JP2004332697A - バキュームポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】バキュームポンプにおける振動や騒音、これに伴う耐久性の低下および駆動トルクの増大による動力損失を防止する。
【解決手段】ポンプハウジング10の内周のカム面10aの一部に形成される当接部10a1に、ロータ16の外周面を円周方向摺動自在に当接させ、このロータに径方向摺動可能に案内支持したベーン18の先端部をカム面に摺動自在に当接させて、ポンプハウジング内の当接部の一側には吸入側ポンプ作動室R1を、他側には吐出側ポンプ作動室R2を形成する。ベーンの先端側の回転方向前面には、ベーンの先端部が当接部に接近して吐出側ポンプ作動室と吐出ポート14の連通を遮断するのと前後して吐出側ポンプ作動室をロータの内部に形成された内部室R4に連通する逃げ通路19を形成する切欠き19aまたは溝19bを、ロータに対するベーンの摺動方向に沿って形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】ポンプハウジング10の内周のカム面10aの一部に形成される当接部10a1に、ロータ16の外周面を円周方向摺動自在に当接させ、このロータに径方向摺動可能に案内支持したベーン18の先端部をカム面に摺動自在に当接させて、ポンプハウジング内の当接部の一側には吸入側ポンプ作動室R1を、他側には吐出側ポンプ作動室R2を形成する。ベーンの先端側の回転方向前面には、ベーンの先端部が当接部に接近して吐出側ポンプ作動室と吐出ポート14の連通を遮断するのと前後して吐出側ポンプ作動室をロータの内部に形成された内部室R4に連通する逃げ通路19を形成する切欠き19aまたは溝19bを、ロータに対するベーンの摺動方向に沿って形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のブースタブレーキの真空源などとして使用するのに適したバキュームポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のバキュームポンプとしては、ポンプケーシング内にロータを偏心して回転可能に支承し、このロータに直径方向に形成したスリット(案内溝)にベーンを直径方向摺動可能に支持し、ベーンの両先端部をポンプケーシング内周のカム面に摺動可能に当接したものがある。(例えば、特許文献1参照)。また図8はこのようなバキュームポンプのさらに具体的な一例を示したものであり、筒状のポンプハウジング10内に偏心して回転自在に支持したロータ16に直径方向に形成した案内溝16aにはベーン18のベーン本体18aを直径方向摺動可能に案内支持して、ベーン本体18aの両先端に設けたシール部材18bをポンプハウジング10のカム面10aに当接させており、またロータ16の外周面はポンプハウジング10内周のカム面10aの一部に形成される円弧状の当接部10a1に円周方向摺動自在に当接させて、この当接部10a1の両側に吸入側ポンプ作動室R1と吐出側ポンプ作動室R2を形成している。
【0003】
このバキュームポンプでは、ロータ16が反時計回転方向に回転するにつれて、吸入側ポンプ作動室R1の容積は増大し、吐出側ポンプ作動室R2の容積は減少するので、真空源などに連通された吸入通路13a内の空気はポンプハウジング10のカム面10aに開口された吸入ポート13から吸入側ポンプ作動室R1内に吸入され、また吐出側ポンプ作動室R2内の空気は内側面10bに開口された吐出ポート14から、出口側にリーフ弁(図示省略)を設けた吐出穴14aを通って外部に吐出される。吐出側ポンプ作動室R2から吸入側ポンプ作動室R1への気体の漏れは、当接部10a1により防止される。なお内側面10bに設けられた円弧状の連通溝10dは、吸入側ポンプ作動室R1が吸入ポート13に直接連通されるまでの間、吸入側ポンプ作動室R1に空気を導入するためのものである。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−149282号公報(段落〔0013〕、図3)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図8に示すようなバキュームポンプでは、ポンプハウジング10内には潤滑およびシール性向上のために潤滑油が供給されており、この潤滑油は吐出ポート14から吐出穴14aを通って排出されるが、吐出側ポンプ作動室R2を形成するベーン18の先端部が二点鎖線の位置から当接部10a1に接近するにつれて吐出ポート14の開口面積が減少するので、吐出側ポンプ作動室R2内の圧力が高くなってロータ16の駆動トルクが上昇する。またベーン18が実線の位置に達して吐出ポート14が閉じられれば、潤滑油の閉じ込みにより吐出側ポンプ作動室R2内の圧力はさらに上昇するのでシール部材18bがカム面10aから離れる離間現象を生じる。このため、バキュームポンプに振動や騒音が生じるとともに耐久性を低下させ、またポンプの駆動トルクが増大するので動力損失も生じるという問題がある。
【0006】
本発明は、ポンプハウジングとロータの間の当接部にベーンが接近して、吐出側ポンプ作動室と吐出ポートの連通が遮断される前後に吐出側ポンプ作動室をロータの内部室に連通して潤滑油を逃がす逃げ通路を形成してこのような問題を解決することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このために、本発明によるバキュームポンプは、両側が閉じられた筒状のポンプハウジングと、このポンプハウジングの内周のカム面の一部に形成された当接部において外周面の一部が円周方向摺動自在に当接されるように偏心して回転自在に支持されて回転駆動される円形のロータと、このロータに径方向摺動可能に案内支持され両側部がポンプハウジングの両内側面と摺動自在に当接されるとともに先端部がカム面に摺動自在に当接されるベーンと、当接部からロータの回転方向で前側に延びるポンプハウジングのカム面とロータの外周面とベーンの間に形成される吸入側ポンプ作動室と、当接部からロータの回転方向で後側に延びるポンプハウジングのカム面とロータの外周面とベーンの間に形成される吐出側ポンプ作動室と、吸入側ポンプ作動室側で当接部に接近したポンプハウジングの一部の内面に開口された吸入ポートと、吐出側ポンプ作動室側で当接部に接近したポンプハウジングの一部の内面に開口された吐出ポートよりなるバキュームポンプにおいて、ベーンの先端側の回転方向前面には、ベーンの先端部が当接部に接近して吐出側ポンプ作動室と吐出ポートの連通が遮断されるのと前後して吐出側ポンプ作動室をロータの内部に形成された内部室に連通する逃げ通路を形成する切欠きまたは溝を、ロータに対するベーンの摺動方向に沿って形成したことを特徴とするものである。
【0008】
前項に記載のバキュームポンプは、ロータを円筒状に形成し、ベーンはロータを直径方向に貫通する1個として円筒状のロータの内部を2つの内部室に仕切るとともにその両先端部をカム面に摺動自在に当接させることが好ましい。
【0009】
【発明の作用および効果】
本発明のバキュームポンプによれば、ベーンの先端側の回転方向前面には、ベーンの先端部が当接部に接近して吐出側ポンプ作動室と吐出ポートの連通が遮断されるのと前後して吐出側ポンプ作動室をロータの内部に形成された内部室に連通する逃げ通路を形成する切欠きまたは溝を、ロータに対するベーンの摺動方向に沿って形成したので、ベーンがカム面とロータの当接部に接近し、吐出ポートの開口面積が減少して吐出側ポンプ作動室内の圧力が高くなろうとするのと前後して、吐出側ポンプ作動室は逃げ通路によりロータの内部室に連通されて、その内部の潤滑油はロータの内部室内に放出される。これによりベーンが当接部に接近された後の吐出側ポンプ作動室内の圧力の上昇や潤滑油の閉じ込みはなくなるので、振動や騒音、これに伴う耐久性の低下および駆動トルクの増大による動力損失などもなくなる。またロータの内部室内に一旦放出された潤滑油は、ベーンの先端部が当接部を過ぎた状態では、逃げ通路からベーンの先端側の回転方向前面に放出されるので、ベーンの先端部が当接部を通過した後においてもこの先端部とカム面の間の潤滑は良好に保たれる。
【0010】
ロータは円筒状に形成し、ベーンはロータを直径方向に貫通する1個として円筒状のロータの内部を2つの内部室に仕切るとともにその両先端部をカム面に摺動自在に当接させるようにしたバキュームポンプによれば、ベーンは円筒状のロータの外周側の肉厚部分により両持ち支持されるのでベーンの作動は円滑になされる。またロータの内部室の容積を充分大きくすることができるので、逃げ通路を介して連通される吐出側ポンプ作動室内の圧力を充分に低下させて、振動や騒音、これに伴う耐久性の低下および駆動トルクの増大による動力損失などの効果を一層高めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、図1〜図5に示す実施の形態により、本発明によるバキュームポンプの説明をする。この実施の形態は、自動車のブースタブレーキの真空源として使用するバキュームポンプに本発明を適用したもので、主として、内周にカム面10aが形成されたポンプハウジング10と、このポンプハウジング10内で偏心して回転されるロータ16と、このロータ16に直径方向摺動可能に支持されるベーン18により構成されている。
【0012】
ポンプハウジング10は、図1〜図3に示すように、有底筒状のハウジング本体11と、これにねじ止め(ねじは図示省略)されるカバー12よりなるものである。ハウジング本体11の底部の外側には、ボス部11aが偏心して一体的に形成され、このボス部11aにはロータ16を軸承する支持孔11bが同軸的に形成されている。ハウジング本体11の内周に形成されるカム面10aは、支持孔11bの中心線を通る直径がほゞ一定となる形状であり、このカム面10aの円周方向の一部には範囲Aにわたり支持孔11bの中心線を中心とする円弧状の当接部10a1が形成されている。ハウジング本体11の開口側にはカバー12がねじ止めされて覆われ、ハウジング本体11の内底面とカバー12の内面により、ポンプハウジング10の互いに平行な内側面10b,10cが形成される。
ハウジング本体11のボス部11aに形成された支持孔11bの内周には、当接部10a1とほゞ同じ範囲Aにわたる円周方向位置に軸線方向の一端が内側面10bに解放された第1潤滑溝15aが形成され、またこれと180度位相が異なる位置に軸線方向両端が閉じられた第2潤滑溝15bが形成されている。
【0013】
ハウジング本体11のカム面10aには、その当接部10a1よりもロータ16の回転方向において前側で当接部10a1に接近した位置に吸入ポート13が形成され、この吸入ポート13には吸入通路13aが連通されている。またハウジング本体11の内側面10bには、カム面10aの当接部10a1よりもロータ16の回転方向において後側で当接部10a1に接近した位置に、カム面10aに沿った円弧状部と当接部10a1側となる大きな頭部からなる巴状の吐出ポート14が形成され、この吐出ポート14の頭部には吐出穴14aが連通されている。なおハウジング本体11の内側面10bのカム面10aの当接部10a1よりも前側となる位置には、吸入側ポンプ作動室R1が吸入ポート13に直接連通されるまでの間、吸入側ポンプ作動室R1に空気を導入するために、カム面10aに沿った円弧状の連通溝10dが形成されている。
【0014】
図1〜図3に示すように、ロータ16は厚肉の有底円筒状で、その底面側に同軸的に一体形成された軸部16bがハウジング本体11の支持孔11bに嵌合されて回転自在に支持されている。このロータ16は、外周面がポンプハウジング10の内周の当接部10a1と円周方向摺動自在に当接され、両側面がポンプハウジング10の両内側面10b,10cと摺動自在に当接され、また軸線方向の厚さ全体にわたり直径方向に延びる案内溝16aが形成されている。
【0015】
主として図5に示すように、ベーン18は厚板状のベーン本体18aと2つのシール部材(先端部)18bよりなり、それぞれ潤滑性のよい合成樹脂材料を素材としている。ベーン本体18aの長手方向両先端面には、横幅方向に延びる中央部が深く両端部が浅い支持溝18a1が形成されている。またシール部材18bは、細長い半円柱状の頭部18b1の底面に沿って、長手方向において中央部が高く両端部が低い突出部18b2を形成したものである。各シール部材18bは、突出部18b2を支持溝18a1内に挿入することにより、ベーン本体18aの長手方向にのみ摺動自在に、ベーン本体18aの両端部に支持される。
【0016】
ベーン18のベーン本体18aは、図1〜図3に示すように、円筒状のロータ16を直径方向に貫通するように案内溝16aにより摺動可能に案内支持されている。ベーン18の両端部を形成する各シール部材18bは、ロータ16の回転に伴う遠心力によりポンプハウジング10のカム面10aに押し付けられて摺動自在に当接され、またベーン本体18aおよびシール部材18bの両側面はポンプハウジング10の両内側面10b,10cと摺動自在に当接されている。ロータ16の内部は、ベーン本体18aにより2つの内部室R4に仕切られる。
【0017】
当接部10a1からロータ16の回転方向で前側に延びるポンプハウジング10のカム面10aとロータ16の外周面とベーン18の間には吸入側ポンプ作動室R1が形成され、当接部10a1からロータ16の回転方向で後側に延びるカム面10aとロータ16の外周面とベーン18の間には吐出側ポンプ作動室R2が形成され、当接部10a1と反対側となるカム面10aとロータ16の外周面とベーン18の間には第3のポンプ作動室R3が形成される。前述した図8に示すバキュームポンプと同様、吸入側および吐出側の各ポンプ作動室R1,R2は、バキュームポンプの作動状態の大部分において、それぞれ吸入および吐出ポート13,14に連通されているが、カム面10aに当接されるシール部材18bがある距離よりも当接部10a1に接近した状態では、ベーン18により吸入および吐出ポート13,14から遮断される。
【0018】
図1、図2および図5に示すように、ベーン本体18aの先端側には、回転方向(図1および図2の矢印参照)で前側となる面の一側縁に、その先端から長手方向に沿って延びる細長い切欠き19aが形成されている。この切欠き19aの長さは、それが形成されたベーン本体18aの先端に設けられたシール部材18bが図1の二点鎖線で示すようにカム面10aの当接部10a1に接近するまでは、円筒状のロータ16の外周側の肉厚部分内またはそれよりも外側に位置してロータ16の内部室R4に連通されないが、シール部材18bが当接部10a1に接近して吐出側ポンプ作動室R2と吐出ポート14の連通がベーン18により遮断される直前に、切欠き19aの後端がロータ16の一方の内部室R4内に入って(図1参照)、吐出側ポンプ作動室R2を一方の内部室R4に連通する逃げ通路19を形成するような長さになっている。
【0019】
この逃げ通路19は、シール部材18bが当接部10a1を通過した後で、吸入側ポンプ作動室R1と吸入ポート13の連通が開始される直後までの区間において、内部室R4を第3のポンプ作動室R3に連通するものである。なお、この逃げ通路19を形成する切欠き19aは、ベーン本体18aの先端側の回転方向前面の両側縁に設けてもよい。あるいは、この逃げ通路19は、前述したように、ベーン本体18aの先端側の回転方向前面の一側縁に設けた切欠き19aにより形成する代わりに、ベーン本体18aの先端側の回転方向前面の幅方向中央に設けた溝19b(図5の二点鎖線参照)により形成してもよい。なお切欠き19aおよび溝19bの断面形状は、四角に限らず三角やU字状など任意である。
【0020】
図3および図4に示すように、ロータ16の軸部16bには、案内溝16aに達しない挿入孔17が外端部から同軸的に形成され、ハウジング本体11のボス部11aより突出する軸部16bの先端部には軸部16bの回転軸線を中心とする互いに平行な二面取り部16cが形成されている。この二面取り部16cと係合される長穴20aが形成された円形のカップリング20は、直径方向反対側で軸線方向に突出する1対の突起20bを介して内燃機関のカム軸などにより回転され、軸部16bを介してロータ16を回転駆動するものである。中心に給油孔21aが形成されたジョイント21は、先端側の環状溝にOリング23を嵌装し、中間部の環状溝21bにスナップリング22を嵌装して図示のように挿入孔17内に挿入され、この挿入状態ではスナップリング22は挿入孔17からのジョイント21の離脱および軸部16bからのカップリング20の離脱を同時に防止するようになっている。ロータ16の軸部16bにはその外周面から挿入孔17先端の小径部に達する絞り孔17aが形成され、給油孔21aから供給された潤滑油は、軸部16bの回転に伴い、絞り孔17aから第1潤滑溝15aと第2潤滑溝15bに交互に供給され、第1潤滑溝15aに供給された潤滑油はポンプハウジング10内に供給されてロータ16およびベーン18を潤滑するとともにポンプハウジング10とロータ16とベーン18の間のシール性を向上させ、第2潤滑溝15bに供給された潤滑油は支持孔11bと軸部16bの間の軸受面を潤滑する。
【0021】
次に上述した実施の形態の作動の説明をする。カップリング20を介してロータ16が駆動され、図1および図2において反時計回転方向に回転されれば、図8に示す従来技術の場合と同様、ブースタブレーキの真空源などに連通された吸入通路13a内の空気はポンプハウジング10のカム面10aに開口した吸入ポート13から吸入側ポンプ作動室R1内に吸入され、また吐出側ポンプ作動室R2内の空気および第1潤滑溝15aから供給された潤滑油は、内側面10bに開口した吐出ポート14から、出口側にリーフ弁(図示省略)を設けた吐出穴14aを通って外部に放出される。
【0022】
図1に示すように、ベーン18のシール部材18bが当接部10a1の手前にある状態では、シール部材18bが二点鎖線の位置から当接部10a1に接近するにつれて吐出ポート14の開口面積はベーン18により閉じられて減少するので、吐出側ポンプ作動室R2内の圧力は上昇しようとする。しかし吐出ポート14が閉じられる直前に、吐出側ポンプ作動室R2は、前述のように切欠き19aにより形成される逃げ通路19を介してロータ16の一方の内部室R4に連通され、その内部の潤滑油は逃げ通路19から内部室R4内にも放出されるので、吐出側ポンプ作動室R2内の圧力が大きく上昇することはない。ベーン18が実線の位置を越えて吐出ポート14が完全に閉じられた後も、吐出側ポンプ作動室R2は逃げ通路19を介して内部室R4に連通されているので潤滑油の閉じ込みによる圧力上昇が生じることはない。従って、吐出側ポンプ作動室R2内の圧力の上昇により振動や騒音を生じたり、ロータ16の駆動トルクが増大して動力損失を生じたりすることはなく、またベーン18のシール部材18bの離間現象を生じて耐久性を低下されることもない。
【0023】
また図2に示すように、シール部材18bが当接部10a1を通過した状態では、前述のように、吸入側ポンプ作動室R1と吸入ポート13の連通が開始される直後までの間は、逃げ通路19は内部室R4を第3のポンプ作動室R3に連通しているので、上述のように吐出側ポンプ作動室R2から内部室R4内に一旦放出された潤滑油は、その間に逃げ通路19からベーン18の先端側の回転方向前面に放出される。従って、シール部材18bが当接部10a1を通過した後においても、ベーン本体18aの先端に支持されたシール部材18bとカム面10aの間の潤滑は良好に保たれる。なお、シール部材18bが当接部10a1と反対側となる位置から、図1の二点鎖線に示す位置付近に達するまでの間は、切欠き19aの後端がロータ16の内部室R4内に入って吐出側ポンプ作動室R2を内部室R4に連通することはないので、内部室R4内の圧力が上昇して、前述のように吐出ポート14が閉じられる直前よりも後における吐出側ポンプ作動室R2内の圧力の上昇を減少させる作用が損なわれることはない。
【0024】
上述した実施の形態では、ベーン18は、厚板状のベーン本体18aの両端部に頭部18b1と突出部18b2よりなるシール部材18bを支持した例につき説明したが、ベーン18はこれに限られるものではなく、例えば図6に示すように、厚板部とその半分の薄板部からなる1対の半部18cの薄板部同志を重ねたものとし、切欠き19aは各厚板部の回転方向前面の一側縁に形成したものでもよい。あるいはまた図7に示すように、ベーン本体18dの長手方向両端面に横幅方向に形成したU溝18d1にローラ状のシール部材18eを設け、ベーン本体18dには図5のベーン本体18aと同様の切欠き19aを設けるようにしたものでもよい。
【0025】
また上述した実施の形態では、ロータ16は円筒状に形成し、ベーン18はロータ16を直径方向に貫通する1個として円筒状のロータ16の内部を2つの内部室R4に仕切るとともにその両先端をカム面10aに摺動自在に当接させるようにしており、このようにすればベーン18は円筒状のロータ16の外周側の肉厚部分により両持ち支持されるのでベーン18の作動は円滑になされ、またロータ16の内部室R4の容積を充分大きくすることができるので、逃げ通路19を介して連通される吐出側ポンプ作動室R2内の圧力を充分に低下させて、振動および騒音の減少、動力損失の減少および耐久性の低下などの効果を高めることができる。しかしながら本発明はこれに限られるものではなく、ロータにそれぞれ独立して半径方向出入り可能に設けたベーンの先端縁をポンプハウジングのカム面に当接するようにしたバキュームポンプに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるバキュームポンプの一実施形態の吐出終了位置付近における断面図である。
【図2】図1に示す実施の形態の吸入開始位置付近における断面図である。
【図3】図1の3−3断面図である。
【図4】図3の4−4断面図である。
【図5】図1に示す実施の形態に使用するベーンの3面図である。
【図6】本発明に使用するベーンの一変形例を示す側面図である。
【図7】本発明に使用するベーンの別の変形例を示す側面図である。
【図8】従来技術によるバキュームポンプの一例の図2に相当する断面図である。
【符号の説明】
10…ポンプハウジング、10a…カム面、10a1…当接部、10b,10c…内側面、13…吸入ポート、14…吐出ポート、16…ロータ、18…ベーン、18b,18e…先端部(シール部材)19…逃げ通路、19a…切欠き、19b…溝、R1…吸入側ポンプ作動室、R2…吐出側ポンプ作動室、R4…内部室。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のブースタブレーキの真空源などとして使用するのに適したバキュームポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のバキュームポンプとしては、ポンプケーシング内にロータを偏心して回転可能に支承し、このロータに直径方向に形成したスリット(案内溝)にベーンを直径方向摺動可能に支持し、ベーンの両先端部をポンプケーシング内周のカム面に摺動可能に当接したものがある。(例えば、特許文献1参照)。また図8はこのようなバキュームポンプのさらに具体的な一例を示したものであり、筒状のポンプハウジング10内に偏心して回転自在に支持したロータ16に直径方向に形成した案内溝16aにはベーン18のベーン本体18aを直径方向摺動可能に案内支持して、ベーン本体18aの両先端に設けたシール部材18bをポンプハウジング10のカム面10aに当接させており、またロータ16の外周面はポンプハウジング10内周のカム面10aの一部に形成される円弧状の当接部10a1に円周方向摺動自在に当接させて、この当接部10a1の両側に吸入側ポンプ作動室R1と吐出側ポンプ作動室R2を形成している。
【0003】
このバキュームポンプでは、ロータ16が反時計回転方向に回転するにつれて、吸入側ポンプ作動室R1の容積は増大し、吐出側ポンプ作動室R2の容積は減少するので、真空源などに連通された吸入通路13a内の空気はポンプハウジング10のカム面10aに開口された吸入ポート13から吸入側ポンプ作動室R1内に吸入され、また吐出側ポンプ作動室R2内の空気は内側面10bに開口された吐出ポート14から、出口側にリーフ弁(図示省略)を設けた吐出穴14aを通って外部に吐出される。吐出側ポンプ作動室R2から吸入側ポンプ作動室R1への気体の漏れは、当接部10a1により防止される。なお内側面10bに設けられた円弧状の連通溝10dは、吸入側ポンプ作動室R1が吸入ポート13に直接連通されるまでの間、吸入側ポンプ作動室R1に空気を導入するためのものである。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−149282号公報(段落〔0013〕、図3)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図8に示すようなバキュームポンプでは、ポンプハウジング10内には潤滑およびシール性向上のために潤滑油が供給されており、この潤滑油は吐出ポート14から吐出穴14aを通って排出されるが、吐出側ポンプ作動室R2を形成するベーン18の先端部が二点鎖線の位置から当接部10a1に接近するにつれて吐出ポート14の開口面積が減少するので、吐出側ポンプ作動室R2内の圧力が高くなってロータ16の駆動トルクが上昇する。またベーン18が実線の位置に達して吐出ポート14が閉じられれば、潤滑油の閉じ込みにより吐出側ポンプ作動室R2内の圧力はさらに上昇するのでシール部材18bがカム面10aから離れる離間現象を生じる。このため、バキュームポンプに振動や騒音が生じるとともに耐久性を低下させ、またポンプの駆動トルクが増大するので動力損失も生じるという問題がある。
【0006】
本発明は、ポンプハウジングとロータの間の当接部にベーンが接近して、吐出側ポンプ作動室と吐出ポートの連通が遮断される前後に吐出側ポンプ作動室をロータの内部室に連通して潤滑油を逃がす逃げ通路を形成してこのような問題を解決することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このために、本発明によるバキュームポンプは、両側が閉じられた筒状のポンプハウジングと、このポンプハウジングの内周のカム面の一部に形成された当接部において外周面の一部が円周方向摺動自在に当接されるように偏心して回転自在に支持されて回転駆動される円形のロータと、このロータに径方向摺動可能に案内支持され両側部がポンプハウジングの両内側面と摺動自在に当接されるとともに先端部がカム面に摺動自在に当接されるベーンと、当接部からロータの回転方向で前側に延びるポンプハウジングのカム面とロータの外周面とベーンの間に形成される吸入側ポンプ作動室と、当接部からロータの回転方向で後側に延びるポンプハウジングのカム面とロータの外周面とベーンの間に形成される吐出側ポンプ作動室と、吸入側ポンプ作動室側で当接部に接近したポンプハウジングの一部の内面に開口された吸入ポートと、吐出側ポンプ作動室側で当接部に接近したポンプハウジングの一部の内面に開口された吐出ポートよりなるバキュームポンプにおいて、ベーンの先端側の回転方向前面には、ベーンの先端部が当接部に接近して吐出側ポンプ作動室と吐出ポートの連通が遮断されるのと前後して吐出側ポンプ作動室をロータの内部に形成された内部室に連通する逃げ通路を形成する切欠きまたは溝を、ロータに対するベーンの摺動方向に沿って形成したことを特徴とするものである。
【0008】
前項に記載のバキュームポンプは、ロータを円筒状に形成し、ベーンはロータを直径方向に貫通する1個として円筒状のロータの内部を2つの内部室に仕切るとともにその両先端部をカム面に摺動自在に当接させることが好ましい。
【0009】
【発明の作用および効果】
本発明のバキュームポンプによれば、ベーンの先端側の回転方向前面には、ベーンの先端部が当接部に接近して吐出側ポンプ作動室と吐出ポートの連通が遮断されるのと前後して吐出側ポンプ作動室をロータの内部に形成された内部室に連通する逃げ通路を形成する切欠きまたは溝を、ロータに対するベーンの摺動方向に沿って形成したので、ベーンがカム面とロータの当接部に接近し、吐出ポートの開口面積が減少して吐出側ポンプ作動室内の圧力が高くなろうとするのと前後して、吐出側ポンプ作動室は逃げ通路によりロータの内部室に連通されて、その内部の潤滑油はロータの内部室内に放出される。これによりベーンが当接部に接近された後の吐出側ポンプ作動室内の圧力の上昇や潤滑油の閉じ込みはなくなるので、振動や騒音、これに伴う耐久性の低下および駆動トルクの増大による動力損失などもなくなる。またロータの内部室内に一旦放出された潤滑油は、ベーンの先端部が当接部を過ぎた状態では、逃げ通路からベーンの先端側の回転方向前面に放出されるので、ベーンの先端部が当接部を通過した後においてもこの先端部とカム面の間の潤滑は良好に保たれる。
【0010】
ロータは円筒状に形成し、ベーンはロータを直径方向に貫通する1個として円筒状のロータの内部を2つの内部室に仕切るとともにその両先端部をカム面に摺動自在に当接させるようにしたバキュームポンプによれば、ベーンは円筒状のロータの外周側の肉厚部分により両持ち支持されるのでベーンの作動は円滑になされる。またロータの内部室の容積を充分大きくすることができるので、逃げ通路を介して連通される吐出側ポンプ作動室内の圧力を充分に低下させて、振動や騒音、これに伴う耐久性の低下および駆動トルクの増大による動力損失などの効果を一層高めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、図1〜図5に示す実施の形態により、本発明によるバキュームポンプの説明をする。この実施の形態は、自動車のブースタブレーキの真空源として使用するバキュームポンプに本発明を適用したもので、主として、内周にカム面10aが形成されたポンプハウジング10と、このポンプハウジング10内で偏心して回転されるロータ16と、このロータ16に直径方向摺動可能に支持されるベーン18により構成されている。
【0012】
ポンプハウジング10は、図1〜図3に示すように、有底筒状のハウジング本体11と、これにねじ止め(ねじは図示省略)されるカバー12よりなるものである。ハウジング本体11の底部の外側には、ボス部11aが偏心して一体的に形成され、このボス部11aにはロータ16を軸承する支持孔11bが同軸的に形成されている。ハウジング本体11の内周に形成されるカム面10aは、支持孔11bの中心線を通る直径がほゞ一定となる形状であり、このカム面10aの円周方向の一部には範囲Aにわたり支持孔11bの中心線を中心とする円弧状の当接部10a1が形成されている。ハウジング本体11の開口側にはカバー12がねじ止めされて覆われ、ハウジング本体11の内底面とカバー12の内面により、ポンプハウジング10の互いに平行な内側面10b,10cが形成される。
ハウジング本体11のボス部11aに形成された支持孔11bの内周には、当接部10a1とほゞ同じ範囲Aにわたる円周方向位置に軸線方向の一端が内側面10bに解放された第1潤滑溝15aが形成され、またこれと180度位相が異なる位置に軸線方向両端が閉じられた第2潤滑溝15bが形成されている。
【0013】
ハウジング本体11のカム面10aには、その当接部10a1よりもロータ16の回転方向において前側で当接部10a1に接近した位置に吸入ポート13が形成され、この吸入ポート13には吸入通路13aが連通されている。またハウジング本体11の内側面10bには、カム面10aの当接部10a1よりもロータ16の回転方向において後側で当接部10a1に接近した位置に、カム面10aに沿った円弧状部と当接部10a1側となる大きな頭部からなる巴状の吐出ポート14が形成され、この吐出ポート14の頭部には吐出穴14aが連通されている。なおハウジング本体11の内側面10bのカム面10aの当接部10a1よりも前側となる位置には、吸入側ポンプ作動室R1が吸入ポート13に直接連通されるまでの間、吸入側ポンプ作動室R1に空気を導入するために、カム面10aに沿った円弧状の連通溝10dが形成されている。
【0014】
図1〜図3に示すように、ロータ16は厚肉の有底円筒状で、その底面側に同軸的に一体形成された軸部16bがハウジング本体11の支持孔11bに嵌合されて回転自在に支持されている。このロータ16は、外周面がポンプハウジング10の内周の当接部10a1と円周方向摺動自在に当接され、両側面がポンプハウジング10の両内側面10b,10cと摺動自在に当接され、また軸線方向の厚さ全体にわたり直径方向に延びる案内溝16aが形成されている。
【0015】
主として図5に示すように、ベーン18は厚板状のベーン本体18aと2つのシール部材(先端部)18bよりなり、それぞれ潤滑性のよい合成樹脂材料を素材としている。ベーン本体18aの長手方向両先端面には、横幅方向に延びる中央部が深く両端部が浅い支持溝18a1が形成されている。またシール部材18bは、細長い半円柱状の頭部18b1の底面に沿って、長手方向において中央部が高く両端部が低い突出部18b2を形成したものである。各シール部材18bは、突出部18b2を支持溝18a1内に挿入することにより、ベーン本体18aの長手方向にのみ摺動自在に、ベーン本体18aの両端部に支持される。
【0016】
ベーン18のベーン本体18aは、図1〜図3に示すように、円筒状のロータ16を直径方向に貫通するように案内溝16aにより摺動可能に案内支持されている。ベーン18の両端部を形成する各シール部材18bは、ロータ16の回転に伴う遠心力によりポンプハウジング10のカム面10aに押し付けられて摺動自在に当接され、またベーン本体18aおよびシール部材18bの両側面はポンプハウジング10の両内側面10b,10cと摺動自在に当接されている。ロータ16の内部は、ベーン本体18aにより2つの内部室R4に仕切られる。
【0017】
当接部10a1からロータ16の回転方向で前側に延びるポンプハウジング10のカム面10aとロータ16の外周面とベーン18の間には吸入側ポンプ作動室R1が形成され、当接部10a1からロータ16の回転方向で後側に延びるカム面10aとロータ16の外周面とベーン18の間には吐出側ポンプ作動室R2が形成され、当接部10a1と反対側となるカム面10aとロータ16の外周面とベーン18の間には第3のポンプ作動室R3が形成される。前述した図8に示すバキュームポンプと同様、吸入側および吐出側の各ポンプ作動室R1,R2は、バキュームポンプの作動状態の大部分において、それぞれ吸入および吐出ポート13,14に連通されているが、カム面10aに当接されるシール部材18bがある距離よりも当接部10a1に接近した状態では、ベーン18により吸入および吐出ポート13,14から遮断される。
【0018】
図1、図2および図5に示すように、ベーン本体18aの先端側には、回転方向(図1および図2の矢印参照)で前側となる面の一側縁に、その先端から長手方向に沿って延びる細長い切欠き19aが形成されている。この切欠き19aの長さは、それが形成されたベーン本体18aの先端に設けられたシール部材18bが図1の二点鎖線で示すようにカム面10aの当接部10a1に接近するまでは、円筒状のロータ16の外周側の肉厚部分内またはそれよりも外側に位置してロータ16の内部室R4に連通されないが、シール部材18bが当接部10a1に接近して吐出側ポンプ作動室R2と吐出ポート14の連通がベーン18により遮断される直前に、切欠き19aの後端がロータ16の一方の内部室R4内に入って(図1参照)、吐出側ポンプ作動室R2を一方の内部室R4に連通する逃げ通路19を形成するような長さになっている。
【0019】
この逃げ通路19は、シール部材18bが当接部10a1を通過した後で、吸入側ポンプ作動室R1と吸入ポート13の連通が開始される直後までの区間において、内部室R4を第3のポンプ作動室R3に連通するものである。なお、この逃げ通路19を形成する切欠き19aは、ベーン本体18aの先端側の回転方向前面の両側縁に設けてもよい。あるいは、この逃げ通路19は、前述したように、ベーン本体18aの先端側の回転方向前面の一側縁に設けた切欠き19aにより形成する代わりに、ベーン本体18aの先端側の回転方向前面の幅方向中央に設けた溝19b(図5の二点鎖線参照)により形成してもよい。なお切欠き19aおよび溝19bの断面形状は、四角に限らず三角やU字状など任意である。
【0020】
図3および図4に示すように、ロータ16の軸部16bには、案内溝16aに達しない挿入孔17が外端部から同軸的に形成され、ハウジング本体11のボス部11aより突出する軸部16bの先端部には軸部16bの回転軸線を中心とする互いに平行な二面取り部16cが形成されている。この二面取り部16cと係合される長穴20aが形成された円形のカップリング20は、直径方向反対側で軸線方向に突出する1対の突起20bを介して内燃機関のカム軸などにより回転され、軸部16bを介してロータ16を回転駆動するものである。中心に給油孔21aが形成されたジョイント21は、先端側の環状溝にOリング23を嵌装し、中間部の環状溝21bにスナップリング22を嵌装して図示のように挿入孔17内に挿入され、この挿入状態ではスナップリング22は挿入孔17からのジョイント21の離脱および軸部16bからのカップリング20の離脱を同時に防止するようになっている。ロータ16の軸部16bにはその外周面から挿入孔17先端の小径部に達する絞り孔17aが形成され、給油孔21aから供給された潤滑油は、軸部16bの回転に伴い、絞り孔17aから第1潤滑溝15aと第2潤滑溝15bに交互に供給され、第1潤滑溝15aに供給された潤滑油はポンプハウジング10内に供給されてロータ16およびベーン18を潤滑するとともにポンプハウジング10とロータ16とベーン18の間のシール性を向上させ、第2潤滑溝15bに供給された潤滑油は支持孔11bと軸部16bの間の軸受面を潤滑する。
【0021】
次に上述した実施の形態の作動の説明をする。カップリング20を介してロータ16が駆動され、図1および図2において反時計回転方向に回転されれば、図8に示す従来技術の場合と同様、ブースタブレーキの真空源などに連通された吸入通路13a内の空気はポンプハウジング10のカム面10aに開口した吸入ポート13から吸入側ポンプ作動室R1内に吸入され、また吐出側ポンプ作動室R2内の空気および第1潤滑溝15aから供給された潤滑油は、内側面10bに開口した吐出ポート14から、出口側にリーフ弁(図示省略)を設けた吐出穴14aを通って外部に放出される。
【0022】
図1に示すように、ベーン18のシール部材18bが当接部10a1の手前にある状態では、シール部材18bが二点鎖線の位置から当接部10a1に接近するにつれて吐出ポート14の開口面積はベーン18により閉じられて減少するので、吐出側ポンプ作動室R2内の圧力は上昇しようとする。しかし吐出ポート14が閉じられる直前に、吐出側ポンプ作動室R2は、前述のように切欠き19aにより形成される逃げ通路19を介してロータ16の一方の内部室R4に連通され、その内部の潤滑油は逃げ通路19から内部室R4内にも放出されるので、吐出側ポンプ作動室R2内の圧力が大きく上昇することはない。ベーン18が実線の位置を越えて吐出ポート14が完全に閉じられた後も、吐出側ポンプ作動室R2は逃げ通路19を介して内部室R4に連通されているので潤滑油の閉じ込みによる圧力上昇が生じることはない。従って、吐出側ポンプ作動室R2内の圧力の上昇により振動や騒音を生じたり、ロータ16の駆動トルクが増大して動力損失を生じたりすることはなく、またベーン18のシール部材18bの離間現象を生じて耐久性を低下されることもない。
【0023】
また図2に示すように、シール部材18bが当接部10a1を通過した状態では、前述のように、吸入側ポンプ作動室R1と吸入ポート13の連通が開始される直後までの間は、逃げ通路19は内部室R4を第3のポンプ作動室R3に連通しているので、上述のように吐出側ポンプ作動室R2から内部室R4内に一旦放出された潤滑油は、その間に逃げ通路19からベーン18の先端側の回転方向前面に放出される。従って、シール部材18bが当接部10a1を通過した後においても、ベーン本体18aの先端に支持されたシール部材18bとカム面10aの間の潤滑は良好に保たれる。なお、シール部材18bが当接部10a1と反対側となる位置から、図1の二点鎖線に示す位置付近に達するまでの間は、切欠き19aの後端がロータ16の内部室R4内に入って吐出側ポンプ作動室R2を内部室R4に連通することはないので、内部室R4内の圧力が上昇して、前述のように吐出ポート14が閉じられる直前よりも後における吐出側ポンプ作動室R2内の圧力の上昇を減少させる作用が損なわれることはない。
【0024】
上述した実施の形態では、ベーン18は、厚板状のベーン本体18aの両端部に頭部18b1と突出部18b2よりなるシール部材18bを支持した例につき説明したが、ベーン18はこれに限られるものではなく、例えば図6に示すように、厚板部とその半分の薄板部からなる1対の半部18cの薄板部同志を重ねたものとし、切欠き19aは各厚板部の回転方向前面の一側縁に形成したものでもよい。あるいはまた図7に示すように、ベーン本体18dの長手方向両端面に横幅方向に形成したU溝18d1にローラ状のシール部材18eを設け、ベーン本体18dには図5のベーン本体18aと同様の切欠き19aを設けるようにしたものでもよい。
【0025】
また上述した実施の形態では、ロータ16は円筒状に形成し、ベーン18はロータ16を直径方向に貫通する1個として円筒状のロータ16の内部を2つの内部室R4に仕切るとともにその両先端をカム面10aに摺動自在に当接させるようにしており、このようにすればベーン18は円筒状のロータ16の外周側の肉厚部分により両持ち支持されるのでベーン18の作動は円滑になされ、またロータ16の内部室R4の容積を充分大きくすることができるので、逃げ通路19を介して連通される吐出側ポンプ作動室R2内の圧力を充分に低下させて、振動および騒音の減少、動力損失の減少および耐久性の低下などの効果を高めることができる。しかしながら本発明はこれに限られるものではなく、ロータにそれぞれ独立して半径方向出入り可能に設けたベーンの先端縁をポンプハウジングのカム面に当接するようにしたバキュームポンプに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるバキュームポンプの一実施形態の吐出終了位置付近における断面図である。
【図2】図1に示す実施の形態の吸入開始位置付近における断面図である。
【図3】図1の3−3断面図である。
【図4】図3の4−4断面図である。
【図5】図1に示す実施の形態に使用するベーンの3面図である。
【図6】本発明に使用するベーンの一変形例を示す側面図である。
【図7】本発明に使用するベーンの別の変形例を示す側面図である。
【図8】従来技術によるバキュームポンプの一例の図2に相当する断面図である。
【符号の説明】
10…ポンプハウジング、10a…カム面、10a1…当接部、10b,10c…内側面、13…吸入ポート、14…吐出ポート、16…ロータ、18…ベーン、18b,18e…先端部(シール部材)19…逃げ通路、19a…切欠き、19b…溝、R1…吸入側ポンプ作動室、R2…吐出側ポンプ作動室、R4…内部室。
Claims (2)
- 両側が閉じられた筒状のポンプハウジングと、このポンプハウジングの内周のカム面の一部に形成された当接部において外周面の一部が円周方向摺動自在に当接されるように偏心して回転自在に支持されて回転駆動される円形のロータと、このロータに径方向摺動可能に案内支持され両側部が前記ポンプハウジングの両内側面と摺動自在に当接されるとともに先端部が前記カム面に摺動自在に当接されるベーンと、前記当接部から前記ロータの回転方向で前側に延びる前記ポンプハウジングのカム面と前記ロータの外周面と前記ベーンの間に形成される吸入側ポンプ作動室と、前記当接部から前記ロータの回転方向で後側に延びる前記ポンプハウジングのカム面と前記ロータの外周面と前記ベーンの間に形成される吐出側ポンプ作動室と、前記吸入側ポンプ作動室側で前記当接部に接近した前記ポンプハウジングの一部の内面に開口された吸入ポートと、前記吐出側ポンプ作動室側で前記当接部に接近した前記ポンプハウジングの一部の内面に開口された吐出ポートよりなるバキュームポンプにおいて、前記ベーンの先端側の回転方向前面には、前記ベーンの先端部が前記当接部に接近して前記吐出側ポンプ作動室と前記吐出ポートの連通が遮断されるのと前後して前記吐出側ポンプ作動室を前記ロータの内部に形成された内部室に連通する逃げ通路を形成する切欠きまたは溝を、前記ロータに対する前記ベーンの摺動方向に沿って形成したことを特徴とするバキュームポンプ。
- 請求項1に記載のバキュームポンプにおいて、前記ロータは円筒状に形成し、前記ベーンは前記ロータを直径方向に貫通する1個として前記円筒状のロータの内部を2つの内部室に仕切るとともにその両先端部を前記カム面に摺動自在に当接させたことを特徴とするバキュームポンプ。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20060301 |