの幅手方向(TD方向)に延伸するときのフィルム中に含有される残留溶媒量よりも、フィルムの搬送方向(MD方向)に延伸するときの残留溶媒量の方が高い状態で延伸することにより製造したことを特徴としている。
【0050】
ここで、使用するセルロースエステルの分子量分布Mw/Mnを1.8〜3.0の範囲内に限定した理由は、セルロースエステルの分子量分布Mw/Mnが1.8未満であると、延伸によりフィルム表面ある内部で、セルロースエステルの結晶化が部分的に発生するため、加工性や寸法安定性において品質にばらつきが生じるので、好ましくなく、これに対し、セルロースエステルの分子量分布Mw/Mnが3.0を超えると、延伸によりフィルム表面に細かな凹凸が発生しやすいので、好ましくないからである。
【0051】
また、セルロースエステルの重量平均分子量Mw、及び数平均分子量Mnは、つぎの範囲にある。すなわち、230000<Mw<380000、及び90000<Mn<180000。
【0052】
ここで、セルロースエステルの重量平均分子量Mwが230000未満であると、製膜時にフィルムにシワが入りやすくなるので、好ましくなく、これに対し、セルロースエステルの重量平均分子量Mwが380000を超えると、ドープ粘度が非常に高くなるので、生産上好ましくない。また、セルロースエステルの数平均分子量Mnが90000未満であると、同様に、製膜時にフィルムにシワが入りやすくなるので、好ましくなく、これに対し、セルロースエステルの数平均分子量Mnが180000を超えると、同様に、ドープ粘度が非常に高くなるので、生産上好ましくない。
【0053】
なお、セルロースエステルの平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)を算出することができる。
【0054】
平均分子量の測定条件は、以下の通りである。
【0055】
下記に示す装置、材料を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)および平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布Mw/Mnを算出した。
【0056】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
溶媒(溶離液):ジクロロメタン
カラム名:昭和電工製 GPCk806−GPCk805−GPCk803 (3本)
試料濃度:0.1(重量%)
流量:1.0(ml/分)
試料注入量:100(μl)
標準試料:ポリスチレン(Mw:5,000,000〜6,700,000)
温度:25℃
検出:RI(示唆屈折率計)
また、本発明において、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを作製した後、フィルムの幅手方向(TD方向)に延伸するときのフィルム中に含有される残留溶媒量よりも、フィルムの搬送方向(MD方向)に延伸するときの残留溶媒量の方が高い状態で延伸するのは、剥離後のフィルムを高残留溶媒量状態で、フィルムの搬送方向(MD方向)及びフィルムの幅手方向(TD方向)の両方に延伸してしまうと、剥離ロールによる剥離の際にせっかくMD方向に延伸して、TACの配向性を高めても、TD方向の延伸によってその配向性が乱れてしまい、弾性率向上の効果が低くなってしまうからであり、本発明のセルロースエステルフィルムによれば、TACの配向性を乱すことなく、弾性率向上の効果を維持することができるものである。
【0057】
そして、上記の場合、溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルム中に含有される残留溶媒量が40%以上であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始し、かつ残留溶媒量が40%未満であるとき、TD方向に延伸するのが、好ましい。
【0058】
ところで、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造において、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
【0059】
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
【0060】
なお、本発明においては、セルロースエステルフィルムをMD方向に延伸する延伸ゾーンのロールスパンが1.0m以下であるとしている。ここで、延伸ゾーンとは、例えば支持体に対するウェブの剥離位置からテンター入口までの区域を意味する。このセルロースエステルフィルムをMD方向に延伸する延伸ゾーンのロールスパンを1.0m以下とする理由は、上記のように、分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0と小さいセルロースエステルを含むセルロースエステルフィルムを高残留溶媒量でMD方向に延伸する場合、通常のものよりMD方向へのいわゆるツレ(目視によるフィルムのうねり)が発生しやすいからであり、高残留溶媒量でTD方向に引っ張れば、その問題は解決するが、セルロースエステルフィルムの弾性率の向上のためにはそれができないからである。
【0061】
本発明者によれば、フィルムの残留溶媒量40%以上の延伸ゾーンにおけるロールスパンを1m以下にしておくことによって、この問題を解決し得ることを見い出したものである。
【0062】
また、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法において、剥離後のセルロースエステルフィルムをMD方向へ延伸している間のフィルム温度が7℃以上40℃以下であることを限定としているが、その理由は、フィルムを、その残留溶媒量40%以上でMD方向に延伸する場合に、フィルム温度を7〜40℃の範囲にすることで、フィルムの平面性がよくなるからである。
【0063】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1〜7
<セルローストリアセテートドープの調整>
下記のドープ組成を有する組成物を密閉釜に入れて混合し、釜内温度を40℃まで昇温したのち、3時間攪拌を行なって、各組成物を溶解した。使用したセルローストリアセテートの分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0065】
<ドープ組成>
セルローストリアセテート 100重量部
トリフェニルホスフェート 12重量部
メチレンクロライド 614重量部
エタノール 38重量部
<セルローストリアセテートフィルムの製造>
その後、密閉釜での攪拌を停止し、密閉釜に連結した配管を経て流延ダイから30℃に保たれたドープを、ステンレス鋼製エンドレスベルト支持体上に流延し、約1周したところで、エンドレスベルト支持体上から剥離する。このときの残留溶媒量は90%とした。剥離後、フィルム(ウェブ)のMD方向の延伸をフィルム搬送の張力によって行ない、TD方向へはテンターによる延伸を行なった。
【0066】
表1にフィルムのMD方向の延伸開始時における残留溶媒量と延伸率、並びにフィルムのTD方向の延伸開始時における残留溶媒量と延伸率を記載した。なお、MD方向の延伸率は、エンドレスベルト支持体の回転速度とテンター運転速度の関係から算出した。というのは、実際に、エンドレスベルト支持体から、そのベルト支持体に最も近い剥離ロールまでの間においてもフィルム(ウェブ)のMD方向の延伸は行なわれており、しかも、その部分が最も残留溶媒量が高いため、MD方向の延伸量も無視できない。従って、フィルムのMD方向の延伸率をエンドレスベルト支持体の回転速度とテンター運転速度の関係から算出しているものである。一方、TD方向の延伸率は、テンター入り口でのフィルム幅とテンター出口でのフィルム幅の関係から算出した。またMD方向の延伸では、テンター速度が速い場合をプラス表示し、TD方向の延伸の場合は、テンター出口のフィルム幅の方が広い場合をプラス表示している。
【0067】
本実施例では、MD方向の延伸ゾーンのロールスパンを1.0mとし、MD方向の延伸時のフィルムの温度は25℃とした。
【0068】
なお、フィルム温度の測定は、非接触式の放射型温度計(HORIBA製IT−540N)を使用して、剥離位置からテンター入り口までの間(延伸ゾーン)の中間地点で幅手3点の測定を行ない、その平均値をとった。
【0069】
<セルローストリアセテートフィルムの乾燥>
テンターを出たフィルムを、数多く配列されたロール間を搬送させることで、最終的にはフィルム内に残留する溶媒量を1%未満まで減じた。フィルムの膜厚は80μmとした。
【0070】
<セルローストリアセテートフィルムの弾性率測定>
セルローストリアセテートフィルムの弾性率測定を、JIS K7217に則って行なった。詳細は下記に示す。
【0071】
上記実施例1〜7で得られたセルローストリアセテートフィルムを23℃±2℃、湿度50±5%RHの条件で24時間以上放置した後、各フィルムをMD方向及びTD方向がそれぞれ長手となるように幅10mm×長さ200mmにカットする。
【0072】
ミネベア製TG−2KN型の引っ張り試験器を用い、チャッキング圧0.25MPa、標線間距離100±10mmで上記フィルムのサンプルをセットし、引っ張り速度100±10mm/minの速度で引っ張る。
【0073】
その結果、得られた引張応力−歪み曲線から、弾性率算出開始点を10N、終了点を30Nとし、その間に引いた接線を外挿し、弾性率を算出した。得られた結果を表1にあわせて示した。
【0074】
<偏光板の作製>
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1g、ホウ酸4gを含む水溶液100gに浸漬し、50℃で6倍に延伸して偏光膜を作った。この偏光膜の両面に、上記実施例1〜7で得られたセルローストリアセテートフィルムをアルカリケン化処理しかつ完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として、各々貼り合わせ、偏光板を作製した。
【0075】
<偏光板の寸法変化測定>
150mm角に切り出したサンプルを、温度40℃、湿度90%RHの条件の恒温高湿槽内に50時間保存した後、偏光板サンプルの直交する2方向の寸法(a)と寸法(b)についてそれぞれの伸縮の程度すなわち寸法変化(%)を測定した。ここで、各偏光板サンプルの保存前の寸法(x)と保存後の寸法(y)から、下記の式により算出した。
【0076】
偏光板寸法変化(%)={(x−y)/x}×100
従って、各偏光板サンプルの保存前の寸法(x)より保存後の寸法(y)の法が大きい場合はプラスで表示される。得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。
【0077】
比較例1と2
つぎに、比較のために、上記実施例1〜7の場合と同様に、セルローストリアセテートフィルムを製造するが、下記の表1に示すように、本発明の場合とは逆に、フィルム中に含有される残留溶媒量が40%以下であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始し、かつ残留溶媒量が40%以上であるとき、TD方向に延伸することによりセルローストリアセテートフィルムを製造した。具体的には、これらの比較例1と2のセルローストリアセテートフィルムは、本発明の実施例でいう延伸ゾーンではMD方向に実質延伸は行なわない状態でテンターまで搬送し、その後、テンターによりTD方向に延伸する。その上で、テンター後の工程においてMD方向への延伸を実施することによって、セルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0078】
得られたフィルムについて、MD方向、並びにTD方向の延伸開始時における残留溶媒量と延伸率、得られたセルローストリアセテートフィルムの弾性率測定、偏光板サンプルの作製、及び偏光板の寸法変化の測定を、上記実施例1〜7の場合と同様に行ない、得られた結果を下記の表1にあわせて示した。
【0079】
【表1】
Figure 2004339359
この表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜7によれば、偏光板保護フィルムであるセルローストリアセテートフィルムの弾性率を高くすることができて、偏光板の収縮を抑制することができ、偏光板の寸法変化が非常に少ない優れた品質のセルローストリアセテートフィルムを製造することができた。これに対し、比較例1と2によれば、セルローストリアセテートフィルムの弾性率が低く、このため、偏光板の寸法変化測定試験において、偏光板に大きな収縮がみられ、偏光板の寸法変化が大きかった。
【0080】
実施例8〜12
下記の表2に示すように、異なる分子量分布を有する2種類のセルローストリアセテートを使用し、MD方向及びTD方向への延伸時の残留溶媒量と延伸率を変化させて、上記実施例1〜7の場合と同様に実施し、膜厚を40μmのセルローストリアセテートフィルムを製造した。また、セルローストリアセテートフィルムをMD方向に延伸する延伸ゾーンのロールスパンを、種々変更した。下記の表2に、延伸ゾーンのロールスパン、フィルムのMD方向の延伸開始時における残留溶媒量と延伸率、並びにフィルムのTD方向の延伸開始時における残留溶媒量と延伸率をあわせて記載した。
【0081】
<ツレの評価>
実施例8〜12で製造したフィルムを、黒く平らな検査台上に静置し、目視によるフィルムのうねり(これをツレと呼ぶ)を評価し、得られた結果を、下記の表2にあわせて示した。
【0082】
なお、ツレの評価は、下記の3段階により行なった。
【0083】
A:ツレの発生無し
B:弱いツレが発生したが、偏光板性能には影響しない
C:偏光板性能に影響が出る強いツレが認められる
また、実施例8〜12で製造したフィルムについて、上記実施例1〜7の場合と同様に偏光板サンプルの作製、及び偏光板の寸法変化の測定を実施し、得られた結果を下記の表2にあわせて示した。
【0084】
比較例3〜8
つぎに、比較のために、上記実施例8〜12の場合と同様に、セルローストリアセテートフィルムをMD方向に延伸する延伸ゾーンのロールスパン種々変更して、セルローストリアセテートフィルムを製造するが、下記の表2に示すように、比較例3と4では、本発明の場合とは逆に、フィルム中に含有される残留溶媒量が40%以下であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始し、かつ残留溶媒量が40%以上であるとき、TD方向に延伸することによりセルローストリアセテートフィルムを製造した。また比較例5と6では、分子量分布Mw/Mnが、本発明の範囲外である3.6であるセルローストリアセテートを使用した。さらに比較例7と8では、分子量分布Mw/Mnが、本発明の範囲外である1.6であるセルローストリアセテートを使用した。なお、比較例6と8では、本発明の場合とは逆に、フィルム中に含有される残留溶媒量が40%以下であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始し、かつ残留溶媒量が40%以上であるとき、TD方向に延伸することによりセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0085】
上記の比較例3〜8で得られたセルローストリアセテートフィルムについて、ツレの評価を上記実施例8〜12の場合と同様に行なうとともに、偏光板サンプルの作製、及び偏光板の寸法変化の測定を上記実施例8〜12の場合と同様に実施し、得られた結果を下記の表2にあわせて示した。
【0086】
【表2】
Figure 2004339359
この表2の結果から明らかなように、ツレが発生しやすい小さい分子量分布を有するセルローストリアセテートを使用する場合、本発明の実施例8〜12に示すように、MD方向に延伸する延伸ゾーンのロールスパンを1.0m以下の範囲とすることによって、高品質なフィルムを提供できることが判る。これに対し、比較例3〜8では、ツレが発生するとともに、偏光板の寸法変化測定試験において、偏光板に大きな収縮がみられ、偏光板の寸法変化が大きいものであった。
【0087】
実施例13〜15及び比較例9と10
上記実施例1のセルローストリアセテートフィルムを製造する際に、MD方向への延伸時のフィルム温度を、表3に示すように、実施例13〜15では、本発明の範囲内である7℃以上40℃以下に、比較例9と10では、本発明の範囲外の温度にそれぞれ調整し、このように、剥離からテンターまでの温度を変更した以外はすべて、実施例1で行なった製膜方法、乾燥方法を踏襲して、セルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0088】
このフィルム温度調整は、エンドレスベルト支持体からの剥離以降、テンター入り口までの延伸ゾーンの温度を調整することにより行なった。
【0089】
なお、フィルム温度の測定は、非接触式の放射型温度計(HORIBA製IT−540N)を使用して、剥離位置からテンター入り口までの間(延伸ゾーン)の中間地点でフィルム幅手方向の3点の測定を行ない、その平均値をとった。測定器の読みとり精度は±2℃であった。また、テンター入り口でのフィルムの残留溶媒量を上記実施例1の場合と同様に測定するとともに、剥離位置からテンター入り口までの間(延伸ゾーン)の中間地点においてフィルム幅手方向の3カ所でのMD方向弾性率を測定し、これらの弾性率の最大値(max)と最小値(min)との差を計算した。
【0090】
下記の表3に、剥離位置からテンター入り口までの間(延伸ゾーン)の中間点におけるフィルム温度、テンター入り口でのフィルムの残留溶媒量、フィルム幅手方向の3カ所でのMD方向弾性率、及びこれらの弾性率差をまとめて記載した。
【0091】
【表3】
Figure 2004339359
この表3の結果から明らかなように、本発明の実施例8〜12に示すように、セルローストリアセテートフィルムをMD方向へ延伸している間のフィルム温度が7℃以上40℃以下の範囲に設定にすることにより、得られたフィルムの幅手方向(MD方向)の弾性率のばらつきを小さくすることができ、高品質の偏光板用保護フィルムであるセルローストリアセテートフィルムを製造することができた。これに対し、比較例9と10では、得られたフィルムの幅手方向(MD方向)の弾性率のばらつきが大きく、セルローストリアセテートフィルムの品質が悪かった。
【0092】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載のセルロースエステルフィルムの発明は、上述のように、使用するセルロースエステルの分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0と小さい場合に、フィルムの幅手方向(TD方向)に延伸するときのフィルム中に含有される残留溶媒量よりも、フィルムの搬送方向(MD方向)に延伸するときの残留溶媒量の方が高い状態で延伸することにより、TACの配向性を高めることができて、フィルムの弾性率を高く保持することができ、偏光板の収縮を抑制することができて、偏光板の寸法変化が非常に少ない品質の優れたセルロースエステルフィルムを製造することができるという効果を奏する。
【0093】
そして、この場合、溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルム中に含有される残留溶媒量が40%以上であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始し、かつ残留溶媒量が40%未満であるとき、TD方向に延伸することにより、上記の効果をより一層確実なものとすることができるものである。
【0094】
また、本発明においては、セルロースエステルフィルムをMD方向に延伸する延伸ゾーンのロールスパンが1.0m以下であるとしており、上記のように、分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0と小さい範囲のセルロースエステルを含むセルロースエステルフィルムを高残留溶媒量でMD方向に延伸する場合、通常のものよりMD方向へのいわゆるツレ(目視によるフィルムのうねり)が発生しやすいが、フィルムの残留溶媒量40%以上の延伸ゾーンにおけるロールスパンを1m以下にしておくことによって、ツレを発生することなく、セルロースエステルフィルムの弾性率の向上を果たし得るという効果を奏する。
【0095】
さらに、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法において、剥離後のセルロースエステルフィルムをMD方向へ延伸している間のフィルム温度を7℃以上40℃以下の範囲とすることにより、フィルムの平面性が向上するという効果を奏する。

Claims (6)

  1. セルロースエステルの重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで徐した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であり、かつ溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルムの搬送方向と直交する方向すなわち幅手方向(TD方向)に延伸するときのフィルム中に含有される残留溶媒量よりも、フィルムの搬送方向と同一方向(MD方向)に延伸するときの残留溶媒量の方が高い状態で延伸することにより製造したことを特徴とする、セルロースエステルフィルム。
  2. セルロースエステルの重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで徐した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であり、かつ溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルム中に含有される残留溶媒量が40%以上であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始し、かつ残留溶媒量が40%未満であるとき、TD方向に延伸することにより製造したことを特徴とする、セルロースエステルフィルム。
  3. セルロースエステルの重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで徐した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であり、かつ溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルムの幅手方向(TD方向)に延伸するときのフィルム中に含有される残留溶媒量よりも、フィルムの搬送方向(MD方向)に延伸するときの残留溶媒量の方が高い状態で延伸することを特徴とする、セルロースエステルフィルムの製造方法。
  4. セルロースエステルの重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで徐した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であり、かつ溶液流延製膜法によりフィルムを作製した後、フィルム中に含有される残留溶媒量が40%以上であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始し、かつ残留溶媒量が40%未満であるとき、TD方向に延伸することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
  5. セルロースエステルフィルムをMD方向に延伸する延伸ゾーンのロールスパンが1.0m以下であることを特徴とする、請求項3または4に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
  6. セルロースエステルフィルムをMD方向へ延伸している間のフィルム温度が7℃以上40℃以下であることを特徴とする、請求項3〜5のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
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