JP2004332544A - 内燃機関の燃料噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】針弁の上面側からシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって針弁を開閉するように構成した燃料噴射装置であって、針弁閉弁時における閉弁速度を増大しつつ燃料の圧力損失を低減して、燃料噴射終了時における噴射の切れを良化し、燃焼を改善して熱効率を向上せしめるとともに燃料消費率を低減し、さらには炭化水素や黒煙の排出量を低減せしめ得る内燃機関の燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】燃料噴射弁の針弁を、針弁開閉手段により該針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成された内燃機関の燃料噴射装置において、前記燃料噴射弁は、前記シート部に該シート部上流側に形成された上部通路よりも流路面積が縮小されて燃料の流速を増大せしめる動圧生成部を形成してなることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】燃料噴射弁の針弁を、針弁開閉手段により該針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成された内燃機関の燃料噴射装置において、前記燃料噴射弁は、前記シート部に該シート部上流側に形成された上部通路よりも流路面積が縮小されて燃料の流速を増大せしめる動圧生成部を形成してなることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関、特にディーゼル機関の燃料噴射装置に適用され、燃料噴射弁の針弁を針弁開閉手段により該針弁の上面側からシート部側に向かう閉弁力と該シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成された内燃機関の燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼル機関においては、燃料ポンプにより高圧に加圧された高圧燃料を各シリンダ共通の燃料コモンレール(蓄圧装置)に蓄圧し、該コモンレールに接続されている各シリンダの燃料噴射弁を電磁式アクチュエータにより開閉制御することにより、高精度の燃料噴射制御を可能として、機関の高出力化、低燃費(低燃料消費率)化及びNOx排出量あるいは黒煙排出量の抑制を図っている。
【0003】
かかる燃料コモンレールを備えた蓄圧式燃料噴射装置においては、一般に、コモンレールと燃料噴射弁との間の燃料通路をオン―オフ制御式あるいは変位制御の電磁アクチュエータにより、機関運転条件に適応した開閉タイミング即ち噴射タイミングで以って開閉するように構成されており、その1つとして特許文献1(特開2001−234830号公報)の技術がある。
【0004】
かかる先行技術においては、燃料噴射弁の針弁を、電磁アクチュエータによって駆動される針弁開閉手段により針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成している。
そしてかかる先行技術においては、パイロット制御室の作動流体出口を開くことにより針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力を開放し前記シート部側から上面側に向かう開弁力によって針弁を開弁して燃料噴射を行い、該パイロット制御室の作動流体出口を閉じることにより針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力を発生させて針弁を閉弁して燃料噴射を遮断している。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−234830号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記特許文献1の先行技術においては、次のような問題点を有している。
すなわち、かかる先行技術においては、針弁の閉弁作動時には、前記閉弁力の作用側である針弁の上面側の面積と反閉弁力側である針弁の下面側(シート部側)の面積とが同一であるため、針弁の下部が臨む油溜めを燃料入口に連通される上部油溜めと該針弁により噴孔との間を開閉される下部油溜めとに隔壁により区画して該隔壁に針弁との微小隙間を存して連通させ、前記上部油溜めから該微小隙間を通って前記下部油溜めに燃料が流動する際の圧力損失により前記閉弁力を発生せしめている。
【0007】
このため、かかる先行技術にあっては、針弁の閉弁力を前記圧力損失により生起せしめているため、針弁閉弁時における閉弁速度が小さく針弁の閉弁が緩慢になされて燃料噴射終了時における噴射の切れが良好でなくなる。そしてかかる燃料噴射状態の悪化により、燃焼状態が悪化して熱効率が低下するとともに燃料消費率が増大し、さらには炭化水素や黒煙の排出量の増大をみる。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、燃料噴射弁の針弁をその上面側からシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成してなる燃料噴射装置であって、針弁閉弁時における閉弁速度を増大しつつ燃料の圧力損失を低減して、燃料噴射終了時における噴射の切れを良化し、燃焼を改善して熱効率を向上せしめるとともに燃料消費率を低減し、さらには炭化水素や黒煙の排出量を低減せしめ得る内燃機関の燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる課題を解決するため、請求項1記載の発明として、燃料噴射弁の針弁を、針弁開閉手段により該針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成された内燃機関の燃料噴射装置において、前記燃料噴射弁は、前記シート部に該シート部上流側に形成された上部通路よりも流路面積が縮小されて燃料の流速を増大せしめる動圧生成部を形成してなることを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置を提案する。
【0010】
請求項1において、好ましくは請求項2のように、前記針弁の前記シート部を含む先端部を複数段の段付き形状に形成し、前記動圧生成部を前記段付きの先端部と前記ノズル本体との間の複数箇所に形成する。
【0011】
請求項3ないし請求項5記載の発明は請求項1ないし2の発明に係る燃料噴射弁を3種類の内燃機関用燃料噴射装置に適用したものであり、請求項3の発明は、燃料噴射弁の針弁を、針弁開閉手段により該針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成された内燃機関の燃料噴射装置において、前記針弁開閉手段は、前記針弁の反シート部側端面が臨み作動流体が給排されるパイロット制御室と、該パイロット制御室の作動流体出口を開閉して該パイロット制御室の作動流体圧力と前記油溜めに供給される燃料圧力との差により前記針弁の変位を制御するパイロット弁と、該パイロット弁を変位せしめる電磁アクチュエータとを備えてなることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は請求項3において、前記針弁は、前記シート部側に向かう閉弁力を生起する上部側の断面積を前記油溜めを含む下部側の断面積よりも大きく形成した段付き針弁に構成されてなることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は請求項3において、前記パイロット制御室に作動流体を供給する作動流体供給手段を、前記油溜めに燃料を供給する燃料供給手段とは独立して設置したことを特徴とする。
【0014】
かかる発明によれば、針弁の閉弁作動時においては、閉弁力の作用側である針弁の上面側の面積と反閉弁力側である針弁とノズル本体とのシート部側つまり針弁下面側の面積とが同一である場合には、該針弁の上面側から閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P1とシート部側から反閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P2との圧力差P1−P2により針弁が閉弁せしめられることとなる。
【0015】
然るにかかる発明によれば、前記シート部に該シート部上流側に形成された油溜めを含む上部通路よりも流路面積が縮小された動圧生成部を形成したので、該動圧生成部における燃料の流速が増大せしめられて該流速増大による動圧増大相当分だけシート部側から反閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P2が減少し、この結果、前記圧力差P1−P2つまり針弁の閉弁力が増大して針弁の閉弁速度が増大する。
これにより、燃料噴射終了時における噴射の切れが良化して燃料状態が改善され、熱効率が向上するとともに燃料消費率が低減され、さらには炭化水素や黒煙の排出量の低減も可能となる。
【0016】
また、請求項2のように構成すれば、針弁の前記シート部を含む先端部を複数段の段付き形状に形成して、前記動圧生成部を複数箇所に形成したので、該動圧生成部による流速増大および該動圧増大に伴う針弁の閉弁力増大効果がさらに大きくなり、燃料噴射終了時における噴射の切れのさらなる良化が得られる。
【0017】
また、請求項3乃至請求項5のように構成すれば、閉弁力が増大し、燃料噴射終了時における噴射の切れの改善が図れる。
【0018】
さらに、請求項1〜2のように構成された針弁開閉手段を備えた燃料噴射弁を、請求項3ないし請求項5のように、電磁アクチュエータによって駆動されるパイロット弁よりパイロット制御室を開閉する蓄圧式燃料噴射装置に適用すれば、より高い燃料圧力が得られるため前記動圧生成部による流速増大およびこれに伴う針弁の閉弁力の増大効果がさらに大きくなり、噴射の切れの良好な安定した燃料噴射をなすことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載される構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載が無い限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0020】
図1及び図2は本発明の実施例に係るディーゼル機関用燃料噴射装置における燃料噴射弁の先端部(図3、4、5の部)拡大断面図で、図1は針弁の開弁時、図2は針弁の閉弁時を示す。図3は前記燃料噴射弁を備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第1例を示す要部構成図、図4は第2例を示す要部構成図、図5は第3例を示す要部構成図である。
【0021】
本発明に係る燃料噴射弁を備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第1例を示す図3において、14は燃料蓄圧管(燃料コモンレール)、15は高圧型の燃料ポンプ、16は燃料タンク、17は燃料管で、該燃料タンク16内の燃料を燃料ポンプ15にて高圧に加圧し燃料管17を通して燃料蓄圧管14に送り込み、該燃料蓄圧管14に蓄圧するようになっている。
【0022】
1は燃料噴射弁で次のように構成されている。
5はノズル本体、4は該ノズル本体5の先端部に複数個穿孔された噴孔である。9は該ノズル本体5内に環状に形成された油溜めで、前記燃料蓄圧管14から燃料通路55を通して高圧燃料が導入されている。
2は該ノズル本体5内に往復摺動可能に嵌合された針弁であり(該針弁2の詳細は後述)、該針弁2の先端部及び前記ノズル本体5に形成されたシート部02が着脱することにより、前記油溜め9とノズル本体5の先端通路6と噴孔4とを連通及び遮断するようになっている。
【0023】
56は前記ノズル本体5内の前記針弁2外周部位に形成された環状溝で、作動油通路57を介して前記燃料蓄圧管14に接続され、該燃料蓄圧管14から作動油として高圧の燃料が導入されている。該環状溝56には、前記針弁2の大径部2fの外周面が臨み、該大径部2fの外周面に刻設された制御用切欠部12(詳細は後述)に前記燃料蓄圧管14から環状溝56を経て作動用燃料が導入されるようになっている。
【0024】
19は前記ノズル本体5に前記針弁2の背面18が臨んで形成されたパイロット制御室である。
そして、図3(A)及び(B)に示すように、前記針弁2の大径部2f外周面には一定長さに亘って幅Wなる制御用切欠部12が形成され、該針弁2の軸方向移動により前記環状溝56とパイロット制御室19とが該制御用切欠部12を介して連通可能となっている。
【0025】
31はパイロット弁で、前記ノズル本体5の端部に穿孔された前記パイロット制御室19のパイロット油出口穴21を開閉するものである。即ち、該パイロット弁31は、平板状の当接面31bを前記ノズル本体5の端部に形成された弁座面5cに着脱することにより、前記パイロット制御室19のパイロット油出口穴21を開閉するようになっている。
30は電磁アクチュエータであり、次のように構成されている。
33は磁石(電磁石)で、磁石33への通電によって前記パイロット弁31が往復動変位せしめられるようになっている。34は前記パイロット弁31の支持部31aとアクチュエータの本体部35との間に介装されたばねで、前記パイロット弁31を閉弁する方向に付勢されている。
【0026】
かかる構成からなるディーゼル機関の燃料噴射装置において、前記針弁2が閉じた状態においては、パイロット弁31は全閉あるいは微小開度となっており、針弁2の大径部2fに形成された制御用切欠部12はこれの端面12aと前記ノズル本体5の前記パイロット制御室19側の平面11aとの間に形成されたXlなる軸方向長さにおいて前記パイロット制御室19に連通されている。
そして、前記環状溝56内の作動燃料が制御用切欠部12を経てパイロット制御室19に入り、前記針弁2の端面18に作用することにより針弁2及びノズル本体5のシート部02は圧着され、これにより、前記針弁2は高圧下においても高いシール性で以って噴孔4側を遮断して無噴射状態が保持される。
【0027】
前記電磁アクチュエータ30の磁石33電流を付与しパイロット弁31をリフトさせて前記パイロット油出口穴21を開口すると、前記針弁2に作用するパイロット制御室19内の作動油による力と油溜め9内の燃料による力とが平衡する位置即ち前記制御用切欠部12の開口面積とパイロット弁31の開口面積(パイロット油出口穴21の開口面積)とが等しくなる位置にて針弁2が整定される。かかる動作により、図1(A)に示すように針弁2が開弁され、油溜め9内の燃料が先端通路6を経て噴孔4からシリンダ内に噴射される。
【0028】
本発明は前記のような電磁制御蓄圧式燃料噴射装置に適用される燃料噴射弁の改良に関するものである。
本発明に係る燃料噴射弁1の詳細を示す図1〜2において、2は針弁、2fは該針弁2の大径部、2aは該大径部2fの先端側に連設された小径部である。2gは該小径部2aに連設された先端部で、ノズル本体5とのシート部02を構成する。
5はノズル本体、4は該ノズル本体5の先端部に複数個穿孔された噴孔である。9は油溜め、6は前記噴孔に連通される先端部通路、26は該油溜め9と先端部通路6とを接続するシート部上部通路である。
【0029】
前記針弁2の先端部2gは複数段の段付き形状に形成され、また前記ノズル本体5内の前記シート部上部通路26と先端部通路6との間は、前記針弁2の先端部2gに対応した段付き形状のシート部02を構成する。
前記針弁2とノズル本体5とのシート部02において、2dは針弁シート面、3cはノズルシート面で、図2に示されるように、針弁2の閉弁時には該針弁シート面2dがノズルシート面3cに着座する。
そして、前記のように段付き形状に形成された針弁2の先端部2gは、前記針弁シート面2dの上流側(油溜め9側)に円筒面2c及び該円筒面2cと前記小径部2aとを結合する円錐面2bが形成され、前記針弁シート面2dの下流側(噴孔4側)に小径の円筒面2eが形成されてなる。
【0030】
一方、前記針弁2の先端部2gに対応したノズル本体5の段付き形状のシート部02は、前記ノズルシート面3cの上流側(油溜め9側)に円筒内面3b及び該円筒内面3bと前記シート部上部通路26の周面とを結合する円錐内面3aが形成され、前記ノズルシート面3cの下流側(噴孔4側)が前記先端部通路6の周面に結合されてなる。
かかる構成により、図1に示す針弁2の開弁時には、上流側(油溜め9側)から順に、針弁2の円錐面2bとノズル本体5の円錐内面3aとの間の通路面積A1なる絞り通路51、針弁2の円筒面2cとノズル本体5の円筒内面3bとの間の通路面積A2なる絞り通路52、針弁2の針弁シート面2dとノズル本体5のノズルシート面3cとの間の通路面積A3なる絞り通路53、針弁2の円筒面2eとノズル本体5の先端部通路6周面との間の通路面積A4なる絞り通路54が夫々形成される。
【0031】
前記絞り通路51〜54の通路面積Aは、図1に示される針弁2の開弁状態において、針弁シート面2dとノズルシート面3cとの間の通路面積A3が最小で、好ましくはA3<A4<A2<A1のように構成する。
これにより、前記シート部上部通路26から通路面積A1の絞り通路51、通路面積A2の絞り通路52、最小通路面積A3の絞り通路53、及び通路面積A4の絞り通路54の、4段の絞り通路からなる動圧生成部を構成する。
【0032】
かかる燃料噴射弁1備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置において、前記のように、図3における電磁アクチュエータ30の磁石33に電流を付与しパイロット弁31をリフトさせて前記パイロット油出口穴21を開口すると、針弁2に作用するパイロット制御室19内の作動油による力と油溜め9内の燃料による力とが平衡する位置即ち前記制御用切欠部12の開口面積とパイロット弁31の開口面積(パイロット油出口穴21の開口面積)とが等しくなる位置まで針弁2が開弁されてリフトし、油溜め9内の燃料が、シート部上部通路26、絞り通路51〜54及び先端通路6を経て噴孔4からシリンダ内に噴射される。
【0033】
前記燃料噴射後、針弁2が下降しての閉弁作動時においては、閉弁力の作用側である針弁2の上面側の面積つまり大径部2fの面積と、反閉弁力側である前記油溜め9からシート部上部通路26、絞り通路51〜54を経て先端通路6に至る針弁2下面側の面積とが同一であることから、該針弁2の上面側から閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P1と針弁2下面側から反閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P2との圧力差P1−P2により針弁2が閉弁せしめられることとなる。
【0034】
然るにかかる実施例によれば、前記針弁2とノズル本体5とのシート部02に該シート部02上流側に形成された油溜め9及びシート部上部通路26よりも流路面積が縮小された4段の絞り通路51〜54からなる動圧生成部を形成したので、前記油溜め9から噴孔4に向かう燃料流動時に該動圧生成部において燃料の流速が増大せしめられる。
そして、かかる絞り通路51〜54からなる動圧生成部における流速増大によって動圧が増大し、該動圧増大相当分だけ前記シート部02側つまり針弁2の下面側から反閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P2が減少し、この結果、前記圧力差P1−P2つまり針弁2の閉弁力が増大して該針弁2の閉弁速度が増大する。
【0035】
即ち、前記反閉弁方向に作用する燃料圧力つまり静圧P2は、
P2=P−P0=P−(γu2/2)
ここで、P:燃料の全圧
P0:燃料の動圧
γ:燃料の密度
u:燃料の流速
前記絞り通路51〜54からなる動圧生成部においては、流速uの増大により動圧P0=(γu2/2)が増大し、これによって静圧P2=P−P0つまり前記反閉弁方向に作用する燃料圧力が減少する。
これにより、燃料噴射終了時における噴射の切れが良化して燃料状態が改善される。
【0036】
図4に示される電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第2例においては、前記針弁2の大径部と小径部との段差が臨むドレン室64を設け、前記段差部に油溜め9方向からの反閉弁方向に作用する燃料圧力が作用しないようにして、針弁2の閉弁力を増大している。62は前記ドレン室64からのドレン抽出用のドレン孔である。
その他の構成は図3に示される第1例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0037】
図5に示される電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第3例において、22は共通油管、23は作動油ポンプ、25は作動油タンク、24は作動油管で、該作動油タンク25内の作動油を作動油ポンプ23により作動油管24を通して共通油管22に送り込み、該共通油管22に収容するようになっている。
かかる第2例において、前記共通油管22内のパイロット油供給圧力が前記燃料蓄圧管14内の燃料圧力よりも大きく設定されているので、前記共通油管22内の作動油は油室13及び制御用切欠部12を経てパイロット制御室19に入り、前記針弁2の端面18に作用することにより針弁2のシート部02は前記パイロット油供給圧力と燃料圧力との圧力差によってノズル本体5のノズルシート面3cに押し付けられ、無噴射状態が保持される。
【0038】
針弁2の開弁時には、前記電磁アクチュエータ30の磁石33に電流を付与してパイロット弁31をリフトさせ前記パイロット油出口穴21を開口すると、前記針弁2に作用するパイロット制御室19内の作動油による力と針弁室9内の燃料による力とのとが平衡する位置即ち前記制御用切欠部12の開口面積とパイロット弁31の開口面積(パイロット油出口穴21の開口面積)とが等しくなる位置にて針弁2が整定されることにより、針弁2が開弁される。
【0039】
かかる電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第3例においては、針弁2を開閉操作する作動油系統を燃料系統とは別個に設けているため、針弁2開閉操作用作動油の圧力を燃料の供給圧力よりも高くすることにより針弁2の閉弁力を増大し、高速にて針弁2を閉弁することができる。
その他の構成は図3に示される第1例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0040】
【発明の効果】
以上記載のごとく本発明によれば、針弁及びノズル本体のシート部に該シート部上流側に形成された油溜めを含む上部通路よりも流路面積が縮小された動圧生成部を形成したので、該動圧生成部における燃料の流速が増大せしめられて該流速増大による動圧増大相当分だけシート部側から反閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)が減少し、針弁の閉弁力が増大して針弁の閉弁速度が増大する。
これにより、燃料噴射終了時における噴射の切れが良化して燃料状態が改善され、熱効率が向上するとともに燃料消費率が低減され、さらには炭化水素や黒煙の排出量の低減も可能となる。
また、請求項2のように構成すれば、針弁のシート部を含む先端部を複数段の段付き形状に形成し、前記動圧生成部を複数箇所に形成したので、該動圧生成部による流速増大および該動圧増大に伴う針弁の閉弁力増大効果がさらに大きくなり、燃料噴射終了時における噴射の切れのさらなる良化が得られる。
【0041】
さらに、請求項1〜2のように構成された針弁開閉手段を備えた燃料噴射弁を、請求項3ないし請求項5のように、電磁アクチュエータによって駆動されるパイロット弁よりパイロット制御室を開閉する蓄圧式燃料噴射装置に適用すれば、より高い燃料圧力が得られるため前記動圧生成部による流速増大およびこれに伴う針弁の閉弁力の増大効果がさらに大きくなり、噴射の切れの良好な安定した燃料噴射をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るディーゼル機関用燃料噴射装置における燃料噴射弁の先端部(図3、4、5のZ部)拡大断面図である。
【図2】針弁の閉弁時を示す燃料噴射弁の先端部拡大断面図である。
【図3】前記燃料噴射弁を備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第1例を示す要部構成図である。
【図4】前記燃料噴射弁を備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第2例を示す要部構成図である。
【図5】前記燃料噴射弁を備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第3例を示す要部構成図である。
【符号の説明】
1 燃料噴射弁
2 針弁
02 シート部
2a 小径部
2d 針弁シート面
2f 大径部
2g 先端部
3c ノズルシート面
4 噴孔
5 ノズル本体
9 油溜め
12 制御用切欠部
14 燃料蓄圧管
15 燃料ポンプ
19 パイロット制御室
21 パイロット油出口穴
22 共通油管
23 作動油ポンプ
26 シート部上部通路
31 パイロット弁
34 ばね
51、52、53、54 絞り通路
55 燃料通路
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関、特にディーゼル機関の燃料噴射装置に適用され、燃料噴射弁の針弁を針弁開閉手段により該針弁の上面側からシート部側に向かう閉弁力と該シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成された内燃機関の燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼル機関においては、燃料ポンプにより高圧に加圧された高圧燃料を各シリンダ共通の燃料コモンレール(蓄圧装置)に蓄圧し、該コモンレールに接続されている各シリンダの燃料噴射弁を電磁式アクチュエータにより開閉制御することにより、高精度の燃料噴射制御を可能として、機関の高出力化、低燃費(低燃料消費率)化及びNOx排出量あるいは黒煙排出量の抑制を図っている。
【0003】
かかる燃料コモンレールを備えた蓄圧式燃料噴射装置においては、一般に、コモンレールと燃料噴射弁との間の燃料通路をオン―オフ制御式あるいは変位制御の電磁アクチュエータにより、機関運転条件に適応した開閉タイミング即ち噴射タイミングで以って開閉するように構成されており、その1つとして特許文献1(特開2001−234830号公報)の技術がある。
【0004】
かかる先行技術においては、燃料噴射弁の針弁を、電磁アクチュエータによって駆動される針弁開閉手段により針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成している。
そしてかかる先行技術においては、パイロット制御室の作動流体出口を開くことにより針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力を開放し前記シート部側から上面側に向かう開弁力によって針弁を開弁して燃料噴射を行い、該パイロット制御室の作動流体出口を閉じることにより針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力を発生させて針弁を閉弁して燃料噴射を遮断している。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−234830号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記特許文献1の先行技術においては、次のような問題点を有している。
すなわち、かかる先行技術においては、針弁の閉弁作動時には、前記閉弁力の作用側である針弁の上面側の面積と反閉弁力側である針弁の下面側(シート部側)の面積とが同一であるため、針弁の下部が臨む油溜めを燃料入口に連通される上部油溜めと該針弁により噴孔との間を開閉される下部油溜めとに隔壁により区画して該隔壁に針弁との微小隙間を存して連通させ、前記上部油溜めから該微小隙間を通って前記下部油溜めに燃料が流動する際の圧力損失により前記閉弁力を発生せしめている。
【0007】
このため、かかる先行技術にあっては、針弁の閉弁力を前記圧力損失により生起せしめているため、針弁閉弁時における閉弁速度が小さく針弁の閉弁が緩慢になされて燃料噴射終了時における噴射の切れが良好でなくなる。そしてかかる燃料噴射状態の悪化により、燃焼状態が悪化して熱効率が低下するとともに燃料消費率が増大し、さらには炭化水素や黒煙の排出量の増大をみる。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、燃料噴射弁の針弁をその上面側からシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成してなる燃料噴射装置であって、針弁閉弁時における閉弁速度を増大しつつ燃料の圧力損失を低減して、燃料噴射終了時における噴射の切れを良化し、燃焼を改善して熱効率を向上せしめるとともに燃料消費率を低減し、さらには炭化水素や黒煙の排出量を低減せしめ得る内燃機関の燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる課題を解決するため、請求項1記載の発明として、燃料噴射弁の針弁を、針弁開閉手段により該針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成された内燃機関の燃料噴射装置において、前記燃料噴射弁は、前記シート部に該シート部上流側に形成された上部通路よりも流路面積が縮小されて燃料の流速を増大せしめる動圧生成部を形成してなることを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置を提案する。
【0010】
請求項1において、好ましくは請求項2のように、前記針弁の前記シート部を含む先端部を複数段の段付き形状に形成し、前記動圧生成部を前記段付きの先端部と前記ノズル本体との間の複数箇所に形成する。
【0011】
請求項3ないし請求項5記載の発明は請求項1ないし2の発明に係る燃料噴射弁を3種類の内燃機関用燃料噴射装置に適用したものであり、請求項3の発明は、燃料噴射弁の針弁を、針弁開閉手段により該針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成された内燃機関の燃料噴射装置において、前記針弁開閉手段は、前記針弁の反シート部側端面が臨み作動流体が給排されるパイロット制御室と、該パイロット制御室の作動流体出口を開閉して該パイロット制御室の作動流体圧力と前記油溜めに供給される燃料圧力との差により前記針弁の変位を制御するパイロット弁と、該パイロット弁を変位せしめる電磁アクチュエータとを備えてなることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は請求項3において、前記針弁は、前記シート部側に向かう閉弁力を生起する上部側の断面積を前記油溜めを含む下部側の断面積よりも大きく形成した段付き針弁に構成されてなることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は請求項3において、前記パイロット制御室に作動流体を供給する作動流体供給手段を、前記油溜めに燃料を供給する燃料供給手段とは独立して設置したことを特徴とする。
【0014】
かかる発明によれば、針弁の閉弁作動時においては、閉弁力の作用側である針弁の上面側の面積と反閉弁力側である針弁とノズル本体とのシート部側つまり針弁下面側の面積とが同一である場合には、該針弁の上面側から閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P1とシート部側から反閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P2との圧力差P1−P2により針弁が閉弁せしめられることとなる。
【0015】
然るにかかる発明によれば、前記シート部に該シート部上流側に形成された油溜めを含む上部通路よりも流路面積が縮小された動圧生成部を形成したので、該動圧生成部における燃料の流速が増大せしめられて該流速増大による動圧増大相当分だけシート部側から反閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P2が減少し、この結果、前記圧力差P1−P2つまり針弁の閉弁力が増大して針弁の閉弁速度が増大する。
これにより、燃料噴射終了時における噴射の切れが良化して燃料状態が改善され、熱効率が向上するとともに燃料消費率が低減され、さらには炭化水素や黒煙の排出量の低減も可能となる。
【0016】
また、請求項2のように構成すれば、針弁の前記シート部を含む先端部を複数段の段付き形状に形成して、前記動圧生成部を複数箇所に形成したので、該動圧生成部による流速増大および該動圧増大に伴う針弁の閉弁力増大効果がさらに大きくなり、燃料噴射終了時における噴射の切れのさらなる良化が得られる。
【0017】
また、請求項3乃至請求項5のように構成すれば、閉弁力が増大し、燃料噴射終了時における噴射の切れの改善が図れる。
【0018】
さらに、請求項1〜2のように構成された針弁開閉手段を備えた燃料噴射弁を、請求項3ないし請求項5のように、電磁アクチュエータによって駆動されるパイロット弁よりパイロット制御室を開閉する蓄圧式燃料噴射装置に適用すれば、より高い燃料圧力が得られるため前記動圧生成部による流速増大およびこれに伴う針弁の閉弁力の増大効果がさらに大きくなり、噴射の切れの良好な安定した燃料噴射をなすことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載される構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載が無い限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0020】
図1及び図2は本発明の実施例に係るディーゼル機関用燃料噴射装置における燃料噴射弁の先端部(図3、4、5の部)拡大断面図で、図1は針弁の開弁時、図2は針弁の閉弁時を示す。図3は前記燃料噴射弁を備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第1例を示す要部構成図、図4は第2例を示す要部構成図、図5は第3例を示す要部構成図である。
【0021】
本発明に係る燃料噴射弁を備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第1例を示す図3において、14は燃料蓄圧管(燃料コモンレール)、15は高圧型の燃料ポンプ、16は燃料タンク、17は燃料管で、該燃料タンク16内の燃料を燃料ポンプ15にて高圧に加圧し燃料管17を通して燃料蓄圧管14に送り込み、該燃料蓄圧管14に蓄圧するようになっている。
【0022】
1は燃料噴射弁で次のように構成されている。
5はノズル本体、4は該ノズル本体5の先端部に複数個穿孔された噴孔である。9は該ノズル本体5内に環状に形成された油溜めで、前記燃料蓄圧管14から燃料通路55を通して高圧燃料が導入されている。
2は該ノズル本体5内に往復摺動可能に嵌合された針弁であり(該針弁2の詳細は後述)、該針弁2の先端部及び前記ノズル本体5に形成されたシート部02が着脱することにより、前記油溜め9とノズル本体5の先端通路6と噴孔4とを連通及び遮断するようになっている。
【0023】
56は前記ノズル本体5内の前記針弁2外周部位に形成された環状溝で、作動油通路57を介して前記燃料蓄圧管14に接続され、該燃料蓄圧管14から作動油として高圧の燃料が導入されている。該環状溝56には、前記針弁2の大径部2fの外周面が臨み、該大径部2fの外周面に刻設された制御用切欠部12(詳細は後述)に前記燃料蓄圧管14から環状溝56を経て作動用燃料が導入されるようになっている。
【0024】
19は前記ノズル本体5に前記針弁2の背面18が臨んで形成されたパイロット制御室である。
そして、図3(A)及び(B)に示すように、前記針弁2の大径部2f外周面には一定長さに亘って幅Wなる制御用切欠部12が形成され、該針弁2の軸方向移動により前記環状溝56とパイロット制御室19とが該制御用切欠部12を介して連通可能となっている。
【0025】
31はパイロット弁で、前記ノズル本体5の端部に穿孔された前記パイロット制御室19のパイロット油出口穴21を開閉するものである。即ち、該パイロット弁31は、平板状の当接面31bを前記ノズル本体5の端部に形成された弁座面5cに着脱することにより、前記パイロット制御室19のパイロット油出口穴21を開閉するようになっている。
30は電磁アクチュエータであり、次のように構成されている。
33は磁石(電磁石)で、磁石33への通電によって前記パイロット弁31が往復動変位せしめられるようになっている。34は前記パイロット弁31の支持部31aとアクチュエータの本体部35との間に介装されたばねで、前記パイロット弁31を閉弁する方向に付勢されている。
【0026】
かかる構成からなるディーゼル機関の燃料噴射装置において、前記針弁2が閉じた状態においては、パイロット弁31は全閉あるいは微小開度となっており、針弁2の大径部2fに形成された制御用切欠部12はこれの端面12aと前記ノズル本体5の前記パイロット制御室19側の平面11aとの間に形成されたXlなる軸方向長さにおいて前記パイロット制御室19に連通されている。
そして、前記環状溝56内の作動燃料が制御用切欠部12を経てパイロット制御室19に入り、前記針弁2の端面18に作用することにより針弁2及びノズル本体5のシート部02は圧着され、これにより、前記針弁2は高圧下においても高いシール性で以って噴孔4側を遮断して無噴射状態が保持される。
【0027】
前記電磁アクチュエータ30の磁石33電流を付与しパイロット弁31をリフトさせて前記パイロット油出口穴21を開口すると、前記針弁2に作用するパイロット制御室19内の作動油による力と油溜め9内の燃料による力とが平衡する位置即ち前記制御用切欠部12の開口面積とパイロット弁31の開口面積(パイロット油出口穴21の開口面積)とが等しくなる位置にて針弁2が整定される。かかる動作により、図1(A)に示すように針弁2が開弁され、油溜め9内の燃料が先端通路6を経て噴孔4からシリンダ内に噴射される。
【0028】
本発明は前記のような電磁制御蓄圧式燃料噴射装置に適用される燃料噴射弁の改良に関するものである。
本発明に係る燃料噴射弁1の詳細を示す図1〜2において、2は針弁、2fは該針弁2の大径部、2aは該大径部2fの先端側に連設された小径部である。2gは該小径部2aに連設された先端部で、ノズル本体5とのシート部02を構成する。
5はノズル本体、4は該ノズル本体5の先端部に複数個穿孔された噴孔である。9は油溜め、6は前記噴孔に連通される先端部通路、26は該油溜め9と先端部通路6とを接続するシート部上部通路である。
【0029】
前記針弁2の先端部2gは複数段の段付き形状に形成され、また前記ノズル本体5内の前記シート部上部通路26と先端部通路6との間は、前記針弁2の先端部2gに対応した段付き形状のシート部02を構成する。
前記針弁2とノズル本体5とのシート部02において、2dは針弁シート面、3cはノズルシート面で、図2に示されるように、針弁2の閉弁時には該針弁シート面2dがノズルシート面3cに着座する。
そして、前記のように段付き形状に形成された針弁2の先端部2gは、前記針弁シート面2dの上流側(油溜め9側)に円筒面2c及び該円筒面2cと前記小径部2aとを結合する円錐面2bが形成され、前記針弁シート面2dの下流側(噴孔4側)に小径の円筒面2eが形成されてなる。
【0030】
一方、前記針弁2の先端部2gに対応したノズル本体5の段付き形状のシート部02は、前記ノズルシート面3cの上流側(油溜め9側)に円筒内面3b及び該円筒内面3bと前記シート部上部通路26の周面とを結合する円錐内面3aが形成され、前記ノズルシート面3cの下流側(噴孔4側)が前記先端部通路6の周面に結合されてなる。
かかる構成により、図1に示す針弁2の開弁時には、上流側(油溜め9側)から順に、針弁2の円錐面2bとノズル本体5の円錐内面3aとの間の通路面積A1なる絞り通路51、針弁2の円筒面2cとノズル本体5の円筒内面3bとの間の通路面積A2なる絞り通路52、針弁2の針弁シート面2dとノズル本体5のノズルシート面3cとの間の通路面積A3なる絞り通路53、針弁2の円筒面2eとノズル本体5の先端部通路6周面との間の通路面積A4なる絞り通路54が夫々形成される。
【0031】
前記絞り通路51〜54の通路面積Aは、図1に示される針弁2の開弁状態において、針弁シート面2dとノズルシート面3cとの間の通路面積A3が最小で、好ましくはA3<A4<A2<A1のように構成する。
これにより、前記シート部上部通路26から通路面積A1の絞り通路51、通路面積A2の絞り通路52、最小通路面積A3の絞り通路53、及び通路面積A4の絞り通路54の、4段の絞り通路からなる動圧生成部を構成する。
【0032】
かかる燃料噴射弁1備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置において、前記のように、図3における電磁アクチュエータ30の磁石33に電流を付与しパイロット弁31をリフトさせて前記パイロット油出口穴21を開口すると、針弁2に作用するパイロット制御室19内の作動油による力と油溜め9内の燃料による力とが平衡する位置即ち前記制御用切欠部12の開口面積とパイロット弁31の開口面積(パイロット油出口穴21の開口面積)とが等しくなる位置まで針弁2が開弁されてリフトし、油溜め9内の燃料が、シート部上部通路26、絞り通路51〜54及び先端通路6を経て噴孔4からシリンダ内に噴射される。
【0033】
前記燃料噴射後、針弁2が下降しての閉弁作動時においては、閉弁力の作用側である針弁2の上面側の面積つまり大径部2fの面積と、反閉弁力側である前記油溜め9からシート部上部通路26、絞り通路51〜54を経て先端通路6に至る針弁2下面側の面積とが同一であることから、該針弁2の上面側から閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P1と針弁2下面側から反閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P2との圧力差P1−P2により針弁2が閉弁せしめられることとなる。
【0034】
然るにかかる実施例によれば、前記針弁2とノズル本体5とのシート部02に該シート部02上流側に形成された油溜め9及びシート部上部通路26よりも流路面積が縮小された4段の絞り通路51〜54からなる動圧生成部を形成したので、前記油溜め9から噴孔4に向かう燃料流動時に該動圧生成部において燃料の流速が増大せしめられる。
そして、かかる絞り通路51〜54からなる動圧生成部における流速増大によって動圧が増大し、該動圧増大相当分だけ前記シート部02側つまり針弁2の下面側から反閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)P2が減少し、この結果、前記圧力差P1−P2つまり針弁2の閉弁力が増大して該針弁2の閉弁速度が増大する。
【0035】
即ち、前記反閉弁方向に作用する燃料圧力つまり静圧P2は、
P2=P−P0=P−(γu2/2)
ここで、P:燃料の全圧
P0:燃料の動圧
γ:燃料の密度
u:燃料の流速
前記絞り通路51〜54からなる動圧生成部においては、流速uの増大により動圧P0=(γu2/2)が増大し、これによって静圧P2=P−P0つまり前記反閉弁方向に作用する燃料圧力が減少する。
これにより、燃料噴射終了時における噴射の切れが良化して燃料状態が改善される。
【0036】
図4に示される電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第2例においては、前記針弁2の大径部と小径部との段差が臨むドレン室64を設け、前記段差部に油溜め9方向からの反閉弁方向に作用する燃料圧力が作用しないようにして、針弁2の閉弁力を増大している。62は前記ドレン室64からのドレン抽出用のドレン孔である。
その他の構成は図3に示される第1例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0037】
図5に示される電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第3例において、22は共通油管、23は作動油ポンプ、25は作動油タンク、24は作動油管で、該作動油タンク25内の作動油を作動油ポンプ23により作動油管24を通して共通油管22に送り込み、該共通油管22に収容するようになっている。
かかる第2例において、前記共通油管22内のパイロット油供給圧力が前記燃料蓄圧管14内の燃料圧力よりも大きく設定されているので、前記共通油管22内の作動油は油室13及び制御用切欠部12を経てパイロット制御室19に入り、前記針弁2の端面18に作用することにより針弁2のシート部02は前記パイロット油供給圧力と燃料圧力との圧力差によってノズル本体5のノズルシート面3cに押し付けられ、無噴射状態が保持される。
【0038】
針弁2の開弁時には、前記電磁アクチュエータ30の磁石33に電流を付与してパイロット弁31をリフトさせ前記パイロット油出口穴21を開口すると、前記針弁2に作用するパイロット制御室19内の作動油による力と針弁室9内の燃料による力とのとが平衡する位置即ち前記制御用切欠部12の開口面積とパイロット弁31の開口面積(パイロット油出口穴21の開口面積)とが等しくなる位置にて針弁2が整定されることにより、針弁2が開弁される。
【0039】
かかる電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第3例においては、針弁2を開閉操作する作動油系統を燃料系統とは別個に設けているため、針弁2開閉操作用作動油の圧力を燃料の供給圧力よりも高くすることにより針弁2の閉弁力を増大し、高速にて針弁2を閉弁することができる。
その他の構成は図3に示される第1例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0040】
【発明の効果】
以上記載のごとく本発明によれば、針弁及びノズル本体のシート部に該シート部上流側に形成された油溜めを含む上部通路よりも流路面積が縮小された動圧生成部を形成したので、該動圧生成部における燃料の流速が増大せしめられて該流速増大による動圧増大相当分だけシート部側から反閉弁方向に作用する燃料圧力(静圧)が減少し、針弁の閉弁力が増大して針弁の閉弁速度が増大する。
これにより、燃料噴射終了時における噴射の切れが良化して燃料状態が改善され、熱効率が向上するとともに燃料消費率が低減され、さらには炭化水素や黒煙の排出量の低減も可能となる。
また、請求項2のように構成すれば、針弁のシート部を含む先端部を複数段の段付き形状に形成し、前記動圧生成部を複数箇所に形成したので、該動圧生成部による流速増大および該動圧増大に伴う針弁の閉弁力増大効果がさらに大きくなり、燃料噴射終了時における噴射の切れのさらなる良化が得られる。
【0041】
さらに、請求項1〜2のように構成された針弁開閉手段を備えた燃料噴射弁を、請求項3ないし請求項5のように、電磁アクチュエータによって駆動されるパイロット弁よりパイロット制御室を開閉する蓄圧式燃料噴射装置に適用すれば、より高い燃料圧力が得られるため前記動圧生成部による流速増大およびこれに伴う針弁の閉弁力の増大効果がさらに大きくなり、噴射の切れの良好な安定した燃料噴射をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るディーゼル機関用燃料噴射装置における燃料噴射弁の先端部(図3、4、5のZ部)拡大断面図である。
【図2】針弁の閉弁時を示す燃料噴射弁の先端部拡大断面図である。
【図3】前記燃料噴射弁を備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第1例を示す要部構成図である。
【図4】前記燃料噴射弁を備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第2例を示す要部構成図である。
【図5】前記燃料噴射弁を備えた電磁制御蓄圧式燃料噴射装置の第3例を示す要部構成図である。
【符号の説明】
1 燃料噴射弁
2 針弁
02 シート部
2a 小径部
2d 針弁シート面
2f 大径部
2g 先端部
3c ノズルシート面
4 噴孔
5 ノズル本体
9 油溜め
12 制御用切欠部
14 燃料蓄圧管
15 燃料ポンプ
19 パイロット制御室
21 パイロット油出口穴
22 共通油管
23 作動油ポンプ
26 シート部上部通路
31 パイロット弁
34 ばね
51、52、53、54 絞り通路
55 燃料通路
Claims (5)
- 燃料噴射弁の針弁を、針弁開閉手段により該針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成された内燃機関の燃料噴射装置において、前記燃料噴射弁は、前記シート部に該シート部上流側に形成された上部通路よりも流路面積が縮小されて燃料の流速を増大せしめる動圧生成部を形成してなることを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。
- 前記針弁の前記シート部を含む先端部を複数段の段付き形状に形成し、前記動圧生成部を前記段付きの先端部と前記ノズル本体との間の複数箇所に形成したことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃料噴射装置。
- 燃料噴射弁の針弁を、針弁開閉手段により該針弁の上面側から該針弁及びノズル本体のシート部側に向かう閉弁力と前記シート部側から上面側に向かう開弁力との差によって開閉するように構成された内燃機関の燃料噴射装置において、前記針弁開閉手段は、前記針弁の反シート部側端面が臨み作動流体が給排されるパイロット制御室と、該パイロット制御室の作動流体出口を開閉して該パイロット制御室の作動流体圧力と前記油溜めに供給される燃料圧力との差により前記針弁の変位を制御するパイロット弁と、該パイロット弁を変位せしめるアクチュエータとを備えてなることを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。
- 前記針弁は、前記シート部側に向かう閉弁力を生起する上部側の断面積を前記油溜めを含む下部側の断面積よりも大きく形成した段付き針弁に構成されてなることを特徴とする請求項3記載の内燃機関の燃料噴射装置。
- 前記パイロット制御室に作動流体を供給する作動流体供給手段を、前記油溜めに燃料を供給する燃料供給手段とは独立して設置したことを特徴とする請求項3記載の内燃機関の燃料噴射装置。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060704 |