JP2004323670A - インクジェット記録用インク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水、プロピレングリコール及びピロリドン系溶剤を含む溶媒中に、着色材を溶解又は分散させてなるインクジェット記録用インクにおいて、プロピレングリコールの含有量をX重量%、ピロリドン系溶剤の含有量をY重量%としたときに、以下の三つの式
【数1】
1≦X≦40
0.2≦Y≦33
0.2≦(X/Y)≦20
を同時に満たすようにする。
【選択図】 無し
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水や有機溶剤を含む溶媒中に、染料や顔料等の着色材を溶解又は分散させてなるインクジェット用記録インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット記録方式に用いるインクとしては、着色剤として各種の水溶性染料を水単体、或いは水および水溶性溶剤からなる溶媒中に溶解し、必要に応じて各種添加剤を添加したもの(以下、染料インクと記述する)が用いられていたが(特許文献1〜3参照)、最近では、染料インクの問題点である記録画像の耐水性、耐光性を改善するために、着色剤として染料のかわりにカーボンブラックやジアゾイエローなどの顔料を用いたインク(以下、顔料インクと記述する)が提案されている(特許文献4〜8等)。
【0003】
ところで、インクジェット記録方式とは、極めて細い流路にインクを満たしておき、その流路に瞬間的に物理的な力を加えること、または、ヒーター上で瞬間的に熱エネルギーを加えてインクを沸騰させることで流路の先端部のノズルからインクの液滴を噴射し、その液滴が紙などの被記録媒体に着弾することで記録を行う方式である。
【0004】
インクジェット記録方式では、ノズルにおいて溶媒が蒸発し、染料や顔料が残ることによってノズルが詰まり、記録が不能となる場合があるので、インクジェット記録用インク、特に顔料インクに対しては、ノズルの詰まり難さ、良好な吐出安定性、良好なスタートアップ特性を確保することが求められている。その一方で、インクジェット記録により形成された記録画像の早期乾燥性が求められ、そのため、インクジェット記録用インク、特に顔料インクの溶剤に対しては、印画紙受容層への優れた浸透性や優れた揮発性を示すことが求められている。このような相反する要求特性をバランス良く示すインクジェット記録用インクの溶剤として、水とプロピレングリコールとグリセリンとを特定の配合比で混合した混合溶媒が提案されている(特許文献9)。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−51485号公報
【特許文献2】特開昭63−56575号公報
【特許文献3】特開平1−198671号公報
【特許文献4】特開昭57−10660号公報
【特許文献5】特開昭57−10661号公報
【特許文献6】特公平1−15542号公報
【特許文献7】特開平2−255875号公報
【特許文献8】特開平2−276876号公報
【特許文献9】特許第3050049号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水とプロピレングリコールとグリセリンとを特定の配合比で混合した混合溶媒を用いたインクジェット記録用インクの場合、吐出安定性やスタートアップ特性については、満足すべき結果が得られているが、記録画像の乾燥性については、従来にくらべて改善されているものの、今まで以上の高速記録が求められている現状では十分とはいえず、更なる改善が求められている。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、良好な吐出安定性及び良好なノズルの目詰まり防止性(スタートアップ特性)、更に印画紙上で良好な乾燥性を示す、新たな構成のインクジェット記録用インクを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、インク溶剤組成に求められる多くの要素を満たす為に鋭意検討した結果、特定の配合比率の水とプロピレングリコールとピロリドン系溶剤とからなる混合溶媒を使用することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、水、プロピレングリコール及びピロリドン系溶剤を含む溶媒中に、着色材を溶解又は分散させてなるインクジェット記録用インクであって、前記プロピレングリコールの含有量をX重量%、前記ピロリドン系溶剤の含有量をY重量%としたときに、以下の三つの式
【0010】
【数2】
1≦X≦40
0.2≦Y≦33
0.2≦(X/Y)≦20
を同時に満たしているインクジェット記録用インクを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録用インクは、水、プロピレングリコール及びピロリドン系溶剤を含む溶媒中に、着色材を溶解又は分散させてなるインクジェット記録用インクである。ここで、インクジェット記録用インクにおけるプロピレングリコールの含有量をX重量%、前記ピロリドン系溶剤の含有量をY重量%としたときに、本発明のインクジェット記録用インクは、以下の三つの式
【0012】
【数3】
1≦X≦40
0.2≦Y≦33
0.2≦(X/Y)≦20
を同時に満たしている。
【0013】
本発明のインクジェット記録用インクにおいて、プロピレングリコールの含有量は1〜40重量%以下、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%である。これは、プロピレングリコールの含有量が1重量%を下回ると吐出安定性が低下し、スタートアップ特性も低下するからであり、また40重量%を超えても吐出安定性が低下し、記録画像の乾燥性も低下するからである。
【0014】
本発明のインクジェット記録用インクにおいて、ピロリドン系溶剤の含有量は0.2〜33重量%以下、好ましくは3〜20重量%、より好ましくは3〜10重量%である。これは、ピロリドン系溶剤の含有量が0.2重量%を下回ると吐出安定性が低下するからであり、33重量%を超えると、スタートアップ特性が低下し、記録画像の乾燥性も低下するからである。
【0015】
なお、ピロリドン系溶剤としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンを使用することができる。
【0016】
本発明のインクジェット記録用インクにおいては、更に、インクジェット記録用インクにおけるプロピレングリコールの含有量をX重量%、前記ピロリドン系溶剤の含有量をY重量%としたときに、(X/Y)の値を0.2以上20以下、好ましくは0.5以上10以下、より好ましくは1以上5以下とする。これは、(X/Y)の値が0.2未満であると、スタートアップ特性が不十分となり、20を超えると、吐出安定性が低下し、記録画像の乾燥性も低下するからである。
【0017】
なお、インクジェット記録用インク中におけるプロピレングリコールとピロリドン系溶剤との合計配合量は、少なすぎると吐出安定性が低下する傾向があるので好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上であり、逆に多すぎると記録画像の乾燥性が低下する傾向があるので好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
【0018】
本発明のインクジェット記録用インクにおいては、発明の効果を損なわない範囲で他の溶剤を併用することができる。例えば、顔料等の着色剤を溶剤に分散する際に、その濡れ性を向上させ、また、消泡効果を確保し、更に乾燥性を向上させるために、IPA、エタノール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジールなどの低級アルコールを発明の効果を損なわない範囲で使用してもよい。
【0019】
本発明のインクジェット記録用インクを構成する着色剤としては、特に限定されるものではなく、従来のインクジェット記録用インクで用いられている染料や顔料を使用することができ、例えば、白黒用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック類、または銅、鉄、酸化チタン等の金属類、アルトニトロアニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。さらにカラー用としてはトルイジンレッド、パーマネントカーミンFB、ファストイエロAAA、ジスアゾオレンジPMP、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、ジオキサンバイオレット、ピクトリアピュアブルー、アルカリブルートナー、ファストイエロー10G、ジスアゾエローAAMX、ジスアゾエローAAOT、ジスアゾエローAAOA、黄色酸化鉄、ジスアゾエローHR、オルトニトロアニリンオレンジ、ジニトロアニリンオレンジ、バルカンオレンジ、トルイジンレッド、塩素化パラレッド、ブリリアンファーストスカーレット、ナフトールレッド23、ピラゾロンレッド、バリウムレッド2B、カルシウムレッド2B、ストロンチウムレッド2B、マンガンレッド2B、バリウムリソームレッド、ピグメントスカーレッド3Bレーキ、レーキボルドー10B、アンソシン3Bレーキ、アンソシン5Bレーキ、ローダミン6Gレーキ、エオシンレーキ、ベンガラ、ファフトールレッドFGR、ローダミンBレーキ、メチルバイオレッドレーキ、ジオキサジンバイオレッド、ベーシックブルー5Bレーキ、ベーシックブルー6Gレーキ、ファストスカイブルー、アルカリブルーRトナー、ピーコックブルーレーキ、紺青、群青、レフレックスブルー2G、レフレックスブルーR、ブリリアントグリーンレーキ、ダイアモンドグリーンチオフラビンレーキ、フタロシアニングリーンG、グリーンゴールド、フタロシアニングリーンY、酸化鉄粉、さびこ、亜鉛華、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、アルミナ、アルミナホワイト、アルミニウム粉、ブロンズ粉、昼光蛍光顔料、パール顔料、ナフトールカーミンFB、ナフトールレッドM、パーマネントカーミンFB、ファストイエローG、ジスアゾイエローAAA、ジオキサンバイオレッド、アルカリブルーGトナー等、その他顔料表面を樹脂等で処理したグラフトカーボン等の加工顔料等が使用できる。これらは場合によっては2種類以上を混合することもできる。
【0020】
着色剤のインクジェット記録用インク中の配合量は、着色剤や溶剤の種類等に応じて、適宜決定することができる。
【0021】
本発明のインクジェット記録用インクは、必要に応じて顔料を溶剤中で安定的に分散させるための分散剤や、従来のインクジェット記録用インクにおいて用いられている各種添加剤、例えば、顔料粒子の凝集防止剤、印字後の耐水性向上剤、pH調整剤、表面張力調整剤、防カビ・防腐剤等を含有することができる。
【0022】
本発明において使用可能な分散剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、高分子系界面活性剤、高分子重合物などが挙げられる。
【0023】
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等が使用できる。カチオン性界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等が使用できる。両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等が使用できる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが使用できる。高分子系界面活性剤としては、高分子量ポリウレタン、ポリエステル系などが、高分子重合物としては顔料に親和性のある官能基(例えばカルボニル基、アミノ基など)を持つものが使用できる。
【0024】
また、他の分散剤として、水溶性樹脂、例えば、セルロース樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ビニル樹脂等の高分子分散剤を使用することができる。これらの水溶性樹脂は顔料を被記録媒体に固着させるための固着剤としても添加できる。
【0025】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミンなどの低級アルカノールアミン、水酸化アンモニウム、リン酸二水素カリウム等を使用できる。
【0026】
防カビ・防腐剤等として、フェノール系化合物、安息香酸ナトリウム等を使用でき、防錆の目的で、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等を使用できる。
【0027】
本発明のインクジェット記録用インクは、インクジェット記録用インクの公知の製造方法に従って製造することができる。例えば、着色剤と分散剤と少量の溶剤とを公知の分散装置で分散して着色剤の分散液を得、それを溶剤と必要に応じて分散剤等と均一に混合させることにより製造することができる。
【0028】
以上説明したように製造したインクジェット記録用インクは、圧電素子方式のインクジェット記録方法やサーマル方式のインクジェット記録方法等に適用することができる。
【0029】
【実施例】
以下に本発明の記録用インクを実施例により具体的に説明する。
【0030】
実施例1〜17及び比較例1〜6
まず、表1の成分を混合し、得られた混合物をウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させた。この溶液に顔料として、キナクリドン系ピグメントNo.122(CROMOPHTAL Pink PT、チバ・スペシャリティーケミカル製)14重量部を加え、30分間プレミキシングを行った後、分散メデイアとしてジルコニウムビーズ(直径0.3mm)を使用する分散機(コスモミル、アイリッヒ製)で3時間、分散処理することにより顔料分散液Aを調製した。
【0031】
【表1】
【0032】
次に、表2の成分を1時間撹拌して混合し、3μmのフィルターろ過処理を施すことにより、インクジェット記録用インクを得た。
【0033】
【表2】
【0034】
表2のプロピレングリコール及びピロリドン系溶剤、更に必要に応じて添加される他の溶剤の添加量(重量部)を表3に示す量(重量部)で添加する以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録用インクを調製した。但し、イオン交換水で全量を100重量部に調整した。
【0035】
表3において、PGはプロピレングリコールを表し、PD1は2−ピロリドンを表し、PD2はN−メチル−2−ピロリドンを表し、GCはグリセリンを表し、BDは1,3−ブタンジオールを表し、DEGはジエチレングリコールを表し、EtOHはエタノールを表す。
【0036】
【表3】
【0037】
(評価)
得られたインクジェット記録用インクについて、吐出安定性及びスタートアップ特性並びに記録画像の乾燥性を以下に示すように評価した。評価の結果を表4に示す。
【0038】
吐出安定性
吐出安定性は、インクジェット記録用インクを、記録ヘッド内のインクに熱エネルギーを与えて液滴を発生させ吐出を行なうオンデマンドタイプの試作マルチヘッドにて、吐出オリフィス径16ミクロン、ヒーター駆動電圧11V、駆動周波数10kHzの条件にて、吐出させた。ドライバの駆動信号の遅延を操作し、モニター上のインク滴画像を移動させ、移動距離と、それに要した遅延時間とから吐出速度を算出した。
【0039】
吐出安定性の良否の判断は、初期の吐出速度(初期速度)と20分間連続吐出後の速度(20分後速度)を指標とし、以下の基準で評価した。
(ランク: 基準)
○: 初期速度が10m/s以上、且つ20分後速度が8m/s以上である場合
△: 初期速度が10m/s以上、且つ20分後速度が8m/s未満である場合
×: 初期速度が10m/s未満である場合
【0040】
スタートアップ特性
スタートアップ特性は、上記吐出安定性試験後、ノズルをワイプ後10分間放置し、再度電圧を加え吐出の可否で判断した。変わりなく吐出できた場合を「○」、若干の吐出ムラがあったが吐出できた場合を「△」、全く吐出できなかった場合を「×」と評価した。
【0041】
乾燥性
市販インクジェットプリンター(DeskJet970Cxi、HP社)にインクジェット記録用インクを充填し、エプソン社製フォト光沢紙にベタ印画を行い、10秒間放置しコピー用紙(Zerox4024)を上にのせ、指で3回擦り、色の転写の有無で評価した。全く色転写が生じなかった場合を「○」、色転写が生じた場合を「×」と評価した。
【0042】
【表4】
【0043】
表4から、実施例1〜17の本発明のインクジェット記録用インクが吐出安定性、スタートアップ特性及び乾燥性の全ての項目について良好な結果を示していることがわかる。また、比較例1、実施例1〜8及び比較例2の結果から、プロピレングリコールの好ましい配合量(X)が、1〜40重量%であることがわかる。また、比較例3、実施例9〜13及び比較例4の結果から、ピロリドン系溶剤の好ましい配合量(Y)が、0.2〜33重量部であることがわかる。更に、比較例5、実施例1〜2、実施例14〜17及び比較例6の結果から、(X/Y)の好ましい値が0.2〜20であることがわかる。
【0044】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用インクによれば、インクジェット記録用インク中にプロピレングリコールとピロリドン系溶剤を特定の量範囲で配合することで、良好な吐出安定性とスタートアップ特性を実現でき、それと同時に印画画像に良好な乾燥性を付与することができる。
Claims (2)
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