JP2004330428A - 吸湿・吸水・消臭性繊維構造体及び吸湿・吸水・消臭性成形体 - Google Patents
吸湿・吸水・消臭性繊維構造体及び吸湿・吸水・消臭性成形体 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】吸湿性や吸水性や消臭性の機能材料を付与した繊維構造物を、少ない労力と製造時間によって、より確実に物理的な機能性を付与しつつ、より容易に、より安価に製造可能とすることにある。
【解決手段】植物繊維3と熱可塑性樹脂4と吸湿・吸水性機能材料1とを混合して乾式積繊法にて積繊した吸湿性層Aを一層以上と、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と消臭性機能材料2とを同様に積繊した消臭性層Bを一層以上設けた後、熱処理を施すことにより吸湿性層Aと消臭性層Bのそれぞれ同一層内の繊維同士および吸湿性層Aと消臭性層Bとを融着させた。
【選択図】図3
【解決手段】植物繊維3と熱可塑性樹脂4と吸湿・吸水性機能材料1とを混合して乾式積繊法にて積繊した吸湿性層Aを一層以上と、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と消臭性機能材料2とを同様に積繊した消臭性層Bを一層以上設けた後、熱処理を施すことにより吸湿性層Aと消臭性層Bのそれぞれ同一層内の繊維同士および吸湿性層Aと消臭性層Bとを融着させた。
【選択図】図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルプに代表される植物繊維を主たる材料とし、バインダー機能を有する熱可塑性樹脂材料及び吸湿性、吸水性、消臭性の各種機能材料を混合積繊し、さらに熱処理等の手段による処理で得られた混合繊維層による吸湿・吸水・消臭性繊維構造体、及びその構造体を2次元平面状あるいは3次元形状に成形加工した成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
植物繊維からなる構造体としては、パルプに代表される植物繊維を水中に分散して、そのスラリーを特定の形状を有する網にて抄き上げた後、乾燥して繊維構造成形物とする、所謂、湿式パルプモールド法と呼ばれている成形法が一般に用いられている。
【0003】
また、繊維構造成形物に対して吸湿性機能を付与する場合の吸湿性機能材料の混合方法としては、上記の湿式パルプモールド法において、スラリーの中に吸湿性の機能材料を混ぜ込み、パルプと一緒に抄き上げるしかなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、吸湿性機能材料としてPAA−Na繊維のような吸水性材料をスラリー中に混入すると、スラリー中の水分を取り込んでしまい、適当な成形が実施されない。仮に良好に付形できたとしても、乾燥工程に、従来の湿式方式よりもさらに多大な時間及びエネルギーを費やしてしまい、コストアップの一因となりうる。
【0005】
また、繊維構造成形物に対して消臭性機能を付与する場合の消臭性機能材料の混合方法としては、上記の湿式パルプモールド法において、スラリーの中にアルカリ性物質を添着した繊維状活性炭のような薬剤添着消臭材による消臭性機能材料を混入すると、薬剤(アルカリ性物質)が消臭材から流れ出てしまい、中和反応に由来する物理的な消臭機能が発現されない。
【0006】
本発明の課題は、吸湿性や吸水性や消臭性の機能材料を付与した繊維構造物を、少ない労力と製造時間によって、より確実に物理的な機能性を付与しつつ、より容易に、そして、より安価に製造できるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る発明は、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と吸湿・吸水性機能材料1とを混合して乾式積繊法にて積繊した吸湿性層Aを一層以上と、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と消臭性機能材料2とを同様に積繊した消臭性層Bを一層以上設けた後、熱処理を施すことにより吸湿性層Aと消臭性層Bのそれぞれ同一層内の繊維同士および吸湿性層Aと消臭性層Bとを融着させたことを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と吸湿・吸水性機能材料1とを混合して乾式積繊法にて積繊した吸湿性層Aと、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と消臭性機能材料2とを同様に積繊した消臭性層Bを、それぞれ層ごとに熱処理を施すことにより同一層内の繊維同士を融着させた後、吸湿性層Aと消臭性層Bの各一層以上の層を重ね合わせて熱プレスすることで層間を固着させたことを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と吸湿・吸水性機能材料1と消臭性機能材料2を混合して乾式積繊法にて積繊した吸湿・吸水・消臭性層Eを一層以上設けた後、熱処理を施すことにより同一層内の繊維同士および各層同士を融着させたことを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0010】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1、2、3のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記植物繊維3が、パルプ繊維であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0011】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項1、2、3、4のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記熱可塑性樹脂4が熱融着可能な樹脂繊維であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0012】
本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項1、2、3、4、5のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記吸湿・吸水性機能材料1が、繊維形状であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0013】
本発明の請求項7に係る発明は、上記請求項1、2、3、4、5、6のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記吸湿・吸水性機能材料1が、架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維(PAA−Na繊維)であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0014】
本発明の請求項8に係る発明は、上記請求項1、2、3、4、5、6、7のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記消臭性機能材料2が、繊維状活性炭であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0015】
本発明の請求項9に係る発明は、上記請求項1、2、3、4、5、6、7、8のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記消臭性機能材料2が、アルカリ物質を添着した繊維状活性炭であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0016】
本発明の請求項10に係る発明は、上記請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体を用いて、マット状シート、パウチ状容器、トレー状容器、カップ状容器、、丼状容器、ハンガー形状体に成形加工されていることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性成形体である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体を、実施の形態に基づいて以下に詳細に説明すれば、本発明は、植物繊維を主原料とし、該植物繊維と熱融着可能な熱可塑性樹脂及び機能材料を混合積繊した後、加熱処理により熱可塑性樹脂を融解して,該植物繊維と機能材料を固着させた層を一層以上設け、マット状シートとするか、さらにマット状シートを熱プレス成形することにより、板紙状シート又は三次元成形体を得るという一連の工程およびその構造物に関するものであり、その製造方法が乾式プロセスによることを特徴としている。
【0018】
機能材料としては、吸湿・吸水性機能材料としてPAA−Na繊維、消臭性機能材料として繊維状活性炭(活性炭繊維)を選択できる。そして植物繊維と熱融着可能な熱可塑性樹脂と吸湿・吸水性機能材料との混合層による吸湿性層と、植物繊維と熱融着可能な熱可塑性樹脂と消臭性機能材料との混合層による消臭性層とを重ね合わせて、熱処理を行い、熱可塑性樹脂の融解を促し、吸湿性層と消臭性層の各層内および層間を接合するか、熱処理により各層内の材料を融着させておいた各層同士を、熱プレスすることにより層間を接合するか、あるいは吸湿・吸水性機能材料と消臭性機能材料とを同一層内に配した後で、熱可塑性樹脂の融解により、繊維同士を接合することにより、単層または異なる層を一体化した多層のマット、シート、二次元および三次元構造体としたものである。
【0019】
上記吸湿・吸水性機能材料として用いるPAA−Na繊維の特徴としては、以下のことが挙げられる。
優れた吸湿・放湿性と、温度20℃、相対湿度90%の条件下において木綿の約7倍、B型シリカゲルの約2倍の吸湿能力を有する。また速やかな吸水速度、大きな表面積により素早く吸水し、圧力を加えても容易に水分を逃さない。また性能が持続し、吸湿、吸水を繰り返しても性能低下がなく優れた耐久性を示す。また耐光性が高く、光による吸水性能の劣化が見られない。また様々な有機溶媒(アセトン、ベンゼン、アルコール等)に対する耐久性がある。また耐熱性に優れ、耐熱温度は150℃以上あり、熱による吸水・吸湿性能の低下が見られない。また優れた難燃性(酸素指数LOI=42:防災協会認定コードA−21)を示して容易に燃えない。また高い消臭機能も示し、アンモニアに対する消臭性が特に強い。また環境に優しく、燃焼時のカロリーが低く(4200cal/g)、焼却が容易である。
【0020】
例えば、まず特開2001−232611号公報に記載するような乾式法、すなわち綿状に解繊したパルプ等の植物繊維に、バインダー機能を付与する目的で熱可塑性樹脂による樹脂繊維を混合し、その後、熱を与え、まず多少のテンションでは破断しないようなパルプマット等の繊維層を作り、最終的には熱プレスで立体形状を付与するといった製造方法で示される様に、植物繊維を主原料として該植物繊維と、熱融着可能な熱可塑性樹脂が融着している複数の繊維層を設ける。もちろん、この製造方法以外で繊維層を設けるものであっても、樹脂繊維で融着可能である限り、他の製造方法や構成であっても構わない。
【0021】
この複数の繊維層のうち、一層以上に吸湿・吸水性機能材料であるポリアクリル酸ナトリウム塩繊維(PAA−Na繊維)を配することによって、吸湿機能を付与することが可能となる。
【0022】
吸湿・吸水性機能性材料としては、例えば、吸水性のあるポリアクリル酸塩系樹脂、デンプン−アクリル酸塩グラフト系ポリマー、酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸共重合体、ビニルアルコール系共重合体、無機系材料としてはA型シリカゲル、B型シリカゲル、また天然材料としてパルプやコットン等の植物性材料もその一群として上げられる。なお、架橋度を上げたPAA−Na以外は繊維形状への加工が難しい。また、相対湿度に対する平衡含水率の挙動もPAA−Naが最も動的である。
【0023】
また、この複数の繊維層のうち1層以上に消臭性機能材料である活性炭繊維(繊維状活性炭)を配することによって、脱臭機能を付与することが可能となる。特にアルカリ性薬剤を添着した繊維状活性炭を選択すると、酸性の臭気に高い消臭効果を示すようになる。例えば酸性の臭気としては、タンス内に漂う体臭であるカプリル酸・カプリン酸・カプロン酸・ぺラルゴン酸がある。また下駄箱内に発生するイソ吉草酸などの低級脂肪酸類があり、土・かび・細菌を発生源として足臭となるそのような環境下で、アルカリ性化合物添着活性炭を混合した上述の構造物は、優れた消臭効果を示す。
【0024】
上記消臭性機能材料として用いる活性炭繊維は、活性炭繊維に酸性ガス吸着用として炭酸カリを添着した添着活性炭繊維であり、上述した活性炭繊維の硫化水素(臭気成分)吸着特性に関して、硫化水素濃度100ppmに対する平衡吸着量は、炭酸カリが未添着の活性炭繊維で35mg/gであり、炭酸カリを添着した活性炭繊維では200mg/gであり、添着加工により6倍近く吸着性能が向上させたものである。また基本物性に関して、未添着活性炭繊維は、比表面積1000m2/g、細孔径1.8nm、細孔容積0.5ml/g、繊維径17μmである。添着加工を施すことにより、比表面積・細孔径・細孔容積は減少し、物理吸着性能は低下するが、添着薬剤由来の反応性から化学的消臭性能が付与できる。
【0025】
使用する機能性材料の形状としては、混合・融着に障害にならない、及び表面への過度の析出を防止するサイズであることが望ましい。例えば、PAA−Na繊維であれば、繊度(繊維の太さ)2.0〜12.0dtex、繊維長2.0〜7.0mm、比重1.60g/cm3程度のものが良い。活性炭繊維であれば、見掛け密度0.25g/ml以下、繊維直径11〜18μmであることが好ましい。
【0026】
また機能性材料は、混合・積繊、後の加熱処理、および成形工程に耐え得る程度の強度や耐熱性が必要である。強度の小さ過ぎる材料では加工中に粉砕され、粉末状までサイズが変化してしまうと、上述したようにパルプやバインダー樹脂と絡まり難くなり、機能材料が過度に表面へ析出してしまう。そのため、PAA−Na繊維であれば、張力2.00g/9d以上(9dは9g/9000m)、活性炭繊維であれば、強度15kgf/mm2以上であることが好ましい。
【0027】
さらに後の加熱処理では、120〜140℃の条件化に晒されるため、加工温度以上の耐熱性能が必要である。SAP等の吸水性樹脂では70℃前後で性能劣化を起こし、一方PAA−Na繊維では150℃の高温にも耐性を有するため、本発明のプロセスには好ましい。
【0028】
また、植物繊維と熱可塑性樹脂による樹脂繊維とを混合して形成されるパルプマット等の上記繊維層に対する機能性材料の混合方法としては、繊維層の形状や性質により適宜選択可能であり、通常は機能性材料の散布で十分であるが、機能性材料を接着剤と混合して塗布などの手段をとっても構わないものである。
【0029】
上記植物繊維としては、広葉樹、針葉樹、イネ、葦等の草本類の繊維を用いることが可能で、その利用形態としては、パルプ繊維になったもの、古紙由来の脱墨パルプ(DIP)の他、古紙なども可能である。さらに、全部が植物繊維である必要はなく、必要に応じて合成繊維などの材料も含む繊維であっても、通常の湿式抄紙に用いられているサイズ剤等の添加物を含むものであっても構わない。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、表面が少なくとも熱融着性があることが必要であり、例えば、その内部が熱可塑性樹脂ではない、植物繊維や化学繊維等で構成されている樹脂繊維等であっても、界面活性剤等の添加物を含むものであっても構わない。
【0031】
本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体の用途としては、PAA−Na繊維などの吸湿・吸水性機能材料による吸湿・吸水効果、および活性炭繊維などの消臭性機能材料による消臭効果が求められるものであれば、靴の中敷きや、収納家具の除湿・消臭材、あるいは強い臭気を発し、且つ温かいため包材内部が結露し易い食品の包装材料としての使用が考えられる。また2次元、3次元形状の成形加工が可能であるため、用途により様々な成形体を選択でき、2次元体ではマット状シートやプレスシート、3次元体ではトレー形状、カップ状、どんぶり形状などの容器、あるいはハンガー形状体等、適宜選択可能である。
【0032】
【実施例】
以下に、本発明の具体的実施例を図1〜図4に基づいて更に詳細に説明する。なお本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<実施例1>
吸湿・吸水性機能材料として、架橋度が比較的高いPAA−Naを用いて繊維化したPAA−Na繊維を、また消臭性機能材料として、炭酸カリ薬剤を添着した繊維状活性炭を用いた。
【0034】
まず、図1に示すように、植物繊維3として針葉樹由来ブリーチクラフトパルプ(以下NBKPと称す)を解繊してフラフパルプとしたものと、吸湿・吸水性機能材料1であるPAA−Na繊維と、熱可塑性樹脂4として芯鞘構造をもつ樹脂繊維(芯:鞘=ポリプロピレン(以下PPと称す):ポリエチレン(以下PEと称す)=9:1もしくは8:2が望ましい))とを、混合比6:2:2(重量比)にて混ぜ合わせ、その混合物をエアレイド法によってシート化して、加熱処理前の材料同士が融着していない吸湿・吸水性層としてのパルプシートA(目付け:300g/m2)を作成した。
【0035】
次に、図2に示すように、植物繊維3として針葉樹由来ブリーチクラフトパルプ(以下NBKPと称す)を解繊してフラフパルプとしたものと、消臭性機能材料2である炭酸カリ薬剤を添着した繊維状活性炭と、芯鞘構造をもつ樹脂繊維4(芯:鞘=ポリプロピレン(以下PPと称す):ポリエチレン(以下PEと称す)=9:1もしくは8:2が望ましい))とを、混合比6:2:2(重量比)にて混ぜ合わせ、その混合物をエアレイド法によってシート化し、加熱処理前の材料同士が融着していない消臭性層としてのパルプシートB(目付け:300g/m2)を作成した。
【0036】
次に、図3に示すように、上記パルプシートAとパルプシートBを重ね合わせて、PEの融点以上PPの融点以下(約120〜150℃)のオーブンに、3〜20秒間、晒すことによって熱処理した。
【0037】
熱処理後のパルプシートAとB同士は互いに融着して、強度を有する2層構造の本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体であるパルプマットC(引っ張り強度25N以上、引っ張り伸度14%以上)が得られた。
【0038】
得られた上記パルプマットCを、靴の中敷きの形状の抜き型にて打ち抜くことにより、図4に示すような本発明の吸湿・吸水・消臭性構造体による吸湿・吸水・消臭性のある靴の中敷き成形体Dを得た。
【0039】
<実施例2>
吸湿・吸水性機能材料として、架橋度が比較的高いPAA−Naを用いて繊維化したPAA−Na繊維を、また消臭性機能材料として、炭酸カリ薬剤を添着した繊維状活性炭を用いた。
【0040】
まず、植物繊維として針葉樹由来ブリーチクラフトパルプ(以下NBKPと称す)を解繊してフラフパルプとしたものと、吸湿・吸水性機能材料であるPAA−Na繊維と消臭性機能材料である炭酸カリ薬剤を添着した繊維状活性炭とを混合比1:1(重量比)にて混ぜ合わせた機能材料と、熱可塑性樹脂4として芯鞘構造をもつ樹脂繊維(芯:鞘=ポリプロピレン(以下PPと称す):ポリエチレン(以下PEと称す)=9:1もしくは8:2が望ましい))とを、混合比6:2:2(重量比)にて混ぜ合わせ、その混合物をエアレイド法によってシート化して、加熱処理前の材料同士が融着していない吸湿・吸水・消臭性層としてのパルプシートE(目付け:300g/m2)を、2枚作成した。
【0041】
次に、上記2枚のパルプシートEを重ね合わせて、PEの融点以上PPの融点以下(約120〜150℃)のオーブンに、3〜20秒間、晒すことによって熱処理した。
【0042】
熱処理後のパルプシートE、E同士は互いに融着して、強度を有する2層構造の本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体であるパルプマットF(引っ張り強度25N以上、引っ張り伸度14%以上)が得られた。
【0043】
得られた上記パルプマットFを、靴の中敷きの形状の抜き型にて打ち抜くことにより、本発明の吸湿・吸水・消臭性構造体による吸湿・吸水・消臭性のある靴の中敷き成形体Dを得た。
【0044】
<比較例1>
植物繊維として針葉樹由来ブリーチクラフトパルプ(以下NBKPと称す)を解繊してフラフパルプとしたものと、芯鞘構造をもつ樹脂繊維(芯:鞘=ポリプロピレン(以下PPと称す):ポリエチレン(以下PEと称す)=9:1もしくは8:2が望ましい))とを、混合比8:2(重量比)にて混ぜ合わせ、その混合物をエアレイド法によってシート化して、加熱処理前の材料同士が融着していない吸湿・吸水性のないパルプシート(目付け:300g/m2)を2枚作成した。
【0045】
次に、上記2枚のパルプシートを重ね合わせて、実施例1と同様の条件下にてオーブンに晒すことによって熱処理した。
【0046】
熱処理後の2枚のパルプシート同士は互いに融着して、比較例1としての2層構造の繊維構造体であるパルプマットが得られた。
【0047】
得られた比較例1のパルプマットを、靴の中敷きの形状の抜き型にて打ち抜くことにより、靴の中敷き成形体を得た。
【0048】
<実験例1>
上記実施例1と実施例2と比較例1とで得られた各々靴の中敷きを、それぞれ10人の被験者に一週間使用させて、靴内のムレおよび臭気について官能評価を行った。その結果、機能性材料を含む実施例1、2の靴の中敷きでは、靴内のムレ、臭気が軽減できることが判った。
【0049】
<実験例2>
上記実施例1で得られたパルプマットCと、実施例2で得られたパルプマットEと、比較例1で得られた吸湿・吸水性機能材料及び消臭性機能材料が無添加のパルプマットを、それぞれ10gサンプリングし、20℃、相対湿度90%の環境下にて一昼夜保存し、その重量変化を調査した。実施例1のパルプマットCと実施例2のパルプマットEでは、25%の重量増加が確認されたのに対し、比較例1のパルプマットでは、10%程度の重量増加に留まった。これは実施例1、2のパルプマットの方が吸湿能力が高いことを示しており、靴内のムレを防止する性能に優れていることが判った。
【0050】
【発明の効果】
本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体及びその成形体は、上記の方式によって、PAA−Na繊維に代表されるような吸湿・吸水性機能材料、および添着活性炭繊維に代表されるような消臭性機能材料を、各層内に有した構造体であり、一つには吸湿・吸水性機能材料の持つ吸湿性能効果(90%湿度下で、150%の吸湿可能)と、自重の80倍、生理的食塩水下では自重の45倍の特異的な吸水性能効果が発揮される。
【0051】
また、消臭性機能材料としての薬剤(炭酸カリ等のアンモニア性物質)を添着した活性炭繊維の消臭効果により、クローズな雰囲気内の湿度を一定に保持し、かつ悪臭を防止することが可能となる。
【0052】
さらに、吸湿・吸水性機能材料のPAA−Na繊維は、アンモニアに対し反応性を有するため、構造体にPAA−Na由来の消臭性能を付与でき、従って、例えば、本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体をハンガー形状に成形加工した成形体を、タンス内に吊下げることにより、収納スペースを占有することなく、除湿性能と消臭性能を発現でき、また、熱プレス加工や成形加工をせずに、マット状のまま使用すれば、構造体のもつ通気性およびクッション性を利用でき、そのため靴の中敷きとして使用すれば、靴中および足の悪臭防止効果が得られ、高湿度による靴中のムレ防止および雑菌の繁殖抑制、さらには足の緩衝材としての効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体を構成する吸湿・吸水性機能材料を含む吸湿・吸水性層としてのパルプシートを示す断面図。
【図2】本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体を構成する消臭性機能材料を含む消臭性層としてのパルプシートを示す断面図。
【図3】本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体の一例を説明する断面図。
【図4】本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体を用いて成形した成形体の一例を説明する斜視図。
【符号の説明】
1…吸湿・吸水性機能材料 2…消臭性機能材料 3…植物繊維
4…熱可塑性樹脂(樹脂繊維)
A…パルプシート(吸湿・吸水性層) B…パルプシート(消臭性層)
C…パルプシート D…成形体
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルプに代表される植物繊維を主たる材料とし、バインダー機能を有する熱可塑性樹脂材料及び吸湿性、吸水性、消臭性の各種機能材料を混合積繊し、さらに熱処理等の手段による処理で得られた混合繊維層による吸湿・吸水・消臭性繊維構造体、及びその構造体を2次元平面状あるいは3次元形状に成形加工した成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
植物繊維からなる構造体としては、パルプに代表される植物繊維を水中に分散して、そのスラリーを特定の形状を有する網にて抄き上げた後、乾燥して繊維構造成形物とする、所謂、湿式パルプモールド法と呼ばれている成形法が一般に用いられている。
【0003】
また、繊維構造成形物に対して吸湿性機能を付与する場合の吸湿性機能材料の混合方法としては、上記の湿式パルプモールド法において、スラリーの中に吸湿性の機能材料を混ぜ込み、パルプと一緒に抄き上げるしかなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、吸湿性機能材料としてPAA−Na繊維のような吸水性材料をスラリー中に混入すると、スラリー中の水分を取り込んでしまい、適当な成形が実施されない。仮に良好に付形できたとしても、乾燥工程に、従来の湿式方式よりもさらに多大な時間及びエネルギーを費やしてしまい、コストアップの一因となりうる。
【0005】
また、繊維構造成形物に対して消臭性機能を付与する場合の消臭性機能材料の混合方法としては、上記の湿式パルプモールド法において、スラリーの中にアルカリ性物質を添着した繊維状活性炭のような薬剤添着消臭材による消臭性機能材料を混入すると、薬剤(アルカリ性物質)が消臭材から流れ出てしまい、中和反応に由来する物理的な消臭機能が発現されない。
【0006】
本発明の課題は、吸湿性や吸水性や消臭性の機能材料を付与した繊維構造物を、少ない労力と製造時間によって、より確実に物理的な機能性を付与しつつ、より容易に、そして、より安価に製造できるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る発明は、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と吸湿・吸水性機能材料1とを混合して乾式積繊法にて積繊した吸湿性層Aを一層以上と、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と消臭性機能材料2とを同様に積繊した消臭性層Bを一層以上設けた後、熱処理を施すことにより吸湿性層Aと消臭性層Bのそれぞれ同一層内の繊維同士および吸湿性層Aと消臭性層Bとを融着させたことを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と吸湿・吸水性機能材料1とを混合して乾式積繊法にて積繊した吸湿性層Aと、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と消臭性機能材料2とを同様に積繊した消臭性層Bを、それぞれ層ごとに熱処理を施すことにより同一層内の繊維同士を融着させた後、吸湿性層Aと消臭性層Bの各一層以上の層を重ね合わせて熱プレスすることで層間を固着させたことを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、植物繊維3と熱可塑性樹脂4と吸湿・吸水性機能材料1と消臭性機能材料2を混合して乾式積繊法にて積繊した吸湿・吸水・消臭性層Eを一層以上設けた後、熱処理を施すことにより同一層内の繊維同士および各層同士を融着させたことを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0010】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1、2、3のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記植物繊維3が、パルプ繊維であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0011】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項1、2、3、4のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記熱可塑性樹脂4が熱融着可能な樹脂繊維であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0012】
本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項1、2、3、4、5のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記吸湿・吸水性機能材料1が、繊維形状であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0013】
本発明の請求項7に係る発明は、上記請求項1、2、3、4、5、6のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記吸湿・吸水性機能材料1が、架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維(PAA−Na繊維)であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0014】
本発明の請求項8に係る発明は、上記請求項1、2、3、4、5、6、7のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記消臭性機能材料2が、繊維状活性炭であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0015】
本発明の請求項9に係る発明は、上記請求項1、2、3、4、5、6、7、8のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体において、前記消臭性機能材料2が、アルカリ物質を添着した繊維状活性炭であることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体である。
【0016】
本発明の請求項10に係る発明は、上記請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9のいずれか1項に係る吸湿・吸水・消臭性繊維構造体を用いて、マット状シート、パウチ状容器、トレー状容器、カップ状容器、、丼状容器、ハンガー形状体に成形加工されていることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性成形体である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体を、実施の形態に基づいて以下に詳細に説明すれば、本発明は、植物繊維を主原料とし、該植物繊維と熱融着可能な熱可塑性樹脂及び機能材料を混合積繊した後、加熱処理により熱可塑性樹脂を融解して,該植物繊維と機能材料を固着させた層を一層以上設け、マット状シートとするか、さらにマット状シートを熱プレス成形することにより、板紙状シート又は三次元成形体を得るという一連の工程およびその構造物に関するものであり、その製造方法が乾式プロセスによることを特徴としている。
【0018】
機能材料としては、吸湿・吸水性機能材料としてPAA−Na繊維、消臭性機能材料として繊維状活性炭(活性炭繊維)を選択できる。そして植物繊維と熱融着可能な熱可塑性樹脂と吸湿・吸水性機能材料との混合層による吸湿性層と、植物繊維と熱融着可能な熱可塑性樹脂と消臭性機能材料との混合層による消臭性層とを重ね合わせて、熱処理を行い、熱可塑性樹脂の融解を促し、吸湿性層と消臭性層の各層内および層間を接合するか、熱処理により各層内の材料を融着させておいた各層同士を、熱プレスすることにより層間を接合するか、あるいは吸湿・吸水性機能材料と消臭性機能材料とを同一層内に配した後で、熱可塑性樹脂の融解により、繊維同士を接合することにより、単層または異なる層を一体化した多層のマット、シート、二次元および三次元構造体としたものである。
【0019】
上記吸湿・吸水性機能材料として用いるPAA−Na繊維の特徴としては、以下のことが挙げられる。
優れた吸湿・放湿性と、温度20℃、相対湿度90%の条件下において木綿の約7倍、B型シリカゲルの約2倍の吸湿能力を有する。また速やかな吸水速度、大きな表面積により素早く吸水し、圧力を加えても容易に水分を逃さない。また性能が持続し、吸湿、吸水を繰り返しても性能低下がなく優れた耐久性を示す。また耐光性が高く、光による吸水性能の劣化が見られない。また様々な有機溶媒(アセトン、ベンゼン、アルコール等)に対する耐久性がある。また耐熱性に優れ、耐熱温度は150℃以上あり、熱による吸水・吸湿性能の低下が見られない。また優れた難燃性(酸素指数LOI=42:防災協会認定コードA−21)を示して容易に燃えない。また高い消臭機能も示し、アンモニアに対する消臭性が特に強い。また環境に優しく、燃焼時のカロリーが低く(4200cal/g)、焼却が容易である。
【0020】
例えば、まず特開2001−232611号公報に記載するような乾式法、すなわち綿状に解繊したパルプ等の植物繊維に、バインダー機能を付与する目的で熱可塑性樹脂による樹脂繊維を混合し、その後、熱を与え、まず多少のテンションでは破断しないようなパルプマット等の繊維層を作り、最終的には熱プレスで立体形状を付与するといった製造方法で示される様に、植物繊維を主原料として該植物繊維と、熱融着可能な熱可塑性樹脂が融着している複数の繊維層を設ける。もちろん、この製造方法以外で繊維層を設けるものであっても、樹脂繊維で融着可能である限り、他の製造方法や構成であっても構わない。
【0021】
この複数の繊維層のうち、一層以上に吸湿・吸水性機能材料であるポリアクリル酸ナトリウム塩繊維(PAA−Na繊維)を配することによって、吸湿機能を付与することが可能となる。
【0022】
吸湿・吸水性機能性材料としては、例えば、吸水性のあるポリアクリル酸塩系樹脂、デンプン−アクリル酸塩グラフト系ポリマー、酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸共重合体、ビニルアルコール系共重合体、無機系材料としてはA型シリカゲル、B型シリカゲル、また天然材料としてパルプやコットン等の植物性材料もその一群として上げられる。なお、架橋度を上げたPAA−Na以外は繊維形状への加工が難しい。また、相対湿度に対する平衡含水率の挙動もPAA−Naが最も動的である。
【0023】
また、この複数の繊維層のうち1層以上に消臭性機能材料である活性炭繊維(繊維状活性炭)を配することによって、脱臭機能を付与することが可能となる。特にアルカリ性薬剤を添着した繊維状活性炭を選択すると、酸性の臭気に高い消臭効果を示すようになる。例えば酸性の臭気としては、タンス内に漂う体臭であるカプリル酸・カプリン酸・カプロン酸・ぺラルゴン酸がある。また下駄箱内に発生するイソ吉草酸などの低級脂肪酸類があり、土・かび・細菌を発生源として足臭となるそのような環境下で、アルカリ性化合物添着活性炭を混合した上述の構造物は、優れた消臭効果を示す。
【0024】
上記消臭性機能材料として用いる活性炭繊維は、活性炭繊維に酸性ガス吸着用として炭酸カリを添着した添着活性炭繊維であり、上述した活性炭繊維の硫化水素(臭気成分)吸着特性に関して、硫化水素濃度100ppmに対する平衡吸着量は、炭酸カリが未添着の活性炭繊維で35mg/gであり、炭酸カリを添着した活性炭繊維では200mg/gであり、添着加工により6倍近く吸着性能が向上させたものである。また基本物性に関して、未添着活性炭繊維は、比表面積1000m2/g、細孔径1.8nm、細孔容積0.5ml/g、繊維径17μmである。添着加工を施すことにより、比表面積・細孔径・細孔容積は減少し、物理吸着性能は低下するが、添着薬剤由来の反応性から化学的消臭性能が付与できる。
【0025】
使用する機能性材料の形状としては、混合・融着に障害にならない、及び表面への過度の析出を防止するサイズであることが望ましい。例えば、PAA−Na繊維であれば、繊度(繊維の太さ)2.0〜12.0dtex、繊維長2.0〜7.0mm、比重1.60g/cm3程度のものが良い。活性炭繊維であれば、見掛け密度0.25g/ml以下、繊維直径11〜18μmであることが好ましい。
【0026】
また機能性材料は、混合・積繊、後の加熱処理、および成形工程に耐え得る程度の強度や耐熱性が必要である。強度の小さ過ぎる材料では加工中に粉砕され、粉末状までサイズが変化してしまうと、上述したようにパルプやバインダー樹脂と絡まり難くなり、機能材料が過度に表面へ析出してしまう。そのため、PAA−Na繊維であれば、張力2.00g/9d以上(9dは9g/9000m)、活性炭繊維であれば、強度15kgf/mm2以上であることが好ましい。
【0027】
さらに後の加熱処理では、120〜140℃の条件化に晒されるため、加工温度以上の耐熱性能が必要である。SAP等の吸水性樹脂では70℃前後で性能劣化を起こし、一方PAA−Na繊維では150℃の高温にも耐性を有するため、本発明のプロセスには好ましい。
【0028】
また、植物繊維と熱可塑性樹脂による樹脂繊維とを混合して形成されるパルプマット等の上記繊維層に対する機能性材料の混合方法としては、繊維層の形状や性質により適宜選択可能であり、通常は機能性材料の散布で十分であるが、機能性材料を接着剤と混合して塗布などの手段をとっても構わないものである。
【0029】
上記植物繊維としては、広葉樹、針葉樹、イネ、葦等の草本類の繊維を用いることが可能で、その利用形態としては、パルプ繊維になったもの、古紙由来の脱墨パルプ(DIP)の他、古紙なども可能である。さらに、全部が植物繊維である必要はなく、必要に応じて合成繊維などの材料も含む繊維であっても、通常の湿式抄紙に用いられているサイズ剤等の添加物を含むものであっても構わない。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、表面が少なくとも熱融着性があることが必要であり、例えば、その内部が熱可塑性樹脂ではない、植物繊維や化学繊維等で構成されている樹脂繊維等であっても、界面活性剤等の添加物を含むものであっても構わない。
【0031】
本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体の用途としては、PAA−Na繊維などの吸湿・吸水性機能材料による吸湿・吸水効果、および活性炭繊維などの消臭性機能材料による消臭効果が求められるものであれば、靴の中敷きや、収納家具の除湿・消臭材、あるいは強い臭気を発し、且つ温かいため包材内部が結露し易い食品の包装材料としての使用が考えられる。また2次元、3次元形状の成形加工が可能であるため、用途により様々な成形体を選択でき、2次元体ではマット状シートやプレスシート、3次元体ではトレー形状、カップ状、どんぶり形状などの容器、あるいはハンガー形状体等、適宜選択可能である。
【0032】
【実施例】
以下に、本発明の具体的実施例を図1〜図4に基づいて更に詳細に説明する。なお本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<実施例1>
吸湿・吸水性機能材料として、架橋度が比較的高いPAA−Naを用いて繊維化したPAA−Na繊維を、また消臭性機能材料として、炭酸カリ薬剤を添着した繊維状活性炭を用いた。
【0034】
まず、図1に示すように、植物繊維3として針葉樹由来ブリーチクラフトパルプ(以下NBKPと称す)を解繊してフラフパルプとしたものと、吸湿・吸水性機能材料1であるPAA−Na繊維と、熱可塑性樹脂4として芯鞘構造をもつ樹脂繊維(芯:鞘=ポリプロピレン(以下PPと称す):ポリエチレン(以下PEと称す)=9:1もしくは8:2が望ましい))とを、混合比6:2:2(重量比)にて混ぜ合わせ、その混合物をエアレイド法によってシート化して、加熱処理前の材料同士が融着していない吸湿・吸水性層としてのパルプシートA(目付け:300g/m2)を作成した。
【0035】
次に、図2に示すように、植物繊維3として針葉樹由来ブリーチクラフトパルプ(以下NBKPと称す)を解繊してフラフパルプとしたものと、消臭性機能材料2である炭酸カリ薬剤を添着した繊維状活性炭と、芯鞘構造をもつ樹脂繊維4(芯:鞘=ポリプロピレン(以下PPと称す):ポリエチレン(以下PEと称す)=9:1もしくは8:2が望ましい))とを、混合比6:2:2(重量比)にて混ぜ合わせ、その混合物をエアレイド法によってシート化し、加熱処理前の材料同士が融着していない消臭性層としてのパルプシートB(目付け:300g/m2)を作成した。
【0036】
次に、図3に示すように、上記パルプシートAとパルプシートBを重ね合わせて、PEの融点以上PPの融点以下(約120〜150℃)のオーブンに、3〜20秒間、晒すことによって熱処理した。
【0037】
熱処理後のパルプシートAとB同士は互いに融着して、強度を有する2層構造の本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体であるパルプマットC(引っ張り強度25N以上、引っ張り伸度14%以上)が得られた。
【0038】
得られた上記パルプマットCを、靴の中敷きの形状の抜き型にて打ち抜くことにより、図4に示すような本発明の吸湿・吸水・消臭性構造体による吸湿・吸水・消臭性のある靴の中敷き成形体Dを得た。
【0039】
<実施例2>
吸湿・吸水性機能材料として、架橋度が比較的高いPAA−Naを用いて繊維化したPAA−Na繊維を、また消臭性機能材料として、炭酸カリ薬剤を添着した繊維状活性炭を用いた。
【0040】
まず、植物繊維として針葉樹由来ブリーチクラフトパルプ(以下NBKPと称す)を解繊してフラフパルプとしたものと、吸湿・吸水性機能材料であるPAA−Na繊維と消臭性機能材料である炭酸カリ薬剤を添着した繊維状活性炭とを混合比1:1(重量比)にて混ぜ合わせた機能材料と、熱可塑性樹脂4として芯鞘構造をもつ樹脂繊維(芯:鞘=ポリプロピレン(以下PPと称す):ポリエチレン(以下PEと称す)=9:1もしくは8:2が望ましい))とを、混合比6:2:2(重量比)にて混ぜ合わせ、その混合物をエアレイド法によってシート化して、加熱処理前の材料同士が融着していない吸湿・吸水・消臭性層としてのパルプシートE(目付け:300g/m2)を、2枚作成した。
【0041】
次に、上記2枚のパルプシートEを重ね合わせて、PEの融点以上PPの融点以下(約120〜150℃)のオーブンに、3〜20秒間、晒すことによって熱処理した。
【0042】
熱処理後のパルプシートE、E同士は互いに融着して、強度を有する2層構造の本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体であるパルプマットF(引っ張り強度25N以上、引っ張り伸度14%以上)が得られた。
【0043】
得られた上記パルプマットFを、靴の中敷きの形状の抜き型にて打ち抜くことにより、本発明の吸湿・吸水・消臭性構造体による吸湿・吸水・消臭性のある靴の中敷き成形体Dを得た。
【0044】
<比較例1>
植物繊維として針葉樹由来ブリーチクラフトパルプ(以下NBKPと称す)を解繊してフラフパルプとしたものと、芯鞘構造をもつ樹脂繊維(芯:鞘=ポリプロピレン(以下PPと称す):ポリエチレン(以下PEと称す)=9:1もしくは8:2が望ましい))とを、混合比8:2(重量比)にて混ぜ合わせ、その混合物をエアレイド法によってシート化して、加熱処理前の材料同士が融着していない吸湿・吸水性のないパルプシート(目付け:300g/m2)を2枚作成した。
【0045】
次に、上記2枚のパルプシートを重ね合わせて、実施例1と同様の条件下にてオーブンに晒すことによって熱処理した。
【0046】
熱処理後の2枚のパルプシート同士は互いに融着して、比較例1としての2層構造の繊維構造体であるパルプマットが得られた。
【0047】
得られた比較例1のパルプマットを、靴の中敷きの形状の抜き型にて打ち抜くことにより、靴の中敷き成形体を得た。
【0048】
<実験例1>
上記実施例1と実施例2と比較例1とで得られた各々靴の中敷きを、それぞれ10人の被験者に一週間使用させて、靴内のムレおよび臭気について官能評価を行った。その結果、機能性材料を含む実施例1、2の靴の中敷きでは、靴内のムレ、臭気が軽減できることが判った。
【0049】
<実験例2>
上記実施例1で得られたパルプマットCと、実施例2で得られたパルプマットEと、比較例1で得られた吸湿・吸水性機能材料及び消臭性機能材料が無添加のパルプマットを、それぞれ10gサンプリングし、20℃、相対湿度90%の環境下にて一昼夜保存し、その重量変化を調査した。実施例1のパルプマットCと実施例2のパルプマットEでは、25%の重量増加が確認されたのに対し、比較例1のパルプマットでは、10%程度の重量増加に留まった。これは実施例1、2のパルプマットの方が吸湿能力が高いことを示しており、靴内のムレを防止する性能に優れていることが判った。
【0050】
【発明の効果】
本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体及びその成形体は、上記の方式によって、PAA−Na繊維に代表されるような吸湿・吸水性機能材料、および添着活性炭繊維に代表されるような消臭性機能材料を、各層内に有した構造体であり、一つには吸湿・吸水性機能材料の持つ吸湿性能効果(90%湿度下で、150%の吸湿可能)と、自重の80倍、生理的食塩水下では自重の45倍の特異的な吸水性能効果が発揮される。
【0051】
また、消臭性機能材料としての薬剤(炭酸カリ等のアンモニア性物質)を添着した活性炭繊維の消臭効果により、クローズな雰囲気内の湿度を一定に保持し、かつ悪臭を防止することが可能となる。
【0052】
さらに、吸湿・吸水性機能材料のPAA−Na繊維は、アンモニアに対し反応性を有するため、構造体にPAA−Na由来の消臭性能を付与でき、従って、例えば、本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体をハンガー形状に成形加工した成形体を、タンス内に吊下げることにより、収納スペースを占有することなく、除湿性能と消臭性能を発現でき、また、熱プレス加工や成形加工をせずに、マット状のまま使用すれば、構造体のもつ通気性およびクッション性を利用でき、そのため靴の中敷きとして使用すれば、靴中および足の悪臭防止効果が得られ、高湿度による靴中のムレ防止および雑菌の繁殖抑制、さらには足の緩衝材としての効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体を構成する吸湿・吸水性機能材料を含む吸湿・吸水性層としてのパルプシートを示す断面図。
【図2】本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体を構成する消臭性機能材料を含む消臭性層としてのパルプシートを示す断面図。
【図3】本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体の一例を説明する断面図。
【図4】本発明の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体を用いて成形した成形体の一例を説明する斜視図。
【符号の説明】
1…吸湿・吸水性機能材料 2…消臭性機能材料 3…植物繊維
4…熱可塑性樹脂(樹脂繊維)
A…パルプシート(吸湿・吸水性層) B…パルプシート(消臭性層)
C…パルプシート D…成形体
Claims (10)
- 植物繊維と熱可塑性樹脂と吸湿・吸水性機能材料とを混合して乾式積繊法にて積繊した吸湿性層を一層以上と、植物繊維と熱可塑性樹脂と消臭性機能材料とを同様に積繊した消臭性層を一層以上設けた後、熱処理を施すことにより吸湿性層と消臭性層のそれぞれ同一層内の繊維同士および吸湿性層と消臭性層とを融着させたことを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体。
- 植物繊維と熱可塑性樹脂と吸湿・吸水性機能材料とを混合して乾式積繊法にて積繊した吸湿性層と、植物繊維と熱可塑性樹脂と消臭性機能材料とを同様に積繊した消臭性層を、それぞれ層ごとに熱処理を施すことにより同一層内の繊維同士を融着させた後、吸湿性層と消臭性層の各一層以上の層を重ね合わせて熱プレスすることで層間を固着させたことを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体。
- 植物繊維と熱可塑性樹脂と吸湿・吸水性機能材料と消臭性機能材料を混合して乾式積繊法にて積繊した吸湿・吸水・消臭性層を一層以上設けた後、熱処理を施すことにより同一層内の繊維同士および各層同士を融着させたことを特徴とする吸湿・吸水・消臭性繊維構造体。
- 前記植物繊維が、パルプ繊維であることを特徴とする請求項1、2、3のいずれか1項記載の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体。
- 前記熱可塑性樹脂が熱融着可能な樹脂繊維であることを特徴とする請求項1、2、3、4のいずれか1項記載の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体。
- 前記吸湿・吸水性機能材料が、繊維形状であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5のいずれか1項記載の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体。
- 前記吸湿・吸水性機能材料が、架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維(PAA−Na繊維)であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6のいずれか1項記載の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体。
- 前記消臭性機能材料が、繊維状活性炭であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7のいずれか1項記載の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体。
- 前記消臭性機能材料が、アルカリ物質を添着した繊維状活性炭であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8のいずれか1項記載の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9のいずれか1項記載の吸湿・吸水・消臭性繊維構造体を用いて、マット状シート、パウチ状容器、トレー状容器、カップ状容器、、丼状容器、ハンガー形状体に成形加工されていることを特徴とする吸湿・吸水・消臭性成形体。
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- 2003-04-30 JP JP2003125026A patent/JP2004330428A/ja active Pending
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