JP2004323915A - 蒸着装置における有機材料用蒸発源及びその蒸着装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有機材料1を高周波誘導加熱方式により加熱して蒸発させ、基板6に付着させることでこの基板6上に有機薄膜8を成膜する蒸着装置における前記有機材料1を充填する容器3と、この容器3の周囲に配設される誘導コイル4とから成る有機材料用蒸発源において、容器3を高周波誘導加熱されない材質で形成し、この容器3に、高周波誘導加熱される材質から成る粒状の混入物2を多数混入した有機材料1を充填したものである。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸着装置における有機材料用蒸発源並びにその蒸着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
有機EL材料に代表される有機材料を有する素子の作製方法として、一般的に真空蒸着方法が用いられる。
【0003】
この真空蒸着方法としては、例えば、金属製のるつぼ21を誘導コイル23による高周波誘導により加熱し、るつぼ21内の有機材料22をるつぼ21内壁面からの熱伝導若しくは熱輻射で蒸発させる所謂高周波誘導加熱法式がある。
【0004】
しかし、熱伝導率の低い有機材料22をるつぼ21を介して加熱するため、るつぼ21内壁面に接触している有機材料22と、るつぼ21中心部の有機材料22とで温度差ができて、温度分布が不均一となる。
【0005】
従って、有機材料22は温度の高いるつぼ21内壁面近傍から蒸発を始め、時間の経過と共にるつぼ21内壁面近傍のみ削れた円筒形状若しくは円錐形状になる(図3参照)。この場合、るつぼ21内壁面と有機材料22との間に隙間ができるため、一定の蒸発レートを得るには、るつぼ温度を時間の経過と共に高くする必要がある。言いかえると、るつぼ温度を一定に保つように温度制御していても、時間の経過と共に蒸発レートは減少することになる。
【0006】
つまり、温度制御のみで蒸発レートを制御する場合、レートを長時間安定して制御することは困難である。
【0007】
また、るつぼ21内の有機材料22が上述の通り、時間の経過と共に円筒形状若しくは円錐形状となっていくため、水晶振動子式レートモニター等でレート制御を行う場合でも、るつぼ温度が高温になり、突沸が起こりやすく、また、円筒形状若しくは円錐形状の有機材料が崩れたり動いたりするため、予期せぬ蒸発レートの上昇が起こり、この点からも長時間安定に蒸着レートを制御することは困難である。
【0008】
本発明は、上述のような現状に鑑み、容器(るつぼ)として高周波誘導加熱されない容器を採用し、この容器に、高周波誘導加熱される材質から成る混入物を多数混入した有機材料を充填することで、高周波誘導により(金属製の)容器を加熱するのではなく、この容器に充填する有機材料に混入させた混入物を加熱することで、この混入物の周囲の前記有機材料を加熱・蒸発させるから、容器内の有機材料を略均一に加熱させて偏りなく蒸発させることができ、前記有機材料を長時間加熱・蒸発させても、従来のように残余の有機材料が容器の加熱されにくい部分に残ってしまうことがなく、所定の容器温度に対して常に一定の蒸発レートを保つことができるから、長時間安定して蒸発レートを制御することができる極めて実用性に秀れた画期的な蒸着装置における有機材料用蒸発源並びにその蒸着装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するため手段】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
有機材料1を高周波誘導加熱方式により加熱して蒸発させ、基板6に付着させることでこの基板6上に有機薄膜8を成膜する蒸着装置における前記有機材料1を充填する容器3と、この容器3の周囲に配設される誘導コイル4とから成る有機材料用蒸発源において、容器3を高周波誘導加熱されない材質で形成し、この容器3に、高周波誘導加熱される材質から成る粒状の混入物2を多数混入した有機材料1を充填したことを特徴とする有機材料用蒸発源に係るものである。
【0011】
また、前記容器3として、セラミックス製のものを採用したことを特徴とする請求項1記載の有機材料用蒸発源に係るものである。
【0012】
また、前記混入物2として、金属,セラミックスを被覆した金属若しくは金属を被覆したセラミックスのうち少なくとも一つを前記有機材料1に混入したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の有機材料用蒸発源に係るものである。
【0013】
また、前記セラミックス製の容器3として、石英,窒化アルミニュウム,窒化ホウ素,窒化ケイ素,炭化ケイ素若しくは酸化アルミニュウム製のものを採用したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機材料用蒸発源に係るものである。
【0014】
また、前記有機材料1として、有機EL素子の形成に用いられる有機EL材料を採用したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機材料用蒸発源に係るものである。
【0015】
また、前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機材料用蒸発源を一個以上真空槽内に配置したことを特徴とする蒸着装置に係るものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
好適と考える本発明の実施の形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいてその作用効果を示して簡単に説明する。
【0017】
容器3に充填した有機材料1を加熱・蒸発させ、この蒸発した有機材料1を基板6に付着させることでこの基板6上に有機薄膜8を成膜する。
【0018】
この際、有機材料1が充填される容器3は高周波誘導加熱されない材質(例えば絶縁物であるセラミックス)で形成したから、磁束により導電体の表面にうず電流を生じさせて加熱する高周波誘導加熱方式によっては加熱されずに、前記有機材料1に混入した高周波誘導加熱される材質(例えば金属)から成る混入物2が加熱され、この有機材料1中に散在する混入物2の周囲の有機材料1が加熱・蒸発される。
【0019】
即ち、有機材料1は、この有機材料1に混入した多数の混入物2により加熱されることになり、従来のように容器3に充填した有機材料1の一部だけが加熱・蒸発することが確実に阻止されてムラなく略均一に加熱・蒸発させることができる。
【0020】
従って、前記有機材料1を長時間加熱・蒸発させても、従来のように残余の有機材料が容器の加熱されにくい部分に残ってしまうことがなく、時間の経過に伴う蒸着レートの減少が確実に阻止できるから、所定の容器温度に対して常に一定の蒸発レートを保つことができる。
【0021】
また、容器3は、高周波誘導によっては加熱されないが、前記混入物2の加熱に応じて加熱されることになり、前記有機材料1を内外から加熱することができ、この有機材料1を一層均一に加熱することができることになる。
【0022】
従って、本発明は、容器内の有機材料を略均一に加熱させて偏りなく蒸発させることができ、長時間安定して蒸発レートを制御することができる極めて実用性に秀れた画期的な蒸着装置における有機材料用蒸発源並びにその蒸着装置となる。
【0023】
【実施例】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、有機材料1を高周波誘導加熱方式により加熱して蒸発させ、基板6に付着させることでこの基板6上に有機薄膜8を成膜する蒸着装置における前記有機材料1を充填する容器3と、この容器3の周囲に配設される誘導コイル4とから成る有機材料用蒸発源において、セラミックス製の容器3に、粒状の金属を混入物2として多数混入した粉体の有機材料1を充填したものである。
【0025】
また、セラミックス製の容器3は具体的には、石英,窒化アルミニュウム,窒化ホウ素,窒化ケイ素,炭化ケイ素若しくは酸化アルミニュウム製のものを採用すると良い。本実施例においては、容器3として石英製のるつぼを採用している。尚、容器3としてるつぼを採用しているが、この容器3はどのような形状でも良く、例えばボート型であっても良い。
【0026】
即ち、本実施例においては、前記容器3は絶縁物であるセラミックス製であるため、前記誘導コイル4から生ずる磁束によって表面にうず電流が生じない、即ち、高周波誘導加熱されないことになる。
【0027】
この容器3には、高周波電源と接続された誘導コイル4が巻回され、この誘導コイル4により発生する磁束が容器3全体、具体的にはこの容器3に充填される有機材料1全体に届くように構成している。
【0028】
この容器3には、球形状の混入物2が分散状態で混入された有機材料1が充填される。具体的には、図2に図示したように撹拌等の所定の手段によりこの混入物2が略均一に散在するように設定された有機材料1が充填される。
【0029】
即ち、前記有機材料1は粉体であって、前記誘導コイル4により生じた磁束により導電体である混入物2の表面に流れるうず電流により加熱された混入物2から、極めて効率良く熱が伝導することになり極めて熱損失が小さくなると共に、蒸発レートを大きくすることができる。この際、上述のように有機材料1に混入物2が略均一に散在するように設定しているから、この有機材料1を一層ムラなく均一に加熱することが可能となる。
【0030】
従って、高周波誘導により有機材料1に混入した混入物2を加熱することにより、従来の金属製の容器を加熱する方式と異なり、この有機材料1内に散在する混入物2によってこの有機材料1全体を均一に加熱させ、偏りなく蒸発させることができる。
【0031】
この混入物2としては、有機材料1より高い融点を持つ材料、具体的にはタンタル,タングステン等の高融点金属材料を採用すると良い。本実施例においてはタングステンを採用している。
【0032】
また、本実施例においては、混入物2として金属を採用しているが、セラミックスを被覆した金属若しくは金属を被覆したセラミックスを採用しても良いし、これらを組み合わせて混入しても良い。このセラミックスはどんなものでも良いが、具体的には、窒化アルミニウムや炭化ケイ素若しくは炭素(グラファイト)等を採用すると良い。
【0033】
また、本実施例における有機材料1及び混入物2の形状は特定されるものでなく、破砕体や粉体等どのような形状でも良いが、粒径が細かい方が密度を高くでき効率良く蒸着できる。具体的には、粒径は0.01μm〜数mm程度とするのが望ましい。
【0034】
本実施例は、上述の容器3と誘導コイル4とから成る有機材料用蒸発源を、真空排気装置(真空ポンプ等)で排気・減圧して真空化する真空槽(蒸着室)に設けた構成である。
【0035】
図1は前記真空槽内の概略説明図であり、上部に基板6(例えばガラス基板6)を設けると共に膜厚センサー7を設け、この膜厚センサー7によりレートを測定しつつ、高周波電源の出力制御を行って誘導加熱を昇温・降温制御して、前記有機材料1を基板6上に成膜する。尚、図中符号5は容器3の温度計測用端子である。
【0036】
複数の有機薄膜8を基板6上に積層する場合、前記容器3が一つしか配設されていない場合には異なる有機材料1が充填された容器3を順次取り替えることで、また、複数の容器3が配設されている場合には、この容器3を順次ローテーションさせながら蒸着することで複数の有機薄膜8を積層する。このようにして、例えば有機EL素子を形成するために用いられる有機EL材料を基板6上に順次積層させる。
【0037】
本実施例は上述のように構成したから、容器3に充填した有機材料1を加熱し、蒸発した有機材料1を基板6に付着させることでこの基板6上に有機薄膜8を成膜する際、有機材料1が充填される容器3はセラミックス製であるから、導電体の表面にうず電流を生じさせることにより加熱する高周波誘導加熱方式によっては加熱されず、前記有機材料1に混入した金属(導電体)である混入物2が加熱され、この有機材料1中に散在する混入物2の周囲の有機材料1が加熱・蒸発される。
【0038】
また、上述のようにセラミックス製の容器3は高周波誘導によっては加熱されないが、前記混入物2の加熱に応じて加熱される。
【0039】
即ち、有機材料1は、この有機材料1に混入した混入物2により加熱されるだけでなく、この加熱された混入物2からの熱が伝導した容器3によっても加熱されることになり、容器3内の有機材料1を内外から加熱することができるから、この有機材料1をムラなく均一に加熱できることになる。
【0040】
従って、前記有機材料1を長時間加熱・蒸発させても、従来のように残余の有機材料が容器の加熱されにくい部分に残ってしまうことがなく、時間の経過に伴う蒸着レートの減少が確実に阻止でき、所定の容器温度に対して常に一定の蒸発レートを保つことができる。
【0041】
従って、本実施例は、容器内の有機材料を略均一に加熱させて偏りなく蒸発させることができ、長時間安定して蒸発レートを制御することができる極めて実用性に秀れた画期的な蒸着装置における有機材料用蒸発源並びにその蒸着装置となる。
【0042】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成したから、容器内の有機材料を略均一に加熱させて偏りなく蒸発させることができ、長時間安定して蒸発レートを制御することができる極めて実用性に秀れた画期的な蒸着装置における有機材料用蒸発源並びにその蒸着装置となる。
【0043】
また、請求項2〜4に記載の発明においては、本発明を一層容易に実現できる一層実用性に秀れた蒸着装置における有機材料用蒸発源となる。
【0044】
また、請求項5,6に記載の発明においては、本発明を一層容易に有機EL素子の形成に適用できるより一層実用性に秀れた蒸着装置における有機材料用蒸発源並びにその蒸着装置となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の真空槽内の概略説明図である。
【図2】本実施例の容器の概略説明図である。
【図3】従来例の概略説明図である。
【符号の説明】
1 有機材料
2 混入物
3 容器
4 誘導コイル
6 基板
8 有機薄膜
Claims (6)
- 有機材料を高周波誘導加熱方式により加熱して蒸発させ、基板に付着させることでこの基板上に有機薄膜を成膜する蒸着装置における前記有機材料を充填する容器と、この容器の周囲に配設される誘導コイルとから成る有機材料用蒸発源において、容器を高周波誘導加熱されない材質で形成し、この容器に、高周波誘導加熱される材質から成る粒状の混入物を多数混入した有機材料を充填したことを特徴とする有機材料用蒸発源。
- 前記容器として、セラミックス製のものを採用したことを特徴とする請求項1記載の有機材料用蒸発源。
- 前記混入物として、金属,セラミックスを被覆した金属若しくは金属を被覆したセラミックスのうち少なくとも一つを前記有機材料に混入したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の有機材料用蒸発源。
- 前記セラミックス製の容器として、石英,窒化アルミニュウム,窒化ホウ素,窒化ケイ素,炭化ケイ素若しくは酸化アルミニュウム製のものを採用したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機材料用蒸発源。
- 前記有機材料として、有機EL素子の形成に用いられる有機EL材料を採用したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機材料用蒸発源。
- 前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機材料用蒸発源を一個以上真空槽内に配置したことを特徴とする蒸着装置。
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2003
- 2003-04-24 JP JP2003120549A patent/JP2004323915A/ja active Pending
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