JP3759659B2 - ベーンポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧ベーンポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
ベーンポンプは、一般に放射状に形成されたベーン溝にベーンを出没自在に支持するロータをカムリングが囲ってポンプ室を構成し、カムリングに沿って設けられるサイドプレートが、吐出側ポンプ室に対応する吐出ポートとベーン溝の中心側ベーン背圧室に対応するベーン背圧供給ポートとを備え、サイドプレートの吐出ポートとベーン背圧供給ポートの背後に形成される吐出圧力室を介して圧油が送出されるとともに、吐出圧力室の圧油がベーン背圧供給ポートからベーン背圧室に供給されてベーンを突出させて先端をカムリングの内周カム面に当接してベーンで仕切られたポンプ室を構成する。
【0003】
ベーンは、遠心力とこの背圧により先端がカムリングの内周カム面に当接される。
したがってベーンポンプ始動時のロータの回転数が小さい場合は、遠心力は小さく、ベーン背圧の圧力源である吐出圧も低い。
【0004】
そのためベーンが作動油の粘性等の抵抗で突出が不十分な状態になってポンプ機能を十分果たせず円滑に始動することがきないことがある。
特に低温始動時には、作動油の粘性が高いので、益々その傾向が大きくなる。
【0005】
そこでベーン背圧室やベーン背圧供給ポートの形状を工夫して圧油が流れ易くする例(特公平2−31237号公報,特公平3−1514号公報)があるが、あまり効果的でない。
また別途補助圧力源や油押出し手段を設け、ポンプ始動と同時にベーン背圧室に圧油を積極的に導入する例(特公昭60−29836号公報,実公平7−7588号公報,特開昭62−210274号公報)が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし補助圧力源や油押出し手段を必要とし、構造が複雑で部品点数も多くなり組付け性が悪く、コスト高である。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、簡単な構造でポンプ始動時の吐出圧特性を改善して立上がりを円滑にし、低回転域で十分なポンプ機能を果たすことができるベーンポンプを供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用効果】
上記目的を達成するために、本発明は、放射状に形成されたベーン溝にベーンを出没自在に支持するロータをカムリングが囲ってポンプ室を構成し、前記カムリングに沿って設けられるサイドプレートが、吐出側ポンプ室に対応する吐出ポートとベーン溝の中心側ベーン背圧室に対応するベーン背圧供給ポートとを備え、サイドプレートの吐出ポートとベーン背圧供給ポートの背後に形成される吐出圧力室を介して圧油が送出されるベーンポンプにおいて、前記吐出圧力室にサイドプレート側に付勢されたプレート部材を介装し、前記プレート部材が前記吐出ポートと前記ベーン背圧室を連通する密閉油室を形成するベーンポンプとした。
【0008】
サイドプレート側に付勢されたプレート部材が、吐出ポートとベーン背圧室を連通する密閉油室を形成するので、ポンプ始動時に吐出油は他に送出されることなく密閉油室を経由してベーン背圧室に供給され、瞬時に背圧を高くしてベーンを突出させ確実に先端をカムリングの内周カム面に当接させることができ、 ポンプ始動時の立上がりを円滑にし、低回転域で十分なポンプ機能を果たすことができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記請求項1記載のベーンポンプにおいて、前記プレート部材がバネ部材によりサイドプレート側に付勢されているものであり、構造を簡素化することができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記請求項1または請求項2記載のベーンポンプにおいて、前記プレート部材が付勢されて前記サイドプレートに当接し、前記プレート部材と前記サイドプレートの少なくとも一方の当接面に前記吐出ポートと前記ベーン背圧室を連通する凹溝を形成し、同凹溝を前記密閉油室としたものである。
【0011】
ポンプ始動時は、容積の小さい凹溝が吐出ポートとベーン背圧供給ポートとを連通するので、瞬時に背圧を高くしてベーンを突出させ確実に先端をカムリングの内周カム面に当接させることができ、 ポンプ始動時の立上がりを円滑にすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る一実施の形態について図1ないし図12に図示し説明する。
本実施の形態のベーンポンプ1の正面図を図1に示す。
ベーンポンプ1は、ポンプハウジング2の正面開口をカバー10が覆っており、そのカバー10を外した正面図を図2に示し、カバー10自体の正面図を図3に、ポンプハウジング2自体の正面図を図4および図5に示す。
【0013】
図4および図5に示すようにポンプハウジング2の前部の正面は、円穴3の開口が形成され、同円開口の周囲がカバー10との合わせ面2aとなって合わせ面2aの5か所にボルトネジ孔2bが設けられている。
ポンプハウジング2の後部は正面図において右方に膨出した膨出部2cを有して後面2dは平面をなして周縁所定箇所にボルト孔2eが穿設されている。
【0014】
円穴3の内周面の対向する所定箇所が円弧状に切欠かれて連通油路4,4が形成されており、各連通油路4,4の奥側を内周面に沿って半周に亘って戻り油路5が連通し、戻り油路5は中間部からさらに膨出部2cの斜め上方に延びて後面2dに開口している(図4のハッチング部、図13参照)。
また円穴3の底面の中心部は駆動軸35が貫通する円筒部7が形成され、円筒部7の周囲の環状底面が圧力室8をなし、同圧力室8の一部から膨出部2cの右方に吐出油路9が延びて後面2dに開口している(図5のハッチング部、図15参照)。
【0015】
ポンプハウジング2の正面開口を覆うカバー10は、裏面にポンプハウジング2の合わせ面2aに対応して合わせ面を周縁部に有し、同周縁部にボルトネジ孔2bに対応してボルト孔10bが穿設されている(図3参照)。
カバー10の中心には駆動軸35を軸支する円孔11が穿設され、同円孔11より右方に偏心した位置に円形の吸入口12が正面に開口して形成され、同吸入口12の底部から円弧状に分岐して裏面に沿って吸入油路13が延び、その端部がポンプハウジング2の一対の連通油路4,4に対応する位置に吸入ポート14,14を形成してカバー10の裏面に開口している(図3の点模様部参照)。
【0016】
ポンプハウジング2の円穴3には、皿バネ18,プレート部材15,サイドプレート20,カムリング40が順次嵌装され、カムリング40の内周カム面41内にロータ30が配設され、円筒部7に貫通した駆動軸35がロータ30に嵌着して一体に回転する。
ロータ30は図8に示すように中心に駆動軸35が嵌着される円孔31が穿設され、その周囲に放射状に複数のベーン溝32が形成され、各ベーン溝32の中心側底部はベーン背圧室33を構成しており、ベーン溝32にはベーン34が出没自在に嵌装される。
【0017】
サイドプレート20は、図6に示すように円板状をなし、中央に円筒部7に嵌合する円孔21が穿設され、その周囲にロータ30のベーン溝32の底部のベーン背圧室33に圧油を導入するベーン背圧供給ポートである貫通孔22と凹部23が形成され、さらに貫通孔22と凹部23の周囲に吸入ポート24,24と吐出ポート25,25がそれぞれ対をなして対向した位置に形成されている。
吸入ポート24,24は、外周面まで切欠かれた凹部であり、吐出ポート25,25は円弧状の貫通孔である。
【0018】
一方カムリング40は、図7に示すように略楕円状をした内周カム面41にロータ30が回転自在に嵌合し、ロータ30のベーン溝32に嵌装されたベーン34の先端が内周カム面41に当接してポンプ室を構成する。
【0019】
カムリング40の前面に一対の吸入凹部42,42が対称に形成されるとともに、各吸入凹部42,42の反対の後面に吸入凹部43,43が形成されている(図12参照)。
またカムリング40の別の角度位置には、一対の吐出連通油路44,44が穿設されている。
【0020】
さらにプレート部材15は、前記サイドプレート20に対向して配設され、同サイドプレート20より小径な円板状をしており、図9に示すように中央に嵌合孔16が穿設され、サイドプレート20に対向する前面に中心対称に一対凹溝17,17が形成されている。
【0021】
凹溝17は、サイドプレート20の吐出ポート25に対向する幅広円弧状凹部17aと、貫通孔22に対向する幅狭円弧状凹部17bと、両凹部17a,17bを連通する連通溝17cとからなる。
【0022】
したがってサイドプレート20の後面にプレート部材15が所定位置関係に重ねられると、図10に示すようにサイドプレート20の吐出ポート25とベーン背圧供給ポートである貫通孔22とが凹溝17により連通される。
【0023】
以上の部材の組付けは、まずポンプハウジング2の円穴3の底部の圧力室8に環状の皿バネ18を介装し、円筒部7にプレート部材15の貫通孔16を嵌合してプレート部材15を皿バネ18の上に嵌装する。
プレート部材15は皿バネ18に抗して圧力室8内を軸方向に摺動可能である。
【0024】
次いでサイドプレート20とカムリング40を所定の位置関係で嵌装し、駆動軸35を嵌着したロータ33をベーン34とともにカムリング40の内周カム面41内に嵌装し、駆動軸35を円筒部7に嵌入する。
【0025】
そしてポンプハウジング2の正面開口にカバー10を被せ、駆動軸35の突出した端部を円孔11に嵌合軸支し、ボルト50をボルト孔10bに貫通しボルトネジ孔2bに螺合して緊締する。
【0026】
ポンプハウジング2の後面から突出した駆動軸35が、図示されない内燃機関等の駆動源により駆動され、駆動軸35と一体にロータ30が回転される。
カバー10の吸入口12にはオイルタンクからのオイルが吸入され、ポンプハウジング2の吐出油路9の後面開口からレギュレータバルブに圧油が送られ、レギュレータバルブから圧力調整されて所要箇所にオイルが供給される。
またこの吐出油は油圧が高すぎないよう調整するルブルケーションバルブを介して余剰油がポンプハウジング2の後面開口から戻り油路5に還流する。
【0027】
図12に示すようにカムリング40の前後の吸入凹部42,43にそれぞれ対応してカバー側吸入ポート14と奥側吸入ポート24が位置しており、両吸入ポート14,24を連通油路4がカムリング40の外側を迂回して連通している。
そして連通油路4の奥側および奥側吸入ポート24に戻り油路5が開口して連通している。
【0028】
したがってロータ30が回転して吸入油路13を通って直接カバー側吸入ポート14から吸入ポンプ室に吸入される作動油と、同カバー側吸入ポート14から連通油路4に分かれ迂回し奥側吸入ポート24から吸入ポンプ室に吸入される作動油とがあり、さらに余剰油が戻り油路5から奥側吸入ポート24に還流して吸入ポンプ室に吸入される。
【0029】
カバー側吸入ポート14は吸入油路13から直接作動油が入るので高圧であり、奥側吸入ポート24は作動油の一部が連通油路4を迂回して流速が低下して入るので低圧となるところであるが、本ベーンポンプ1は、この奥側吸入ポート24に余剰油が直接流れ込み油圧を上げている。
【0030】
したがって吸入ポンプ室の前後の吸入ポート14,24の圧力を平衡させて吸入効率を向上させることができる。
また余剰油は連通油路4を迂回する作動油の一部に合流するので、流れ抵抗の激変はなく脈動等によるキャビテイションや異音を誘発するおそれはない。
【0031】
そして図13および図14に示すように吐出側ポンプ室からは前後両側に圧油が吐出し、後方(奥側)へは直接吐出ポート25に吐出し、前方に吐出した圧油はカバー10の後面に形成された溝条の吐出ポートからカムリング40の吐出連通油路44を迂回して吐出ポート25に合流する。
【0032】
ポンプ始動時には、皿バネ18により押圧されてプレート部材15がサイドプレート20の後面に当接しており、前記したように吐出ポート25にプレート部材15の前面の凹部17aが対向して凹溝17が密閉した油室を構成して吐出ポート25と貫通孔22とを連通し、圧油は吐出ポート25から狭い凹溝17を経て貫通孔22(図12参照)に入り、貫通孔22からベーン背圧室33に圧油が供給される。
【0033】
したがってポンプ始動時には、吐出油は他に供給されることなく全て密閉油室の凹溝17を経由してベーン背圧室33に供給され、瞬時に背圧を高くしてベーン34を突出させ確実に先端をカムリング40の内周カム面41に当接させることができ、 ポンプ始動時の立上がりを円滑にし、低回転域で十分なポンプ機能を果たすことができる。
【0034】
ロータ30の回転速度が高くなると、吐出圧も高くなり皿バネ18に抗してプレート部材15が押圧されて図15に2点鎖線で示すように奥側に移動し吐出油路9と吐出ポート25とが連通して圧油が外部に供給される。
【0035】
このように皿バネ18とプレート部材15を追加する部品点数の少なく組付け性が良い簡単な構造で、ポンプの始動を円滑に行うようにすることができ、コストを低減することができる。
低温始動時にあってオイルの高い粘性がベーン34の動きを妨げてもベーン背圧は瞬時に高圧となってベーン34を十分突出させることができ、円滑な始動が可能である。
【0036】
以上の実施の形態では、プレート部材15に凹溝17を形成したが、サイドプレートの後面に凹溝を設けてもよい。
その例を図16ないし図18に図示し説明する。
サイドプレート70は、図16および図17に示すように概ね前記サイドプレート20と同様に円孔71,貫通孔72,凹部73,吸入ポート74,吐出ポート75が形成されている。
【0037】
そして後面に吐出ポート75と貫通孔72とを連通する凹溝76が形成されている。なおプレート部材80は、前面に凹溝を有しない平面をなしており、その他の部材は前記ベーンポンプ1と同じであるので、同じ部材は同じ符号を用いる。
【0038】
図18に示すようにポンプ始動時には皿バネ18によりプレート部材80はサイドプレート70の後面に押圧当接されており、この状態で吐出ポート75は狭い凹溝76を介して貫通孔72に連通し、貫通孔72からロータ30のベーン背圧室33に吐出圧油が導入される。
【0039】
したがってポンプ始動時には、吐出油は全て密閉油室の凹溝76を経由してベーン背圧室33に供給され、瞬時に背圧を高くしてベーン34を突出させ確実に先端をカムリング40の内周カム面41に当接させることができ、 ポンプ始動時の立上がりを円滑にし、低回転域で十分なポンプ機能を果たすことができる。
構造も簡単で組付け性が良く低コストである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るベーンポンプの正面図である。
【図2】同ベーンポンプのカバーを外した状態を示す正面図である。
【図3】カバーの正面図である。
【図4】ポンプハウジングの戻り油路を示す正面図である。
【図5】ポンプハウジングの吐出油路を示す正面図である。
【図6】サイドプレートの正面図である。
【図7】カムリングの正面図である。
【図8】ロータの正面図である。
【図9】プレート部材の正面図である。
【図10】プレート部材とサイドプレートとを重ねた状態を示す正面図である。
【図11】ベーンポンプの組付け状態を示す一部省略した正面図である。
【図12】図11における XII−XII 線に沿って截断した断面図である。
【図13】図11におけるXIII−XIII線に沿って截断した断面図である。
【図14】同要部拡大図である。
【図15】図11におけるXV−XV線に沿って截断した断面図である。
【図16】別の実施の形態におけるサイドプレートの正面図である。
【図17】同サイドプレートの裏面図である。
【図18】該ベーンポンプの要部断面図である。
【符号の説明】
1…ベーンポンプ、2…ポンプハウジング、3…円穴、4…連通油路、5…戻り油路、7…円筒部、8…圧力室、9…吐出油路、
10…カバー、11…円孔、12…吸入口、13…吸入油路、14…吸入ポート、
15…プレート部材、16…嵌合孔、17…凹溝、18…皿バネ、
20…サイドプレート、21…円孔、22…貫通孔、23…凹部、24…吸入ポート、25…吐出ポート、
30…ロータ、31…円孔、32…ベーン溝、33…ベーン背圧室、34…ベーン、
40…カムリング、41…カム面、42,43…吸入凹部、44…吐出連通油路、
50…ボルト、
70…サイドプレート、71…円孔、72…貫通孔、73…凹部、74…吸入ポート、75…吐出ポート、76…凹溝、
80…プレート部材。
Claims (3)
- 放射状に形成されたベーン溝にベーンを出没自在に支持するロータをカムリングが囲ってポンプ室を構成し、前記カムリングに沿って設けられるサイドプレートが、吐出側ポンプ室に対応する吐出ポートとベーン溝の中心側ベーン背圧室に対応するベーン背圧供給ポートとを備え、サイドプレートの吐出ポートとベーン背圧供給ポートの背後に形成される吐出圧力室を介して圧油が送出されるベーンポンプにおいて、
前記吐出圧力室にサイドプレート側に付勢されたプレート部材を介装し、
前記プレート部材が前記吐出ポートと前記ベーン背圧室を連通する密閉油室を形成することを特徴とするベーンポンプ。 - 前記プレート部材は、バネ部材によりサイドプレート側に付勢されていることを特徴とする請求項1記載のベーンポンプ。
- 前記プレート部材が付勢されて前記サイドプレートに当接し、前記プレート部材と前記サイドプレートの少なくとも一方の当接面に前記吐出ポートと前記ベーン背圧室を連通する凹溝を形成し、同凹溝を前記密閉油室としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のベーンポンプ。
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