JP2004323677A - ポリエステル、それからなるポリエステル成形物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステルを製造するに際し、アルミニウム化合物に特定のリン化合物を組み合わせた重合触媒を用い、さらにAA低減剤を添加する。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル、それからなるポリエステル成形物およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、耐熱老化性に優れ、異物発生が少なく透明性にも優れ、AAの含有率が極めて低いポリエステル成形物を与えるポリエステル、それからなるポリエステル成形物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性、及び化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等の広範な分野において使用されている。特に、ポリエチレンテレフタレートなどの飽和ポリエステルからなるボトルは、機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤー性に優れるため、ジュース、炭酸飲料、清涼飲料などの飲料充填用容器および目薬、化粧品などの容器として広く使用されている。
【0003】
代表的なポリエステルである芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールを主構成成分とするポリエステルは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の場合には、テレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル化反応もしくはエステル交換反応によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのオリゴマー混合物を製造し、これを高温、真空下で触媒を用いて液相重縮合させ、粒状化後、固相重縮合し成形用ペレットが製造される。こうして製造されたポリエステルペレットは射出成形してプリフォームを製造し、次いでこのプリフォームをブロー成形するなどして二軸延伸し、ボトル状に成形されることで製造されている。
【0004】
このポリエステルボトルには、一般にホルムアルデヒドおよびAAなどのアルデヒド類が含まれている。特に、AAは、成形前のポリエステルペレット中に含有されていることはもとより、さらに成形時にも新たに生成することが知られている。このAAは、ボトルに充填される内容物の味、香りや皮膚刺激性物質の混入など品質を低下させるため、特に飲料および目薬充填用ボトルではこれらAAは可能な限り低くすることが望まれる。
【0005】
従来から、このようなポリエステルの重縮合時に用いられるポリエステル重縮合触媒としては、アンチモンあるいはゲルマニウム化合物が広く用いられている。三酸化アンチモンは、安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるが、これを主成分、即ち、実用的な重合速度が発揮される程度の添加量にて使用すると、重縮合時に金属アンチモンが析出するため、ポリエステルに黒ずみや異物が発生し、フィルムの表面欠点の原因にもなる。また、中空の成形品等の原料とした場合には、透明性の優れた中空成形品を得ることが困難である。このような経緯で、アンチモンを全く含まないか或いはアンチモンを触媒主成分として含まないポリエステルが望まれている。
【0006】
アンチモン化合物以外で優れた触媒活性を有し、かつ上記の問題を有しないポリエステルを与える触媒としては、ゲルマニウム化合物がすでに実用化されているが、この触媒は非常に高価であるという問題点や、重合中に反応系から系外へ留出しやすいため反応系の触媒濃度が変化し重合の制御が困難になるという課題を有しており、触媒主成分として使用することには問題がある。
【0007】
アンチモン系あるいはゲルマニウム系触媒に代わる重縮合触媒の検討も行われており、テトラアルコキシチタネートに代表されるチタン化合物がすでに提案されているが、これらを用いて製造されたポリエステルは溶融成形時に熱劣化を受けやすく、またポリエステルが著しく着色するという問題点を有する。また、コバルト系触媒についても種々検討された経緯があるが、重縮合触媒としての活性度が十分ではなく、黄変防止のための着色改良剤の効果しか期待されていない。
【0008】
一方、アルミニウム化合物は一般に触媒活性に劣ることが知られているが(例えば、特許文献1参照。)、アルミニウム化合物にリン化合物を併用することでアルミニウム化合物の触媒活性が向上することが知られている(例えば、特許文献2)参照)。該触媒をもちいると、従来触媒であるアンチモン、ゲルマニウム、チタンおよびコバルト系触媒に比べて成形物の透明性および耐熱性にも優れるものであるが、溶融成形時、ポリエステル中のAAの含有率抑制効果は不十分であるという問題点が依然として残るものであった。
【0009】
以上のような経緯で、アンチモン、ゲルマニウム、チタンおよびコバルト系以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とする重合触媒であり、触媒活性に優れ、透明性に優れ、かつ溶融成形時にAAの含有率を抑制可能なポリエステルおよびその製造方法およびその成型物が望まれている。
【0010】
ポリエチレンテレフタレート(PET)レジン中のAAの含有率を低減させる方法として、AA低減剤に関する次のような特許が従来手法として公知になっている。すなわちポリエステルアミドをPETにブレンドする方法(例えば、特許文献3)、またポリアミド(例えば、特許文献4−7)、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなど(例えば、特許文献8) を同様にブレンドする方法が開示されている。さらにはポリオール類(例えば、特許文献9)、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレン/ビニルアルコール)コポリマーおよび糖アルコール類など(例えば、特許文献10) がPETにブレンドされている。また分子中にアミノ基、ヒドキシル基、アミド基などの活性水素を少なくとも2個分子中に含有する有機化合物をポリエステルに添加することで、溶融成型工程中に発生するアセトアルデヒドを上記有機化合物と反応させる方法が開示されている(例えば、特許文献11)。
【0011】
一方、触媒に関しては、低レベルのチタンあるいはアンチモン触媒の有効性が開示されており(例えば、特許文献12)、さらに一般的な触媒に加えてコバルト化合物5−120ppm量の併用の必要性が開示されている(例えば、特許文献13−14)。PETの重縮合触媒としての上記金属触媒は、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、スズ、マグネシウム、マンガン、コバルトなどの金属化合物などが使用されており、これらの一般的な重縮合触媒で製造したPETに上述のAA低減剤をブレンドする方法が数多く提案されてきた。
【0012】
【特許文献1】
特公昭46−40711号公報(第1−2頁等)
【特許文献2】
特開2001−131276号公報(第3−4頁等)
【特許文献3】
特表2000−505482号公報 (第7−8頁等)
【特許文献4】
USP48,837,115 (第2−3頁等)
【特許文献5】
USP5,258,233 (第2−3頁等)
【特許文献6】
特開平01−024849号公報 (第4頁等)
【特許文献7】
USP5,266,413 (第3−4頁等)
【特許文献8】
WO01/23475 (第2−3頁等)
【特許文献9】
WO01/00724 (第2頁等)
【特許文献10】
WO01/02489 (第3−4頁等)
【特許文献11】
USP6,274,212 (第3−5頁等)
【特許文献12】
USP4,356,299 (第4頁等)
【特許文献13】
USP5,656,221 (第2−3頁等)
【特許文献14】
WO01/30900 (第3頁等)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記した欠点を有するアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物およびコバルト化合物を触媒主成分として含まず、触媒金属成分としてアルミニウム化合物およびリン化合物を主たる重縮合触媒として用いることで、耐熱老化性に優れ、異物発生が少なく透明性にも優れ、AAの含有率の低いポリエステル成形物を与えるポリエステル、それからなるポリエステル成形物およびその製造方法を提供することを目的にしたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るポリエステル組成物はPETの重縮合触媒として上記の一般的な金属触媒である、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、スズ、マグネシウム、マンガン、コバルトなどの金属化合物などを使用しないで、アルミニウム化合物およびリン化合物を重合触媒として使用し、さらにAA低減剤を添加することで、AA含有量の抑制されたポリエステル組成物が得られることを見出し本発明に到達した。係るポリエステル組成物の製造方法の一例は、アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、リン化合物から選ばれる少なくとも1種を含む重縮合触媒の存在下で、グリコール成分とジカルボン酸成分を用いて重縮合させる液相重縮合工程(1)と、工程(1)で得られたポリエステルを粒状化する工程(2)と、工程(2)で得られたポリエステルを不活性ガス雰囲気下、ガラス転移点(Tg)以上でかつ融点以下の温度で予備結晶化させる予備結晶化工程(3)と、工程(3)で得られるポリエステルを不活性ガス雰囲気下、融点以下の温度で加熱処理する固相重合工程(4)と、工程(4)で得られたポリエステルにAA低減剤をブレンドして成形する工程(5)からなることを特徴とするものである。
【0015】
また、上記ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体およびジオールまたはそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応またはエステル交換反応により得られる生成物を重縮合したものをポリエステルレジンとして用いることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明で使用できるポリエステル重縮合触媒は、主としてアルミニウム化合物およびリン系化合物で構成される。
【0017】
本発明の重縮合触媒を構成するアルミニウムないしアルミニウム化合物としては、金属アルミニウムのほか、公知のアルミニウム化合物は限定なく使用できる。
アルミニウム化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩。
【0018】
アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムiso−プロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso−プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。
これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。
【0019】
本発明のアルミニウムないしアルミニウム化合物の使用量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.001〜0.05モル%が好ましく、さらに好ましくは、0.005〜0.02モル%である。使用量が0.001モル%未満であると触媒活性が十分に発揮されない場合があり、使用量が0.05モル%以上になると、熱安定性や熱酸化安定性の低下、アルミニウムに起因する異物の発生や着色の増加が問題になる場合が発生する。この様にアルミニウム成分の添加量が少なくても本発明の重合触媒は十分な触媒活性を示す点に大きな特徴を有する。その結果、熱安定性や熱酸化安定性が優れ、アルミニウムに起因する異物や着色が低減される。
【0020】
本発明のリン化合物としては、特に限定はされないが、リン酸ならびにトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、フェニルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸ならびにトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイト等の亜リン酸エステルなどが挙げられる。
本発明のより好ましいリン化合物は、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。これらのリン化合物を含有することでポリエステルの熱安定性等の物性が改善する効果に加えて、ポリエステルの重合時に、これらのリン化合物を本発明のアルミニウム化合物と共存して用いることで触媒活性の向上効果が見られる。これらの中でも、ホスホン酸系化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0021】
本発明で言うホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物とは、それぞれ下記式(化1)〜(化6)で表される構造を有する化合物のことを言う。
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
本発明のホスホン酸系化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。本発明のホスフィン酸系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。本発明のホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0029】
ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物の中では、本発明のリン化合物としては、下記式(化7)〜(化12)で表される化合物が好ましい。
【0030】
【化7】
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
【化10】
【0034】
【化11】
【0035】
【化12】
【0036】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0037】
また、本発明のリン化合物としては、下記一般式(化13)〜(化15)で表される化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0038】
【化13】
【0039】
【化14】
【0040】
【化15】
【0041】
(式(化13)〜(化15)中、R1、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0042】
本発明のリン化合物としては、上記式(化13)〜(化15)中、R1、R4、R5、R6が芳香環構造を有する基である化合物がとくに好ましい。
【0043】
本発明のリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルがとくに好ましい。
【0044】
上述したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてリンの金属塩化合物がとくに好ましい。リンの金属塩化合物とは、リン化合物の金属塩であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物の金属塩を用いると本発明の課題であるポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物の金属塩としては、モノ金属塩、ジ金属塩、トリ金属塩などが含まれる。
【0045】
また、上記したリン化合物の中でも、金属塩の金属部分が、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0046】
本発明のリンの金属塩化合物としては、下記一般式(化16)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0047】
【化16】
【0048】
(式(化16)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0049】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。R3O−としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0050】
上記一般式(化16)で表される化合物の中でも、下記一般式(化17)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0051】
【化17】
【0052】
(式(化17)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0053】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。R3O−としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0054】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0055】
上記式(化17)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0056】
本発明のリンの金属塩化合物としては、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、カリウム[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベリリウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ストロンチウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、マンガンビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]、ナトリウム[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−クロロベンジルホスホン酸フェニル]、マグネシウムビス[4−クロロベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、マグネシウムビス[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、フェニルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[フェニルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[フェニルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]がとくに好ましい。
【0057】
上述したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物がとくに好ましい。これらのリン化合物を含有することでポリエステルの物性改善効果がとくに高まることに加えて、ポリエステルの重合時に、これらのリン化合物を本発明のアルミニウム化合物と共存して用いることで触媒活性の向上効果が大きく見られる。
P−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物とは、分子内にP−OHを少なくとも一つ有するリン化合物であれば特に限定はされない。これらのリン化合物の中でも、P−OH結合を少なくとも一つ有するホスホン酸系化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0058】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0059】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、下記一般式(化18)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0060】
【化18】
【0061】
(式(化18)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0062】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0063】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0064】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、(1−ナフチル)メチルホスホン酸、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、2−メチルベンジルホスホン酸エチル、4−クロロベンジルホスホン酸フェニル、4−アミノベンジルホスホン酸メチル、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルなどが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチルがとくに好ましい。
【0065】
本発明の好ましいリン化合物としては、化学式(化19)であらわされるリン化合物が挙げられる。
【0066】
【化19】
【0067】
(式(化19)中、R1は炭素数1〜49の炭化水素基、または水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜49の炭化水素基を表し、R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0068】
また、更に好ましくは、化学式(化19)中のR1,R2,R3の少なくとも一つが芳香環構造を含む化合物である。
【0069】
これらのリン化合物の具体例を以下に示す。
【0070】
【化20】
【0071】
【化21】
【0072】
【化22】
【0073】
【化23】
【0074】
【化24】
【0075】
【化25】
【0076】
また、本発明のリン化合物は、分子量が大きいものの方が重合時に留去されにくいため効果が大きく好ましい。
【0077】
本発明のリン化合物は、フェノール部を同一分子内に有するリン化合物であることが好ましい。フェノール部を同一分子内に有するリン化合物を含有することでポリエステルの物性改善効果が高まることに加えて、ポリエステルの重合時にフェノール部を同一分子内に有するリン化合物を用いることで触媒活性を高める効果がより大きく、従ってポリエステルの生産性に優れる。
【0078】
フェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果がとくに大きく好ましい。
【0079】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、下記一般式(化26)〜(化28)で表される化合物が好ましい。
【0080】
【化26】
【0081】
【化27】
【0082】
【化28】
【0083】
(式(化26)〜(化28)中、R1はフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4,R5,R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。R2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
【0084】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンオキサイド、および下記式(化29)〜(化32)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記式(化31)で表される化合物およびp−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチルがとくに好ましい。
【0085】
【化29】
【0086】
【化30】
【0087】
【化31】
【0088】
【化32】
【0089】
上記の式(化31)にて示される化合物としては、SANKO−220(三光株式会社製)があり、使用可能である。
【0090】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化33)で表される特定のリンの金属塩化合物から選択される少なくとも一種がとくに好ましい。
【0091】
【化33】
【0092】
((式(化33)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4O−としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0093】
これらの中でも、下記一般式(化34)で表される化合物から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0094】
【化34】
【0095】
(式(化34)中、Mn+はn価の金属カチオンを表す。nは1,2,3または4を表す。)
【0096】
上記式(化33)または(化34)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0097】
本発明の特定のリンの金属塩化合物としては、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、カリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、ベリリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル]、ストロンチウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、バリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル]、マンガンビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ニッケルビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、銅ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]がとくに好ましい。
【0098】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化35)で表されるP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物から選択される少なくとも一種がとくに好ましい。
【0099】
【化35】
【0100】
((式(化35)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0101】
これらの中でも、下記一般式(化36)で表される化合物から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0102】
【化36】
【0103】
(式(化36)中、R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0104】
上記のR3としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0105】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸オクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸などが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルがとくに好ましい。
【0106】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化37)で表される特定のリン化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物が好ましい。
【0107】
【化37】
【0108】
(上記式(化37)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0109】
上記一般式(化37)の中でも、下記一般式(化38)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が高く好ましい。
【0110】
【化38】
【0111】
(上記式(化38)中、R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0112】
上記のR3、R4としては例えば、水素、メチル基、ブチル基等の短鎖の脂肪族基、オクタデシル等の長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基等の芳香族基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0113】
本発明の特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジイソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジ−n−ブチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルなどが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルがとくに好ましい。
【0114】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、本発明でとくに望ましい化合物は、化学式(化39)、(化40)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
【0115】
【化39】
【0116】
【化40】
【0117】
上記の化学式(化39)にて示される化合物としては、Irganox1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されており、また化学式(化40)にて示される化合物としてはIrganox1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されており、使用可能である。
【0118】
リン化合物は、ポリエステルの熱安定剤としては知られていたが、これらの化合物を従来の金属含有ポリエステル重合触媒と組み合わせて使用しても、溶融重合を大きく促進することはこれまで知られていなかった。実際に、ポリエステル重合の代表的な触媒であるアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物あるいはゲルマニウム化合物を重合触媒としてポリエステルを溶融重合する際に、本発明のリン化合物を添加しても、実質的に有用なレベルまで重合が促進されることは認められない。
【0119】
本発明の方法に従ってポリエステルを製造する際のリン化合物の使用量としては、得られるポリエステルのポリカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.0001〜0.1モル%が好ましく、0.005〜0.05モル%であることがさらに好ましい。
【0120】
本発明のリン化合物を併用することにより、ポリエステル重合触媒中のアルミニウムとしての添加量が少量でも十分な触媒効果を発揮する触媒が得られる。リン化合物の添加量が0.0001モル%未満の場合には添加効果が発揮されない場合があり、また0.1モル%を超えて添加すると逆にポリエステル重合触媒としての触媒活性が低下する場合があり、その低下の傾向は、アルミニウムの使用量等により変化する。
【0121】
本発明では、基本的には金属触媒としてアルミニウム化合物を使用するが、第2金属元素として、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、スズ、マンガン、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ジルコニウム、ハフニウム、珪素、鉄、ニッケル、ガリウムおよびそれらの化合物などを使用してもかまわない。この際、好ましい触媒としては、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、マグネシウム化合物などがある。
【0122】
これらの成分の添加が前述のようなポリエステルの特性、加工性、色調など製品に問題を生じない添加量の範囲内において共存させて用いることは、重縮合時間の短縮による生産性を向上させる際に有効であり、好ましい。
【0123】
本発明に言うポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種または二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種または二種以上とから成るもの、またはヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から成るもの、または環状エステルから成るものをいう。
【0124】
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、 テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3ーシクロブタンジカルボン酸、1,3ーシクロペンタンジカルボン酸、1,2ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,3ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸、2,5ーノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5ー(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3ーナフタレンジカルボン酸、1,4ーナフタレンジカルボン酸、1,5ーナフタレンジカルボン酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、2,7ーナフタレンジカルボン酸、4、4’ービフェニルジカルボン酸、4、4’ービフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’ービフェニルエーテルジカルボン酸、1,2ービス(フェノキシ)エタンーp,p’ージカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0125】
これらのジカルボン酸のうちテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸とくに2,6ーナフタレンジカルボン酸が、得られるポリエステルの物性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を構成成分とする。
【0126】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3、4、3’、4’ービフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0127】
グリコールとしてはエチレングリコール、1、2ープロピレングリコール、1、3ープロピレングリコール、ジエチレングリ コール、トリエチレングリコール、1、2ーブチレングリコール、1、3ーブチレングリコール、2、3ーブチレングリコール、1,4ーブチレングリコール、1、5ーペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオー ル、1,2ーシクロヘキサンジオール、1,3ーシクロヘキサンジオール、1,4ーシクロヘキサンジオール、1,2ーシクロヘキサンジメタノール、1,3ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジエタノール、1,10ーデカメチレングリコール、1、12ードデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコールが挙げられる。
【0128】
また、ヒドロキノン、4, 4’ージヒドロキシビスフェノール、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシ)ベン ゼン、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1、2ービス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5ーナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0129】
これらのグリコールのうちエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0130】
これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0131】
ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3ーヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、pー( 2ーヒドロキシエトキシ)安息香酸、4ーヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0132】
環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0133】
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが挙げられる。
【0134】
本発明で用いられるポリエステルは主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
【0135】
主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
【0136】
主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。ここで言うアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいても良い。
【0137】
本発明で用いられるナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、1,3ーナフタレンジカルボン酸、1,4ーナフタレンジカルボン酸、1,5ーナフタレンジカルボン酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、2,7ーナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0138】
本発明で用いられるアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1、2ープロピレングリコール、1、3ープロピレングリコール、1、2ーブチレングリコール、1、3ーブチレングリコール、2、3ーブチレングリコール、1,4ーブチレングリコール、1、5ーペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオー ル、1,2ーシクロヘキサンジオール、1,3ーシクロヘキサンジオール、1,4ーシクロヘキサンジオール、1,2ーシクロヘキサンジメタノール、1,3ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジエタノール、1,10ーデカメチレングリコール、1、12ードデカンジオール等があげられる。これらは同時に2種以上を使用しても良い。
【0139】
本発明のポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ(1,4ーシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートおよびこれらの共重合体が好ましく、これらのうちポリエチレンテレフタレートおよびこの共重合体が特に好ましい。
【0140】
本発明で使用できるAA低減剤としては、ポリエステル中のアセトアルデヒドと反応する活性水素を少なくとも分子中に2個含有する有機化合物が使用できる。
【0141】
上記AA低減剤である有機化合物には、アンスラニルアミド、サリシルアミド、サリシルアニリド、o−メルカプトベンズアミド、N−アセチルグリシンアミド、マロンアミド、2−アミノベンゼンスルホンアミドなどの酸アミド化合物類、o−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノ安息香酸、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノピリジン、1,2−ジアミノアンスラキノン、ジアニリノエタンなどのジアミノ化合物類。4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールなど官能基がアミノ基およびヒドキシル基である化合物類。3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、4,5−ジヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸ニナトリウム塩などのジヒドロキシ化合物類などがある。
【0142】
アンスラニルアミドなどの酸アミド類および1,8−ジアミノナフタレン3,4−ジアミノ安息香酸などのジアミン類が好ましく、さらに好ましくは、アンスラニルアミドである。
【0143】
本発明で使用されるAA低減剤の添加量は、10〜2000ppmであり、好ましくは20〜1000ppm、さらに好ましくは50〜700ppmである。10ppm未満では、AA低減効果が不十分であり、2000ppmを超えるとポリエステルとの相溶性不良による成型性不良、力学特性の低下や着色の原因などが発生する場合があり好ましくない。
【0144】
本発明で使用されるAA低減剤はポリエステル重合時もしくは重合後、あるいはポリエステル成形時の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは化合物の特性やポリエステル成形体の要求性能に応じてそれぞれ異なる。
また添加方法に関しても、そのままで添加する方法や、ポリエステルペレットにAA低減剤のスラリーあるいは有機溶剤溶液をスプレイあるいは浸漬して表面コートする方法、マスターバッチで添加する方法など、媒体に含有させて添加する方法などがあり、どの方法が好適かは化合物の特性やポリエステル成形体の要求性能に応じてそれぞれ異なる。
【0145】
本発明のポリエステル中には、有機系、無機系、及び有機金属系のトナー、ならびに蛍光増白剤などを含むことができ、これらを一種もしくは二種以上含有することによって、ポリエステルの黄み等の着色をさらに優れたレベルにまで抑えることができる。また他の任意の重合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
これらの添加剤は、ポリエステルの重合時もしくは重合後、あるいはポリエステルの成形時の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは化合物の特性やポリエステル成形体の要求性能に応じてそれぞれ異なる。
【0146】
本発明の液相重縮合工程(1)は、従来公知の液相重合工程である。すなわち、PETの場合は、テレフタル酸とエチレングリコールおよび必要に応じて他の共重合成分を直接反応させて水を留出しエステル化した後、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールおよび必要に応じて他の共重合成分を反応させてメチルアルコールを留出しエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
【0147】
本発明の重縮合触媒は、重合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。例えばエステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前及び反応途中の任意の段階もしくは重縮合反応の開始直前あるいは反応途中に反応系へ添加することができる。特に、アルミニウムないしその化合物は重縮合反応の開始直前に添加することが好ましい。
本発明の重縮合触媒の添加方法は、粉末状ないしはニート状での添加であってもよいし、エチレングリコールなどの溶媒のスラリー状もしくは溶液状での添加であってもよく、特に限定されない。また、アルミニウム金属もしくはその化合物と他の成分、例えば本発明のリン化合物とを予め混合した混合物として添加してもよいし、これらを別々に添加してもよい。またアルミニウム金属もしくはその化合物と他の成分、例えばリン化合物とを同じ添加時期に重合系に添加してもよく、それぞれの成分を別々の添加時期に添加してもよい。また、触媒の全量を一度に添加しても、複数回に分けて添加してもよい。
【0148】
上記の液相重縮合工程(1)は、バッチ方式、半連続方式、連続方式何れかの方法でもよく。得られたポリエステルレジンは、工程(2)で粒状(ペレット)化される。
【0149】
本発明の工程(2)で得られるポリエステルペレットの形状は、シリンダー型、角型、球状または扁平な板状などの何れでもよく、その平均粒子径は、通常1.5〜5mm、好ましくは1.6〜4.5mm、さらに好ましくは1.8〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダー型の場合は、長さ1.5〜4.0mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、ペレットの重量は10〜40mg/粒の範囲が実用的である。
【0150】
上記の工程(2)で得られるポリエステルペレットのIVは0.3〜0.9 dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.85 dl/g、さらに好ましくは0.5〜0.65 dl/gである。0.3 dl/g未満では、例えば繊維、シート、フィルムなどの成形品の力学特性が不足し好ましくない態様である。0.9 dl/gを超えると溶融重縮合の生産性が極端に悪化したり、アセトアルデヒド(AA)含有量が急増したりするので、好ましくない。
【0151】
次いで、本発明のポリエステルペレットは予備結晶化工程(3)を経て固相重合工程(4)へ輸送される。本発明の予備結晶化工程での結晶化は、不活性ガス下または減圧下あるいは水蒸気または水蒸気含有不活性ガス雰囲気下において、ガラス転移点(Tg)以上でかつ融点以下の温度、具体的にはPETの場合は、100〜210℃の温度で1〜5時間加熱して行われる。
【0152】
本発明の固相重合工程(4)での固相重合は不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下、融点以下の温度、具体的にはPETの場合は190〜235℃の温度範囲で1〜30時間行われる。
【0153】
本発明に用いられるポリエステル、特に、繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルの固相重合後の固有粘度(IV)は0.55〜1.5 dl/g、好ましくは0.58〜1.30 dl/g、さらに好ましくは0.6〜1.00 dl/gの範囲である。IVが0.55 dl/g未満では、得られた成形体などの機械的特性が悪い。また、1.5 dl/gを超える場合は、成形機などによる溶融時の樹脂温度を高くする必要が生じるため熱分解を伴うようになり、例えば中空成形体などの保香性に影響を及ぼす遊離の低分子化合物の増加、成形体が黄色に着色するなどの問題点が起こる。
【0154】
また、本発明に用いられるポリエステル、特に、繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルの固有粘度(IV)は0.40〜1.00 dl/g、好ましくは0.42〜0.90 dl/g、さらに好ましくは0.45〜0.80 dl/gの範囲である。IVが0.40 dl/g未満では、得られた成形体などの機械的特性が悪い。また、1.00 dl/gを超える場合は、成形機などによる溶融時の樹脂温度を高くする必要が生じるため熱分解を伴うようになり、例えば中空成形体などの保香性に影響を及ぼす遊離の低分子化合物の増加、成形体が黄色に着色するなどの問題点が起こる。
【0155】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、評価法は以下の方法で実施した。
【0156】
固有粘度(IV:dl/g)
溶融重縮合および固相重縮合で得られたそれぞれのポリエステルペレット(長さ約3mm、直径約2mm、シリンダー状)を、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの6/4(重量比)混合溶媒に80〜100℃で数時間かけ溶解し、ウベローデ粘度計を用いて、温度30℃で測定した。濃度は、4g/lを中心にして何点か測定し、常法に従ってIVを決定した。
【0157】
アセトアルデヒド含量(AA含有量)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れ、上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィーで測定し、濃度をppmで表示した。
【0158】
ペレットの密度
硝酸カルシュウム/水混合溶液の密度勾配管を用い、30℃で測定した。
【0159】
中空成形体の成形
ポリエステルを除湿空気を用いた乾燥機で140℃、5時間乾燥し、名機製作所製M−150C(DM)射出成型機により樹脂温度290℃、金型温度20℃でプリフォームを成形した。このプリフォームをコーポプラスト社製LB−01E延伸ブロー成型機を用いて、ブロー圧32kg/cm2で20℃の金型内で二軸延伸ブロー成形し、2000ccの中空成形体(胴部は円形)を得た。
【0160】
味覚および臭覚評価
上記中空成形体(2000ccのボトル)の容量の約90%に相当する量の蒸留水を常温でボトルに注入・密栓した後、30℃にコントロールしてある乾燥機内にこのボトルを1カ月放置した。処理後25℃に冷却し、5人の被検者が内容物を試飲し、匂いおよび味について下記の基準で評価した。
○:5人全員が「未処理蒸留水と変わらず」と評価した時。
○〜△:3人が「未処理蒸留水と変わらず」、2人が若干不快あるいは不快と評価した時。
△:2人が「未処理蒸留水と変わらず」、3人が「若干不快あるいは不快」と評価した時。
△〜×:1人が「未処理蒸留水と変わらず」、4人が「若干不快あるいは不快」と評価した時。
×:5人全員が「若干不快あるいは不快」と評価した時。
アルデヒド臭の評価
上記中空成形体(2000ccのボトル)をキャップで密栓した後、40℃にコントロールしてある乾燥機内で2時間加熱し、その後オーブンから取り出してキャップを開けた時のアルデヒド臭を官能評価した。
○:5人全員が無臭と評価した時。
○〜△:3人が無臭、2人が若干アルデヒド臭ありと評価した時。
△:2人が無臭、3人がアルデヒド臭ありと評価した時。
△〜×:1人が無臭、4人がアルデヒド臭ありと評価した時。
×:5人全員がアルデヒド臭ありと評価した時。
【0161】
(成型用ポリエステルペレットの調製)
攪拌機付き熱媒循環式2リッターステンレス製オートクレーブに高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3モル%加え、0.25MPaの加圧下245℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を120分行いエステル化率が95%のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物(以下BHET混合物という)を得た。このBHET混合物に重縮合触媒として塩基性酢酸アルミニウム(Aldrich製)水溶液にエチレングリコールを加え環留し、結果として15g/l塩基性酢酸アルミニウムのエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として0.014モル%とリン化合物としてIrganox 1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ製)の10g/lエチレングリコール溶液を酸成分に対してIrganox 1425として0.02モル%を加え、次いで、窒素雰囲気下、常圧にて245℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに275℃、13.3PaでIVが約0.6dl/gになるまで溶融重縮合反応を実施した。放圧に続き、微加圧下のレジンを冷水にストランド状に吐出して急冷し、その後20秒間冷水中で保持した後、カッティングして長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。上記溶融重縮合で得られたポリエステルペレットを160℃で加熱処理してポリエステルペレットの表面を結晶化させた後、静置固相重縮合塔で窒素気流下、約165℃で乾燥後、205℃で固相重合しIVが0.80dl/g、AA含有量1.9ppm、密度1.4g/cm3の固相重縮合ポリエステルペレットを得た。
【0162】
AA低減剤含有マスターバッチ(MB)の調製
【0163】
〔MB1〕
アンスルニルアミド(AA低減剤1)と、上述の成形用ポリエステルペレットとを溶融ブレンドし、再ペレット化したものをMB1として用いた。
【0164】
〔MB2〕
3,4−ジアミノ安息香酸(AA低減剤2)と、上述の成形用ポリエステルペレットとを溶融ブレンドし、再ペレット化したものをMB2として用いた。
【0165】
〔MB3〕
1,8−ジアミノナフタレン(AA低減剤3)と、上述の成形用ポリエステルペレットとを溶融ブレンドし、再ペレット化したものをMB3として用いた。
【0166】
〔MB4〕
マロンアミド(A低減剤4)と、上述の成形用ポリエステルペレットとを溶融ブレンドし、再ペレット化したものをMB4として用いた。
【0167】
〔MB5〕
3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(AA低減剤5)と、上述の成形用ポリエステルペレットとを溶融ブレンドし、再ペレット化したものをMB5として用いた。
【0168】
(実施例1〜5)
上述の成型用ポリエステルペレットと上述のMB1、2、3、4および5をそれぞれブレンドし、射出成型機を用いてボトルに成型した。得られたボトルの諸特性を表1に示す。
【0169】
(実施例6)
実施例1において、AA低減剤1の添加量を変える以外は実施例1と同様にしてボトルを成型した。得られたボトルの諸特性を表1に示す。
【0170】
(実施例7)
溶融重合時にAA低減剤1を添加すること意外は、上述の成形用ポリエステルペレットの調製と同様にポリエステルペレットを調製した。そのポリエステルペレットを、射出成形機を用いてボトルに成形した結果、AA含有率が低く、味覚、嗅覚に優れたボトルが得られた。
【0171】
(実施例8)
AA添加剤の添加位置を溶融重合後とすること意外は、実施例7と同様にしてボトルを成形した。その結果、AA含有率が低く、味覚、嗅覚に優れたボトルが得られた。
【0172】
(比較例1)
実施例1において、AA低減剤を用いない以外はすべて実施例1と同様にしてボトルを成型した。得られたボトルの諸特性を表1に示す。
【0173】
(比較例2)
実施例1において、AA低減剤種を少なくとも2個の活性水素を持たないメチルアンスラニレートにする以外は、すべて実施例1と同様にしてボトルを成型した。得られたボトルの諸特性を表1に示す。
【0174】
【表1】
【0175】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物は耐熱老化性、透明性に優れ、異物発生が少なく、AA含有率が低いため、ボトルなどの成形品、その他様々な用途に適している。
Claims (17)
- アルミニウムおよびその化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、リン化合物から選ばれる少なくとも1種を含む重縮合触媒と、アセトアルデヒド(AA)低減剤を含むことを特徴とするポリエステル組成物。
- AA低減剤がポリエステル中のアセトアルデヒドと反応する活性水素を少なくとも分子中に2個含有する有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル組成物。
- 上記AA低減剤である有機化合物が、アンスラニルアミド、サリシルアミド、サリシルアニリド、o−メルカプトベンズアミド、N−アセチルグリシンアミド、マロンアミド、2−アミノベンゼンスルホンアミドなどの酸アミド化合物類、o−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノ安息香酸、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノピリジン、1,2−ジアミノアンスラキノン、ジアニリノエタンなどのジアミノ化合物類。4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールなど官能基がアミノ基およびヒドキシル基である化合物類。3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、4,5−ジヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸ニナトリウム塩などのジヒドロキシ化合物類の群から選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル組成物。
- AA低減剤が、アンスラニルアミドであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル組成物。
- AA低減剤のポリエステル中への添加量が10〜2000ppmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- AA低減剤の熱分解温度が270℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 上記アルミニウム化合物が酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 上記リン化合物がホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- ポリエステルが芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体およびジオールまたはそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応またはエステル交換反応により得られる生成物を重縮合して得られたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 前記ジカルボン酸がテレフタル酸を主たる成分として含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 上記ジカルボン酸がイソフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸を0〜15モル%含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 上記ポリエステル組成物の固有粘度(IV)が0.55〜1.50 dl/gであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のポリエステル組成物。
- 請求項1〜12に記載のポリエステルの製造方法。
- グリコール成分とジカルボン酸成分を用いて重縮合させる液相重縮合工程(1)と、工程(1)で得られたポリエステルを粒状化する工程(2)と、工程(2)で得られたポリエステルを不活性ガス雰囲気下、ガラス転移点(Tg)以上でかつ融点以下の温度で予備結晶化させる予備結晶化工程(3)と、工程(3)で得られるポリエステルを不活性ガス雰囲気下、融点以下の温度で加熱処理する固相重合工程(4)と、工程(4)で得られたポリエステルとAA低減剤をブレンドして成形する工程(5)からなる請求項13に記載のポリエステル組成物の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のポリエステルからなる中空成形体。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のポリエステルからなるシート。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のポリエステルからなるフィルム。
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