JP2004324677A - 金属部材の接合方法及び接合構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価な鉄系形状記憶合金の使用を前提に、これと拡散接合を合理的に組み合わせることによって高接合強度を実現できる接合方法と接合構造を提供すること。
【解決手段】金属部材相互を鉄系形状記憶合金製接続部材の加熱による形状回復動作を利用して接合するに際し、該接続部材の形状回復時の応力作用位置に、Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金を介在させ、該合金に拡散を起こさせるための加熱と荷重負荷を、前記接続部材の形状回復動作を生じさせる加熱とこの回復動作時に発生する応力を利用して行わせ、これにより形状記憶合金による接合と拡散接合を組合せて金属部材相互を強固に接合する。
【選択図】 図1
【解決手段】金属部材相互を鉄系形状記憶合金製接続部材の加熱による形状回復動作を利用して接合するに際し、該接続部材の形状回復時の応力作用位置に、Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金を介在させ、該合金に拡散を起こさせるための加熱と荷重負荷を、前記接続部材の形状回復動作を生じさせる加熱とこの回復動作時に発生する応力を利用して行わせ、これにより形状記憶合金による接合と拡散接合を組合せて金属部材相互を強固に接合する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、形状記憶合金と拡散接合という異なる二つの接合方法を併用することによって、金属パイプまたは金属板の接続部に高い接続強度を与えることのできる接合方法並びに接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属の拡散接合法はフライパンや湯沸かし器等の台所用品などに実用されているのに加えて、近年ではアモルファス箔を利用したパイプ接続への応用も行われるようになっている。一方の鉄系形状記憶合金を利用した接続法は、パイプ用継手やボルト、ナットなどへの応用に見られるように多方面において行われている。拡散接合は高い接合強度を得られる方法であるが、接合面全体に均一な応力を付加した状態で一定の温度に加熱することが必要である。そのため平らな金属板同士を重ねて接合するような単純な場合は問題が少ないが、パイプの接続や特殊な形状の部材の接合に際しては、均一な応力を付加する工夫が必要となる。
【0003】
一方の形状記憶合金は事前に形状記憶処理をしておくと、この処理の後に室温で変形を加えた新しい形状を、適当な温度に加熱するだけで、予め記憶させた形状に向って形状回復動作をおこさせることができる。この過程で発生する応力を利用してパイプ同士を接続したり、ボルトとナットのねじのかみ合わせ接続をスパナなどによる回転を与えずに行わせることができる。例えば、パイプ用継手の場合には、接続しようとする相手パイプの外径よりも少し小さい内径を有する形状記憶合金製円筒を用意し、この状態を記憶させた後に、内径を押し広げてパイプを挿入し、加熱することによる形状記憶合金製円筒の内径の収縮力によってパイプを接続する。
しかし前記のパイプ接続において、接続部分が高い引張強度を持つことを求められると、形状記憶合金の収縮力だけでは強度が不足がちとなる。形状記憶合金にも色々な種類があり、実用化の進んでいるNi−Ti合金であれば発生する応力が高いので、継手内面に突起を形成しておき、被接合パイプの表面にこの突起を食い込ませることによって十分な接合部強度を得ることも可能である。しかしNi−Ti合金は非常に高価なため、パイプ継手としての実用化はコストの無視できる軍事用途等だけに限定されていて、民生面での利用は無理とされている。
【0004】
これに対して鉄系形状記憶合金は、安価な変わりに形状回復過程で発生する応力が十分でなく、パイプの接続部に高強度が求められる場合には、その要求に応えられないおそれがあるため、例えば特許文献1に開示されているように、形状記憶合金製円筒の内面側と、これに対応するパイプ端面外面側の両方の円周上に凹溝を加工して、この溝にC型リングを装着することなどの工夫が必要となる。特に、接続部に溶接並みの強度が求められる場合には、前記のC型リングを複数個使用することも必要となって、継手の製作や現場作業における煩雑さが増すことと、凹溝の加工によるパイプ強度の低下や継手内部におけるパイプの往復動などが生じ、その実用性に問題が生じる。
【0005】
上記した拡散接合と形状記憶合金による接合の両者を組合せる考え方は、パイプ継手による接続やボルト・ナットによる接続に応用した例は存在しないが、僅かに腕時計用外装部品または装飾品のごとき接合体で提案された発明が認められる(例えば、特許文献2参照)。該特許文献2おいては、接合母材に設けた凹部または貫通部に被接合物と形状記憶合金が挿入接合された接合体であり、接合母材と被接合物とを形状記憶合金の形状回復力により圧力を付加し加熱することにより拡散接合させるもので、特別な治具や装置を必要とせずに、溶融がない状態で美観を損ねることなく強度の高い接合体を得ることができるとされている。そして、形状記憶合金としてはNi−Ti合金が、拡散させる元素としてはチタンやその合金又はパラジウムがそれぞれ使用されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−37345号公報
【特許文献2】
特開平05−220849号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献2では、使用されるNi−Ti系形状記憶合金の形状回復動作温度は、室温から100℃程度の範囲であるのに対して、接合するために加熱する温度はこれより大幅に高い500℃以上が採用されている。従って、この場合の加熱中の接合の進行状況は、まず室温から100℃程度に達する段階で形状記憶合金が形状回復動作して、接合部分に応力を作用させるが、この接合部で拡散が起こるのは、それから数100℃も温度が上昇した後ということになる。このため動作温度と拡散が始まる温度との差がこのように大きいと、昇温過程では形状記憶合金の応力は低下し、かつ温度上昇による熱膨張も加味されるため、拡散が開始する時点での実質的な圧縮応力は著しく小さくなっており、拡散接合に寄与していないのが実情である。加えて、前述したごとく、高価なNi−Ti系形状記憶合金を大掛かりなパイプ用継手などに適用することは、実際上無理があり、実用性に乏しい。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、安価な鉄系形状記憶合金の使用を前提に、これと拡散接合を合理的に組み合わせることによって高接合強度を実現できる接合方法と接合構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明の要旨は、次のとおりである。
(1) 金属部材相互を鉄系形状記憶合金製接続部材の加熱による形状回復動作を利用して接合するに際し、該接続部材の形状回復時の応力作用位置に、Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金を介在させ、該合金に拡散を起こさせるための加熱と荷重負荷を、前記接続部材の形状回復動作を生じさせる加熱とこの回復動作時に発生する応力を利用して行わせ、これにより形状記憶合金による接合と拡散接合を組合せて金属部材相互を強固に接合することを特徴とする金属部材の接合方法。
(2) Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金は、めっき、箔、線又は帯の形で接続部材或いは金属部材の少なくとも一方に適用することを特徴とする(1)記載の接合方法。
(3) 金属部材が互いに端部を突き合わされる金属パイプであり、接続部材がパイプ用継手であることを特徴とする(1)又は(2)記載の接合方法。
(4) 金属部材が互いに重ね合わされる金属板であり、接続部材が金属板を貫通して締結するボルト・ナットであることを特徴とする(1)又は(2)記載の接合方法。
(5) 鋼管もしくはステンレス管を鉄系形状記憶合金製パイプ用継手の両側から挿入して継手の収縮力によって管を接合してなる接合構造において、パイプ用継手の内面及び継手に挿入される管の端部外面との間に、Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金を加熱時の継手の収縮力と加熱温度によってほぼ完全に拡散合金化させた合金化層を形成したことを特徴とするパイプの接合構造。
(6) 複数枚の金属板を重ね合わせこれらを貫通するボルトにねじ込む鉄系形状記憶合金製ナットの収縮力によって金属板を締結接合してなる接合構造において、ナットの内面ねじ部及びボルトのねじ部との間に、Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金を加熱時のナットの収縮力と加熱温度によってほぼ完全に拡散合金化させた合金化層を形成したことを特徴とする金属板の接合構造。
【0009】
本発明においては、上述のごとく、形状記憶合金として動作温度が100℃〜350℃程度の高温となる鉄系形状記憶合金を選択し、また、拡散させる金属についても、融点の低いAlもしくはAlとSiの共晶塑性に近い合金に限定している。これらAlもしくはAl合金の融点は、形状記憶合金による圧縮応力下ではほとんどが600℃以下となることから、鉄系形状記憶合金の動作温度との差が小さいことが特徴である。
すなわち、本発明の接合過程は、温度が上昇して形状記憶合金製接続部材が動作して応力を発生し始めると、その応力が維持されている状態でAl又はAl合金の融点が低下して溶融状態となり、迅速な拡散が開始される。仮に拡散しきれずに溶解している余分のAl又はAl合金は、形状記憶合金の応力の作用によって隙間から押し出されて排除されるため、信頼性の高い好適な接合状態が実現する。この点は、従来の特許文献2の接合方式が、美観の観点から、できるだけ接合界面を溶融させずに接合させていることと相違するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を鋼管或いはステンレス管などのパイプ同士の接合に用いるパイプ継手に適用した場合を示す形態例である。図1(A)において、1a、1bは互いの端面を突合せ接合しようとするパイプ、2は鉄系形状記憶合金製継手(以下、単に継手という)であり、前記パイプが両側から挿入される。該継手2は、パイプの外径よりも少し小さい内径の状態を記憶させた後に、パイプが挿入し得る径まで常温で内径を押し広げてある。この継手2の内周面には、AlまたはAlに15質量%以下のSiを含む合金(以下、単にAl合金という)3が環状に突起状に付着されている。
この状態で図1(B)に示すごとく、継手2の両側からパイプ1a、1bを挿入した後、(C)のように継手2の部分を選択的に所望温度まで加熱する。加熱によって継手2の径が収縮すると、この収縮力によって継手内面とパイプ外面間に挟まれたAl合金3には高応力が付加される。応力の付加によりAlは融点より低い温度で溶融し、継手内面とパイプ間にわたって迅速に拡散する。最終的には(D)に示すように、継手とパイプの間が拡散接合され、ほぼ完全な合金化(Alとパイプ金属が規則的に混合した)相4となってパイプ1a、1bを強固に接続する。なお、余分のAlは隙間から押し出されるように排出される。
【0011】
本発明では、上記のごとく拡散させる金属として、AlまたはAlに15質量%以下のSiを含む合金を選択しているが、これはAlもしくはAl合金の融点が形状記憶合金による圧縮応力下ではほとんどが600℃以下となることから、鉄系形状記憶合金の動作温度との差が小さいこと、及びAlもしくはAl合金であれば、拡散接合後に十分な接合強度が得られるからである。なお、PbやSnなどの低融点金属やそれらの合金をAlの代わりに用いることも考えられるが、接合部の強度がAlの場合ほど高くならないことや環境上の問題もあるので、本発明の拡散させる金属の対象に加えることは好ましくない。また、Al−Si合金の場合、Siが15質量%を超えると、融点が高くなる傾向を示すのでSiは上限を15質量%に抑えた。
一方の形状記憶合金については、AlもしくはAl合金を拡散させて接合強度を得るものであるため、AlまたはAl合金を拡散させるために必要な400〜700℃程度の温度領域までの加熱によって形状回復を完了することができる鉄系形状記憶合金を選択するが、そのなかでも例えば32Mn−6Si−Fe合金や28Mn−6Si−5Cr−Fe合金などの鉄系形状記憶合金は、形状回復動作が300℃から350℃で完了するので、これより少し高めへの加熱を行うだけで本発明に活用することができて好都合な素材といえる。
【0012】
なお、図1においてはAl合金3の付着方法として、継手内周に環状突起の形で付着した例を示したが、この付着の仕方はリング状或いはらせん状の線材を定間隔で継手内面に配設するか、もしくはめっきしたいところ以外はマスキングしてからめっきを施し、めっき後にマスキング材を除去する方式を採ればよい。勿論、本発明ではこれに限ることなく、種々の付着方式が採用し得るとともに、継手側の内面に付着するに限らず、相手側のパイプ端部外面側に付着することも、更には継手或いはパイプのいずれにも付着せずに中間に独立した状態で介在させることも可能である。その各種付着態様例を下記に示す。
図2(a)は、パイプ端部外面側に一定厚みのめっき層3Aを形成したものを示し、(b)は継手内面側に一定厚みのめっき層3Bを形成したものであるが、これらめっき箇所をAl合金箔で置き換えても同様のものが得られる。更に、図2(c)は、リング状のAl合金線材又は帯材3Cをパイプ外面側に装着した場合(左側)、らせん状の線材又は帯材3C′をパイプ外面側に装着した場合(右側)を示している。
【0013】
なお、図示のような継手2に差し込まれるパイプ1a、1bが鋼管である場合には、鋼管の端部には切削加工を施して酸化層を除去すると共に外径を揃えることが必要であり、この状態でめっき層、箔の付着、或いは線又は帯材の装着を行うことが好ましい。パイプ側にAl合金を適用する場合には、一方の継手については常温で予め拡径しておくが、継手側にAl合金をめっきにより付着して接合を行う場合には、拡径を行う前にAl合金を継手内面にめっきしておくことが必要とされる。これは、めっきの前に拡径を行うと、めっき時の温度上昇により形状回復動作が引き起こされるおそれがあるためである。AlやAl−Si合金はいずれも延性が高いので、めっきした後に拡径処理を行っても特に支障をきたさいない。
【0014】
次に、本発明に係るボルト・ナット接合構造の例を示す。図3に2枚の金属板5a、5bを重ね合わせ、これをボルト6と、これにかみ合う鉄系形状記憶合金からなるナット7を用いて固定する場合を示す。図3(a)に示すように、2枚の金属板に開けた穴8にボルト6を通してワッシャ9を入れ、この後、板を貫通したボルト6のねじの谷部分にAlまたはSiを含むAl合金線(以下、単にAl合金線とする)10を巻き付けておき、その上から形状記憶合金製のナット7で締め付けた。ナット7は予め常温で拡径処理を施しておく。この締め付け状態で形状記憶合金製ナット7部分を加熱装置によって形状回復動作が始まる温度まで加熱した。加熱装置としては高周波加熱、或いは電熱式ヒータなどの公知の方式を採用すればよく、これは前述のパイプ接合構造においても同様である。
【0015】
形状記憶合金製のナット7はこの加熱によってその内径が収縮し、ボルト6のねじ部分に巻かれていたAl合金線10に応力を及ぼし、応力下でこのAl合金線10はボルト側と形状記憶合金製ナット側の両方に拡散して合金化層11となり、ねじ部分を緊密に接合する。図3(b)のボルトねじ部分及びナットねじ部分の左側(拡大図A)がナット7を加熱する前の状態、右側(拡大図B)がナット7を加熱した後の状態をそれぞれ示している。
なお、Al合金線10はナット7の形状回復時の応力が作用する範囲内で巻き付けておけばよい。また、線材を巻き付ける他に、ボルトのねじ部の所定範囲にわたってAlまたはSiを含むAl合金をめっきすることでも同様の効果が期待でき、場合によってはナットのねじ部分にめっきしてもよい。
【0016】
【実施例】
[実施例1]
100Aサイズの構造用鋼管(STK400)を32Mn−6Si−Fe系形状記憶合金製の継手で接続した。図2(a)に示すように、継手に差し込まれる鋼管の端部に切削加工を施した後、Alをめっきした。一方の形状記憶合金製継手は予め冷間での拡径が行われていて、300℃以上に加熱すると内径が約4%だけ収縮するように処理されている。
形状記憶合金製継手の両側から構造用鋼管を差し込み、形状記憶合金製継手部分を電熱式ヒーターによって550℃まで加熱した。この加熱によって形状記憶合金製継手の内径が収縮し、Al層に応力を及ぼすとともに温度が上がることによって拡散が起こり、形状記憶合金製継手の収縮力に拡散接合が相乗的に働いて強い接合強度をもったパイプ接合構造を得ることができた。
【0017】
[実施例2]
実施例1において100Aサイズの構造用鋼管(STK400)の継手に差し込まれる部分にはローレットマークを加工した。また、形状記憶合金製継手は28Mn−6Si−5Cr−1V−0.07N−Fe系の素材で製作し、その内面にもローレットマークを加工した。Alはめっきせずに15μm厚のAl箔を鋼管のローレットマークのついた部分の上に巻き付けてから、形状記憶合金製継手に差し込む方法で使用した。実施例1と同様に電熱式ヒーターで550℃まで加熱して接続を行った。ローレットマークが付けられているために、Al箔が部分的に高い応力で押し付けられると同時に、形状記憶合金製継手と鋼管それぞれの表面に生成している酸化皮膜も部分的に破壊されるため、非常に強固な接続が実現できた。
【0018】
[実施例3]
実施例1において100Aサイズの構造用鋼管(STK400)の形状記憶合金製継手に差し込まれる端部の切削加工面に、図2(c)に示すように、12%Siを含むAl合金製の帯板(断面の幅2.5mmで高さが0.5mm)でパイプ円周を鉢巻き状にした。この鉢巻きは、パイプの片端当たりに15mm間隔で3列並ぶようにした。固定方法は、帯状に加工した12%Siを含むAl合金をパイプに巻き付けた後、帯材の始点と終点をろう付けする方法で行った。
これらのパイプを28Mn−6Si−5Cr−Fe系形状記憶合金製の継手に差し込んで、実施例1と同様な方法で500℃まで加熱して接続を行った。この方法では、拡散させる合金の幅を狭くして複数に分散して取り付けてあるため、形状記憶合金の収縮力が拡散接合させる部分に集中して付加されるため、表面の酸化物層も破壊されやすく、良好な接合状態を得ることができる。
【0019】
[実施例4]
250Aサイズの構造用鋼管(STK400)を28Mn−6Si−5Cr−Fe系形状記憶合金製の継手で接続した。形状記憶合金製継手に差し込まれる鋼管の端部には切削加工を施すと共に、形状記憶合金製継手に対しては、形状記憶のための1100℃への加熱の後に、図2(b)に示すように、その内表面に12%Siを含むAlめっきを行った。次に室温で内径を約7.5%ほど拡径した。拡径はコレット式の金型を用いて行った。
この形状記憶合金製継手の両側に、端部を機械切削加工した250Aサイズの構造用鋼管(STK400)の先端を差し込んでから、高周波誘導加熱法によって形状記憶合金部分を500℃まで加熱した。この加熱によって形状記憶合金製継手の内径は約350℃まで温度が上昇する間に収縮し、内面のめっき層を相手側のパイプの切削加工面に強く押しつけると同時にめっき層の温度が12%Siを含むAl合金の拡散に必要な450℃以上に上がってくる過程で、拡散接合を引き起こされる。この結果、パイプは緊密に接続された。
【0020】
[実施例5]
M10サイズでSUS304製のステンレスボルトと、28Mn−6Si−5Cr−Fe系の形状記憶合金からなるナットを用いて、板厚5mmのステンレス板2枚を重ね合わせた部分を図3に示すように固定した。ステンレスボルトのねじの谷部分には0.2mmφの12%のSiを含むAl合金線を巻き付け、形状記憶合金製ナット部分を高周波加熱装置によって500℃まで加熱した。
形状記憶合金製のナットは、この加熱によってその内径が3.5%程度収縮する能力をもっているので、Al合金線に応力を及ぼし、応力下でこのAl合金はステンレスボルト側と形状記憶合金製ナット側の両方に拡散して合金化層となり、緊密なねじ接合が得られた。ねじ接合部分の振動などによる緩みも生じなかった。
【0021】
[実施例6]
ねじ部にAlを50μmの目標厚みでめっきしたM10サイズでSUS304製のステンレスボルトと、これにかみ合い32Mn−6Si−Fe系の形状記憶合金からなるナットを用いて、板厚5mmのステンレス板2枚を重ね合わせた部分を固定した。形状記憶合金製ナット部分は高周波加熱装置によって600℃まで加熱した。Siを含まないAlを利用する場合にも、加熱温度を多少高めることによって実施例5と同様な効果を得ることができた。
【0022】
【発明の効果】
以上説明した本発明に係る接合方法によれば、コスト的に有利な鉄系形状記憶合金を用いると共に、該形状記憶合金の形状回復動作時の加熱と応力を有効に利用して拡散接合を行わせることから、形状記憶合金による接合と拡散接合という異なる接合手段を合理的に併用できるため、接合強度の高い接合構造が得られる。従って、本発明をパイプの接続や金属板の接続に適用すれば効果的であり、特に、形状記憶合金製継手を用いるパイプの接続に適用することで最適なパイプ接合構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】パイプの接続に本発明に係る接合方法を適用した場合の実施形態の一例を示す概略図で、(A)〜(D)は操業状態を順次示している。
【図2】本発明をパイプ接続に適用する場合に、拡散を起こさせるためのAl合金を付着させる例を示す図である。
【図3】本発明をボルト・ナットによる金属板の接合に適用した場合の作業を順次示す図である。
【符号の説明】
1a、1b 金属パイプ
2 鉄系形状記憶合金製パイプ継手
3 Al合金
4 拡散による合金化層
5a、5b 金属板
6 ボルト
7 ナット(形状記憶合金)
8 金属板に開けた穴
9 ワッシャ
10 Al合金線
11 拡散による合金化層
【発明の属する技術分野】
本発明は、形状記憶合金と拡散接合という異なる二つの接合方法を併用することによって、金属パイプまたは金属板の接続部に高い接続強度を与えることのできる接合方法並びに接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属の拡散接合法はフライパンや湯沸かし器等の台所用品などに実用されているのに加えて、近年ではアモルファス箔を利用したパイプ接続への応用も行われるようになっている。一方の鉄系形状記憶合金を利用した接続法は、パイプ用継手やボルト、ナットなどへの応用に見られるように多方面において行われている。拡散接合は高い接合強度を得られる方法であるが、接合面全体に均一な応力を付加した状態で一定の温度に加熱することが必要である。そのため平らな金属板同士を重ねて接合するような単純な場合は問題が少ないが、パイプの接続や特殊な形状の部材の接合に際しては、均一な応力を付加する工夫が必要となる。
【0003】
一方の形状記憶合金は事前に形状記憶処理をしておくと、この処理の後に室温で変形を加えた新しい形状を、適当な温度に加熱するだけで、予め記憶させた形状に向って形状回復動作をおこさせることができる。この過程で発生する応力を利用してパイプ同士を接続したり、ボルトとナットのねじのかみ合わせ接続をスパナなどによる回転を与えずに行わせることができる。例えば、パイプ用継手の場合には、接続しようとする相手パイプの外径よりも少し小さい内径を有する形状記憶合金製円筒を用意し、この状態を記憶させた後に、内径を押し広げてパイプを挿入し、加熱することによる形状記憶合金製円筒の内径の収縮力によってパイプを接続する。
しかし前記のパイプ接続において、接続部分が高い引張強度を持つことを求められると、形状記憶合金の収縮力だけでは強度が不足がちとなる。形状記憶合金にも色々な種類があり、実用化の進んでいるNi−Ti合金であれば発生する応力が高いので、継手内面に突起を形成しておき、被接合パイプの表面にこの突起を食い込ませることによって十分な接合部強度を得ることも可能である。しかしNi−Ti合金は非常に高価なため、パイプ継手としての実用化はコストの無視できる軍事用途等だけに限定されていて、民生面での利用は無理とされている。
【0004】
これに対して鉄系形状記憶合金は、安価な変わりに形状回復過程で発生する応力が十分でなく、パイプの接続部に高強度が求められる場合には、その要求に応えられないおそれがあるため、例えば特許文献1に開示されているように、形状記憶合金製円筒の内面側と、これに対応するパイプ端面外面側の両方の円周上に凹溝を加工して、この溝にC型リングを装着することなどの工夫が必要となる。特に、接続部に溶接並みの強度が求められる場合には、前記のC型リングを複数個使用することも必要となって、継手の製作や現場作業における煩雑さが増すことと、凹溝の加工によるパイプ強度の低下や継手内部におけるパイプの往復動などが生じ、その実用性に問題が生じる。
【0005】
上記した拡散接合と形状記憶合金による接合の両者を組合せる考え方は、パイプ継手による接続やボルト・ナットによる接続に応用した例は存在しないが、僅かに腕時計用外装部品または装飾品のごとき接合体で提案された発明が認められる(例えば、特許文献2参照)。該特許文献2おいては、接合母材に設けた凹部または貫通部に被接合物と形状記憶合金が挿入接合された接合体であり、接合母材と被接合物とを形状記憶合金の形状回復力により圧力を付加し加熱することにより拡散接合させるもので、特別な治具や装置を必要とせずに、溶融がない状態で美観を損ねることなく強度の高い接合体を得ることができるとされている。そして、形状記憶合金としてはNi−Ti合金が、拡散させる元素としてはチタンやその合金又はパラジウムがそれぞれ使用されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−37345号公報
【特許文献2】
特開平05−220849号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献2では、使用されるNi−Ti系形状記憶合金の形状回復動作温度は、室温から100℃程度の範囲であるのに対して、接合するために加熱する温度はこれより大幅に高い500℃以上が採用されている。従って、この場合の加熱中の接合の進行状況は、まず室温から100℃程度に達する段階で形状記憶合金が形状回復動作して、接合部分に応力を作用させるが、この接合部で拡散が起こるのは、それから数100℃も温度が上昇した後ということになる。このため動作温度と拡散が始まる温度との差がこのように大きいと、昇温過程では形状記憶合金の応力は低下し、かつ温度上昇による熱膨張も加味されるため、拡散が開始する時点での実質的な圧縮応力は著しく小さくなっており、拡散接合に寄与していないのが実情である。加えて、前述したごとく、高価なNi−Ti系形状記憶合金を大掛かりなパイプ用継手などに適用することは、実際上無理があり、実用性に乏しい。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、安価な鉄系形状記憶合金の使用を前提に、これと拡散接合を合理的に組み合わせることによって高接合強度を実現できる接合方法と接合構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明の要旨は、次のとおりである。
(1) 金属部材相互を鉄系形状記憶合金製接続部材の加熱による形状回復動作を利用して接合するに際し、該接続部材の形状回復時の応力作用位置に、Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金を介在させ、該合金に拡散を起こさせるための加熱と荷重負荷を、前記接続部材の形状回復動作を生じさせる加熱とこの回復動作時に発生する応力を利用して行わせ、これにより形状記憶合金による接合と拡散接合を組合せて金属部材相互を強固に接合することを特徴とする金属部材の接合方法。
(2) Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金は、めっき、箔、線又は帯の形で接続部材或いは金属部材の少なくとも一方に適用することを特徴とする(1)記載の接合方法。
(3) 金属部材が互いに端部を突き合わされる金属パイプであり、接続部材がパイプ用継手であることを特徴とする(1)又は(2)記載の接合方法。
(4) 金属部材が互いに重ね合わされる金属板であり、接続部材が金属板を貫通して締結するボルト・ナットであることを特徴とする(1)又は(2)記載の接合方法。
(5) 鋼管もしくはステンレス管を鉄系形状記憶合金製パイプ用継手の両側から挿入して継手の収縮力によって管を接合してなる接合構造において、パイプ用継手の内面及び継手に挿入される管の端部外面との間に、Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金を加熱時の継手の収縮力と加熱温度によってほぼ完全に拡散合金化させた合金化層を形成したことを特徴とするパイプの接合構造。
(6) 複数枚の金属板を重ね合わせこれらを貫通するボルトにねじ込む鉄系形状記憶合金製ナットの収縮力によって金属板を締結接合してなる接合構造において、ナットの内面ねじ部及びボルトのねじ部との間に、Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金を加熱時のナットの収縮力と加熱温度によってほぼ完全に拡散合金化させた合金化層を形成したことを特徴とする金属板の接合構造。
【0009】
本発明においては、上述のごとく、形状記憶合金として動作温度が100℃〜350℃程度の高温となる鉄系形状記憶合金を選択し、また、拡散させる金属についても、融点の低いAlもしくはAlとSiの共晶塑性に近い合金に限定している。これらAlもしくはAl合金の融点は、形状記憶合金による圧縮応力下ではほとんどが600℃以下となることから、鉄系形状記憶合金の動作温度との差が小さいことが特徴である。
すなわち、本発明の接合過程は、温度が上昇して形状記憶合金製接続部材が動作して応力を発生し始めると、その応力が維持されている状態でAl又はAl合金の融点が低下して溶融状態となり、迅速な拡散が開始される。仮に拡散しきれずに溶解している余分のAl又はAl合金は、形状記憶合金の応力の作用によって隙間から押し出されて排除されるため、信頼性の高い好適な接合状態が実現する。この点は、従来の特許文献2の接合方式が、美観の観点から、できるだけ接合界面を溶融させずに接合させていることと相違するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を鋼管或いはステンレス管などのパイプ同士の接合に用いるパイプ継手に適用した場合を示す形態例である。図1(A)において、1a、1bは互いの端面を突合せ接合しようとするパイプ、2は鉄系形状記憶合金製継手(以下、単に継手という)であり、前記パイプが両側から挿入される。該継手2は、パイプの外径よりも少し小さい内径の状態を記憶させた後に、パイプが挿入し得る径まで常温で内径を押し広げてある。この継手2の内周面には、AlまたはAlに15質量%以下のSiを含む合金(以下、単にAl合金という)3が環状に突起状に付着されている。
この状態で図1(B)に示すごとく、継手2の両側からパイプ1a、1bを挿入した後、(C)のように継手2の部分を選択的に所望温度まで加熱する。加熱によって継手2の径が収縮すると、この収縮力によって継手内面とパイプ外面間に挟まれたAl合金3には高応力が付加される。応力の付加によりAlは融点より低い温度で溶融し、継手内面とパイプ間にわたって迅速に拡散する。最終的には(D)に示すように、継手とパイプの間が拡散接合され、ほぼ完全な合金化(Alとパイプ金属が規則的に混合した)相4となってパイプ1a、1bを強固に接続する。なお、余分のAlは隙間から押し出されるように排出される。
【0011】
本発明では、上記のごとく拡散させる金属として、AlまたはAlに15質量%以下のSiを含む合金を選択しているが、これはAlもしくはAl合金の融点が形状記憶合金による圧縮応力下ではほとんどが600℃以下となることから、鉄系形状記憶合金の動作温度との差が小さいこと、及びAlもしくはAl合金であれば、拡散接合後に十分な接合強度が得られるからである。なお、PbやSnなどの低融点金属やそれらの合金をAlの代わりに用いることも考えられるが、接合部の強度がAlの場合ほど高くならないことや環境上の問題もあるので、本発明の拡散させる金属の対象に加えることは好ましくない。また、Al−Si合金の場合、Siが15質量%を超えると、融点が高くなる傾向を示すのでSiは上限を15質量%に抑えた。
一方の形状記憶合金については、AlもしくはAl合金を拡散させて接合強度を得るものであるため、AlまたはAl合金を拡散させるために必要な400〜700℃程度の温度領域までの加熱によって形状回復を完了することができる鉄系形状記憶合金を選択するが、そのなかでも例えば32Mn−6Si−Fe合金や28Mn−6Si−5Cr−Fe合金などの鉄系形状記憶合金は、形状回復動作が300℃から350℃で完了するので、これより少し高めへの加熱を行うだけで本発明に活用することができて好都合な素材といえる。
【0012】
なお、図1においてはAl合金3の付着方法として、継手内周に環状突起の形で付着した例を示したが、この付着の仕方はリング状或いはらせん状の線材を定間隔で継手内面に配設するか、もしくはめっきしたいところ以外はマスキングしてからめっきを施し、めっき後にマスキング材を除去する方式を採ればよい。勿論、本発明ではこれに限ることなく、種々の付着方式が採用し得るとともに、継手側の内面に付着するに限らず、相手側のパイプ端部外面側に付着することも、更には継手或いはパイプのいずれにも付着せずに中間に独立した状態で介在させることも可能である。その各種付着態様例を下記に示す。
図2(a)は、パイプ端部外面側に一定厚みのめっき層3Aを形成したものを示し、(b)は継手内面側に一定厚みのめっき層3Bを形成したものであるが、これらめっき箇所をAl合金箔で置き換えても同様のものが得られる。更に、図2(c)は、リング状のAl合金線材又は帯材3Cをパイプ外面側に装着した場合(左側)、らせん状の線材又は帯材3C′をパイプ外面側に装着した場合(右側)を示している。
【0013】
なお、図示のような継手2に差し込まれるパイプ1a、1bが鋼管である場合には、鋼管の端部には切削加工を施して酸化層を除去すると共に外径を揃えることが必要であり、この状態でめっき層、箔の付着、或いは線又は帯材の装着を行うことが好ましい。パイプ側にAl合金を適用する場合には、一方の継手については常温で予め拡径しておくが、継手側にAl合金をめっきにより付着して接合を行う場合には、拡径を行う前にAl合金を継手内面にめっきしておくことが必要とされる。これは、めっきの前に拡径を行うと、めっき時の温度上昇により形状回復動作が引き起こされるおそれがあるためである。AlやAl−Si合金はいずれも延性が高いので、めっきした後に拡径処理を行っても特に支障をきたさいない。
【0014】
次に、本発明に係るボルト・ナット接合構造の例を示す。図3に2枚の金属板5a、5bを重ね合わせ、これをボルト6と、これにかみ合う鉄系形状記憶合金からなるナット7を用いて固定する場合を示す。図3(a)に示すように、2枚の金属板に開けた穴8にボルト6を通してワッシャ9を入れ、この後、板を貫通したボルト6のねじの谷部分にAlまたはSiを含むAl合金線(以下、単にAl合金線とする)10を巻き付けておき、その上から形状記憶合金製のナット7で締め付けた。ナット7は予め常温で拡径処理を施しておく。この締め付け状態で形状記憶合金製ナット7部分を加熱装置によって形状回復動作が始まる温度まで加熱した。加熱装置としては高周波加熱、或いは電熱式ヒータなどの公知の方式を採用すればよく、これは前述のパイプ接合構造においても同様である。
【0015】
形状記憶合金製のナット7はこの加熱によってその内径が収縮し、ボルト6のねじ部分に巻かれていたAl合金線10に応力を及ぼし、応力下でこのAl合金線10はボルト側と形状記憶合金製ナット側の両方に拡散して合金化層11となり、ねじ部分を緊密に接合する。図3(b)のボルトねじ部分及びナットねじ部分の左側(拡大図A)がナット7を加熱する前の状態、右側(拡大図B)がナット7を加熱した後の状態をそれぞれ示している。
なお、Al合金線10はナット7の形状回復時の応力が作用する範囲内で巻き付けておけばよい。また、線材を巻き付ける他に、ボルトのねじ部の所定範囲にわたってAlまたはSiを含むAl合金をめっきすることでも同様の効果が期待でき、場合によってはナットのねじ部分にめっきしてもよい。
【0016】
【実施例】
[実施例1]
100Aサイズの構造用鋼管(STK400)を32Mn−6Si−Fe系形状記憶合金製の継手で接続した。図2(a)に示すように、継手に差し込まれる鋼管の端部に切削加工を施した後、Alをめっきした。一方の形状記憶合金製継手は予め冷間での拡径が行われていて、300℃以上に加熱すると内径が約4%だけ収縮するように処理されている。
形状記憶合金製継手の両側から構造用鋼管を差し込み、形状記憶合金製継手部分を電熱式ヒーターによって550℃まで加熱した。この加熱によって形状記憶合金製継手の内径が収縮し、Al層に応力を及ぼすとともに温度が上がることによって拡散が起こり、形状記憶合金製継手の収縮力に拡散接合が相乗的に働いて強い接合強度をもったパイプ接合構造を得ることができた。
【0017】
[実施例2]
実施例1において100Aサイズの構造用鋼管(STK400)の継手に差し込まれる部分にはローレットマークを加工した。また、形状記憶合金製継手は28Mn−6Si−5Cr−1V−0.07N−Fe系の素材で製作し、その内面にもローレットマークを加工した。Alはめっきせずに15μm厚のAl箔を鋼管のローレットマークのついた部分の上に巻き付けてから、形状記憶合金製継手に差し込む方法で使用した。実施例1と同様に電熱式ヒーターで550℃まで加熱して接続を行った。ローレットマークが付けられているために、Al箔が部分的に高い応力で押し付けられると同時に、形状記憶合金製継手と鋼管それぞれの表面に生成している酸化皮膜も部分的に破壊されるため、非常に強固な接続が実現できた。
【0018】
[実施例3]
実施例1において100Aサイズの構造用鋼管(STK400)の形状記憶合金製継手に差し込まれる端部の切削加工面に、図2(c)に示すように、12%Siを含むAl合金製の帯板(断面の幅2.5mmで高さが0.5mm)でパイプ円周を鉢巻き状にした。この鉢巻きは、パイプの片端当たりに15mm間隔で3列並ぶようにした。固定方法は、帯状に加工した12%Siを含むAl合金をパイプに巻き付けた後、帯材の始点と終点をろう付けする方法で行った。
これらのパイプを28Mn−6Si−5Cr−Fe系形状記憶合金製の継手に差し込んで、実施例1と同様な方法で500℃まで加熱して接続を行った。この方法では、拡散させる合金の幅を狭くして複数に分散して取り付けてあるため、形状記憶合金の収縮力が拡散接合させる部分に集中して付加されるため、表面の酸化物層も破壊されやすく、良好な接合状態を得ることができる。
【0019】
[実施例4]
250Aサイズの構造用鋼管(STK400)を28Mn−6Si−5Cr−Fe系形状記憶合金製の継手で接続した。形状記憶合金製継手に差し込まれる鋼管の端部には切削加工を施すと共に、形状記憶合金製継手に対しては、形状記憶のための1100℃への加熱の後に、図2(b)に示すように、その内表面に12%Siを含むAlめっきを行った。次に室温で内径を約7.5%ほど拡径した。拡径はコレット式の金型を用いて行った。
この形状記憶合金製継手の両側に、端部を機械切削加工した250Aサイズの構造用鋼管(STK400)の先端を差し込んでから、高周波誘導加熱法によって形状記憶合金部分を500℃まで加熱した。この加熱によって形状記憶合金製継手の内径は約350℃まで温度が上昇する間に収縮し、内面のめっき層を相手側のパイプの切削加工面に強く押しつけると同時にめっき層の温度が12%Siを含むAl合金の拡散に必要な450℃以上に上がってくる過程で、拡散接合を引き起こされる。この結果、パイプは緊密に接続された。
【0020】
[実施例5]
M10サイズでSUS304製のステンレスボルトと、28Mn−6Si−5Cr−Fe系の形状記憶合金からなるナットを用いて、板厚5mmのステンレス板2枚を重ね合わせた部分を図3に示すように固定した。ステンレスボルトのねじの谷部分には0.2mmφの12%のSiを含むAl合金線を巻き付け、形状記憶合金製ナット部分を高周波加熱装置によって500℃まで加熱した。
形状記憶合金製のナットは、この加熱によってその内径が3.5%程度収縮する能力をもっているので、Al合金線に応力を及ぼし、応力下でこのAl合金はステンレスボルト側と形状記憶合金製ナット側の両方に拡散して合金化層となり、緊密なねじ接合が得られた。ねじ接合部分の振動などによる緩みも生じなかった。
【0021】
[実施例6]
ねじ部にAlを50μmの目標厚みでめっきしたM10サイズでSUS304製のステンレスボルトと、これにかみ合い32Mn−6Si−Fe系の形状記憶合金からなるナットを用いて、板厚5mmのステンレス板2枚を重ね合わせた部分を固定した。形状記憶合金製ナット部分は高周波加熱装置によって600℃まで加熱した。Siを含まないAlを利用する場合にも、加熱温度を多少高めることによって実施例5と同様な効果を得ることができた。
【0022】
【発明の効果】
以上説明した本発明に係る接合方法によれば、コスト的に有利な鉄系形状記憶合金を用いると共に、該形状記憶合金の形状回復動作時の加熱と応力を有効に利用して拡散接合を行わせることから、形状記憶合金による接合と拡散接合という異なる接合手段を合理的に併用できるため、接合強度の高い接合構造が得られる。従って、本発明をパイプの接続や金属板の接続に適用すれば効果的であり、特に、形状記憶合金製継手を用いるパイプの接続に適用することで最適なパイプ接合構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】パイプの接続に本発明に係る接合方法を適用した場合の実施形態の一例を示す概略図で、(A)〜(D)は操業状態を順次示している。
【図2】本発明をパイプ接続に適用する場合に、拡散を起こさせるためのAl合金を付着させる例を示す図である。
【図3】本発明をボルト・ナットによる金属板の接合に適用した場合の作業を順次示す図である。
【符号の説明】
1a、1b 金属パイプ
2 鉄系形状記憶合金製パイプ継手
3 Al合金
4 拡散による合金化層
5a、5b 金属板
6 ボルト
7 ナット(形状記憶合金)
8 金属板に開けた穴
9 ワッシャ
10 Al合金線
11 拡散による合金化層
Claims (6)
- 金属部材相互を鉄系形状記憶合金製接続部材の加熱による形状回復動作を利用して接合するに際し、該接続部材の形状回復時の応力作用位置に、Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金を介在させ、該合金に拡散を起こさせるための加熱と荷重負荷を、前記接続部材の形状回復動作を生じさせる加熱とこの回復動作時に発生する応力を利用して行わせ、これにより形状記憶合金による接合と拡散接合を組合せて金属部材相互を強固に接合することを特徴とする金属部材の接合方法。
- Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金は、めっき、箔、線又は帯の形で接続部材或いは金属部材の少なくとも一方に適用することを特徴とする請求項1記載の接合方法。
- 金属部材が互いに端部を突き合わされる金属パイプであり、接続部材がパイプ用継手であることを特徴とする請求項1又は2記載の接合方法。
- 金属部材が互いに重ね合わされる金属板であり、接続部材が金属板を貫通して締結するボルト・ナットであることを特徴とする請求項1又は2記載の接合方法。
- 鋼管もしくはステンレス管を鉄系形状記憶合金製パイプ用継手の両側から挿入して継手の収縮力によって管を接合してなる接合構造において、パイプ用継手の内面及び継手に挿入される管の端部外面との間に、Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金を加熱時の継手の収縮力と加熱温度によってほぼ完全に拡散合金化させた合金化層を形成したことを特徴とするパイプの接合構造。
- 複数枚の金属板を重ね合わせこれらを貫通するボルトにねじ込む鉄系形状記憶合金製ナットの収縮力によって金属板を締結接合してなる接合構造において、ナットの内面ねじ部及びボルトのねじ部との間に、Al、またはAlに15質量%以下のSiを含む合金を加熱時のナットの収縮力と加熱温度によってほぼ完全に拡散合金化させた合金化層を形成したことを特徴とする金属板の接合構造。
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2003
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