JP2004331556A - 2”−ヒドロキシニコチアナミン、その製造方法、並びにアンジオテンシン変換酵素阻害剤、血圧降下剤及び健康食品 - Google Patents
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Abstract
【課題】ACE阻害活性を有する新規物質、該新規物質を製造する方法、並びに該新規物質を有効成分として含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤、血圧降下剤、及び該新規物質を含有する健康食品を提供すること。
【解決手段】2”−ヒドロキシニコチアナミン、及びそば試料を抽出用溶媒により抽出して抽出液を得る抽出工程を行い、次いで、該抽出液に対して、陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法による分離精製によりアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する画分を得る分離精製工程を行う2”−ヒドロキシニコチアナミンを製造する方法、並びに2”−ヒドロキシニコチアナミンを含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤、血圧降下剤、及び健康食品。
【選択図】 なし
【解決手段】2”−ヒドロキシニコチアナミン、及びそば試料を抽出用溶媒により抽出して抽出液を得る抽出工程を行い、次いで、該抽出液に対して、陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法による分離精製によりアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する画分を得る分離精製工程を行う2”−ヒドロキシニコチアナミンを製造する方法、並びに2”−ヒドロキシニコチアナミンを含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤、血圧降下剤、及び健康食品。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ACE阻害活性を有する新規物質、該新規物質又は該新規物質の含有物を製造する方法、並びに該新規物質を有効成分として含有する血圧降下剤、及び該新規物質を含有する健康食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体内における昇圧系の一つであり、人の重要な血圧調節系として知られるレニンーアンジオテンシン系は、アンジオテンシン変換酵素(Angiotensin I Converting Enzyme 以下ACEと略記する。)が、アンジオテンシン−Iに作用して、強い血圧上昇作用を有するアンジオテンシン−IIを生じさせるので、ACEの活性を抑制する作用を有する物質が、血圧降下剤として本態性高血圧症等の治療において、実用化されている。しかしながら、これらの薬剤は、めまい、立ちくらみ、悪心、口渇、過度の鎮静などの副作用が避けられないのが現状である。
【0003】
1971年にノマら[M. Noma et al., Tetrahedron Letters, No. 22, pp2017−2020(1971)]によってタバコ葉中から抽出されたニコチアナミンは、下記式(2);
【0004】
【化2】
【0005】
で表される天然の化合物であり、副作用の恐れが少ないとともに、ACEの活性を抑制する作用を有しており、血圧降下作用を有している可能性が高いものである。そこで、大豆を水又は熱水で抽出して抽出液を得て、該抽出液のニコチアナミンを合成吸着樹脂により、分別、採取するニコチアナミンの製造方法が、特開平5−246865号公報(特許文献1)において記載されている。
【0006】
そばは古くより栄養価が高く、健康に良い食品と考えられているが、そばの栄養成分については、タンパク質含有量が他の穀類よりも高く、そのアミノ酸価は92であり、精白米の65や小麦粉の41と比べて非常に高く、そばに含まれるタンパク質は良質タンパクである。また、そばは、食物繊維が他の穀物よりも多い他、そばタンパク質には食物繊維様の作用があり、コレステロール吸収の阻害などが報告されている。そばの機能成分では、古くよりビタミンCとの協奏作用により毛細血管を強化するとされるルチンが知られているが、最近の研究成果ではルチンを含めた多くのポリフェノールが単離同定され、それらの抗酸化作用による機能性が注目されている。
【0007】
レニンーアンジオテンシン系とそばとの関係については、そば熱水抽出物やそばタンパク質加水分解物がACE阻害能を有することが報告され、そばの血圧降下作用はルチンやペプチド類によるものと考えられてきた。
【0008】
そばについては、さらに、そば脱穀種子又はそば粉を、水又は熱水による抽出液を、ゲル濾過によるカラムクロマトグラフィーにより分画し、ACE阻害活性を有する画分を分取する操作を行い、得られた画分について、吸着カラムクロマトグラフィーによって分画し、ACE阻害活性の強い画分を分取し、さらに該画分を、ゲル濾過によるカラムクロマトグラフィーにより分画し、ACE阻害活性の強い画分を分取する操作を行って、下記式(3);
【0009】
【化3】
【0010】
で表され、ACE阻害活性を有しており、血圧降下作用を有する可能性が高い天然の新規物質が、特開平5−97798号公報(特許文献2)において記載されている。
【0011】
これらのACE阻害活性を有する天然の化合物は、血圧降下剤、健康食品などに有用に用いられる可能性が高い化合物であるが、ACE阻害活性を有する新規物質の探索は十分に行われているとは言えず、さらなるACE阻害活性を有する新規物質の探索が必要とされている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、ACE阻害活性を有する新規物質、該新規物質又は該新規物質の含有物を製造する方法、並びに該新規物質を有効成分として含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤、血圧降下剤、及び該新規物質を含有する健康食品を提供することをその目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、そば粉、そば玄穀、そば茎葉、そばの芽、ダッタンそば粉、ダッタンそば玄穀、ダッタンそば茎葉、そば湯等のそば試料を抽出用溶媒により抽出して抽出液を得る抽出工程を行い、次いで、該抽出液に対して、陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法による分離精製によりACE阻害活性を有する画分を得る分離精製工程を行うことにより得られた物質が、ACE阻害活性を有する新規物質であること、及び該新規物質が2”−ヒドロキシニコチアナミンであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、下記式(1);
【0015】
【化4】
【0016】
で表される2”−ヒドロキシニコチアナミンを提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(1)は、ACE阻害活性を有する新規物質を提供することができるという効果を奏するものである。
【0017】
また、本発明(2)は、そば試料を抽出用溶媒により抽出して抽出液を得る抽出工程を行い、次いで、該抽出液に対して、陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法による分離精製によりアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する画分を得る分離精製工程を行う2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(2)は、ACE阻害活性を有する2”−ヒドロキシニコチアナミンを製造することができるという効果を奏するものである。
【0018】
また、本発明(3)は、前記抽出用溶媒が、エタノール水溶液である前記発明(2)記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(3)は、前記発明(2)が奏する効果に加えて、抽出工程における抽出能を向上させることができるという効果を奏するものである。
【0019】
また、本発明(4)は、前記抽出液を濃縮して濃縮液を得る濃縮工程を行った後、該濃縮液に対して、前記分離精製工程を行う前記発明(2)又は(3)記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(4)は、前記発明(2)又は(3)が奏する効果に加えて、分離精製工程におけるサンプルの体積量を少なくすることができるという効果を奏するものである。
【0020】
また、本発明(5)は、前記分離精製工程を2回以上行う前記発明(2)〜(4)のいずれかに記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(5)は、前記発明(2)〜(4)のいずれかが奏する効果に加えて、得られる生成物中に含まれる夾雑物を減少させることができるという効果を奏するものである。
【0021】
また、本発明(6)は、前記抽出液又は前記濃縮液に対して、陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法により、陽イオン交換樹脂に滞留する滞留物を得て、該滞留物を溶出した溶出液を得る溶出工程を行い、次いで該溶出液に対して、前記分離精製工程を行う前記発明(2)〜(5)のいずれかに記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(6)は、前記発明(2)〜(5)のいずれかが奏する効果に加えて、陽イオン交換樹脂に滞留しない物質を除去することができるため、得られる生成物中に含まれる夾雑物を減少させることができるという効果を奏するものである。
【0022】
また、本発明(7)は、前記抽出工程又は前記濃縮工程の後に、得られた抽出液又は濃縮液に対して、1種又は2種以上の有機溶媒による抽出を1回または2回以上行って、水層を抽出液又は濃縮液として得る前記発明(2)〜(6)のいずれかに記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(7)は、前記発明(2)〜(6)のいずれかが奏する効果に加えて、脱脂を行うことにより、得られる生成物中に含まれる夾雑物を減少させることができるという効果を奏するものである。
【0023】
また、本発明(8)は、前記分離精製工程を行った後、さらに、前記アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する画分に対して再結晶操作を行い、結晶を単離する単離工程を行う前記発明(2)〜(7)のいずれか記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(8)は、前記発明(2)〜(7)のいずれかが奏する効果に加えて、純度の高い2”−ヒドロキシニコチアナミンを得ることができるという効果を奏するものである。
【0024】
また、本発明(9)は、前記単離工程において、再結晶操作に用いる溶媒がエタノール水溶液である前記発明(8)に記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(9)は、前記発明(8)が奏する効果に加えて、再結晶操作で得られる2”−ヒドロキシニコチアナミン量を増加させることができるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明(10)は、前記発明(1)の2”−ヒドロキシニコチアナミンを有効成分として含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤を提供するものである。
【0026】
また、本発明(11)は、前記発明(1)の2”−ヒドロキシニコチアナミンを有効成分として含有する血圧降下剤を提供するものである。
【0027】
また、本発明(12)は、前記発明(1)の2”−ヒドロキシニコチアナミンを含有する健康食品を提供するものである。
【0028】
【実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を述べるが、本発明はこれら実施の形態により制限されない。本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミン(以下、新規物質とも言う)は、以下の理化学的性質を有する。
【0029】
<1H−NMR>{重水液中中で(TMSP)を内部標準物質として測定、270MHz カッコ内は多重度、結合定数、および帰属}
本発明の新規物質の1H−NMRピークは、δ2.05〜2.3ppm(2H,m,H−2’)、δ2.4〜2.85ppm(2H,m,H−3)、δ3.25〜3.53ppm(2H,m,H−1”andH−1’)、δ3.85ppm (1H,dd,J=4.78Hz,J=8.42Hz,H−3’)、δ3.92〜4.15ppm(2H,m,H−4)、δ4.01ppm (1H,d,J=3.3Hz,H−3”)、δ4.42〜4.48ppm(1H,m,H−2”)、δ4.77ppm (1H,t,J=9.57Hz,H−2)であり、1H−NMR測定スペクトルを図1に示す。
【0030】
<13C−NMR>
{重水液中で(TMSP)を内部標準物質として測定、68MHz カッコ内は帰属}
本発明の新規物質の13C−NMRピークは、δ23.9ppm(C−3 )、δ27.6ppm(C−2’ )、δ51.2ppm(C−1” )、δ53.4ppm(C−4 )、δ54.1ppm(C−1’)、δ60.5ppm(C−3” )、δ62.4ppm(C−3’)、δ68.3ppm(C−2”)、δ69.7ppm(C−2)、δ173.3ppm(C−4”)、δ174.9ppm(C−4’)、δ176.0ppm(C−1)であり、13C−NMR測定スペクトルを図2に示す。
【0031】
<1H−1H COSY及び13C−1H COSY>
また、本発明の新規物質は、1H−1H COSYにより図3に示す1H−1H COSYスペクトルが、13C −1H COSYにより図4に示す13C −1H COSYスペクトルが得られるものである。
【0032】
<MS>
本発明の新規物質を、FAB(Fast Atom Bombardment)−MS、ESI(Electrospray Ionization)−MSによりマススペクトルを測定したところ、FAB−MSにおいて、m/z=320に弱い(M+H)のピークが認められた。また、ESI−MSにおいても、m/z=320が(M+H)のピークであることが確認された。
【0033】
<高分解能MS>
また、高分解能FAB−MSにより(M+H)イオンのピークはm/z=320.1458であり、C12H22O7N3から計算される質量数320.1458と一致し、分子式がC12H21O7N3と決定された。
【0034】
<その他の理化学的性質>
本発明の新規物質は、ニンヒドリン反応に陽性を示すが、Cu2+イオンによりニンヒドリン反応が抑制される。また、本発明の新規物質は、水、(希酸)、(希アルカリ)などに溶解する性質を有する。また、本発明の新規物質を、6N HClを用いて110℃、16時間加水分解し、アミノ酸自動分析計を用いてアミノ酸を検出したところ、通常のアミノ酸はほとんど検出されず、複雑な組成の分解産物を示す。また、本発明の新規物質は、融点が275〜280℃である。比旋光度は、[α]D 23.5=−40°(c=0.4g/100ml;溶媒は水)、[α]D 23.5=−34.5°(c=0.2g/100ml;溶媒は1N HCl溶液)である。また、n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2の混合展開溶媒を用いたシリカゲル担体の薄層クロマトグラフ法(TLC)による分析においてはRf値0.03、n−プロパノール:アンモニア=7:3の混合展開溶媒を用いたTLCではRf値0.06の単一のスポットを示した。
【0035】
本発明の新規物質は、FAB−MS、ESI−MSで得られたスペクトルにより分子量が319であることが明らかになり、高分解能MSで得られたスペクトルよりC12H21O7N3の分子式であることが明らかである。ニンヒドリン反応に陽性を示すためアミノ酸またはペプチドであると推定され、アミノ酸検出において複雑な組成の分解産物を示したことからペプチドではなく非タンパク性のアミノ酸であると推定され、Cu2 +イオンによりニンヒドリン反応が抑制されるためα−アミノ酸であると推定された。本物質の1H−NMR、13C−NMR、1H−1H COSY、13C−1H COSYで得られたスペクトルの解析と、上述の種々のデータを総合した解析の結果、本物質はニコチアナミンの2’または2”−ヒドロキシ誘導体であると推定された。FAB−MSのm/z=320(M+H)正イオンよりのプロダクトイオンスペクトル(図5)には、アゼチジン環に由来するm/z=56のピークの他に、ニコチアナミンと一致するm/z=114,128,186,201のピークが認められた。また、m/z=245,191などのピークは2”位に水酸基が存在することを示している。これらのことより、本発明の新規物質は2”−ヒドロキシニコチアナミンであると構造決定された。
【0036】
<そば試料>
以下に本発明の新規物質を製造する方法について述べる。原料となるそば試料としては、植物としてのそばから派生する天然の非加工試料のみならず、そばを用いた加工食品などの加工物も、本発明の新規物質を含有するものであれば使用可能であるが、天然の非加工試料としては、そば粉、そば玄穀、そば植物体茎葉、及びそばの芽、ダッタンそばなどを挙げることができ、加工物としては、そば湯等を挙げることができる。これらのうち、そば粉が好適に用いられる。これらのそば試料は、そのままの形状で抽出工程において用いることもできるが、粉砕してから抽出工程で用いることもできる。
【0037】
<抽出用溶媒>
本発明の新規物質を製造する方法の抽出工程は、そば試料を抽出用溶媒により抽出して抽出液を得る工程であるが、抽出用溶媒としては、水、温水、エタノール水溶液、メタノール水溶液、希酸などの溶媒を挙げることができる。これらのうちでエタノール水溶液が好ましく、さらに、該エタノール水溶液においては、エタノールの濃度は、60〜80容量%であると好ましい。
【0038】
<抽出工程の手順>
抽出工程は、上記したそば試料を、上記した抽出用溶媒により抽出して抽出液を得る工程であり、抽出方法としては公知の方法を用いることができ特に制限されないが、抽出用溶媒とそば試料とを混合して抽出し、濾過して濾液を抽出液として得る方法、抽出用溶媒と植物試料とを混合して抽出した後、遠心分離し、得られた上澄み液を抽出液として得る方法などを挙げることができる。抽出工程を行う際、抽出用溶媒の温度としては、特に制限されないが、例えば、エタノール水溶液の場合には、50〜100℃のものが、抽出能が良好となるため好ましい。また、そば試料の重量1kg当たりの抽出用溶媒の体積は、多いほど抽出効率がよいが、10倍容程度が好ましい。抽出の条件・回数等は試料により適宜設定することができ、抽出用溶媒を加えて抽出を行い、抽出液を得る操作を複数回行うことも可能である。また、エタノール水溶液により抽出を行った後、さらに、得られた抽出液に対して、ヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテルなどで抽出を行って水層を得、水層を抽出液として得る方法など、前記抽出用溶媒による抽出工程の後に、1種又は2種以上の有機溶媒による抽出を1回または2回以上行って、水層を抽出液として得ることも可能である。このような有機溶媒としては、ヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、石油エーテルなどを挙げることができる。
【0039】
<濃縮工程>
本発明の新規物質を製造する方法は、上記の抽出工程で得られた抽出液を濃縮して濃縮液を得る濃縮工程を行った後、該濃縮液に対して、下記する分離精製工程を行う方法とすることが可能である。濃縮工程においては、抽出液をロータリーエバポレーター等の濃縮手段により濃縮して濃縮液を得る。また、得られた濃縮液に対して、ジエチルエーテルまたはヘキサンで抽出を行って水層を得、ついで、該水層に対して酢酸エチルで抽出して、水層を濃縮液として得る方法など、濃縮工程に加えて、1種又は2種以上の有機溶媒を用いて抽出を行い、濃縮液を得ることも可能である。このような有機溶媒としては、<抽出工程の手順>に挙げた有機溶媒を用いることができる。
【0040】
<溶出工程>
また、本発明の新規物質を製造する方法は、前記抽出工程で得られた抽出液又は前記濃縮工程で得られた濃縮液に対して、陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法により、陽イオン交換樹脂に滞留する滞留物を得て、該滞留物を溶出した溶出液を得る溶出工程を行い、次いで該溶出液に対して、下記する分離精製工程を行う方法とすることができる。溶出工程においては、陽イオン交換樹脂に滞留する滞留物が、陽イオン交換樹脂に吸着する吸着物であると好ましい。
【0041】
<溶出工程のカラム用樹脂>
陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法を行うに際して、カラムに充填する陽イオン交換樹脂としては、特に制限されないが、Amberlite IR−120(Rohm and Haas社製)やDowex 50(The Dow Chemical社製)のような強陽イオン性交換樹脂が好ましい。
【0042】
<溶出用の溶離剤>
溶出用の溶離剤としては、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの電解質の水溶液を挙げることができる。これらの電解質のうちでは、アンモニアが特に好ましい。また、溶離液における、電解質の濃度としては、0.5〜2.0 mol/Lが好ましい。
【0043】
<溶出工程の手順>
溶出工程は、抽出工程を経て得られる抽出液又は濃縮工程を経て得られる濃縮液をシリンジ法、バルブループ法などの公知の方法により、陽イオン交換樹脂を充填したカラムに注入して、該抽出液又は該濃縮液に含有される陽イオンに荷電する物質をカラムに滞留させ、滞留物を得て、次いで、溶出用の溶離剤をカラムに通液し、滞留物を溶出し、溶出液を得る。この際、得られた溶出液に対してACE阻害活性を測定し、該溶出液の複数の画分のうち、ACE阻害活性を有する画分を取り出して溶出液とすることもできる。このようにして得られた溶出液に対して、下記する分離精製工程を行うことにより、ACE阻害活性を有する画分を取り出すことができる。
【0044】
<分離精製工程>
前記抽出液、前記濃縮液又は前記溶出液に含まれる新規物質は、陽イオン交換樹脂に滞留あるいは吸着する性質を有することから、陽イオンに荷電する物質であると判明した。本発明の新規物質を製造する方法の分離精製工程は、前記抽出液、前記濃縮液、又は溶出液に含まれる陽イオンに荷電する物質である本発明の新規物質を、陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法による分離精製によりアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する画分を得る工程である。
【0045】
<カラム用樹脂>
陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法を行うに際して、カラムに充填する陰イオン交換樹脂としては、特に制限されないが、Dowex 1(The Dow Chemical社製)などの強陰イオン性イオン交換樹脂が好ましい。これらの陰イオン交換樹脂は酢酸型として用いる。
【0046】
<分離精製工程の溶離液>
溶離液としては、酢酸、蟻酸、塩酸、アンモニア、ピリジンなどの電解質の水溶液を挙げることができる。
【0047】
<分離精製工程の手順>
分離精製工程は、抽出工程を経て得られる抽出液を公知の方法により、陽イオン交換樹脂を充填したカラムおよび陰イオン交換樹脂を充填したカラムに注入して、水での洗浄や前記溶出用電解質水溶液で溶出し、得られた画分に対してACE阻害活性を測定し、ACE阻害活性を有する画分を得ることにより行われる。ACE阻害活性の測定は、Cushman & Cheungの方法など公知の方法で行うことができる。
【0048】
<単離工程>
本発明の新規物質を製造する方法においては、以上の工程を経て得られたACE阻害活性を有する画分をロータリーエバポレーター、噴霧乾燥、凍結乾燥などの公知の乾燥手段で、乾固して粉末状の物質を得る方法など公知の方法により、ACE阻害活性を有する画分から粉末状の本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンを得ることができる。しかし、ACE阻害活性を有する画分から得られた粉末状の新規物質は、さらに、再結晶操作を行い、結晶を単離する単離工程を行い、無色結晶の新規物質を得ることが好ましい。再結晶操作に用いる溶媒としては、アセトン水溶液、メタノール水溶液、水、エタノール水溶液などの本発明の新規物質を溶解させることができる溶媒を挙げることができるが、エタノール水溶液が、再結晶操作が行いやすいため好ましい。該エタノール水溶液においては、エタノールの濃度は、エタノール水溶液を100重量%として、通常10〜80容量%であり、30〜60容量%であると好ましい。エタノール水溶液による再結晶操作の温度条件は特に制限されないが、70〜100℃で粉末状の2”−ヒドロキシニコチアナミンを溶解させ、−10〜10℃で再結晶させる方法を採用することができる。
【0049】
以上のように説明した本発明の新規物質を製造する方法で得られた新規物質は、前記した<1H−NMR>、<13C−NMR>、<1H−1H COSY及び13C−1H COSY>、<MS>、<高分解能MS>、<その他の理化学的性質>に記載された理化学的性質を有するものである。
【0050】
本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンは、ACE阻害剤の有効成分とすることができる。すなわち、本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンを、賦形剤、潤沢剤、結合剤、賦香剤等の薬事的に認められる担体と共に、常法により、経口投与用の錠剤、カプセル剤、トローチ剤、粉末、または細粒・顆粒剤、水溶液に溶解させた溶剤などとし、ACE阻害剤とすることができ、該ACE阻害剤は、血圧降下剤として使用することが可能である。前記ACE阻害剤又は血圧降下剤は、経口投与するか、注射剤として静脈内投与するなどして活用することができる。
【0051】
本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンは、各種の飲食品の加工材料として添加することによって、パン、ケーキ、ビスケット、クッキー、菓子類、そば、うどん、中華麺などの麺類、天ぷら、フライなどの惣菜類を、健康食品とすることができる。さらに、本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンを、ジュース、コーヒー、ココア、ウーロン茶、緑茶、健康飲料などの飲料類に溶解させて添加することにより、健康食品とすることができる。
【0052】
本発明の健康食品への本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンの添加量は、特に制限されないが、パン、菓子、麺、惣菜類などの食品に対しては、10mg以上/100グラム、また、飲料に対しては5mg以上/100グラム加えることが好ましい。また、本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンは、健康食品、医薬品として、そのまま利用することもできる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0054】
実施例1
<抽出工程>
そば粉2Kgに70%エタノール8lを加え、一夜室温に放置し抽出した。濾紙を用いて濾過し、第1抽出液とした。さらに、残渣に対して同量の70%エタノールで抽出して、濾紙を用いて濾過して抽出液を得る操作を2回行い、第2抽出液及び第3抽出液を得た。
【0055】
<濃縮工程>
第1抽出液、第2抽出液及び第3抽出液を集めて、抽出液とし、該抽出液をロータリーエバポレーターを用いて約2lに濃縮した。
【0056】
濃縮液を分液ロートを用いてヘキサンで抽出し、ヘキサン層と水層1とを得た。ヘキサン層と水層1との下記する<ACE阻害活性の測定>に従ってACE阻害活性を測定したところ、ACE阻害活性は水層1に存在し、ヘキサン層には活性は認められず、水層1に活性が残存した。つぎに、この水層1を酢酸エチルで抽出して酢酸エチル層と水層2とを得た。酢酸エチル層と水層2との下記する<ACE阻害活性の測定>に従ってACE阻害活性を測定したところ、ACE阻害活性は水層2に存在し、酢酸エチル層には活性は認められず、水層2に活性が残存した。該水層2を濃縮液として、以下の分離精製工程を行った。
【0057】
<溶出工程>
陽イオン交換樹脂Amberlite IR−120(H+)をカラムに充填し、十分に水で洗浄し、平衡化した。溶離液として、濃度が1mol//Lのアンモニア水溶液を調製した。阻害活性の存在した前記濃縮液を、サンプルとして、直接前記陽イオン交換樹脂Amberlite IR−120(H+)のカラムに注入し、非吸着画分を水洗して集めた。また、吸着画分は濃度1mol/LのNH4OH水溶液を溶出用の溶離剤として溶出し、溶出液を得た。それぞれの画分をロータリーエバポレーターで乾固するまで濃縮し、一定量の水に溶解し、下記する<ACE阻害活性の測定>に従ってACE阻害活性を測定したところ、溶出液にのみ活性が存在した。このことから、活性成分は陽イオンに荷電する物質と判明した。
【0058】
<分離精製工程>
陰イオン交換樹脂Dowex1x4をカラムに充填し、十分に水洗し、平衡化した。溶離液として、0.3mol/Lの酢酸水溶液を調製した。前記溶出液をアンモニア水を用いてpH8に調整し、直接前記陰イオン交換樹脂Dowex1x4のカラムに注入した。純水、ついで前記溶離液をカラムに通液して、複数の画分を得た。該複数の画分に対して、下記する<ACE阻害活性の測定>に従ってACE阻害活性を測定し、ACE阻害活性を有する画分を得た。次いで該ACE阻害活性を有する画分に対して、繰り返し2回陰イオン交換樹脂Dowex1x4のカラムによるイオン交換クロマトグラフィーを行い、ACE阻害活性を有する画分を精製した。この結果、強いACE阻害活性を持つ物質を含む画分が得られ、ロータリーエバポレーターにより乾固したところ、強いACE阻害活性を持つ物質が85mg得られた。
【0059】
<単離工程>
前記強いACE阻害活性を持つ物質85mgに対して、水―エタノール混液(エタノール(40容量%含有)を用いた2回の再結晶操作を行うことにより、44mgの無色結晶が単離された。このように単離された無色結晶については、1H−NMR測定、13C−NMR測定、1H−1H COSY測定、13C−1H COSY測定、MS測定、高分解能MS測定等を行ったところ、前記した図1〜図5に示されるスペクトルが得られるとともに、該無色結晶は、前記<その他の理化学的性質>に記載された理化学的性質を有する新規物質であることがわかった。該新規物質は、2”−ヒドロキシニコチアナミンであると考えられる。
【0060】
<ACE阻害活性の測定>
ACE活性の測定は、Cushman & Cheungの方法に従い、以下に示すように行った。
(1)試薬の調製
(i)本発明の新規物質、すなわち、前記無色結晶1.60mg、0.8mg、0.4mgを、水 100 mlに加えて、それぞれ本発明の新規物質の濃度が50μmol/L、25μmol/L、12.5μmol/Lである試料液1、試料液2、試料液3を調製した。
(ii)ホウ酸濃度0.2mol/Lの緩衝液(pH8.3)を調製した。
(iii)Hippuryl−L−histidyl−L−leucine を7mmol/L濃度となるように、前記緩衝液に溶解し、基質溶液を調製した。
(iv)2mol/LのNaCl水溶液を調製した。
(v)ACEはSigma社のウサギ肺からの凍結乾燥品を使用し、該ACE 1IUを、前記緩衝液6.67mlに加えて、ACE活性 150mIU/mlの酵素溶液を調製した。
(2)反応組成液
(i)基質溶液;500μl
(ii)2mol/L NaCl溶液;400μl
(iii)試料液1〜3;それぞれ30μl
(iv)水;40μl
(v)酵素溶液;30μl
(3)反応条件
上記反応組成液の(i)、(ii)、(iii)および(iv)を混和したのち、プレインキュベーションなしに、(v)の酵素液を加え、37℃で30分反応(インキュベーション)させる。次いで1mol/Lの塩酸を500μl加え、反応を停止する。その後、酢酸エチル 3mlで遊離した馬尿酸を抽出した。抽出液を、遠心エバポレーターで蒸発乾固し、水 1mlに溶解して228nmでの吸光度を分光光度計によって測定した。測定した吸光度をODs(試料液1〜3を用いた反応についてそれぞれODs1、ODs2、及びODs3)とした。
(4)コントロール測定
上記(3)の反応液の(iii)試料液の代わりに水30μlを用い、その他は(3)と全く同じ条件で反応を行い、得られた228nmでの吸光度をOdcとした。
(5)ブランク測定
上記反応組成液の(i)〜(iv)を混和して、37℃で30分間反応させ、1mol/LHClで反応を停止させた後、(v)の酵素液を加えた。これを(3)と同様に酢酸エチルで抽出した。それ以後の操作は(3)と同じである。得られた228nmの吸光度をODbとした。
(6)ACE阻害率50%(IC50)を示す本発明の新規物質の濃度の決定
Ods1,Ods2,Ods3の阻害率を下記式(4);
ACE阻害率(%)={1−(Ods−ODb)/(ODc−ODb)}× 100 (4)
によって求め、グラフに外挿することにより阻害率50%を示す本発明の新規物質の濃度を決定した。その結果、阻害率50%(IC50)を示すACE阻害活性を示す本発明の新規物質の濃度は、0.08μmol/Lであった。
【0061】
比較例1
(1)試薬の調製において、ニコチアナミン1.51mg、0.76mg、0.38mgを、水100mlに加えて、それぞれニコチアナミンの濃度が50μmol/L、25μmol/L、12.5μmol/Lである試料液4、試料液5、試料液6を調製し、該試料液4〜6を、(2)反応組成液の(iii)試料液として、(3)反応条件において用いた以外には、すべて実施例1と同様に、<ACE阻害活性の測定>の測定を行った。その結果、試料液4〜6の吸光度ODs(ODs4、ODs5、ODs6)として、実施例1で求めたODcとODbと上記式(4)から、阻害率50%(IC50)を示すACE阻害活性を示すニコチアナミンの濃度は、0.085μmol/Lであった。
【0062】
以上行われた実施例1及び比較例1の結果から、本発明の新規物質(2”−ヒドロキシニコチアナミン)のACE阻害活性のIC50は0.08μMであり、同条件でのニコチアナミンのIC50、0.085μMとほぼ同等かより強い阻害活性を持つことが示された。
【0063】
【発明の効果】
本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンは、ACE阻害活性を有する。また、本発明の新規物質を製造する方法は、ACE阻害活性を有する2”−ヒドロキシニコチアナミンを製造することができるという効果を奏するものである。さらに、本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンを有効成分として含有させることによりアンジオテンシン変換酵素阻害剤及び血圧降下剤とすることができ、本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンを含有させることにより健康食品とすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の新規物質の1H−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図2】本発明の新規物質の13C−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の新規物質の1H−1H COSYスペクトルを示す図である。
【図4】本発明の新規物質の13C −1H COSYスペクトルを示す図である。
【図5】本発明の新規物質のFAB(Fast Atom Bombardment)−MSによる、m/z320(M+H)+よりのポジティブプロダクトイオンスペクトルを示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ACE阻害活性を有する新規物質、該新規物質又は該新規物質の含有物を製造する方法、並びに該新規物質を有効成分として含有する血圧降下剤、及び該新規物質を含有する健康食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体内における昇圧系の一つであり、人の重要な血圧調節系として知られるレニンーアンジオテンシン系は、アンジオテンシン変換酵素(Angiotensin I Converting Enzyme 以下ACEと略記する。)が、アンジオテンシン−Iに作用して、強い血圧上昇作用を有するアンジオテンシン−IIを生じさせるので、ACEの活性を抑制する作用を有する物質が、血圧降下剤として本態性高血圧症等の治療において、実用化されている。しかしながら、これらの薬剤は、めまい、立ちくらみ、悪心、口渇、過度の鎮静などの副作用が避けられないのが現状である。
【0003】
1971年にノマら[M. Noma et al., Tetrahedron Letters, No. 22, pp2017−2020(1971)]によってタバコ葉中から抽出されたニコチアナミンは、下記式(2);
【0004】
【化2】
【0005】
で表される天然の化合物であり、副作用の恐れが少ないとともに、ACEの活性を抑制する作用を有しており、血圧降下作用を有している可能性が高いものである。そこで、大豆を水又は熱水で抽出して抽出液を得て、該抽出液のニコチアナミンを合成吸着樹脂により、分別、採取するニコチアナミンの製造方法が、特開平5−246865号公報(特許文献1)において記載されている。
【0006】
そばは古くより栄養価が高く、健康に良い食品と考えられているが、そばの栄養成分については、タンパク質含有量が他の穀類よりも高く、そのアミノ酸価は92であり、精白米の65や小麦粉の41と比べて非常に高く、そばに含まれるタンパク質は良質タンパクである。また、そばは、食物繊維が他の穀物よりも多い他、そばタンパク質には食物繊維様の作用があり、コレステロール吸収の阻害などが報告されている。そばの機能成分では、古くよりビタミンCとの協奏作用により毛細血管を強化するとされるルチンが知られているが、最近の研究成果ではルチンを含めた多くのポリフェノールが単離同定され、それらの抗酸化作用による機能性が注目されている。
【0007】
レニンーアンジオテンシン系とそばとの関係については、そば熱水抽出物やそばタンパク質加水分解物がACE阻害能を有することが報告され、そばの血圧降下作用はルチンやペプチド類によるものと考えられてきた。
【0008】
そばについては、さらに、そば脱穀種子又はそば粉を、水又は熱水による抽出液を、ゲル濾過によるカラムクロマトグラフィーにより分画し、ACE阻害活性を有する画分を分取する操作を行い、得られた画分について、吸着カラムクロマトグラフィーによって分画し、ACE阻害活性の強い画分を分取し、さらに該画分を、ゲル濾過によるカラムクロマトグラフィーにより分画し、ACE阻害活性の強い画分を分取する操作を行って、下記式(3);
【0009】
【化3】
【0010】
で表され、ACE阻害活性を有しており、血圧降下作用を有する可能性が高い天然の新規物質が、特開平5−97798号公報(特許文献2)において記載されている。
【0011】
これらのACE阻害活性を有する天然の化合物は、血圧降下剤、健康食品などに有用に用いられる可能性が高い化合物であるが、ACE阻害活性を有する新規物質の探索は十分に行われているとは言えず、さらなるACE阻害活性を有する新規物質の探索が必要とされている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、ACE阻害活性を有する新規物質、該新規物質又は該新規物質の含有物を製造する方法、並びに該新規物質を有効成分として含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤、血圧降下剤、及び該新規物質を含有する健康食品を提供することをその目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、そば粉、そば玄穀、そば茎葉、そばの芽、ダッタンそば粉、ダッタンそば玄穀、ダッタンそば茎葉、そば湯等のそば試料を抽出用溶媒により抽出して抽出液を得る抽出工程を行い、次いで、該抽出液に対して、陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法による分離精製によりACE阻害活性を有する画分を得る分離精製工程を行うことにより得られた物質が、ACE阻害活性を有する新規物質であること、及び該新規物質が2”−ヒドロキシニコチアナミンであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、下記式(1);
【0015】
【化4】
【0016】
で表される2”−ヒドロキシニコチアナミンを提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(1)は、ACE阻害活性を有する新規物質を提供することができるという効果を奏するものである。
【0017】
また、本発明(2)は、そば試料を抽出用溶媒により抽出して抽出液を得る抽出工程を行い、次いで、該抽出液に対して、陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法による分離精製によりアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する画分を得る分離精製工程を行う2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(2)は、ACE阻害活性を有する2”−ヒドロキシニコチアナミンを製造することができるという効果を奏するものである。
【0018】
また、本発明(3)は、前記抽出用溶媒が、エタノール水溶液である前記発明(2)記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(3)は、前記発明(2)が奏する効果に加えて、抽出工程における抽出能を向上させることができるという効果を奏するものである。
【0019】
また、本発明(4)は、前記抽出液を濃縮して濃縮液を得る濃縮工程を行った後、該濃縮液に対して、前記分離精製工程を行う前記発明(2)又は(3)記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(4)は、前記発明(2)又は(3)が奏する効果に加えて、分離精製工程におけるサンプルの体積量を少なくすることができるという効果を奏するものである。
【0020】
また、本発明(5)は、前記分離精製工程を2回以上行う前記発明(2)〜(4)のいずれかに記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(5)は、前記発明(2)〜(4)のいずれかが奏する効果に加えて、得られる生成物中に含まれる夾雑物を減少させることができるという効果を奏するものである。
【0021】
また、本発明(6)は、前記抽出液又は前記濃縮液に対して、陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法により、陽イオン交換樹脂に滞留する滞留物を得て、該滞留物を溶出した溶出液を得る溶出工程を行い、次いで該溶出液に対して、前記分離精製工程を行う前記発明(2)〜(5)のいずれかに記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(6)は、前記発明(2)〜(5)のいずれかが奏する効果に加えて、陽イオン交換樹脂に滞留しない物質を除去することができるため、得られる生成物中に含まれる夾雑物を減少させることができるという効果を奏するものである。
【0022】
また、本発明(7)は、前記抽出工程又は前記濃縮工程の後に、得られた抽出液又は濃縮液に対して、1種又は2種以上の有機溶媒による抽出を1回または2回以上行って、水層を抽出液又は濃縮液として得る前記発明(2)〜(6)のいずれかに記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(7)は、前記発明(2)〜(6)のいずれかが奏する効果に加えて、脱脂を行うことにより、得られる生成物中に含まれる夾雑物を減少させることができるという効果を奏するものである。
【0023】
また、本発明(8)は、前記分離精製工程を行った後、さらに、前記アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する画分に対して再結晶操作を行い、結晶を単離する単離工程を行う前記発明(2)〜(7)のいずれか記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(8)は、前記発明(2)〜(7)のいずれかが奏する効果に加えて、純度の高い2”−ヒドロキシニコチアナミンを得ることができるという効果を奏するものである。
【0024】
また、本発明(9)は、前記単離工程において、再結晶操作に用いる溶媒がエタノール水溶液である前記発明(8)に記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、本発明(9)は、前記発明(8)が奏する効果に加えて、再結晶操作で得られる2”−ヒドロキシニコチアナミン量を増加させることができるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明(10)は、前記発明(1)の2”−ヒドロキシニコチアナミンを有効成分として含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤を提供するものである。
【0026】
また、本発明(11)は、前記発明(1)の2”−ヒドロキシニコチアナミンを有効成分として含有する血圧降下剤を提供するものである。
【0027】
また、本発明(12)は、前記発明(1)の2”−ヒドロキシニコチアナミンを含有する健康食品を提供するものである。
【0028】
【実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を述べるが、本発明はこれら実施の形態により制限されない。本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミン(以下、新規物質とも言う)は、以下の理化学的性質を有する。
【0029】
<1H−NMR>{重水液中中で(TMSP)を内部標準物質として測定、270MHz カッコ内は多重度、結合定数、および帰属}
本発明の新規物質の1H−NMRピークは、δ2.05〜2.3ppm(2H,m,H−2’)、δ2.4〜2.85ppm(2H,m,H−3)、δ3.25〜3.53ppm(2H,m,H−1”andH−1’)、δ3.85ppm (1H,dd,J=4.78Hz,J=8.42Hz,H−3’)、δ3.92〜4.15ppm(2H,m,H−4)、δ4.01ppm (1H,d,J=3.3Hz,H−3”)、δ4.42〜4.48ppm(1H,m,H−2”)、δ4.77ppm (1H,t,J=9.57Hz,H−2)であり、1H−NMR測定スペクトルを図1に示す。
【0030】
<13C−NMR>
{重水液中で(TMSP)を内部標準物質として測定、68MHz カッコ内は帰属}
本発明の新規物質の13C−NMRピークは、δ23.9ppm(C−3 )、δ27.6ppm(C−2’ )、δ51.2ppm(C−1” )、δ53.4ppm(C−4 )、δ54.1ppm(C−1’)、δ60.5ppm(C−3” )、δ62.4ppm(C−3’)、δ68.3ppm(C−2”)、δ69.7ppm(C−2)、δ173.3ppm(C−4”)、δ174.9ppm(C−4’)、δ176.0ppm(C−1)であり、13C−NMR測定スペクトルを図2に示す。
【0031】
<1H−1H COSY及び13C−1H COSY>
また、本発明の新規物質は、1H−1H COSYにより図3に示す1H−1H COSYスペクトルが、13C −1H COSYにより図4に示す13C −1H COSYスペクトルが得られるものである。
【0032】
<MS>
本発明の新規物質を、FAB(Fast Atom Bombardment)−MS、ESI(Electrospray Ionization)−MSによりマススペクトルを測定したところ、FAB−MSにおいて、m/z=320に弱い(M+H)のピークが認められた。また、ESI−MSにおいても、m/z=320が(M+H)のピークであることが確認された。
【0033】
<高分解能MS>
また、高分解能FAB−MSにより(M+H)イオンのピークはm/z=320.1458であり、C12H22O7N3から計算される質量数320.1458と一致し、分子式がC12H21O7N3と決定された。
【0034】
<その他の理化学的性質>
本発明の新規物質は、ニンヒドリン反応に陽性を示すが、Cu2+イオンによりニンヒドリン反応が抑制される。また、本発明の新規物質は、水、(希酸)、(希アルカリ)などに溶解する性質を有する。また、本発明の新規物質を、6N HClを用いて110℃、16時間加水分解し、アミノ酸自動分析計を用いてアミノ酸を検出したところ、通常のアミノ酸はほとんど検出されず、複雑な組成の分解産物を示す。また、本発明の新規物質は、融点が275〜280℃である。比旋光度は、[α]D 23.5=−40°(c=0.4g/100ml;溶媒は水)、[α]D 23.5=−34.5°(c=0.2g/100ml;溶媒は1N HCl溶液)である。また、n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2の混合展開溶媒を用いたシリカゲル担体の薄層クロマトグラフ法(TLC)による分析においてはRf値0.03、n−プロパノール:アンモニア=7:3の混合展開溶媒を用いたTLCではRf値0.06の単一のスポットを示した。
【0035】
本発明の新規物質は、FAB−MS、ESI−MSで得られたスペクトルにより分子量が319であることが明らかになり、高分解能MSで得られたスペクトルよりC12H21O7N3の分子式であることが明らかである。ニンヒドリン反応に陽性を示すためアミノ酸またはペプチドであると推定され、アミノ酸検出において複雑な組成の分解産物を示したことからペプチドではなく非タンパク性のアミノ酸であると推定され、Cu2 +イオンによりニンヒドリン反応が抑制されるためα−アミノ酸であると推定された。本物質の1H−NMR、13C−NMR、1H−1H COSY、13C−1H COSYで得られたスペクトルの解析と、上述の種々のデータを総合した解析の結果、本物質はニコチアナミンの2’または2”−ヒドロキシ誘導体であると推定された。FAB−MSのm/z=320(M+H)正イオンよりのプロダクトイオンスペクトル(図5)には、アゼチジン環に由来するm/z=56のピークの他に、ニコチアナミンと一致するm/z=114,128,186,201のピークが認められた。また、m/z=245,191などのピークは2”位に水酸基が存在することを示している。これらのことより、本発明の新規物質は2”−ヒドロキシニコチアナミンであると構造決定された。
【0036】
<そば試料>
以下に本発明の新規物質を製造する方法について述べる。原料となるそば試料としては、植物としてのそばから派生する天然の非加工試料のみならず、そばを用いた加工食品などの加工物も、本発明の新規物質を含有するものであれば使用可能であるが、天然の非加工試料としては、そば粉、そば玄穀、そば植物体茎葉、及びそばの芽、ダッタンそばなどを挙げることができ、加工物としては、そば湯等を挙げることができる。これらのうち、そば粉が好適に用いられる。これらのそば試料は、そのままの形状で抽出工程において用いることもできるが、粉砕してから抽出工程で用いることもできる。
【0037】
<抽出用溶媒>
本発明の新規物質を製造する方法の抽出工程は、そば試料を抽出用溶媒により抽出して抽出液を得る工程であるが、抽出用溶媒としては、水、温水、エタノール水溶液、メタノール水溶液、希酸などの溶媒を挙げることができる。これらのうちでエタノール水溶液が好ましく、さらに、該エタノール水溶液においては、エタノールの濃度は、60〜80容量%であると好ましい。
【0038】
<抽出工程の手順>
抽出工程は、上記したそば試料を、上記した抽出用溶媒により抽出して抽出液を得る工程であり、抽出方法としては公知の方法を用いることができ特に制限されないが、抽出用溶媒とそば試料とを混合して抽出し、濾過して濾液を抽出液として得る方法、抽出用溶媒と植物試料とを混合して抽出した後、遠心分離し、得られた上澄み液を抽出液として得る方法などを挙げることができる。抽出工程を行う際、抽出用溶媒の温度としては、特に制限されないが、例えば、エタノール水溶液の場合には、50〜100℃のものが、抽出能が良好となるため好ましい。また、そば試料の重量1kg当たりの抽出用溶媒の体積は、多いほど抽出効率がよいが、10倍容程度が好ましい。抽出の条件・回数等は試料により適宜設定することができ、抽出用溶媒を加えて抽出を行い、抽出液を得る操作を複数回行うことも可能である。また、エタノール水溶液により抽出を行った後、さらに、得られた抽出液に対して、ヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテルなどで抽出を行って水層を得、水層を抽出液として得る方法など、前記抽出用溶媒による抽出工程の後に、1種又は2種以上の有機溶媒による抽出を1回または2回以上行って、水層を抽出液として得ることも可能である。このような有機溶媒としては、ヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、石油エーテルなどを挙げることができる。
【0039】
<濃縮工程>
本発明の新規物質を製造する方法は、上記の抽出工程で得られた抽出液を濃縮して濃縮液を得る濃縮工程を行った後、該濃縮液に対して、下記する分離精製工程を行う方法とすることが可能である。濃縮工程においては、抽出液をロータリーエバポレーター等の濃縮手段により濃縮して濃縮液を得る。また、得られた濃縮液に対して、ジエチルエーテルまたはヘキサンで抽出を行って水層を得、ついで、該水層に対して酢酸エチルで抽出して、水層を濃縮液として得る方法など、濃縮工程に加えて、1種又は2種以上の有機溶媒を用いて抽出を行い、濃縮液を得ることも可能である。このような有機溶媒としては、<抽出工程の手順>に挙げた有機溶媒を用いることができる。
【0040】
<溶出工程>
また、本発明の新規物質を製造する方法は、前記抽出工程で得られた抽出液又は前記濃縮工程で得られた濃縮液に対して、陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法により、陽イオン交換樹脂に滞留する滞留物を得て、該滞留物を溶出した溶出液を得る溶出工程を行い、次いで該溶出液に対して、下記する分離精製工程を行う方法とすることができる。溶出工程においては、陽イオン交換樹脂に滞留する滞留物が、陽イオン交換樹脂に吸着する吸着物であると好ましい。
【0041】
<溶出工程のカラム用樹脂>
陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法を行うに際して、カラムに充填する陽イオン交換樹脂としては、特に制限されないが、Amberlite IR−120(Rohm and Haas社製)やDowex 50(The Dow Chemical社製)のような強陽イオン性交換樹脂が好ましい。
【0042】
<溶出用の溶離剤>
溶出用の溶離剤としては、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの電解質の水溶液を挙げることができる。これらの電解質のうちでは、アンモニアが特に好ましい。また、溶離液における、電解質の濃度としては、0.5〜2.0 mol/Lが好ましい。
【0043】
<溶出工程の手順>
溶出工程は、抽出工程を経て得られる抽出液又は濃縮工程を経て得られる濃縮液をシリンジ法、バルブループ法などの公知の方法により、陽イオン交換樹脂を充填したカラムに注入して、該抽出液又は該濃縮液に含有される陽イオンに荷電する物質をカラムに滞留させ、滞留物を得て、次いで、溶出用の溶離剤をカラムに通液し、滞留物を溶出し、溶出液を得る。この際、得られた溶出液に対してACE阻害活性を測定し、該溶出液の複数の画分のうち、ACE阻害活性を有する画分を取り出して溶出液とすることもできる。このようにして得られた溶出液に対して、下記する分離精製工程を行うことにより、ACE阻害活性を有する画分を取り出すことができる。
【0044】
<分離精製工程>
前記抽出液、前記濃縮液又は前記溶出液に含まれる新規物質は、陽イオン交換樹脂に滞留あるいは吸着する性質を有することから、陽イオンに荷電する物質であると判明した。本発明の新規物質を製造する方法の分離精製工程は、前記抽出液、前記濃縮液、又は溶出液に含まれる陽イオンに荷電する物質である本発明の新規物質を、陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法による分離精製によりアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する画分を得る工程である。
【0045】
<カラム用樹脂>
陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法を行うに際して、カラムに充填する陰イオン交換樹脂としては、特に制限されないが、Dowex 1(The Dow Chemical社製)などの強陰イオン性イオン交換樹脂が好ましい。これらの陰イオン交換樹脂は酢酸型として用いる。
【0046】
<分離精製工程の溶離液>
溶離液としては、酢酸、蟻酸、塩酸、アンモニア、ピリジンなどの電解質の水溶液を挙げることができる。
【0047】
<分離精製工程の手順>
分離精製工程は、抽出工程を経て得られる抽出液を公知の方法により、陽イオン交換樹脂を充填したカラムおよび陰イオン交換樹脂を充填したカラムに注入して、水での洗浄や前記溶出用電解質水溶液で溶出し、得られた画分に対してACE阻害活性を測定し、ACE阻害活性を有する画分を得ることにより行われる。ACE阻害活性の測定は、Cushman & Cheungの方法など公知の方法で行うことができる。
【0048】
<単離工程>
本発明の新規物質を製造する方法においては、以上の工程を経て得られたACE阻害活性を有する画分をロータリーエバポレーター、噴霧乾燥、凍結乾燥などの公知の乾燥手段で、乾固して粉末状の物質を得る方法など公知の方法により、ACE阻害活性を有する画分から粉末状の本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンを得ることができる。しかし、ACE阻害活性を有する画分から得られた粉末状の新規物質は、さらに、再結晶操作を行い、結晶を単離する単離工程を行い、無色結晶の新規物質を得ることが好ましい。再結晶操作に用いる溶媒としては、アセトン水溶液、メタノール水溶液、水、エタノール水溶液などの本発明の新規物質を溶解させることができる溶媒を挙げることができるが、エタノール水溶液が、再結晶操作が行いやすいため好ましい。該エタノール水溶液においては、エタノールの濃度は、エタノール水溶液を100重量%として、通常10〜80容量%であり、30〜60容量%であると好ましい。エタノール水溶液による再結晶操作の温度条件は特に制限されないが、70〜100℃で粉末状の2”−ヒドロキシニコチアナミンを溶解させ、−10〜10℃で再結晶させる方法を採用することができる。
【0049】
以上のように説明した本発明の新規物質を製造する方法で得られた新規物質は、前記した<1H−NMR>、<13C−NMR>、<1H−1H COSY及び13C−1H COSY>、<MS>、<高分解能MS>、<その他の理化学的性質>に記載された理化学的性質を有するものである。
【0050】
本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンは、ACE阻害剤の有効成分とすることができる。すなわち、本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンを、賦形剤、潤沢剤、結合剤、賦香剤等の薬事的に認められる担体と共に、常法により、経口投与用の錠剤、カプセル剤、トローチ剤、粉末、または細粒・顆粒剤、水溶液に溶解させた溶剤などとし、ACE阻害剤とすることができ、該ACE阻害剤は、血圧降下剤として使用することが可能である。前記ACE阻害剤又は血圧降下剤は、経口投与するか、注射剤として静脈内投与するなどして活用することができる。
【0051】
本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンは、各種の飲食品の加工材料として添加することによって、パン、ケーキ、ビスケット、クッキー、菓子類、そば、うどん、中華麺などの麺類、天ぷら、フライなどの惣菜類を、健康食品とすることができる。さらに、本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンを、ジュース、コーヒー、ココア、ウーロン茶、緑茶、健康飲料などの飲料類に溶解させて添加することにより、健康食品とすることができる。
【0052】
本発明の健康食品への本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンの添加量は、特に制限されないが、パン、菓子、麺、惣菜類などの食品に対しては、10mg以上/100グラム、また、飲料に対しては5mg以上/100グラム加えることが好ましい。また、本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンは、健康食品、医薬品として、そのまま利用することもできる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0054】
実施例1
<抽出工程>
そば粉2Kgに70%エタノール8lを加え、一夜室温に放置し抽出した。濾紙を用いて濾過し、第1抽出液とした。さらに、残渣に対して同量の70%エタノールで抽出して、濾紙を用いて濾過して抽出液を得る操作を2回行い、第2抽出液及び第3抽出液を得た。
【0055】
<濃縮工程>
第1抽出液、第2抽出液及び第3抽出液を集めて、抽出液とし、該抽出液をロータリーエバポレーターを用いて約2lに濃縮した。
【0056】
濃縮液を分液ロートを用いてヘキサンで抽出し、ヘキサン層と水層1とを得た。ヘキサン層と水層1との下記する<ACE阻害活性の測定>に従ってACE阻害活性を測定したところ、ACE阻害活性は水層1に存在し、ヘキサン層には活性は認められず、水層1に活性が残存した。つぎに、この水層1を酢酸エチルで抽出して酢酸エチル層と水層2とを得た。酢酸エチル層と水層2との下記する<ACE阻害活性の測定>に従ってACE阻害活性を測定したところ、ACE阻害活性は水層2に存在し、酢酸エチル層には活性は認められず、水層2に活性が残存した。該水層2を濃縮液として、以下の分離精製工程を行った。
【0057】
<溶出工程>
陽イオン交換樹脂Amberlite IR−120(H+)をカラムに充填し、十分に水で洗浄し、平衡化した。溶離液として、濃度が1mol//Lのアンモニア水溶液を調製した。阻害活性の存在した前記濃縮液を、サンプルとして、直接前記陽イオン交換樹脂Amberlite IR−120(H+)のカラムに注入し、非吸着画分を水洗して集めた。また、吸着画分は濃度1mol/LのNH4OH水溶液を溶出用の溶離剤として溶出し、溶出液を得た。それぞれの画分をロータリーエバポレーターで乾固するまで濃縮し、一定量の水に溶解し、下記する<ACE阻害活性の測定>に従ってACE阻害活性を測定したところ、溶出液にのみ活性が存在した。このことから、活性成分は陽イオンに荷電する物質と判明した。
【0058】
<分離精製工程>
陰イオン交換樹脂Dowex1x4をカラムに充填し、十分に水洗し、平衡化した。溶離液として、0.3mol/Lの酢酸水溶液を調製した。前記溶出液をアンモニア水を用いてpH8に調整し、直接前記陰イオン交換樹脂Dowex1x4のカラムに注入した。純水、ついで前記溶離液をカラムに通液して、複数の画分を得た。該複数の画分に対して、下記する<ACE阻害活性の測定>に従ってACE阻害活性を測定し、ACE阻害活性を有する画分を得た。次いで該ACE阻害活性を有する画分に対して、繰り返し2回陰イオン交換樹脂Dowex1x4のカラムによるイオン交換クロマトグラフィーを行い、ACE阻害活性を有する画分を精製した。この結果、強いACE阻害活性を持つ物質を含む画分が得られ、ロータリーエバポレーターにより乾固したところ、強いACE阻害活性を持つ物質が85mg得られた。
【0059】
<単離工程>
前記強いACE阻害活性を持つ物質85mgに対して、水―エタノール混液(エタノール(40容量%含有)を用いた2回の再結晶操作を行うことにより、44mgの無色結晶が単離された。このように単離された無色結晶については、1H−NMR測定、13C−NMR測定、1H−1H COSY測定、13C−1H COSY測定、MS測定、高分解能MS測定等を行ったところ、前記した図1〜図5に示されるスペクトルが得られるとともに、該無色結晶は、前記<その他の理化学的性質>に記載された理化学的性質を有する新規物質であることがわかった。該新規物質は、2”−ヒドロキシニコチアナミンであると考えられる。
【0060】
<ACE阻害活性の測定>
ACE活性の測定は、Cushman & Cheungの方法に従い、以下に示すように行った。
(1)試薬の調製
(i)本発明の新規物質、すなわち、前記無色結晶1.60mg、0.8mg、0.4mgを、水 100 mlに加えて、それぞれ本発明の新規物質の濃度が50μmol/L、25μmol/L、12.5μmol/Lである試料液1、試料液2、試料液3を調製した。
(ii)ホウ酸濃度0.2mol/Lの緩衝液(pH8.3)を調製した。
(iii)Hippuryl−L−histidyl−L−leucine を7mmol/L濃度となるように、前記緩衝液に溶解し、基質溶液を調製した。
(iv)2mol/LのNaCl水溶液を調製した。
(v)ACEはSigma社のウサギ肺からの凍結乾燥品を使用し、該ACE 1IUを、前記緩衝液6.67mlに加えて、ACE活性 150mIU/mlの酵素溶液を調製した。
(2)反応組成液
(i)基質溶液;500μl
(ii)2mol/L NaCl溶液;400μl
(iii)試料液1〜3;それぞれ30μl
(iv)水;40μl
(v)酵素溶液;30μl
(3)反応条件
上記反応組成液の(i)、(ii)、(iii)および(iv)を混和したのち、プレインキュベーションなしに、(v)の酵素液を加え、37℃で30分反応(インキュベーション)させる。次いで1mol/Lの塩酸を500μl加え、反応を停止する。その後、酢酸エチル 3mlで遊離した馬尿酸を抽出した。抽出液を、遠心エバポレーターで蒸発乾固し、水 1mlに溶解して228nmでの吸光度を分光光度計によって測定した。測定した吸光度をODs(試料液1〜3を用いた反応についてそれぞれODs1、ODs2、及びODs3)とした。
(4)コントロール測定
上記(3)の反応液の(iii)試料液の代わりに水30μlを用い、その他は(3)と全く同じ条件で反応を行い、得られた228nmでの吸光度をOdcとした。
(5)ブランク測定
上記反応組成液の(i)〜(iv)を混和して、37℃で30分間反応させ、1mol/LHClで反応を停止させた後、(v)の酵素液を加えた。これを(3)と同様に酢酸エチルで抽出した。それ以後の操作は(3)と同じである。得られた228nmの吸光度をODbとした。
(6)ACE阻害率50%(IC50)を示す本発明の新規物質の濃度の決定
Ods1,Ods2,Ods3の阻害率を下記式(4);
ACE阻害率(%)={1−(Ods−ODb)/(ODc−ODb)}× 100 (4)
によって求め、グラフに外挿することにより阻害率50%を示す本発明の新規物質の濃度を決定した。その結果、阻害率50%(IC50)を示すACE阻害活性を示す本発明の新規物質の濃度は、0.08μmol/Lであった。
【0061】
比較例1
(1)試薬の調製において、ニコチアナミン1.51mg、0.76mg、0.38mgを、水100mlに加えて、それぞれニコチアナミンの濃度が50μmol/L、25μmol/L、12.5μmol/Lである試料液4、試料液5、試料液6を調製し、該試料液4〜6を、(2)反応組成液の(iii)試料液として、(3)反応条件において用いた以外には、すべて実施例1と同様に、<ACE阻害活性の測定>の測定を行った。その結果、試料液4〜6の吸光度ODs(ODs4、ODs5、ODs6)として、実施例1で求めたODcとODbと上記式(4)から、阻害率50%(IC50)を示すACE阻害活性を示すニコチアナミンの濃度は、0.085μmol/Lであった。
【0062】
以上行われた実施例1及び比較例1の結果から、本発明の新規物質(2”−ヒドロキシニコチアナミン)のACE阻害活性のIC50は0.08μMであり、同条件でのニコチアナミンのIC50、0.085μMとほぼ同等かより強い阻害活性を持つことが示された。
【0063】
【発明の効果】
本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンは、ACE阻害活性を有する。また、本発明の新規物質を製造する方法は、ACE阻害活性を有する2”−ヒドロキシニコチアナミンを製造することができるという効果を奏するものである。さらに、本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンを有効成分として含有させることによりアンジオテンシン変換酵素阻害剤及び血圧降下剤とすることができ、本発明の2”−ヒドロキシニコチアナミンを含有させることにより健康食品とすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の新規物質の1H−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図2】本発明の新規物質の13C−NMR測定スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の新規物質の1H−1H COSYスペクトルを示す図である。
【図4】本発明の新規物質の13C −1H COSYスペクトルを示す図である。
【図5】本発明の新規物質のFAB(Fast Atom Bombardment)−MSによる、m/z320(M+H)+よりのポジティブプロダクトイオンスペクトルを示す図である。
Claims (12)
- そば試料を抽出用溶媒により抽出して抽出液を得る抽出工程を行い、次いで、該抽出液に対して、陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法による分離精製によりアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する画分を得る分離精製工程を行うことを特徴とする2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法。
- 前記抽出用溶媒が、エタノール水溶液であることを特徴とする請求項2記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法。
- 前記抽出液を濃縮して濃縮液を得る濃縮工程を行った後、該濃縮液に対して、前記分離精製工程を行うことを特徴とする請求項2又は3記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法。
- 前記分離精製工程を2回以上行うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法。
- 前記抽出液又は前記濃縮液に対して、陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィー法により、陽イオン交換樹脂に滞留する滞留物を得て、該滞留物を溶出した溶出液を得る溶出工程を行い、次いで該溶出液に対して、前記分離精製工程を行うことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法。
- 前記抽出工程又は前記濃縮工程の後に、得られた抽出液又は濃縮液に対して、1種又は2種以上の有機溶媒による抽出を1回または2回以上行って、水層を抽出液又は濃縮液として得ることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法。
- 前記分離精製工程を行った後、さらに、前記アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する画分に対して再結晶操作を行い、結晶を単離する単離工程を行うことを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法。
- 前記単離工程において、再結晶操作に用いる溶媒がエタノール水溶液であることを特徴とする請求項8に記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンの製造方法。
- 請求項1記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンを有効成分として含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤。
- 請求項1記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンを有効成分として含有する血圧降下剤。
- 請求項1記載の2”−ヒドロキシニコチアナミンを含有する健康食品。
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