JP2004329176A - Rnaの単離方法 - Google Patents

Rnaの単離方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004329176A
JP2004329176A JP2003133633A JP2003133633A JP2004329176A JP 2004329176 A JP2004329176 A JP 2004329176A JP 2003133633 A JP2003133633 A JP 2003133633A JP 2003133633 A JP2003133633 A JP 2003133633A JP 2004329176 A JP2004329176 A JP 2004329176A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rna
concentration
aqueous solution
sample
buffer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003133633A
Other languages
English (en)
Inventor
Risa Kadona
理佐 門奈
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
PLANT GENOME CENTER CO Ltd
PLANT GENOME CT CO Ltd
Original Assignee
PLANT GENOME CENTER CO Ltd
PLANT GENOME CT CO Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by PLANT GENOME CENTER CO Ltd, PLANT GENOME CT CO Ltd filed Critical PLANT GENOME CENTER CO Ltd
Priority to JP2003133633A priority Critical patent/JP2004329176A/ja
Publication of JP2004329176A publication Critical patent/JP2004329176A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)

Abstract

【課題】迅速かつ簡便にRNAを単離する方法を提供する。
【解決手段】試料を塩と緩衝剤とを含む水溶液に懸濁し酸性条件下でフェノール・クロロホルム等の有機溶媒で抽出する工程、およびアルコール沈殿により水溶液中に含まれるRNAを回収する工程、を含むRNAの単離方法を提供する。該方法は少ないステップで高純度のRNAを簡便かつ迅速に得ることが可能であるので、多検体の同時処理および機械化に適している。また、試料をSDSまたはグアニジンチオシアネート等で処理しないため、澱粉の多い生物試料からでもRNAを高い精製度で単離することが可能である。よって、種子などの澱粉を多く含む植物組織からのRNAの抽出に特に好適に用いられる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は迅速かつ簡便にRNAを抽出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物・動物等の生体組織からRNAを抽出するための方法としてこれまで知られているものとして代表的なものは以下の方法である。
(1) グアニジウム法
強力なタンパク質変性剤であるグアニジンチオシアネートをRNase阻害剤として利用する(Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. 162, 156−159 (1987))。通常、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム(サルコシル)またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤を添加する。これらは細胞膜を破壊すると同時に、弱いRNase阻害剤として作用する。また、β−メルカプトエタノールはRNase内のS−S結合を還元することによりRNaseを不活性化する。これらを主な成分として含むバッファー中に核酸を溶出させる。その後の処理としては、酸性条件下でフェノール抽出を行い、RNAのみを水層に分離する方法(acid guanidium−phenol−chroloform: AGPC法)が一般的であるが、塩化セシウム勾配を利用した超遠心によりRNAを分離する方法もある。
【0003】
(2) SDS−フェノール法
1%程度のSDSを主な成分として有するバッファーにより組織から核酸を溶出し、その後、酸性条件下でフェノール抽出することによりRNAを水層に分離する方法である。根などの多糖類の多く含まれる組織からのRNA抽出において多糖類の混入が少ないといわれているが、多糖類を十分に取り除くためには、2〜3Mの塩化リチウム水溶液を用いた沈殿を繰り返す必要がある。
【0004】
(3)ATA法
aurintricarbonic acid(ATA)を核酸溶出バッファー中のRNase阻害剤として使用する(Gonzalez, R. G., et al., Biochemistry 19, 4299−4303 (1980))。以降の操作はAGPC法、SDS−フェノール法と同様である。ATAはRNAと挙動をともにしやすいため、グアニジウム法に比べてRNAの分解が少なく、より高品質のRNAが得られる。しかし、ATAは逆転写反応を阻害するため、ノーザン解析には問題ないが、RT−PCRまたはcDNAライブラリ作成には用いることができないという欠点がある。多糖類の少ない草本植物の葉などに適した方法である。
【0005】
(4)CTAB法
1.5%程度のCTABと0.7M程度の塩化ナトリウムを含む溶液中では、核酸は溶解できるが多糖類は溶解できない性質を利用するものであり、木本植物の葉などからのRNA抽出等に用いられた例がある(Chang, S., et al., Plant Molecular Biology Report 11, 113−116 (1993);「新版植物のPCR実験プロトコール」島本功、佐々木卓治 監修(秀潤社)(1997年))。核酸溶出後はクロロホルム抽出、リチウム沈殿、フェノール・クロロホルム抽出を繰り返して多糖類を除去する。しかし、米などのように極度に澱粉含量が高い試料の場合には限界があり、十分な量のRNAを確保するためには多量の出発材料を確保する必要がある。
【0006】
上記のような抽出法には以下のような問題点がある。
1)強力なタンパク質変性剤、タンパク質・核酸結合阻害剤等、人体に有害である可能性が高く、また高価な試薬が必要である。
2)タンパク質・多糖類等を取り除くために、ステップ数が多い。
とくにポリフェノールまたは澱粉の多い組織から抽出するためには煩雑な方法が必要である。
3)上記の結果、多検体処理または機械化が困難である。
【0007】
実際に、澱粉含量が非常に高いイネ種子(精米)を出発材料としたRNA抽出を、グアニジウム法で行った。グアニジウム法は、発明者らがイネ植物体組織(葉など)通常用いている方法である。その結果、粉砕した精米をグアニジウム塩を含むバッファーに溶解した段階で澱粉が大量に溶出し、溶液が糊状になった。遠心分離後の上清を移転し、アルコール塩析したところ、RNAと澱粉の混合物と見られる団子状の沈殿が析出した。澱粉とRNAを分離するために、滅菌水への溶解と塩析を繰り返したが、澱粉の減少とともにRNAも失われるため、純度の高いRNAの抽出には至らなかった。上記のいずれの方法においても、核酸溶出バッファー中に澱粉が混入するため、澱粉除去のためのステップが不可避になること、出発材料が多量に必要なことから多検体処理または機械化は困難である。
【0008】
【非特許文献1】
Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. 162, 156−159 (1987)
【非特許文献2】
Gonzalez, R. G., et al., Biochemistry 19, 4299−4303 (1980)
【非特許文献3】
Chang, S., et al., Plant Molecular Biology Report 11, 113−116 (1993)
【非特許文献4】
「新版植物のPCR実験プロトコール」島本功、佐々木卓治 監修(秀潤社)(1997年)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はRNAを単離する方法を提供する。特に本発明は、澱粉を多量に含む生体組織から迅速かつ簡便にRNAを単離する方法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来のRNA単離法の欠点を克服する新たなRNA単離方法を確立するため鋭意研究を行った。その結果、(1)0.05%(重量/容積; w/v)またはそれ以上の濃度のドデシル硫酸ナトリウム (SDS)、0.05%(w/v)またはそれ以上の濃度のCetyltrimethylammonium Bromide (CTAB)、または0.05%(w/v)またはそれ以上の濃度のN−ラウロイルサルコシンナトリウム (サルコシル)、または(2)0.1 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアン酸グアニジンまたは0.1 Mまたはそれ以上の濃度のイソチオシアン酸グアニジン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のグアニジンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のヨウ素イオン、あるいは1 Mまたはそれ以上の濃度の尿素、のいずれにも試料を接触させずに、試料を塩類および緩衝剤を含む水溶液ならびに有機溶媒と酸性条件下で混合して水溶液から蛋白質を除去し、得られたRNAを含む水溶液をアルコール類と混合してRNAを不溶化し、このRNAを回収することによって、極めて効率的にRNAを単離することができることを見いだした。
【0011】
本発明の方法を利用することにより、動物および植物のさまざまな組織等から簡便かつ迅速にRNAを抽出することが可能となった。この方法では、通常遺伝子操作を行う実験室等に常備されている一般試薬以外の特殊または高価な試薬、あるいは特殊な設備または器具は不要である。また、少量の検体から効率よく抽出できること、操作が単純で段階数が少ないことから、多検体処理および機械化が可能である。また、従来の方法では、ポリフェノールまたは澱粉等を多く含む試料では、これらがRNAと共に回収されてしまい、これを取り除くために付加的なステップを必要としていた。しかし本発明の方法では、ポリフェノールまたは澱粉等を多く含む試料からでもRNAを特異的に単離することができる。従って本発明の方法は、澱粉等を多く含む試料、例えば植物の種子等からのRNA調製に特に好適に用いられる。
【0012】
すなわち本発明は、所望の試料からRNAを単離するための方法およびキット等に関し、より具体的には、
(1)RNAの単離方法であって、
(a)(i)試料、(ii)塩類および緩衝剤を含む水溶液、および (iii)有機溶媒を、酸性条件下で混合する工程、および
(b)工程(a)の混合物から得られた水溶液およびアルコール類を混合してRNAを不溶化する工程、および
(c)工程(b)で不溶化したRNAを回収する工程、を含み、
工程(a)または工程(a)から工程(b)の間において、該試料を以下の化合物のいずれとも接触させない方法、
(1)0.05%(重量/容積; w/v)またはそれ以上の濃度のドデシル硫酸ナトリウム (SDS)、Cetyltrimethylammonium Bromide (CTAB)、またはN−ラウロイルサルコシンナトリウム (サルコシル)、
(2)0.1 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアン酸グアニジンまたはイソチオシアン酸グアニジン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のグアニジンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のヨウ素イオン、あるいは1 Mまたはそれ以上の濃度の尿素、
(2)酸性条件が、pH3から6である、(1)に記載の方法、
(3)緩衝剤が、Tris−Clである、(1)に記載の方法、
(4)塩類が、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種類またはそれ以上の無機塩類である、(1)に記載の方法、
(5)有機溶媒が、フェノール、クロロホルム、またはそれらの両方である、(1)に記載の方法、
(6)アルコール類が、イソプロパノール、エタノール、またはそれらの両方である、(1)に記載の方法、
(7)塩類および緩衝剤を含む水溶液、有機溶媒、およびアルコール類を含む、(1)に記載の方法によりRNAを単離するためのキット、
(8)(1)に記載のRNAの単離方法を実行するRNA単離装置、に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、RNAの単離方法であって、(a)(i)試料、(ii)塩類および緩衝剤を含む水溶液、および (iii)有機溶媒を、酸性条件下で混合する工程、(b)工程(a)において得られた水溶解液およびアルコール類を混合してRNAを不溶化する工程、および(c)工程(b)で不溶化したRNAを回収する工程、を含み、工程(a)または工程(a)から工程(b)の間において、該試料を(1)0.05%(重量/容積; w/v)またはそれ以上の濃度のドデシル硫酸ナトリウム (SDS)、0.05%(w/v)またはそれ以上の濃度のCetyltrimethylammonium Bromide (CTAB)、または0.05%(w/v)またはそれ以上の濃度のN−ラウロイルサルコシンナトリウム (サルコシル)、または(2)0.1 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアン酸グアニジンまたは0.1 Mまたはそれ以上の濃度のイソチオシアン酸グアニジン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のグアニジンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のヨウ素イオン、あるいは1 Mまたはそれ以上の濃度の尿素、のいずれとも接触させない方法に関する。
【0014】
試料としてはRNAを含む所望の材料であってよく、例えばRNAを含む食品または任意の試薬等が含まれる。試料として想定される主要な対象は生物材料である。具体的には、血液、血清、尿、糞便、精液、唾液、リンパ液またはその他の体液、組織、細胞、および水もしくは土壌サンプルなどが含まれる。本発明は、澱粉等の多糖類を比較的多く含む生体材料からのRNAの抽出に特に優れた効果を発揮する。多糖とは、グルコースなどの単糖が直線状または分枝状につながった結合物を言い、グリコーゲン、澱粉、セルロースが含まれる。また澱粉には、アミロースおよびアミロペクチンが含まれる。多糖1分子には、通常グルコースは5個以上、例えば10個以上つながって構成されており、例えば数十個以上、数百個以上、あるいは数千個以上つながっている。本発明において好適なRNA含有試料としては、具体的には、澱粉、および/またはグリコーゲン(これらの複数を含む場合はそれらの合計)を1%(乾燥重量比)またはそれ以上、より好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上で含むような試料である。このような材料としては、特に植物の種子、子房、根、根茎、および葉鞘が挙げられる。特に、本発明は植物の種子からRNAを調製するために好適に用いられる。
【0015】
本発明の方法においては、RNA含有試料、塩類および緩衝剤を含む水溶液、ならびに有機溶媒を混合して酸性になるようにする。これらを混合する順序は任意であってよい。また、段階的に混合しても、一度に混合してもよい。例えばまず試料と塩類および緩衝剤を含む水溶液とを混合し、これを有機溶媒と混合することは好ましい。この場合、緩衝剤を含む水溶液は、有機溶媒との混合前は酸性でなくてもよい。例えば水溶液を最初は中性〜弱アルカリ(pH6.8〜8.5程度)のpHにしておき、これを有機溶媒を混合した時またはその後に酸性にすることができる(実施例1参照)。また、全てを同時に混合してもよい(実施例6参照)。同時に混合することによって、RNA抽出のためのステップを減らすことができる。これは、多くの試料を処理する場合、およびRNA調製の自動化などにおいて有利である。
【0016】
試料は、RNAが抽出されやすいようにするため、有機溶媒と混合する前などに、適宜破砕または溶解することができる。例えばミキサー、ミンサー、ホモジェナイザー、ソニケーターなどを用いて試料を破砕し、これを塩類および緩衝剤を含む水溶液に混合することができる。試料は、該水溶液に混合してから破砕してもよいし、あるいはさらに有機溶媒と混合した後で破砕することもできる(実施例6参照)。塩類および緩衝剤を含む水溶液には、好ましくはキレート剤を添加しておく。キレート剤とは、陽イオン金属原子(好ましくは2価の陽イオン金属原子)と配位結合を形成する化合物であり、好ましくはEDTA(エチレンジアミン四酢酸)が用いられる。水溶液中のEDTA濃度は、例えば 1 mM〜0.5 M、好ましくは3 mM〜300 mM、より好ましくは5 mM〜100 mM、例えば約10 mMにする。キレート剤により、例えばMg2+依存性の酵素活性を阻害し試料の分解を抑制することができる。またキレート剤として、EGTA(エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸)を添加してもよい。また該水溶液には、還元剤が含まれることが好ましい。これにより、溶液中に共存し得るRNase活性を低下させることができる。還元剤としては、β−メルカプトエタノールまたはジチオスレイトール(DTT)などが用いられる。還元剤濃度は適宜調整してよいが、β−メルカプトエタノールであれば例えば 0.1%〜5%(容量/容量; v/v)、DTTであれば 0.1 mM〜30 mM程度である。しかし、還元剤非存在下でも、十分高い効率でRNAを単離することができる(実施例1)。また、水溶液にはaurintricarbonic acid (ATA)を添加してもよい(実施例8参照)。
【0017】
工程(a)の温度は通常、0℃〜80℃の間で行うが、好ましくは0℃〜30℃の間、より好ましくは0℃〜10℃の間、より好ましくは0℃〜5℃の間で行う。工程(a)で水溶液と有機溶媒が混合されてから工程(b)を行うまでの時間(すなわち有機溶媒による抽出時間)は、試料中の蛋白質等を変性させ、不溶化または有機溶媒側に抽出するのに十分な時間であれば特に制限はないが、下限は通常1分以上、好ましくは5分以上であり、上限に特に制限はないが通常数日以内、好ましくは24時間以内である。水溶液と有機溶媒の混合液は、振とう器またはボルテックスミキサーなどでよく混合し、効率的に蛋白質を変性・除去することが好ましい。
【0018】
本発明の方法で用いる塩類としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、および酢酸ナトリウムなどの所望の塩を単独または複数組み合わせてよい。好ましくは無機塩類、特に一価の金属塩が挙げられ、例えば塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、および酢酸ナトリウムなどが含まれる。水溶液中の塩(複数の塩を含む場合はその合計)の濃度は、通常 10 mM〜5 Mの間であり、好ましくは 50 mM〜3 Mの間であり、より好ましくは 80 mM〜2 Mの間であり、より好ましくは 100 mM〜1.5 Mの間である。例えば約1 Mの濃度が用いられる。
【0019】
緩衝剤としては、pH緩衝作用のある所望の化合物が含まれ、例えばリン酸、クエン酸、酢酸、MES (2−(N−Morpholino)ethanesulfonic Acid)、Bis−tris (2,2−Bis(hydroxymethyl)−2,2’,2”−nitrilotriethanol)、Bis−tris Propane {1,3−Bis(tris(hydroxymethyl)methylamino)propane}、ADA (N−(2−Acetamido)iminodiacetic Acid)、PIPES (Piperazine−1,4−bis(2−ethanesulfonic Acid))、ACES (N−(2−Acetamido)−2−aminoethanesulfonic Acid)、MOPSO (3−(N−Morpholino)−2−hydroxypropanesulfonic Acid)、BES (N,N−Bis(2−hydroxyethyl)−2−aminoethanesulfonic Acid)、MOPS (3−(N−Morpholino)propanesulfonic Acid)、TES (N−Tris(hydroxymethyl)methyl−2−aminoethanesulfonic Acid)、HEPES {2−(4−(2−Hydroxyethyl)−1−piperazinyl)ethanesulfonic Acid}、Tris (Tris(hydroxymethyl)aminomethane)、およびそれらの塩の組み合わせが含まれる。好ましい一例はTrisである。濃度は例えば 5〜500 mM、より好ましくは10〜300 mMである。水溶液としてTris−Clを含む水溶液を用いることができる。RNA試料を含む水溶液と有機溶媒とは、混合する時またはその後で酸性になるようにしてよい。塩および緩衝材と含む水溶液と有機溶媒との混合液のpHは、具体的には、pH2.7〜6.9の間、より好ましくはpH2.8〜6.7の間、より好ましくはpH2.9〜6.5の間、より好ましくはpH3.0〜6.0の間にすることが好ましい。有機溶媒と混合する前の塩および緩衝材と含む水溶液のpHは、中性〜弱アルカリ(pH6.8〜8.5程度)であってよい。溶液を酸性にするには、例えばRNA試料を含む水溶液と有機溶媒とを混合する時またはその後に、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムなどの酸性酢酸塩溶液を加える。具体的には、例えば 100 mM Tris−Clを含む水溶液と、水飽和フェノールおよび/またはクロロホルムとを混合し、水溶液に終濃度100〜150 mM程度となるよう酢酸ナトリウム液(pH 5.4)を加えて全体を酸性にする(実施例1)。
【0020】
有機溶媒としては、水溶液に含まれる蛋白質を抽出または水溶液から不溶化させる性質を持ち、水溶液と完全には溶解しない(すなわち水層と有機層とに分離する)溶媒が用いられ、具体的にはフェノール、クロロホルム、またはそれらの混合物を好適に用いることができる。フェノールは、予め滅菌水と混合して飽和させておくことが好ましい。有機溶媒と、塩および緩衝材と含む水溶液との混合比(容量比)は約1:1が好ましいが、これに制限されない。
【0021】
本発明の方法は、RNAを含む試料、塩類および緩衝剤を含む水溶液、ならびに有機溶媒を酸性条件となるように混合する工程(工程(a))、あるいは、この工程(a)から、この工程(a)で得られた水溶解液とアルコール類とを混合してRNAを不溶化する工程(工程(b))までの間において、該試料を以下の化合物のいずれとも接触させないことが特徴である。
(1)0.05%(重量/容積; w/v)またはそれ以上の濃度のドデシル硫酸ナトリウム (SDS)、Cetyltrimethylammonium Bromide (CTAB)、またはN−ラウロイルサルコシンナトリウム (サルコシル)。
(2)0.1 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアン酸グアニジンまたはイソチオシアン酸グアニジン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のグアニジンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のヨウ素イオン、あるいは1 Mまたはそれ以上の濃度の尿素。
【0022】
これにより、澱粉などを多く含む試料においても、RNA試料に多量の多糖が混入するのを防ぐことができる。また、試料溶液が糊状にならず、高い効率でRNAを単離することが可能である。本発明の方法は、好ましくは、上記工程(a)、あるいは、この工程(a)から上記工程(b)までの間において、0.03% (w/v)またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.02% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.01% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.005% (w/v)またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.003% (w/v) またはそれ以上の濃度のSDS、CTAB、またはサルコシルを試料に接触させない。
【0023】
さらに好ましくは、本発明の方法において、上記工程(a)、あるいは、この工程(a)から上記工程(b)までの間において、0.05% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.03% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.02% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.01% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.005% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.003% (w/v) またはそれ以上の濃度のイオン界面活性剤を試料に接触させない。界面活性剤とは、分子内に親水性部分と疎水性部分が分かれて存在し、液体に溶けて表面張力を有意に低下させる物質である。
【0024】
イオン界面活性剤とは、水溶液中でイオンに乖離する界面活性剤であり、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、および両性界面活性剤の任意のいずれかのことである。陰イオン界面活性剤には、Sodium Dodecylsulfate (SDS)、Lithium Dodecyl Sulfate (LDS)、Lithium 3,5−Diiodosalicylate、Tris(hydroxymethyl) aminomethane Dodecyl Sulfate (Tris DS)、Sodium Cholate、N−Lauroylsarcosine、Sodium N−Dodecanoylsalcosinateが含まれる。陽イオン界面活性剤には、Cetyldimethylethylammonium Bromide、Cetyltrimethylammonium Bromide (CTAB)、Cetyltrimethylammonium Chlorideが含まれる。両性界面活性剤には、3−[(3−Cholamidopropyl)dimethylammonio]−2−hydroxy−1−propanesulfonate (CHAPSO)および 3−[(3−Cholamidopropyl)dimethylammonio]−1−propanesulfonate (CHAPS) の任意の1つまたは任意の組み合わせが挙げられる。これらのいずれのイオン界面活性剤も、上記濃度で試料に接触させないことが好ましい。
【0025】
さらに好ましくは、本発明の方法においては、上記工程(a)、あるいは、この工程(a)から上記工程(b)までの間において、0.05% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.03% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.02% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.01% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.005% (w/v) またはそれ以上の濃度、より好ましくは0.003% (w/v) またはそれ以上の濃度の任意の界面活性剤(イオン界面活性剤および非イオン界面活性剤を含む)を試料に接触させない。
【0026】
非イオン界面活性剤としては、N,N−Bis (3−D−gluconamidopropyl) cholamide (BIGCHAP)、N,N−Bis(3−D−gluconamidopropyl) deoxycholamide (Deoxy−BIGCHAP)、NIKKOL BL−9EX (Polyoxyethylene (9) Lauryl Ether)、Octanoyl−N−methylglucamide (MEGA−8)、Nonanoyl−N−methylglucamide (MEGA−9)、Decanoyl−N−methylglucamide (MEGA−10)、Polyoxyethylene (8) Octylphenyl Ether (Triton X−114)、Polyoxyethylene (9) Octylphenyl Ether (NP−40)、Polyoxyethylene (10) Octylphenyl Ether (Triton X−100)、Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monolaurate (Tween 20)、Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monopalmitate (Tween 40)、Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monostearate (Tween 60)、Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monooleate (Tween 80)、Polyoxyethylene (20) Sorbitan Trioleate、Polyoxyethylene (23) Lauryl Ether (Brij35)、Polyoxyethylene (20) Cethyl Ether (Brij58)、n−Dodecyl−β−D−maltopyranoside、n−Heptyl−β−D−thioglucopyranoside、n−Octyl−β−D−glucopyranoside、n−Octyl−β−D−thioglucopyranoside、n−Nonyl−β−D−thiomaltoside、IGEPAL CA−630、Digitonin、Saponin の任意の1つまたは任意の組み合わせが挙げられる。これらのいずれの非イオン界面活性剤も、上記濃度で試料に接触させないことが好ましい。
【0027】
また本発明の方法は、好ましくは、上記工程(a)、あるいは、この工程(a)から上記工程(b)までの間において、1 Mまたはそれ以上の濃度のグアニジンチオシアネートまたはグアニジンイソチオシアネート、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のグアニジンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のヨウ素イオン、あるいは1 Mまたはそれ以上の濃度の尿素のいずれとも試料に接触させない。溶液中でチオシアンイオンを解離させる化合物には、例えばチオシアン酸アンモニウム/イソチオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム等が挙げられる。またグアニジンイオンを生じる化合物には、塩酸グアニジンが含まれる。またヨウ素イオンを生じる化合物には、過ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、およびヨウ化カリウムが挙げられる。
【0028】
より好ましくは、本発明の方法においては、上記工程(a)、あるいは、この工程(a)から上記工程(b)までの間において、80 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは70 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは60 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは50 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは40 mMまたはそれ以上の濃度のグアニジンチオシアネートを試料に接触させない。また、好ましくは、400 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは300 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは200 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは100 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは50 mMまたはそれ以上の濃度のグアニジンイオン、チオシアンイオン、またはヨウ素イオンのいずれとも試料に接触させない。また、好ましくは、900 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは800 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは700 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは600 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは500 mMまたはそれ以上の濃度の尿素を試料に接触させない。
【0029】
さらに本発明は、500 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは400 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは300 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは200 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは100 mMまたはそれ以上の濃度、より好ましくは50 mMまたはそれ以上の濃度の塩酸グアニジンと同等またはそれ以上の蛋白質変性作用を示す濃度のカオトロピック化合物のいずれをも試料に接触させないことが好ましい。カオトロピック化合物とは、蛋白質の高次構造(2次構造、3次構造、4次構造)を破壊するが、RNAの1次構造を分解しない化合物である。蛋白質変性作用は、例えば蛋白質変性マーカーとしてウレアーゼを利用し、その残存活性を測定することにより定量することができる。代表的なカオトロピックイオンとしては、SCN、ClO 、I、NO3、Br、NHC(NH)NH などが挙げられる(F. Hofmeister, On the understanding of the effects of salts, Arch. Exp. Pathol. Pharmakol. (Leipzig) 24 (1888) 247−260)。具体的なカオトロピック試薬としては、上記のグアニジンチオシアネート/グアニジンイソチオシアネート、チオシアン酸アンモニウム/イソチオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、塩酸グアニジン、過ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、および尿素などの他、例えば過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸、などの任意の1つまたは任意の組み合わせが挙げられる。
【0030】
試料、塩および緩衝材を含む水溶液、および有機溶媒を含む混合液から、水層を回収(または有機層を除去)すれば、試料から蛋白質、脂肪などが除かれ、高い純度でRNAを含む溶液が得られる。この溶液からRNAを回収することによって、RNAを単離することができる。そのためには、この溶液にアルコール類を混合し、RNAを不溶化すればよい。
【0031】
アルコール類としては、炭素数1〜8の低級脂肪属アルコールが好ましく、具体的にはメタノール(メチルアルコール)、エタノール(エチルアルコール)、プロパノール(プロピルアルコール)、イソプロパノール(イソプロピルアルコール)、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール等を挙げることができる。これらは単独であるいは所望の比率で混合して用いることができる。特に好ましいアルコール類はエタノール、イソプロパノール、およびそれらの混合物である。エタノールであれば、RNAを含む水溶液に対して例えば1.5〜2.5倍(v/v)量、イソプロパノールであれば例えば0.5〜1.5倍(v/v)量を加えてRNAを不溶化する。不溶化させたRNAは静置または遠心等によりRNAを沈殿させ、上清を取り除くことによって単離することができる。あるいは、濾過等によって回収してもよい。不溶化させたRNAは、例えば70%エタノール等によって1回または複数回洗浄してよい。これにより残留し得る塩などを除去することができる。単離したRNAは、例えば水(例えばDEPC処理した滅菌水)またはTE(10 mM Tris−Cl, 1 mM EDTA)などの緩衝液中に溶解することができる。あるいはRNAの沈殿を乾燥させてそのまま保存してもよい。
【0032】
本発明の方法には、当業者であれば様々なバリエーションを考え得る。例えば、適宜付加的な工程を実施することができる。例えば、有機溶媒による抽出は2回以上行なってもよい。この時、有機溶媒の種類を変えて抽出を行うことができる。例えば最初はフェノール/クロロホルム混合液で抽出を行い、次にクロロホルムで抽出してもよい。また、工程(a)において、水溶液に不溶物が析出した場合には、工程(b)の前に遠心または濾過などを行い、不溶物を取り除くことができる(実施例4参照)。また、アルコール類の添加によりRNAを回収する前に、RNA吸着性の支持体、例えばシリカゲル等を添加し、RNAを吸着させてもよい。また、アルコール類で不溶化させたRNAは、アルコール類を含む溶液中に懸濁させたままで保存することもできる。工程(c)の「不溶化したRNAを回収する工程」とは、このように不溶化したRNAをそのままの状態にしておくことであってもよい。これらのバリエーションも本発明の範疇に含まれる。本発明の方法として最も好ましい態様は、実質的に上記工程(a)、(b)、および(c)からなる方法である。
【0033】
また本発明は、本発明の方法によりRNAを単離するためのキットであって、塩類および緩衝剤を含む水溶液、有機溶媒、およびアルコール類を含むキットに関する。キットに含まれる塩類および緩衝剤を含む水溶液、有機溶媒、およびアルコール類としては、上記に記載した通りのものが好ましい。
キットには、本発明のRNAの単離方法の実施手順を示す記載または該記載へのリンクを含む記録媒体を含むことが好ましい。このような記載は、
(a)(i)試料、(ii)塩類および緩衝剤を含む水溶液、および (iii)有機溶媒を、酸性条件下で混合すること、および
(b)(a)の混合物から得られた水溶液およびアルコール類を混合してRNAを不溶化すること、に関する記載を含み、
上記(a)または(a)から(b)の間において、該試料を以下の化合物のいずれとも接触させないように指示する記載を含んでいる。
(1)0.05%(重量/容積; w/v)またはそれ以上の濃度のドデシル硫酸ナトリウム (SDS)、0.05%(w/v)またはそれ以上の濃度のCetyltrimethylammonium Bromide (CTAB)、または0.05%(w/v)またはそれ以上の濃度のN−ラウロイルサルコシンナトリウム (サルコシル)。
(2)0.1 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアン酸グアニジンまたは0.1 Mまたはそれ以上の濃度のイソチオシアン酸グアニジン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のグアニジンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のヨウ素イオン、あるいは1 Mまたはそれ以上の濃度の尿素。
【0034】
さらに、(b)で不溶化したRNAを回収することに関する記載を含んでもよい。回収は、例えば不溶化したRNAをアルコール類の混合液から分離することであってよい。また、回収したRNAを水または緩衝液に再溶解することに関する記載を含んでもよい。
【0035】
記録媒体としては、紙およびプラスチックなどの印刷媒体、フレキシブルディスク (FD)、コンパクトディスク (CD)、デジタルビデオディスク (DVD)、半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体など所望の記録媒体が挙げられる。典型的には、キットに添付される指示書などが挙げられる。リンクとは、該記載がキット中に直接的には記載されていないが、キットに含まれる印などによって該記載と関連付けられていることを言い、その印を通して該記載にたどり着ける場合である。例えば指示書には別紙またはURLなどを参照するように指示または示唆する記載があり、別紙またはURLに該記載がある場合などが含まれる。
【0036】
また本発明は、本発明のRNAの単離方法を実行するRNA単離装置に関する。この装置は、具体的には
(a)(i)試料、(ii)塩類および緩衝剤を含む水溶液、および (iii)有機溶媒を、酸性条件下で混合する手段、および
(b)該混合により得られた水溶液およびアルコール類を混合してRNAを不溶化する手段、
上記の(i)試料、(ii)塩類および緩衝剤を含む水溶液、および (iii)有機溶媒の、酸性条件下で混合、あるいは該混合から、該混合により得られた水溶液およびアルコール類を混合してRNAを不溶化するところまでの間において、該試料を以下の化合物のいずれとも接触させないような装置である:
(1)0.05%(重量/容積; w/v)またはそれ以上の濃度のドデシル硫酸ナトリウム (SDS)、0.05%(w/v)またはそれ以上の濃度のCetyltrimethylammonium Bromide (CTAB)、または0.05%(w/v)またはそれ以上の濃度のN−ラウロイルサルコシンナトリウム (サルコシル)。
(2)0.1 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアン酸グアニジンまたは0.1 Mまたはそれ以上の濃度のイソチオシアン酸グアニジン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のグアニジンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のヨウ素イオン、あるいは1 Mまたはそれ以上の濃度の尿素。
【0037】
本装置はさらに、(b)で不溶化したRNAを分離する手段を含んでもよい。不溶化したRNAの分離は、例えば遠心、濾過、または重力(静置)により行なわれる。さらに分離されたRNAを、水または緩衝液に再溶解する手段を含んでもよい。
【0038】
(a)および(b)は、ポンプ等を用いて試料を含む容器(例えばサンプルチューブなど)に塩類および緩衝剤を含む水溶液、有機溶媒、またはアルコール類を注入するものであってよい。混合液は、ミキサー等により混合し、試料を破砕してもよい。また(c)の不溶化したRNAの分離は、水溶液とRNAを互いに接触しないように分離してもよいが、単に水溶液中にRNAを沈殿(または自然の重力により沈降)させるだけでもよい。あるいは遠心分離によってRNAを沈殿させてもよい。また、RANを沈殿させた後で、上清を取り除く工程があってもよい。
【0039】
本発明の装置は、例えばRNAを含む試料を含む容器を固定するキャリアー、およびこの容器中の各試料に水溶液および有機溶媒を注入するためのピペットを持っていてよい。容器としては、遠心管、スピン管、シリンジ、カートリッジ、チャンバー、マルチウェルプレート、試験管などであってよい。容器の各サンプルに溶液を注入できるよう、ピペットまたは容器のキャリアーは可動できるようになっており、RNAの単離工程に従って塩類および緩衝剤を含む水溶液、有機溶媒、またはアルコール類を各試料を含む容器内に注入することができるようになっている。本発明の装置は、好ましくはマイクロプロセッサーにより処理される適当なソフトウェアの制御下にある。これにより処理した試料の監視、記録、および操作の容易性が向上する。本発明の装置は、処理工程を行うために種々の機械デバイスを使用することができる。好適なデバイスには、モーター、圧力ポンプ、真空ポンプおよび遠心/微遠心デバイスが含まれ得る。本発明の装置のハードウェアは、既存の機械モジュールを組み合わせて作り上げることが可能である。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。なお、本明細書に引用された文献は、全て本明細書の一部として組み込まれる。
【0041】
[実施例1]
<精米からのRNA抽出>
澱粉含量が非常に高いイネ種子(精米)を出発材料としてRNA抽出を行った。精米から核酸を溶出するためのバッファーとして、100 mM Tris、10 mM EDTA、1 M KClを含むpH 8.0の緩衝液(オートクレーブしたもの)を用いた。このバッファーは、イネ葉からPCRなどに用いるための純度の低いDNAを簡易抽出するためのバッファーとして使用しているものであるが、RNA抽出に利用された例はない。これに、RNA分解酵素の働きを抑制するため、1%β−メルカプトエタノールを加えて用いた。
用意したバッファー0.5 ml(2 mlチューブ、Eppendorf社製)に精米8粒と5 mm径のジルコニアボール(井内盛栄堂)1粒を加え、しばらく吸水させたのち、粉砕装置ミキサーミルMM300(Retche社製)に40秒間かけて粉砕したところ、精米は粉状に粉砕され、バッファーはミルク状に白濁した。糊状になるようなことはなく、また界面活性剤を添加していないため、泡の発生も見られなかった。これに0.3 ml 酸性(水飽和)フェノール、0.14 ml クロロホルム、0.04 ml 3M 酢酸ナトリウム水溶液(pH5.4)を加えて混合した。これを微量高速冷却遠心機にかけ(10000 rpm×10分)、水層を別の2 mlチューブに移し、3/4量のイソプロパノールを加えて混合し、再度遠心(10000 rpm×20分)した。得られた沈殿を70%エタノールでリンスし、軽く乾燥してから60μlのジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水に溶解した。260 nmと280 nmの吸光度を測定したところ、約320μgの高純度のトータルRNAが抽出されていた (260/280=1.90〜2.00)。得られたRNAは、mRNA抽出、cDNA合成、cDNAライブラリ作成に問題なく使うことができた(後述)。
次に、1%β−メルカプトエタノールが必須かどうかを確認するため、1%β−メルカプトエタノールを含まない同じバッファーを用いて同様の実験を行ったところ、収率にはあまり変わりがなかった。よって、RNA分解酵素の混入に十分配慮した環境で抽出を行う限りにおいては、β−メルカプトエタノールは必須ではないことがわかった。
【0042】
[実施例2]
<塩の種類についての検討>
次に、核酸溶出用バッファーに用いる無機塩類の種類によるRNA抽出効率の違いを調べた。KCl、NaCl、LiCl、MgCl(濃度はそれぞれ 1 M)、なし(100 mM Tris−Cl、10mMEDTAのみ)、および滅菌水のみ、の6種類のバッファーを作成し、同様に精米からのRNA抽出を行った。その結果、精米8粒から得られたtotal RNAの量は、以下の表のとおりになった。
【0043】
【表1】
Figure 2004329176
【0044】
電気泳動により確認したところ、いずれも確かにRNAが得られていることが確認され、DNAの混入はほとんど見られなかった。最も多量のRNAが得られたのはKClであり、滅菌水、TEのみの場合の10倍以上のRNA抽出効率があることがわかった。また、MgClは最も効率が悪かった。LiCl、NaClはKClよりは低いものの、RNA抽出効率を上げる効果が確認できた。
以上の結果より、核酸溶出に用いるバッファーに用いる無機塩として、KClの他、LiCl、NaClも有効であることが確認された。
【0045】
[実施例3]
<イネの他の組織からのRNA抽出>
イネは成長・出穂・登熟の過程で、葉で合成した澱粉を貯蔵する場所を変えていくことが知られており、栄養成長過程、出穂時期には葉鞘に大量の澱粉を蓄積し、受精・登熟期には蓄積した澱粉を糖に変えて子房に転流しふたたび澱粉として蓄積する。従って、出穂期の葉鞘および受精後の子房は澱粉含量が高く、従来のRNA抽出法では十分な量・純度のRNAを得ることが難しかった。そこで、本発明の方法を用いて抽出を行った。
【0046】
子房:受精後1日〜5日の子房の混合物40 mgを出発材料とし、2 mlチューブ内で0.5 mlの核酸溶出用バッファー、3 mm径ジルコニアボールを用いて粉砕・混合し、以下実施例1と同様に抽出作業を行った。その結果、約300μgのtotal RNAが得られた。
葉鞘:出穂期のイネ植物体のとめ葉、およびとめ葉から2番目の葉の葉鞘400 mgを出発材料とし、2 mlチューブ内で0.5 mlの核酸溶出用バッファー、3 mm径ジルコニアボールを用いて粉砕・混合し、以下同様に抽出作業を行った。その結果、約300μgのtotal RNAが得られた。
以上の結果より、澱粉が多量に蓄積されているイネの精米以外の組織からのRNA抽出にも、本発明の方法が有効に用いられることが確認された。
【0047】
[実施例4]
<他の植物種の種子からのRNA抽出>
他の植物種の澱粉の多い組織からも本発明の方法によりRNAが抽出できるかどうかを調べた。材料として、ダイズ種子、エンドウ種子、ヒマワリ種子を用いた。
【0048】
ダイズ種子:乾燥種子1粒をアルミホイルに包み、ペンチで軽くつぶした後の半粒分を1試験分の出発材料とし、2 mlチューブ内で0.5 mlの核酸溶出用バッファー、5 mm径ジルコニアボールを用いて40秒間粉砕・混合し、以下同様に抽出作業を行った。その結果、種子1粒あたり約500μgのtotal RNAが得られた。
エンドウ種子:乾燥種子1粒をアルミホイルに包み、ペンチで軽くつぶしたものを1試験分の出発材料とし、2 mlチューブ内で0.5 mlの核酸溶出用バッファー、5 mm径ジルコニアボールを用いて40秒間粉砕・混合し、以下同様に抽出作業を行った。その結果、1粒あたり230μgのtotal RNAが得られた。
ヒマワリ種子:乾燥種子2粒を1試験分の出発材料とし、2 mlチューブ内で0.5 mlの核酸溶出用バッファー、5 mm径ジルコニアボールを用いて40秒間粉砕・混合し、以下同様に抽出作業を行った。ヒマワリの場合には、水に不溶の白濁物の混入が見られたため、最後に遠心分離を追加し、上澄みをRNA溶液として回収した。その結果、1粒あたり50〜60μgのtotal RNAが得られた。
【0049】
電気泳動により確認したところ、いずれも確かにRNAが得られていることが確認され、DNAの混入はほとんど見られなかった。
この結果を以下の表にまとめる。
【表2】
Figure 2004329176
以上の結果より、澱粉が多量に蓄積されているイネ以外の植物種の組織からのRNA抽出にも、本発明の方法が有効に用いられることが確認された。
【0050】
[実施例5]
<フェノール、クロロホルムが必要かどうかの検討>
本発明の方法によるRNA抽出において用いられる有機溶媒として、フェノールとクロロホルムの両者が必要かどうかを調べた。精米8粒を出発材料とし、1 M KCl、100 mM Tris−Cl、10 mM EDTAを含む核酸溶出バッファー0.5 ml、5 mm径ジルコニアボール、を含む2 mlチューブ内でMixerMillMM300を用いて40秒間粉砕した。その後、実施例1と同様に0.3 ml 酸性(水飽和)フェノール、0.14 ml クロロホルム、0.04 ml 3M 酢酸ナトリウム水溶液(pH5.4)を加えて混合した。これを微量高速冷却遠心機にかけ (10000 rpm×10分)、水層を別の2 mlチューブに移し、3/4量のイソプロパノールを加えて混合し、再度遠心(10000 rpm×20分)した。得られた沈殿を70%エタノールでリンスし、軽く乾燥してから60μlのDEPC処理水に溶解した。また、0.3 ml 酸性(水飽和)フェノール、0.14 ml クロロホルム、0.04 ml 3M 酢酸ナトリウム水溶液(pH5.4)を加える代わりに、
(ア) 300μl酸性フェノール、40μl 3M 酢酸ナトリウムを加えて混合し、以下同様にRNAを回収した。
(イ) 300μlクロロホルム、40μl 3M 酢酸ナトリウムを加えて混合し、以下同様にRNAを回収した。
の2通りの方法を試みた。
【0051】
その結果、フェノールのみ、クロロホルムのみ、のいずれの場合にも、若干効率は落ちるもののある程度のRNAが得られることがわかった。結果を以下の表にまとめる。
【0052】
【表3】
Figure 2004329176
【0053】
電気泳動により確認したところ、いずれも確かにRNAが得られていることが確認され、DNAの混入はほとんど見られなかった。
これにより、本発明の方法で用いる、タンパク質、DNA等夾雑物質を取り除くための有機溶媒としては、フェノール、クロロホルムの両方用いた場合が最も効率がよいが、どちらか一方のみでもかなりの程度RNAを抽出できることが確認された。
【0054】
[実施例6]
<試料と水溶液との混合(工程(a1))、および水溶液と有機溶媒との混合と(工程(a2))を同時に行えるかどうかの検討>
多検体処理、機械化を考えた場合、工程の数はできるだけ少ない方が好ましい。このため試料の粉砕および核酸溶出バッファーへの混合(工程(a1))と、有機溶媒による夾雑物質の除去(工程(a2))とを、同時に行う方法を検討した。精米8粒を出発材料とし、1 M KCl、100 mM Tris−Cl、10 mM EDTAを含む核酸溶出バッファー0.5 ml、5 mm径ジルコニアボール、300μl 酸性フェノール、140μl クロロホルム、40μl 3M酢酸ナトリウムを含む2 mlチューブ内でMixerMillMM300を用いて40秒間粉砕した。これを微量高速冷却遠心機にかけ(10000 rpm×10分)、水層を別の2mlチューブに移し、3/4量のイソプロパノールを加えて混合し、再度遠心(10000 rpm×20分)した。得られた沈殿を70%エタノールでリンスし、軽く乾燥してから60μlのDEPC処理水に溶解した。
【0055】
その結果、工程(a1)、工程(a2)を順に行う場合に比べて遜色ない程度のRNAを得ることができ、工程(a1)と工程(a2)を同時に行っても、十分な量と純度のRNAを得られることが確認できた(データ省略)。工程(a1)と工程(a2)を同時に行うことにより、別々に行なった場合、工程(a2)において必要な、「チューブのふたを開け、試薬を加え、ふたを閉め、混合する」というような手間を省くことができる。このことは、特に多検体処理または機械化を考える際に重要である。
【0056】
[実施例7]
<精米から抽出したRNAを用いたcDNAライブラリの作成>
本発明の方法で抽出したRNAを用いてcDNAライブラリの作成を行った。
材料として、精米「魚沼産コシヒカリ」(A, B, C)「茨城産コシヒカリ」(D, E, F)の6種類を用い、本発明の方法により、1 mgのtotal RNAをそれぞれの材料より得た。
得られたtotal RNAから、OligotexTM−MAG mRNA Purification Kit(宝酒造)を用いて精製を行い、それぞれの材料由来のmRNAを得た。このmRNAから、以下の配列を持つプライマーの混合物の存在下で逆転写反応を行い、3’末端側のpolyAが約11 bpに短縮されたcDNAを得た。使用したプライマーの配列は、5’−TGC CGA GCG GCC GCC CTT TTT TTT TTT A−3’ (配列番号:1), 5’−TGC CGA GCG GCC GCC CTT TTT TTT TTT G−3’ (配列番号:2), 5’−TGC CGA GCG GCC GCC CTT TTT TTT TTT CA−3’ (配列番号:3), 5’−TGC CGA GCG GCC GCC CTT TTT TTT TTT CG−3’ (配列番号:4), 5’−TGC CGA GCG GCC GCC CTT TTT TTT TTT CC−3’ (配列番号:5) 及び 5’−TGC CGA GCG GCC GCC CTT TTT TTT TTT CT−3’ (配列番号:6) である。
【0057】
作成したcDNAは、制限酵素NotI(宝酒造)で消化した後、NotI(宝酒造)及びBamHI(宝酒造)で二重消化したベクターpBluescript SK+ (Stratagene) とLigation High (TOYOBO) を用いてライゲーションした。これを、制限酵素MboI (宝酒造) で消化し、再度Ligation High (TOYOBO) を用いてセルフライゲーションした。これをE.coli DH5α competent cell (TOYOBO) に形質転換し、青白セレクションを行い、得られた白コロニーをcDNAライブラリのクローンとした。作成した6種のcDNAライブラリより各1100クローンのcDNAのインサートをもつ白コロニークローンを収集し、アンピシリン(Amp)入りLB培地 100μl を入れた96穴 micro titer plate で培養及び保管した。以上の操作により、3’末端のpolyAが11塩基に短縮され、3’末端側の特異的配列を持つcDNAライブラリを作成した。
【0058】
続いて収集した全てのクローンの塩基配列を、MagaBACE 1000 DNA Sequencing System (Molecular Dymnamics) を用いて塩基配列決定を行った。
シーケンス反応は、まず、96穴micro titer plateで培養した培養液1μlを鋳型とし、20μlスケールでM4 (5’−GTT TTC CCA GTC ACG AC−3’) (配列番号:7)、RV (5’−CAG GAA ACA GCT ATG AC−3’) (配列番号:8) をプライマーとして挿入された塩基配列をPCR法により増幅し、この反応液からExoSAP−IT (USB) を用いて未反応のプライマーとdNTPを取り除いて、シークエンス反応の鋳型を作成した。この鋳型に対して、M4をプライマーとして、DYEnamic ET Dye Terminator Cycle Sequencing Kit for MegaBACE (Amersham pharmacia biotech) を用いてシークエンスサイクル反応を行い、シークエンス用サンプルを作成した。
【0059】
得られたシーケンスデータは、植物ゲノムセンターのデータサーバに転送し、遺伝子発現プロファイリングシステムにより、それぞれのクローンの配列情報の精製・グルーピング・相同性検索を行い、ライブラリ間の各シークエンスグループの発現頻度比較を行った。その結果の詳細は省略するが、得られたシーケンスを確認したところ90%以上がポリAテイルを有しており、高品質のcDNA 3’末端ライブラリを作成することが可能であることが確認された。
【0060】
[実施例8]
<ATA共存下でのRNA抽出>
次に、核酸溶出用バッファーにaurintricarbonic acid (ATA)を2 mMの濃度で添加したATA添加核酸溶出用バッファーを用いて、<精米からのRNA抽出>と同様の手順で、精米からのRNA抽出を行った。得られたRNA溶液は、ATAの存在のために赤色を有しており、吸光光度計による測定では正確な濃度が判定できない。このため、アガロースゲル電気泳動により得られたRNAの量と純度を確認した。その結果、ATAを添加しない場合に比べ若干効率が落ちてはいるものの、十分な量と純度のtotal RNAが得られていることが確認された。
ATAは核酸と挙動をともにし、核酸分解酵素等のタンパク質のRNAへの結合を強力に阻害する。このため、この方法で得られたRNAは、cDNA合成、RT−PCR等には使えない。しかし、RNaseを十分に排除できない条件下でのハイブリダイゼーション実験(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション)等に用いることができる。
【0061】
[実施例9]
<多検体処理および機械化の検討>
本発明のRNA抽出法は、ステップ数が少なく簡便であるために、多検体処理および機械化に適すると考えられる。
1.2 ml容96コレクションチューブラック(QIAGEN)に、1チューブあたり精米4粒、1 M KClを含む核酸溶出バッファー 250μl、酸性フェノール 150μl、3M酢酸ナトリウム 20μlを混合した溶液(以下、混合抽出バッファーと称する)420μl、クロロホルム 70μl、3ミリ径ジルコニアボール1個を加えてキャップをし、MixerMillMM300を用いて4分間、2回粉砕した。ラックを遠心機(日立工機、HIMAC−CR20G、ローターとしてR3S)を用いて、3000 rpm、20分間遠心した。ラックを静かにとりだし、キャップをあけ、8連あるいは12連ピペッターを用いて上清約100μlを取り、市販のPCR用96ウェルプレート(日本ジェネティクス)に移した。そこに、100μlイソプロパノ−ルを8連または12連ピペッターを用いて添加し、数回ピペッティングを行って完全に混合した。プレートをサランラップで軽く包み、−20℃のフリーザー中で20分間冷却した。その後、遠心機(日立工機、HIMAC−CR20G、ローターとしてR3S)を用いて3000 rpm、10分間、4℃で遠心した。プレートをペーパータオル上に逆さに1分間おいて上清を除去後、200μlの70%エタノールを8連または12連ピペッタ−を用いて添加し、ただちに3000 rpm、10分間、4℃で遠心した。再びプレートをペーパータオル上に逆さに1分間おいて上清を除去し、さらに新しいペーパータオル上に伏せたまま、遠心機にセットし、100 rpmで1秒間遠心してエタノールを完全に除去した。10μlのジエチルピロカーボネート処理済の滅菌水を8連または12連ピペッタ−を用いて添加し、数回ピペッティングを行って完全に溶解した。吸光度を測定したところ、精米4粒から平均25μgのtotal RNAが得られたことがわかった。
【0062】
機械化の例として、日立工機のマイクロプレートロボットAP−1を用いた自動抽出を試みた。使用するプログラムは、AP−1にあらかじめインストールされているゲノムDNA抽出用のプログラム(日立工機)をほぼそのまま使用した。
【0063】
1.2 ml容96コレクションチューブラック(QIAGEN)に試料として精米4粒と混合抽出バッファー420μl、クロロホルム70μlを加えて上記の方法で粉砕・混合し、キャップの裏についた液体を取り除く程度に軽く(1000 rpm、10秒程度)遠心後、チューブのキャップを外してAP−1にセットした。その後、AP−1はセットされたラックを遠心機内に移動し、遠心し、取り出し、96サンプル同時に上清100μlを吸い上げ、あらかじめ100μlのイソプロパノールを分注しておいた96ウェルPCRプレートに移し、数回ピペッティングして完全に混合した。さらに混合したサンプルを遠心機に移動し、3000rpm、30分間、4℃で遠心した。AP−1自体には冷却装置がないため、4℃での遠心時間を長くした。遠心後の上清除去は、ピペットによる吸出しで行った。さらに、AP−1は200μlの70%エタノールを加え、再び遠心機に移動し、3000rpm、10分間、4℃で遠心した。遠心終了後、プレートを規定の位置に戻してAP−1の動作は終了した。
【0064】
プレートを取り出し、ペーパータオル上に逆さに1分間おいて上清を除去し、さらに新しいペーパータオル上に伏せたまま、遠心機にセットし、100rpmで1秒間遠心してエタノールを完全に除去した。10μlのジエチルピロカーボネート処理済の滅菌水を8連または12連ピペッタ−を用いて添加し、数回ピペッティングを行って完全に溶解した。吸光度を測定したところ、精米4粒から平均20μgのtotal RNAが得られたことがわかった。96×4=384検体からのRNA抽出に必要な時間は約2時間であった。
以上の結果から、本発明のRNA抽出法を用いることにより、多検体からのRNA抽出を自動化できることが示された。
【0065】
【発明の効果】
本発明により、簡便かつ迅速に生体試料などからRNAを抽出/精製することが可能となった。本発明の方法は、澱粉を多量に含む生体試料からでも少ないステップでRNAを精製することができる。また、多検体を同時に処理したり、機械化が容易な点でも優れている。得られたRNAは、cDNAライブラリの作製およびその他の用途に用いることができる。
【0066】
【配列表】
Figure 2004329176
Figure 2004329176
Figure 2004329176
Figure 2004329176

Claims (8)

  1. RNAの単離方法であって、
    (a)(i)試料、(ii)塩類および緩衝剤を含む水溶液、および (iii)有機溶媒を、酸性条件下で混合する工程、および
    (b)工程(a)の混合物から得られた水溶液およびアルコール類を混合してRNAを不溶化する工程、および
    (c)工程(b)で不溶化したRNAを回収する工程、を含み、
    工程(a)または工程(a)から工程(b)の間において、該試料を以下の化合物のいずれとも接触させない方法。
    (1)0.05%(重量/容積; w/v)またはそれ以上の濃度のドデシル硫酸ナトリウム (SDS)、Cetyltrimethylammonium Bromide (CTAB)、またはN−ラウロイルサルコシンナトリウム (サルコシル)。
    (2)0.1 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアン酸グアニジンまたはイソチオシアン酸グアニジン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のチオシアンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のグアニジンイオン、0.5 Mまたはそれ以上の濃度のヨウ素イオン、あるいは1 Mまたはそれ以上の濃度の尿素。
  2. 酸性条件が、pH3から6である、請求項1に記載の方法。
  3. 緩衝剤が、Tris−Clである、請求項1に記載の方法。
  4. 塩類が、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種類またはそれ以上の無機塩類である、請求項1に記載の方法。
  5. 有機溶媒が、フェノール、クロロホルム、またはそれらの両方である、請求項1に記載の方法。
  6. アルコール類が、イソプロパノール、エタノール、またはそれらの両方である、請求項1に記載の方法。
  7. 塩類および緩衝剤を含む水溶液、有機溶媒、およびアルコール類を含む、請求項1に記載の方法によりRNAを単離するためのキット。
  8. 請求項1に記載のRNAの単離方法を実行するRNA単離装置。
JP2003133633A 2003-05-12 2003-05-12 Rnaの単離方法 Pending JP2004329176A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003133633A JP2004329176A (ja) 2003-05-12 2003-05-12 Rnaの単離方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003133633A JP2004329176A (ja) 2003-05-12 2003-05-12 Rnaの単離方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004329176A true JP2004329176A (ja) 2004-11-25

Family

ID=33508107

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003133633A Pending JP2004329176A (ja) 2003-05-12 2003-05-12 Rnaの単離方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004329176A (ja)

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009011210A (ja) * 2007-07-03 2009-01-22 Keio Gijuku Dna抽出方法及びそのためのキット
JP2011152142A (ja) * 2004-04-16 2011-08-11 Piotr Chomczynski 精製rnaの単離試薬及び方法
JP2012055308A (ja) * 2010-08-09 2012-03-22 Eiji Konishi Rna検出用試薬およびrna検出方法
JP2012223098A (ja) * 2011-04-15 2012-11-15 Eiji Konishi Rna検出用試薬およびrna検出方法
JP2012235743A (ja) * 2011-05-12 2012-12-06 Sumitomo Osaka Cement Co Ltd Rna検出用試薬およびrna検出方法
JP2012235716A (ja) * 2011-05-10 2012-12-06 Eiji Konishi Rna検出用試薬およびrna検出方法
WO2014142357A1 (ja) * 2013-03-15 2014-09-18 サントリーホールディングス株式会社 植物細胞壁の処理剤及び同処理剤を用いた物質デリバリー方法並びに物質デリバリーシステム
CN110964719A (zh) * 2019-12-26 2020-04-07 上海派森诺生物科技股份有限公司 一种改良Trizol法提取胚乳RNA方法
CN112522360A (zh) * 2020-02-06 2021-03-19 博尔诚(北京)科技有限公司 一种组合物、采样装置、试剂盒及居家病毒检测方法
CN114934041A (zh) * 2022-04-27 2022-08-23 北京金豪制药股份有限公司 一种核酸提取的试剂和方法

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011152142A (ja) * 2004-04-16 2011-08-11 Piotr Chomczynski 精製rnaの単離試薬及び方法
JP2009011210A (ja) * 2007-07-03 2009-01-22 Keio Gijuku Dna抽出方法及びそのためのキット
JP2012055308A (ja) * 2010-08-09 2012-03-22 Eiji Konishi Rna検出用試薬およびrna検出方法
JP2012223098A (ja) * 2011-04-15 2012-11-15 Eiji Konishi Rna検出用試薬およびrna検出方法
JP2012235716A (ja) * 2011-05-10 2012-12-06 Eiji Konishi Rna検出用試薬およびrna検出方法
JP2012235743A (ja) * 2011-05-12 2012-12-06 Sumitomo Osaka Cement Co Ltd Rna検出用試薬およびrna検出方法
WO2014142357A1 (ja) * 2013-03-15 2014-09-18 サントリーホールディングス株式会社 植物細胞壁の処理剤及び同処理剤を用いた物質デリバリー方法並びに物質デリバリーシステム
CN110964719A (zh) * 2019-12-26 2020-04-07 上海派森诺生物科技股份有限公司 一种改良Trizol法提取胚乳RNA方法
CN112522360A (zh) * 2020-02-06 2021-03-19 博尔诚(北京)科技有限公司 一种组合物、采样装置、试剂盒及居家病毒检测方法
CN114934041A (zh) * 2022-04-27 2022-08-23 北京金豪制药股份有限公司 一种核酸提取的试剂和方法
CN114934041B (zh) * 2022-04-27 2023-12-15 北京金豪制药股份有限公司 一种核酸提取的试剂和方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5950415B2 (ja) ワックス包埋サンプルからの核酸抽出
US5346994A (en) Shelf-stable product and process for isolating RNA, DNA and proteins
DK2539449T3 (en) PROCEDURE FOR PARALLEL ISOLATION AND CLEANING RNA AND DNA
WO1997005248A2 (en) Solution containing chaotropic agent and process using it for isolation of dna, rna and proteins
JP3714940B2 (ja) Rna抽出方法、および生体材料の分析方法
AU2006341291B2 (en) A method for rapid isolation of RNA and a kit thereof
US20150225712A1 (en) Method for isolating nucleic acids from a formaldehyde releaser stabilized sample
US20090202998A1 (en) Method for the extraction of biomolecules from fixed tissues
JP2020048579A (ja) 固定生物学的試料から生体分子を抽出するためのターゲット細胞または組織を決定するための方法
JP2002531126A (ja) 任意の複合的出発物質からの核酸の単離、ならびにその後の複合的遺伝子解析のための製剤および方法
EP2561334A1 (en) Products and methods for tissue preservation
JP2013523143A (ja) 核酸を単離および精製するための方法
JP2018520696A (ja) 粗さのある表面による核酸の迅速な単離のための方法および試験キット
JP2013528786A (ja) 核酸を単離および精製するためのクロマトグラフィーデバイスおよび方法
JP2004329176A (ja) Rnaの単離方法
EP2479274B1 (en) Nucleic acid purification
JP2013523144A (ja) 核酸の存在下で陰イオン界面活性剤イオンを沈殿させるための方法
CN104404030B (zh) 一种快速提取植物基因组dna的试剂盒及方法
JP5426668B2 (ja) Rna単離のための細胞溶解試薬
Ziros et al. A simple protocol for high efficiency protein isolation after RNA isolation from mouse thyroid and other very small tissue samples
Zhou et al. Preparation of rice plant genomic DNA for various applications
Gaikwad DNA extraction: Comparison of methodologies
Yokota Isolation of actin and actin-binding proteins
TR201606310A2 (tr) Genomik dna izolasyon yöntemi ve kiti.
Liao et al. Isolation of RNA from plant cell suspension cultures and calli by sonication

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060118

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20060118

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090121

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090622