JP2004331587A - ジアリールアミン系化合物、電荷輸送材料、有機電界発光素子材料、及び有機電界発光素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式(1)で表わされるジアリールアミン系化合物を用いる。
(Ar1〜Ar4はハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90の範囲にある1価の電子吸引性基、1価の芳香族複素環基、又は上記の基により置換された1価の基の何れかで置換された芳香族炭化水素基を表わす。
Zは、−CO−、−SO2−、又は2価の芳香族複素環基の何れかを含むか、或いは、ハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90である電子吸引性基、又は1価の芳香族複素環基の何れかを有するか、の何れかを満たす2価の連結基を表わす。)
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規ジアリールアミン系化合物と、これを用いた電荷輸送材料、有機電界発光素子材料、及び有機電界発光素子に関する。詳しくは、有機化合物から成る発光層に電界をかけて光を放出する薄膜型デバイスの改良に有用な新規ジアリールアミン系化合物と、これを用いた電荷輸送材料、有機電界発光素子材料、及び有機電界発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、薄膜型の電界発光(electro luminescence)素子(以下適宜「EL素子」と略称する。)としては、無機材料である周期表III−V族化合物の半導体(ZnS、CaS、SrS等)に、発光中心としてMnや希土類元素(Eu、Ce、Tb、Sm等)をドープしたものが一般的である。
【0003】
上記の無機材料から作製したEL素子は、
1)交流駆動が必要である(50〜1000Hz)、
2)駆動電圧が高い(〜200V)、
3)フルカラー化が困難である(特に青色)、
4)周辺駆動回路のコストが高い、という課題を有している。
【0004】
近年、上記の課題の改良のため、有機薄膜を用いたEL素子(有機電界発光素子、有機EL素子)の開発が行なわれるようになった。例えば、発光効率を高めるため、電極からのキャリアー注入の効率向上を目的として電極の種類の最適化を行ない、芳香族ジアミンから成る正孔輸送層と8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体から成る発光層とを設けた有機電界発光素子の開発(非特許文献1参照)により、従来のアントラセン等の単結晶を用いたEL素子と比較して発光効率の大幅な改善がなされている。また、例えば8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザー用蛍光色素をドープすること(非特許文献2参照)により、発光効率の向上や発光波長の変換等が行なわれており、実用特性に近付いている。
【0005】
上記の様な低分子材料を用いた電界発光素子の他にも、発光層の材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(3−アルキルチオフェン)等の高分子材料を用いた電界発光素子の開発や、ポリビニルカルバゾール等の高分子に低分子の発光材料と電子移動材料とを混合したEL素子の開発も行なわれている。
【0006】
EL素子の発光効率を上げる試みとして、蛍光ではなく燐光を用いることも検討されている。三重項励起状態からの発光である燐光を利用すれば、一重項励起状態からの発光である従来の蛍光を用いたEL素子と比べて、最大で4倍の効率向上が期待される。この目的のためにクマリン誘導体やベンゾフェノン誘導体を発光層とすることが検討されたが、従来は極めて低い輝度しか得られなかった。その後、三重項励起状態を利用する試みとして、ユーロピウム錯体を用いることが検討されてきたが、これも高効率の発光には至らなかった。
【0007】
最近、以下に示す白金錯体(T−1)を用いることで、高効率の赤色発光が可能なことが報告された(非特許文献3参照)。その後、以下に示すイリジウム錯体(T−2)を発光層にドープすることで、更に緑色発光の効率が大きく改善されている(非特許文献4参照)。
【0008】
【化3】
(上記式中、−Etはエチル基を表わす。)
【0009】
【化4】
【0010】
有機電界発光素子をフラットパネル・ディスプレイの分野に応用する際の大きな課題の一つとして、駆動安定性の向上が挙げられる。特に、低分子材料を積層させてなる有機電界発光素子において、燐光発光を利用した素子の寿命が蛍光発光を利用した素子と比較して短く、これが課題となっている。燐光発光素子は高効率で発光するため、デバイスの低消費電力化が期待され、また照明用途としても有望であるが、その長寿命化は実用化において必須となっている。
【0011】
これまでに報告されている有機電界発光素子では、基本的には正孔輸送層と電子輸送層の組み合わせにより発光を得ている。陽極から注入された正孔は正孔輸送層を移動し、陰極から注入されて電子輸送層を移動してくる電子と、両層の界面近傍で再結合をし、正孔輸送層及び/又は電子輸送層を励起させて発光させるのが原理である。近年は、正孔輸送層と電子輸送層の間に発光層を設けることにより、発光効率を向上させている素子が一般的である。
【0012】
ところで、発光層中での励起子生成を促進させ、素子の発光の高効率化・発光色の高純度化を図ることを目的として、発光層の陰極側の面に接して正孔阻止層を設けることが提案されている(特許文献1参照)。正孔阻止層を設けないと、再結合領域が電子輸送層まで及び、発光効率が蛍光素子に比べて低下するという課題や、電子輸送層に用いられている材料が発光してしまい、素子の発光色の色純度が低下するという課題が発生するが、正孔阻止層を設けることでこうした課題を防ぐことができる。
【0013】
ここで、正孔阻止層に用いられる材料の選択は非常に重要であり、特に蛍光発光素子の中でも青色発光素子の場合や、燐光発光素子の場合には、この正孔阻止層に用いられる材料の種類が、素子の発光効率や駆動寿命に大きな影響を及ぼすことが知られている(非特許文献5)。
【0014】
【特許文献1】
特開2002−8860号公報
【非特許文献1】
Appl. Phys. Lett., 51巻,913頁,1987年
【非特許文献2】
J. Appl. Phys., 65巻,3610頁,1989年
【非特許文献3】
Nature, 395巻,151頁,1998年
【非特許文献4】
Appl. Phys. Lett., 75巻,4頁,1999年
【非特許文献5】
Appl. Phys. Lett., 81巻,162頁,2002年
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
有機電界発光素子の発光の高効率化、発光色の高純度化、駆動安定性の向上を図るためには、正孔阻止層の材料として、陰極から注入された電子を効率良く発光層に輸送できること(電子輸送能)に加えて、電子と再結合しない正孔が発光層を通過して陰極に至ろうとするのを確実に阻止できること(正孔阻止能)が求められる。
【0016】
しかしながら、有機電界発光素子に従来用いられてきた材料は、これらの条件を充分に満たすものではなかった。よって、正孔阻止層に適した新たな材料を開発することが望まれていた。
【0017】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであって、優れた電子輸送能及び正孔阻止能を有し、有機電界発光素子の正孔阻止層の材料として好適に使用できる化合物と、この化合物を含む電荷輸送材料、有機電界発光素子材料、更には、高発光効率、高色純度で、駆動安定性に優れた有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明等者は、鋭意検討を重ねた結果、連結基に対して対称な位置にアリール骨格を有する対称性の高い構造のトリアリールアミン系化合物に、電子吸引性の部分構造を適当数導入することにより、塩基性度が適度に低下して酸化電位が安定化し(即ち、酸化電位が上昇して、化合物の耐酸化性が向上し)、且つ、広い光学的バンドギャップを有する化合物群が合成するに到った。これらの化合物は電子輸送能及び正孔阻止能に優れていることから、有機電界発光素子の正孔阻止層の材料に用いることで、発光効率及び発光色純度の向上を実現でき、上記課題が効果的に解決されることを見出して、本発明を完成するに到った。
【0019】
即ち、本発明の要旨は、下記一般式(1)で表わされることを特徴とする、ジアリールアミン系化合物に存する(請求項1)。
【化5】
(上記一般式(1)中、Ar1〜Ar4はそれぞれ独立に、下記条件(a)で定義される基を少なくとも1つ有する芳香族炭化水素基を表わす。なお、Ar1〜Ar4は下記条件(a)で定義される基以外の置換基を有していても良く、隣接する置換基同士は結合して、置換基を有していても良い芳香族炭化水素環、置換基を有していても良い芳香族複素環、及び置換基を有していても良い脂肪族炭化水素環からなる群より選ばれる何れかの環を形成していても良い。
Zは、下記条件(b)を満たす2価の連結基を表わす。
・条件(a):
ハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90の範囲にある1価の電子吸引性基と、置換基を有していても良い1価の芳香族複素環基と、上記の電子吸引性基又は芳香族複素環基によって置換された1価の基とからなる群より選ばれる基である。
・条件(b):
−CO−と、−SO2−と、置換基を有していても良い2価の芳香族複素環基とからなる群より選ばれる少なくとも1個の基を含むか、或いは、ハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90である電子吸引性基と、置換基を有していても良い1価の芳香族複素環基とからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有するか、の何れかを満たす。)
【0020】
このとき、該ジアリールアミン系化合物が下記一般式(2)で表わされるものであっても良い(請求項2)。
【化6】
(上記一般式(2)中、R1〜R5のうちの少なくとも1つ、R6〜R10のうちの少なくとも1つ、R11〜R15のうちの少なくとも1つ、及びR16〜R20のうちの少なくとも1つが、それぞれ前記条件(a)で定義される基である。また、R1〜R20のうち、前記条件(a)で定義される基以外の基は、それぞれ独立に水素原子又は1価の任意の置換基を表わす。なお、隣接する置換基同士は結合して、置換基を有していても良い芳香族炭化水素環、置換基を有していても良い芳香族複素環、及び置換基を有していても良い脂肪族炭化水素環からなる群より選ばれる何れかの環を形成していても良い。
Zは、前記一般式(1)における同符号の基と同義である。)
【0021】
また、本発明の別の要旨は、上記のジアリールアミン系化合物を含むことを特徴とする電荷輸送材料及び有機電界発光素子材料に存する(請求項3,4)。
更に、本発明の別の要旨は、陽極、発光層及び陰極が順次積層されてなる有機電界発光素子であって、上記のジアリールアミン系化合物を含む層を有することを特徴とする有機電界発光素子に存する(請求項5)。
このとき、上記のジアリールアミン系化合物を含む層を、該発光層と該陰極との間に有することが好ましい(請求項6)。上記のジアリールアミン系化合物を含む層は、該発光層の該陰極側界面に接して設けられた正孔阻止層であることが好ましい(請求項7)。この場合、該正孔阻止層のイオン化ポテンシャルが、該発光層のイオン化ポテンシャルより0.1eV以上大きいことが好ましい(請求項8)。また、該正孔阻止層と該陰極との間に、電子輸送層を有することが好ましい(請求項9)。
更に、該発光層には、周期表第7〜11族から選ばれる少なくとも1種の金属を含む有機金属錯体を含有することが好ましい(請求項10)。
【0022】
後述する様に、正孔阻止層を構成する材料は、優れた正孔阻止能を得る観点から、発光層中の発光に寄与する物質のイオン化ポテンシャル(発光層がホスト材料とドーパントを含んでいる場合には、ホスト材料のイオン化ポテンシャル)に比べ、0.1eV以上大きなイオン化ポテンシャルを有することが好ましい。また、優れた電子輸送能が要求されるとともに、有機電界発光素子の駆動安定性向上の観点からは、高いガラス転移温度(Tg)を有することも必要である。更には、安定な薄膜形状を与える化合物であることや、電気化学的及び化学的に安定で、トラップとなったり発光を消光したりする不純物が製造時及び使用時に発生し難い化合物であることも要求される。上述のジアリールアミン系化合物はこれらの条件を全て満たすことから、有機電界発光素子の正孔阻止層の材料として好適に用いることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のジアリールアミン系化合物は、下記一般式(1)で表わされることを特徴とする。
【化7】
(上記一般式(1)中、Ar1〜Ar4はそれぞれ独立に、下記条件(a)で定義される基を少なくとも1つ有する芳香族炭化水素基を表わす。なお、Ar1〜Ar4は下記条件(a)で定義される基以外の置換基を有していても良く、隣接する置換基同士は結合して、置換基を有していても良い芳香族炭化水素環、置換基を有していても良い芳香族複素環、及び置換基を有していても良い脂肪族炭化水素環からなる群より選ばれる何れかの環を形成していても良い。
Zは、下記条件(b)を満たす2価の連結基を表わす。
・条件(a):
ハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90の範囲にある1価の電子吸引性基と、置換基を有していても良い1価の芳香族複素環基と、上記の電子吸引性基又は芳香族複素環基によって置換された1価の基とからなる群より選ばれる基である。
・条件(b):
−CO−と、−SO2−と、置換基を有していても良い2価の芳香族複素環基とからなる群より選ばれる少なくとも1個の基を含むか、或いは、ハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90である電子吸引性基と、置換基を有していても良い1価の芳香族複素環基とからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有するか、の何れかを満たす。)
【0024】
上記一般式(1)で表わされるジアリールアミン系化合物について、より詳細に説明する。
【0025】
まず、上記一般式(1)中のAr1〜Ar4について説明する。
Ar1〜Ar4は芳香族炭化水素基である。その種類は特に制限されないが、5〜6員の単環又は2〜4縮合環を有する基が好ましい。その炭素数は通常6〜30、好ましくは6〜15である。好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等が挙げられるが、中でもフェニル基が特に好ましい。
【0026】
また、Ar1〜Ar4は、上記条件(a)で定義される基、即ち、ハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90の範囲にある1価の電子吸引性基、置換基を有していても良い1価の芳香族複素環基、又は上記の電子吸引性基若しくは芳香族複素環基によって置換された1価の基を少なくとも1つ有する。
【0027】
電子吸引性基としては、ハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90の範囲内にある1価の基であれば、その種類は特に制限されない。この様な電子吸引性基の具体例としては、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ニトロ基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリールスルホニル基、ハロアルコキシ基、ハロアリールオキシ基、イミド基等が挙げられる。
【0028】
なお、本明細書において、ハメットの置換基定数σpの定義及び値は、「化学の領域増刊122号 薬物の構造活性相関 第96頁〜第103頁 南江堂刊」を参照した。但し、上記文献にハメットの置換基定数σpの値が記載されていない基であっても、公知の手法で測定したハメットの置換基定数σpの値が上記範囲を満たす1価の基であれば、Ar1〜Ar4として同様に用いることが可能である。
【0029】
電子吸引性基の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子や、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜6のハロアルキル基;シアノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基などの炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基;ニトロ基;アセチル基、ピバロイル基などの炭素数2〜20のアシル基;エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基などの炭素数2〜20のカルバモイル基;エチルスルファモイル基等の炭素数2〜20のスルファモイル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基などの炭素数1〜6のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基等の炭素数6〜20のアリールスルホニル基;トリフルオロメタンスルホニル基等の炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基;モノフルオロベンゼンスルホニル基などの炭素数6〜20のハロアリールスルホニル基;トリフルオロメトキシ基など炭素数1〜6のハロアルコキシ基;モノフルオロフェノキシ基などの炭素数6〜20のハロアリールオキシ基;フタルイミド基等の炭素数4〜20のイミド基等が挙げられる。
【0030】
上に例示した電子吸引性基の中でも、本発明のジアリールアミン系化合物の酸化電位を安定化させる点からは、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シアノ基、アシル基、スルホニル基、ニトロ基、ハロアルコキシ基、ハロアリールオキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、及びイミド基が好ましく、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ハロアルコキシ基、及びハロアリールオキシ基がより好ましいものとして挙げられる。
【0031】
また、芳香族複素環基としては、その種類は特に制限されないが、例えばチオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環等由来の、5〜6員の単環又は2〜4縮合環を有する基が好ましい。その炭素数は通常6〜30、好ましくは6〜15である。なお、上記芳香族複素環基は更に置換基を有していても良い。置換基の種類としては、本発明のジアリールアミン系化合物の特徴的な性質を打ち消さない基であれば、特に制限されない。本発明のジアリールアミン系化合物の特徴的な性質を打ち消さない基の具体例については後述する。
【0032】
更に、条件(a)で定義される基として、上記の電子吸引性基又は芳香族複素環基によって置換された1価の基が挙げられる。上記の電子吸引性基又は芳香族複素環基を骨格中に含むものであれば、その種類は特に制限されないが、上述の電子吸引性基又は芳香族複素環基を除いた部分が、本発明のジアリールアミン系化合物の特徴的な性質を打ち消さない基であることが好ましい。その具体例については後述する。
【0033】
Ar1〜Ar4は、上述した条件(a)で定義される基以外に、その他の置換基を有していても良い。その種類は特に制限されないが、本発明のジアリールアミン系化合物の特徴的な性質を打ち消さない基であることが好ましい。
【0034】
本発明のジアリールアミン系化合物の特徴的な性質を打ち消さない基としては、例えばアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、ハロアラルキル基、カルボキシル基、スルホ基、及び芳香族炭化水素基等から選択された基が挙げられる。
【0035】
更に具体的には、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数6〜20のアリールオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6のアルキルチオ基、フェニルチオ基などの炭素数6〜20のアリールチオ基、ジメチルアミノ基、ジトリフルオロメチルアミノ基などの炭素数1〜6の置換アミノ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基などの炭素数2〜20のアシルアミノ基、3−メチルウレイド基などの炭素数2〜20のウレイド基、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基などの炭素数1〜20のスルホンアミド基、ジメチルスルファモイルアミノ基などの炭素数1〜20のスルファモイルアミノ基、3−フルオロベンジル基などの炭素数7〜20のハロアラルキル基、カルボキシル基、スルホ基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基、などの炭素数6〜20の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0036】
これらの中でも、前述した条件(a)や後述する条件(b)として表わした、電子吸引性の部分構造によってもたらされる効果を、化合物全体について打ち消さないものが好ましい。具体的には、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基などに代表される、ハメットの置換基定数σpが−0.50<σp<0.00の範囲内にある、弱い電子供与性を示す基が好ましい。
【0037】
また、Ar1〜Ar4が有する置換基は、隣接するもの同士で結合して環を形成していても良い。環の種類について特に制限はないが、通常は芳香族炭化水素環、芳香族複素環、又は脂肪族炭化水素環が挙げられ、好ましくはベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、ピロール環、ピリジン環等の5〜7員環の単環が挙げられる。また、前記の環は更に置換基を有していても良い。その置換基としては、本発明のジアリールアミン系化合物の特徴的な性質を打ち消さない基として上に例示した基が好ましい。置換基を有する場合、これらの芳香族炭化水素環、芳香族複素環、脂肪族炭化水素環の置換基を含めた総炭素数は、通常4〜30程度、好ましくは4〜20程度である。
【0038】
Ar1〜Ar4は、それらが有する条件(a)で定義される基及びその他の置換基も含め、互いに同一であっても良く、異なっていても良い。但し、本発明のジアリールアミン系化合物の全体構造の対称性が高いことが好ましいため、Ar1〜Ar4が全て、置換基の異同は問わず同じ芳香族炭化水素基であることが好ましく、Ar1〜Ar4が置換基も含めて全て同一の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
【0039】
次いで、上記一般式(1)中のZについて説明する。
Zは、上記の条件(b)を満たす2価の連結基、即ち、−CO−と、−SO2−と、置換基を有していても良い2価の芳香族複素環基とからなる群より選ばれる少なくとも1個の基を含むか、或いは、ハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90である1価の電子吸引性基と、置換基を有していても良い1価の芳香族複素環基とからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有するか、の何れかを満たす2価の連結基を表わす。
【0040】
条件(b)における1価の電子吸引性基、1価の芳香族複素環基、及び、上記芳香族複素環基が有していても良い置換基としては、Ar1〜Ar4が有し得る基として上に説明したものと同様の基が挙げられる。好ましい基についても同様である。
【0041】
2価の芳香族複素環としては、その種類は特に制限されないが、例えばチオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環等由来の、5又は6員環の単環又は2〜4員環を有する2価の基が好ましい。また、前記2価の芳香族複素環が有していても良い置換基は、Ar1〜Ar4が有し得る基として説明したものと同様の基が挙げられる。好ましい基についても同様である。
【0042】
Zとしては、上記の条件(b)を満たす2価の連結基であって、本発明のジアリールアミン系化合物の特徴的な性質を打ち消さないものであれば、その種類は特に制限されないが、更に下記一般式(3)で表わされる構造を有するものであることが望ましい。
【0043】
【化8】
【0044】
一般式(3)中、Z0は−CO−、−SO2−、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環基、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−SiH2−、−O−、−S−、又は−NH−を表わす。これらは何れも置換基を有していても良い。また、mは1以上、5以下の整数を表わす。mが2以上の場合、1つのZ中に含まれる複数個のZ0は、それぞれ同一であっても良く異なっていても良いが、Z全体として上記の条件(b)を満たすようにする。
【0045】
Z0が2価の芳香族炭化水素の場合、その種類に特に制限はないが、例えばベンゼン環、ナフタレン環、又はアントラセン環由来の、5〜6員の単環又は2〜4縮合環から成る2価の基が好ましい。また、Z0が2価の芳香族複素環基の場合、その種類についても特に制限はないが、例えばチオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環由来の、5〜6員の単環又は2〜4縮合環から成る2価の基が好ましい。
【0046】
Z0が2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環基、−CH2−、−CH=CH−、−SiH2−又は−NH−である場合、これらにおける水素原子は置換されていても良く、その置換基としては、Ar1〜Ar4が有し得る置換基として前述した基と同様の基が挙げられる。好ましい基についても同様である。
【0047】
なお、一般式(3)において、ZがZ0として−CO−、−SO2−、及び2価の芳香族複素環基の何れをも有していない場合には、Z0のうちの少なくとも1つが、ハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90の範囲にある1価の電子吸引性基、又は、置換基を有していても良い1価の芳香族複素環基を有する必要がある。このような1価の電子吸引性基及び1価の芳香族複素環基としては、Ar1〜Ar4が有し得る基として説明したものと同様の基が挙げられる。好ましい基についても同様である。
【0048】
続いて、一般式(1)におけるZの具体例を示す。但し、Zはこれらの具体例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で、例示したもの以外の基を用いることができる。
なお、下記連結基の例示構造式には殆ど置換基を記していないが、置換可能な部位には各々独立に、前述した各種の基で置換されていても良い。また、これらの置換基は互いに結合して環を形成していても良い。
【0049】
更に、構造式に含まれるフェニレン基等の二置換ベンゼン環は、その多くがパラ位置換体(p−フェニレン基等)として表わされているが、これに制限されるものではなく、メタ位置換体(m−フェニレン基等)又はオルト位置換体(o−フェニレン基等)であっても良い。
【0050】
【化9】
【0051】
【化10】
【0052】
以上説明した一般式(1)において、上述の−CO−、−SO2−、芳香族複素環基等の基や、ハメット定数σpが上記範囲に存在する基は、一般的に電子吸引性の性質を有する。本発明では、この様な電子吸引性の構造を、Ar1〜Ar4及びZの各々に導入することにより、ジアリールアミノ基の窒素原子の塩基性度が低下して、酸化電位が安定化する(即ち、酸化電位が上昇して、化合物の耐酸化性が向上する。)。こうした特徴が、化合物の全体構造の対称性の高さと相俟って、本発明のジアリールアミン系化合物に優れた電子輸送能及び正孔阻止能を発揮させるものと考えられる。
【0053】
本発明のジアリールアミン系化合物は、中でも、下記一般式(2)で表わされる化合物であることが好ましい。
【化11】
【0054】
上記一般式(2)において、R1〜R5のうち少なくとも1つ、R6〜R10のうち少なくとも1つ、R11〜R15のうち少なくとも1つ、及びR16〜R20のうち少なくとも1つが、各々上記条件(a)で定義される基を表わす。また、R1〜R20のうち、上記条件(a)で定義される基以外の基は、それぞれ独立に水素原子又は1価の任意の置換基を表わす。なお、隣接する置換基同士は結合して、置換基を有していても良い芳香族炭化水素環、置換基を有していても良い芳香族複素環、及び、置換基を有していても良い脂肪族炭化水素環からなる群より選ばれる何れかの環を形成していても良い。
【0055】
R1〜R20のうち、上記条件(a)で定義された電子吸引性の基以外の基は、水素原子、又は、本発明のジアリールアミン化合物の特徴的な性能を損なわない範囲で選択される1価の任意の基である。また、R1〜R10が隣接する基同士で結合して形成した環が有していても良い置換基は、本発明のジアリールアミン化合物の特徴的な性能を損なわない範囲で選択される1価の任意の基である。
【0056】
条件(a)で定義される基及びそれ以外の置換基としては、前記一般式(1)においてAr1〜Ar4が有し得る置換基として先に例示した基が挙げられる。また、好ましいものについても同様である。更に、R1〜R20のうち、隣接する基同士が結合して形成し得る環についても、Ar1〜Ar4が有し得る置換基同士が結合して形成し得る環として前述したものと同様である。
【0057】
以下に、本発明のジアリールアミン系化合物について具体例を挙げるが、本発明は、以下の化合物に何ら限定されるものではない。なお、以下の構造式に含まれるフェニレン基等の二置換ベンゼン環も、その多くがパラ位置換体(p−フェニレン基等)として表わされているが、これに制限されるものではなく、メタ位置換体(m−フェニレン基等)又はオルト位置換体(o−フェニレン基等)であっても良い。
【0058】
【化12】
【0059】
【化13】
【0060】
【化14】
【0061】
なお、有機電界発光素子の正孔輸送材料或いはホスト発光材料としては、一般に、トリアリールアミン系化合物群が使われている。以下、有機電界発光素子の正孔輸送材料として従来用いられている代表的な芳香族アミン化合物を例示して、本発明のジアリールアミン系化合物との相違点を付言しておく。
【0062】
J. Phys. Chem.,97巻、6240頁、1993年には、下記の構造式A−1及び構造式A−2に示す芳香族アミン化合物(それぞれ化合物A−1、化合物A−2)が記載されている。
【化15】
【化16】
【0063】
また、電子情報通信学会技術研究報告、OME95−54、1995年には、下記の構造式A−3に示す芳香族アミン化合物(化合物A−3)が記載されている。更に、特開平10−255984号公報には、化合物A−3を含有する正孔輸送層を有する有機電界発光素子が記載されている。
【化17】
【0064】
更に、特開平11−54280号公報には、下記の構造式A−4に示す化合物(化合物A−4)の様に、正孔輸送機能を持つ部位を増加させたフェニレンジアミン骨格を、ビナフチル系化合物に導入した化合物等を含む正孔輸送層を有する有機電界発光素子が記載されている。
【0065】
【化18】
しかし、これらの化合物A−1,化合物A−2,化合物A−3,化合物A−4は、イオン化ポテンシャルが小さい(即ち、酸化電位が低い)ことから、充分な正孔阻止能を得ることは困難であり、正孔阻止層の材料として用いることは難しい。
【0066】
また、特開平11−40359号公報には、有機電界発光素子の発光層材料の一例として、構造式A−5で示す化合物(化合物A−5)のような、置換エテニル基を含む連結基を有する化合物が挙げられている。
【化19】
【0067】
しかしながら、化合物A−5は、ジアリールアミノ基部分には電子吸引性であるフッ素原子が結合しているものの、連結基に電子吸引性基を有さないことから、酸化電位の値を十分大きくすることが出来ず、十分に広い光学的バンドギャップを確保することができないため、高い正孔阻止能と電子輸送能とを併せ持つことは困難であり、正孔阻止層の材料としては充分な性能を有さない。
【0068】
また、特開2002−3833号公報には、同様に発光層材料の一例として、構造式A−6,構造式A−7,構造式A−8で示す化合物(それぞれ化合物A−6,化合物A−7,化合物A−8)が記載されている。
【化20】
【化21】
【化22】
【0069】
しかし、化合物A−6及び化合物A−8は連結部分に電子吸引性基を有しておらず、化合物A−7はジアリールアミンを形成するアリール基に電子吸引性基を有していない。このため、これらの化合物についても、酸化電位を安定化させる(即ち、酸化電位を上昇させ、化合物全体の耐酸化性を向上させる)ことは難しく、充分な正孔阻止能を得ることは困難であり、正孔阻止層の材料として用いることは難しい。
つまり、これらの通常のトリアリールアミン化合物群は、窒素上の塩基性度が高いため、酸化電位が小さく、正孔阻止材料としては適さない。
【0070】
これに対し、本発明のジアリールアミン系化合物は、連結基Zに対して対称な位置に4つの芳香族環Ar1〜Ar4を併せ持ち、且つ、これらの連結基Z及び芳香族環Ar1〜Ar4の各々に電子吸引性の部分構造を有する。このような構造によって、ジアリールアミノ基における窒素原子上の塩基性度が低下し、酸化電位が安定化する(即ち、酸化電位が大きくなり、酸化され難くなり、ジアリールアミン系化合物の耐酸化性が向上する)のみならず、光学的バンドギャップ(即ち、酸化・還元電位差)も拡がることから、結果として優れた正孔阻止能及び電子輸送能を示すものと考えられる。
【0071】
後述する様に、正孔阻止材料層を構成する材料は、発光層中の発光に寄与する物質のイオン化ポテンシャル(発光層がホスト材料とドーパントを含んでいる場合には、ホスト材料のイオン化ポテンシャル)よりも0.1eV以上大きなイオン化ポテンシャルを有することが好ましい。また、安定な薄膜形状を与え、高いガラス転移温度(Tg)を有し、電子を効率良く輸送できる化合物であることが必要である。更に電気化学的かつ化学的に安定であり、トラップとなったり発光を消光したりする不純物が製造時や使用時に発生し難い化合物であることが要求される。本発明のジアリールアミン系化合物は、このような要求を全て満たすことから、目的とする発光色を高い色純度で高効率に発光することが可能であり、更には駆動安定性にも優れた有機電界発光素子を実現することが出来る。
【0072】
このため、本発明のジアリールアミン系化合物を、例えば発光層の陰極側界面に接して設けられた層(以下、「正孔阻止層」と称す。)に使用することにより、発光層を通過して陰極に至る正孔を効率良く阻止することができるようになる。そして、その結果として、得られた素子の発光層中における励起子生成を促進し、発光効率及び発光色純度を向上させることができるため、特に好ましい。
【0073】
本発明のジアリールアミン系化合物は、公知の各種の方法を用いて製造することができる。
具体例としては、▲1▼例えば2,5−ビス(4−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールと各種ハロゲン化アリールとのUllmann反応により本発明のジアリールアミン系化合物を得る方法、或いは、▲2▼Hartwig或いはBuchwaldらの公知の方法により、パラジウム触媒を用いて炭素−窒素結合を行なう方法、などが採用される。中でも▲1▼の手法が好ましい。その詳細な条件は、目的とする本発明のジアリールアミン系化合物の構造等に応じて適宜選択すれば良いが、例えば後述する実施例にて採用した条件が挙げられる。
【0074】
本発明のジアリールアミン系化合物の分子量は、通常、下限が200程度、好ましくは500程度であり、上限は通常2000程度、好ましくは1000程度である。下限値を下回るとガラス転移温度(Tg)が低下する虞があり、また、上限を超えると蒸着による成膜が困難になる虞がある。
【0075】
本発明のジアリールアミン系化合物のガラス転移温度(Tg)は、通常、下限が85℃程度である。下限値を下回ると耐熱性が充分でなく、電界発光素子に用いた場合に優れた駆動安定性が得られない虞がある。本発明のジアリールアミン系化合物のガラス転移温度(Tg)は、公知の種々の手法で測定することが可能であるが、具体例としては、DSC(示差走査熱量測定)が挙げられる。
【0076】
本発明のジアリールアミン系化合物の酸化電位は、通常、下限が1.0V程度、好ましくは1.3V程度である。下限値を下回ると正孔阻止能が低下し、陰極または陰極側に存在する有機層(電気輸送層など)へ正孔が通り抜けてしまう虞がある。また、本発明のジアリールアミン系化合物の還元電位は、通常、下限が−2.3V程度、好ましくは−2.1V程度であり、上限は通常−1.7V程度、好ましくは−1.9V程度である。還元電位が下限値を下回ると、陰極または陰極側に存在する有機層(電子輸送層など)から本発明のジアリールアミン系化合物を含む層への、電子注入障壁が大きくなる傾向がある。また、還元電位が上限値を超えると、電子トラップとなるため、発光層に電子が入りにくくなり、発光効率が低下する虞がある。本発明のジアリールアミン系化合物の酸化電位及び還元電位は、公知の種々の手法で測定することが可能であるが、例としては、実施例の欄にて後述する電気化学的手法が挙げられる。
【0077】
本発明のジアリールアミン系化合物は、高い電荷輸送性を有することから、電荷輸送材料として、電子写真感光体、有機電界発光素子、光電変換素子、有機太陽電池、有機整流素子等に好適に使用できる。特に、電子輸送性に優れることから、電子輸送材料としての使用がとりわけ好適である。
【0078】
また、本発明のジアリールアミン系化合物は、優れた正孔阻止能を備えていることから、電荷輸送材料や有機電界発光素子の材料として好適に使用できる。特に、本発明のジアリールアミン系化合物を有機電界発光素子の正孔阻止層に用いることにより、発光層に使用した所望の発光材料からの発光のみを選択的に得ることが可能となり、発光効率及び発光色純度に優れた有機電界発光素子を得ることができる。とりわけ、これまで素材選択の難しさ故に正孔阻止層の形成が困難であった青色(蛍光)発光素子や燐光発光素子において、顕著な効果を得ることができる。
【0079】
更に、本発明のジアリールアミン系化合物は、耐熱性にも優れているので、有機電界発光素子に用いることにより、長期間安定に駆動(発光)する有機電界発光素子が得られる。
【0080】
次に、本発明の有機電界発光素子について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、陽極、発光層及び陰極が順次積層されてなるとともに、上記の一般式(1)で表わされる構造を有するジアリールアミン系化合物(本発明のジアリールアミン系化合物)を含む層を有することを特徴とする。
【0081】
上記ジアリールアミン系化合物を含む層の位置は任意であるが、上記ジアリールアミン系化合物は上述の様に電子輸送能及び正孔阻止能に優れているので、発光層と陰極との間に設けられる電子輸送性の層に使用すると、陽極から注入され発光層を通り抜けて移動してくる正孔が陰極に到達するのを阻止する機能と、陰極から注入された電子を効率良く発光層の方向に輸送する機能とを発揮させることができるので好ましい。この場合、上記ジアリールアミン系化合物を含む層は必ずしも発光層に接している必要はないが、前述した上記ジアリールアミン系化合物の特性を最も有効に生かし、上述の機能を確実に発揮させるためには、特に発光層の陰極側に接して設けられる層に使用するのが好適である。即ち、本発明のジアリールアミン系化合物は連結基Zに対して対称な向きにジアリールアミノ骨格を有するため、光学的バンドギャップが広く、また適度な電子輸送性を有するので、発光層の陰極側に接して設けられる層(即ち、後述する正孔阻止層)として使用すると有効である。
【0082】
上記ジアリールアミン系化合物の種類は特に制限されず、上記の一般式(1)で表わされる構造を有する化合物であれば任意のものが使用できるが、電子輸送能及び正孔阻止能により優れている点から、前記一般式(2)で表わされる構造を有するジアリールアミン系化合物を用いることが好ましい。
【0083】
本発明の有機電界発光素子において、上記ジアリールアミン系化合物を含む層は一層であっても良く、二層以上であっても良い。二層以上の場合、これらの層は互いに接する層であっても良く、他の層を介して離れて存在する層であっても良い。また、同一の層内に含有される上記ジアリールアミン系化合物の種類は1種でも良く、2種以上であっても良い。2種以上の場合、その組み合わせも特に制限されない。更に、二以上の層に上記ジアリールアミン系化合物が含有されている場合、これらの層に含有される上記ジアリールアミン系化合物の種類は同一のものであっても良く、異なるものであっても良い。
【0084】
本明細書では、本発明の有機電界発光素子において、陰極−発光層間に設けられた層のうち、発光層に接している層を「正孔阻止層」と称し、正孔阻止層と陰極の間に設けられた層を総称して「電子輸送層」と称す(なお、この電子輸送層についても一層の場合と二以上の層から構成される場合とが有り、後者の場合には陰極に接している層を「電子注入層」と称して、その他の「電子輸送層」と区別することもある。本明細書ではこの様な構成の詳細については省略するが、下記と同様に本発明を適用することが可能である)。
【0085】
以下、添付図面を参照しながら、上記ジアリールアミン系化合物を正孔阻止層に含有する場合を例にとって、本発明の有機電界発光素子の実施の形態を詳細に説明する。
【0086】
図1は、本発明の有機電界発光素子の一実施形態の構造を模式的に示す断面図である。図1において、1は基板、2は陽極、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、8は陰極を各々表わす。
【0087】
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さ過ぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0088】
基板1上には陽極2が設けられるが、陽極2は正孔輸送層への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。更に、導電性高分子の場合は電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl. Phys. Lett., 60巻,2711頁,1992年)。
【0089】
陽極2は、異なる材料からなる層を積層して形成された積層構造であっても良い。陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常、60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2は基板1と同一でも良い。
【0090】
図1に示す構成の有機電界発光素子において、陽極2の上には正孔輸送層4が設けられる。正孔輸送層の材料に要求される条件としては、陽極からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、更に安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生し難いことが要求される。また、発光層5に接するために発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないことが求められる。上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、素子には更に耐熱性が要求される。従って、Tgとして85℃以上の値を有する材料が望ましい。
【0091】
このような正孔輸送材料としては、例えば、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4′,4″−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J. Lumin., 72〜74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem. Commun., 2175頁、1996年)、2,2′,7,7′−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9′−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth. Metals, 91巻、209頁、1997年)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても良いし、必要に応じて、複数種を任意の組み合わせで混合して用いても良い。
【0092】
上記の化合物以外に、正孔輸送層4の材料として、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym. Adv. Tech.,7巻、33頁、1996年)等の高分子材料が挙げられる。
【0093】
正孔輸送層4は、スプレー法、印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法などの通常の塗布法や、インクジェット法、スクリーン印刷法など各種印刷法等の湿式成膜法や、真空蒸着法などの乾式成膜法で形成することができる。
【0094】
塗布法の場合は、正孔輸送材料を1種又は2種以上を、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を添加し、適当な溶剤に溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により陽極2上に塗布し、乾燥して正孔輸送層4を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、通常50重量%以下が好ましい。
【0095】
真空蒸着法の場合には、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向かい合って置かれた、陽極2が形成された基板1上に正孔輸送層4を形成させる。
【0096】
正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。この様に薄い膜を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法がよく用いられる。
【0097】
図1に示す素子において、正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極から注入されて正孔輸送層を移動する正孔と、陰極から注入されて正孔阻止層6を移動する電子との再結合により励起されて強い発光を示す発光性化合物より形成される。
【0098】
発光層5に用いられる発光性化合物としては、安定な薄膜形状を有し、固体状態で高い発光(蛍光又は燐光)量子収率を示し、正孔及び/又は電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。更に電気化学的かつ化学的に安定であり、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生し難い化合物であることが要求される。
【0099】
このような条件を満たし、蛍光を発する発光層を形成する材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体(特開平6−322362号公報)、ビススチリルベンゼン誘導体(特開平1−245087号公報、同2−222484号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2−247278号公報)、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体(特開平8−315983号公報)、シロール誘導体、等が挙げられる。これらの発光層材料は、通常は真空蒸着法により正孔輸送層上に積層される。また、前述の正孔輸送層材料のうち、発光性を有する芳香族アミン系化合物も発光層材料として用いることが出来る。
【0100】
素子の発光効率を向上させるとともに発光色を変える目的で、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザー用蛍光色素をドープすること(J. Appl. Phys., 65巻,3610頁,1989年)等が行なわれている。このドーピング手法は、発光層5にも適用でき、ドープ用材料としては、クマリン以外にも各種の蛍光色素が使用できる。青色発光を与える蛍光色素としては、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン及びそれらの誘導体等が挙げられる。緑色蛍光色素としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。黄色蛍光色素としては、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。赤色蛍光色素としては、DCM系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
【0101】
上記のドープ用蛍光色素以外にも、ホスト材料に応じて、レーザー研究,8巻,694頁,803頁,958頁(1980年);同9巻,85頁(1981年)、に列挙されている蛍光色素などが発光層用のドープ材料として使用することができる。
【0102】
ホスト材料に対して上記蛍光色素がドープされる量は、10−3重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。10−3重量%未満では素子の発光効率向上に寄与できない場合があり、10重量%を越えると濃度消光が起き、発光効率の低下に至る可能性がある。
【0103】
一方、燐光発光を示す発光層は、通常、燐光性ドーパントとホスト材料を含んで形成される。燐光性ドーパントとしては、例えば周期表7ないし11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられ、該金属錯体のT1(最低励起三重項準位)より高いT1を有する電荷輸送性有機化合物をホスト材料として使用することが好ましい。
【0104】
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくはルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、及び金が挙げられる。これらの有機金属錯体として、好ましくは下記の一般式(4)又は一般式(5)で表わされる構造の化合物が挙げられる。
【0105】
【化23】
MLn−jL’j ...一般式(4)
(一般式(4)中、Mは金属、nは該金属の価数を表す。L及びL’は二座配位子を表す。iは0又は1又は2を表す。)
【0106】
【化24】
【0107】
(一般式(5)中、M7は金属、Tは炭素又は窒素を表わす。Tが窒素の場合はR37、R38は無く、Tが炭素の場合はR37、R38は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。
R35、R36は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、互いに連結して環を形成しても良い。)
【0108】
一般式(4)中の二座配位子L及びL’は、それぞれ以下の式で表わされる部分構造を有する配位子を示す。
【0109】
【化25】
(環A1及び環A1’は、各々独立に、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、置換基を有していても良い。環A2及び環A2’は含窒素芳香族複素環基を表わし、置換基を有していても良い。R’、R’’及びR’’’は、各々独立に、ハロゲン原子;アルキル基;アルケニル基;アルコキシカルボニル基;メトキシ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;ジアルキルアミノ基;ジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アシル基;ハロアルキル基;又はシアノ基を表す。)
【0110】
一般式(4)で表わされる化合物として、更に好ましくは、下記の一般式(4a)、一般式(4b)又は一般式(4c)で表わされる構造の化合物が挙げられる。
【化26】
(一般式(4a)中、M4は金属を表わし、nは該金属の価数を表わす。環A1は置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を表わし、環A2は置換基を有していても良い含窒素芳香族複素環基を表わす。)
【0111】
【化27】
(一般式(4b)中、M5は金属を表わし、nは該金属の価数を表わす。環A1は置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2は置換基を有していても良い含窒素芳香族複素環基を表わす。)
【0112】
【化28】
(一般式(4c)中、M6は金属を表わし、nは該金属の価数を表わし、jは0又は1又は2を表わす。環A1及び環A1’は各々独立に、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2及び環A2’は各々独立に、置換基を有していても良い含窒素芳香族複素環基を表わす。)
【0113】
環A1及び環A1’として、好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、又はカルバゾリル基が挙げられる。
【0114】
環A2及び環A2’として、好ましくは、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、又はフェナントリジル基が挙げられる。
【0115】
一般式(4a)、(4b)及び(4c)で表わされる化合物が有していても良い置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられ、これらは互いに連結して環を形成しても良い。
【0116】
なお、環A1が有する置換基と環A2が有する置換基が結合し、又は環A1’が有する置換基と環A2’が有する置換基が結合して、一つの縮合環を形成しても良く、このような縮合環としては7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
【0117】
環A1、環A1’、環A2及び環A2’の置換基として、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、又はカルバゾリル基が挙げられる。
【0118】
一般式(4a)及び(4b)におけるM4及びM5として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられる。
【0119】
一般式(5)におけるM7として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
【0120】
一般式(4)、(4a)、(4b)及び(4c)で示される有機金属錯体の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定される訳ではない。
【化29】
【0121】
【化30】
【0122】
一般式(5)で表わされる有機金属錯体の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定される訳ではない。
【化31】
(上記式中、−Meはメチル基を、−Etはエチル基をそれぞれ表わす。)
【0123】
燐光発光を示す発光層に使用されるホスト材料としては、蛍光発光を示す発光層に使用されるホスト材料として前述した材料の他に、4,4′−N,N′−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体(WO00/70655号公報)、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(米国特許第6,303,238号公報)、2,2′,2″−(1,3,5−ベンゼントリル)トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール](Appl. Phys. Lett., 78巻, 1622項, 2001)、ポリビニルカルバゾール(特開2001−257076号公報)等が挙げられる。
【0124】
更に、本発明の有機電界発光素子における発光層は、ホスト材料及び燐光性ドーパントと共に、前述の蛍光色素を含有していても良い。
発光層中にドーパントとして含有される有機金属錯体の量は、0.1重量%以上が好ましく、また、30重量%以下が好ましい。0.1重量%以下では素子の発光効率向上に寄与できない場合があり、30重量%を越えると有機金属錯体同士が2量体を形成する等の理由で濃度消光が起き、発光効率の低下に至る可能性がある。
【0125】
燐光発光を示す発光層における燐光性ドーパントの量は、従来の蛍光(1重項)を用いた素子において、発光層に含有される蛍光性色素(ドーパント)の量より、若干多い方が好ましい傾向がある。また燐光性ドーパントと共に蛍光色素が発光層中に含有される場合、該蛍光色素の量は、0.05重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0126】
発光層5の膜厚は、通常3nm以上、好ましくは5nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
発光層も正孔輸送層と同様の方法で形成することができる。上述の蛍光色素及び/又は燐光色素(燐光性ドーパント)を発光層のホスト材料にドープする方法を以下に説明する。
【0127】
塗布の場合は、前記発光層ホスト材料と、ドープ用色素、更に必要により、電子のトラップや発光の消光剤とならないバインダー樹脂や、レベリング剤等の塗布性改良剤などの添加剤を添加し溶解した塗布溶液を調整し、スピンコート法などの方法により正孔輸送層4上に塗布し、乾燥して発光層5を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔/電子移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、50重量%以下が好ましい。
【0128】
真空蒸着法の場合には、前記ホスト材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、ドープする色素を別のるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで1.0×10−4Pa程度にまで排気した後、各々のるつぼを同時に加熱して蒸発させ、るつぼと向かい合って置かれた基板上に層を形成する。また、他の方法として、上記の材料を予め所定比で混合したものを同一のるつぼを用いて蒸発させても良い。
【0129】
上記各ドーパントが発光層中にドープされる場合、発光層の膜厚方向において均一にドープされるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。例えば、正孔輸送層との界面近傍にのみドープしたり、逆に、正孔阻止層界面近傍にドープしても良い。
【0130】
発光層も正孔輸送層と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
なお発光層5は、本発明の性能を損なわない範囲で上記以外の成分を含んでいても良い。
【0131】
図1に示す素子において、正孔阻止層6は発光層5の上に、発光層5の陰極側の界面に接するように積層される。
正孔阻止層は、正孔輸送層から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成されることが好ましい。正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いことが必要とされる。正孔阻止層6は正孔と電子を発光層内に閉じ込めて、発光効率及び発光色純度を向上させる機能を有する。
【0132】
本発明の有機電界発光素子における正孔阻止層の材料としては、本発明のジアリールアミン系化合物を用いる。本発明のジアリールアミン系化合物は、正孔阻止層中に単独で存在していても良いし、複数種が任意の組み合わせで並存しても良い。更に、本発明のジアリールアミン系化合物の性能を損なわない範囲で、公知の正孔阻止機能を有する他の化合物が正孔阻止層中に並存していても良い。
【0133】
本発明の有機電界発光素子における正孔阻止層のイオン化ポテンシャルは、発光層のイオン化ポテンシャル(発光層がホスト材料とドーパントを含んでいる場合にはホスト材料のイオン化ポテンシャル)と比べて、0.1eV以上大きいことが好ましい。イオン化ポテンシャルは、物質のHOMO(最高被占分子軌道)レベルにある電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーで定義される。イオン化ポテンシャルは光電子分光法で直接定義されるか、電気化学的に測定した酸化電位を基準電極に対して補正しても求められる。後者の方法の場合、例えば飽和甘コウ電極(SCE)を基準電極として用いたとき、
イオン化ポテンシャル=酸化電位(vs.SCE)+4.3eV
で定義される。(“Molecular Semiconductors”,Springer−Verlag, 1985年、98頁)。
【0134】
更に、本発明の有機電界発光素子における正孔阻止層の電子親和力(EA)は、発光層の電子親和力(発光層がホスト材料とドーパントを含んでいる場合にはホスト材料の電子親和力)と比較して同等以上であることが好ましい。電子親和力もイオン化ポテンシャルと同様に真空準位を基準として、真空準位にある電子が物質のLUMO(最低空分子軌道)レベルに落ちて安定化するエネルギーで定義される。電子親和力は、上述のイオン化ポテンシャルから光学的バンドギャップを差し引いて求められるか、電気化学的な還元電位から下記の式で同様に求められる。
電子親和力=還元電位(vs.SCE)+4.3eV
【0135】
従って、本発明の有機電界発光素子における正孔阻止層の材料に求められる性質は、酸化電位と還元電位を用いて、
(正孔阻止材料の酸化電位)−(発光材料の酸化電位)≧0.1V
(正孔阻止材料の還元電位)≧(発光材料の還元電位)
と表現することも出来る。
【0136】
更に、後述の電子輸送層を有する素子の場合には、正孔阻止層の電子親和力は、電子輸送層の電子親和力と比較して同等以下であることが好ましい。
(電子輸送材料の還元電位)≧(正孔阻止材料の還元電位)≧(発光材料の還元電位)
【0137】
正孔阻止層6の膜厚は、通常0.3以上、好ましくは0.5nm以上であり、また通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。正孔阻止層も正孔輸送層と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
【0138】
陰極8は、正孔阻止層6を介して発光層5に電子を注入する役割を果たす。陰極8として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。更に、陰極と発光層又は電子輸送層の界面にLiF、MgF2、Li2O等の極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Appl. Phys. Lett., 70巻,152頁,1997年;特開平10−74586号公報;IEEE Trans. Electron. Devices, 44巻,1245頁,1997年)。陰極8の膜厚は通常、陽極2と同様である。低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
【0139】
素子の発光効率を更に向上させることを目的として、図2及び図3に示すように、正孔阻止層6と陰極8の間に電子輸送層7が設けられていても良い。電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく正孔阻止層6の方向に輸送することができる化合物より形成される。
【0140】
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N′−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0141】
また、本発明のジアリールアミン系化合物を、この電子輸送層7に使用しても良い。その場合、本発明のジアリールアミン系化合物のみを使用して電子輸送層7を形成しても良いし、前述した各種公知の材料と併用しても良い。
【0142】
電子輸送層7に本発明のジアリールアミン系化合物を使用した場合、前述の正孔阻止層6にも本発明のジアリールアミン系化合物を使用しても良いし、また電子輸送層7のみに本発明のジアリールアミン系化合物を使用し、正孔阻止層6にはそれ以外の、公知の正孔阻止材料を使用しても良い。
電子輸送層6の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0143】
電子輸送層7は、正孔輸送層4と同様にして塗布法或いは真空蒸着法により正孔阻止層6上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0144】
正孔注入の効率を更に向上させ、且つ、有機層全体の陽極への付着力を改善させる目的で、正孔輸送層4と陽極2との間に陽極バッファ層3を挿入することも行なわれている(図3参照)。陽極バッファ層3を挿入することで、初期の素子の駆動電圧が下がると同時に、素子を定電流で連続駆動した時の電圧上昇も抑制される効果がある。陽極バッファ層に用いられる材料に要求される条件としては、陽極とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定、すなわち、融点及びガラス転移温度が高く、融点としては300℃以上、ガラス転移温度としては100℃以上であることが好ましい。更に、イオン化ポテンシャルが低く陽極からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。
【0145】
この目的のために、これまでに銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物(特開昭63−295695号公報)、ポリアニリン(Appl. Phys. Lett., 64巻、1245頁,1994年)、ポリチオフェン(Optical Materials, 9巻、125頁、1998年)等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜(Synth. Met., 91巻、73頁、1997年)や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物(J. Phys. D, 29巻、2750頁、1996年)が報告されている。
【0146】
また、正孔注入・輸送性の低分子有機化合物と電子受容性化合物を含有する層(特開平11−251067号公報、特開2000−159221号公報等に記載)や、芳香族アミノ基等を含有する非共役系高分子化合物に、必要に応じて電子受容性化合物をドープしてなる層(特開平11−135262号公報、特開平11−283750号公報、特開2000−36390号公報、特開2000−150168号公報、特開平2001−223084号公報、及びWO97/33193号公報など)、又はポリチオフェン等の導電性ポリマーを含む層(特開平10−92584号公報)なども挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0147】
上記陽極バッファ層の材料としては、低分子・高分子何れの化合物を用いることも可能である。
陽極バッファ層の場合も、正孔輸送層と同様にして薄膜形成可能であるが、無機物の場合には、更に、スパッタ法や電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法が用いられる。
【0148】
以上の様にして形成される陽極バッファ層3の膜厚は、低分子化合物を用いる場合、下限は通常3nm、好ましくは10nm程度であり、上限は通常100nm、好ましくは50nm程度である。また、高分子化合物を用いる場合、膜厚の下限は通常5nm、好ましくは10nm程度であり、上限は通常1000nm、好ましくは500nm程度である。
【0149】
本発明の有機電界発光素子は、図1とは逆の構造、すなわち、基板上に陰極8、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。同様に、図2又は図3に示した前記各層構成とは逆の順に積層することも可能である。また、図1〜3の何れの層構成においても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、任意の層中又は隣接する任意の二層間にその他の層を設ける構成としたり、任意の複数層の機能を併せ持つ層を設けてこれらの複数層を省略する構成とするなど、適宜変形を加えることが可能である。
【0150】
本発明は、単一の有機電界発光素子、アレイ状に配置された構造からなる有機電界発光素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造からなる有機電界発光素子の何れにおいても適用することができる。
【0151】
本発明の有機電界発光素子は、優れた電子輸送能及び正孔阻止能を有する化合物(本発明のジアリールアミン系化合物)を正孔阻止層に含有させることにより、良好な発光効率及び発光色純度を有し、駆動安定性の面でも改善された性能を有する。特に、これまで素材選択の難しさ故に正孔阻止層の形成が困難であった青色(蛍光)発光素子や燐光発光素子において、発光効率、発光色純度及び駆動安定性に優れた素子が得られることから、フルカラー或いはマルチカラーのパネルへの応用において優れた性能を発揮できる。
【0152】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示して具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を超えない限り任意に実施することができる。
【0153】
[実施例1]
本実施例における反応を下記反応式(1)に示す。
【化32】
【0154】
2,5−ビス(4−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール1.3g、1−ブロモ−3−トリフルオロメチルベンゼン11.4g、炭酸カリウム6g、銅1.3g、及びテトラグライム6mlを混合し、180℃で24時間、加熱、攪拌を行なった。その後室温に冷却し、クロロホルム30mlと混合して希釈した。不要物を濾取し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、室温下アスピレータにより濃縮し、得られた粗精製物をカラムクロマトグラフィーで精製し、最終的に生成物2.6gを得た。この生成物をEI−MS及び1H−NMRにて分析した。結果を以下に示す。分析の結果、得られた生成物が反応式(1)の右辺に表わすジアリールアミン系化合物であることが確認された。
【0155】
EI−MS(M+):829
1H−NMR(CDCl3,δ)
7.19 (d,4H)
7.30−7.51 (m,16H)
8.03 (d,4H)
【0156】
[実施例2]
本実施例における反応を下記反応式(2)に示す。
【化33】
【0157】
2,5−ビス(4−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール0.5g、1−ブロモ−3−フルオロベンゼン3.5g、炭酸カリウム2.2g、銅0.5g、及びテトラグライム2mlを混合し、180℃で24時間、加熱、攪拌を行なった。その後室温に冷却し、クロロホルム20mlと混合して希釈した。不要物を濾取し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、室温下アスピレータにより濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、最終的に生成物1.1gを得た。この生成物をEI−MS及び1H−NMRにて分析した。結果を以下に示す。分析の結果、得られた生成物が反応式(2)の右辺に表わすジアリールアミン系化合物であることが確認された。
【0158】
EI−MS(M+):629
1H−NMR(CDCl3,δ)
6.79−6.98 (m,12H)
7.19 (d,4H)
7.29 (s,4H)
8.01 (d,4H)
【0159】
[酸化・還元電位の測定]
実施例1及び実施例2で得られたジアリールアミン系化合物の酸化・還元電位を、下記に示す条件で測定した。
参照電極:銀線(内部標準物質としてフェロセンを使用)
作用電極:グラッシーカーボン
対極 :白金線
測定溶媒:0.1mol/L−過塩素酸テトラ(ノルマルブチル)アンモニウム/塩化メチレン溶液(アセトニトリル溶液)
掃引速度:100mV/sec
試料濃度:1mmol/L
【0160】
得られた酸化・還元電位の値を表1に示す。
また、これらの酸化・還元電位の値から、飽和甘コウ電極(SCE)を基準電極として用いた場合の換算式、即ち
イオン化ポテンシャル=酸化電位(vs.SCE)+4.3eV
に従って換算することにより、イオン化ポテンシャルの値を求めた。この値についても併せて表1に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
なお、一般的に使用されている発光層のホスト材料について、その酸化・還元電位及びイオン化ポテンシャルの値を表2に示す。
【表2】
【0163】
また、上に挙げた一般的な発光層ホスト材料の構造式を下に示す。
【化34】
【0164】
表1と表2の値を比較すると、実施例1及び実施例2のジアリールアミン系化合物は、上に挙げた一般的な発光層ホスト材料に比べて、0.1V以上高い酸化電位(即ち、0.1eV以上高いイオン化ポテンシャル)を有しているものが多いことが分かる。また、還元電位についても、これらの発光層ホスト材料と同等又はそれ以上の値を有していることが分かる。
【0165】
従って、実施例1及び実施例2のジアリールアミン系化合物を、有機電界発光素子の正孔阻止層の材料として用いることにより、陽極から注入され発光層を通り抜けて移動してくる正孔が陰極に到達するのを阻止する機能と、陰極から注入された電子を効率良く発光層の方向に輸送する機能とが充分に発揮され、正孔と電子を発光層内に閉じ込めて発光効率及び発光色純度を向上させることが可能であると考えられる。
【0166】
【発明の効果】
本発明のジアリールアミン系化合物は、優れた電子輸送能及び正孔阻止能を有することから、電荷輸送材料や有機電界発光素子の材料として好適に使用できる。特に、本発明のジアリールアミン系化合物化合物を有機電界発光素子の正孔阻止層に用いることにより、発光層に使用した所望の発光材料からの発光のみを選択的に効率良く得ることが可能となり、発光効率及び発光色純度に優れた有機電界発光素子を得ることができる。特に、これまで素材選択の難しさ故に正孔阻止層の形成が困難であった青色(蛍光)発光素子や燐光発光素子において、発光効率、発光色純度及び駆動安定性に優れた素子が得られる。
【0167】
従って、本発明の有機電界発光素子は、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)、車載表示素子、携帯電話表示や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機電界発光素子の一例の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の有機電界発光素子の変形例の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の有機電界発光素子の他の変形例の構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 陽極
3 陽極バッファ層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 陰極
Claims (10)
- 下記一般式(1)で表わされることを特徴とする、ジアリールアミン系化合物。
Zは、下記条件(b)を満たす2価の連結基を表わす。
・条件(a):
ハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90の範囲にある1価の電子吸引性基と、置換基を有していても良い1価の芳香族複素環基と、上記の電子吸引性基又は芳香族複素環基によって置換された1価の基とからなる群より選ばれる基である。
・条件(b):
−CO−と、−SO2−と、置換基を有していても良い2価の芳香族複素環基とからなる群より選ばれる少なくとも1個の基を含むか、或いは、ハメットの置換基定数σpが0.00<σp<0.90である電子吸引性基と、置換基を有していても良い1価の芳香族複素環基とからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有するか、の何れかを満たす。) - 下記一般式(2)で表わされることを特徴とする、請求項1記載のジアリールアミン系化合物。
Zは、前記一般式(1)における同符号の基と同義である。) - 請求項1又は請求項2に記載のジアリールアミン系化合物を含むことを特徴とする、電荷輸送材料。
- 請求項1又は請求項2に記載のジアリールアミン系化合物を含むことを特徴とする、有機電界発光素子材料。
- 陽極、発光層及び陰極が順次積層されてなる有機電界発光素子であって、請求項1又は請求項2に記載のジアリールアミン系化合物を含む層を有することを特徴とする、有機電界発光素子。
- 請求項1又は請求項2に記載のジアリールアミン系化合物を含む層を、該発光層と該陰極との間に有することを特徴とする、請求項5記載の有機電界発光素子。
- 請求項1又は請求項2に記載のジアリールアミン系化合物を含む層が、該発光層の該陰極側界面に接して設けられた正孔阻止層であることを特徴とする、請求項6記載の有機電界発光素子。
- 該正孔阻止層のイオン化ポテンシャルが、該発光層のイオン化ポテンシャルより0.1eV以上大きいことを特徴とする、請求項7記載の有機電界発光素子。
- 該正孔阻止層と該陰極との間に電子輸送層を有することを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の有機電界発光素子。
- 該発光層に、周期表の第7〜11族から選ばれる少なくとも一種の金属を含む有機金属錯体を含有することを特徴とする、請求項5〜9の何れか一項に記載の有機電解発光素子。
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- 2003-05-08 JP JP2003130431A patent/JP2004331587A/ja active Pending
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