JP2004103663A - 太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】基板から膜が剥離する問題のない薄膜基板を用いた太陽電池を提供する。
【解決手段】薄膜基板1と裏面電極2であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜4を形成した太陽電池。
【選択図】 図3
【解決手段】薄膜基板1と裏面電極2であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜4を形成した太陽電池。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
Ib族、IIIb族およびVIb族元素からなる化合物半導体薄膜(カルコパイライト構造化合物半導体薄膜)であるCuInSe2(以下CISと略称する)あるいはGaを固溶させたCu(In,Ga)Se2(以下CIGSと略称する)を光吸収層に用いた薄膜太陽電池が高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による変換効率の劣化がないという利点を有していることが報告されている。
【0003】
従来のCISまたはCIGS太陽電池では基板にガラスを用いたものが一般的である。
【0004】
代表的な、従来のCIGS太陽電池ないしCIS太陽電池の一例の断面図を図5に示した。
【0005】
図5に示したCIGS太陽電池ないしCIS太陽電池は、1aがガラス基板であり、その上にモリブデン薄膜からなる裏面電極2が形成され、更にその上に、順次、CIGSないしCIS等からなるp型半導体層である光吸収層5、CdS等からなるn型半導体層6、ZnOなどからなる窓層7、ITO(インジウム−錫−酸化物)などからなる表面透明電極8、9が表面透明電極8に接続したn側の取り出し電極、10が裏面電極2に接続したp側の取り出し電極からなる。
【0006】
しかし、CISまたはCIGS太陽電池はCISないしCIGS層を、例えばCVD法(化学気相成長法)等で形成できることなど、製造方法の特徴から薄膜ステンレスや有機フィルム等のフレキシブル基板上に形成することができる。フレキシブル基板に形成したCIGS太陽電池については、例えばM.Powallaらがまとめた文献がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
【非特許文献1】
エム.ポワラ(M.Powalla)、ビー.ダイマー(B.Dimmer)共著、「プロシーディング・オブ・セヴンティース・ヨーロッピアン・フォトボルテイク・ソーラ・エネルギー・カンファレンス、ミュンヘン(Proceeding of Seventeeth European Photovoltaic Solar Energy Conference,Munich)」コピーライト 2002 ダブリュアイピー−ミュンヘン アンド イーティーエー−フローレンス、イタリー(copyright 2002 WIP−Munichand ETA−Florence, Italy) 2001年、 p.983
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の文献に示されるように、フレキシブル基板上に作製したCIGS太陽電池の変換効率はガラス基板上に作製したものに比べて低い。
【0009】
高効率CISまたはCIGS太陽電池を作製するためには、基板温度を500℃以上に加熱して、CISまたはCIGS膜を形成する必要があり、そのため例えばステンレス基板などを用いると熱膨張率の違いから膜作製後、冷却すると基板から膜が剥離するという問題が生じる。
【0010】
本発明は、基板から膜が剥離する問題のない薄膜基板を用いた太陽電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の第1の太陽電池は、薄膜基板と裏面電極であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜を形成したことを特徴とする。
【0012】
また本発明の第2の太陽電池は、絶縁層を少なくとも上面側に形成した薄膜基板と裏面電極であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜を形成したことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
上記の構成によれば薄膜基板とモリブデンの熱膨張率の違いにより基板冷却時にモリブデンを含む上層の膜が剥離することはない。すなわち太陽電池製造時、500〜600℃の高温に薄膜基板が加熱されるが、薄膜基板とモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜(以下、低融点層と略称することがある)を有するので、上記、高温時には、低融点層が溶融または軟化して、薄膜基板とモリブデンの熱膨張率の違いにより発生する応力を緩和し、基板冷却時にその上部層が剥離することを防止することができる。
【0014】
また、絶縁層を形成した薄膜基板とモリブデン薄膜の間に融点が400℃以下の薄膜(低融点層)を形成してもよく、低融点層は同様の応力緩和機能を発揮し、基板冷却時に絶縁層形成した薄膜基板から、その上部層が剥離することを防止することができる。なお、薄膜基板上に絶縁層を形成することにより薄膜基板が導電性であっても一つの基板上に太陽電池の直列接続構造を作ることができ好ましい。直列接続構造とすると、出力電圧を高くした太陽電池が得られる。
【0015】
薄膜基板としては、ステンレス、アルミニウムホイル、コバルト膜、ポリイミドフィルムなど、耐熱性のあるものが好ましく、ステンレス薄膜は、比較的安価でありながら、軽量であり高温にも耐えることができ、強度的にもすぐれているため特に太陽電池用に適しており好ましい。薄膜基板の厚さは、素材の種類によっても異なり、特に限定するものではないが、強度、重量なども考慮して、通常、20μm〜100μmのものが好ましい。
【0016】
このような薄膜基板を用いた太陽電池は、基板の軽量性に優れ、太陽電池を曲面に施工して取り付ける場合にも施工が可能で容易となる。また、薄膜基板は可撓性を有するので基板をロール状にして連続的に太陽電池を形成できるため、生産が容易になり、生産された太陽電池もロール状に巻き取って保管できるので、保管、運搬なども含めて生産性に優れ好ましい。
【0017】
導電性の基板を用いる場合には、必要に応じて絶縁層をその表面に形成してもよく、絶縁層としてはSiO2またはAl2O3の少なくとも一つであることが好ましい。これらを用いると絶縁性に優れた絶縁層を形成することができる。
【0018】
絶縁層の厚みは特に限定するものではないが、通常、0.01μm〜0.5μm程度が好ましい。
【0019】
低融点層は融点または軟化点が400℃以下の常温では固体の薄膜からなる。低融点層の素材としては、500〜600℃の高温で劣化しない無機物からなる薄膜が好ましく、融点または軟化点が400℃以下の金属、その合金、ガラス等が好適である。ガラスの場合、軟化点は、通常、粘性率(η)が、4.5×107poiseになるときの温度が軟化点として採用されている。
【0020】
低融点層の素材としては、特に、In、Snあるいはそれらの合金であることが好ましい。Inの融点は約157℃、Snの融点は約232℃と非常に低く、これらの合金はさらに融点が低く、またこれらの薄膜は作製が容易である。
【0021】
Snをもちいた合金としては、融点が400℃以下のSn−Pb、Sn−Bi、Sn−In−Ag、Sn−Bi−Zn、Sn−Zn、Sn−Ag−Bi、Sn−Bi−Ag−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−Cu−Sb、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Sb等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
低融点層の厚みは特に限定するものではないが、厚みが厚すぎると、溶融または軟化時に流動や変形が生じることがあるので、通常、0.01μm〜0.5μm程度が好ましい。
【0023】
裏面電極であるモリブデン薄膜の厚みも特に限定するものではないが、通常、0.2μm〜1μm程度が好ましい。裏面電極としてモリブデン薄膜は、オーミックコンタクトが可能であり、CIS膜やCIGS膜などの化合物半導体層への拡散の恐れもなく、また、CIS膜やCIGS膜などの化合物半導体層との熱膨張率の差も比較的小さく、化合物半導体層との剥離などのおそれが少ないので、裏面電極としてはモリブデン薄膜を用いることが必要である。
【0024】
図1に本発明の太陽電池の薄膜基板とモリブデン薄膜までの部分の一例を示す断面図を示した(モリブデン薄膜より上の半導体層ほかは示していない)。1が薄膜基板であり、2がモリブデン薄膜からなる裏面電極であり、薄膜基板1とモリブデン薄膜2との間に低融点層4(融点または軟化点が400℃以下の薄膜)が形成されている。
【0025】
また図2に本発明の太陽電池の薄膜基板とモリブデン薄膜までの部分の別の一例を示す断面図を示した(モリブデン薄膜より上の半導体層ほかは示していない)。図2に示したものは、薄膜基板が導電性の薄膜基板の場合に、絶縁層を薄膜基板の上面側に形成したものであり、1が薄膜基板であり、3が薄膜基板上面に形成された絶縁層、2がモリブデン薄膜からなる裏面電極であり、薄膜基板1の上面に形成された絶縁層とモリブデン薄膜2との間に低融点層4(融点または軟化点が400℃以下の薄膜)が形成されている。
【0026】
これらの薄膜基板と低融点層、モリブデン薄膜を用いた本発明の太陽電池の一実施の形態例の断面図を図3に示した。
【0027】
図3に示した太陽電池は、図1に示した薄膜基板と低融点層、モリブデン薄膜を用いた例である。
【0028】
薄膜基板1の上に、低融点層4が設けられ、その上に裏面電極であるモリブデン薄膜2が設けられている。更にその上に、順次、CIGS等からなるp型半導体層である光吸収層5、CdS等からなるn型半導体層6、ZnOなどからなる窓層7、ITO(インジウム−錫−酸化物)などからなる表面透明電極8が設けられ、表面透明電極8に接続したn側の取り出し電極9、裏面電極であるモリブデン薄膜2に接続したp側の取り出し電極10が設けられている。この太陽電池において、CIGS等からなるp型半導体層である光吸収層5等を形成する場合に、基板の温度を500〜600℃程度の高温にする必要があるが、低融点層4が設けられていることにより、薄膜基板とモリブデンの熱膨張率の違いにより発生する応力を緩和し、基板冷却時にその上部層が剥離することを防止することができる。
【0029】
また、図4に本発明の太陽電池の別の一実施の形態例を示した。図4(a)が断面図、図4(b)がその主要部の回路を示す模式的回路図である。
【0030】
図4に示した太陽電池は、図2に示した絶縁層が上面側に形成された薄膜基板と低融点層、モリブデン薄膜を用いた例であって、また、一つの基板上に太陽電池の直列接続構造を作った態様である。
【0031】
図4(a)に示したように、薄膜基板1の上に、絶縁層3、低融点層4が設けられ、その上に裏面電極であるモリブデン薄膜2が設けられている。更にその上に、順次、CIGS等からなるp型半導体層である光吸収層5、CdS等からなるn型半導体層6、ZnOなどからなる窓層7、ITO(インジウム−錫−酸化物)などからなる表面透明電極8が設けられているが、これらの層は、光吸収層5を含めてそれより上の層5、6,7、8(これらをまとめて太陽電池層と略称する)は薄膜基板上に、複数個(太陽電池層20、21、22)設けられており、複数個の太陽電池層20、21、22等が、太陽電池の直列接続構造となるように、裏面電極であるモリブデン薄膜2(本例の場合、低融点層4も含めて)が、複数個の太陽電池層20、21、22等のそれぞれの範囲の下方で切断されており、モリブデン薄膜2が切断されている部分11には、CIGS等からなるp型半導体層である光吸収層5が埋め込まれている。また複数個の太陽電池層20、21、22のそれぞれも、ITO(インジウム−錫−酸化物)などからなる表面透明電極8が下方に伸びている部分12を有し、右隣の太陽電池層の光吸収層5の下に設けられていて且つ左隣側の太陽電池層の下部に延在するモリブデン薄膜2の上面に表面透明電極8が下方に伸びている部分12が接続されている構造となっている。図4(b)にその主要部の回路を示す模式的回路図を示したように、一つの基板上に太陽電池の直列接続構造が作製されている。直列接続構造とすると、出力電圧を高くした太陽電池が得られる。これらの直列接続構造とした太陽電池においても、CIGS等からなるp型半導体層である光吸収層5等を形成する場合に、基板の温度を500〜600℃程度の高温にする必要があるが、低融点層4が設けられていることにより、薄膜基板とモリブデンの熱膨張率の違いにより発生する応力を緩和し、基板冷却時にその上部層が剥離することを防止することができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に記載のもののみに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
本実施例では、図3で示したタイプの太陽電池で、ステンレス基板上に低融点層としてInを蒸着し、さらにその上にスパッタ法でモリブデン薄膜を形成し、さらにその上にCIGS膜を形成したタイプの太陽電池の一例について説明する。
【0034】
厚さ50μmのステンレス基板に低融点層として蒸着法でIn膜を蒸着した。In膜の膜厚は0.1μmであった。この上にスパッタ法で裏面電極として膜厚0.4μmのMo薄膜を形成した。Mo膜上にp型半導体層である光吸収層として蒸着法により膜厚2μmのCIGS膜を形成した。CIGS膜の製膜温度(基板温度)は575℃であった。比較として低融点層であるIn膜無しの試料も作製した。In膜を形成した試料では膜の剥離は見られなかった。In膜無しの試料では試料作製室から基板を取り出した後、約50%の試料がステンレス基板から剥離した。
【0035】
さらに太陽電池を作製するために、剥離せずに残った試料について以下のプロセスを行った。
【0036】
Inを含む化合物(塩)である塩化インジウム(InCl3)とチオアセトアミドを含有する水溶液を用意した。水溶液中の塩化インジウムの濃度は0.005M、チオアセトアミドの濃度は0.1M、pHは1.9とした。この水溶液を入れた容器を75℃に保った温水槽に静置した。この水溶液にCIGS薄膜を形成した基板を、約10秒間浸漬した。その後、溶液から前記基板を引き上げて純水で洗浄した。なお、この操作は、Cu(In,Ga)Se2膜の表面に膜厚約5nmのCu(In,Ga)S2膜を形成し、この膜の形成によるパッシベーション効果とオールバリヤー効果により特性を向上させるための操作である。
【0037】
この処理中、In膜無しの試料では、さらに30%の試料が剥離した。In膜を形成した試料では剥離はなかった。
【0038】
次に、カドミウムを含む化合物(塩)である硫酸カドミウム(CdSO4)とアンモニアを含有する水溶液を用意した。水溶液中の硫酸カドミウムの濃度は0.001M、アンモニアの濃度は1Mとした。この溶液を入れた容器を85℃に保った温水槽に静置した。この溶液に前記化合物薄膜を形成した基板を約6分間浸漬した。その後、溶液から基板を引き上げて純水で洗浄し、CdSからなるn型半導体層を形成した。
【0039】
この処理中、In膜無しの試料では、さらに20%の試料が基板から剥離し、結局、In膜無しの試料は、すべての試料が剥離を生じた。In膜を形成した試料では剥離は生じなかった。
【0040】
In膜を形成した試料については、さらに、窓層としてZnO膜(膜厚100nm)および表面透明電極となる透明導電膜であるITO(膜厚100nm)をスパッタリング法によって形成した。スパッタの条件はZnO膜形成時はアルゴンガス圧1.5×10−4Pa(2×10−2Torr)、高周波パワー400W、ITO膜形成時はアルゴンガス圧6×10−5Pa(8×10−3Torr)、高周波パワー400Wによって形成した。その後、裏面電極であるモリブデン薄膜上の一部に取り出し電極であるp側電極およびITO膜上の一部に取り出し電極であるn側電極として、それぞれNiCr膜とAu膜とを電子ビーム蒸着法によって積層することによって太陽電池を形成した。
【0041】
このようにして作製した太陽電池に、AM1.5、100mW/cm2の疑似太陽光を照射して太陽電池特性を測定した。
【0042】
上記の方法によって作製した太陽電池の特性を評価した結果、短絡電流33.8mA/cm2、開放電圧0.61V、曲線因子0.67、変換効率13.8%であった。この特性はガラス基板上に形成したCIGS太陽電池の特性と同じである。
【0043】
本実施例は、ステンレス薄膜基板上にモリブデン膜を形成し、その上にCIGS膜を形成して太陽電池を作製した例について説明したが、ステンレス薄膜基板上に絶縁層を形成した薄膜基板を用いた場合でも同様の効果が得られた。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、薄膜基板と裏面電極であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜を形成した本発明の太陽電池によれば、太陽電池作製時に基板とモリブデン薄膜を含む層との間の応力を緩和することができるため、基板からのモリブデン薄膜を含む層の剥離の生じない、薄膜基板を用いた太陽電池を提供することができる。
【0045】
また、絶縁層を少なくとも上面側に形成した薄膜基板と裏面電極であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜を形成した本発明の太陽電池によれば、太陽電池作製時に絶縁層が形成された基板とモリブデン薄膜を含む層との間の応力を緩和することができるため、絶縁層が形成された基板からのモリブデン薄膜を含む層の剥離の生じない、薄膜基板を用いた太陽電池を提供することができる。また、薄膜基板上に絶縁層を形成することにより薄膜基板が導電性であっても一つの基板上に太陽電池の直列接続構造を作ることもでき好ましい。
【0046】
また、前記本発明の太陽電池において、融点または軟化点が400℃以下の薄膜が、500〜600℃の高温で劣化しない無機物からなる薄膜である本発明の好ましい態様とすることにより、低融点層の熱による劣化が生じることがなく、また長期の耐久性も良好な太陽電池とすることができ好ましい。
【0047】
また、前記本発明の太陽電池において、融点または軟化点が400℃以下の薄膜が、金属、その合金、ガラスから選ばれた薄膜である本発明の好ましい態様とすることにより、これらの低融点層は熱による劣化が生じることがなく、また、長期の耐久性も良好で、しかも、容易に薄膜形成が可能であり、応力緩和機能も良好であり好ましい。
【0048】
また、前記本発明の太陽電池において、融点または軟化点が400℃以下の薄膜が、In、Snあるいはそれらの合金から選ばれた薄膜である本発明の好ましい態様とすることにより、これらは、融点の低いものが容易に入手可能で、薄膜作製も容易であり、応力緩和機能も良好であり好ましい。
【0049】
また、前記本発明の太陽電池において、薄膜基板がステンレスからなる薄膜基板である本発明の好ましい態様とすることにより、ステンレス薄膜は軽量であり、コストが比較的安く、高温にも耐えることができ、強度、耐久性に優れ、薄膜にした場合にフレキシビリティも良好で、太陽電池を曲面に施工して取り付ける場合にも施工が可能で容易となり、また、基板をロール状にして連続的に供給し、連続的に太陽電池を形成できるため、生産が容易になり、生産された太陽電池もロール状に巻き取って保管できるので、保管、運搬なども含めて生産性に優れ好ましい。
【0050】
また、前記本発明の太陽電池において、絶縁層がSiO2またはAl2O3の少なくとも一つからなる本発明の好ましい態様とすることにより、これらを用いると耐熱性、絶縁性に優れた絶縁層を形成することができる。従って、前述したように、薄膜基板が導電性であっても一つの基板上に太陽電池の直列接続構造を作ることもでき好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の太陽電池の薄膜基板とモリブデン薄膜までの部分の一例を示す断面図。
【図2】本発明の太陽電池の薄膜基板とモリブデン薄膜までの部分の別の一例を示す断面図。
【図3】本発明の太陽電池の一実施の形態例の断面図。
【図4】本発明の太陽電池の別の一実施の形態例を示す図。
【図5】従来のCIGSないしCIS太陽電池の一例の断面図。
【符号の説明】
1 薄膜基板
1a ガラス基板
2 裏面電極
3 絶縁層
4 低融点層
5 光吸収層
6 n型半導体層
7 窓層
8 表面透明電極
9 n側の取り出し電極
10 p側の取り出し電極
11 モリブデン薄膜2が切断されている部分
12 表面透明電極8が下方に伸びている部分
20、21、22 太陽電池層
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
Ib族、IIIb族およびVIb族元素からなる化合物半導体薄膜(カルコパイライト構造化合物半導体薄膜)であるCuInSe2(以下CISと略称する)あるいはGaを固溶させたCu(In,Ga)Se2(以下CIGSと略称する)を光吸収層に用いた薄膜太陽電池が高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による変換効率の劣化がないという利点を有していることが報告されている。
【0003】
従来のCISまたはCIGS太陽電池では基板にガラスを用いたものが一般的である。
【0004】
代表的な、従来のCIGS太陽電池ないしCIS太陽電池の一例の断面図を図5に示した。
【0005】
図5に示したCIGS太陽電池ないしCIS太陽電池は、1aがガラス基板であり、その上にモリブデン薄膜からなる裏面電極2が形成され、更にその上に、順次、CIGSないしCIS等からなるp型半導体層である光吸収層5、CdS等からなるn型半導体層6、ZnOなどからなる窓層7、ITO(インジウム−錫−酸化物)などからなる表面透明電極8、9が表面透明電極8に接続したn側の取り出し電極、10が裏面電極2に接続したp側の取り出し電極からなる。
【0006】
しかし、CISまたはCIGS太陽電池はCISないしCIGS層を、例えばCVD法(化学気相成長法)等で形成できることなど、製造方法の特徴から薄膜ステンレスや有機フィルム等のフレキシブル基板上に形成することができる。フレキシブル基板に形成したCIGS太陽電池については、例えばM.Powallaらがまとめた文献がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
【非特許文献1】
エム.ポワラ(M.Powalla)、ビー.ダイマー(B.Dimmer)共著、「プロシーディング・オブ・セヴンティース・ヨーロッピアン・フォトボルテイク・ソーラ・エネルギー・カンファレンス、ミュンヘン(Proceeding of Seventeeth European Photovoltaic Solar Energy Conference,Munich)」コピーライト 2002 ダブリュアイピー−ミュンヘン アンド イーティーエー−フローレンス、イタリー(copyright 2002 WIP−Munichand ETA−Florence, Italy) 2001年、 p.983
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の文献に示されるように、フレキシブル基板上に作製したCIGS太陽電池の変換効率はガラス基板上に作製したものに比べて低い。
【0009】
高効率CISまたはCIGS太陽電池を作製するためには、基板温度を500℃以上に加熱して、CISまたはCIGS膜を形成する必要があり、そのため例えばステンレス基板などを用いると熱膨張率の違いから膜作製後、冷却すると基板から膜が剥離するという問題が生じる。
【0010】
本発明は、基板から膜が剥離する問題のない薄膜基板を用いた太陽電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の第1の太陽電池は、薄膜基板と裏面電極であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜を形成したことを特徴とする。
【0012】
また本発明の第2の太陽電池は、絶縁層を少なくとも上面側に形成した薄膜基板と裏面電極であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜を形成したことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
上記の構成によれば薄膜基板とモリブデンの熱膨張率の違いにより基板冷却時にモリブデンを含む上層の膜が剥離することはない。すなわち太陽電池製造時、500〜600℃の高温に薄膜基板が加熱されるが、薄膜基板とモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜(以下、低融点層と略称することがある)を有するので、上記、高温時には、低融点層が溶融または軟化して、薄膜基板とモリブデンの熱膨張率の違いにより発生する応力を緩和し、基板冷却時にその上部層が剥離することを防止することができる。
【0014】
また、絶縁層を形成した薄膜基板とモリブデン薄膜の間に融点が400℃以下の薄膜(低融点層)を形成してもよく、低融点層は同様の応力緩和機能を発揮し、基板冷却時に絶縁層形成した薄膜基板から、その上部層が剥離することを防止することができる。なお、薄膜基板上に絶縁層を形成することにより薄膜基板が導電性であっても一つの基板上に太陽電池の直列接続構造を作ることができ好ましい。直列接続構造とすると、出力電圧を高くした太陽電池が得られる。
【0015】
薄膜基板としては、ステンレス、アルミニウムホイル、コバルト膜、ポリイミドフィルムなど、耐熱性のあるものが好ましく、ステンレス薄膜は、比較的安価でありながら、軽量であり高温にも耐えることができ、強度的にもすぐれているため特に太陽電池用に適しており好ましい。薄膜基板の厚さは、素材の種類によっても異なり、特に限定するものではないが、強度、重量なども考慮して、通常、20μm〜100μmのものが好ましい。
【0016】
このような薄膜基板を用いた太陽電池は、基板の軽量性に優れ、太陽電池を曲面に施工して取り付ける場合にも施工が可能で容易となる。また、薄膜基板は可撓性を有するので基板をロール状にして連続的に太陽電池を形成できるため、生産が容易になり、生産された太陽電池もロール状に巻き取って保管できるので、保管、運搬なども含めて生産性に優れ好ましい。
【0017】
導電性の基板を用いる場合には、必要に応じて絶縁層をその表面に形成してもよく、絶縁層としてはSiO2またはAl2O3の少なくとも一つであることが好ましい。これらを用いると絶縁性に優れた絶縁層を形成することができる。
【0018】
絶縁層の厚みは特に限定するものではないが、通常、0.01μm〜0.5μm程度が好ましい。
【0019】
低融点層は融点または軟化点が400℃以下の常温では固体の薄膜からなる。低融点層の素材としては、500〜600℃の高温で劣化しない無機物からなる薄膜が好ましく、融点または軟化点が400℃以下の金属、その合金、ガラス等が好適である。ガラスの場合、軟化点は、通常、粘性率(η)が、4.5×107poiseになるときの温度が軟化点として採用されている。
【0020】
低融点層の素材としては、特に、In、Snあるいはそれらの合金であることが好ましい。Inの融点は約157℃、Snの融点は約232℃と非常に低く、これらの合金はさらに融点が低く、またこれらの薄膜は作製が容易である。
【0021】
Snをもちいた合金としては、融点が400℃以下のSn−Pb、Sn−Bi、Sn−In−Ag、Sn−Bi−Zn、Sn−Zn、Sn−Ag−Bi、Sn−Bi−Ag−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−Cu−Sb、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Sb等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
低融点層の厚みは特に限定するものではないが、厚みが厚すぎると、溶融または軟化時に流動や変形が生じることがあるので、通常、0.01μm〜0.5μm程度が好ましい。
【0023】
裏面電極であるモリブデン薄膜の厚みも特に限定するものではないが、通常、0.2μm〜1μm程度が好ましい。裏面電極としてモリブデン薄膜は、オーミックコンタクトが可能であり、CIS膜やCIGS膜などの化合物半導体層への拡散の恐れもなく、また、CIS膜やCIGS膜などの化合物半導体層との熱膨張率の差も比較的小さく、化合物半導体層との剥離などのおそれが少ないので、裏面電極としてはモリブデン薄膜を用いることが必要である。
【0024】
図1に本発明の太陽電池の薄膜基板とモリブデン薄膜までの部分の一例を示す断面図を示した(モリブデン薄膜より上の半導体層ほかは示していない)。1が薄膜基板であり、2がモリブデン薄膜からなる裏面電極であり、薄膜基板1とモリブデン薄膜2との間に低融点層4(融点または軟化点が400℃以下の薄膜)が形成されている。
【0025】
また図2に本発明の太陽電池の薄膜基板とモリブデン薄膜までの部分の別の一例を示す断面図を示した(モリブデン薄膜より上の半導体層ほかは示していない)。図2に示したものは、薄膜基板が導電性の薄膜基板の場合に、絶縁層を薄膜基板の上面側に形成したものであり、1が薄膜基板であり、3が薄膜基板上面に形成された絶縁層、2がモリブデン薄膜からなる裏面電極であり、薄膜基板1の上面に形成された絶縁層とモリブデン薄膜2との間に低融点層4(融点または軟化点が400℃以下の薄膜)が形成されている。
【0026】
これらの薄膜基板と低融点層、モリブデン薄膜を用いた本発明の太陽電池の一実施の形態例の断面図を図3に示した。
【0027】
図3に示した太陽電池は、図1に示した薄膜基板と低融点層、モリブデン薄膜を用いた例である。
【0028】
薄膜基板1の上に、低融点層4が設けられ、その上に裏面電極であるモリブデン薄膜2が設けられている。更にその上に、順次、CIGS等からなるp型半導体層である光吸収層5、CdS等からなるn型半導体層6、ZnOなどからなる窓層7、ITO(インジウム−錫−酸化物)などからなる表面透明電極8が設けられ、表面透明電極8に接続したn側の取り出し電極9、裏面電極であるモリブデン薄膜2に接続したp側の取り出し電極10が設けられている。この太陽電池において、CIGS等からなるp型半導体層である光吸収層5等を形成する場合に、基板の温度を500〜600℃程度の高温にする必要があるが、低融点層4が設けられていることにより、薄膜基板とモリブデンの熱膨張率の違いにより発生する応力を緩和し、基板冷却時にその上部層が剥離することを防止することができる。
【0029】
また、図4に本発明の太陽電池の別の一実施の形態例を示した。図4(a)が断面図、図4(b)がその主要部の回路を示す模式的回路図である。
【0030】
図4に示した太陽電池は、図2に示した絶縁層が上面側に形成された薄膜基板と低融点層、モリブデン薄膜を用いた例であって、また、一つの基板上に太陽電池の直列接続構造を作った態様である。
【0031】
図4(a)に示したように、薄膜基板1の上に、絶縁層3、低融点層4が設けられ、その上に裏面電極であるモリブデン薄膜2が設けられている。更にその上に、順次、CIGS等からなるp型半導体層である光吸収層5、CdS等からなるn型半導体層6、ZnOなどからなる窓層7、ITO(インジウム−錫−酸化物)などからなる表面透明電極8が設けられているが、これらの層は、光吸収層5を含めてそれより上の層5、6,7、8(これらをまとめて太陽電池層と略称する)は薄膜基板上に、複数個(太陽電池層20、21、22)設けられており、複数個の太陽電池層20、21、22等が、太陽電池の直列接続構造となるように、裏面電極であるモリブデン薄膜2(本例の場合、低融点層4も含めて)が、複数個の太陽電池層20、21、22等のそれぞれの範囲の下方で切断されており、モリブデン薄膜2が切断されている部分11には、CIGS等からなるp型半導体層である光吸収層5が埋め込まれている。また複数個の太陽電池層20、21、22のそれぞれも、ITO(インジウム−錫−酸化物)などからなる表面透明電極8が下方に伸びている部分12を有し、右隣の太陽電池層の光吸収層5の下に設けられていて且つ左隣側の太陽電池層の下部に延在するモリブデン薄膜2の上面に表面透明電極8が下方に伸びている部分12が接続されている構造となっている。図4(b)にその主要部の回路を示す模式的回路図を示したように、一つの基板上に太陽電池の直列接続構造が作製されている。直列接続構造とすると、出力電圧を高くした太陽電池が得られる。これらの直列接続構造とした太陽電池においても、CIGS等からなるp型半導体層である光吸収層5等を形成する場合に、基板の温度を500〜600℃程度の高温にする必要があるが、低融点層4が設けられていることにより、薄膜基板とモリブデンの熱膨張率の違いにより発生する応力を緩和し、基板冷却時にその上部層が剥離することを防止することができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に記載のもののみに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
本実施例では、図3で示したタイプの太陽電池で、ステンレス基板上に低融点層としてInを蒸着し、さらにその上にスパッタ法でモリブデン薄膜を形成し、さらにその上にCIGS膜を形成したタイプの太陽電池の一例について説明する。
【0034】
厚さ50μmのステンレス基板に低融点層として蒸着法でIn膜を蒸着した。In膜の膜厚は0.1μmであった。この上にスパッタ法で裏面電極として膜厚0.4μmのMo薄膜を形成した。Mo膜上にp型半導体層である光吸収層として蒸着法により膜厚2μmのCIGS膜を形成した。CIGS膜の製膜温度(基板温度)は575℃であった。比較として低融点層であるIn膜無しの試料も作製した。In膜を形成した試料では膜の剥離は見られなかった。In膜無しの試料では試料作製室から基板を取り出した後、約50%の試料がステンレス基板から剥離した。
【0035】
さらに太陽電池を作製するために、剥離せずに残った試料について以下のプロセスを行った。
【0036】
Inを含む化合物(塩)である塩化インジウム(InCl3)とチオアセトアミドを含有する水溶液を用意した。水溶液中の塩化インジウムの濃度は0.005M、チオアセトアミドの濃度は0.1M、pHは1.9とした。この水溶液を入れた容器を75℃に保った温水槽に静置した。この水溶液にCIGS薄膜を形成した基板を、約10秒間浸漬した。その後、溶液から前記基板を引き上げて純水で洗浄した。なお、この操作は、Cu(In,Ga)Se2膜の表面に膜厚約5nmのCu(In,Ga)S2膜を形成し、この膜の形成によるパッシベーション効果とオールバリヤー効果により特性を向上させるための操作である。
【0037】
この処理中、In膜無しの試料では、さらに30%の試料が剥離した。In膜を形成した試料では剥離はなかった。
【0038】
次に、カドミウムを含む化合物(塩)である硫酸カドミウム(CdSO4)とアンモニアを含有する水溶液を用意した。水溶液中の硫酸カドミウムの濃度は0.001M、アンモニアの濃度は1Mとした。この溶液を入れた容器を85℃に保った温水槽に静置した。この溶液に前記化合物薄膜を形成した基板を約6分間浸漬した。その後、溶液から基板を引き上げて純水で洗浄し、CdSからなるn型半導体層を形成した。
【0039】
この処理中、In膜無しの試料では、さらに20%の試料が基板から剥離し、結局、In膜無しの試料は、すべての試料が剥離を生じた。In膜を形成した試料では剥離は生じなかった。
【0040】
In膜を形成した試料については、さらに、窓層としてZnO膜(膜厚100nm)および表面透明電極となる透明導電膜であるITO(膜厚100nm)をスパッタリング法によって形成した。スパッタの条件はZnO膜形成時はアルゴンガス圧1.5×10−4Pa(2×10−2Torr)、高周波パワー400W、ITO膜形成時はアルゴンガス圧6×10−5Pa(8×10−3Torr)、高周波パワー400Wによって形成した。その後、裏面電極であるモリブデン薄膜上の一部に取り出し電極であるp側電極およびITO膜上の一部に取り出し電極であるn側電極として、それぞれNiCr膜とAu膜とを電子ビーム蒸着法によって積層することによって太陽電池を形成した。
【0041】
このようにして作製した太陽電池に、AM1.5、100mW/cm2の疑似太陽光を照射して太陽電池特性を測定した。
【0042】
上記の方法によって作製した太陽電池の特性を評価した結果、短絡電流33.8mA/cm2、開放電圧0.61V、曲線因子0.67、変換効率13.8%であった。この特性はガラス基板上に形成したCIGS太陽電池の特性と同じである。
【0043】
本実施例は、ステンレス薄膜基板上にモリブデン膜を形成し、その上にCIGS膜を形成して太陽電池を作製した例について説明したが、ステンレス薄膜基板上に絶縁層を形成した薄膜基板を用いた場合でも同様の効果が得られた。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、薄膜基板と裏面電極であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜を形成した本発明の太陽電池によれば、太陽電池作製時に基板とモリブデン薄膜を含む層との間の応力を緩和することができるため、基板からのモリブデン薄膜を含む層の剥離の生じない、薄膜基板を用いた太陽電池を提供することができる。
【0045】
また、絶縁層を少なくとも上面側に形成した薄膜基板と裏面電極であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜を形成した本発明の太陽電池によれば、太陽電池作製時に絶縁層が形成された基板とモリブデン薄膜を含む層との間の応力を緩和することができるため、絶縁層が形成された基板からのモリブデン薄膜を含む層の剥離の生じない、薄膜基板を用いた太陽電池を提供することができる。また、薄膜基板上に絶縁層を形成することにより薄膜基板が導電性であっても一つの基板上に太陽電池の直列接続構造を作ることもでき好ましい。
【0046】
また、前記本発明の太陽電池において、融点または軟化点が400℃以下の薄膜が、500〜600℃の高温で劣化しない無機物からなる薄膜である本発明の好ましい態様とすることにより、低融点層の熱による劣化が生じることがなく、また長期の耐久性も良好な太陽電池とすることができ好ましい。
【0047】
また、前記本発明の太陽電池において、融点または軟化点が400℃以下の薄膜が、金属、その合金、ガラスから選ばれた薄膜である本発明の好ましい態様とすることにより、これらの低融点層は熱による劣化が生じることがなく、また、長期の耐久性も良好で、しかも、容易に薄膜形成が可能であり、応力緩和機能も良好であり好ましい。
【0048】
また、前記本発明の太陽電池において、融点または軟化点が400℃以下の薄膜が、In、Snあるいはそれらの合金から選ばれた薄膜である本発明の好ましい態様とすることにより、これらは、融点の低いものが容易に入手可能で、薄膜作製も容易であり、応力緩和機能も良好であり好ましい。
【0049】
また、前記本発明の太陽電池において、薄膜基板がステンレスからなる薄膜基板である本発明の好ましい態様とすることにより、ステンレス薄膜は軽量であり、コストが比較的安く、高温にも耐えることができ、強度、耐久性に優れ、薄膜にした場合にフレキシビリティも良好で、太陽電池を曲面に施工して取り付ける場合にも施工が可能で容易となり、また、基板をロール状にして連続的に供給し、連続的に太陽電池を形成できるため、生産が容易になり、生産された太陽電池もロール状に巻き取って保管できるので、保管、運搬なども含めて生産性に優れ好ましい。
【0050】
また、前記本発明の太陽電池において、絶縁層がSiO2またはAl2O3の少なくとも一つからなる本発明の好ましい態様とすることにより、これらを用いると耐熱性、絶縁性に優れた絶縁層を形成することができる。従って、前述したように、薄膜基板が導電性であっても一つの基板上に太陽電池の直列接続構造を作ることもでき好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の太陽電池の薄膜基板とモリブデン薄膜までの部分の一例を示す断面図。
【図2】本発明の太陽電池の薄膜基板とモリブデン薄膜までの部分の別の一例を示す断面図。
【図3】本発明の太陽電池の一実施の形態例の断面図。
【図4】本発明の太陽電池の別の一実施の形態例を示す図。
【図5】従来のCIGSないしCIS太陽電池の一例の断面図。
【符号の説明】
1 薄膜基板
1a ガラス基板
2 裏面電極
3 絶縁層
4 低融点層
5 光吸収層
6 n型半導体層
7 窓層
8 表面透明電極
9 n側の取り出し電極
10 p側の取り出し電極
11 モリブデン薄膜2が切断されている部分
12 表面透明電極8が下方に伸びている部分
20、21、22 太陽電池層
Claims (7)
- 薄膜基板と裏面電極であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜を形成したことを特徴とする太陽電池。
- 絶縁層を少なくとも上面側に形成した薄膜基板と裏面電極であるモリブデン薄膜の間に融点または軟化点が400℃以下の薄膜を形成したことを特徴とする太陽電池。
- 融点または軟化点が400℃以下の薄膜が、500〜600℃の高温で劣化しない無機物からなる薄膜である請求項1または2のいずれかに記載の太陽電池。
- 融点または軟化点が400℃以下の薄膜が、金属、その合金、ガラスから選ばれた薄膜である請求項1または2のいずれかに記載の太陽電池。
- 融点または軟化点が400℃以下の薄膜が、In、Snあるいはそれらの合金から選ばれた薄膜である請求項1または2のいずれかに記載の太陽電池。
- 薄膜基板がステンレスからなる薄膜基板である請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池。
- 絶縁層がSiO2またはAl2O3の少なくとも一つからなる請求項2に記載の太陽電池。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2006062206A1 (ja) * | 2004-12-09 | 2006-06-15 | Showa Shell Sekiyu K.K. | Cis系薄膜太陽電池及びその作製方法 |
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2002
- 2002-09-05 JP JP2002260451A patent/JP2004103663A/ja not_active Withdrawn
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