JP2004330440A - 画像形成方法及びパターン形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】親水性から疎水性に変換する記録を高感度で行うことができ、未露光部の親水性に優れた画像を得ることができる画像形成方法を提供する。
【解決手段】基材の少なくとも片方の表面に、イオン性基を導入し、該イオン性基と結合しうる金属微粒子、例えば、Au、Agなどの金属微粒子を静電的に結合させてなる材料を用いることを特徴とする。ここで、イオン性基を表面に導入した基材は、その表面にイオン性基をグラフト重合により導入した表面グラフト重合体を備えることが好ましく、画像形成は、400〜600nmの波長のレーザーで画像様に露光し、露光部の金属微粒子層の溶融或いは除去により疎水性領域を形成することにより行なわれる。
【選択図】 なし
【解決手段】基材の少なくとも片方の表面に、イオン性基を導入し、該イオン性基と結合しうる金属微粒子、例えば、Au、Agなどの金属微粒子を静電的に結合させてなる材料を用いることを特徴とする。ここで、イオン性基を表面に導入した基材は、その表面にイオン性基をグラフト重合により導入した表面グラフト重合体を備えることが好ましく、画像形成は、400〜600nmの波長のレーザーで画像様に露光し、露光部の金属微粒子層の溶融或いは除去により疎水性領域を形成することにより行なわれる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版原版の記録層の形成に適用しうる新規な画像形成方法及び親/疎水性パターン形成方法に関し、特に、感度及び耐刷性に優れた平版印刷版用原版を製造し得るネガ型画像形成方法、さらには、ディジタル信号に基づいてレーザー光による画像の走査露光が可能である、現像処理等が不要で、直接製版可能な平版印刷版原版に適用し得る画像形成方法及び親/疎水性パターン形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。このような平版印刷版は、従来、通常、親水性支持体上に、親油性の感光性樹脂層を設けたPS版にリスフィルムを介してマスク露光した後、非画像部を現像液によって溶解除去することにより製版していた。
近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、ディジタル化技術が広く普及し、その結果、レーザー光の様な指向性の高い活性放射線をディジタル化された画像情報に応じて走査し、リスフィルムを介することなく、平版印刷版用原版に対して直接画像形成を行うコンピュータ トゥ プレート(CTP)技術が切望されている。
【0003】
他方、従来のPS版による印刷版の製造は、露光の後、非画像部を溶解除去する行程が不可欠であり、さらに通常は、現像処理された印刷版を水洗水で水洗したり、界面活性剤を含有するリンス液、アラビアガム、澱粉誘導体を含む不感脂化液で処理する後処理行程も必要であった。この様な付加的な湿式の処理が不可欠であるという点は、従来技術に対し、改善の望まれてきたもう一つの課題である。特に近年は、地球環境への配慮が産業界全体の大きな関心事となっており、湿式工程に伴う廃液の処理が問題となっている。
処理の簡素化、乾式化、無処理化は、この様な環境面と、先述のディジタル化に伴った工程の合理化の両方の観点から、従来にも増して、強く望まれるようになってきている。
【0004】
即ち、近年の製版、印刷業界では製版作業の合理化が進められており、上記のような複雑なリスフィルムを介した画像露光や湿式現像処理を必要とせず、CTP画像記録後等にそのまま印刷に使用できる印刷版用原版が望まれている。
CTP画像記録が可能で現像工程を必要としない刷版としては、光又は熱により親水性から疎水性へと極性が変換する極性変換層を備えたものが挙げられ、例えば、N−フェニルグリシン誘導体を含有するポリマーを用いた感光性組成物(例えば、特許文献1参照。)、カルボキシル基を有する化合物から得られるポリマー(例えば、特許文献2参照。)をはじめとして様々な感光層の構成が開示されている。
【0005】
これらは、露光部が疎水性に変化し、未露光部分は親水性を維持するため、特に現像処理を必要せずに平版印刷版が得られる特徴がある。しかしながら、これらはいずれも、非画像部を形成する親水層の親水性が不充分であり、厳しい印刷条件では非画像部にインキが付着して汚れが発生する懸念があった。また、画像記録時のエネルギー量が低いと、親水性から疎水性への極性変化が十分になされず、感度が低いという問題があり、いずれも実用に適する画像形成性を有するには至っていなかった。
【0006】
また、プラスチック表面の微細加工の応用として、透明なポリマーマトリックス中に金属微粒子を分散させたものを基板上に塗布し、レーザーを画像様に照射して基板に微細加工を施した後、金属微粒子層を溶剤で除去する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法によれば、デジタルデータによる微細な加工が可能となるものの、金属微粒子層の除去に溶剤を必要とし、さらに、このパターンは単に凹凸を形成するものであって、親水性/疎水性のパターンを形成し得るものではなかった。
【0007】
さらに、本発明者らは、先に、イオン性基を有する基材表面に吸着した熱溶融性荷電微粒子を赤外線レーザで露光して互いに融着させ、露光部を疎水性領域とする技術を提案したが(例えば、特許文献4、5参照。)、この技術が荷電微粒子の加熱融着により疎水性領域を形成するのに対し、さらに、異なる疎水性領域の形成機構を達成するため、本発明がなされたものである。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−238002号公報
【特許文献2】
欧州特許(EP)467,177号明細書
【特許文献3】
特開2002−321279公報
【特許文献4】
特開2002−192845公報
【特許文献5】
特開2002−835815公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、親水性から疎水性に変換する記録を高感度で行うことができ、未露光部の親水性に優れた画像形成材料を形成するための画像形成方法を提供することにある。本発明の更なる目的は、高感度で記録可能であり、かつ、厳しい印刷条件においても非画像部に汚れの発生しない平版印刷版の記録層として好適な親/疎水性のパターンを容易に形成し得るパターン形成方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、イオン性グラフトポリマーからなる、イオン性基を表面に有する基材上に該イオン性基と結合しうる金属微粒子層を設けることで、低エネルギーのレーザー露光により表面極性が容易に親水性から疎水性に変化することを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明の画像形成方法は、イオン性基を表面に有する基材のイオン性基に、該イオン性基と結合しうる金属微粒子を静電的に結合させてなる金属微粒子層を備えた画像形成材料を、400〜600nmの波長のレーザーで画像様に露光し、露光部の金属微粒子層の除去により疎水性領域を形成することを特徴とする。
ここで、イオン性基を表面に有する基材は、イオン性基を有するグラフトポリマー鎖が結合してなる基材であることが好ましい態様である。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る親/疎水性パターン形成方法は、イオン性基を表面に有する基材のイオン性基に、該イオン性基と結合しうる金属微粒子を静電的に結合させてなる金属微粒子層を備えた親/疎水性パターン形成材料を、400〜600nmの波長のレーザーで画像様に露光し、露光部の金属微粒子層の除去により疎水性領域を形成した後、未露光部においてイオン性基に付着した金属微粒子を除去することで親水性領域を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の画像形成材料において、印刷時の汚れの低減、および高感度化が達成される作用は明確ではないが、表面の親水性層として、イオン性グラフトポリマーによるイオン性基と金属微粒子との高密度吸着により形成された高密度の金属微粒子層により表面超親水性が発現され、未露光部の優れた親水性による汚れ防止機能が達成されるものと考えられる。また、金属はナノサイズの微粒子になることで400〜600nmの波長領域の光に対してプラズモン吸収と言われる吸収を示し、かつ熱溶融温度が低下するため、このような波長のレーザーを照射することで金属微粒子は容易にアブレージョンを生じ、基材表面に存在するイオン性基とともに親水性層が除去されて疎水性の基材表面が露出することで疎水性領域が形成されるため、親水性領域/疎水性領域が明確に区画される。また、親水性表面層を構成する金属微粒子層が、超微粒子が単層或いは多層に配置されてなる極薄層であるため、微粒子のアブレーションによる除去という画像形成に必要な工程に要する熱容量が少なくてすむこととあいまって、わずかなエネルギーで速やかに疎水性領域が形成され、高感度が達成されるものと考えられる。
【0013】
このような作用は、金属微粒子がイオン性基の働きで薄層に緻密に存在することにより、十分なレーザー光吸収と効率的なアブレーションの発生が達成されることによるものと考えられる。すなわち、前記先行技術に記載の如き塗布法で金属微粒子層を形成する場合には、バインダーを要する関係で均一層を形成しようとする場合の金属微粒子濃度は約50質量%が限度であるが、本発明の場合には、バインダーや溶剤などを必要としないことから濃度95質量%までの金属微粒子材料を分散性よく分散することができるためと考えられる。
また、このイオン的に吸着している金属微粒子は塩交換により容易に除去されるため、前記疎水性領域形成後に、例えば、食塩水などで処理することで容易に金属微粒子が除去され、親水性のイオン性基を有する表面となるため、親水性領域と疎水性領域とが明確に区画された親/疎水性パターンが容易に形成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の画像形成方法およびそれを平版印刷版原版の作製に応用した例について詳細に説明する。
本発明においては、基材上にイオン性基を有する表面を備えるものとして、イオン性グラフトポリマーからなる表面、即ち、イオン性グラフトポリマー鎖が存在する表面が好ましい態様として挙げられる。このようは表面の性状は、イオン性グラフトポリマー鎖が直接基材表面に結合しているものでもよく、イオン性グラフトポリマー鎖が幹高分子に結合したものを基材表面に結合させたもの、或いは、そのようなイオン性グラフトポリマー鎖が幹高分子に結合したものを、任意の基材上に塗布、塗布架橋して、イオン性グラフトポリマーからなる表面層を形成したものであってもよい。
イオン性グラフトポリマー鎖を有する表面は、一般的に表面グラフト法により作成されたものであることが好ましい。表面グラフト法により作成された表面とは、高分子表面上に光、電子線、熱などの従来公知の方法にてイオン性モノマーをグラフトし、該グラフトされたイオン性モノマーが表面のイオン性基を形成した状態を指す。また、イオン性基を形成するイオン性モノマーとしては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマー、もしくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基を有するモノマー等が挙げられる。
【0015】
基材上にグラフトポリマーからなる、イオン性基を有する表面を作成する方法としては、公知の方法を適用すればよく、具体的には、例えば、日本ゴム協会誌,第65巻,604,1992年,杉井新治著,「マクロモノマーによる表面改質と接着」の記載を参考にすることができる。その他、以下に述べる表面グラフト重合法と呼ばれる方法を適用することもできる。
表面グラフト重合法とは高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって開始する別の単量体を重合し、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法で、特に活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。
【0016】
本発明を実現するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。たとえば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135には表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203,p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報および特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
表面グラフトポリマーを有する表面を作成するための手段としてはこれらの他、高分子化合物鎖の末端にトリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基を付与し、これと基材表面官能基とのカップリング反応により形成することもできる。
【0017】
プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては上記記載の文献、およびY.Ikada et al, Macromolecules vol. 19, page 1804(1986)などの記載の方法にて作成することができる。具体的にはPETなどの高分子表面をプラズマ、もしくは電子線にて処理し、表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面とイオン性官能基を有するモノマーとを反応させることによりグラフトポリマー表面層、即ち、イオン性基を有する表面層を得ることができる。
光グラフト重合は上記記載の文献のほかに特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)記載のように、フィルム基材の表面に光重合性組成物を塗布し、その後イオン性ラジカル重合化合物とを接触させ光を照射することによっても作成することができる。
【0018】
本発明において好適に用い得るイオン性基を形成し得るイオン性モノマーとは、前記したように、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマーもしくはスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基を有するモノマーが挙げられる。
本発明においてとくに有用なイオン性モノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、イタコン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン酸塩、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスチレンスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレートもしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、アシッドホスホオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのリン酸モノマーもしくはそれらのアルカリ金属及びアミン塩、などを使用することができる。
【0019】
基材にイオン性基を導入するにあたり、表面積を増加させてより多くのイオン性基の導入を図る目的で、基材表面を粗面化することが好ましい。粗面化方法は基材の材質に適合する公知の方法を選択することができる。具体的には、例えば、基材が樹脂フィルムの場合には、グロー放電処理、スパッタリング、粒子付着法、粒子塗布法等が挙げられる。また、基材がアルミニウム板のような金属板の場合には、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法などが適用でき、機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、サンドブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0020】
次に、前記イオン性基と結合しうる金属微粒子について説明する。金属微粒子は、イオン性基との結合性の観点からは、正または負の荷電を有する金属微粒子であって、コアと呼ばれる微粒子(核)の周りが荷電で覆われているものが好ましい。
本発明の好ましい態様においては、親水性金属微粒子のコアと呼ばれる微粒子の中心部分としては、第8族及び第1B族から選ばれる金属単体又は合金の微粒子であり、更に好ましくは、Ag、Au、Cu、Pt、Pdの金属単体又はこれらを含む合金の微粒子である。なかでも、画像形成性の観点から、金、銀、パラジュウム、ロジュウム、白金などの貴金属微粒子が好適なものとして挙げられる。また、金属微粒子の分散度は多分散でよいが、変動係数が30%以下の単分散の方が好ましい。
【0021】
金属微粒子の粒径は、表面親水性、及びイオン性基と微粒子との密着強度の観点からは、0.1nmから1000nmの範囲であることが好ましく、1nmから100nmの範囲であることがさらに好ましい。
特に、本発明の如き、400〜600nmの波長領域の低出力レーザーにより、プラズモン吸収を利用して画像形成を行なう場合には、金、銀、銅、白金、パラジウムなどの金属であって、粒径が数nm〜数十nmオーダーのサブミクロン単位の金属微粒子を用いることが好ましい。
【0022】
微粒子核を被覆する荷電は正でも負でも良いが、グラフトポリマー表面に存在するイオン性基とイオン結合を形成するものが好ましく、この観点から該イオン性基の荷電とは逆の荷電を持っていることが必要である。
表面に高密度で荷電を有する微粒子は、例えば、米澤徹らの方法、すなわち、T.Yonezawa, Chemistry Letters., 1999 page1061, T.Yonezawa, Langumuir 2000, vol16, 5218および米澤徹, Polymer preprints, Japan vol.49. 2911 (2000)に記載された方法にて作成することができる。米澤らは金属−硫黄結合を利用し、金属粒子表面を荷電を有する官能基で高密度に化学修飾できることを示している。
【0023】
金属微粒子は、基材表面のイオン性基に吸着し得る最大量、結合されることが耐久性の点で好ましい。また、親水性表面の形成効率からは、分散液の分散濃度は、10〜20重量%程度が好ましい。
【0024】
表面にイオン性基を有する基材において、該イオン性基に金属微粒子を結合させ、表面親水性層を設ける方法としては、表面上に荷電を有する微粒子の分散液を表面グラフトポリマー、即ち、イオン性基を有する基材表面上に塗布する方法、及び、表面上に荷電を有する微粒子の分散液中にイオン性基を表面に有する基材を浸漬する方法などが挙げられる。塗布、浸漬のいずれの場合にも、過剰量の金属微粒子を供給し、イオン性基との間に十分なイオン結合による導入がなされるために、分散液と表面にイオン性基を有する基材との接触時間は、10秒から60分程度であることが好ましく、1分から20分程度であることがさらに好ましい。
【0025】
なお、金属微粒子からなる表面親水層の存在は、透過型電子顕微鏡、或いは、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて表面を観察し、表面の緻密な凹凸形状が形成されていることによりその存在を確認することができる。
【0026】
このようにして、任意の基材上に、金属微粒子からなる表面親水性層が形成された本発明の画像形成材料は、それぞれの金属微粒子の極大鳩首波長に適合するレーザー、本発明においては、金属微粒子に好適な、400〜600nmの波長のレーザーによる画像様の走査露光により、金属微粒子がアブレーションによりイオン性基ごと除去されて基材表面が露出することで疎水性領域が形成され、少ない熱量で効率的に画像形成される。本発明の金属微粒子は前述のように、超微粒子で粒径が非常に小さく、また、単層或いは多層の状態で微粒子が密に存在していることから、わずかなエネルギーの付与で微粒子のエネルギー吸収に起因するアブレーションが生じ、露光領域においてイオン性のグラフトポリマー鎖ごと金属微粒子が除去され、疎水性の領域が形成される。
【0027】
次に、本発明の画像形成材料を平版印刷版原版の記録層として用いる場合について、説明する。本発明の画像形成材料は、熱エネルギーの印加で加熱領域が親水性から疎水性に変換するため、露光部がインク受容性の画像部、未露光部が超親水性の非画像部となり、平版印刷版原版の記録層として適する。この極性変換による画像形成では、実質的に、湿式処理による現像工程を必要とせず、加熱或いは露光後に、印刷機に装着し、湿し水とインクを供給して印刷を行なうことができる。
また、露光後に、食塩水に浸漬するなどの処理を行なうことにより、金属微粒子が塩交換により容易に除去され、優れた親水性のイオン性基を有するグラフトポリマー鎖の存在領域が親水性領域(湿し水受容領域)となるため、金属微粒子を取り除いた後、印刷機に装着し、湿し水とインクを供給して印刷を行なうこともできる。
【0028】
本発明の画像形成材料を平版印刷版原版の記録層として用いる場合、好ましい記録層としての特性を得るため、必要に応じて種々の公知の添加物を併用してもよい。
【0029】
〔支持体〕
本発明の画像形成材料を平版印刷版原版に使用する場合、用いられる支持体としては、平版印刷版としての強度、耐久性、可撓性を有するものであれば特に制限はないが、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート若しくは蒸着された、紙若しくはプラスチックフィルム等が挙げられる。本発明の支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましい。
【0030】
支持体として、樹脂フィルムを使用する場合には、イオン性グラフトポリマー鎖は基材表面に容易に直接結合することができ、前記画像形成材料においてイオン性基を表面に導入する基材自体が支持体となる。また、アルミニウム板の如き金属板や紙製のシートを用いる場合には、前記したように、イオン性グラフトポリマー鎖が幹高分子に結合したものを、これら任意の基材(支持体)上に塗布、或いは、塗布架橋して、イオン性グラフトポリマーからなる表面層を形成すればよい。
【0031】
〔画像形成〕
本発明の画像形成材料の画像形成は、500〜600nmの波長領域のレーザーの照射により行われる。画像形成機構としては、前記レーザー光の走査露光により、親水性層である表面超親水性をしめす金属微粒子層がアブレーションにより除去され、疎水性の基材表面が露出して疎水性領域を形成する。本発明の画像形成材料の表面親水性層に用いられる微粒子径は非常に小さく、且つ、該表面層に微粒子が単層或いは多層状態で非常に密に存在するため、少ない熱量で効率的に疎水性領域、即ち、疎水性画像部が形成される。同時に、未露光部の非画像部では、本発明の表面親水性層特有の表面超親水性を示すため、厳しい印刷条件でもインクなどの付着が抑制され、汚れのない印刷物が多数得られる平版印刷版が製版される。
【0032】
本発明の画像形成方法において、疎水性領域を形成するには、生産性向上の観点から、コンピュータ・トゥ・プレートによるダイレクト製版を行うことが好ましく、走査露光に用いる露光光源は、用いられる金属微粒子により適宜選択されるが、画像形成に適するプラズモン吸収と言われる吸収を示す領域は、例えば、銀微粒子であれば400〜500nmであり、金微粒子であれば500〜600nmの範囲に大きな吸収を示すため、これらに適合するものを選択すればよい。本発明においては、画像形成に用いるレーザーの出力は、数10mWから数100mW程度で充分であり、具体的には、例えば、Ar+イオンレーザー(488nm),FD−YAG(532nm)レーザーなどが好ましく挙げられる。
【0033】
以上の方により画像露光された本発明の画像形成材料は、親水性領域と疎水性領域が高感度で明確な領域として形成されるため、これを記録層に用いた平版印刷版原版は、それ以上の処理なしに印刷機に装着し、インキと湿し水を供給することで通常の手順で印刷することができる。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
(実施例1)
〔イオン性基を表面に有する基材の作成〕
膜厚188μのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用いた。この基体の片面上に、下記の光重合性組成物を、乾燥後の厚さが10μmになるようにリバースコーターで塗布し、100℃で2分間乾燥させた。次にこの塗布されたフィルムに、400W高圧水銀灯(UVL−400P、理工科学産業(株)製)を使用して、10分間UV照射し、予備硬化させて重合能を有する下塗り層を形成した。
【0035】
(光重合性組成物)
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 4g
(モル比率80/20、分子量10万)
・エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート 4g
(東亞合成(株)M210)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
【0036】
上記下塗り層形成済みの基板を、アクリル酸:20質量%及び次亜塩素酸ナトリウム:0.01質量%を含む水溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で400W高圧水銀灯を使用し30分間光照射した。
光照射後、得られたフィルムをイオン交換水で良く洗浄し、ポリアクリル酸がグラフトされた表面グラフトフィルムである基材Aを得た。
グラフトされたポリアクリル酸の厚みをATR−IR(全反射赤外線吸収スペクトル)を用いて測定したところ、0.3μmであった。
【0037】
〔該イオン性基とイオン結合しうる表面荷電微粒子の作成〕
米澤 著(T.Yonezawa)「ケミストリー レターズ(Chemistry .Letters.)」1999年、P1061に記載の方法に従って、表面が四級アンモニウム塩で覆われた金粒子1を得た。金粒子に吸着する四級アンモニウム塩の部分構造は下記に示す構造Aである。この粒子の平均粒径を電子顕微鏡(日本電子 JEOLJEM−200CX 加速電圧100kv)で求めたところ4nmであった。
【0038】
【化1】
【0039】
〔平版印刷版原版の作製〕
上記金微粒子1の1重量%水分散液に、表面グラフトポリマーを有する基材Aを10分間浸漬した。その後、流水で表面を十分洗浄して余分な微粒子水分散液を除去し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に親水性表面層(記録層)が形成された平版印刷版原版1を得た。金粒子が吸着された平版印刷版原版1の表面は、560nmに吸収極大を示した。
【0040】
〔画像形成と汚れ性の評価〕
得られた平版印刷版用原版1を用い、コンピュータ等のデジタル信号に基づき波長488nmの75mW空冷アルゴンレーザー(ビーム径28μm)を照射し、所望の画像に露光した後、なにも処理することなくそのまま印刷機ハイデルSOR−Mに取り付け、10,000枚の印刷を行い、得られた印刷物について目視による評価を行った。
その結果、表面グラフト有し、金粒子1をイオン結合させた表面親水性層を記録層とした平版印刷版原版1により鮮明な画像が得られ、非画像部にも汚れの発生は認められなかった。
【0041】
〔感度の評価〕
アルゴンレーザーの出力を変化させ、画像として記録するのに必要な感度を求めたところ、実施例1では、30mWの出力のレーザーで、記録感度50mJ/cm2で記録可能であり、高感度であることが確認された。
【0042】
また、前記の如くして得られた平版印刷版用原版1を用い、コンピュータ等のデジタル信号に基づき波長488nmの75mW空冷アルゴンレーザー(ビーム径28μm)を照射し、所望の画像に露光した後、5質量%の食塩水に5分間浸漬した後、印刷機ハイデルSOR−Mに取り付け、10,000枚の印刷を行ったが、この場合においても、得られた印刷物は鮮明な画像が形成されており、非画像部に汚れの発生は認められなかった。
なお、前記食塩水への浸漬により金粒子が除去された後、露光部、未露光部の接触角(空中水滴)を協和界面科学(株)製、CA−Zを用いて測定したところ、未露光部は10°、露光部は80°であり、親/疎水性パターンが形成されていることが確認された。
【0043】
実施例の評価結果より、本発明の画像形成材料の製造方法あるいはパターン形成方法により得られた記録層を備えた平版印刷版原版は、高感度の記録が可能であり、表面親水性に優れ、非画像部に汚れのない良好な印刷物が多数枚得られることがわかった。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、親水性から疎水性に変換する記録を高感度で行うことができ、未露光部の親水性に優れた画像形成方法を提供できる。また、本発明によれば、高感度で記録可能であり、かつ、厳しい印刷条件においても非画像部に汚れの発生しない平版印刷版の記録層の調製に適用しうる親/疎水性パターンの形成方法を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版原版の記録層の形成に適用しうる新規な画像形成方法及び親/疎水性パターン形成方法に関し、特に、感度及び耐刷性に優れた平版印刷版用原版を製造し得るネガ型画像形成方法、さらには、ディジタル信号に基づいてレーザー光による画像の走査露光が可能である、現像処理等が不要で、直接製版可能な平版印刷版原版に適用し得る画像形成方法及び親/疎水性パターン形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。このような平版印刷版は、従来、通常、親水性支持体上に、親油性の感光性樹脂層を設けたPS版にリスフィルムを介してマスク露光した後、非画像部を現像液によって溶解除去することにより製版していた。
近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、ディジタル化技術が広く普及し、その結果、レーザー光の様な指向性の高い活性放射線をディジタル化された画像情報に応じて走査し、リスフィルムを介することなく、平版印刷版用原版に対して直接画像形成を行うコンピュータ トゥ プレート(CTP)技術が切望されている。
【0003】
他方、従来のPS版による印刷版の製造は、露光の後、非画像部を溶解除去する行程が不可欠であり、さらに通常は、現像処理された印刷版を水洗水で水洗したり、界面活性剤を含有するリンス液、アラビアガム、澱粉誘導体を含む不感脂化液で処理する後処理行程も必要であった。この様な付加的な湿式の処理が不可欠であるという点は、従来技術に対し、改善の望まれてきたもう一つの課題である。特に近年は、地球環境への配慮が産業界全体の大きな関心事となっており、湿式工程に伴う廃液の処理が問題となっている。
処理の簡素化、乾式化、無処理化は、この様な環境面と、先述のディジタル化に伴った工程の合理化の両方の観点から、従来にも増して、強く望まれるようになってきている。
【0004】
即ち、近年の製版、印刷業界では製版作業の合理化が進められており、上記のような複雑なリスフィルムを介した画像露光や湿式現像処理を必要とせず、CTP画像記録後等にそのまま印刷に使用できる印刷版用原版が望まれている。
CTP画像記録が可能で現像工程を必要としない刷版としては、光又は熱により親水性から疎水性へと極性が変換する極性変換層を備えたものが挙げられ、例えば、N−フェニルグリシン誘導体を含有するポリマーを用いた感光性組成物(例えば、特許文献1参照。)、カルボキシル基を有する化合物から得られるポリマー(例えば、特許文献2参照。)をはじめとして様々な感光層の構成が開示されている。
【0005】
これらは、露光部が疎水性に変化し、未露光部分は親水性を維持するため、特に現像処理を必要せずに平版印刷版が得られる特徴がある。しかしながら、これらはいずれも、非画像部を形成する親水層の親水性が不充分であり、厳しい印刷条件では非画像部にインキが付着して汚れが発生する懸念があった。また、画像記録時のエネルギー量が低いと、親水性から疎水性への極性変化が十分になされず、感度が低いという問題があり、いずれも実用に適する画像形成性を有するには至っていなかった。
【0006】
また、プラスチック表面の微細加工の応用として、透明なポリマーマトリックス中に金属微粒子を分散させたものを基板上に塗布し、レーザーを画像様に照射して基板に微細加工を施した後、金属微粒子層を溶剤で除去する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法によれば、デジタルデータによる微細な加工が可能となるものの、金属微粒子層の除去に溶剤を必要とし、さらに、このパターンは単に凹凸を形成するものであって、親水性/疎水性のパターンを形成し得るものではなかった。
【0007】
さらに、本発明者らは、先に、イオン性基を有する基材表面に吸着した熱溶融性荷電微粒子を赤外線レーザで露光して互いに融着させ、露光部を疎水性領域とする技術を提案したが(例えば、特許文献4、5参照。)、この技術が荷電微粒子の加熱融着により疎水性領域を形成するのに対し、さらに、異なる疎水性領域の形成機構を達成するため、本発明がなされたものである。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−238002号公報
【特許文献2】
欧州特許(EP)467,177号明細書
【特許文献3】
特開2002−321279公報
【特許文献4】
特開2002−192845公報
【特許文献5】
特開2002−835815公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、親水性から疎水性に変換する記録を高感度で行うことができ、未露光部の親水性に優れた画像形成材料を形成するための画像形成方法を提供することにある。本発明の更なる目的は、高感度で記録可能であり、かつ、厳しい印刷条件においても非画像部に汚れの発生しない平版印刷版の記録層として好適な親/疎水性のパターンを容易に形成し得るパターン形成方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、イオン性グラフトポリマーからなる、イオン性基を表面に有する基材上に該イオン性基と結合しうる金属微粒子層を設けることで、低エネルギーのレーザー露光により表面極性が容易に親水性から疎水性に変化することを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明の画像形成方法は、イオン性基を表面に有する基材のイオン性基に、該イオン性基と結合しうる金属微粒子を静電的に結合させてなる金属微粒子層を備えた画像形成材料を、400〜600nmの波長のレーザーで画像様に露光し、露光部の金属微粒子層の除去により疎水性領域を形成することを特徴とする。
ここで、イオン性基を表面に有する基材は、イオン性基を有するグラフトポリマー鎖が結合してなる基材であることが好ましい態様である。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る親/疎水性パターン形成方法は、イオン性基を表面に有する基材のイオン性基に、該イオン性基と結合しうる金属微粒子を静電的に結合させてなる金属微粒子層を備えた親/疎水性パターン形成材料を、400〜600nmの波長のレーザーで画像様に露光し、露光部の金属微粒子層の除去により疎水性領域を形成した後、未露光部においてイオン性基に付着した金属微粒子を除去することで親水性領域を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の画像形成材料において、印刷時の汚れの低減、および高感度化が達成される作用は明確ではないが、表面の親水性層として、イオン性グラフトポリマーによるイオン性基と金属微粒子との高密度吸着により形成された高密度の金属微粒子層により表面超親水性が発現され、未露光部の優れた親水性による汚れ防止機能が達成されるものと考えられる。また、金属はナノサイズの微粒子になることで400〜600nmの波長領域の光に対してプラズモン吸収と言われる吸収を示し、かつ熱溶融温度が低下するため、このような波長のレーザーを照射することで金属微粒子は容易にアブレージョンを生じ、基材表面に存在するイオン性基とともに親水性層が除去されて疎水性の基材表面が露出することで疎水性領域が形成されるため、親水性領域/疎水性領域が明確に区画される。また、親水性表面層を構成する金属微粒子層が、超微粒子が単層或いは多層に配置されてなる極薄層であるため、微粒子のアブレーションによる除去という画像形成に必要な工程に要する熱容量が少なくてすむこととあいまって、わずかなエネルギーで速やかに疎水性領域が形成され、高感度が達成されるものと考えられる。
【0013】
このような作用は、金属微粒子がイオン性基の働きで薄層に緻密に存在することにより、十分なレーザー光吸収と効率的なアブレーションの発生が達成されることによるものと考えられる。すなわち、前記先行技術に記載の如き塗布法で金属微粒子層を形成する場合には、バインダーを要する関係で均一層を形成しようとする場合の金属微粒子濃度は約50質量%が限度であるが、本発明の場合には、バインダーや溶剤などを必要としないことから濃度95質量%までの金属微粒子材料を分散性よく分散することができるためと考えられる。
また、このイオン的に吸着している金属微粒子は塩交換により容易に除去されるため、前記疎水性領域形成後に、例えば、食塩水などで処理することで容易に金属微粒子が除去され、親水性のイオン性基を有する表面となるため、親水性領域と疎水性領域とが明確に区画された親/疎水性パターンが容易に形成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の画像形成方法およびそれを平版印刷版原版の作製に応用した例について詳細に説明する。
本発明においては、基材上にイオン性基を有する表面を備えるものとして、イオン性グラフトポリマーからなる表面、即ち、イオン性グラフトポリマー鎖が存在する表面が好ましい態様として挙げられる。このようは表面の性状は、イオン性グラフトポリマー鎖が直接基材表面に結合しているものでもよく、イオン性グラフトポリマー鎖が幹高分子に結合したものを基材表面に結合させたもの、或いは、そのようなイオン性グラフトポリマー鎖が幹高分子に結合したものを、任意の基材上に塗布、塗布架橋して、イオン性グラフトポリマーからなる表面層を形成したものであってもよい。
イオン性グラフトポリマー鎖を有する表面は、一般的に表面グラフト法により作成されたものであることが好ましい。表面グラフト法により作成された表面とは、高分子表面上に光、電子線、熱などの従来公知の方法にてイオン性モノマーをグラフトし、該グラフトされたイオン性モノマーが表面のイオン性基を形成した状態を指す。また、イオン性基を形成するイオン性モノマーとしては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマー、もしくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基を有するモノマー等が挙げられる。
【0015】
基材上にグラフトポリマーからなる、イオン性基を有する表面を作成する方法としては、公知の方法を適用すればよく、具体的には、例えば、日本ゴム協会誌,第65巻,604,1992年,杉井新治著,「マクロモノマーによる表面改質と接着」の記載を参考にすることができる。その他、以下に述べる表面グラフト重合法と呼ばれる方法を適用することもできる。
表面グラフト重合法とは高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって開始する別の単量体を重合し、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法で、特に活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。
【0016】
本発明を実現するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。たとえば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135には表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203,p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報および特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
表面グラフトポリマーを有する表面を作成するための手段としてはこれらの他、高分子化合物鎖の末端にトリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基を付与し、これと基材表面官能基とのカップリング反応により形成することもできる。
【0017】
プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては上記記載の文献、およびY.Ikada et al, Macromolecules vol. 19, page 1804(1986)などの記載の方法にて作成することができる。具体的にはPETなどの高分子表面をプラズマ、もしくは電子線にて処理し、表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面とイオン性官能基を有するモノマーとを反応させることによりグラフトポリマー表面層、即ち、イオン性基を有する表面層を得ることができる。
光グラフト重合は上記記載の文献のほかに特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)記載のように、フィルム基材の表面に光重合性組成物を塗布し、その後イオン性ラジカル重合化合物とを接触させ光を照射することによっても作成することができる。
【0018】
本発明において好適に用い得るイオン性基を形成し得るイオン性モノマーとは、前記したように、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマーもしくはスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基を有するモノマーが挙げられる。
本発明においてとくに有用なイオン性モノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、イタコン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン酸塩、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスチレンスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレートもしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、アシッドホスホオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのリン酸モノマーもしくはそれらのアルカリ金属及びアミン塩、などを使用することができる。
【0019】
基材にイオン性基を導入するにあたり、表面積を増加させてより多くのイオン性基の導入を図る目的で、基材表面を粗面化することが好ましい。粗面化方法は基材の材質に適合する公知の方法を選択することができる。具体的には、例えば、基材が樹脂フィルムの場合には、グロー放電処理、スパッタリング、粒子付着法、粒子塗布法等が挙げられる。また、基材がアルミニウム板のような金属板の場合には、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法などが適用でき、機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、サンドブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0020】
次に、前記イオン性基と結合しうる金属微粒子について説明する。金属微粒子は、イオン性基との結合性の観点からは、正または負の荷電を有する金属微粒子であって、コアと呼ばれる微粒子(核)の周りが荷電で覆われているものが好ましい。
本発明の好ましい態様においては、親水性金属微粒子のコアと呼ばれる微粒子の中心部分としては、第8族及び第1B族から選ばれる金属単体又は合金の微粒子であり、更に好ましくは、Ag、Au、Cu、Pt、Pdの金属単体又はこれらを含む合金の微粒子である。なかでも、画像形成性の観点から、金、銀、パラジュウム、ロジュウム、白金などの貴金属微粒子が好適なものとして挙げられる。また、金属微粒子の分散度は多分散でよいが、変動係数が30%以下の単分散の方が好ましい。
【0021】
金属微粒子の粒径は、表面親水性、及びイオン性基と微粒子との密着強度の観点からは、0.1nmから1000nmの範囲であることが好ましく、1nmから100nmの範囲であることがさらに好ましい。
特に、本発明の如き、400〜600nmの波長領域の低出力レーザーにより、プラズモン吸収を利用して画像形成を行なう場合には、金、銀、銅、白金、パラジウムなどの金属であって、粒径が数nm〜数十nmオーダーのサブミクロン単位の金属微粒子を用いることが好ましい。
【0022】
微粒子核を被覆する荷電は正でも負でも良いが、グラフトポリマー表面に存在するイオン性基とイオン結合を形成するものが好ましく、この観点から該イオン性基の荷電とは逆の荷電を持っていることが必要である。
表面に高密度で荷電を有する微粒子は、例えば、米澤徹らの方法、すなわち、T.Yonezawa, Chemistry Letters., 1999 page1061, T.Yonezawa, Langumuir 2000, vol16, 5218および米澤徹, Polymer preprints, Japan vol.49. 2911 (2000)に記載された方法にて作成することができる。米澤らは金属−硫黄結合を利用し、金属粒子表面を荷電を有する官能基で高密度に化学修飾できることを示している。
【0023】
金属微粒子は、基材表面のイオン性基に吸着し得る最大量、結合されることが耐久性の点で好ましい。また、親水性表面の形成効率からは、分散液の分散濃度は、10〜20重量%程度が好ましい。
【0024】
表面にイオン性基を有する基材において、該イオン性基に金属微粒子を結合させ、表面親水性層を設ける方法としては、表面上に荷電を有する微粒子の分散液を表面グラフトポリマー、即ち、イオン性基を有する基材表面上に塗布する方法、及び、表面上に荷電を有する微粒子の分散液中にイオン性基を表面に有する基材を浸漬する方法などが挙げられる。塗布、浸漬のいずれの場合にも、過剰量の金属微粒子を供給し、イオン性基との間に十分なイオン結合による導入がなされるために、分散液と表面にイオン性基を有する基材との接触時間は、10秒から60分程度であることが好ましく、1分から20分程度であることがさらに好ましい。
【0025】
なお、金属微粒子からなる表面親水層の存在は、透過型電子顕微鏡、或いは、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて表面を観察し、表面の緻密な凹凸形状が形成されていることによりその存在を確認することができる。
【0026】
このようにして、任意の基材上に、金属微粒子からなる表面親水性層が形成された本発明の画像形成材料は、それぞれの金属微粒子の極大鳩首波長に適合するレーザー、本発明においては、金属微粒子に好適な、400〜600nmの波長のレーザーによる画像様の走査露光により、金属微粒子がアブレーションによりイオン性基ごと除去されて基材表面が露出することで疎水性領域が形成され、少ない熱量で効率的に画像形成される。本発明の金属微粒子は前述のように、超微粒子で粒径が非常に小さく、また、単層或いは多層の状態で微粒子が密に存在していることから、わずかなエネルギーの付与で微粒子のエネルギー吸収に起因するアブレーションが生じ、露光領域においてイオン性のグラフトポリマー鎖ごと金属微粒子が除去され、疎水性の領域が形成される。
【0027】
次に、本発明の画像形成材料を平版印刷版原版の記録層として用いる場合について、説明する。本発明の画像形成材料は、熱エネルギーの印加で加熱領域が親水性から疎水性に変換するため、露光部がインク受容性の画像部、未露光部が超親水性の非画像部となり、平版印刷版原版の記録層として適する。この極性変換による画像形成では、実質的に、湿式処理による現像工程を必要とせず、加熱或いは露光後に、印刷機に装着し、湿し水とインクを供給して印刷を行なうことができる。
また、露光後に、食塩水に浸漬するなどの処理を行なうことにより、金属微粒子が塩交換により容易に除去され、優れた親水性のイオン性基を有するグラフトポリマー鎖の存在領域が親水性領域(湿し水受容領域)となるため、金属微粒子を取り除いた後、印刷機に装着し、湿し水とインクを供給して印刷を行なうこともできる。
【0028】
本発明の画像形成材料を平版印刷版原版の記録層として用いる場合、好ましい記録層としての特性を得るため、必要に応じて種々の公知の添加物を併用してもよい。
【0029】
〔支持体〕
本発明の画像形成材料を平版印刷版原版に使用する場合、用いられる支持体としては、平版印刷版としての強度、耐久性、可撓性を有するものであれば特に制限はないが、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート若しくは蒸着された、紙若しくはプラスチックフィルム等が挙げられる。本発明の支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましい。
【0030】
支持体として、樹脂フィルムを使用する場合には、イオン性グラフトポリマー鎖は基材表面に容易に直接結合することができ、前記画像形成材料においてイオン性基を表面に導入する基材自体が支持体となる。また、アルミニウム板の如き金属板や紙製のシートを用いる場合には、前記したように、イオン性グラフトポリマー鎖が幹高分子に結合したものを、これら任意の基材(支持体)上に塗布、或いは、塗布架橋して、イオン性グラフトポリマーからなる表面層を形成すればよい。
【0031】
〔画像形成〕
本発明の画像形成材料の画像形成は、500〜600nmの波長領域のレーザーの照射により行われる。画像形成機構としては、前記レーザー光の走査露光により、親水性層である表面超親水性をしめす金属微粒子層がアブレーションにより除去され、疎水性の基材表面が露出して疎水性領域を形成する。本発明の画像形成材料の表面親水性層に用いられる微粒子径は非常に小さく、且つ、該表面層に微粒子が単層或いは多層状態で非常に密に存在するため、少ない熱量で効率的に疎水性領域、即ち、疎水性画像部が形成される。同時に、未露光部の非画像部では、本発明の表面親水性層特有の表面超親水性を示すため、厳しい印刷条件でもインクなどの付着が抑制され、汚れのない印刷物が多数得られる平版印刷版が製版される。
【0032】
本発明の画像形成方法において、疎水性領域を形成するには、生産性向上の観点から、コンピュータ・トゥ・プレートによるダイレクト製版を行うことが好ましく、走査露光に用いる露光光源は、用いられる金属微粒子により適宜選択されるが、画像形成に適するプラズモン吸収と言われる吸収を示す領域は、例えば、銀微粒子であれば400〜500nmであり、金微粒子であれば500〜600nmの範囲に大きな吸収を示すため、これらに適合するものを選択すればよい。本発明においては、画像形成に用いるレーザーの出力は、数10mWから数100mW程度で充分であり、具体的には、例えば、Ar+イオンレーザー(488nm),FD−YAG(532nm)レーザーなどが好ましく挙げられる。
【0033】
以上の方により画像露光された本発明の画像形成材料は、親水性領域と疎水性領域が高感度で明確な領域として形成されるため、これを記録層に用いた平版印刷版原版は、それ以上の処理なしに印刷機に装着し、インキと湿し水を供給することで通常の手順で印刷することができる。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
(実施例1)
〔イオン性基を表面に有する基材の作成〕
膜厚188μのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用いた。この基体の片面上に、下記の光重合性組成物を、乾燥後の厚さが10μmになるようにリバースコーターで塗布し、100℃で2分間乾燥させた。次にこの塗布されたフィルムに、400W高圧水銀灯(UVL−400P、理工科学産業(株)製)を使用して、10分間UV照射し、予備硬化させて重合能を有する下塗り層を形成した。
【0035】
(光重合性組成物)
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 4g
(モル比率80/20、分子量10万)
・エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート 4g
(東亞合成(株)M210)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
【0036】
上記下塗り層形成済みの基板を、アクリル酸:20質量%及び次亜塩素酸ナトリウム:0.01質量%を含む水溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で400W高圧水銀灯を使用し30分間光照射した。
光照射後、得られたフィルムをイオン交換水で良く洗浄し、ポリアクリル酸がグラフトされた表面グラフトフィルムである基材Aを得た。
グラフトされたポリアクリル酸の厚みをATR−IR(全反射赤外線吸収スペクトル)を用いて測定したところ、0.3μmであった。
【0037】
〔該イオン性基とイオン結合しうる表面荷電微粒子の作成〕
米澤 著(T.Yonezawa)「ケミストリー レターズ(Chemistry .Letters.)」1999年、P1061に記載の方法に従って、表面が四級アンモニウム塩で覆われた金粒子1を得た。金粒子に吸着する四級アンモニウム塩の部分構造は下記に示す構造Aである。この粒子の平均粒径を電子顕微鏡(日本電子 JEOLJEM−200CX 加速電圧100kv)で求めたところ4nmであった。
【0038】
【化1】
【0039】
〔平版印刷版原版の作製〕
上記金微粒子1の1重量%水分散液に、表面グラフトポリマーを有する基材Aを10分間浸漬した。その後、流水で表面を十分洗浄して余分な微粒子水分散液を除去し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に親水性表面層(記録層)が形成された平版印刷版原版1を得た。金粒子が吸着された平版印刷版原版1の表面は、560nmに吸収極大を示した。
【0040】
〔画像形成と汚れ性の評価〕
得られた平版印刷版用原版1を用い、コンピュータ等のデジタル信号に基づき波長488nmの75mW空冷アルゴンレーザー(ビーム径28μm)を照射し、所望の画像に露光した後、なにも処理することなくそのまま印刷機ハイデルSOR−Mに取り付け、10,000枚の印刷を行い、得られた印刷物について目視による評価を行った。
その結果、表面グラフト有し、金粒子1をイオン結合させた表面親水性層を記録層とした平版印刷版原版1により鮮明な画像が得られ、非画像部にも汚れの発生は認められなかった。
【0041】
〔感度の評価〕
アルゴンレーザーの出力を変化させ、画像として記録するのに必要な感度を求めたところ、実施例1では、30mWの出力のレーザーで、記録感度50mJ/cm2で記録可能であり、高感度であることが確認された。
【0042】
また、前記の如くして得られた平版印刷版用原版1を用い、コンピュータ等のデジタル信号に基づき波長488nmの75mW空冷アルゴンレーザー(ビーム径28μm)を照射し、所望の画像に露光した後、5質量%の食塩水に5分間浸漬した後、印刷機ハイデルSOR−Mに取り付け、10,000枚の印刷を行ったが、この場合においても、得られた印刷物は鮮明な画像が形成されており、非画像部に汚れの発生は認められなかった。
なお、前記食塩水への浸漬により金粒子が除去された後、露光部、未露光部の接触角(空中水滴)を協和界面科学(株)製、CA−Zを用いて測定したところ、未露光部は10°、露光部は80°であり、親/疎水性パターンが形成されていることが確認された。
【0043】
実施例の評価結果より、本発明の画像形成材料の製造方法あるいはパターン形成方法により得られた記録層を備えた平版印刷版原版は、高感度の記録が可能であり、表面親水性に優れ、非画像部に汚れのない良好な印刷物が多数枚得られることがわかった。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、親水性から疎水性に変換する記録を高感度で行うことができ、未露光部の親水性に優れた画像形成方法を提供できる。また、本発明によれば、高感度で記録可能であり、かつ、厳しい印刷条件においても非画像部に汚れの発生しない平版印刷版の記録層の調製に適用しうる親/疎水性パターンの形成方法を提供することができる。
Claims (3)
- イオン性基を表面に有する基材のイオン性基に、該イオン性基と結合しうる金属微粒子を静電的に結合させてなる金属微粒子層を備えた画像形成材料を、400〜600nmの波長のレーザーで画像様に露光し、露光部の金属微粒子層の除去により疎水性領域を形成することを特徴とする画像形成方法。
- 前記イオン性基を表面に有する基材が、イオン性基を有するグラフトポリマー鎖が結合してなる基材であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
- イオン性基を表面に有する基材のイオン性基に、該イオン性基と結合しうる金属微粒子を静電的に結合させてなる金属微粒子層を備えた親/疎水性パターン形成材料を、400〜600nmの波長のレーザーで画像様に露光し、露光部の金属微粒子層の除去により疎水性領域を形成した後、未露光部においてイオン性基に付着した金属微粒子を除去することで親水性領域を形成することを特徴とする親/疎水性パターン形成方法。
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KR101001248B1 (ko) | 2007-08-09 | 2010-12-17 | 주식회사 엘지화학 | 표면특성을 이용한 금속패턴 형성방법 및 이에 따라 형성된금속패턴 |
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2003
- 2003-04-30 JP JP2003125326A patent/JP2004330440A/ja not_active Withdrawn
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