JP2004327849A - 太陽電池およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステンレス基板を用いた、信頼性が高いCIS系太陽電池、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一主面に酸化被膜11aが形成されたステンレス基板11と、酸化被膜11a上に順に積層された絶縁層12、第1の電極層13、多層膜14および透光性の第2の電極層15とを含み、多層膜14が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含む化合物半導体層(p形化合物半導体層14a)を含む。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも一主面に酸化被膜11aが形成されたステンレス基板11と、酸化被膜11a上に順に積層された絶縁層12、第1の電極層13、多層膜14および透光性の第2の電極層15とを含み、多層膜14が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含む化合物半導体層(p形化合物半導体層14a)を含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、I−III−VI族化合物半導体を用いた太陽電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
Ib族元素、IIIb族元素およびVIb族元素からなるI−III−VI族化合物半導体薄膜(カルコパイライト構造化合物半導体薄膜)であるCuInSe2あるいはこれにGaを固溶させたCu(In,Ga)Se2を光吸収層に用いた薄膜太陽電池(以下、CIS系太陽電池という場合がある)が高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による変換効率の劣化がないという利点を有していることが報告されている。
【0003】
従来の高効率CIS系太陽電池では、一般に、基板としてソーダライムガラスが用いられている。しかし、ガラス基板を用いると、CIS系太陽電池の低コスト化は困難である。近年、CIS系太陽電池を低コストに製造する方法として、ステンレス基板を用いたロールトゥロール法が開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ステンレス基板を用いてCIS太陽電池を製造すると、基板から下部電極膜が剥離する場合があるという問題があった。このような状況に鑑み、本発明は、ステンレス基板を用いた、信頼性が高いCIS系太陽電池、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の太陽電池は、少なくとも一主面に酸化被膜が形成されたステンレス基板と、前記酸化被膜上に順に積層された絶縁層、第1の電極層、多層膜および透光性の第2の電極層とを含み、前記多層膜が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含む化合物半導体層を含むことを特徴とする。
【0006】
上記太陽電池では、前記ステンレス基板の両面に酸化被膜が形成されていてもよい。
【0007】
上記太陽電池では、前記第1の電極層がモリブデンからなるものでもよい。
【0008】
上記太陽電池では、前記酸化被膜が酸化クロムを含んでもよい。
【0009】
上記太陽電池では、前記絶縁層が、SiO2およびAl2O3から選ばれる少なくとも1つからなるものでもよい。
【0010】
上記太陽電池では、前記酸化被膜の厚さが0.1μmないし1μmであってもよい。
【0011】
上記太陽電池では、前記Ib族元素がCuであり、前記IIIb族元素がInおよびGaから選ばれる少なくとも1つの元素であり、前記VIb族元素がSeおよびSから選ばれる少なくとも1つの元素であってもよい。
【0012】
また、本発明の太陽電池の製造方法は、(i)ステンレス基板の少なくとも一主面を酸化することによって前記一主面に酸化被膜を形成する工程と、(ii)前記酸化被膜上に、絶縁層、第1の電極層、多層膜および透光性の第2の電極とをこの順序で積層する工程とを含み、前記多層膜が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含む化合物半導体層を含むことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の太陽電池について説明する。本発明の太陽電池の一例の断面図を図1に示す。
【0014】
図1の太陽電池10は、ステンレス基板11と、ステンレス基板11上に順に積層された絶縁層12、第1の電極層13、多層膜14および第2の電極層15とを含む。多層膜14は、基板側から順に積層されたp形化合物半導体層14aおよびバッファ層(または窓層)14bを備える。第1の電極層13上および第2の電極層15上には、それぞれ、取り出し電極16および17が形成されている。
【0015】
ステンレス基板11の一主面には、酸化被膜11aが形成されている。ステンレス基板は、鉄(Fe)を主成分とし、さらにCrなどの添加元素を含む。したがって、ステンレス基板を酸化することによって形成される酸化被膜11aは、酸化鉄や酸化クロムなどを含む。酸化被膜11aの厚さは、たとえば0.1μm〜1μm程度とすることができる。なお、酸化被膜11aは、ステンレス基板の両面に形成されてもよい。酸化被膜をステンレス基板の両面に形成することによって、放熱性を高めることができ、太陽電池の特性を向上させることができる。
酸化被膜11aは、酸素を含む雰囲気中、たとえば大気中や酸素ガス雰囲気中でステンレス基板を加熱することによって形成できる。加熱は、たとえば400℃〜700℃程度の温度で行えばよい。好ましい加熱時間は、加熱雰囲気や加熱温度によって異なるが、一例では5分〜30分程度とすることができる。
【0016】
絶縁層12は、酸化シリコン(SiO2)や酸化アルミニウム(Al2O3)で形成できる。これらの層は、たとえばスパッタ法やゾル−ゲル法といった方法によって形成できる。絶縁層12の厚さは、たとえば0.5μm〜2μm程度とすることができる。
【0017】
第1の電極層13は導電性の材料で形成でき、たとえばモリブデン(Mo)などの金属で形成できる。第1の電極層13は、蒸着法やスパッタ法で形成できる。
【0018】
p形化合物半導体層14aは、光吸収層として機能する層であり、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含むカルコパイライト構造半導体で形成できる。より具体的には、CuInSe2、またはこれにGaを固溶したCu(In,Ga)Se2、あるいはこれらのSeの一部を硫黄(S)で置き換えた半導体を用いることができる。これらは、公知の蒸着法またはスパッタ法によって形成できる。
【0019】
バッファ層14bは、たとえば、CdS、ZnO、Zn(O,OH)、Zn(O,OH,S)、ZnMgO等の少なくともII族元素とVIb族元素とを含む化合物で形成できる。これらは、たとえば化学浴析出法やスパッタ法で形成できる。
【0020】
第2の電極層15は、透光性の導電材料で形成できる。具体的には、ZnO膜、ZnO:Al膜、ITO膜などの透明導電膜を用いることができ、これらはスパッタ法やCVD法などによって形成できる。取り出し電極16および17は、それぞれ金属などで形成できる。
【0021】
太陽電池を製造するための本発明の製造方法は、(i)ステンレス基板11の少なくとも一主面を酸化することによってその一主面に酸化被膜11aを形成する工程と、(ii)酸化被膜11a上に、絶縁層12、第1の電極層13、多層膜14および透光性の第2の電極15とをこの順序で積層する工程とを含む。各層の材料および形成方法は上述した通りである。
【0022】
本発明の太陽電池は、ステンレス基板のうち太陽電池が形成される側の一主面に酸化被膜が形成されており、その上に絶縁層が形成されている。このため、基板上に形成された下部電極膜が基板から剥離することを防止でき、製造が容易で信頼性が高い太陽電池が得られる。
【0023】
以上、本発明の太陽電池の一例について説明したが、本発明の太陽電池は図1に示した太陽電池に限定されない。たとえば多層膜14は、pn接合を含むものであればよい。また、本発明の太陽電池は、直列接続された複数のユニットセルが基板上に形成された集積型の太陽電池であってもよい。
【0024】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
【0025】
(実施例1)
実施例1では、酸化被膜を備えるステンレス基板上に、モリブデンからなる第1の電極層を形成した一例について説明する。
【0026】
まず、酸素雰囲気中で、ステンレス基板を500℃で15分間加熱して厚さ0.3μmの酸化クロムからなる被膜を形成した。この被膜上に、ゾルゲル法によって、厚さ1μmのSiO2膜を形成した。さらに、SiO2膜上に、スパッタ法によって、厚さ0.4μmのMo薄膜を形成した。この方法で形成した膜には、剥離は見られなかった。
【0027】
(実施例2)
実施例2では、本発明の太陽電池を作製した一例について説明する。
【0028】
実施例2では、実施例1と同様の方法で、ステンレス基板上に、酸化クロムからなる被膜(厚さ0.3μm)と、SiO2膜(厚さ1μm)と、Mo膜(厚さ0.4μm)とを形成した。なお、実施例2では、基板の両面に酸化クロムからなる被膜を形成した。この基板を用いて太陽電池を作製した。また、比較のために、ステンレス基板と絶縁層(SiO2膜)との間に酸化被膜(酸化クロム膜)を形成しなかった基板を用いて比較例の太陽電池を作製した。以下、太陽電池の作製方法について説明する。
【0029】
まず、Mo膜上に、蒸着法によってCIGS膜を形成した。CIGS膜の製膜温度は575℃であった。
【0030】
次に、Inを含む化合物(塩)である塩化インジウム(InCl3)を含有する溶液を用意した。溶液中の塩化インジウムの濃度は0.015M、pHは1.9とした。この溶液を入れた容器を75℃に保った温水槽に静置した。この溶液に、CuInSe2薄膜を形成した基板を約10秒間浸漬した。この処理によって、表面にCuInS2膜が形成される。その後、溶液から基板を引き上げて純水で洗浄した。この処理中、酸化被膜がない基板を用いた試料では、20%(5枚に1枚)の割合でMo膜の剥離が生じた。一方、酸化被膜を形成した試料では剥離は生じなかった。
【0031】
次に、カドミウムを含む化合物(塩)である硫酸カドミウム(CdSO4)とアンモニアとを含有する溶液を用意した。溶液中の硫酸カドミウムの濃度は0.001M、アンモニアの濃度は1Mとした。この溶液を入れた容器を85℃に保った温水槽に静置した。この溶液に、I−III−VI族半導体薄膜を形成した基板を約6分間浸漬した。この処理によって、CdS膜が形成される。その後、溶液から基板を引き上げて純水で洗浄した。
【0032】
この処理中、酸化被膜がない試料では、15%の割合でMo膜の剥離がさらに生じた。一方、酸化被膜を形成した試料では剥離は生じなかった。
【0033】
酸化被膜を形成した基板を用いた試料について、さらに、ZnO膜(膜厚100nm)と、透明導電膜であるITO膜(膜厚100nm)とをスパッタ法によって形成した。スパッタの条件は、ZnO膜形成時は、アルゴンガス圧2.7Pa(2×10−2Torr)、高周波パワー400Wとした。また、ITO膜形成時は、アルゴンガス圧1.1Pa(8×10−3Torr)、高周波パワー400Wとした。その後、NiCr膜とAu膜とを電子ビーム蒸着法によって積層することによって2つの取り出し電極を形成した。
【0034】
このようにして作製した太陽電池に、AM1.5、100mW/cm2の疑似太陽光を照射して太陽電池特性を測定した。その結果、短絡電流34.2mA/cm2、開放電圧0.58V、曲線因子0.69、変換効率13.7%であった。この特性は、ガラス基板上に形成したCIGS太陽電池の特性と同じである。
【0035】
基板の裏面に酸化被膜を形成しなかった太陽電池について、同様の評価を行ったところ、変換効率が1%程度低かった。これは、基板の裏面に酸化被膜を形成した場合と比較して、基板の放熱性が低いからである。
【0036】
なお、本実施例では、酸化被膜として酸化クロムを用い、絶縁層としてSiO2膜を用いた場合について説明したが、酸化被膜として酸化鉄膜を用いても上記実施例と同様に高効率の太陽電池が得られ、絶縁層としてAl2O3膜を用いても上記実施例と同様に高効率の太陽電池が得られる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず本発明の技術的思想に基づき他の実施形態に適用することができる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ステンレス基板と絶縁層との間に酸化被膜を形成することによって下部電極膜の剥離を防止することができ、その結果として、製造が容易で効率の高い太陽電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の太陽電池の一例の断面を示す図である。
【符号の説明】
10 太陽電池
11 ステンレス基板
11a 酸化被膜
12 絶縁層
13 第1の電極層
14 多層膜
14a p形化合物半導体層
14b バッファ層
15 第2の電極層
16、17 取り出し電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、I−III−VI族化合物半導体を用いた太陽電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
Ib族元素、IIIb族元素およびVIb族元素からなるI−III−VI族化合物半導体薄膜(カルコパイライト構造化合物半導体薄膜)であるCuInSe2あるいはこれにGaを固溶させたCu(In,Ga)Se2を光吸収層に用いた薄膜太陽電池(以下、CIS系太陽電池という場合がある)が高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による変換効率の劣化がないという利点を有していることが報告されている。
【0003】
従来の高効率CIS系太陽電池では、一般に、基板としてソーダライムガラスが用いられている。しかし、ガラス基板を用いると、CIS系太陽電池の低コスト化は困難である。近年、CIS系太陽電池を低コストに製造する方法として、ステンレス基板を用いたロールトゥロール法が開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ステンレス基板を用いてCIS太陽電池を製造すると、基板から下部電極膜が剥離する場合があるという問題があった。このような状況に鑑み、本発明は、ステンレス基板を用いた、信頼性が高いCIS系太陽電池、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の太陽電池は、少なくとも一主面に酸化被膜が形成されたステンレス基板と、前記酸化被膜上に順に積層された絶縁層、第1の電極層、多層膜および透光性の第2の電極層とを含み、前記多層膜が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含む化合物半導体層を含むことを特徴とする。
【0006】
上記太陽電池では、前記ステンレス基板の両面に酸化被膜が形成されていてもよい。
【0007】
上記太陽電池では、前記第1の電極層がモリブデンからなるものでもよい。
【0008】
上記太陽電池では、前記酸化被膜が酸化クロムを含んでもよい。
【0009】
上記太陽電池では、前記絶縁層が、SiO2およびAl2O3から選ばれる少なくとも1つからなるものでもよい。
【0010】
上記太陽電池では、前記酸化被膜の厚さが0.1μmないし1μmであってもよい。
【0011】
上記太陽電池では、前記Ib族元素がCuであり、前記IIIb族元素がInおよびGaから選ばれる少なくとも1つの元素であり、前記VIb族元素がSeおよびSから選ばれる少なくとも1つの元素であってもよい。
【0012】
また、本発明の太陽電池の製造方法は、(i)ステンレス基板の少なくとも一主面を酸化することによって前記一主面に酸化被膜を形成する工程と、(ii)前記酸化被膜上に、絶縁層、第1の電極層、多層膜および透光性の第2の電極とをこの順序で積層する工程とを含み、前記多層膜が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含む化合物半導体層を含むことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の太陽電池について説明する。本発明の太陽電池の一例の断面図を図1に示す。
【0014】
図1の太陽電池10は、ステンレス基板11と、ステンレス基板11上に順に積層された絶縁層12、第1の電極層13、多層膜14および第2の電極層15とを含む。多層膜14は、基板側から順に積層されたp形化合物半導体層14aおよびバッファ層(または窓層)14bを備える。第1の電極層13上および第2の電極層15上には、それぞれ、取り出し電極16および17が形成されている。
【0015】
ステンレス基板11の一主面には、酸化被膜11aが形成されている。ステンレス基板は、鉄(Fe)を主成分とし、さらにCrなどの添加元素を含む。したがって、ステンレス基板を酸化することによって形成される酸化被膜11aは、酸化鉄や酸化クロムなどを含む。酸化被膜11aの厚さは、たとえば0.1μm〜1μm程度とすることができる。なお、酸化被膜11aは、ステンレス基板の両面に形成されてもよい。酸化被膜をステンレス基板の両面に形成することによって、放熱性を高めることができ、太陽電池の特性を向上させることができる。
酸化被膜11aは、酸素を含む雰囲気中、たとえば大気中や酸素ガス雰囲気中でステンレス基板を加熱することによって形成できる。加熱は、たとえば400℃〜700℃程度の温度で行えばよい。好ましい加熱時間は、加熱雰囲気や加熱温度によって異なるが、一例では5分〜30分程度とすることができる。
【0016】
絶縁層12は、酸化シリコン(SiO2)や酸化アルミニウム(Al2O3)で形成できる。これらの層は、たとえばスパッタ法やゾル−ゲル法といった方法によって形成できる。絶縁層12の厚さは、たとえば0.5μm〜2μm程度とすることができる。
【0017】
第1の電極層13は導電性の材料で形成でき、たとえばモリブデン(Mo)などの金属で形成できる。第1の電極層13は、蒸着法やスパッタ法で形成できる。
【0018】
p形化合物半導体層14aは、光吸収層として機能する層であり、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含むカルコパイライト構造半導体で形成できる。より具体的には、CuInSe2、またはこれにGaを固溶したCu(In,Ga)Se2、あるいはこれらのSeの一部を硫黄(S)で置き換えた半導体を用いることができる。これらは、公知の蒸着法またはスパッタ法によって形成できる。
【0019】
バッファ層14bは、たとえば、CdS、ZnO、Zn(O,OH)、Zn(O,OH,S)、ZnMgO等の少なくともII族元素とVIb族元素とを含む化合物で形成できる。これらは、たとえば化学浴析出法やスパッタ法で形成できる。
【0020】
第2の電極層15は、透光性の導電材料で形成できる。具体的には、ZnO膜、ZnO:Al膜、ITO膜などの透明導電膜を用いることができ、これらはスパッタ法やCVD法などによって形成できる。取り出し電極16および17は、それぞれ金属などで形成できる。
【0021】
太陽電池を製造するための本発明の製造方法は、(i)ステンレス基板11の少なくとも一主面を酸化することによってその一主面に酸化被膜11aを形成する工程と、(ii)酸化被膜11a上に、絶縁層12、第1の電極層13、多層膜14および透光性の第2の電極15とをこの順序で積層する工程とを含む。各層の材料および形成方法は上述した通りである。
【0022】
本発明の太陽電池は、ステンレス基板のうち太陽電池が形成される側の一主面に酸化被膜が形成されており、その上に絶縁層が形成されている。このため、基板上に形成された下部電極膜が基板から剥離することを防止でき、製造が容易で信頼性が高い太陽電池が得られる。
【0023】
以上、本発明の太陽電池の一例について説明したが、本発明の太陽電池は図1に示した太陽電池に限定されない。たとえば多層膜14は、pn接合を含むものであればよい。また、本発明の太陽電池は、直列接続された複数のユニットセルが基板上に形成された集積型の太陽電池であってもよい。
【0024】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
【0025】
(実施例1)
実施例1では、酸化被膜を備えるステンレス基板上に、モリブデンからなる第1の電極層を形成した一例について説明する。
【0026】
まず、酸素雰囲気中で、ステンレス基板を500℃で15分間加熱して厚さ0.3μmの酸化クロムからなる被膜を形成した。この被膜上に、ゾルゲル法によって、厚さ1μmのSiO2膜を形成した。さらに、SiO2膜上に、スパッタ法によって、厚さ0.4μmのMo薄膜を形成した。この方法で形成した膜には、剥離は見られなかった。
【0027】
(実施例2)
実施例2では、本発明の太陽電池を作製した一例について説明する。
【0028】
実施例2では、実施例1と同様の方法で、ステンレス基板上に、酸化クロムからなる被膜(厚さ0.3μm)と、SiO2膜(厚さ1μm)と、Mo膜(厚さ0.4μm)とを形成した。なお、実施例2では、基板の両面に酸化クロムからなる被膜を形成した。この基板を用いて太陽電池を作製した。また、比較のために、ステンレス基板と絶縁層(SiO2膜)との間に酸化被膜(酸化クロム膜)を形成しなかった基板を用いて比較例の太陽電池を作製した。以下、太陽電池の作製方法について説明する。
【0029】
まず、Mo膜上に、蒸着法によってCIGS膜を形成した。CIGS膜の製膜温度は575℃であった。
【0030】
次に、Inを含む化合物(塩)である塩化インジウム(InCl3)を含有する溶液を用意した。溶液中の塩化インジウムの濃度は0.015M、pHは1.9とした。この溶液を入れた容器を75℃に保った温水槽に静置した。この溶液に、CuInSe2薄膜を形成した基板を約10秒間浸漬した。この処理によって、表面にCuInS2膜が形成される。その後、溶液から基板を引き上げて純水で洗浄した。この処理中、酸化被膜がない基板を用いた試料では、20%(5枚に1枚)の割合でMo膜の剥離が生じた。一方、酸化被膜を形成した試料では剥離は生じなかった。
【0031】
次に、カドミウムを含む化合物(塩)である硫酸カドミウム(CdSO4)とアンモニアとを含有する溶液を用意した。溶液中の硫酸カドミウムの濃度は0.001M、アンモニアの濃度は1Mとした。この溶液を入れた容器を85℃に保った温水槽に静置した。この溶液に、I−III−VI族半導体薄膜を形成した基板を約6分間浸漬した。この処理によって、CdS膜が形成される。その後、溶液から基板を引き上げて純水で洗浄した。
【0032】
この処理中、酸化被膜がない試料では、15%の割合でMo膜の剥離がさらに生じた。一方、酸化被膜を形成した試料では剥離は生じなかった。
【0033】
酸化被膜を形成した基板を用いた試料について、さらに、ZnO膜(膜厚100nm)と、透明導電膜であるITO膜(膜厚100nm)とをスパッタ法によって形成した。スパッタの条件は、ZnO膜形成時は、アルゴンガス圧2.7Pa(2×10−2Torr)、高周波パワー400Wとした。また、ITO膜形成時は、アルゴンガス圧1.1Pa(8×10−3Torr)、高周波パワー400Wとした。その後、NiCr膜とAu膜とを電子ビーム蒸着法によって積層することによって2つの取り出し電極を形成した。
【0034】
このようにして作製した太陽電池に、AM1.5、100mW/cm2の疑似太陽光を照射して太陽電池特性を測定した。その結果、短絡電流34.2mA/cm2、開放電圧0.58V、曲線因子0.69、変換効率13.7%であった。この特性は、ガラス基板上に形成したCIGS太陽電池の特性と同じである。
【0035】
基板の裏面に酸化被膜を形成しなかった太陽電池について、同様の評価を行ったところ、変換効率が1%程度低かった。これは、基板の裏面に酸化被膜を形成した場合と比較して、基板の放熱性が低いからである。
【0036】
なお、本実施例では、酸化被膜として酸化クロムを用い、絶縁層としてSiO2膜を用いた場合について説明したが、酸化被膜として酸化鉄膜を用いても上記実施例と同様に高効率の太陽電池が得られ、絶縁層としてAl2O3膜を用いても上記実施例と同様に高効率の太陽電池が得られる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず本発明の技術的思想に基づき他の実施形態に適用することができる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ステンレス基板と絶縁層との間に酸化被膜を形成することによって下部電極膜の剥離を防止することができ、その結果として、製造が容易で効率の高い太陽電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の太陽電池の一例の断面を示す図である。
【符号の説明】
10 太陽電池
11 ステンレス基板
11a 酸化被膜
12 絶縁層
13 第1の電極層
14 多層膜
14a p形化合物半導体層
14b バッファ層
15 第2の電極層
16、17 取り出し電極
Claims (8)
- 少なくとも一主面に酸化被膜が形成されたステンレス基板と、前記酸化被膜上に順に積層された絶縁層、第1の電極層、多層膜および透光性の第2の電極層とを含み、
前記多層膜が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含む化合物半導体層を含むことを特徴とする太陽電池。 - 前記ステンレス基板の両面に酸化被膜が形成されている請求項1に記載の太陽電池。
- 前記第1の電極層がモリブデンからなる請求項1に記載の太陽電池。
- 前記酸化被膜が酸化クロムを含む請求項1に記載の太陽電池。
- 前記絶縁層が、SiO2およびAl2O3から選ばれる少なくとも1つからなる請求項1に記載の太陽電池。
- 前記酸化被膜の厚さが0.1μmないし1μmである請求項1に記載の太陽電池。
- 前記Ib族元素がCuであり、前記IIIb族元素がInおよびGaから選ばれる少なくとも1つの元素であり、前記VIb族元素がSeおよびSから選ばれる少なくとも1つの元素である請求項1ないし6のいずれかに記載の太陽電池。
- (i)ステンレス基板の少なくとも一主面を酸化することによって前記一主面に酸化被膜を形成する工程と、
(ii)前記酸化被膜上に、絶縁層、第1の電極層、多層膜および透光性の第2の電極とをこの順序で積層する工程とを含み、
前記多層膜が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含む化合物半導体層を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
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