JP4239332B2 - 内燃機関の燃料噴射装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関、特にディーゼルエンジンの燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、内燃機関の運転状態に応じてニードル弁のリフト量を制御することにより、燃料噴霧の噴霧角度(広がり角度)、貫徹力(到達距離)、微粒化等の特性を可変にするようにした燃料噴射装置が存在しており、たとえば特開昭60−308560号公報に開示されたようなものが知られている。
【0003】
特開昭60−308560号公報に開示された燃料噴射装置は、図8に示されるように、燃料を噴射する燃料噴射口302を有するノズルボディ301と、ノズルボディ301の内部でリフト可能に保持され、供給燃料の圧力の作用によってリフトして燃料噴射口を開くニードル弁303と、ニードル弁303とプッシュロッド304を介して当接するロッド305のストッパとなるピストン306とを備えており、ピストン306は、バネ307によってニードル弁303のリフト方向とは反対方向に付勢力を付与されると共に、制御油圧Pcが作用することによってバネ307の付勢力に抗してニードル弁303のリフト方向に移動し得るように構成されている。
【0004】
制御油圧Pcが小さい場合、ピストン306は、バネ307によりニードル弁303のリフト方向とは反対方向に付勢力を付与されてバネ抑え308に接した位置で停止しており、ニードル弁303のリフト量は、ロッド305とピストン306との隙間S1に相当するリフト量(プレリフト量)に制限される。
【0005】
制御油圧Pcが大きい場合、ピストン306は、制御油圧Pcの作用によりバネ307の付勢力に抗してニードル弁303のリフト方向に移動する。このピストン306の移動に伴い、ロッド305とピストン306との隙間が制御油圧Pcが小さい場合の隙間S1よりも大きくなり、ニードル弁303のリフト量は、上述したプレリフト量より大きくなる(最大リフト量:S1+S2)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ニードル弁303が上昇してピストン306にロッド305が当接すると、ピストン306にはバネ307による付勢力(ニードル弁303のリフト方向とは反対方向に作用)と、制御油圧Pcによる作用力(ニードル弁303のリフト方向に作用)と、ニードル弁303による作用力(ニードル弁303のリフト方向に作用)が働く。ニードル弁303による作用力は、ニードル弁303が供給燃料の圧力によって押し上げられる力であり、ニードル弁303の受圧面積と供給燃料の圧力との積で表される。ニードル弁303の受圧面積は、ニードル弁303の断面積に相当し、ニードル弁303の直径から容易に算出できる。
【0007】
ニードル弁303のリフト量をプレリフト量に制限するためには、バネ307による付勢力を、制御油圧Pcによる作用力とニードル弁303による作用力との総和より大きく設定する必要があることから、これらの関係からバネ307に必要な付勢力を算出してみた。供給燃料の圧力は、燃料を微粒化して排気浄化性能を向上するために、近年では150MPaを超える高圧化が図られており、供給燃料の圧力が150MPaを超える場合には、バネ307に必要とされる付勢力は1840N程度となる。ここで、ニードル弁303のリフト量をプレリフト量に制限するときの制御油圧Pcは0MPa、ニードル弁303の直径は4mmとしている。
【0008】
このように、供給燃料の圧力の高圧化が図られた場合には、バネ307に必要とされる付勢力は極めて大きなものとなり、この付勢力を設定するためにはかなり大きな線径のバネを使用しなければならない。しかしながら、上述したようなかなり大きな線径のバネを使用すると、ノズルボディ301の外形も大きくなり、ノズルボディ301のエンジンへの搭載性が悪化してしまう。また、上述したような極めて大きな付勢力を与えてピストン306(ストッパ)を組み付けることは容易でなく、燃料噴射装置の組み立て作業性も悪化してしまう。
【0009】
次に、ニードル弁303のリフト量をプレリフト量より大きくリフトさせるために必要な制御油圧Pcを算出してみた。バネ307の付勢力に打ち勝つのに必要な油圧は、付勢力/受圧面積であり、バネ307の付勢力が上述の1840Nである場合には73MPa程度となる。ここで、ピストン306の大径部の直径は7mm、小径部の直径は4mmとしている。したがって、ニードル弁303のリフト量をプレリフト量より大きくリフトさせるために必要な制御油圧Pcは、上述の73MPaから供給燃料の圧力(最低燃料噴射圧力は20MPa程度)を差し引いた50MPa程度となり、制御油圧としてはかなり高い値が必要とされる。上述したような制御油圧Pcを発生させるためには高圧の油圧ポンプ等の油圧発生源が必要となるが、一般にこのような高圧の油圧ポンプは動力損失が大きく、油圧ポンプを駆動するためにエンジン出力の低下や燃費の悪化を招くことになる。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ノズルボディの大型化を抑制してエンジンへの搭載性及び燃料噴射装置の組み立て作業性の悪化を防ぐことができると共に、エンジン出力の低下や燃費の悪化をも防ぐことが可能な内燃機関の燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る内燃機関の燃料噴射装置は、燃料を噴射する燃料噴射口を有するノズルボディと、ノズルボディの内部でリフト可能に保持され、供給燃料の圧力の作用によってリフトして燃料噴射口を開く弁部材と、弁部材とは所定のリフト量相当の距離を隔てて設けられ、弁部材と当接可能な第1の面及び該第1の面とは反対側の第2の面を有するリフト制御部材と、弁部材とリフト制御部材の第1の面との間に形成される室と、リフト制御部材の第2の面がその一部を構成し、供給燃料が導かれるリフト制御室と、リフト制御室内に設けられ、リフト制御部材に対して弁部材のリフト方向とは反対方向に付勢力を付与する付勢力付与部材と、リフト制御室内の燃料を排出することによりリフト制御室内の圧力を弁部材に作用する供給燃料の圧力より低い状態とし、また、リフト制御室内の燃料の排出を禁止することによりリフト制御室内の圧力を弁部材に作用する供給燃料の圧力と同等の状態とするリフト制御室内圧力調整手段と、を備え、リフト制御室内圧力調整手段によりリフト制御室内の圧力が弁部材に作用する供給燃料の圧力と同等とされた状態において、弁部材に作用する供給燃料の圧力が弁部材と第1の面とにより画成される室の圧力よりも高く弁部材が供給燃料の圧力の作用によってリフトすると、弁部材がリフト制御部材に当接して、弁部材のリフト量が弁部材とリフト制御部材との間の距離に相当するリフト量に制限され、リフト制御室内圧力調整手段によりリフト制御室内の圧力が弁部材に作用する供給燃料の圧力より低くされた状態において、弁部材に作用する供給燃料の圧力が弁部材と第1の面とにより画成される室の圧力よりも高く弁部材が供給燃料の圧力の作用によってリフトすると、弁部材及びリフト制御部材が弁部材のリフト方向に移動して弁部材のリフト量が弁部材とリフト制御部材との間の距離に相当するリフト量より大きくなることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る内燃機関の燃料噴射装置では、上述した、リフト制御部材と、リフト制御室と、付勢力付与部材と、リフト制御室内圧力調整手段とを備えているので、リフト制御室内圧力調整手段がリフト制御室内の燃料の排出を禁止することによりリフト制御室内の圧力を弁部材に作用する供給燃料の圧力と同等の状態とした場合、弁部材が供給燃料の圧力の作用によってリフトすると、リフト制御部材はリフト制御室内の圧力により弁部材のリフト方向への移動が規制されているために、弁部材はリフト制御部材に当接してリフトが制限される。したがって、弁部材のリフト量は、弁部材とリフト制御部材との間の距離に相当するリフト量に制限される。一方、リフト制御室内圧力調整手段がリフト制御室内の燃料を排出することによりリフト制御室内の圧力を弁部材に作用する供給燃料の圧力より低い状態とした場合、弁部材が供給燃料の圧力の作用によってリフトすると、弁部材はリフト制御部材に当接するものの、リフト制御室内の圧力が低下しリフト制御部材も弁部材のリフト方向に移動可能な状態となっているために、弁部材のリフト量は、弁部材とリフト制御部材との間の距離に相当するリフト量より更にリフトする。
【0013】
したがって、弁部材のリフト量の制御は、主としてリフト制御室内の圧力の大きさに基づいて行われることになり、付勢力付与部材の付勢力はリフト制御部材を初期位置に復帰させ得る程度のものでよい。この結果、付勢力付与部材の付勢力を上述した従来のものに比して小さく設定することができ、ノズルボディの大型化を抑制してエンジンへの搭載性及び燃料噴射装置の組み立て作業性の悪化を防ぐことができる。また、リフト制御室に供給燃料を導いて、リフト制御室の圧力として供給燃料の圧力を用いていることから、新たな油圧源を設けることなく弁部材のリフト量の制御を行うことが可能となり、油圧を発生させるために必要な動力が上述した従来のものに比して小さくなる。この結果、エンジン出力の低下や燃費の悪化を防ぐことができる。
【0014】
また、弁部材と第1の面とにより画成される上記室は、供給燃料が導かれる燃料制御室であって、弁部材とリフト制御部材とにより画成され、供給燃料が導かれる燃料制御室と、燃料制御室に連通して、燃料制御室内の燃料を排出する燃料排出通路と、燃料排出通路の途中に設けられ、燃料排出通路を開閉する燃料制御弁と、を更に備え、リフト制御室内圧力調整手段は、燃料排出通路の燃料制御弁よりも燃料制御室側の部分とリフト制御室とを連通する連通路と、連通路の途中に設けられ、連通路を開閉するリフト制御弁とを有していることが好ましい。このような構成とした場合、燃料制御弁により燃料排出通路が閉じられている場合には、燃料制御室内の圧力が供給燃料の圧力と同等となり弁部材がリフトすることはない。燃料制御弁により燃料排出通路が開かれた場合には、燃料制御室内の燃料が排出されて燃料制御室内の圧力が供給燃料の圧力より低くなり、弁部材がリフトする。燃料制御弁により燃料排出通路が開かれた場合において、リフト制御弁により連通路を閉状態とすると、リフト制御室内の圧力は弁部材に作用する供給燃料の圧力と同等となり、上述したように弁部材はリフト制御部材に当接してそのリフトが制限される。一方、燃料制御弁により燃料排出通路が開かれた場合において、リフト制御弁により連通路を開状態とすると、リフト制御室内の圧力は弁部材に作用する供給燃料の圧力より低くなり、上述したように弁部材はリフト制御部材に当接した後も更にリフトする。したがって、燃料排出通路の燃料制御弁よりも燃料制御室側の部分とリフト制御室とを連通する連通路と、この連通路を開閉するリフト制御弁を有することにより、燃料噴射口から燃料を噴射させるための燃料制御弁による燃料排出通路の開閉制御に伴なって、リフト制御室内の燃料の排出あるいは排出の禁止を制御することが可能となり、燃料噴射と同期してリフト制御室内の圧力の制御を行うことができる。また、リフト制御室内の圧力を制御し得る構造が、連通路及びリフト制御弁という極めて簡易な構成にて、簡易且つ低コストで実現可能となる。
【0015】
また、リフト制御弁は、油圧源から送られる制御油圧により、連通路を開いた状態、あるいは、連通路を閉じた状態に切換えられるスプールバルブにより構成されていることが好ましい。このような構成とした場合、制御油圧はスプールバルブを作動させ得る比較的低い油圧であればよく、油圧源の駆動による動力損失は小さくなる。この結果、制御油圧を発生させる油圧源を設ける場合においても、エンジン出力の低下や燃費の悪化を極力抑制することができる。
【0016】
また、リフト制御部材には、燃料制御室とリフト制御室とを連通させる燃料通路が、弁部材がリフト制御部材に当接したときに弁部材により塞がれる位置に設けられていることが好ましい。このように、リフト制御部材に燃料通路を設けることにより、燃料制御室とリフト制御室との圧力を確実に同等の圧力にすることができる。また、弁部材がリフトしてリフト制御部材に当接したときには、燃料通路が弁部材により塞がれるので、リフト制御室内の燃料が燃燃料通路から燃料制御室に漏れる、あるいは、燃料制御室内の燃料がリフト制御室に漏れることはなく、リフト制御室内の圧力を適切に保つことができる。
【0017】
また、リフト制御室内圧力調整手段は、リフト制御室に供給燃料を導く状態と、リフト制御室内の燃料を排出する状態とを選択するリフト制御弁を有していることが好ましい。このような構成とした場合、リフト制御弁によりリフト制御室に供給燃料を導く状態を選択した場合には、リフト制御室内の圧力は弁部材に作用する供給燃料の圧力と同等となり、上述したように弁部材はリフト制御部材に当接してそのリフトが制限される。一方、リフト制御弁によりリフト制御室内の燃料を排出する状態を選択した場合には、リフト制御室内の圧力は弁部材に作用する供給燃料の圧力より低くなり、上述したように弁部材はリフト制御部材に当接した後も更にリフトする。この結果、リフト制御弁によりリフト制御室内の圧力の制御を行うことができ、また、リフト制御室内の圧力を制御し得る構造が、リフト制御弁という極めて簡易な構成にて、簡易且つ低コストで実現可能となる。
【0018】
また、リフト制御弁は、油圧源から送られる制御油圧により、リフト制御室に供給燃料を導く状態、あるいは、リフト制御室内の燃料を排出する状態に切換えられるスプールバルブにより構成されていることが好ましい。制御油圧はスプールバルブを作動させ得る比較的低い油圧であればよく、油圧源の駆動による動力損失は小さくなる。この結果、制御油圧を発生させる油圧源を設ける場合においても、エンジン出力の低下や燃費の悪化を極力抑制することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0020】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2に基づいて、本発明の第1実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置について説明する。図1は、燃料噴射装置の構成を示す模式図である。本第1実施形態は、本発明に係る内燃機関の燃料噴射装置をディーゼルエンジンの蓄圧式燃料噴射装置に適用したものである。
【0021】
燃料噴射装置1においては、燃料タンク2からフィードポンプ3によって吸い上げられて所定の吸入圧力に加圧された燃料は、燃料管4を通じて高圧燃料ポンプ5に送られる。高圧燃料ポンプ5は、たとえばエンジンによって駆動される、いわゆる、プランジャ式のサプライ用の燃料供給ポンプであり、燃料を運転状態等に基づいて定められる高圧に昇圧し、昇圧された燃料を燃料管7を通じてコモンレール8に供給する。コモンレール8に所定圧力に昇圧した状態で貯留された燃料は、コモンレール8から燃料供給管9を通じて、複数の燃料噴射弁10に供給燃料として導かれる。図1においては、内燃機関として4気筒ディーゼルエンジンEが図示されており、エンジンEの4つの気筒(図示せず)には、その内部に形成される燃焼室にそれぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁10が配設されている。
【0022】
ECU11には、各種のセンサ、即ち、クランク角度を検出するためのクランク角度センサ12、アクセル開度を検出するためのアクセル開度センサ13、冷却水温度を検出するための水温センサ、吸気管内圧力を検出するための吸気管内圧力センサ等のエンジンの運転状態を検出するための各種センサからの信号が入力されている。また、ECU11には、コモンレール8に設けられている圧力センサ(図示せず)が検出したコモンレール8内の燃料圧の検出信号が送られる。
【0023】
ECU11は、これらの信号に基づいて、エンジン出力が運転状態に即した最適出力になるように、燃料噴射弁10による燃料の噴射時期及び噴射量を制御して、燃料が最適な噴射時期に最適な燃料噴射量でもって対応する燃焼室に噴射されるように燃料噴射弁10に備わる燃料制御弁41を制御する。燃料噴射弁10から噴射される燃料の噴射圧はコモンレール8に貯留されている燃料の圧力に略等しい。燃料噴射量は、噴射期間と噴射圧力で定まるので、流量制御弁6を制御してコモンレール8への高圧燃料の供給量を制御することにより、燃料噴射圧が制御される。燃料噴射弁10からの燃料の噴射でコモンレール8内の燃料が消費された場合や、燃料噴射量を変更する場合に、ECU11は、コモンレール8内の燃料圧が所定の燃料圧となるように、流量制御弁6を制御して高圧燃料ポンプ5からコモンレール8への燃料の吐出量を制御する。コモンレール燃料噴射システムそれ自体は、従来公知のものであり、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0024】
燃料噴射弁10は、図1に示されるように、弁体としてのノズルボディ21を有している。ノズルボディ21の先端には、燃料を噴射する燃料噴射口22と、これより内方で燃料噴射口22に連通する略円錐形状の弁座部23が形成されている。ノズルボディ21にはその中心に弁孔24と案内孔25とが穿設されている。弁孔24は、図1に示されるように案内孔25よりも小径に形成されている。弁孔24の内部には、ニードル弁26が摺動可能に精密に嵌合されている。ニードル弁26は、その円錐形状先端が弁座部23に当接可能とされている。このニードル弁26が後述する供給燃料の圧力を受けて昇降作動(リフト)することによって、弁座部23とニードル弁26の円錐形状先端との間の間隔を制御し間欠的に燃料を燃料噴射口22を通じて燃焼室内に噴射供給させるようになっている。
【0025】
また、ニードル弁26には円錐形受圧面26aが形成されており、この円錐形受圧面26aとノズルボディ21(弁孔24)との間に燃料溜り部27が形成される。ノズルボディ21には、一端が燃料溜り部27に開口し、他端が燃料供給管9に接続される燃料通路28が形成されている。したがって、ニードル弁26の円錐形受圧面26aには、燃料供給管9及び燃料通路28を介して燃料溜り部27に導かれた供給燃料の圧力が作用するように構成されている。
【0026】
燃料噴射口22は、ノズルボディ21の先端側に設けられる第1燃料噴射口22aと、第1燃料噴射口22aより後側に設けられる第2燃料噴射口22bとからなり、ニードル弁26(円錐形状先端)のリフト量に応じて、リフト量が所定のリフト量(L)以下の場合には第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給し、リフト量が所定のリフト量(L)より大きい場合には第1燃料噴射口22a及び第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給するように構成されている。
【0027】
案内孔25には、ピストン31が摺動可能に精密に嵌合されている。ピストン31とニードル弁26との間には、図1に示されるように、ピストン31とニードル弁26との間の距離を規定するためのロッド32と、ピストン31及びニードル弁26の夫々に当接し、ニードル弁26に対してニードル弁26のリフト方向とは反対の方向(図1中下方向)に付勢力を付与するバネ33とが配設されている。ここで、ニードル弁26、ピストン31及びロッド32は、各請求項における弁部材を構成している。なお、本実施形態においては、ニードル弁26、ピストン31及びロッド32を夫々別体にて構成しているが、たとえばニードル弁26とロッド32とを一体に構成してもよいし、あるいは、ニードル弁26とピストン31とロッド32とを一体に構成してもよい。
【0028】
ノズルボディ21には、図1に示されるように、案内孔25に連続して、案内孔25より大径の圧力室34が形成されており、この圧力室34が各請求項におけるリフト制御室を構成している。この圧力室34には、案内孔25との連通状態を制御可能な制御部材35が配設されており、この制御部材35が各請求項におけるリフト制御部材を構成している。制御部材35は、圧力室34内をニードル弁26のリフト方向及びリフト方向とは反対の方向に移動可能とされている。また、制御部材35は、ピストン31側の面35aが略円錐形状を呈しており、略円錐形状とされた面35aが圧力室34と案内孔25とで構成される段部21aに当接することにより圧力室34と案内孔25との連通が遮断された状態となり、略円錐形状とされた面35aが段部21aから離れることにより圧力室34と案内孔25とが連通された状態となる。また、圧力室34内には、制御部材35に対してニードル弁26のリフト方向とは反対の方向(図1中下方向)に付勢力を付与するバネ36が配設されており、このバネ36が各請求項における付勢力付勢部材を構成している。
【0029】
ピストン31と制御部材35とは、図1に示されるように、ピストン31が最もニードル弁26のリフト方向とは反対の方向(図1中下方向)の位置にあり、制御部材35(面35a)が圧力室34と案内孔25とで構成される段部21aに当接した位置(初期位置)にある場合に、所定の距離Lを隔てて設けられており、これらのピストン31、制御部材35及びノズルボディ21(案内孔25)により画成される圧力室37がピストン31と制御部材35との間に構成される。圧力室37には、燃料通路28から分岐し且つ絞り部38aを有した燃料通路38が接続されており、燃料通路38を介して燃料通路28から圧力室37に供給燃料が導かれている。ここで、この圧力室37は、各請求項における燃料制御室を構成している。
【0030】
燃料通路38の絞り部38aよりも圧力室37側の部分からは、絞り部39aを介して燃料を燃料噴射弁10外に排出するための燃料排出通路39が分岐して設けられている。燃料排出通路39の絞り部39aよりも下流側の部分には燃料制御弁41が設けられており、この燃料制御弁41は電磁弁からなり、ECU11から送られてくる制御信号に基づいて作動し、絞り部39aよりも下流側の燃料排出通路39を開閉するように構成されている。
【0031】
また、ノズルボディ21には、燃料排出通路39の絞り部39aと燃料制御弁41との間の部分と、圧力室34とを絞り部42aを介して連通する連通路42が形成されている。連通路42の絞り部42aと燃料制御弁41との間の部分には、リフト制御弁としてのスプールバルブ43が設けられており、このスプールバルブ43は連通路42を開閉するように構成されている。スプールバルブ43は、油圧源としての油圧ポンプ44から圧油が油圧制御部45に送られて油圧制御部45にて調整された圧油の制御油圧により作動するものであり、この制御油圧がバネ43aの付勢力により規定される作動圧力より低い場合には連通路42を閉じた状態とし、上述した制御油圧がバネ43aの付勢力により規定される作動圧力より高い場合には連通路42を開いた状態とするように構成されている。
【0032】
圧力室34には、圧力室34と圧力室37との間に圧力差が生じた場合に、制御部材35の面35aが段部21aから離れることにより圧力室37内の燃料が導かれるため、制御部材35には、圧力室34内に導かれた供給燃料の圧力が作用するようになっている。したがって、制御部材35の圧力室34に臨む面35bは、圧力室34内に導かれた供給燃料からの圧力を受ける受圧面を構成しており、圧力室34の一部を構成する。また、制御部材35の圧力室34に臨む面35bの面積は、ニードル弁26が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力を受ける受圧面積よりも大きくなる。
【0033】
油圧制御部45は、ECU11から送られる制御信号に基づいて作動し、油圧ポンプ44から送られてくる圧油の圧力を調整して、スプールバルブ43の作動を制御するための制御圧力を生成するように構成されている。ECU11は、クランク角度センサ12及びアクセル開度センサ13からの出力信号に基づいてエンジンEが所定の運転状態(たとえば低回転低負荷)にあるか否かを判断し、エンジンEが所定の運転状態にある場合には、油圧制御部45に対して制御油圧をバネ43aの付勢力により規定される作動圧力より低くするように制御信号を出力し、エンジンEが所定の運転状態にない場合には、油圧制御部45に対して制御油圧をバネ43aの付勢力により規定される作動圧力より高くするように制御信号を出力する。
【0034】
次に、図2を参照しながら、上述したように構成された燃料噴射弁10の作動について説明する。図2は、スプールバルブ43の開閉状態及び燃料制御弁41の開閉状態とニードル弁のリフト量と間の関係を示す線図である。
【0035】
油圧制御部45が、ECU11から送られた制御信号に基づいて、制御油圧をバネ43aの付勢力により規定される作動圧力より高くした場合には、スプールバルブ43は連通路42を開いた状態となる(図2中矢印Aで示される領域)。このようにスプールバルブ43が連通路42を開いた状態において、燃料制御弁41が、ECU11から送られた制御信号に基づいて、燃料排出通路39を開いた状態となると、圧力室34内の供給燃料が燃料排出通路39及び燃料制御弁41を介して排出されることになる。
【0036】
ところで、燃料制御弁41が燃料排出通路39を閉じた状態では、コモンレール8の燃料が燃料供給管9を介して燃料溜り部27及び圧力室37に導かれており、燃料溜り部27及び圧力室37内に導かれた供給燃料の圧力は、コモンレール8内の燃料圧力と等しくなっている。このとき、圧力室37内の圧力が圧力室34内の圧力より高い場合には、制御部材35に対して圧力室37内の供給燃料の圧力により制御部材35の面35aが段部21aから離れる方向に作用力が働き、圧力室34と圧力室37とが連通された状態となる。このため、圧力室37内の圧力が圧力室34内の圧力と同等の圧力に維持されることになる。また、圧力室37内の供給燃料の圧力が、ピストン31及びロッド32を介してニードル弁26に対して、ニードル弁26のリフト方向とは反対の方向に作用するため、ニードル弁26は弁座部23に着座した状態が維持され、燃料噴射口22から燃料が噴射供給されることはない。また、ピストン31と制御部材35との間には、図1に示されるように、距離Lの間隙が形成される。
【0037】
上述したように、燃料制御弁41が燃料排出通路39を開いた状態とし、圧力室37内の供給燃料が絞り部39a及び燃料制御弁41を介して排出されると、圧力室37内の供給燃料の圧力が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力より低くなる。このように、圧力室37と燃料溜り部27との圧力バランスが崩れると、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力により、ニードル弁26に対してリフト方向の作用力が働き、ニードル弁26がリフトを開始し、ニードル弁26は弁座部23から離れ始める。
【0038】
ニードル弁26が、ピストン31と制御部材35との間に形成された間隙の距離Lに相当する量までリフトすると、ピストン31と制御部材35とが当接することになる。このとき、圧力室34内の供給燃料は、スプールバルブ43が連通路42を開いた状態となっているために、連通路42、燃料制御弁41及び燃料排出通路39を介して排出されていることから、圧力室34内の圧力も、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力より低く状態となっている。したがって、ニードル弁26は、ピストン31と制御部材35とが当接した後も更にリフトし続けることになり、ピストン31と制御部材35との間に形成された間隙の距離Lに相当するリフト量より大きくリフトすることになる。このように、ニードル弁26のリフト量がピストン31と制御部材35との間に形成された間隙の距離Lに相当するリフト量より大きくなる状態では、燃料噴射弁10は第1燃料噴射口22a及び第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給する。
【0039】
一方、油圧制御部45が、ECU11から送られた制御信号に基づいて、制御油圧をバネ43aの付勢力により規定される作動圧力より低くした場合には、スプールバルブ43は連通路42を閉じた状態となる(図2中矢印Bで示される領域)。このようにスプールバルブ43が連通路42を閉じた状態において、燃料制御弁41が、ECU11から送られた制御信号に基づいて、燃料排出通路39を開いた状態となると、圧力室37内の供給燃料が絞り部39a及び燃料制御弁41を介して排出されることになる。
【0040】
燃料制御弁41が燃料排出通路39を開いた状態とし、圧力室37内の燃料が絞り部39a及び燃料制御弁41を介して排出されると、圧力室37内の供給燃料の圧力が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力より低くなり、上述したように、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力により、ニードル弁26に対してリフト方向の作用力が働き、ニードル弁26がリフトを開始し、ニードル弁26は弁座部23から離れ始める。
【0041】
ニードル弁26が、ピストン31と制御部材35との間に形成された間隙の距離Lに相当する量までリフトすると、ピストン31と制御部材35とが当接することになる。このとき、圧力室34内の供給燃料は、スプールバルブ43が連通路42を閉じた状態となり、その排出が禁止されていることから、圧力室34内の供給燃料の圧力は、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力と同等の圧力に保たれている。更に、制御部材35の面35bの面積は、ニードル弁26が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力を受ける受圧面積よりも大きいことから、制御部材35の面35bに作用してピストン31を押し下げようとする力は、ニードル弁26に対してリフト方向に働く力よりも大きくなり、ピストン31と制御部材35とが当接すると、ニードル弁26のそれ以上のリフトが制限されることになる。したがって、ニードル弁26は、ピストン31と制御部材35とが当接するとそのリフトが制限されることになり、ニードル弁26のリフト量は、ピストン31と制御部材35との間に形成された間隙の距離Lに相当するリフト量、いわゆるプレリフト量に制限される。このように、ニードル弁26のリフト量がプレリフト量(L)に制限された状態では、燃料噴射弁10は第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給する。
【0042】
以上のように、本第1実施形態の燃料噴射装置1によれば、ニードル弁26のリフト量がプレリフト量(L)に制限された状態では、燃料噴射弁10は第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給するので、燃料噴射弁10における最小燃料流路面積が小さくなり噴射率を抑制することができる。このように噴射率を抑制することにより、予混合燃焼割合を小さくすることができ、燃焼初期の急激な圧力上昇を抑制して、燃焼騒音を低減することができる。また、燃焼温度を低くすることもできるので、NOxの生成が抑制できる。一方、ニードル弁26のリフト量がプレリフト量(L)より大きくなる状態では、燃料噴射弁10は第1燃料噴射口22a及び第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給するので、噴射期間を短縮することができ、燃焼期間の短い後燃えが少ない燃焼が可能となる。このように、燃焼期間の短い後燃えが少ない燃焼では熱効率がよくなるために、エンジンEの出力を向上することができる。
【0043】
また、ニードル弁26のリフト量に応じて、燃料を噴射供給する燃料噴射口22(第1燃料噴射口22a、第2燃料噴射口22b)の数が切換えられるので、エンジンEの運転状態に応じて良好なエンジン性能を得ることができる燃料噴射口22(第1燃料噴射口22a、第2燃料噴射口22b)の数を的確に選択することができる。
【0044】
また、燃料噴射弁10は、上述したように、制御部材35と、圧力室34と、バネ36と、圧力室37、燃料制御弁41、スプールバルブ43とを備えており、燃料制御弁41により燃料排出通路39が閉じられている場合には、圧力室34内の圧力が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力と同等となりニードル弁26がリフトすることはない。燃料制御弁41により燃料排出通路39が開かれた場合には、圧力室37内の燃料が排出されて圧力室37内の圧力が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力より低くなり、ニードル弁26がリフトする。燃料制御弁41により燃料排出通路39が開かれた場合において、スプールバルブ43により連通路42を閉状態とすると、圧力室34内の圧力は燃料溜り部27内の供給燃料の圧力、すなわちニードル弁26に対してニードル弁26のリフト方向に作用する供給燃料の圧力と同等となり、ピストン31は制御部材35に当接してニードル弁26のリフトがプレリフト量(L)に制限される。一方、燃料制御弁41により燃料排出通路39が開かれた場合において、スプールバルブ43により連通路42を開状態とすると、圧力室34内の圧力は燃料溜り部27内の供給燃料の圧力、すなわちニードル弁26に対してニードル弁26のリフト方向に作用する供給燃料の圧力より低くなり、ピストン31と制御部材35とが当接した後も、ニードル弁26は更にリフトする。
【0045】
したがって、ニードル弁26のリフト量の制御は、主として圧力室34内に導かれた供給燃料の圧力の大きさに基づいて行われることになり、バネ36の付勢力は制御部材35を面35aが段部21aに当接する位置(初期位置)に復帰させ得る程度のものでよい。この結果、バネ36の付勢力を従来のものに比して小さく設定することができ、ノズルボディ21の大型化を抑制してエンジンEへの搭載性及び燃料噴射弁10の組み立て作業性の悪化を防ぐことができる。また、圧力室34に供給燃料を導いて、圧力室34の圧力として供給燃料の圧力を用いていることから、新たな油圧源を設けることなくニードル弁26のリフト量の制御を行うことが可能となり、油圧を発生させるために必要な動力が従来のものに比して小さくなる。この結果、エンジンEの出力の低下や燃費の悪化を防ぐことができる。
【0046】
また、スプールバルブ43により連通路42を開状態とした場合においては、燃料制御弁41による燃料排出通路39の開閉制御に伴なって、圧力室34内の燃料の排出あるいは排出の禁止を制御することが可能となり、燃料噴射と同期して圧力室34内の圧力の制御を行うことができる。また、圧力室34内の圧力を制御し得る構造が、連通路42及びスプールバルブ43という極めて簡易な構成にて、簡易且つ低コストで実現可能となる。
【0047】
また、スプールバルブ43により連通路42を開状態あるいは閉状態に切換えるようにしているので、スプールバルブ43を動作させるための制御油圧は比較的低い油圧であればよく、制御油圧を発生させるための油圧ポンプ44の駆動による動力損失は小さくなる。この結果、制御油圧を発生させる油圧ポンプ44を設けた場合においても、エンジンEの出力の低下や燃費の悪化を極力抑制することができる。
【0048】
次に、第1実施形態に含まれる制御部材35の変形例を、図3及び図4に基づいて説明する。図3は、制御部材35の変形例を示す要部断面図であり、図4は、制御部材35の変形例を示す平面図である。上述した制御部材35と変形例における制御部材51とでは、その形状が相違する。
【0049】
制御部材51は、図3及び図4に示されるように、円盤形状に構成され、略中央の位置に燃料通路52が形成されている。この燃料通路52は、圧力室34と圧力室37とを連通するものであり、圧力室37に導かれた供給燃料を圧力室34に導き得るように構成されている。燃料通路52が形成された位置は、ニードル弁26がリフトしてピストン31と制御部材51とが当接したときに、ピストン31により燃料通路52が塞がれる位置とされている。
【0050】
ニードル弁26がリフトしていない状態では、上述したように、圧力室34と圧力室37とが燃料通路52を介して連通するので、圧力室34内の供給燃料の圧力が圧力室37内の供給燃料の圧力と同等の圧力に維持されることになる。
【0051】
また、燃料制御弁41が燃料排出通路39を開いた状態とし、圧力室37内の燃料が排出され圧力室37内の供給燃料の圧力が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力より低くなり、ニードル弁26がリフトを開始し、ピストン31と制御部材51とが当接すると、ピストン31により燃料通路52が塞がれる。このため、スプールバルブ43が連通路42を閉じた状態となり圧力室34内の燃料の排出が禁止されている場合において、圧力室34と圧力室37との連通が遮断されると、圧力室34は略密閉された状態となり、ニードル弁26はピストン31と制御部材51とが当接した位置以上のリフトが制限されることになる。したがって、ニードル弁26はピストン31と制御部材35とが当接するとそのリフトが制限されることになり、ニードル弁26のリフト量はプレリフト量(L)に制限される。
【0052】
以上のように、図3及び図4に示される変形例も、上述した第1実施形態と同様の作用、効果を有することはもちろんのこと、制御部材51に燃料通路52を設けることにより、圧力室34と圧力室37との圧力を確実に同等の圧力にすることができる。また、ニードル弁26がリフトしてピストン31と制御部材51とが当接したときには、燃料通路52がピストン31により塞がれるので、圧力室34内の供給燃料が燃料通路52から圧力室37に漏れる、あるいは、圧力室37内の供給燃料が圧力室34に漏れることはなく、圧力室34内の圧力を適切に保つことができる。
【0053】
また、更なる変形例としては、スプールバルブ43を用いる代わりに、ECU11から送られる制御信号に応じて連通路42を開閉する電磁式の制御弁を用いるようにしてもよい。この場合には、スプールバルブ43、スプールバルブ43の動作を制御するための油圧ポンプ44及び油圧制御部45が不要となるため、燃料噴射装置1の構成は極めて簡易なものとすることができる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、図5及び図6に基づいて、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置について説明する。図5は、燃料噴射装置の構成を示す模式図である。本第1実施形態は、本発明に係る内燃機関の燃料噴射装置を分配型燃料噴射ポンプを用いたディーゼルエンジンの燃料噴射装置に適用したものである。
【0055】
燃料噴射装置101は、図5に示されるように、燃料を圧送する分配型燃料噴射ポンプ102と、多気筒ディーゼルエンジンの各気筒毎に形成される燃焼室にそれぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁110と、分配型燃料噴射ポンプ102から各気筒ごとに設けられた燃料噴射弁110に供給するための燃料供給管103とを有している。分配型燃料噴射ポンプ102それ自体は、従来公知のものであり、その詳細な説明を省略する。
【0056】
燃料噴射弁110は、図5に示されるように、弁体としてのノズルボディ121を有している。ノズルボディ121の先端には、燃料を噴射する燃料噴射口22と、これより内方で燃料噴射口22に連通する略円錐形状の弁座部23が形成されている。ノズルボディ121にはその中心に弁孔124と案内孔125とが穿設されている。弁孔124は、後述する圧力室134よりも小径に形成されている。弁孔124の内部には、ニードル弁26が摺動可能に精密に嵌合されている。ニードル弁26は、その円錐形状先端が弁座部23に当接可能とされている。このニードル弁26が後述する供給燃料の圧力を受けて昇降作動(リフト)することによって、弁座部23とニードル弁26の円錐形状先端との間の間隔を制御し間欠的に燃料を燃料噴射口22を通じて燃焼室内に噴射供給させるようになっている。
【0057】
また、ニードル弁26には円錐形受圧面26aが形成されており、この円錐形受圧面26aとノズルボディ121(弁孔124)との間に燃料溜り部27が形成される。ノズルボディ121には、一端が燃料溜り部27に開口し、他端が燃料供給管103に接続される燃料通路28が形成されている。したがって、ニードル弁26の円錐形受圧面26aには、燃料供給管9及び燃料通路28を介して燃料溜り部27に導かれた供給燃料の圧力が作用するように構成されている。
【0058】
燃料噴射口22は、ノズルボディ121の先端側に設けられる第1燃料噴射口22aと、第1燃料噴射口22aより後側に設けられる第2燃料噴射口22bとからなり、ニードル弁26(円錐形状先端)のリフト量に応じて、リフト量が所定のリフト量(L)以下の場合には第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給し、リフト量が所定のリフト量(L)より大きい場合には第1燃料噴射口22a及び第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給するように構成されている。
【0059】
案内孔125には、ピストン131が摺動可能に精密に嵌合されている。ピストン131とニードル弁26との間には、図5に示されるように、ピストン131とニードル弁26との間の距離を規定するためのロッド132と、ピストン131及びニードル弁26の夫々に当接し、ニードル弁26に対してニードル弁26のリフト方向とは反対の方向(図1中下方向)に付勢力を付与するバネ133とが配設されている。ここで、ニードル弁26、ピストン131及びロッド132は、各請求項における弁部材を構成している。なお、本実施形態においては、ニードル弁26、ピストン131及びロッド132を夫々別体にて構成しているが、たとえばニードル弁26とロッド132とを一体に構成してもよいし、あるいは、ニードル弁26とピストン131とロッド132とを一体に構成してもよい。
【0060】
ノズルボディ121には、図5に示されるように、案内孔125に連続して、弁孔124より大径の圧力室134が形成されており、この圧力室134が各請求項におけるリフト制御室を構成している。この圧力室134には、案内孔125と圧力室134との連通を遮断するように制御部材135が配設されており、この制御部材135が各請求項におけるリフト制御部材を構成している。したがって、圧力室134に制御部材135が配設された状態においては、圧力室134は案内孔125と油圧的に隔離されることになる。また、制御部材135は、圧力室134内をニードル弁26のリフト方向及びリフト方向とは反対の方向に移動可能とされている。圧力室134内には、制御部材135に対してニードル弁26のリフト方向とは反対の方向(図5中下方向)に付勢力を付与するバネ36が配設されており、このバネ36が各請求項における付勢力付勢部材を構成している。
【0061】
ピストン131と制御部材135とは、図5に示されるように、ピストン131が最もニードル弁26のリフト方向とは反対の方向(図5中下方向)の位置にあり、制御部材135が最もニードル弁26のリフト方向とは反対の方向(図5中下方向)の位置(初期位置)にある場合に、所定の距離Lを隔てて設けられており、これらのピストン131、制御部材135及びノズルボディ121(案内孔25)により画成されるピストン室137がピストン131と制御部材135との間に構成される。
【0062】
また、ノズルボディ121には、圧力室134に燃料通路28の燃料を導くための燃料通路161が接続されている。燃料通路161の途中の部分には、リフト制御弁としてのスプールバルブ143が設けられており、このスプールバルブ143は、燃料通路161を介して圧力室134に供給燃料を導く状態と、圧力室134内の燃料を燃料排出通路162を介して排出する状態とを選択するように構成されている。スプールバルブ143は、油圧源としての油圧ポンプ44から圧油が油圧制御部45に送られて油圧制御部45にて調整された圧油の制御油圧により作動するものであり、この制御油圧がバネ143aの付勢力により規定される作動圧力より低い場合には圧力室134内の燃料を燃料排出通路162を介して排出する状態とし、上述した制御油圧がバネ143aの付勢力により規定される作動圧力より高い場合には燃料通路161を介して圧力室134に供給燃料を導く状態とするように構成されている。
【0063】
なお、制御部材135の圧力室134に臨む面135bは、圧力室134内に導かれた供給燃料からの圧力を受ける受圧面を構成しており、圧力室134の一部を構成する。また、制御部材135の圧力室134に臨む面135bの面積は、ニードル弁26が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力を受ける受圧面積よりも大きくなる。
【0064】
油圧制御部45は、ECU111から送られる制御信号に基づいて作動し、油圧ポンプ44から送られてくる圧油の圧力を調整して、スプールバルブ143の作動を制御するための制御圧力を生成するように構成されている。ECU111は、クランク角度センサ12及びアクセル開度センサ13からの出力信号に基づいてエンジンEが所定の運転状態(たとえば低回転低負荷)にあるか否かを判断し、エンジンEが所定の運転状態にある場合には、油圧制御部45に対して制御油圧をバネ143aの付勢力により規定される作動圧力より高くするように制御信号を出力し、エンジンEが所定の運転状態にない場合には、油圧制御部45に対して制御油圧をバネ143aの付勢力により規定される作動圧力より低くするように制御信号を出力する。
【0065】
次に、図6を参照しながら、上述したように構成された燃料噴射弁110の作動について説明する。図6は、スプールバルブ143の作動状態及びニードル弁26のリフト量と間の関係を示す線図である。
【0066】
油圧制御部45が、ECU111から送られた制御信号に基づいて、制御油圧をバネ143aの付勢力により規定される作動圧力より低くした場合には、スプールバルブ143は圧力室134内の燃料を燃料排出通路162を介して排出する状態(図6中Cの領域)となる。
【0067】
また、分配型燃料噴射ポンプ102にて圧送された燃料は、燃料供給管103を介してノズルボディ121の燃料通路28に供給燃料として送られ、更に、燃料通路に28に送られた供給燃料は燃料溜り部27に導かれる。燃料溜り部27内の供給燃料の圧力が所定値より高くなると、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力により、ニードル弁26に対してリフト方向の作用力が働き、ニードル弁26がリフトを開始し、ニードル弁26は弁座部23から離れ始める。
【0068】
ニードル弁26が、ピストン131と制御部材135との間に形成された間隙の距離Lに相当する量までリフトすると、ピストン131と制御部材135とが当接することになる。このとき、圧力室134内の供給燃料は、スプールバルブ143が圧力室134内の燃料を排出する状態となっているために、スプールバルブ143及び燃料排出通路162を介して排出されており、燃料通路161がスプールバルブ143により遮断されて圧力室134に供給燃料を導くことはなく、圧力室134内の圧力は、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力より低く状態となっている。したがって、ニードル弁26は、ピストン131と制御部材135とが当接した後も更にリフトし続けることになり、ピストン131と制御部材135との間に形成された間隙の距離Lに相当するリフト量より大きくリフトすることになる。このように、ニードル弁26のリフト量がピストン131と制御部材135との間に形成された間隙の距離Lに相当するリフト量より大きくなる状態では、燃料噴射弁110は第1燃料噴射口22a及び第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給する。
【0069】
一方、油圧制御部45が、ECU111から送られた制御信号に基づいて、制御油圧をバネ143aの付勢力により規定される作動圧力より高くした場合には、スプールバルブ143は燃料通路161を介して圧力室134に供給燃料を導く状態(図6中Dの領域)となる。
【0070】
また、分配型燃料噴射ポンプ102にて圧送された燃料は、燃料供給管103を介してノズルボディ121の燃料通路28に供給燃料として送られ、更に、燃料通路に28に送られた供給燃料は燃料溜り部27に導かれる。燃料溜り部27内の供給燃料の圧力が所定値より高くなると、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力により、ニードル弁26に対してリフト方向の作用力が働き、ニードル弁26がリフトを開始し、ニードル弁26は弁座部23から離れ始める。
【0071】
ニードル弁26が、ピストン131と制御部材135との間に形成された間隙の距離Lに相当する量までリフトすると、ピストン131と制御部材135とが当接することになる。このとき、スプールバルブ143が燃料通路161を介して圧力室134に供給燃料を導く状態となっており、圧力室134に供給燃料が導かれるために、圧力室134内の供給燃料の圧力は、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力と同等の圧力に保たれている。更に、制御部材135の面135bの面積は、ニードル弁26が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力を受ける受圧面積よりも大きいことから、制御部材135の面135bに作用してピストン131を押し下げようとする力は、ニードル弁26に対してリフト方向に働く力よりも大きくなり、ピストン131と制御部材135とが当接すると、ニードル弁26のそれ以上のリフトが制限されることになる。したがって、ニードル弁26は、ピストン131と制御部材135とが当接するとそのリフトが制限されることになり、ニードル弁26のリフト量は、ピストン131と制御部材135との間に形成された間隙の距離Lに相当するリフト量、いわゆるプレリフト量に制限される。このように、ニードル弁26のリフト量がプレリフト量(L)に制限された状態では、燃料噴射弁110は第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給する。
【0072】
以上のように、本第2実施形態の燃料噴射装置101によれば、上述した第1実施形態と同様に、ニードル弁26のリフト量がプレリフト量(L)に制限された状態では、燃料噴射弁110は第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給するので、燃料噴射弁110における最小燃料流路面積が小さくなり噴射率を抑制することができる。このように噴射率を抑制することにより、予混合燃焼割合を小さくすることができ、燃焼初期の急激な圧力上昇を抑制して、燃焼騒音を低減することができる。また、燃焼温度を低くすることもできるので、NOxの生成が抑制できる。一方、ニードル弁26のリフト量がプレリフト量(L)より大きくなる状態では、燃料噴射弁110は第1燃料噴射口22a及び第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給するので、噴射期間を短縮することができ、燃焼期間の短い後燃えが少ない燃焼が可能となる。このように、燃焼期間の短い後燃えが少ない燃焼では熱効率がよくなるために、エンジンEの出力を向上することができる。
【0073】
また、ニードル弁26のリフト量に応じて、燃料を噴射供給する燃料噴射口22(第1燃料噴射口22a、第2燃料噴射口22b)の数が切換えられるので、エンジンEの運転状態に応じて良好なエンジン性能を得ることができる燃料噴射口22(第1燃料噴射口22a、第2燃料噴射口22b)の数を的確に選択することができる。
【0074】
また、燃料噴射弁110は、上述したように、制御部材135と、圧力室134と、バネ36と、スプールバルブ143とを備えており、分配型燃料噴射ポンプ102から燃料が圧送されて燃料溜り部27に導かれ、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力が所定値より高くなると、ニードル弁26がリフトする。スプールバルブ143により燃料通路161を介して圧力室134に供給燃料を導く状態とすると、圧力室134内の圧力は燃料溜り部27内の供給燃料の圧力、すなわちニードル弁26に対してニードル弁26のリフト方向に作用する供給燃料の圧力と同等となり、ピストン131は制御部材135に当接してニードル弁26のリフトがプレリフト量(L)に制限される。一方、スプールバルブ143により圧力室134内の燃料を燃料排出通路162を介して排出する状態とすると、圧力室134内の圧力は燃料溜り部27内の供給燃料の圧力、すなわちニードル弁26に対してニードル弁26のリフト方向に作用する供給燃料の圧力より低くなり、ピストン131と制御部材135とが当接した後も、ニードル弁26は更にリフトする。
【0075】
したがって、ニードル弁26のリフト量の制御は、主として圧力室134内に導かれた供給燃料の圧力の大きさに基づいて行われることになり、バネ36の付勢力は制御部材135を上述した初期位置に復帰させ得る程度のものでよい。この結果、バネ36の付勢力を従来のものに比して小さく設定することができ、ノズルボディ121の大型化を抑制してエンジンへの搭載性及び燃料噴射弁110の組み立て作業性の悪化を防ぐことができる。また、圧力室134に供給燃料を導いて、圧力室134の圧力として供給燃料の圧力を用いていることから、新たな油圧源を設けることなくニードル弁26のリフト量の制御を行うことが可能となり、油圧を発生させるために必要な動力が従来のものに比して小さくなる。この結果、エンジンの出力の低下や燃費の悪化を防ぐことができる。
【0076】
また、スプールバルブ143により、圧力室134内の燃料の排出あるいは圧力室134への供給燃料の導入を制御することが可能となり、燃料噴射と同期して圧力室134内の圧力の制御を行うことができる。また、圧力室134内の圧力を制御し得る構造が、スプールバルブ143という極めて簡易な構成にて、簡易且つ低コストで実現可能となる。
【0077】
また、スプールバルブ143により圧力室134内の燃料の排出あるいは圧力室134への供給燃料の導入を切換えるようにしているので、スプールバルブ143を動作させるための制御油圧は比較的低い油圧であればよく、制御油圧を発生させるための油圧ポンプ44の駆動による動力損失は小さくなる。この結果、制御油圧を発生させる油圧ポンプ44を設けた場合においても、エンジンの出力の低下や燃費の悪化を極力抑制することができる。
【0078】
(第3実施形態)
次に、図7に基づいて、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置について説明する。図7は、燃料噴射装置の構成を示す模式図である。本第3実施形態は、第1実施形態と同様に、本発明に係る内燃機関の燃料噴射装置をディーゼルエンジンの蓄圧式燃料噴射装置に適用したものである。第3実施形態の燃料噴射装置201は、第1実施形態の燃料噴射装置1におけるスプールバルブ43の代わりに、電磁式のリフト制御弁243を用いている点で第1実施形態のものと相違する。
【0079】
燃料噴射装置201の燃料噴射弁210のノズルボディ221には、圧力室34から絞り部242aを介して燃料を燃料噴射弁210外に排出するための燃料排出通路242が設けられている。燃料排出通路242の絞り部242aよりも下流側の部分にはリフト制御弁243が設けられており、このリフト制御弁243は電磁弁からなり、ECU211から送られてくる制御信号に基づいて作動し、絞り部242aよりも下流側の燃料排出通路242を開閉するように構成されている。
【0080】
ECU211は、クランク角度センサ12及びアクセル開度センサ13からの出力信号に基づいてエンジンEが所定の運転状態(たとえば低回転低負荷)にあるか否かを判断し、リフト制御弁243に対して、エンジンEが所定の運転状態にある場合には燃料排出通路242を閉じた状態とするように制御信号を出力し、エンジンEが所定の運転状態にない場合には燃料排出通路242を開いた状態とするように制御信号を燃料制御弁41への制御信号の出力と同期して出力する。
【0081】
リフト制御弁243が、ECU211から送られた制御信号に基づいて、燃料排出通路242を閉じた状態とすると、圧力室34からの燃料の排出が禁止される。このように、リフト制御弁243により圧力室34からの燃料の排出が禁止された状態において、燃料制御弁41が、ECU211から送られた制御信号に基づいて、燃料排出通路39を開いた状態となると、圧力室37内の供給燃料が絞り部39a及び燃料制御弁41を介して排出されることになる。
【0082】
燃料制御弁41が燃料排出通路39を開いた状態とし、圧力室37内の燃料が絞り部39a及び燃料制御弁41を介して排出されると、圧力室37内の供給燃料の圧力が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力より低くなり、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力により、ニードル弁26に対してリフト方向の作用力が働き、ニードル弁26がリフトを開始し、ニードル弁26は弁座部23から離れ始める。
【0083】
ニードル弁26が、ピストン31と制御部材35との間に形成された間隙の距離Lに相当する量までリフトすると、ピストン31と制御部材35とが当接することになる。このとき、圧力室34内の供給燃料は、リフト制御弁243により、その排出が禁止されていることから、圧力室34内の供給燃料の圧力は、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力と同等の圧力に保たれている。更に、制御部材35の面35bの面積は、ニードル弁26が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力を受ける受圧面積よりも大きいことから、制御部材35の面35bに作用してピストン31を押し下げようとする力は、ニードル弁26に対してリフト方向に働く力よりも大きくなり、ピストン31と制御部材35とが当接すると、ニードル弁26のそれ以上のリフトが制限されることになる。したがって、ニードル弁26は、ピストン31と制御部材35とが当接するとそのリフトが制限されることになり、ニードル弁26のリフト量は、ピストン31と制御部材35との間に形成された間隙の距離Lに相当するリフト量、いわゆるプレリフト量に制限される。このように、ニードル弁26のリフト量がプレリフト量(L)に制限された状態では、燃料噴射弁210は第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給する。
【0084】
一方、ECU211から送られた制御信号に基づいて、リフト制御弁243が燃料排出通路242を開いた状態とする共に、燃料制御弁41が燃料排出通路39を開いた状態とすると、圧力室34内の供給燃料が燃料排出通路242を介して排出され、また、圧力室37内の供給燃料が絞り部39a及び燃料制御弁41を介して排出される。圧力室37内の供給燃料が排出されると、上述したように、圧力室37内の供給燃料の圧力が燃料溜り部27内の供給燃料の圧力より低くなり、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力により、ニードル弁26に対してリフト方向の作用力が働き、ニードル弁26がリフトを開始し、ニードル弁26は弁座部23から離れ始める。
【0085】
ニードル弁26が、ピストン31と制御部材35との間に形成された間隙の距離Lに相当する量までリフトすると、ピストン31と制御部材35とが当接することになる。このとき、圧力室34内の供給燃料は燃料排出通路242を介して排出されていることから、圧力室34内の圧力も、燃料溜り部27内の供給燃料の圧力より低く状態となっている。したがって、ニードル弁26は、ピストン31と制御部材35とが当接した後も更にリフトし続けることになり、ピストン31と制御部材35との間に形成された間隙の距離Lに相当するリフト量より大きくリフトすることになる。このように、ニードル弁26のリフト量がピストン31と制御部材35との間に形成された間隙の距離Lに相当するリフト量より大きくなる状態では、燃料噴射弁210は第1燃料噴射口22a及び第2燃料噴射口22bから燃料を噴射供給する。
【0086】
以上のように、本第3実施形態の燃料噴射装置201によれば、第1実施形態の燃料噴射装置1と同様の作用、効果を有することはもちろんのこと、第1実施形態の燃料噴射装置1のものに比して、スプールバルブ43、スプールバルブ43の動作を制御するための油圧ポンプ44及び油圧制御部45が不要となるため、燃料噴射装置201の構成は極めて簡易なものとすることができる。
【0087】
なお、第1〜第3実施形態においては、燃料噴射弁10,110,210として、複数の燃料噴射口を有し、ニードル弁26のリフト量に応じて燃料を噴射供給する燃料噴射口の数が切換わる可変噴射口タイプの燃料噴射弁を用いているが、これに限られることなく、たとえばピントルノズルあるいはスロットルノズルタイプの単孔燃料噴射弁を用いるようにしてもよいが、ニードル弁のリフト量に応じて最小燃料流路面積が可変となるタイプの燃料噴射弁を用いることが好ましい。
【0088】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、リフト制御室内圧力調整手段がリフト制御室内の燃料の排出を禁止することによりリフト制御室内の圧力を弁部材に作用する供給燃料の圧力と同等の状態とした場合、弁部材が供給燃料の圧力の作用によってリフトすると、リフト制御部材はリフト制御室内の圧力により弁部材のリフト方向への移動が規制されているために、弁部材はリフト制御部材に当接してリフトが制限される。したがって、弁部材のリフト量は、弁部材とリフト制御部材との間の距離に相当するリフト量に制限される。一方、リフト制御室内圧力調整手段がリフト制御室内の燃料を排出することによりリフト制御室内の圧力を弁部材に作用する供給燃料の圧力より低い状態とした場合、弁部材が供給燃料の圧力の作用によってリフトすると、弁部材はリフト制御部材に当接するものの、リフト制御室内の圧力が低下しリフト制御部材も弁部材のリフト方向に移動可能な状態となっているために、弁部材のリフト量は、弁部材とリフト制御部材との間の距離に相当するリフト量より更にリフトすることになる。
【0089】
弁部材のリフト量の制御は、上述したようにリフト制御室内の圧力の大きさに基づいて行われることになり、付勢力付与部材の付勢力はリフト制御部材を初期位置に復帰させ得る程度のものでよく、付勢力付与部材の付勢力を上述した従来のものに比して小さく設定することができる。この結果、ノズルボディの大型化を抑制してエンジンへの搭載性及び燃料噴射装置の組み立て作業性の悪化を防ぐことができる。
【0090】
また、リフト制御室に供給燃料を導いて、リフト制御室の圧力として供給燃料の圧力を用いていることから、新たな油圧源を設けることなく弁部材のリフト量の制御を行うことが可能となる。この結果、油圧を発生させるために必要な動力が上述した従来のものに比して小さくなり、エンジン出力の低下や燃費の悪化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置における、スプールバルブの開閉状態及び燃料制御弁の開閉状態とニードル弁のリフト量と間の関係を示す線図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置に含まれる、制御部材の変形例を示す要部断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置に含まれる、制御部材の変形例を示す平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置における、スプールバルブの作動状態とニードル弁のリフト量との間の関係を示す線図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置の構成を示す模式図である。
【図8】従来の内燃機関の燃料噴射装置を示す断面図である。
【符号の説明】
E…多気筒ディーゼルエンジン、1,101,201…燃料噴射装置、8…コモンレール、9…燃料供給管、10,110,210…燃料噴射弁、11,111,211…ECU、21,121,221,301…ノズルボディ、22,302…燃料噴射口、22a…第1燃料噴射口、22b…第2燃料噴射口、23…弁座部、24,124…弁孔、25,125…案内孔、26,303…ニードル弁、27…燃料溜り部、28…燃料通路、31,131…ピストン、32,132…ロッド、33…バネ、34,134…圧力室、35,51,135…制御部材、36…バネ、37…圧力室、38…燃料通路、39…燃料排出通路、41…燃料制御弁、42…連通路、43,143…スプールバルブ、44…油圧ポンプ、45…油圧制御部、52…燃料通路、102…分配型燃料噴射ポンプ、103…燃料供給管、161…燃料通路、162…燃料排出通路、242…燃料排出通路、243…リフト制御弁、307…バネ。

Claims (6)

  1. 燃料を噴射する燃料噴射口を有するノズルボディと、
    前記ノズルボディの内部でリフト可能に保持され、供給燃料の圧力の作用によってリフトして前記燃料噴射口を開く弁部材と、
    前記弁部材とは所定のリフト量相当の距離を隔てて設けられ、前記弁部材と当接可能な第1の面及び該第1の面とは反対側の第2の面を有するリフト制御部材と、
    前記弁部材と前記リフト制御部材の前記第1の面とにより画成される室と、
    前記リフト制御部材の前記第2の面がその一部を構成し、前記供給燃料が導かれるリフト制御室と、
    前記リフト制御室内に設けられ、前記リフト制御部材に対して前記弁部材のリフト方向とは反対方向に付勢力を付与する付勢力付与部材と、
    前記リフト制御室内の燃料を排出することにより前記リフト制御室内の圧力を前記弁部材に作用する前記供給燃料の圧力より低い状態とし、また、前記リフト制御室内の燃料の排出を禁止することにより前記リフト制御室内の圧力を前記弁部材に作用する前記供給燃料の圧力と同等の状態とするリフト制御室内圧力調整手段と、を備え、
    前記リフト制御室内圧力調整手段により前記リフト制御室内の圧力が前記弁部材に作用する供給燃料の圧力と同等とされた状態において、前記弁部材に作用する前記供給燃料の圧力が前記弁部材と前記第1の面とにより画成される前記室の圧力よりも高く前記弁部材が供給燃料の圧力の作用によってリフトすると、前記弁部材が前記リフト制御部材に当接して、前記弁部材のリフト量が前記弁部材と前記リフト制御部材との間の距離に相当するリフト量に制限され、
    前記リフト制御室内圧力調整手段により前記リフト制御室内の圧力が前記弁部材に作用する供給燃料の圧力より低くされた状態において、前記弁部材に作用する前記供給燃料の圧力が前記弁部材と前記第1の面とにより画成される前記室の圧力よりも高く前記弁部材が供給燃料の圧力の作用によってリフトすると、前記弁部材及び前記リフト制御部材が前記弁部材のリフト方向に移動して前記弁部材のリフト量が前記弁部材と前記リフト制御部材との間の距離に相当するリフト量より大きくなることを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。
  2. 前記弁部材と前記第1の面とにより画成される前記室は、前記供給燃料が導かれる燃料制御室であって
    前記燃料制御室に連通して、前記燃料制御室内の燃料を排出する燃料排出通路と、
    前記燃料排出通路の途中に設けられ、前記燃料排出通路を開閉する燃料制御弁と、を更に備え、
    前記リフト制御室内圧力調整手段は、
    前記燃料排出通路の前記燃料制御弁よりも前記燃料制御室側の部分と前記リフト制御室とを連通する連通路と、
    前記連通路の途中に設けられ、前記連通路を開閉するリフト制御弁とを有していることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
  3. 前記リフト制御弁は、油圧源から送られる制御油圧により、前記連通路を開いた状態、あるいは、前記連通路を閉じた状態に切換えられるスプールバルブにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
  4. 前記リフト制御部材には、前記燃料制御室と前記リフト制御室とを連通させる燃料通路が、前記弁部材が前記リフト制御部材に当接したときに前記弁部材により塞がれる位置に設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
  5. 前記リフト制御室内圧力調整手段は、前記リフト制御室に前記供給燃料を導く状態と、前記リフト制御室内の燃料を排出する状態とを選択するリフト制御弁を有していることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
  6. 前記リフト制御弁は、油圧源から送られる制御油圧により、前記リフト制御室に前記供給燃料を導く状態、あるいは、前記リフト制御室内の燃料を排出する状態に切換えられるスプールバルブにより構成されていることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
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