JP2004332821A - 流体式トルク伝達装置のロックアップ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】クラッチ部材をピストンに装着することによって3面以上の摩擦面を有する構造としたロックアップ装置において、部品点数の低減や構造の簡略化を図る。
【解決手段】ロックアップ装置7は、ピストン75と、クラッチプレート71と、環状の連結部材76とを備えている。ピストン75は、フロントカバー11の摩擦面11bに対向する押圧部75dを有する。クラッチプレート71は、ピストン75に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着され、摩擦面11bと押圧部75dとの軸方向間に配置された摩擦連結部71aを有する。連結部材76は、フロントカバー11に固定され軸方向に撓み可能な本体部76aと、摩擦連結部71aと押圧部75dとの軸方向間に配置されるように本体部76aの半径方向端部に設けられた圧接部76bとを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】ロックアップ装置7は、ピストン75と、クラッチプレート71と、環状の連結部材76とを備えている。ピストン75は、フロントカバー11の摩擦面11bに対向する押圧部75dを有する。クラッチプレート71は、ピストン75に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着され、摩擦面11bと押圧部75dとの軸方向間に配置された摩擦連結部71aを有する。連結部材76は、フロントカバー11に固定され軸方向に撓み可能な本体部76aと、摩擦連結部71aと押圧部75dとの軸方向間に配置されるように本体部76aの半径方向端部に設けられた圧接部76bとを有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体式トルク伝達装置のロックアップ装置、特に、摩擦面を有するフロントカバーと、フロントカバーに固定され作動流体が充填された流体室を形成するインペラーと、流体室内でインペラーに対向して配置されたタービンとを含む流体式トルク伝達装置のロックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体式トルク伝達装置の一つであるトルクコンバータは、内部の作動油を介してエンジンからのトルクをトランスミッション側へ伝達する装置であり、主に、エンジンからのトルクが入力されるフロントカバーと、フロントカバーのトランスミッション側に固定され流体室を形成するインペラーと、インペラーのエンジン側に対向するように配置されトランスミッション側にトルクを出力可能なタービンと、インペラーの内周部とタービンの内周部との間に配置されタービンからインペラーへ向かう作動油の流れを整流することが可能なステータとを備えている。このようなトルクコンバータには、ロックアップ装置が設けられていることが多い。
【0003】
ロックアップ装置は、タービンとフロントカバーとの間の空間に配置されており、フロントカバーとタービンとを機械的に連結することでフロントカバーからタービンにトルクを直接伝達するための装置である。そして、ロックアップ装置は、フロントカバーの摩擦面に押圧されることで連結及び連結解除可能な円板状のピストンと、ピストンとタービンとを回転方向に弾性的に連結するダンパー機構とを備えている。ピストンの外周部には、フロントカバーの摩擦面に対向するように摩擦フェーシングが貼り付けられた押圧部が形成されている。
【0004】
このようなロックアップ装置において、摩擦面を3面にしてトルク伝達容量を増大させたロックアップ装置も既に提供されている。3面の摩擦面を有するロックアップ装置として、ピストンとクラッチ部材とダンパー機構とピストン連結機構とを備えているものがある。ピストンは、フロントカバーとタービンとの間に配置されており、押圧部を有し、作動流体の圧力により軸方向に移動可能である。クラッチ部材は、ピストンに対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着されており、フロントカバーの摩擦面に圧接可能な摩擦連結部を有している。クラッチ部材のピストンへの装着は、ピストンに形成された軸方向に貫通する孔からなる係合部にクラッチ部材に形成された爪部を挿入することによって行われている。ダンパー機構は、ピストンのタービン側に配置され、タービンとピストンとを回転方向に弾性的に連結する。ピストン連結機構は、ピストンの押圧部とクラッチ部材の摩擦連結部とを軸方向に移動可能な状態でフロントカバーに連結させるための機構である。ピストン連結機構は、摩擦連結部と押圧部との軸方向間に配置された圧接部材と、フロントカバーに固定された筒状部材とを有している。圧接部材は、スプライン係合により、筒状部材に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に支持されている。これにより、圧接部材は、摩擦連結部及び押圧部に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転可能に配置されている。
【0005】
このようなロックアップ装置において、ピストンの軸方向エンジン側の空間内の作動油を排出すると、ピストンの軸方向トランスミッション側の空間内の油圧が相対的に高くなり、ピストンが軸方向エンジン側に移動する。すると、ピストンの押圧部は、ピストン連結機構の圧接部材を軸方向エンジン側に押圧し、さらに、ピストン連結機構の圧接部材を軸方向エンジン側に移動させて、クラッチ部材の摩擦連結部を軸方向エンジン側に押圧する。これにより、クラッチ部材の摩擦連結部がフロントカバーの摩擦面に圧接されるため、フロントカバーのトルクがクラッチ部材及びピストン連結機構を介してピストンに伝達され、さらに、ダンパー機構を介してタービンに伝達される(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−246307号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のロックアップ装置においては、ピストン連結機構が筒状部材及び圧接部材の2つの部材から構成されているため、部品点数が多い。また、筒状部材と圧接部材との係合にスプラインを使用しているため、構造も複雑になっている。
本発明の課題は、クラッチ部材をピストンに装着することによって3面以上の摩擦面を有する構造としたロックアップ装置において、部品点数の低減や構造の簡略化を図ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、摩擦面を有するフロントカバーと、フロントカバーに固定され作動流体が充填された流体室を形成するインペラーと、流体室内で前記インペラーに対向して配置されたタービンとを含む流体式トルク伝達装置のロックアップ装置であって、ピストンと、クラッチ部材と、環状の第1連結部材とを備えている。ピストンは、フロントカバーとタービンとの間に配置され、摩擦面に対向する押圧部を有し、作動流体の圧力により軸方向に移動可能である。クラッチ部材は、ピストンに対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着され、摩擦面と押圧部との軸方向間に配置された第1摩擦連結部を有する。第1連結部材は、フロントカバーに固定され軸方向に撓み可能な第1本体部と、第1摩擦連結部と押圧部との軸方向間に配置されるように第1本体部の半径方向端部に設けられた第1圧接部とを有する。
【0009】
このロックアップ装置では、ピストンの押圧部によって第1圧接部を軸方向に押圧すると、第1本体部が軸方向に撓むことによって第1圧接部が軸方向に移動し、第1クラッチ部材の第1摩擦連結部がフロントカバーの摩擦面に押圧されて、ロックアップが行われるようになっている。
このロックアップ装置では、ピストンの押圧部と第1クラッチ部材の第1摩擦連結部とを軸方向に移動可能な状態でフロントカバーに連結させるためのピストン連結機構が、フロントカバーに固定され軸方向に撓み可能な第1本体部と、第1摩擦連結部と押圧部との軸方向間に配置された第1圧接部とを有する第1連結部材によって構成されているため、従来よりも、部品点数を低減し、構造を簡略化することができる。
【0010】
請求項2に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項1において、第1本体部は、フロントカバーにかしめて固定されている。
このロックアップ装置では、第1連結部材をフロントカバーに対して、別の固定部材を介することなく直接固定しているため、部品点数をさらに低減できる。請求項3に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項1又は2において、第1連結部材は、第1圧接部を第1摩擦連結部及び押圧部に対して傾倒しないように軸方向に移動させることを可能にする傾倒防止機構を有している。
【0011】
このロックアップ装置では、傾倒防止機構によって、第1圧接部が第1摩擦連結部及び押圧部に対して傾倒しないように軸方向に移動させることができるため、第1圧接部と第1摩擦連結部及び押圧部との間におけるドラグトルクの発生を抑え、並びに、フェーシング面の均一な面圧を実現できる(μ−v特性の向上)。
【0012】
請求項4に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項3において、傾倒防止機構は、第1本体部において、回転方向に並んで配置された複数の第1孔と、複数の第2孔とから構成されている。複数の第2孔は、複数の第1孔の半径方向内周側又は外周側において回転方向中央部が第1孔の回転方向間に対応するように、かつ、半径方向内周側又は外周側から見た際に、回転方向両端部が第1孔の回転方向端部と重なるように配置されるとともに、複数の第1孔と半径方向に向かって交互に繰り返し形成されている。
【0013】
このロックアップ装置では、複数の第1孔及び第2孔を第1本体部に形成することによって、第1孔の回転方向端部と第2孔の回転方向端部とによって半径方向に挟まれた部分(低剛性部)の撓み方向の剛性を第1孔の回転方向中央部同士によって半径方向に挟まれた部分及び複数の第2孔の回転方向中央部同士によって半径方向に挟まれた部分(高剛性部)の剛性よりも小さくなるようにしている。このため、第1圧接部が軸方向に移動する際には、低剛性部が第1孔及び第2孔を軸方向に変形させながら高剛性部よりも軸方向に大きく撓むようになり、高剛性部を軸方向に移動させつつ、自由状態における姿勢に近い状態に保つことができる。これにより、第1本体部の全体としても、自由状態における姿勢に近い状態で軸方向に撓むことができるようになるため、第1圧接部を第1摩擦連結部及び押圧部に対して傾倒しないように軸方向に移動させることができる。
【0014】
請求項5に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項4において、第1孔及び第2孔は、回転方向に延びるスリット孔である。
このロックアップ装置では、第1孔及び第2孔がスリット孔であるため、スリット孔の回転方向長さを変更することにより、低剛性部及び高剛性部における剛性を適切かつ容易に設定することができる。
【0015】
請求項6に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項1〜5のいずれかにおいて、第1本体部の軸方向への撓みを所定の範囲に制限する制限機構をさらに備えている。
このロックアップ装置では、制限機構によって、第1本体部の軸方向への撓みが所定の範囲に制限されているため、他の部材との干渉を防ぐことができる。
【0016】
請求項7に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項1において、第2クラッチ部材と、環状の第2連結部材とをさらに備えている。第2クラッチ部材は、第1クラッチ部材に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着され、第1摩擦連結部と摩擦面との軸方向間に配置された第2摩擦連結部を有する。第2連結部材は、フロントカバーに固定され軸方向に撓み可能な第2本体部と、第2摩擦連結部と第1摩擦連結部との軸方向間に配置されるように第2本体部の半径方向端部に設けられた第2圧接部とを有する。
【0017】
このロックアップ装置では、第1クラッチ部材に第2摩擦連結部を有する第2クラッチ部材を係合させるとともに、第2摩擦連結部と第1摩擦連結部との軸方向間に第2連結部材を配置することによって、5面の摩擦面を有する構造を実現できる。これにより、トルク伝達容量をさらに増加させることができる。
請求項8に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項7において、第2本体部は、第1本体部とともに、フロントカバーにかしめて固定されている。
【0018】
このロックアップ装置では、第2連結部材を第1連結部材とともにフロントカバーにかしめて固定しているため、第2連結部材をフロントカバーに固定するための別の固定部材が不要である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(1)トルクコンバータの全体構造
図1は、本発明の第1実施形態にかかるロックアップ装置を採用した流体式トルク伝達装置としてのトルクコンバータ1の縦断面概略図である。トルクコンバータ1は、エンジンのクランクシャフト2からトランスミッションの入力シャフト(図示せず)にトルクを伝達するための装置である。図1の左側に図示しないエンジンが配置され、図1の右側に図示しないトランスミッションが配置されている。図1に示すO−Oは、トルクコンバータ1の回転軸線である。
【0020】
トルクコンバータ1は、主に、フレキシブルプレート4とトルクコンバータ本体5とから構成されている。フレキシブルプレート4は、円板状の薄い部材からなり、トルクを伝達するとともにクランクシャフト2からトルクコンバータ本体5に伝達される曲げ振動を吸収するための部材である。したがって、フレキシブルプレート4は、回転方向にはトルク伝達に十分な剛性を有しているが、曲げ方向には剛性が低くなっている。また、フレキシブルプレート4の内周部は、クランクシャフト2にクランクボルト3を介して固定されている。
【0021】
トルクコンバータ本体5は、フレキシブルプレート4の外周部が固定されたフロントカバー11と、3種の羽根車(インペラー21、タービン22、ステータ23)と、ロックアップ装置7とを備えている。そして、フロントカバー11とインペラー21とによって囲まれて作動油で満たされた流体室は、インペラー21、タービン22及びステータ23とによって囲まれたトーラス形状の流体作動室6と、ロックアップ装置7が配置された環状の空間8(図2参照)とに分割されている。
【0022】
フロントカバー11は、円板状の部材であり、その内周部に、軸方向に延びる略円筒形状の部材であるセンターボス16が溶接等によって固定されている。センターボス16は、クランクシャフト2の中心孔内に挿入された筒状の部材である。
フロントカバー11の外周部には、トランスミッション側に延びる外周側筒状部11aが形成されている。この外周側筒状部11aの先端には、インペラー21のインペラーシェル26の外周縁が溶接等によって固定されている。そして、フロントカバー11とインペラー21とによって、内部に作動油が充填された流体室が形成されている。
【0023】
インペラー21は、主に、インペラーシェル26と、その内側に固定された複数のインペラーブレード27と、インペラーシェル26の内周部に溶接等によって固定されたインペラーハブ28とから構成されている。
タービン22は、流体室内でインペラー21に軸方向に対向して配置されている。タービン22は、主に、タービンシェル30と、そのインペラー21側の面に固定された複数のタービンブレード31と、タービンシェル30の内周縁に固定されたタービンハブ32とから構成されている。タービンハブ32は、フランジ部32aとボス部32bとから構成されている。タービンシェル30は、複数のリベット33によって、タービンハブ32のフランジ部32aに固定されている。また、タービンハブ32のボス部32bの内周面には、入力シャフト(図示せず)に係合するスプラインが形成されている。これにより、タービンハブ32は、入力シャフト(図示せず)と一体回転するようになっている。
【0024】
ステータ23は、インペラー21の内周部とタービン22の内周部との軸方向間に設置されており、タービン22からインペラー21に戻る作動油の流れを整流するための機構である。ステータ23は、樹脂やアルミ合金等で鋳造により一体に製作されており、主に、環状のステータキャリア35と、ステータキャリア35の外周面に設けられた複数のステータブレード36と、ステータブレードの外周端に固定された環状のステータコア37から構成されている。ステータキャリア35は、ワンウェイクラッチ38を介して筒状の固定シャフト(図示せず)に支持されている。
【0025】
センターボス16とタービンハブ32との軸方向間には、第1スラストベアリング41が配置されており、タービン22の回転によって発生するスラスト力を受けている。この第1スラストベアリング41が配置された部分において、半径方向両側に作動油が連通可能な第1ポート18が形成されている。また、タービンハブ32(具体的にはフランジ部32a)とステータ23の内周部(具体的にはワンウェイクラッチ38)との間には、第2スラストベアリング42が配置されている。この第2スラストベアリング42が配置された部分において、半径方向両側に作動油が連通可能な第2ポート19が形成されている。さらに、ステータ23(具体的にはステータキャリア35)とインペラー21(具体的にはインペラーハブ28)との軸方向間には、第3スラストベアリング43が配置されている。この第3スラストベアリング43が配置された部分において、半径方向両側に作動油が連通可能な第3ポート20が形成されている。なお、ポート18〜20は、図示しない油圧回路に接続されており、それぞれに独立して作動油の供給・排出が可能となっている。
【0026】
(2)ロックアップ装置の構造
ロックアップ装置7は、タービン22とフロントカバー11との間の空間8に配置されており、必要に応じて両者を機械的に連結するための機構である。
ロックアップ装置7は、クラッチ機構及びダンパー機構の機能を有しており、主に、クラッチプレート71と、ドライブプレート72と、トーションスプリング73と、ドリブンプレート74と、ピストン75と、連結部材76とから構成されている。
【0027】
次に、ロックアップ装置7について、図2〜図4を用いて詳細に説明する。ここで、図2は、図1の部分拡大図であって、ロックアップ装置7を示す図である。図3は、ドライブプレート72と複数のトーションスプリング73とピストン75との組立図(一部を破断してピストン75のみを図示)をトランスミッション側から見た図である。図4は、クラッチプレート71とピストン75との組立図(一部を破断してピストン75のみを図示)をエンジン側から見た図である。
【0028】
▲1▼ピストン
ピストン75は、中心孔が形成された円板状の部材である。ピストン75は、タービンハブ32のボス部32bの外周側に配置されている。ピストン75は、主に、円板部75aと、円板部75aの外周側に形成されたスプリング支持部75bと、円板部75aの内周側に形成された内周側筒状部75cとから構成されている。
【0029】
円板部75aは、空間8を軸方向エンジン側の空間8aと軸方向トランスミッション側の空間8bとの2つの空間に分割するように配置された円板状の部分であり、その外周部に形成された押圧部75dと、押圧部75dの内周側に形成された複数の固定孔75eとを有している。押圧部75dは、そのフロントカバー側面が平坦な環状部分であり、環状の摩擦フェーシング75fが貼り付けられている。固定孔75eは、リベット77によって、ドライブプレート72をピストン75に固定するための孔であり、本実施形態において、回転方向に並んで8個形成されている。
【0030】
スプリング支持部75bは、トーションスプリング73のエンジン側の部分と半径方向外周側の部分とを支持しており、トーションスプリング73のエンジン側の部分が当接する外周側環状部75gと、外周側環状部75gの外周端から軸方向トランスミッション側に延びる外周側筒状部75hとを有している。外周側環状部75gは、円板部75aの外周端から半径方向外周側に延びる環状の部分であり、軸方向エンジン側に突出するように形成された係合部75iを有している。また、係合部75iは、本実施形態において、外周側環状部75gの一部に、回転方向に間隔を開けて2カ所の切り込みを設け、さらに、その2つの切り込み間の部分を軸方向エンジン側に向かって押し出すようにして形成された部分である。このため、係合部75iは、外周側環状部75gの一部を切り欠いて形成する場合のように、外周側環状部75gの一部を削除するような方法により形成されていないため、外周側環状部75gの剛性の低下が抑えられている。係合部75iは、本実施形態において、外周側環状部75gに、回転方向に並んで複数個(具体的には、8個)形成されている。外周側筒状部75hは、その端部が軸方向トランスミッション側に向かうにつれて半径が小さくなるような形状を有している。
【0031】
内周側筒状部75cは、円板部75aの内周端から軸方向トランスミッション側に延びる筒状部分であり、その内周面がタービンハブ32のボス部32bの外周面に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転可能に支持されている。ボス部32bの外周面と内周側筒状部75cの内周面との間には、シールリング32cが配置されている。シールリング32cは、ピストン75の内周部において、空間8aと空間8bとを互いにシールしている。
【0032】
▲2▼ドライブプレート
ドライブプレート72は、ピストン75とともに複数のトーションスプリング73を支持するために設けられた環状のプレート部材であり、ピストン75の軸方向トランスミッション側に配置されている。ドライブプレート72は、その内周部がピストン75の円板部75aに複数のリベット77によって固定されており、ピストン75と一体回転するようになっている。
【0033】
ドライブプレート72は、主に、第1環状部72aと、第1環状部72aの外周端に形成された複数の第1爪部72bと、第1爪部72bの回転方向間に形成された複数の第2爪部72cとから構成されている。
第1環状部72aは、その内周部に複数の固定孔72eを有している。固定孔72eは、ドライブプレート72をピストン75に固定するためのリベット77が挿通される孔であり、ピストン75に形成された複数の固定孔75eに対応するように、回転方向に並んで8個形成されている。
【0034】
第1爪部72bは、ピストン75のスプリング支持部75bの軸方向トランスミッション側の空間に配置されている。第1爪部72bは、本実施形態において、回転方向に並んで8個形成されている。具体的には、第1爪部72bは、ピストン75の外周側環状部75gのトランスミッション側面に沿って径方向外周側に延びる第2環状部72gと、第2環状部72gの外周側端部から軸方向トランスミッション側に延びる筒状部72fとを有している。
【0035】
第2爪部72cは、第1環状部72aの外周側端部を軸方向トランスミッション側に向かって切り起こすことによって形成されており、本実施形態において、回転方向に並んで8個形成されている。
▲3▼トーションスプリング
トーションスプリング73は、本実施形態において、8個のコイルスプリングであり、ドライブプレート72の第1爪部72bの回転方向間に対応するように配置されている。そして、トーションスプリング73の回転方向両端は、第1爪部72bの回転方向端部によって、直接又はスプリングシートを介して支持されている。また、トーションスプリング73の軸方向エンジン側及び半径方向外周側の部分は、ピストン75のスプリング支持部75b(具体的には、外周側環状部75g及び外周側筒状部75h)によって支持されている。さらに、トーションスプリング73の半径方向内周側の部分は、ドライブプレート72の第2爪部72cによって支持されている。このように、トーションスプリング73は、ピストン75とドライブプレート72とによって支持されている。
【0036】
ピストン75のスプリング支持部75bに形成された係合部75iは、本実施形態において、ドライブプレート72の第1爪部72b及びトーションスプリング73の半径方向位置に対応するように(より具体的には、第1爪部72bの第2環状部72gに対応するように)配置されている。しかし、係合部75iは、上述のように、軸方向エンジン側に突出するように形成されており、第1爪部72b及びトーションスプリング73に干渉しないようになっている。
【0037】
▲4▼ドリブンプレート
ドリブンプレート74は、タービン22と一体回転するとともに、ドライブプレート72に相対回転することが可能な部材であり、ドライブプレート72の軸方向トランスミッション側に配置されている。ドリブンプレート74は、本実施形態において、タービンシェル30の外周部の軸方向エンジン側面に溶接等によって固定された環状部74aと、複数の爪部74bとを有している。爪部74bは、環状部74aの半径方向外周端から軸方向エンジン側に延びる部分であり、トーションスプリング73の回転方向端に当接している。爪部74bは、本実施形態において、ドライブプレート72の第1爪部72bの筒状部72fの半径方向内周側を軸方向エンジン側に向かって延びており、ドライブプレート72の第1爪部72bの第2環状部72gの近傍まで達している。爪部74bは、ドライブプレート72の第1爪部72bとほぼ同じ回転方向位置に配置されており、トーションスプリング73をドライブプレート72の第1爪部72bとの回転方向間で圧縮できるようになっている。
【0038】
このように、ドライブプレート72、トーションスプリング73及びドリブンプレート74は、ピストン75とタービン22とを弾性的に連結するためのロックアップ装置7のダンパー機構を構成している。
▲5▼クラッチプレート
クラッチプレート71は、ピストン75に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着されている。クラッチプレート71は、ピストン75の軸方向エンジン側に配置された環状のプレート部材であり、フロントカバー11の摩擦面11bに近接する環状の摩擦連結部71aと、摩擦連結部71aの半径方向外周側に形成された複数の爪部71bとを有している。
【0039】
摩擦連結部71aの軸方向エンジン側面には、環状の摩擦フェーシング71cが貼られている。また、本実施形態において、摩擦連結部71aの軸方向トランスミッション側面にも、環状の摩擦フェーシング71dが貼られている。
爪部71bは、ピストン75のスプリング支持部75bの係合部75iに対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に係合可能な部分である。爪部71bは、本実施形態において、係合部75iに対応する部分を切り欠くことによってその回転方向両側に形成された部分である。このため、クラッチプレート71は、係合部75iの回転方向両側を2つの爪部71bによって挟むようにしてピストン75に係合している。
【0040】
▲6▼連結部材
連結部材76は、ピストン75の押圧部75dとクラッチプレート71の摩擦連結部71aとを軸方向に移動可能な状態でフロントカバー11に連結させるためのピストン連結機構の機能を有している。
連結部材76は、軸方向に撓み可能なプレート部材であり、主に、本体部76aと、摩擦連結部71aと押圧部75dとの軸方向間に配置された圧接部76bとから構成されている。連結部材76は、例えば、バネ鋼等の弾性変形可能な材料からなる。
【0041】
本体部76aは、本実施形態において、フロントカバー11とピストン75とによって挟まれた軸方向間の空間8aをさらに軸方向エンジン側の空間8cと軸方向トランスミッション側の空間8dとの2つの空間に分割するように配置された環状の部分であり、複数の固定孔76cと複数の油孔76dとを有している。固定孔76cは、本体部76aの半径方向内周部に形成されている。連結部材76は、これらの固定孔76cの位置で、フロントカバー11にかしめ固定されており、フロントカバー11と一体回転するようになっている。油孔76dは、空間8cと空間8dとの間で常に作動油が流通可能となるようにに設けられた油孔であり、本実施形態において、本体部76aの半径方向外周部に形成されている。
【0042】
圧接部76bは、本体部76aの半径方向外周側に形成された環状の部分であり、クラッチプレート71の摩擦連結部71aの軸方向トランスミッション側面(具体的には、摩擦フェーシング71d)とピストン75の押圧部75d(具体的には、摩擦フェーシング75f)との軸方向間に配置されている。圧接部76bは、本体部76aが固定孔76cの位置を支点として軸方向に撓むことによって、自らが軸方向に移動可能となっている。
【0043】
上記のように、連結部材76は、フロントカバー11に対して相対回転不能に設けられるとともに、ピストン75の押圧部75d及びクラッチプレート71の摩擦連結部71aの軸方向移動に伴って自らも軸方向に移動しつつ、摩擦連結部71aと押圧部75dとの軸方向間に挟まれるように圧接されて、ピストン75とフロントカバー11とを連結させることが可能である。
【0044】
このように、クラッチプレート71、ピストン75の押圧部75d及び連結部材76は、フロントカバー11とピストン75とを摩擦連結するためのロックアップ装置7のクラッチ機構を構成している。
(3)トルクコンバータ及びロックアップ装置の動作
図1及び図2を用いて、トルクコンバータ1の動作について説明する。
【0045】
エンジン始動直後には、第1ポート18及び第3ポート20からトルクコンバータ本体5内に作動油が供給され、第2ポート19から作動油が排出される。第1ポート18から供給された作動油は、空間8a内を外周側に向かって流れる。作動油は、クラッチプレート71の摩擦連結部71aの軸方向両側及び連結部材76の圧接部76bの軸方向両側を通ってさらに流れ、最後に流体作動室6内に流れ込む。
【0046】
このとき、ピストン75は、空間8a側の油圧が空間8b及び流体作動室6側の油圧より高くなり、軸方向トランスミッション側に移動している。ピストン75は、内周側筒状部75cのタービン側端部がタービンハブ32のフランジ部32aのエンジン側面に当接した状態で停止する。このように、ロックアップが解除されている場合、フロントカバー11とタービン22との間のトルク伝達はインペラー21とタービン22との間の流体駆動によって行われている。
【0047】
トルクコンバータ1の速度比が上がり、入力シャフト(図示せず)が一定の回転数に達すると、第1ポート18から空間8a内の作動油が排出される。この結果、流体作動室6及び空間8b側の油圧が空間8a側の油圧より高くなり、ピストン75が軸方向エンジン側に移動させられる。これにより、ピストン75の押圧部75dは、連結部材76の圧接部76bを軸方向エンジン側に押圧する。すると、連結部材76の本体部76aが固定孔76cの位置を支点として軸方向エンジン側に撓む。これにより、連結部材76の圧接部76bは、軸方向エンジン側に移動し、クラッチプレート71の摩擦連結部71aに当接し、押圧部75dと摩擦連結部71aとの軸方向間に挟みつけられる。さらに、ピストン75の押圧部75dは、圧接部76bが押圧部75dと摩擦連結部71aとの間に挟みつけられた状態で摩擦連結部71aを軸方向エンジン側に押圧して、摩擦連結部71aがフロントカバー11の摩擦面11bに圧接される。このようにして、ロックアップ動作が行われる。
【0048】
このとき、クラッチプレート71は、ピストン75の係合部75iに軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に係合しているため、スムーズに軸方向に移動している。また、連結部材76は、フロントカバー11と一体回転しているため、クラッチプレート71及びピストン75に対してトルク伝達を行っている。そして、フロントカバー11からピストン75に伝達されたトルクは、ピストン75と一体回転するダンパー機構(すなわち、ドライブプレート72、トーションスプリング73及びドリブンプレート74)を介して、タービン22に伝達されて、直接入力シャフト(図示せず)に出力される。このとき、トーションスプリング73は、ドライブプレート72とドリブンプレート74とが相対回転することによって、ドライブプレート72の第1爪部72bの回転方向端部とドリブンプレート74の爪部74bの回転方向端部との間で圧縮されている。
【0049】
また、連結部材76の本体部76aには、油孔76dが形成されているため、空間8cと空間8dとの間の作動油の流れが確保されて両空間の油圧が同じ圧力になるように調節されている。これにより、ロックアップ時における空間8c内の作動油の排出がスムーズに行われている。
次に、ロックアップ解除時の動作について説明する。ロックアップ解除時には、エンジン始動直後と同様に、第1ポート18及び第3ポート20からトルクコンバータ本体5内に作動油が供給され、第2ポート19から作動油が排出される。すると、第1ポート18から供給された作動油は、空間8a内を外周側に向かって流れる。作動油は、クラッチプレート71の摩擦連結部71aの軸方向両側及び連結部材76の圧接部76bの軸方向両側を通ってさらに流れ、最後に流体作動室6内に流れ込む。
【0050】
このとき、ピストン75は、空間8a側の油圧が空間8b及び流体作動室6側の油圧より高くなり、軸方向トランスミッション側に移動する。すると、ピストン75は、内周側筒状部75cのタービン側端部がタービンハブ32のフランジ部32aのエンジン側面に当接するまで移動する。そして、連結部材76は、圧接部76bに作用していた軸方向エンジン側への押圧力が解除されるため、圧接部76bが軸方向トランスミッション側に移動して、軸方向エンジン側に撓んでいた本体部76aが撓みのない自由状態に戻る。
【0051】
このようなロックアップ解除時においても、連結部材76の本体部76aには、油孔76dが形成されているため、ロックアップ解除時における空間8c内への作動油の供給がスムーズに行われている。
尚、ロックアップ装置7では、クラッチプレート71の摩擦連結部71aの両面に摩擦フェーシング71c、71dが貼られ、かつ、ピストン75の押圧部75dに摩擦フェーシング75fが貼られているため、1面又は2面の摩擦面を有するロックアップ装置に比べてトルク伝達容量が大きくなっている。
【0052】
(4)ロックアップ装置の特徴
本実施形態のロックアップ装置7には、以下のような特徴がある。
▲1▼ロックアップ装置7では、ピストン75の押圧部75dとクラッチプレート71の摩擦連結部71aとを軸方向に移動可能な状態でフロントカバー11に連結させるためのピストン連結機構が、軸方向に撓み可能な本体部76aと、本体部76aの半径方向端部に設けられた圧接部76bとを有する連結部材76によって構成されている。このため、従来の3面の摩擦面を有するロックアップ装置に比べて、部品点数が低減され、構造が簡略化されている。
【0053】
▲2▼ロックアップ装置7では、連結部材76に複数の油孔76dが形成されており、空間8cと空間8dとの間の作動油の流れが確保されて両空間の油圧が同じ圧力になるように調節されている。これにより、ロックアップ時及びロックアップ解除時における空間8c内の作動油の供給及び排出がスムーズに行われるため、ロックアップ時及びロックアップ解除時の動作の応答性が向上している。
【0054】
▲3▼ロックアップ装置7では、クラッチプレート71がピストン75のスプリング支持部75bに軸方向エンジン側に突出するように形成された係合部75iによって、軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に係合されている。このため、ピストン75のトランスミッション側面に近接して配置された部材(具体的には、ドライブプレート72やトーションスプリング73)と干渉しないようになっているため、クラッチプレート71の配置の自由度を高めることができる。
【0055】
特に、本実施形態のように、係合部75iをピストン75の半径方向外周部(具体的には、トーションスプリング73の半径方向位置)に配置するような場合であっても、係合部75iとトーションスプリング73とが干渉することがないため、容易に、摩擦面11b、摩擦係合部71a及び押圧部75dを半径方向外周側に配置することができる。これにより、ロックアップ装置7のダンパー機構の捩り振動吸収特性を向上させるとともに、トルク伝達容量をさらに増加させることができる。
【0056】
(5)変形例
上記実施形態のロックアップ装置7では、摩擦連結部71aの軸方向エンジン側面及び軸方向トランスミッション側面とピストン75の押圧部75dとに摩擦フェーシング71c、71d、75fが貼られているが、これに限定されず、図5に示される変形例としてのロックアップ装置107のように、摩擦連結部171aの軸方向エンジン側面と連結部材176の圧接部176bとに摩擦フェーシング171c、176e、176fが貼られた構造であってもよい。ここで、ロックアップ装置107の他の構造は、ロックアップ装置7と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
このようなロックアップ装置107においても、ロックアップ装置7と同様な効果が得られる。
[第2実施形態]
第1実施形態のロックアップ装置7では、連結部材76の本体部76aが固定孔76cの半径方向位置を支点として軸方向に撓むため、図8(c)に示すように、圧接部76bは、ロックアップ動作の際に、摩擦連結部71a及び押圧部75dに対して傾倒しながら軸方向に移動することになる(ここで、図8(c)中の点線で示された連結部材76はロックアップ解除時を示し、実線で示された連結部材76はロックアップ時を示す)。
【0058】
これに対して、本実施形態のロックアップ装置207では、図6に示すように、連結部材276に圧接部276bを摩擦連結部71a及び押圧部75dに対して傾倒しないように軸方向に移動させる傾倒防止機構277を設けている。以下に、本実施形態のロックアップ装置207について説明する。ここで、ロックアップ装置207の構造は、連結部材276の構造を除いては、ロックアップ装置7と同様であるため、第1実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
【0059】
(1)連結部材の構造及び動作
連結部材276は、第1実施形態における連結部材76と同様に、軸方向に撓み可能なプレート部材であり、主に、本体部276aと、摩擦連結部71aと押圧部75dとの軸方向間に配置された圧接部276bとから構成されている。
本体部276aは、本実施形態において、フロントカバー11とピストン75とによって挟まれた軸方向間の空間8aをさらに軸方向エンジン側の空間8cと軸方向トランスミッション側の空間8dとの2つの空間に分割するように配置された環状の部分であり、複数の固定孔276cと複数の油孔276dと傾倒防止機構277とを有している。
【0060】
傾倒防止機構277は、本実施形態において、図6及び図7に示すように、本体部276aに形成された複数の孔276e、複数の孔276f、複数の孔276g及び複数の孔276hから構成されている。図7は、連結部材276をトランスミッション側から見た図である。
複数の孔276eは、固定孔276cの半径方向外周側において回転方向に並んで配置されている。複数の孔276fは、孔276eの半径方向外周側において、孔276eの回転方向間に対応するように配置されている。複数の孔276gは、孔276fの半径方向外周側において、孔276fの回転方向間に対応するように、すなわち、孔276eの回転方向位置に対応するように配置されている。複数の孔276hは、孔276gの半径方向外周側において、孔276gの回転方向間に対応するように、すなわち、孔276fの回転方向位置に対応するように配置されている。このように、本体部276aには、孔276e、276gと、孔276e、276gの半径方向内周側又は外周側において孔276e、276gの回転方向間に対応するように配置された孔276f、276hとが半径方向に向かって交互に形成されている。これらの孔276e〜276fは、本実施形態において、回転方向に細長く延びるスリット孔である。
【0061】
さらに詳細には、孔276fは、その回転方向中央部が孔276e、276gの回転方向間に対応するように、かつ、半径方向内周側又は外周側から見た際にその回転方向両端部が孔276e、276gの回転方向端部と重なるように配置されている。同様に、孔276fの半径方向外周側に配置された孔276gは、その回転方向中央部が孔276f、276hの回転方向間に対応するように、かつ、半径方向内周側又は外周側から見た際にその回転方向両端部が孔276f、276hの回転方向端部と重なるように配置されている。このように、各孔276e〜276fの回転方向両端部は、半径方向内周側又は外周側から見た際に、半径方向内周側又は外周側に配置された孔276e〜276fの回転方向端部と重なるように配置されている。これにより、各孔276e〜276fの回転方向端部同士によって半径方向に挟まれた部分(以下、低剛性部とする)と、各孔276e〜276fの回転方向中央部同士によって半径方向に挟まれた部分(以下、高剛性部とする)とが形成される。この低剛性部は、高剛性部よりも剛性が小さいため、圧接部276bが軸方向に移動する際に、高剛性部よりも軸方向に大きく撓みやすくなっている。
【0062】
このような傾倒防止機構277を有する連結部材276を備えたロックアップ装置207において、ロックアップを行う際の連結部材276の動作について、図7〜図9を用いて説明する。ここで、図8は、ロックアップ動作時の連結部材276の動作を模式的に説明する図であって、(a)図7のA−A断面図、(b)図7のB−B断面図、(c)傾倒防止機構を有しない第1実施形態の連結部材76の(a)に相当する図である。図9は、ロックアップ動作時の連結部材276の動作を模式的に説明する図であって、(a)図7のC−C断面図、(b)図7のD−D断面図である。
【0063】
空間8a内の作動油を排出してピストン75を軸方向エンジン側に移動させて、ピストン75の押圧部75dによって連結部材276の圧接部276bを軸方向エンジン側に押圧すると、連結部材276の本体部276aが固定孔276cの位置を支点として軸方向エンジン側に撓む。この際、連結部材276の傾倒防止機構277は、複数の孔276e〜276fにより形成された低剛性部と高剛性部との撓みの差を利用して、本体部276aの姿勢を自由状態の姿勢に近い状態に保ちつつ軸方向に撓ませることで、圧接部276bを摩擦連結部71a及び押圧部75dに対して傾倒しないように軸方向に移動させることができる。
【0064】
以下に、この傾倒防止機構277の動作について、図7に示されるC−C断面及びD−D断面を例として詳細に説明する。
圧接部276bが軸方向エンジン側に移動すると、本体部276aのC−C断面付近においては、図8(b)及び図9(a)に示すように、複数の孔276hの回転方向間に形成された複数の高剛性部276kは、圧接部276bの軸方向への移動とともに軸方向エンジン側に移動する。ここで、本体部276a全体としては、固定孔276cを支点にして軸方向に撓もうとするため、高剛性部276kの回転方向両側に形成された低剛性部276jが高剛性部276iとの間で孔276hを軸方向に変形させながら軸方向に撓むこととなる。このような動作により、本体部276aのC−C断面付近が軸方向に撓むようになっているため、高剛性部276kの姿勢を自由状態における姿勢に近い状態に保ちつつ、本体部276aのC−C断面付近の部分を軸方向に撓ませることができる。同様に、本体部276aのD−D断面付近においても、図8(a)及び図9(b)に示すように、複数の孔276gの回転方向間に形成された複数の高剛性部276iは、圧接部276bの軸方向への移動とともに軸方向エンジン側に移動する。ここで、高剛性部276iの回転方向両側に形成された低剛性部276mが高剛性部276nとの間で孔276gを軸方向に変形させながら軸方向に撓むこととなる。このような動作により、本体部276aのD−D断面付近が軸方向に撓むようになっているため、高剛性部276iの姿勢を自由状態における姿勢に近い状態に保ちつつ、本体部276aのD−D断面付近の部分を軸方向に撓ませることができる。さらに、本体部276aのD−D断面よりも半径方向内周側に形成された高剛性部276n、276pについても、上記と同様に、その姿勢を自由状態における姿勢に近い状態に保ちつつ、これらの高剛性部に対応する本体部276aの部分を撓ませることができる。以上より、本体部276a全体としても、その姿勢を自由状態における姿勢に近い状態に保ったまま軸方向に撓むこととなる。
【0065】
これにより、本実施形態のロックアップ装置207では、複数の孔276e〜276hからなる傾倒防止機構277によって、圧接部276bが摩擦連結部71a及び押圧部75dに対して傾倒しないように軸方向に移動させることができるため、圧接部276bと摩擦連結部71a及び押圧部75dとの間におけるドラグトルクの発生を抑え、並びに、フェーシング面の均一な面圧を実現できる(μ−v特性の向上)。また、ロックアップ装置207では、複数の孔276e〜276hがスリット孔であるため、スリット孔の回転方向長さを変更することにより、低剛性部及び高剛性部における剛性を適切かつ容易に設定することができる。
【0066】
(2)変形例
前記実施形態のロックアップ装置207では、複数の孔276e〜276hからなる傾倒防止機構277を本体部276aに設けているため、これらの孔276e〜276hを空間8cと空間8dとの間を連通させるための油孔として利用することができる。このため、図10に示すロックアップ装置307のように、ロックアップ装置207に設けられていた複数の油孔276dを省略してもよい。
【0067】
[第3実施形態]
第1実施形態のロックアップ装置7において、連結部材76の本体部76aの軸方向への撓みを制限するための制限機構を設けてもよい。例えば、図11に示す本実施形態のロックアップ装置407のように、連結部材476の本体部476aの一部を軸方向エンジン側に向けて切り起こした切り起こし部478及び連結部材476の本体部476aの一部を軸方向トランスミッション側に向けて切り起こした切り起こし部479を制限機構とすることが可能である。ここで、ロックアップ装置407の他の構造は、第1実施形態のロックアップ装置7と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
このような切り起こし部478、479を本体部476aに形成することによって、軸方向エンジン側に本体部476aが撓む際に、フロントカバー11の内面に切り起こし部478の先端を当接させて、連結部材476の本体部476aの軸方向エンジン側への撓みを所定の範囲に制限することができ、また、ピストン75の軸方向エンジン側面に切り起こし部479の先端を当接させて、連結部材476の本体部476aの軸方向トランスミッション側への撓みを所定の範囲に制限することができるため、連結部材476と他の部材(フロントカバー11、クラッチプレート71、ピストン75等)との干渉を防ぐことができる。
【0069】
尚、連結部材476において、ピストン75側への撓みのみを所定の範囲に制限する場合には、切り起こし部479のみを設けてもよいし、逆に、フロントカバー11側への撓みのみを所定の範囲に制限する場合には、切り起こし部478のみを設けてもよい。
(1)変形例1
前記実施形態のロックアップ装置407では、切り起こし部478、479からなる制限機構を本体部476aに設けることにより、空間8cと空間8dとの間を連通させる孔が形成されている。これらの孔は、空間8cと空間8dとの間を連通させるための油孔として利用することができるため、図12に示すロックアップ装置507のように、ロックアップ装置407に設けられていた複数の油孔476dを省略してもよい。
【0070】
(2)変形例2
第2実施形態のロックアップ装置207においては、連結部材276の本体部276aに傾倒防止機構277が設けられている。傾倒防止機構277は、本体部276aに形成された複数の孔276e〜276hから構成されている。これらの孔276e〜276hは、図7に示すように、打ち抜き加工により形成されているが、これらの孔276e〜276hの一部をフロントカバー側又はピストン側に切り起こすことによって形成させて、制限機構と兼用させるようにしてもよい。
【0071】
例えば、図13に示すロックアップ装置607のように、第2実施形態のロックアップ装置207と同様に、連結部材676の本体部676aに複数の孔676e〜676hからなる傾倒防止機構677を設け、孔676e及び孔676hについては打ち抜き加工により形成するのではなく、切り起こしにより形成することが可能である。具体的には、複数の孔676hは、本体部676aの一部を軸方向エンジン側に向けて切り起こした切り起こし部678を形成することによって形成される。複数の孔676fは、本体部676aの一部を軸方向トランスミッション側に向けて切り起こした切り起こし部679を形成することによって形成される。
【0072】
上記のように、連結部材676を構成することにより、連結部材676の圧接部676bが軸方向へ移動する際の傾倒を防ぎ、かつ、本体部676aの軸方向への撓みを所定の範囲に制限することができる。
尚、第2実施形態の変形例1にかかるロックアップ装置307や本実施形態の変形例1にかかるロックアップ装置507と同様、傾倒防止機構677や切り起こし部678、679が設けられることによって、空間8cと空間8dとが連通されているため、連結部材676の油孔676dを省略することも可能である。
【0073】
(3)変形例3
本実施形態のロックアップ装置407、507、607では、連結部材の本体部に形成された切り起こし部を制限機構としているが、図14に示すロックアップ装置707のように、フロントカバー11の内面及びピストン75の軸方向エンジン側面に設けられたラグ780、781を設けてもよい。ラグ780、781は、図14に示すように、溶接等により、フロントカバー11及びピストン75に固定してもよいし、フロントカバー11及びピストン75の突起部として一体に設けられていてもよい。
【0074】
このようなラグ780、781を設けることによって、軸方向エンジン側に連結部材776の本体部776aが撓む際に、本体部776aの一部をラグプレート780に当接させて、本体部776aの軸方向エンジン側への撓みを所定の範囲に制限することができ、また、本体部776aの一部をラグプレート781に当接させて、本体部776aの軸方向トランスミッション側への撓みを所定の範囲に制限することができる。
【0075】
尚、本変形例のロックアップ装置707においても、本体部776aに傾倒防止機構を設けたり、これに伴って油孔776dを省略するようにしてもよい。
[第4実施形態]
第1実施形態のロックアップ装置7では、ピストン75の係合部75iにクラッチプレート71を係合させるとともに、ピストン連結機構として機能する連結部材76を設けることによって3面の摩擦面を有する構造としているが、さらに摩擦面を増やすようにすることが可能もある。例えば、図17に示される第2実施形態としてのロックアップ装置1007のように、ピストン75の係合部75iに係合されたクラッチプレート1071に対して、別のクラッチプレート1081を軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着するとともに、2つのクラッチプレート1071、1081の軸方向間に、別の連結部材1086を配置するようにして、5面の摩擦面を有する構造にすることができる。以下に、本実施形態のロックアップ装置1007について説明する。ここで、ロックアップ装置1007の構造は、基本的には、ロックアップ装置7と同様であるため、第1実施形態と共通する部分については、説明を省略し、相違点のみについて説明する。
【0076】
(1)ロックアップ装置の構造
まず、クラッチプレート1081について説明する。クラッチプレート1081は、クラッチプレート1071の軸方向エンジン側に配置された環状のプレート部材であり、フロントカバー11の摩擦面11bに近接する環状の摩擦連結部1081aと、摩擦連結部1081aの半径方向外周側に形成された複数の爪部1081bとを有している。摩擦連結部1081aの軸方向エンジン側面には、環状の摩擦フェーシング1081cが貼られている。また、本実施形態において、摩擦連結部1081aの軸方向トランスミッション側面にも、環状の摩擦フェーシング1081dが貼られている。爪部1081bは、軸方向トランスミッション側に向かって延びている。
【0077】
一方、クラッチプレート1071は、図18に示すように、環状の摩擦連結部1071aの半径方向外周側に形成された爪部1071bにおいて、各爪部1071bの回転方向中央付近に凹部1071eがさらに形成されている。そして、爪部1081bは、クラッチプレート1071の凹部1071eに対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に係合されている。
【0078】
次に、連結部材1086について説明する。連結部材1086は、連結部材1076とともに、ピストン75の押圧部75d、クラッチプレート1071の摩擦連結部1071a及びクラッチプレート1081の摩擦連結部1081aを軸方向に移動可能な状態で、フロントカバー11に連結させるためのピストン連結機構の機能を有している。
【0079】
連結部材1086は、連結部材1076の軸方向エンジン側に配置されている。連結部材1086は、連結部材1076と同様、軸方向に撓み可能なプレート部材であり、主に、本体部1086aと、摩擦連結部1081aと摩擦連結部1071aとの軸方向間に配置された圧接部1086bとから構成されている。
本体部1086aは、本実施形態において、フロントカバー11と連結部材1076とによって挟まれた軸方向間の空間1008cをさらに軸方向エンジン側の空間1008eと軸方向トランスミッション側の空間1008fとの2つの空間に分割するように配置された環状の部分であり、複数の固定孔1086cと複数の油孔1086dとを有している。固定孔1086cは、本体部1086aの半径方向内周部に形成されている。連結部材1086は、これらの固定孔1086cの位置で、連結部材1076とともに、フロントカバー11にかしめ固定されており、フロントカバー11と一体回転するようになっている。油孔1086dは、空間1008eと空間1008fとの間で常に作動油が流通可能となるようにに設けられた油孔であり、本実施形態において、本体部1086aの半径方向外周部に形成されている。
【0080】
圧接部1086bは、本体部1086aの半径方向外周側に形成された環状の部分であり、クラッチプレート1081の摩擦連結部1081aの軸方向トランスミッション側面(具体的には、摩擦フェーシング1081d)とクラッチプレート1071の摩擦連結部1071a(具体的には、摩擦フェーシング1071c)との軸方向間に配置されている。圧接部1086bは、本体部1086aが固定孔1086cの位置を支点として軸方向に撓むことによって、自らが軸方向に移動可能となっている。
【0081】
上記のように、連結部材1086は、フロントカバー11に対して相対回転不能に設けられるとともに、ピストン75の押圧部75d及び2つのクラッチプレート1071、1081の摩擦連結部1071a、1081aの軸方向移動に伴って自らも軸方向に移動しつつ、2つの摩擦連結部1071a、1081a間に挟まれるように圧接されて、ピストン75とフロントカバー11とを連結させることが可能である。
【0082】
このように、2つのクラッチプレート1071、1081、ピストン75の押圧部75d及び2つの連結部材1076、1086は、フロントカバー11とピストン75とを摩擦連結するためのロックアップ装置1007のクラッチ機構を構成している。
(2)ロックアップ装置の動作
次に、ロックアップ装置1007のロックアップ時の動作について説明する。
【0083】
空間1008a内の作動油が排出されて、ピストン75が軸方向エンジン側に移動させられると、ピストン75の押圧部75dは、連結部材1076の圧接部1076bを軸方向エンジン側に押圧する。すると、連結部材1076の本体部1076aが固定孔1076cの位置を支点として軸方向エンジン側に撓む。これにより、連結部材1076の圧接部1076bは、軸方向エンジン側に移動し、クラッチプレート1071の摩擦連結部1071aに当接し、押圧部75dと摩擦連結部1071aとの軸方向間に挟みつけられる。次に、ピストン75の押圧部75dは、圧接部1076bが押圧部75dと摩擦連結部1071aとの間に挟みつけられた状態で摩擦連結部1071aを軸方向エンジン側に押圧して、摩擦連結部1071aが連結部材1086の圧接部1086bを軸方向エンジン側に押圧する。すると、連結部材1086の本体部1086aが固定孔1086cの位置を支点として軸方向エンジン側に撓む。これにより、連結部材1086の圧接部1086bは、軸方向エンジン側に移動し、クラッチプレート1081の摩擦連結部1081aに当接し、2つの摩擦連結部1071a、1081a間に挟みつけられる。さらに、ピストン75の押圧部75dは、圧接部1076b、1086b及び摩擦連結部1071aが押圧部75dと摩擦連結部1081aとの間に挟みつけられた状態で摩擦連結部1081aを軸方向エンジン側に押圧して、摩擦連結部1081aがフロントカバー11の摩擦面11bに圧接される。このようにして、ロックアップ動作が行われる。
【0084】
このとき、クラッチプレート1081は、クラッチプレート1071の凹部1071eに軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に係合しているため、スムーズに軸方向に移動している。また、連結部材1086は、フロントカバー11と一体回転しているため、連結部材1076とともに、クラッチプレート1071、1081及びピストン75に対してトルク伝達を行っている。そして、フロントカバー11からピストン75に伝達されたトルクは、ダンパー機構(すなわち、ドライブプレート72、トーションスプリング73及びドリブンプレート74)を介して、タービン22に伝達されて、直接入力シャフト(図示せず)に出力される。
【0085】
また、連結部材1086の本体部1086aには、連結部材1076と同様に、油孔1086dが形成されているため、空間1008eと空間1008fとの間の作動油の流れが確保されて両空間の油圧が同じ圧力になるように調節されている。これにより、ロックアップ時における空間1008c内(具体的には、空間1008e、1008f)の作動油の排出がスムーズに行われている。
【0086】
次に、ロックアップ解除時の動作について説明する。ロックアップ解除時には、空間1008a側の油圧が空間1008bの油圧より高くなるため、ピストン75が軸方向トランスミッション側に移動する。すると、ピストン75は、内周側筒状部75cのタービン側端部がタービンハブ32のフランジ部32aのエンジン側面に当接するまで移動する。そして、連結部材1076、1086は、圧接部1076b、1086bに作用していた軸方向エンジン側への押圧力が解除されるため、圧接部1076b、1086bが軸方向トランスミッション側に移動して、軸方向エンジン側に撓んでいた本体部1076a、1086aが撓みのない自由状態に戻る。
【0087】
このようなロックアップ解除時においても、連結部材1086の本体部1086aには、連結部材1076と同様に、油孔1086dが形成されているため、ロックアップ解除時における空間1008c内への作動油の供給がスムーズに行われている。
このように、本実施形態のロックアップ装置1007では、クラッチプレート1071に加えて、クラッチプレート1081がさらに設けられた5面の摩擦面を有する構造となっているため、トルク伝達容量がさらに大きくなっている。
【0088】
(3)変形例
本実施形態のロックアップ装置1007の連結部材1076、1086においても、図17に示すように、第2実施形態のロックアップ装置207の連結部材276に設けられた傾倒防止機構277と同様の傾倒防止機構1177、1187を設けるようにしてもよい。
【0089】
また、第3実施形態のロックアップ装置407に設けられた切り起こし部478、479からなる制限機構と同様に、連結部材1076、1086に切り起こし部を設けてもよい。例えば、図17に示すロックアップ装置1107のように、連結部材1176の本体部1176aに孔1176e〜1176hからなる傾倒防止機構1177を設けるとともに、孔1176g及び孔1176fをそれぞれ切り起こし部1178及び切り起こし部1179を形成することによって形成し、さらに、連結部材1186の本体部1186aに孔1186e〜1186hからなる傾倒防止機構1187を設けるとともに、孔1186hを切り起こし部1188を形成することによって形成することが可能である。これにより、連結部材1176、1186同士の干渉も防ぐことができる。
【0090】
さらに、本変形例のロックアップ装置1107においても、連結部材1176、1186の油孔1176d、1186dを省略してもよい。
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0091】
▲1▼前記実施形態では、本発明にかかるロックアップ装置をトルクコンバータに適用したが、フルードカップリング等の他の流体式トルク伝達装置にも適用可能である。
▲2▼ロックアップ装置のダンパー連結機構の構造は、前記実施形態に限定されず、他の構造のものを適用してもよい。
【0092】
▲3▼クラッチプレートとピストンとの係合構造は、前記実施形態の係合構造に限定されず、他の構造のものを適用してもよい。
【0093】
【発明の効果】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、クラッチ部材をピストンに装着することによって、3面以上の摩擦面を有する構造としたロックアップ装置において、軸方向に撓み可能な本体部と圧接部とを有する連結部材によって、ピストンの押圧部とクラッチ部材の摩擦連結部とを軸方向に移動可能な状態でフロントカバーに連結させるためのピストン連結機構が構成されているため、従来よりも、部品点数を低減し、構造を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるロックアップ装置を採用した流体式トルク伝達装置としてのトルクコンバータの縦断面概略図。
【図2】図1の部分拡大図であって、ロックアップ装置を示す図。
【図3】第1実施形態にかかるロックアップ装置のドライブプレートとトーションスプリングとピストンとの組立図をトランスミッション側から見た図。
【図4】第1実施形態にかかるロックアップ装置のクラッチプレートとピストンとの組立図をエンジン側から見た図。
【図5】本発明の第1実施形態の変形例にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図7】第2実施形態にかかるロックアップ装置の連結部材をトランスミッション側から見た図。
【図8】第2実施形態にかかるロックアップ装置の連結部材の動作を模式的に説明する図であって、(a)図7のA−A断面図、(b)図7のB−B断面図、(c)傾倒防止機構を有しない連結部材の(a)に相当する図。
【図9】第2実施形態にかかるロックアップ装置の連結部材の動作を模式的に説明する図であって、(a)図7のC−C断面図、(b)図7のD−D断面図。
【図10】本発明の第2実施形態の変形例にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図11】本発明の第3実施形態にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図12】本発明の第3実施形態の変形例1にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図13】本発明の第3実施形態の変形例2にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図14】本発明の第3実施形態の変形例3にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図15】本発明の第4実施形態にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図16】第4実施形態にかかるロックアップ装置の2つのクラッチプレートとピストンとの組立図をエンジン側から見た図。
【図17】本発明の第4実施形態の変形例にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【符号の説明】
1 トルクコンバータ(流体式トルク伝達装置)
7、107、207、307、407、507、607、707、1007、1107 ロックアップ装置
11 フロントカバー
11b 摩擦面
21 インペラー
22 タービン
71、171、1071、1081 クラッチプレート(クラッチ部材)
71a、171a、1071a、1081a 摩擦連結部
75、175 ピストン
75d、175d 押圧部
76、176、276、376、476、576、676、776、1076、1086、1176、1186 連結部材
76b、176b、276b、376b、476b、576b、676b、776b、1076b、1086b、1176b、1186b 圧接部
277、377、677、1177、1187、 傾倒防止機構
478、479、578、579、678、679、1178、1179、1188 切り起こし部(制限機構)
780、781 ラグ(制限機構)
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体式トルク伝達装置のロックアップ装置、特に、摩擦面を有するフロントカバーと、フロントカバーに固定され作動流体が充填された流体室を形成するインペラーと、流体室内でインペラーに対向して配置されたタービンとを含む流体式トルク伝達装置のロックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体式トルク伝達装置の一つであるトルクコンバータは、内部の作動油を介してエンジンからのトルクをトランスミッション側へ伝達する装置であり、主に、エンジンからのトルクが入力されるフロントカバーと、フロントカバーのトランスミッション側に固定され流体室を形成するインペラーと、インペラーのエンジン側に対向するように配置されトランスミッション側にトルクを出力可能なタービンと、インペラーの内周部とタービンの内周部との間に配置されタービンからインペラーへ向かう作動油の流れを整流することが可能なステータとを備えている。このようなトルクコンバータには、ロックアップ装置が設けられていることが多い。
【0003】
ロックアップ装置は、タービンとフロントカバーとの間の空間に配置されており、フロントカバーとタービンとを機械的に連結することでフロントカバーからタービンにトルクを直接伝達するための装置である。そして、ロックアップ装置は、フロントカバーの摩擦面に押圧されることで連結及び連結解除可能な円板状のピストンと、ピストンとタービンとを回転方向に弾性的に連結するダンパー機構とを備えている。ピストンの外周部には、フロントカバーの摩擦面に対向するように摩擦フェーシングが貼り付けられた押圧部が形成されている。
【0004】
このようなロックアップ装置において、摩擦面を3面にしてトルク伝達容量を増大させたロックアップ装置も既に提供されている。3面の摩擦面を有するロックアップ装置として、ピストンとクラッチ部材とダンパー機構とピストン連結機構とを備えているものがある。ピストンは、フロントカバーとタービンとの間に配置されており、押圧部を有し、作動流体の圧力により軸方向に移動可能である。クラッチ部材は、ピストンに対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着されており、フロントカバーの摩擦面に圧接可能な摩擦連結部を有している。クラッチ部材のピストンへの装着は、ピストンに形成された軸方向に貫通する孔からなる係合部にクラッチ部材に形成された爪部を挿入することによって行われている。ダンパー機構は、ピストンのタービン側に配置され、タービンとピストンとを回転方向に弾性的に連結する。ピストン連結機構は、ピストンの押圧部とクラッチ部材の摩擦連結部とを軸方向に移動可能な状態でフロントカバーに連結させるための機構である。ピストン連結機構は、摩擦連結部と押圧部との軸方向間に配置された圧接部材と、フロントカバーに固定された筒状部材とを有している。圧接部材は、スプライン係合により、筒状部材に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に支持されている。これにより、圧接部材は、摩擦連結部及び押圧部に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転可能に配置されている。
【0005】
このようなロックアップ装置において、ピストンの軸方向エンジン側の空間内の作動油を排出すると、ピストンの軸方向トランスミッション側の空間内の油圧が相対的に高くなり、ピストンが軸方向エンジン側に移動する。すると、ピストンの押圧部は、ピストン連結機構の圧接部材を軸方向エンジン側に押圧し、さらに、ピストン連結機構の圧接部材を軸方向エンジン側に移動させて、クラッチ部材の摩擦連結部を軸方向エンジン側に押圧する。これにより、クラッチ部材の摩擦連結部がフロントカバーの摩擦面に圧接されるため、フロントカバーのトルクがクラッチ部材及びピストン連結機構を介してピストンに伝達され、さらに、ダンパー機構を介してタービンに伝達される(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−246307号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のロックアップ装置においては、ピストン連結機構が筒状部材及び圧接部材の2つの部材から構成されているため、部品点数が多い。また、筒状部材と圧接部材との係合にスプラインを使用しているため、構造も複雑になっている。
本発明の課題は、クラッチ部材をピストンに装着することによって3面以上の摩擦面を有する構造としたロックアップ装置において、部品点数の低減や構造の簡略化を図ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、摩擦面を有するフロントカバーと、フロントカバーに固定され作動流体が充填された流体室を形成するインペラーと、流体室内で前記インペラーに対向して配置されたタービンとを含む流体式トルク伝達装置のロックアップ装置であって、ピストンと、クラッチ部材と、環状の第1連結部材とを備えている。ピストンは、フロントカバーとタービンとの間に配置され、摩擦面に対向する押圧部を有し、作動流体の圧力により軸方向に移動可能である。クラッチ部材は、ピストンに対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着され、摩擦面と押圧部との軸方向間に配置された第1摩擦連結部を有する。第1連結部材は、フロントカバーに固定され軸方向に撓み可能な第1本体部と、第1摩擦連結部と押圧部との軸方向間に配置されるように第1本体部の半径方向端部に設けられた第1圧接部とを有する。
【0009】
このロックアップ装置では、ピストンの押圧部によって第1圧接部を軸方向に押圧すると、第1本体部が軸方向に撓むことによって第1圧接部が軸方向に移動し、第1クラッチ部材の第1摩擦連結部がフロントカバーの摩擦面に押圧されて、ロックアップが行われるようになっている。
このロックアップ装置では、ピストンの押圧部と第1クラッチ部材の第1摩擦連結部とを軸方向に移動可能な状態でフロントカバーに連結させるためのピストン連結機構が、フロントカバーに固定され軸方向に撓み可能な第1本体部と、第1摩擦連結部と押圧部との軸方向間に配置された第1圧接部とを有する第1連結部材によって構成されているため、従来よりも、部品点数を低減し、構造を簡略化することができる。
【0010】
請求項2に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項1において、第1本体部は、フロントカバーにかしめて固定されている。
このロックアップ装置では、第1連結部材をフロントカバーに対して、別の固定部材を介することなく直接固定しているため、部品点数をさらに低減できる。請求項3に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項1又は2において、第1連結部材は、第1圧接部を第1摩擦連結部及び押圧部に対して傾倒しないように軸方向に移動させることを可能にする傾倒防止機構を有している。
【0011】
このロックアップ装置では、傾倒防止機構によって、第1圧接部が第1摩擦連結部及び押圧部に対して傾倒しないように軸方向に移動させることができるため、第1圧接部と第1摩擦連結部及び押圧部との間におけるドラグトルクの発生を抑え、並びに、フェーシング面の均一な面圧を実現できる(μ−v特性の向上)。
【0012】
請求項4に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項3において、傾倒防止機構は、第1本体部において、回転方向に並んで配置された複数の第1孔と、複数の第2孔とから構成されている。複数の第2孔は、複数の第1孔の半径方向内周側又は外周側において回転方向中央部が第1孔の回転方向間に対応するように、かつ、半径方向内周側又は外周側から見た際に、回転方向両端部が第1孔の回転方向端部と重なるように配置されるとともに、複数の第1孔と半径方向に向かって交互に繰り返し形成されている。
【0013】
このロックアップ装置では、複数の第1孔及び第2孔を第1本体部に形成することによって、第1孔の回転方向端部と第2孔の回転方向端部とによって半径方向に挟まれた部分(低剛性部)の撓み方向の剛性を第1孔の回転方向中央部同士によって半径方向に挟まれた部分及び複数の第2孔の回転方向中央部同士によって半径方向に挟まれた部分(高剛性部)の剛性よりも小さくなるようにしている。このため、第1圧接部が軸方向に移動する際には、低剛性部が第1孔及び第2孔を軸方向に変形させながら高剛性部よりも軸方向に大きく撓むようになり、高剛性部を軸方向に移動させつつ、自由状態における姿勢に近い状態に保つことができる。これにより、第1本体部の全体としても、自由状態における姿勢に近い状態で軸方向に撓むことができるようになるため、第1圧接部を第1摩擦連結部及び押圧部に対して傾倒しないように軸方向に移動させることができる。
【0014】
請求項5に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項4において、第1孔及び第2孔は、回転方向に延びるスリット孔である。
このロックアップ装置では、第1孔及び第2孔がスリット孔であるため、スリット孔の回転方向長さを変更することにより、低剛性部及び高剛性部における剛性を適切かつ容易に設定することができる。
【0015】
請求項6に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項1〜5のいずれかにおいて、第1本体部の軸方向への撓みを所定の範囲に制限する制限機構をさらに備えている。
このロックアップ装置では、制限機構によって、第1本体部の軸方向への撓みが所定の範囲に制限されているため、他の部材との干渉を防ぐことができる。
【0016】
請求項7に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項1において、第2クラッチ部材と、環状の第2連結部材とをさらに備えている。第2クラッチ部材は、第1クラッチ部材に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着され、第1摩擦連結部と摩擦面との軸方向間に配置された第2摩擦連結部を有する。第2連結部材は、フロントカバーに固定され軸方向に撓み可能な第2本体部と、第2摩擦連結部と第1摩擦連結部との軸方向間に配置されるように第2本体部の半径方向端部に設けられた第2圧接部とを有する。
【0017】
このロックアップ装置では、第1クラッチ部材に第2摩擦連結部を有する第2クラッチ部材を係合させるとともに、第2摩擦連結部と第1摩擦連結部との軸方向間に第2連結部材を配置することによって、5面の摩擦面を有する構造を実現できる。これにより、トルク伝達容量をさらに増加させることができる。
請求項8に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置は、請求項7において、第2本体部は、第1本体部とともに、フロントカバーにかしめて固定されている。
【0018】
このロックアップ装置では、第2連結部材を第1連結部材とともにフロントカバーにかしめて固定しているため、第2連結部材をフロントカバーに固定するための別の固定部材が不要である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(1)トルクコンバータの全体構造
図1は、本発明の第1実施形態にかかるロックアップ装置を採用した流体式トルク伝達装置としてのトルクコンバータ1の縦断面概略図である。トルクコンバータ1は、エンジンのクランクシャフト2からトランスミッションの入力シャフト(図示せず)にトルクを伝達するための装置である。図1の左側に図示しないエンジンが配置され、図1の右側に図示しないトランスミッションが配置されている。図1に示すO−Oは、トルクコンバータ1の回転軸線である。
【0020】
トルクコンバータ1は、主に、フレキシブルプレート4とトルクコンバータ本体5とから構成されている。フレキシブルプレート4は、円板状の薄い部材からなり、トルクを伝達するとともにクランクシャフト2からトルクコンバータ本体5に伝達される曲げ振動を吸収するための部材である。したがって、フレキシブルプレート4は、回転方向にはトルク伝達に十分な剛性を有しているが、曲げ方向には剛性が低くなっている。また、フレキシブルプレート4の内周部は、クランクシャフト2にクランクボルト3を介して固定されている。
【0021】
トルクコンバータ本体5は、フレキシブルプレート4の外周部が固定されたフロントカバー11と、3種の羽根車(インペラー21、タービン22、ステータ23)と、ロックアップ装置7とを備えている。そして、フロントカバー11とインペラー21とによって囲まれて作動油で満たされた流体室は、インペラー21、タービン22及びステータ23とによって囲まれたトーラス形状の流体作動室6と、ロックアップ装置7が配置された環状の空間8(図2参照)とに分割されている。
【0022】
フロントカバー11は、円板状の部材であり、その内周部に、軸方向に延びる略円筒形状の部材であるセンターボス16が溶接等によって固定されている。センターボス16は、クランクシャフト2の中心孔内に挿入された筒状の部材である。
フロントカバー11の外周部には、トランスミッション側に延びる外周側筒状部11aが形成されている。この外周側筒状部11aの先端には、インペラー21のインペラーシェル26の外周縁が溶接等によって固定されている。そして、フロントカバー11とインペラー21とによって、内部に作動油が充填された流体室が形成されている。
【0023】
インペラー21は、主に、インペラーシェル26と、その内側に固定された複数のインペラーブレード27と、インペラーシェル26の内周部に溶接等によって固定されたインペラーハブ28とから構成されている。
タービン22は、流体室内でインペラー21に軸方向に対向して配置されている。タービン22は、主に、タービンシェル30と、そのインペラー21側の面に固定された複数のタービンブレード31と、タービンシェル30の内周縁に固定されたタービンハブ32とから構成されている。タービンハブ32は、フランジ部32aとボス部32bとから構成されている。タービンシェル30は、複数のリベット33によって、タービンハブ32のフランジ部32aに固定されている。また、タービンハブ32のボス部32bの内周面には、入力シャフト(図示せず)に係合するスプラインが形成されている。これにより、タービンハブ32は、入力シャフト(図示せず)と一体回転するようになっている。
【0024】
ステータ23は、インペラー21の内周部とタービン22の内周部との軸方向間に設置されており、タービン22からインペラー21に戻る作動油の流れを整流するための機構である。ステータ23は、樹脂やアルミ合金等で鋳造により一体に製作されており、主に、環状のステータキャリア35と、ステータキャリア35の外周面に設けられた複数のステータブレード36と、ステータブレードの外周端に固定された環状のステータコア37から構成されている。ステータキャリア35は、ワンウェイクラッチ38を介して筒状の固定シャフト(図示せず)に支持されている。
【0025】
センターボス16とタービンハブ32との軸方向間には、第1スラストベアリング41が配置されており、タービン22の回転によって発生するスラスト力を受けている。この第1スラストベアリング41が配置された部分において、半径方向両側に作動油が連通可能な第1ポート18が形成されている。また、タービンハブ32(具体的にはフランジ部32a)とステータ23の内周部(具体的にはワンウェイクラッチ38)との間には、第2スラストベアリング42が配置されている。この第2スラストベアリング42が配置された部分において、半径方向両側に作動油が連通可能な第2ポート19が形成されている。さらに、ステータ23(具体的にはステータキャリア35)とインペラー21(具体的にはインペラーハブ28)との軸方向間には、第3スラストベアリング43が配置されている。この第3スラストベアリング43が配置された部分において、半径方向両側に作動油が連通可能な第3ポート20が形成されている。なお、ポート18〜20は、図示しない油圧回路に接続されており、それぞれに独立して作動油の供給・排出が可能となっている。
【0026】
(2)ロックアップ装置の構造
ロックアップ装置7は、タービン22とフロントカバー11との間の空間8に配置されており、必要に応じて両者を機械的に連結するための機構である。
ロックアップ装置7は、クラッチ機構及びダンパー機構の機能を有しており、主に、クラッチプレート71と、ドライブプレート72と、トーションスプリング73と、ドリブンプレート74と、ピストン75と、連結部材76とから構成されている。
【0027】
次に、ロックアップ装置7について、図2〜図4を用いて詳細に説明する。ここで、図2は、図1の部分拡大図であって、ロックアップ装置7を示す図である。図3は、ドライブプレート72と複数のトーションスプリング73とピストン75との組立図(一部を破断してピストン75のみを図示)をトランスミッション側から見た図である。図4は、クラッチプレート71とピストン75との組立図(一部を破断してピストン75のみを図示)をエンジン側から見た図である。
【0028】
▲1▼ピストン
ピストン75は、中心孔が形成された円板状の部材である。ピストン75は、タービンハブ32のボス部32bの外周側に配置されている。ピストン75は、主に、円板部75aと、円板部75aの外周側に形成されたスプリング支持部75bと、円板部75aの内周側に形成された内周側筒状部75cとから構成されている。
【0029】
円板部75aは、空間8を軸方向エンジン側の空間8aと軸方向トランスミッション側の空間8bとの2つの空間に分割するように配置された円板状の部分であり、その外周部に形成された押圧部75dと、押圧部75dの内周側に形成された複数の固定孔75eとを有している。押圧部75dは、そのフロントカバー側面が平坦な環状部分であり、環状の摩擦フェーシング75fが貼り付けられている。固定孔75eは、リベット77によって、ドライブプレート72をピストン75に固定するための孔であり、本実施形態において、回転方向に並んで8個形成されている。
【0030】
スプリング支持部75bは、トーションスプリング73のエンジン側の部分と半径方向外周側の部分とを支持しており、トーションスプリング73のエンジン側の部分が当接する外周側環状部75gと、外周側環状部75gの外周端から軸方向トランスミッション側に延びる外周側筒状部75hとを有している。外周側環状部75gは、円板部75aの外周端から半径方向外周側に延びる環状の部分であり、軸方向エンジン側に突出するように形成された係合部75iを有している。また、係合部75iは、本実施形態において、外周側環状部75gの一部に、回転方向に間隔を開けて2カ所の切り込みを設け、さらに、その2つの切り込み間の部分を軸方向エンジン側に向かって押し出すようにして形成された部分である。このため、係合部75iは、外周側環状部75gの一部を切り欠いて形成する場合のように、外周側環状部75gの一部を削除するような方法により形成されていないため、外周側環状部75gの剛性の低下が抑えられている。係合部75iは、本実施形態において、外周側環状部75gに、回転方向に並んで複数個(具体的には、8個)形成されている。外周側筒状部75hは、その端部が軸方向トランスミッション側に向かうにつれて半径が小さくなるような形状を有している。
【0031】
内周側筒状部75cは、円板部75aの内周端から軸方向トランスミッション側に延びる筒状部分であり、その内周面がタービンハブ32のボス部32bの外周面に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転可能に支持されている。ボス部32bの外周面と内周側筒状部75cの内周面との間には、シールリング32cが配置されている。シールリング32cは、ピストン75の内周部において、空間8aと空間8bとを互いにシールしている。
【0032】
▲2▼ドライブプレート
ドライブプレート72は、ピストン75とともに複数のトーションスプリング73を支持するために設けられた環状のプレート部材であり、ピストン75の軸方向トランスミッション側に配置されている。ドライブプレート72は、その内周部がピストン75の円板部75aに複数のリベット77によって固定されており、ピストン75と一体回転するようになっている。
【0033】
ドライブプレート72は、主に、第1環状部72aと、第1環状部72aの外周端に形成された複数の第1爪部72bと、第1爪部72bの回転方向間に形成された複数の第2爪部72cとから構成されている。
第1環状部72aは、その内周部に複数の固定孔72eを有している。固定孔72eは、ドライブプレート72をピストン75に固定するためのリベット77が挿通される孔であり、ピストン75に形成された複数の固定孔75eに対応するように、回転方向に並んで8個形成されている。
【0034】
第1爪部72bは、ピストン75のスプリング支持部75bの軸方向トランスミッション側の空間に配置されている。第1爪部72bは、本実施形態において、回転方向に並んで8個形成されている。具体的には、第1爪部72bは、ピストン75の外周側環状部75gのトランスミッション側面に沿って径方向外周側に延びる第2環状部72gと、第2環状部72gの外周側端部から軸方向トランスミッション側に延びる筒状部72fとを有している。
【0035】
第2爪部72cは、第1環状部72aの外周側端部を軸方向トランスミッション側に向かって切り起こすことによって形成されており、本実施形態において、回転方向に並んで8個形成されている。
▲3▼トーションスプリング
トーションスプリング73は、本実施形態において、8個のコイルスプリングであり、ドライブプレート72の第1爪部72bの回転方向間に対応するように配置されている。そして、トーションスプリング73の回転方向両端は、第1爪部72bの回転方向端部によって、直接又はスプリングシートを介して支持されている。また、トーションスプリング73の軸方向エンジン側及び半径方向外周側の部分は、ピストン75のスプリング支持部75b(具体的には、外周側環状部75g及び外周側筒状部75h)によって支持されている。さらに、トーションスプリング73の半径方向内周側の部分は、ドライブプレート72の第2爪部72cによって支持されている。このように、トーションスプリング73は、ピストン75とドライブプレート72とによって支持されている。
【0036】
ピストン75のスプリング支持部75bに形成された係合部75iは、本実施形態において、ドライブプレート72の第1爪部72b及びトーションスプリング73の半径方向位置に対応するように(より具体的には、第1爪部72bの第2環状部72gに対応するように)配置されている。しかし、係合部75iは、上述のように、軸方向エンジン側に突出するように形成されており、第1爪部72b及びトーションスプリング73に干渉しないようになっている。
【0037】
▲4▼ドリブンプレート
ドリブンプレート74は、タービン22と一体回転するとともに、ドライブプレート72に相対回転することが可能な部材であり、ドライブプレート72の軸方向トランスミッション側に配置されている。ドリブンプレート74は、本実施形態において、タービンシェル30の外周部の軸方向エンジン側面に溶接等によって固定された環状部74aと、複数の爪部74bとを有している。爪部74bは、環状部74aの半径方向外周端から軸方向エンジン側に延びる部分であり、トーションスプリング73の回転方向端に当接している。爪部74bは、本実施形態において、ドライブプレート72の第1爪部72bの筒状部72fの半径方向内周側を軸方向エンジン側に向かって延びており、ドライブプレート72の第1爪部72bの第2環状部72gの近傍まで達している。爪部74bは、ドライブプレート72の第1爪部72bとほぼ同じ回転方向位置に配置されており、トーションスプリング73をドライブプレート72の第1爪部72bとの回転方向間で圧縮できるようになっている。
【0038】
このように、ドライブプレート72、トーションスプリング73及びドリブンプレート74は、ピストン75とタービン22とを弾性的に連結するためのロックアップ装置7のダンパー機構を構成している。
▲5▼クラッチプレート
クラッチプレート71は、ピストン75に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着されている。クラッチプレート71は、ピストン75の軸方向エンジン側に配置された環状のプレート部材であり、フロントカバー11の摩擦面11bに近接する環状の摩擦連結部71aと、摩擦連結部71aの半径方向外周側に形成された複数の爪部71bとを有している。
【0039】
摩擦連結部71aの軸方向エンジン側面には、環状の摩擦フェーシング71cが貼られている。また、本実施形態において、摩擦連結部71aの軸方向トランスミッション側面にも、環状の摩擦フェーシング71dが貼られている。
爪部71bは、ピストン75のスプリング支持部75bの係合部75iに対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に係合可能な部分である。爪部71bは、本実施形態において、係合部75iに対応する部分を切り欠くことによってその回転方向両側に形成された部分である。このため、クラッチプレート71は、係合部75iの回転方向両側を2つの爪部71bによって挟むようにしてピストン75に係合している。
【0040】
▲6▼連結部材
連結部材76は、ピストン75の押圧部75dとクラッチプレート71の摩擦連結部71aとを軸方向に移動可能な状態でフロントカバー11に連結させるためのピストン連結機構の機能を有している。
連結部材76は、軸方向に撓み可能なプレート部材であり、主に、本体部76aと、摩擦連結部71aと押圧部75dとの軸方向間に配置された圧接部76bとから構成されている。連結部材76は、例えば、バネ鋼等の弾性変形可能な材料からなる。
【0041】
本体部76aは、本実施形態において、フロントカバー11とピストン75とによって挟まれた軸方向間の空間8aをさらに軸方向エンジン側の空間8cと軸方向トランスミッション側の空間8dとの2つの空間に分割するように配置された環状の部分であり、複数の固定孔76cと複数の油孔76dとを有している。固定孔76cは、本体部76aの半径方向内周部に形成されている。連結部材76は、これらの固定孔76cの位置で、フロントカバー11にかしめ固定されており、フロントカバー11と一体回転するようになっている。油孔76dは、空間8cと空間8dとの間で常に作動油が流通可能となるようにに設けられた油孔であり、本実施形態において、本体部76aの半径方向外周部に形成されている。
【0042】
圧接部76bは、本体部76aの半径方向外周側に形成された環状の部分であり、クラッチプレート71の摩擦連結部71aの軸方向トランスミッション側面(具体的には、摩擦フェーシング71d)とピストン75の押圧部75d(具体的には、摩擦フェーシング75f)との軸方向間に配置されている。圧接部76bは、本体部76aが固定孔76cの位置を支点として軸方向に撓むことによって、自らが軸方向に移動可能となっている。
【0043】
上記のように、連結部材76は、フロントカバー11に対して相対回転不能に設けられるとともに、ピストン75の押圧部75d及びクラッチプレート71の摩擦連結部71aの軸方向移動に伴って自らも軸方向に移動しつつ、摩擦連結部71aと押圧部75dとの軸方向間に挟まれるように圧接されて、ピストン75とフロントカバー11とを連結させることが可能である。
【0044】
このように、クラッチプレート71、ピストン75の押圧部75d及び連結部材76は、フロントカバー11とピストン75とを摩擦連結するためのロックアップ装置7のクラッチ機構を構成している。
(3)トルクコンバータ及びロックアップ装置の動作
図1及び図2を用いて、トルクコンバータ1の動作について説明する。
【0045】
エンジン始動直後には、第1ポート18及び第3ポート20からトルクコンバータ本体5内に作動油が供給され、第2ポート19から作動油が排出される。第1ポート18から供給された作動油は、空間8a内を外周側に向かって流れる。作動油は、クラッチプレート71の摩擦連結部71aの軸方向両側及び連結部材76の圧接部76bの軸方向両側を通ってさらに流れ、最後に流体作動室6内に流れ込む。
【0046】
このとき、ピストン75は、空間8a側の油圧が空間8b及び流体作動室6側の油圧より高くなり、軸方向トランスミッション側に移動している。ピストン75は、内周側筒状部75cのタービン側端部がタービンハブ32のフランジ部32aのエンジン側面に当接した状態で停止する。このように、ロックアップが解除されている場合、フロントカバー11とタービン22との間のトルク伝達はインペラー21とタービン22との間の流体駆動によって行われている。
【0047】
トルクコンバータ1の速度比が上がり、入力シャフト(図示せず)が一定の回転数に達すると、第1ポート18から空間8a内の作動油が排出される。この結果、流体作動室6及び空間8b側の油圧が空間8a側の油圧より高くなり、ピストン75が軸方向エンジン側に移動させられる。これにより、ピストン75の押圧部75dは、連結部材76の圧接部76bを軸方向エンジン側に押圧する。すると、連結部材76の本体部76aが固定孔76cの位置を支点として軸方向エンジン側に撓む。これにより、連結部材76の圧接部76bは、軸方向エンジン側に移動し、クラッチプレート71の摩擦連結部71aに当接し、押圧部75dと摩擦連結部71aとの軸方向間に挟みつけられる。さらに、ピストン75の押圧部75dは、圧接部76bが押圧部75dと摩擦連結部71aとの間に挟みつけられた状態で摩擦連結部71aを軸方向エンジン側に押圧して、摩擦連結部71aがフロントカバー11の摩擦面11bに圧接される。このようにして、ロックアップ動作が行われる。
【0048】
このとき、クラッチプレート71は、ピストン75の係合部75iに軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に係合しているため、スムーズに軸方向に移動している。また、連結部材76は、フロントカバー11と一体回転しているため、クラッチプレート71及びピストン75に対してトルク伝達を行っている。そして、フロントカバー11からピストン75に伝達されたトルクは、ピストン75と一体回転するダンパー機構(すなわち、ドライブプレート72、トーションスプリング73及びドリブンプレート74)を介して、タービン22に伝達されて、直接入力シャフト(図示せず)に出力される。このとき、トーションスプリング73は、ドライブプレート72とドリブンプレート74とが相対回転することによって、ドライブプレート72の第1爪部72bの回転方向端部とドリブンプレート74の爪部74bの回転方向端部との間で圧縮されている。
【0049】
また、連結部材76の本体部76aには、油孔76dが形成されているため、空間8cと空間8dとの間の作動油の流れが確保されて両空間の油圧が同じ圧力になるように調節されている。これにより、ロックアップ時における空間8c内の作動油の排出がスムーズに行われている。
次に、ロックアップ解除時の動作について説明する。ロックアップ解除時には、エンジン始動直後と同様に、第1ポート18及び第3ポート20からトルクコンバータ本体5内に作動油が供給され、第2ポート19から作動油が排出される。すると、第1ポート18から供給された作動油は、空間8a内を外周側に向かって流れる。作動油は、クラッチプレート71の摩擦連結部71aの軸方向両側及び連結部材76の圧接部76bの軸方向両側を通ってさらに流れ、最後に流体作動室6内に流れ込む。
【0050】
このとき、ピストン75は、空間8a側の油圧が空間8b及び流体作動室6側の油圧より高くなり、軸方向トランスミッション側に移動する。すると、ピストン75は、内周側筒状部75cのタービン側端部がタービンハブ32のフランジ部32aのエンジン側面に当接するまで移動する。そして、連結部材76は、圧接部76bに作用していた軸方向エンジン側への押圧力が解除されるため、圧接部76bが軸方向トランスミッション側に移動して、軸方向エンジン側に撓んでいた本体部76aが撓みのない自由状態に戻る。
【0051】
このようなロックアップ解除時においても、連結部材76の本体部76aには、油孔76dが形成されているため、ロックアップ解除時における空間8c内への作動油の供給がスムーズに行われている。
尚、ロックアップ装置7では、クラッチプレート71の摩擦連結部71aの両面に摩擦フェーシング71c、71dが貼られ、かつ、ピストン75の押圧部75dに摩擦フェーシング75fが貼られているため、1面又は2面の摩擦面を有するロックアップ装置に比べてトルク伝達容量が大きくなっている。
【0052】
(4)ロックアップ装置の特徴
本実施形態のロックアップ装置7には、以下のような特徴がある。
▲1▼ロックアップ装置7では、ピストン75の押圧部75dとクラッチプレート71の摩擦連結部71aとを軸方向に移動可能な状態でフロントカバー11に連結させるためのピストン連結機構が、軸方向に撓み可能な本体部76aと、本体部76aの半径方向端部に設けられた圧接部76bとを有する連結部材76によって構成されている。このため、従来の3面の摩擦面を有するロックアップ装置に比べて、部品点数が低減され、構造が簡略化されている。
【0053】
▲2▼ロックアップ装置7では、連結部材76に複数の油孔76dが形成されており、空間8cと空間8dとの間の作動油の流れが確保されて両空間の油圧が同じ圧力になるように調節されている。これにより、ロックアップ時及びロックアップ解除時における空間8c内の作動油の供給及び排出がスムーズに行われるため、ロックアップ時及びロックアップ解除時の動作の応答性が向上している。
【0054】
▲3▼ロックアップ装置7では、クラッチプレート71がピストン75のスプリング支持部75bに軸方向エンジン側に突出するように形成された係合部75iによって、軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に係合されている。このため、ピストン75のトランスミッション側面に近接して配置された部材(具体的には、ドライブプレート72やトーションスプリング73)と干渉しないようになっているため、クラッチプレート71の配置の自由度を高めることができる。
【0055】
特に、本実施形態のように、係合部75iをピストン75の半径方向外周部(具体的には、トーションスプリング73の半径方向位置)に配置するような場合であっても、係合部75iとトーションスプリング73とが干渉することがないため、容易に、摩擦面11b、摩擦係合部71a及び押圧部75dを半径方向外周側に配置することができる。これにより、ロックアップ装置7のダンパー機構の捩り振動吸収特性を向上させるとともに、トルク伝達容量をさらに増加させることができる。
【0056】
(5)変形例
上記実施形態のロックアップ装置7では、摩擦連結部71aの軸方向エンジン側面及び軸方向トランスミッション側面とピストン75の押圧部75dとに摩擦フェーシング71c、71d、75fが貼られているが、これに限定されず、図5に示される変形例としてのロックアップ装置107のように、摩擦連結部171aの軸方向エンジン側面と連結部材176の圧接部176bとに摩擦フェーシング171c、176e、176fが貼られた構造であってもよい。ここで、ロックアップ装置107の他の構造は、ロックアップ装置7と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
このようなロックアップ装置107においても、ロックアップ装置7と同様な効果が得られる。
[第2実施形態]
第1実施形態のロックアップ装置7では、連結部材76の本体部76aが固定孔76cの半径方向位置を支点として軸方向に撓むため、図8(c)に示すように、圧接部76bは、ロックアップ動作の際に、摩擦連結部71a及び押圧部75dに対して傾倒しながら軸方向に移動することになる(ここで、図8(c)中の点線で示された連結部材76はロックアップ解除時を示し、実線で示された連結部材76はロックアップ時を示す)。
【0058】
これに対して、本実施形態のロックアップ装置207では、図6に示すように、連結部材276に圧接部276bを摩擦連結部71a及び押圧部75dに対して傾倒しないように軸方向に移動させる傾倒防止機構277を設けている。以下に、本実施形態のロックアップ装置207について説明する。ここで、ロックアップ装置207の構造は、連結部材276の構造を除いては、ロックアップ装置7と同様であるため、第1実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
【0059】
(1)連結部材の構造及び動作
連結部材276は、第1実施形態における連結部材76と同様に、軸方向に撓み可能なプレート部材であり、主に、本体部276aと、摩擦連結部71aと押圧部75dとの軸方向間に配置された圧接部276bとから構成されている。
本体部276aは、本実施形態において、フロントカバー11とピストン75とによって挟まれた軸方向間の空間8aをさらに軸方向エンジン側の空間8cと軸方向トランスミッション側の空間8dとの2つの空間に分割するように配置された環状の部分であり、複数の固定孔276cと複数の油孔276dと傾倒防止機構277とを有している。
【0060】
傾倒防止機構277は、本実施形態において、図6及び図7に示すように、本体部276aに形成された複数の孔276e、複数の孔276f、複数の孔276g及び複数の孔276hから構成されている。図7は、連結部材276をトランスミッション側から見た図である。
複数の孔276eは、固定孔276cの半径方向外周側において回転方向に並んで配置されている。複数の孔276fは、孔276eの半径方向外周側において、孔276eの回転方向間に対応するように配置されている。複数の孔276gは、孔276fの半径方向外周側において、孔276fの回転方向間に対応するように、すなわち、孔276eの回転方向位置に対応するように配置されている。複数の孔276hは、孔276gの半径方向外周側において、孔276gの回転方向間に対応するように、すなわち、孔276fの回転方向位置に対応するように配置されている。このように、本体部276aには、孔276e、276gと、孔276e、276gの半径方向内周側又は外周側において孔276e、276gの回転方向間に対応するように配置された孔276f、276hとが半径方向に向かって交互に形成されている。これらの孔276e〜276fは、本実施形態において、回転方向に細長く延びるスリット孔である。
【0061】
さらに詳細には、孔276fは、その回転方向中央部が孔276e、276gの回転方向間に対応するように、かつ、半径方向内周側又は外周側から見た際にその回転方向両端部が孔276e、276gの回転方向端部と重なるように配置されている。同様に、孔276fの半径方向外周側に配置された孔276gは、その回転方向中央部が孔276f、276hの回転方向間に対応するように、かつ、半径方向内周側又は外周側から見た際にその回転方向両端部が孔276f、276hの回転方向端部と重なるように配置されている。このように、各孔276e〜276fの回転方向両端部は、半径方向内周側又は外周側から見た際に、半径方向内周側又は外周側に配置された孔276e〜276fの回転方向端部と重なるように配置されている。これにより、各孔276e〜276fの回転方向端部同士によって半径方向に挟まれた部分(以下、低剛性部とする)と、各孔276e〜276fの回転方向中央部同士によって半径方向に挟まれた部分(以下、高剛性部とする)とが形成される。この低剛性部は、高剛性部よりも剛性が小さいため、圧接部276bが軸方向に移動する際に、高剛性部よりも軸方向に大きく撓みやすくなっている。
【0062】
このような傾倒防止機構277を有する連結部材276を備えたロックアップ装置207において、ロックアップを行う際の連結部材276の動作について、図7〜図9を用いて説明する。ここで、図8は、ロックアップ動作時の連結部材276の動作を模式的に説明する図であって、(a)図7のA−A断面図、(b)図7のB−B断面図、(c)傾倒防止機構を有しない第1実施形態の連結部材76の(a)に相当する図である。図9は、ロックアップ動作時の連結部材276の動作を模式的に説明する図であって、(a)図7のC−C断面図、(b)図7のD−D断面図である。
【0063】
空間8a内の作動油を排出してピストン75を軸方向エンジン側に移動させて、ピストン75の押圧部75dによって連結部材276の圧接部276bを軸方向エンジン側に押圧すると、連結部材276の本体部276aが固定孔276cの位置を支点として軸方向エンジン側に撓む。この際、連結部材276の傾倒防止機構277は、複数の孔276e〜276fにより形成された低剛性部と高剛性部との撓みの差を利用して、本体部276aの姿勢を自由状態の姿勢に近い状態に保ちつつ軸方向に撓ませることで、圧接部276bを摩擦連結部71a及び押圧部75dに対して傾倒しないように軸方向に移動させることができる。
【0064】
以下に、この傾倒防止機構277の動作について、図7に示されるC−C断面及びD−D断面を例として詳細に説明する。
圧接部276bが軸方向エンジン側に移動すると、本体部276aのC−C断面付近においては、図8(b)及び図9(a)に示すように、複数の孔276hの回転方向間に形成された複数の高剛性部276kは、圧接部276bの軸方向への移動とともに軸方向エンジン側に移動する。ここで、本体部276a全体としては、固定孔276cを支点にして軸方向に撓もうとするため、高剛性部276kの回転方向両側に形成された低剛性部276jが高剛性部276iとの間で孔276hを軸方向に変形させながら軸方向に撓むこととなる。このような動作により、本体部276aのC−C断面付近が軸方向に撓むようになっているため、高剛性部276kの姿勢を自由状態における姿勢に近い状態に保ちつつ、本体部276aのC−C断面付近の部分を軸方向に撓ませることができる。同様に、本体部276aのD−D断面付近においても、図8(a)及び図9(b)に示すように、複数の孔276gの回転方向間に形成された複数の高剛性部276iは、圧接部276bの軸方向への移動とともに軸方向エンジン側に移動する。ここで、高剛性部276iの回転方向両側に形成された低剛性部276mが高剛性部276nとの間で孔276gを軸方向に変形させながら軸方向に撓むこととなる。このような動作により、本体部276aのD−D断面付近が軸方向に撓むようになっているため、高剛性部276iの姿勢を自由状態における姿勢に近い状態に保ちつつ、本体部276aのD−D断面付近の部分を軸方向に撓ませることができる。さらに、本体部276aのD−D断面よりも半径方向内周側に形成された高剛性部276n、276pについても、上記と同様に、その姿勢を自由状態における姿勢に近い状態に保ちつつ、これらの高剛性部に対応する本体部276aの部分を撓ませることができる。以上より、本体部276a全体としても、その姿勢を自由状態における姿勢に近い状態に保ったまま軸方向に撓むこととなる。
【0065】
これにより、本実施形態のロックアップ装置207では、複数の孔276e〜276hからなる傾倒防止機構277によって、圧接部276bが摩擦連結部71a及び押圧部75dに対して傾倒しないように軸方向に移動させることができるため、圧接部276bと摩擦連結部71a及び押圧部75dとの間におけるドラグトルクの発生を抑え、並びに、フェーシング面の均一な面圧を実現できる(μ−v特性の向上)。また、ロックアップ装置207では、複数の孔276e〜276hがスリット孔であるため、スリット孔の回転方向長さを変更することにより、低剛性部及び高剛性部における剛性を適切かつ容易に設定することができる。
【0066】
(2)変形例
前記実施形態のロックアップ装置207では、複数の孔276e〜276hからなる傾倒防止機構277を本体部276aに設けているため、これらの孔276e〜276hを空間8cと空間8dとの間を連通させるための油孔として利用することができる。このため、図10に示すロックアップ装置307のように、ロックアップ装置207に設けられていた複数の油孔276dを省略してもよい。
【0067】
[第3実施形態]
第1実施形態のロックアップ装置7において、連結部材76の本体部76aの軸方向への撓みを制限するための制限機構を設けてもよい。例えば、図11に示す本実施形態のロックアップ装置407のように、連結部材476の本体部476aの一部を軸方向エンジン側に向けて切り起こした切り起こし部478及び連結部材476の本体部476aの一部を軸方向トランスミッション側に向けて切り起こした切り起こし部479を制限機構とすることが可能である。ここで、ロックアップ装置407の他の構造は、第1実施形態のロックアップ装置7と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
このような切り起こし部478、479を本体部476aに形成することによって、軸方向エンジン側に本体部476aが撓む際に、フロントカバー11の内面に切り起こし部478の先端を当接させて、連結部材476の本体部476aの軸方向エンジン側への撓みを所定の範囲に制限することができ、また、ピストン75の軸方向エンジン側面に切り起こし部479の先端を当接させて、連結部材476の本体部476aの軸方向トランスミッション側への撓みを所定の範囲に制限することができるため、連結部材476と他の部材(フロントカバー11、クラッチプレート71、ピストン75等)との干渉を防ぐことができる。
【0069】
尚、連結部材476において、ピストン75側への撓みのみを所定の範囲に制限する場合には、切り起こし部479のみを設けてもよいし、逆に、フロントカバー11側への撓みのみを所定の範囲に制限する場合には、切り起こし部478のみを設けてもよい。
(1)変形例1
前記実施形態のロックアップ装置407では、切り起こし部478、479からなる制限機構を本体部476aに設けることにより、空間8cと空間8dとの間を連通させる孔が形成されている。これらの孔は、空間8cと空間8dとの間を連通させるための油孔として利用することができるため、図12に示すロックアップ装置507のように、ロックアップ装置407に設けられていた複数の油孔476dを省略してもよい。
【0070】
(2)変形例2
第2実施形態のロックアップ装置207においては、連結部材276の本体部276aに傾倒防止機構277が設けられている。傾倒防止機構277は、本体部276aに形成された複数の孔276e〜276hから構成されている。これらの孔276e〜276hは、図7に示すように、打ち抜き加工により形成されているが、これらの孔276e〜276hの一部をフロントカバー側又はピストン側に切り起こすことによって形成させて、制限機構と兼用させるようにしてもよい。
【0071】
例えば、図13に示すロックアップ装置607のように、第2実施形態のロックアップ装置207と同様に、連結部材676の本体部676aに複数の孔676e〜676hからなる傾倒防止機構677を設け、孔676e及び孔676hについては打ち抜き加工により形成するのではなく、切り起こしにより形成することが可能である。具体的には、複数の孔676hは、本体部676aの一部を軸方向エンジン側に向けて切り起こした切り起こし部678を形成することによって形成される。複数の孔676fは、本体部676aの一部を軸方向トランスミッション側に向けて切り起こした切り起こし部679を形成することによって形成される。
【0072】
上記のように、連結部材676を構成することにより、連結部材676の圧接部676bが軸方向へ移動する際の傾倒を防ぎ、かつ、本体部676aの軸方向への撓みを所定の範囲に制限することができる。
尚、第2実施形態の変形例1にかかるロックアップ装置307や本実施形態の変形例1にかかるロックアップ装置507と同様、傾倒防止機構677や切り起こし部678、679が設けられることによって、空間8cと空間8dとが連通されているため、連結部材676の油孔676dを省略することも可能である。
【0073】
(3)変形例3
本実施形態のロックアップ装置407、507、607では、連結部材の本体部に形成された切り起こし部を制限機構としているが、図14に示すロックアップ装置707のように、フロントカバー11の内面及びピストン75の軸方向エンジン側面に設けられたラグ780、781を設けてもよい。ラグ780、781は、図14に示すように、溶接等により、フロントカバー11及びピストン75に固定してもよいし、フロントカバー11及びピストン75の突起部として一体に設けられていてもよい。
【0074】
このようなラグ780、781を設けることによって、軸方向エンジン側に連結部材776の本体部776aが撓む際に、本体部776aの一部をラグプレート780に当接させて、本体部776aの軸方向エンジン側への撓みを所定の範囲に制限することができ、また、本体部776aの一部をラグプレート781に当接させて、本体部776aの軸方向トランスミッション側への撓みを所定の範囲に制限することができる。
【0075】
尚、本変形例のロックアップ装置707においても、本体部776aに傾倒防止機構を設けたり、これに伴って油孔776dを省略するようにしてもよい。
[第4実施形態]
第1実施形態のロックアップ装置7では、ピストン75の係合部75iにクラッチプレート71を係合させるとともに、ピストン連結機構として機能する連結部材76を設けることによって3面の摩擦面を有する構造としているが、さらに摩擦面を増やすようにすることが可能もある。例えば、図17に示される第2実施形態としてのロックアップ装置1007のように、ピストン75の係合部75iに係合されたクラッチプレート1071に対して、別のクラッチプレート1081を軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着するとともに、2つのクラッチプレート1071、1081の軸方向間に、別の連結部材1086を配置するようにして、5面の摩擦面を有する構造にすることができる。以下に、本実施形態のロックアップ装置1007について説明する。ここで、ロックアップ装置1007の構造は、基本的には、ロックアップ装置7と同様であるため、第1実施形態と共通する部分については、説明を省略し、相違点のみについて説明する。
【0076】
(1)ロックアップ装置の構造
まず、クラッチプレート1081について説明する。クラッチプレート1081は、クラッチプレート1071の軸方向エンジン側に配置された環状のプレート部材であり、フロントカバー11の摩擦面11bに近接する環状の摩擦連結部1081aと、摩擦連結部1081aの半径方向外周側に形成された複数の爪部1081bとを有している。摩擦連結部1081aの軸方向エンジン側面には、環状の摩擦フェーシング1081cが貼られている。また、本実施形態において、摩擦連結部1081aの軸方向トランスミッション側面にも、環状の摩擦フェーシング1081dが貼られている。爪部1081bは、軸方向トランスミッション側に向かって延びている。
【0077】
一方、クラッチプレート1071は、図18に示すように、環状の摩擦連結部1071aの半径方向外周側に形成された爪部1071bにおいて、各爪部1071bの回転方向中央付近に凹部1071eがさらに形成されている。そして、爪部1081bは、クラッチプレート1071の凹部1071eに対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に係合されている。
【0078】
次に、連結部材1086について説明する。連結部材1086は、連結部材1076とともに、ピストン75の押圧部75d、クラッチプレート1071の摩擦連結部1071a及びクラッチプレート1081の摩擦連結部1081aを軸方向に移動可能な状態で、フロントカバー11に連結させるためのピストン連結機構の機能を有している。
【0079】
連結部材1086は、連結部材1076の軸方向エンジン側に配置されている。連結部材1086は、連結部材1076と同様、軸方向に撓み可能なプレート部材であり、主に、本体部1086aと、摩擦連結部1081aと摩擦連結部1071aとの軸方向間に配置された圧接部1086bとから構成されている。
本体部1086aは、本実施形態において、フロントカバー11と連結部材1076とによって挟まれた軸方向間の空間1008cをさらに軸方向エンジン側の空間1008eと軸方向トランスミッション側の空間1008fとの2つの空間に分割するように配置された環状の部分であり、複数の固定孔1086cと複数の油孔1086dとを有している。固定孔1086cは、本体部1086aの半径方向内周部に形成されている。連結部材1086は、これらの固定孔1086cの位置で、連結部材1076とともに、フロントカバー11にかしめ固定されており、フロントカバー11と一体回転するようになっている。油孔1086dは、空間1008eと空間1008fとの間で常に作動油が流通可能となるようにに設けられた油孔であり、本実施形態において、本体部1086aの半径方向外周部に形成されている。
【0080】
圧接部1086bは、本体部1086aの半径方向外周側に形成された環状の部分であり、クラッチプレート1081の摩擦連結部1081aの軸方向トランスミッション側面(具体的には、摩擦フェーシング1081d)とクラッチプレート1071の摩擦連結部1071a(具体的には、摩擦フェーシング1071c)との軸方向間に配置されている。圧接部1086bは、本体部1086aが固定孔1086cの位置を支点として軸方向に撓むことによって、自らが軸方向に移動可能となっている。
【0081】
上記のように、連結部材1086は、フロントカバー11に対して相対回転不能に設けられるとともに、ピストン75の押圧部75d及び2つのクラッチプレート1071、1081の摩擦連結部1071a、1081aの軸方向移動に伴って自らも軸方向に移動しつつ、2つの摩擦連結部1071a、1081a間に挟まれるように圧接されて、ピストン75とフロントカバー11とを連結させることが可能である。
【0082】
このように、2つのクラッチプレート1071、1081、ピストン75の押圧部75d及び2つの連結部材1076、1086は、フロントカバー11とピストン75とを摩擦連結するためのロックアップ装置1007のクラッチ機構を構成している。
(2)ロックアップ装置の動作
次に、ロックアップ装置1007のロックアップ時の動作について説明する。
【0083】
空間1008a内の作動油が排出されて、ピストン75が軸方向エンジン側に移動させられると、ピストン75の押圧部75dは、連結部材1076の圧接部1076bを軸方向エンジン側に押圧する。すると、連結部材1076の本体部1076aが固定孔1076cの位置を支点として軸方向エンジン側に撓む。これにより、連結部材1076の圧接部1076bは、軸方向エンジン側に移動し、クラッチプレート1071の摩擦連結部1071aに当接し、押圧部75dと摩擦連結部1071aとの軸方向間に挟みつけられる。次に、ピストン75の押圧部75dは、圧接部1076bが押圧部75dと摩擦連結部1071aとの間に挟みつけられた状態で摩擦連結部1071aを軸方向エンジン側に押圧して、摩擦連結部1071aが連結部材1086の圧接部1086bを軸方向エンジン側に押圧する。すると、連結部材1086の本体部1086aが固定孔1086cの位置を支点として軸方向エンジン側に撓む。これにより、連結部材1086の圧接部1086bは、軸方向エンジン側に移動し、クラッチプレート1081の摩擦連結部1081aに当接し、2つの摩擦連結部1071a、1081a間に挟みつけられる。さらに、ピストン75の押圧部75dは、圧接部1076b、1086b及び摩擦連結部1071aが押圧部75dと摩擦連結部1081aとの間に挟みつけられた状態で摩擦連結部1081aを軸方向エンジン側に押圧して、摩擦連結部1081aがフロントカバー11の摩擦面11bに圧接される。このようにして、ロックアップ動作が行われる。
【0084】
このとき、クラッチプレート1081は、クラッチプレート1071の凹部1071eに軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に係合しているため、スムーズに軸方向に移動している。また、連結部材1086は、フロントカバー11と一体回転しているため、連結部材1076とともに、クラッチプレート1071、1081及びピストン75に対してトルク伝達を行っている。そして、フロントカバー11からピストン75に伝達されたトルクは、ダンパー機構(すなわち、ドライブプレート72、トーションスプリング73及びドリブンプレート74)を介して、タービン22に伝達されて、直接入力シャフト(図示せず)に出力される。
【0085】
また、連結部材1086の本体部1086aには、連結部材1076と同様に、油孔1086dが形成されているため、空間1008eと空間1008fとの間の作動油の流れが確保されて両空間の油圧が同じ圧力になるように調節されている。これにより、ロックアップ時における空間1008c内(具体的には、空間1008e、1008f)の作動油の排出がスムーズに行われている。
【0086】
次に、ロックアップ解除時の動作について説明する。ロックアップ解除時には、空間1008a側の油圧が空間1008bの油圧より高くなるため、ピストン75が軸方向トランスミッション側に移動する。すると、ピストン75は、内周側筒状部75cのタービン側端部がタービンハブ32のフランジ部32aのエンジン側面に当接するまで移動する。そして、連結部材1076、1086は、圧接部1076b、1086bに作用していた軸方向エンジン側への押圧力が解除されるため、圧接部1076b、1086bが軸方向トランスミッション側に移動して、軸方向エンジン側に撓んでいた本体部1076a、1086aが撓みのない自由状態に戻る。
【0087】
このようなロックアップ解除時においても、連結部材1086の本体部1086aには、連結部材1076と同様に、油孔1086dが形成されているため、ロックアップ解除時における空間1008c内への作動油の供給がスムーズに行われている。
このように、本実施形態のロックアップ装置1007では、クラッチプレート1071に加えて、クラッチプレート1081がさらに設けられた5面の摩擦面を有する構造となっているため、トルク伝達容量がさらに大きくなっている。
【0088】
(3)変形例
本実施形態のロックアップ装置1007の連結部材1076、1086においても、図17に示すように、第2実施形態のロックアップ装置207の連結部材276に設けられた傾倒防止機構277と同様の傾倒防止機構1177、1187を設けるようにしてもよい。
【0089】
また、第3実施形態のロックアップ装置407に設けられた切り起こし部478、479からなる制限機構と同様に、連結部材1076、1086に切り起こし部を設けてもよい。例えば、図17に示すロックアップ装置1107のように、連結部材1176の本体部1176aに孔1176e〜1176hからなる傾倒防止機構1177を設けるとともに、孔1176g及び孔1176fをそれぞれ切り起こし部1178及び切り起こし部1179を形成することによって形成し、さらに、連結部材1186の本体部1186aに孔1186e〜1186hからなる傾倒防止機構1187を設けるとともに、孔1186hを切り起こし部1188を形成することによって形成することが可能である。これにより、連結部材1176、1186同士の干渉も防ぐことができる。
【0090】
さらに、本変形例のロックアップ装置1107においても、連結部材1176、1186の油孔1176d、1186dを省略してもよい。
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0091】
▲1▼前記実施形態では、本発明にかかるロックアップ装置をトルクコンバータに適用したが、フルードカップリング等の他の流体式トルク伝達装置にも適用可能である。
▲2▼ロックアップ装置のダンパー連結機構の構造は、前記実施形態に限定されず、他の構造のものを適用してもよい。
【0092】
▲3▼クラッチプレートとピストンとの係合構造は、前記実施形態の係合構造に限定されず、他の構造のものを適用してもよい。
【0093】
【発明の効果】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、クラッチ部材をピストンに装着することによって、3面以上の摩擦面を有する構造としたロックアップ装置において、軸方向に撓み可能な本体部と圧接部とを有する連結部材によって、ピストンの押圧部とクラッチ部材の摩擦連結部とを軸方向に移動可能な状態でフロントカバーに連結させるためのピストン連結機構が構成されているため、従来よりも、部品点数を低減し、構造を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるロックアップ装置を採用した流体式トルク伝達装置としてのトルクコンバータの縦断面概略図。
【図2】図1の部分拡大図であって、ロックアップ装置を示す図。
【図3】第1実施形態にかかるロックアップ装置のドライブプレートとトーションスプリングとピストンとの組立図をトランスミッション側から見た図。
【図4】第1実施形態にかかるロックアップ装置のクラッチプレートとピストンとの組立図をエンジン側から見た図。
【図5】本発明の第1実施形態の変形例にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図7】第2実施形態にかかるロックアップ装置の連結部材をトランスミッション側から見た図。
【図8】第2実施形態にかかるロックアップ装置の連結部材の動作を模式的に説明する図であって、(a)図7のA−A断面図、(b)図7のB−B断面図、(c)傾倒防止機構を有しない連結部材の(a)に相当する図。
【図9】第2実施形態にかかるロックアップ装置の連結部材の動作を模式的に説明する図であって、(a)図7のC−C断面図、(b)図7のD−D断面図。
【図10】本発明の第2実施形態の変形例にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図11】本発明の第3実施形態にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図12】本発明の第3実施形態の変形例1にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図13】本発明の第3実施形態の変形例2にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図14】本発明の第3実施形態の変形例3にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図15】本発明の第4実施形態にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【図16】第4実施形態にかかるロックアップ装置の2つのクラッチプレートとピストンとの組立図をエンジン側から見た図。
【図17】本発明の第4実施形態の変形例にかかるロックアップ装置を示す図であって、図2に相当する図。
【符号の説明】
1 トルクコンバータ(流体式トルク伝達装置)
7、107、207、307、407、507、607、707、1007、1107 ロックアップ装置
11 フロントカバー
11b 摩擦面
21 インペラー
22 タービン
71、171、1071、1081 クラッチプレート(クラッチ部材)
71a、171a、1071a、1081a 摩擦連結部
75、175 ピストン
75d、175d 押圧部
76、176、276、376、476、576、676、776、1076、1086、1176、1186 連結部材
76b、176b、276b、376b、476b、576b、676b、776b、1076b、1086b、1176b、1186b 圧接部
277、377、677、1177、1187、 傾倒防止機構
478、479、578、579、678、679、1178、1179、1188 切り起こし部(制限機構)
780、781 ラグ(制限機構)
Claims (8)
- 摩擦面を有するフロントカバーと、前記フロントカバーに固定され作動流体が充填された流体室を形成するインペラーと、前記流体室内で前記インペラーに対向して配置されたタービンとを含む流体式トルク伝達装置のロックアップ装置であって、
前記フロントカバーと前記タービンとの間に配置され、前記摩擦面に対向する押圧部を有し、作動流体の圧力により軸方向に移動可能なピストンと、
前記ピストンに対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着され、前記摩擦面と前記押圧部との軸方向間に配置された第1摩擦連結部を有する第1クラッチ部材と、
前記フロントカバーに固定され軸方向に撓み可能な第1本体部と、前記第1摩擦連結部と前記押圧部との軸方向間に配置されるように前記第1本体部の半径方向端部に設けられた第1圧接部とを有する環状の第1連結部材と、
を備えた流体式トルク伝達装置のロックアップ装置。 - 前記第1本体部は、前記フロントカバーにかしめて固定されている、請求項1に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置。
- 前記第1連結部材は、前記第1圧接部を前記第1摩擦連結部及び前記押圧部に対して傾倒しないように軸方向に移動させることを可能にする傾倒防止機構を有している、請求項1又は2に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置。
- 前記傾倒防止機構は、前記第1本体部において、回転方向に並んで配置された複数の第1孔と複数の第2孔とから構成されており、
前記複数の第2孔は、前記複数の第1孔の半径方向内周側又は外周側において回転方向中央部が前記第1孔の回転方向間に対応するように、かつ、半径方向内周側又は外周側から見た際に、回転方向両端部が前記第1孔の回転方向端部と重なるように配置されるとともに、前記複数の第1孔と半径方向に向かって交互に繰り返し形成されている、
請求項3に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置。 - 前記第1孔及び前記第2孔は、回転方向に延びるスリット孔である、請求項4に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置。
- 前記第1本体部の軸方向への撓みを所定の範囲に制限する制限機構をさらに備えている、請求項1〜5のいずれかに記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置。
- 前記第1クラッチ部材に対して軸方向に移動可能に、かつ、相対回転不能に装着され、前記第1摩擦連結部と前記摩擦面との軸方向間に配置された第2摩擦連結部を有する第2クラッチ部材と、
前記フロントカバーに固定され軸方向に撓み可能な第2本体部と、前記第2摩擦連結部と前記第1摩擦連結部との軸方向間に配置されるように前記第2本体部の半径方向端部に設けられた第2圧接部とを有する環状の第2連結部材と、
をさらに備えた請求項1に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置。 - 前記第2本体部は、前記第1本体部とともに、前記フロントカバーにかしめて固定されている、請求項7に記載の流体式トルク伝達装置のロックアップ装置。
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