JP2004323454A - 薬剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】機能性材料を含有する分解性ゲルであって、機能性材料の放出速度の制御及び長期に亘る徐放が可能で、且つ機能性材料放出終了後には該ゲル自体が分解消滅する、薬剤を提供すること。
【解決手段】飽和含水率が98重量%以下である分解性ゲルと、機能性材料とを含有する薬剤による。
【選択図】なし
【解決手段】飽和含水率が98重量%以下である分解性ゲルと、機能性材料とを含有する薬剤による。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬剤、その製造方法及び機能性材料放出制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薬剤はヒト及び動植物の治療あるいは害虫の駆除に極めて有用であり、現代社会においてはなくてはならない存在となっている。しかし、その一方においては、生体及び環境に悪影響を及ぼす可能性が高いことから、この弊害を少なくするため、薬剤を的確にかつ効率的に使用する試みが薬剤の誕生以来絶え間なく行われてきた。例えば、長期間にわたる薬効が求められる場合には、薬剤を担体に担持させて、担持物として用いる方法等が考案されてきた。
【0003】
例えば、ダナゾールをはじめとする子宮内膜症治療に用いられている機能性材料は、現在、経口投与薬として用いられているが、その使用に伴って、肝機能障害、体重増加、不妊、月経の消失、むくみ、ほてり、肩こり、頭痛、骨量低下等の副作用が発生することが知られている。それらの副作用を回避する治療方法として、子宮内膜症治療薬であるダナゾールをシリコーンゴムまたはアセチル化ヒアルロン酸(塩)に担持させた、子宮内埋植用製剤が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0004】
しかしながら、子宮内膜症治療薬をシリコーンゴムに担持させた前述の子宮内埋植用製剤では、機能性材料の放出速度が安定しないシリコーンゴムによる子宮内への悪影響が懸念されている。さらに前記治療薬の放出完了後もシリコーンゴムが子宮内に残存することから、放出完了後には該シリコーンゴムを取り出す必要があり、患者の肉体的、精神的負担が大きかった。
【0005】
また、アセチル化ヒアルロン酸−ジメチルジステアリルアンモニウム塩に機能性材料を担持させた場合、機能性材料の放出速度の制御が困難であった。また、難水溶性機能性材料を徐放させる方法として、ヒアルロン酸−エチレングリコールジグリシジルエーテルゲルにマイクロスフィア化した機能性材料を徐放させる方法があるが、機能性材料の放出速度が速く長期間に亘る徐放は困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特許第2590358号公報
【特許文献2】
特開2002−356447公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上の記述から明らかなように、本発明の課題は、分解性ゲルと機能性材料とを含有する薬剤であって、機能性材料の放出速度の制御及び長期に亘る徐放が可能で、且つ機能性材料放出終了後には該ゲル自体が分解消滅する、薬剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、飽和含水率が98重量%以下の分解性ゲルであれば、生体内等で容易に分解しないこと、飽和含水率を98重量%以下の範囲で調節すれば、分解性ゲルの分解速度を制御することが可能であることを見出した。さらに、飽和含水率が98重量%以下の分解性ゲルに、機能性材料を担持させた機能性材料含有分解性ゲルであれば、機能性材料の放出期間と放出速度の制御が可能であり、さらに、機能性材料放出終了後、該分解性ゲルは分解消滅することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
【0009】
本発明は以下の構成を有する。
〔1〕飽和含水率が98重量%以下である分解性ゲルと、機能性材料とを含有する薬剤。
〔2〕飽和含水率が98重量%以下である分解性ゲルと、機能性材料とを含有する薬剤であって、分解性ゲルの飽和含水率を制御することにより機能性材料の放出速度が制御された薬剤。
〔3〕機能性材料が、子宮内投与薬、膣内投与薬、子宮内膜症嚢胞の腫瘍内投与薬及び骨盤内投与薬から選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕項または前記〔2〕項記載の薬剤。
〔4〕機能性材料が、ダナゾールである前記〔1〕項または前記〔2〕項記載の薬剤。
〔5〕分解性ゲルが、多糖ゲルである前記〔1〕項または前記〔2〕項記載の薬剤。
〔6〕多糖ゲルが、アニオン性多糖ゲルである前記〔5〕項記載の薬剤。
〔7〕分解性ゲルが、架橋剤を用いる架橋反応によって得られたゲルである前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載の薬剤。
〔8〕架橋剤が、1分子当たり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物である前記〔7〕項記載の薬剤。
〔9〕エポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテルである前記〔8〕項記載の薬剤。
〔10〕界面活性剤をさらに含有する前記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項記載の薬剤。
〔11〕界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である前記〔10〕項記載の薬剤。
〔12〕分解性ゲルと機能性材料とを含有する薬剤において、分解性ゲルの飽和含水率を制御することにより機能性材料の放出速度を制御することを特徴とする機能性材料放出制御方法。
〔13〕下記工程を有することを特徴とする薬剤の製造方法。
(第1工程)機能性材料と界面活性剤とを混合し機能性材料含有界面活性剤懸濁液を得る。
(第2工程)分解性ゲルの原料化合物を、水系溶媒に重量比で20〜80重量%の範囲になるように溶解させ、分解性ゲル原料溶解液を調製する。
(第3工程)機能性材料含有界面活性剤懸濁液と分解性ゲル原料溶解液とを混合し、それに架橋剤を添加し、分解性ゲルの原料を架橋する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の薬剤は、分解性ゲルと機能性材料とからなる薬剤であって、分解性ゲルは、飽和含水率が98重量%以下であり、機能性材料の放出速度及び放出期間を制御できる。また、本発明の薬剤は、分解性ゲルが、その分解速度が飽和含水率により制御されており、分解性ゲルの分解速度から機能性材料の放出量を制御することができる。
【0011】
本発明において分解性ゲルは、98重量%以下の飽和含水率を有することを特徴とし、その飽和含水率は、好ましくは96重量%以下、より好ましくは93重量%以下、さらに好ましくは89重量%以下である。飽和含水率の下限は、特に限定されるものではなく、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
なお、本発明でいう飽和含水率は、(湿潤ゲルの質量−乾燥ゲルの質量)/湿潤ゲルの質量×100の式により求められる、ゲル中の水の百分率のことである。また、湿潤ゲルの質量とは25℃にて純水中で平衡に達した状態での質量のことである。ここで、平衡に達した状態とは、純水中に100時間放置した状態の湿潤ゲルの状態をいう。
【0012】
分解性ゲルとは、生体内のような湿潤環境下において分解する性質を有するゲルであり、該環境下において分解する高分子化合物と架橋剤により構成されるゲルであるか、高分子化合物と架橋剤との結合部位が分解するゲルである。上記環境下で分解し、本発明の分解性ゲルの原料に用いることができる高分子化合物は、アニオン性多糖、カチオン性多糖、デキストラン、キトサン、リボ核酸、デオキシリボ核酸等である。本発明においては、特にアニオン性多糖が好ましい。本発明に用いる分解性ゲルは複数の高分子化合物により構成されてもよい。また、架橋剤を用いる場合であっても複数の高分子化合物を用いてもよい。
【0013】
アニオン性多糖とは、カルボキシル基、硫酸基等を持つことから負電荷を有する多糖であり、さらにこれらの塩を含む。本発明では、アニオン多糖は、セロウロン酸、セロウロン酸塩、アルギン酸、アルギン酸塩、ポリガラクチュロン酸、ポリガラクチュロン酸塩及びグリコサミノグリカン等である。グリコサミノグリカンは、ヘパリン、ヘパリン塩、ヘパラン硫酸、ヘパラン硫酸塩、コンドロイチン、コンドロイチン塩、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸、デルマタン硫酸塩、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸塩等である。例えば、これらを高分子化合物として薬剤に用いた場合には、該薬剤を構成する分解性ゲルの生体内での分解及びそれに伴う機能性材料の放出が、該薬剤の投与を受けた患者のバイオリズムに相関する可能性が高いため、より効果的な薬効が期待できる。
【0014】
前記アニオン性多糖のなかでも特にヒアルロン酸またはその塩(以下、「ヒアルロン酸(塩)」ということがある。)から構成される分解性ゲルと子宮内投与薬または膣内投与薬とからなる薬剤の場合には、該薬剤を構成する分解性ゲルの子宮内または膣内での分解及びそれに伴う機能性材料の放出と該薬剤の投与を受けた患者のバイオリズムとが高い相関を示すことが期待できるため、ヒアルロン酸(塩)から構成される分解性ゲルは、本発明において特に好ましく使用できる。
【0015】
本発明において、分解性ゲルの原料化合物としてヒアルロン酸(塩)を用いる場合には、HPLC法により測定されるヒアルロン酸(塩)の平均分子量が、1000kDa以下であることが好ましく、500kDa以下であることがより好ましく、さらに好ましくは300kDa以下である。前記平均分子量がこの範囲内にあることで、特定の架橋条件下で架橋を行った場合に、飽和含水率の低いゲルが好適に得られる。
【0016】
ヒアルロン酸(塩)を分解性ゲルの原料化合物として用いた場合、該薬剤を構成する分解性ゲルの子宮内または膣内での分解及びそれに伴う機能性材料の放出が、該薬剤の投与を受けた患者のバイオリズムに相関するかは、現在のところ明らかではない。しかしながら、子宮内または膣内ではヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ類)の分泌及び活性酸素発生が性周期により影響を受けて変化していることにより、その変化は前記機能性材料の効果的な放出制御に利用できる。すなわち、治療部位のヒアルロニダーゼ及び活性酸素の影響により、分解性ゲルの分解速度が変化するため、周囲のヒアルロニダーゼの濃度及び活性酸素の濃度に応じた徐放が可能になる(表1及び表2参照)。
表1はヒアルロン酸−エチレングリコールジグリシジルエーテルゲルを所定のヒアルロニダーゼを溶解させたpH4.5の0.14mol/lリン酸緩衝液に37℃で振とうさせ定期的にゲルの質量を測定し、ヒアルロニダーゼによる分解の線速度を測定したものである。表2は同ゲルを50mmol/l硫酸鉄(II)溶液に2日間浸漬させたのち、所定の濃度の過酸化水素溶液に浸漬させ、ゲル表面に活性酸素(ヒドロキシラジカル)を発生させ、活性酸素(ヒドロキシラジカル)による分解の線速度をゲルの質量を測定することにより求めたものである。
【0017】
機能性材料の徐放期間(薬効期間)は、必要に応じて適宜決定すればよいが、基本的に本発明に使用する分解性ゲルの分解速度と、該薬剤の表面積及び体積によって徐放期間を調節することができる。分解性ゲルの分解速度は、分解性ゲルの種類、化学構造、三次元構造、分子量等を調節することによって制御することができる。例えばヒアルロン酸(塩)ゲルを用いる場合には、その飽和含水率を選ぶことにより、分解速度を制御することが可能であり、徐放期間を任意に設定することができる(図2参照)。
【0018】
また、アニオン性多糖ゲルに担持させる機能性材料が、後述のダナゾールのように難水溶性である場合には、界面活性剤を用いて懸濁化させ、混入することにより担体からの溶出を防ぐことができる。また、機能性材料がイオン性である場合には、分解性ゲルとイオン的に結合することで担持することも可能であり、機能性材料に官能基がある場合には、共有結合的に結合することで担持することも可能である。
【0019】
本発明に使用するヒアルロン酸(塩)の起源は特に限定されるものではなく、鶏の鶏冠等の各種動物組織由来であっても、ヒアルロン酸(塩)の生産能を有する微生物由来であってもよいが、本発明に使用するヒアルロン酸(塩)は微生物由来であることが好ましい。
【0020】
本発明の薬剤は、その製造の過程で、界面活性剤を含むものとして、大別すると下記3工程からなる。
(第1工程)機能性材料と界面活性剤とを混合し機能性材料含有界面活性剤懸濁液を得る。
(第2工程)分解性ゲルの原料化合物を、水系溶媒に重量比で20〜80重量%の範囲になるように溶解させ、分解性ゲル原料溶解液を調製する。
(第3工程)機能性材料含有界面活性剤懸濁液と分解性ゲル原料溶解液とを混合し、それに架橋剤を添加し、分解性ゲルの原料を架橋する。
【0021】
以下に、第1工程について、ダナゾールを用いて具体的に説明する。
界面活性剤を純水に分散させ、これに機能性材料として婦人科疾患治療薬であるダナゾールを加え、ホモジナイザーで懸濁化させる。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤が好ましく、特にポリソルベート80、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ショ糖ステアリン酸エステル等が好ましく使用できる。婦人科疾患治療薬と界面活性剤との混合割合は、婦人科疾患治療薬1重量部に対して、界面活性剤1/100〜10重量部であることが好ましく、1/20〜1重量部であることがより好ましい。両者をこれらの割合で混合して得られる婦人科疾患治療薬含有界面活性剤懸濁液中のダナゾールの濃度は、最終的な婦人科疾患治療剤中のダナゾール量から逆算して任意に選ぶことができる。ダナゾールの濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜30重量%であり、より好ましくは10〜20重量%である。なお、本発明において、純水とは、例えば、連続イオン交換(Electric Deionization)、逆浸透(Reverse Osmosis)等により精製した水を意味する。
【0022】
以下に、第2工程について、分解性ゲルの原料化合物としてヒアルロン酸(塩)を用いて、具体的に説明する。
水酸化ナトリウム水溶液に重量比で20〜80重量%の範囲となるようにヒアルロン酸(塩)を添加し、均一に混合することで、ヒアルロン酸(塩)ゲル溶液を調製する。
【0023】
以下に、第3工程について、具体的に説明する。
前記懸濁液と、ヒアルロン酸(塩)ゲル溶液を加え、スパーテルで攪拌し、分解性ゲル原料を均一に混合した後、エポキシ化合物を添加し、再びスパーテルで攪拌する。得られた粘凋溶液を素早く型にキャストし、恒温槽で加温する。得られたゲルを0.05mol/lのHCl溶液で中和し、さらに純水で24時間洗浄することでダナゾール担持ヒアルロン酸(塩)−エポキシ化合物ゲルが得られる。
水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、1分子当り2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物による架橋が充分に進行できる濃度で、かつヒアルロン酸(塩)が充分に溶解できる濃度である必要があり、その濃度は、好ましくは、0.01〜10mol/lであり、より好ましくは、0.1〜5mol/lである。ダナゾール懸濁液と水酸化ナトリウム水溶液との混合比は、最終的な婦人科疾患治療剤中のダナゾール量から逆算して任意に選ぶことができる。ダナゾール懸濁液と水酸化ナトリウム水溶液との混合比は、好ましくは、1対10000〜9対1(体積比)である。ヒアルロン酸(塩)含有水酸化ナトリウム水溶液中のヒアルロン酸(塩)の濃度は特に限定されないが、10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは20重量%以上である。
【0024】
本発明の分解性ゲルが、架橋剤を用いる架橋反応によって得られたゲルである場合、これに用いる架橋剤は、1分子当たり2つ以上のエポキシ基を有する化合物が利用できる。ヒアルロン酸の水酸基を架橋できる化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エピクロルヒドリン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の1分子当たり2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物である。なかでも、エチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましく利用できる。なお、架橋剤の添加量は、架橋剤と反応する官能基に対して、好ましくは0.01〜10当量、より好ましくは0.05〜5当量にすればよい。
【0025】
本発明の薬剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、機能性材料以外に、糖質、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、酵素、脂質、無機塩類、有機塩類、金属類等を含有してもよい。
【0026】
本発明でいうダナゾールはHPLC法により分析することができる。例えば、島津GLC製Zorbax CN(商品名)またはメルク製Lichrosorb RP−18(商品名)を用いることができる。前者の場合には、溶出液は混合容積比3:2:7のメタノール、アセトニトリル、水の混合溶媒を用い、溶出速度1ml/min、カラム温度30℃の条件で分析することが好ましく、後者の場合には、溶出液は混合容積比8:2のメタノール、水の混合溶媒を用い、溶出速度1ml/min、カラム温度25℃の条件で分析することが好ましい。両者ともUV260nmの吸光光度を測定することで検出、定量することが好ましい。
【0027】
本発明の薬剤が、子宮内、膣内、子宮内膜症嚢胞の腫瘍内または骨盤内埋植用である場合、本発明の薬剤の形状及び大きさは、子宮内、膣内、子宮内膜症嚢胞の腫瘍内または骨盤内局所投与に適したものであれば特に限定されるものではない。またその形状は、本発明の子宮内治療剤を子宮内において使用する場合には、T字形、太田リング様、シート状ゲル、球状ゲル等の形状であれば利用でき、膣内において使用する場合には、環状リングの形状であれば利用できる。また、子宮内膜症嚢胞の腫瘍内または骨盤内で使用する場合には、流動性のあるゲルまたはシート状ゲルの形状であれば利用できる。
【0028】
本発明の薬剤の大きさは、使用目的によって異なるものの、投与する薬剤がT字形状子宮内治療薬の場合には、横軸の長さは、好ましくは20〜40mm、より好ましくは30〜35mmであり、縦軸の長さは、好ましくは25〜45mm、より好ましくは30〜38mmであり、横軸の直径は、好ましくは3.0〜4.0mmであり、より好ましくは3.2〜3.6mmである。
【0029】
太田リング様子宮内治療薬の場合には、リング外径は、好ましくは20〜25mm、リングの直径(太さ)は、好ましくは、2.55〜4.5mm、より好ましくは約3.0mmである。シート状ゲルの場合には、横の長さは、好ましくは10〜50mm、より好ましくは20〜30mmであり、縦の長さは、好ましくは20〜70mm、より好ましくは40〜60mmであり、その厚さは、好ましくは2〜20mm、より好ましくは5〜10mmである。
【0030】
球状ゲルの場合には、直径は、好ましくは10〜30mm、より好ましくは20〜25mmである。環状リング膣内治療薬の場合には、リング外径は、好ましくは30〜60mm、より好ましくは45〜55mmであり、環の直径は、好ましくは4.0〜12.0mm、より好ましくは7.5〜10.0mmである。また、ペースト状ゲルの場合は、特にその大きさは限定されない。
【0031】
本発明の薬剤の形状をT字型、棒状または太田リング様とする場合には、単層状だけでなく、製剤の硬度を上げる観点から、プラスチック製等の芯を内蔵させて、二層以上の多層構造にしてもよい。
【0032】
ただし、T字形子宮内治療薬において、芯を内蔵させる場合には、通常、横軸、縦軸の双方に行ない、芯の長さは採用する軸の長さの55〜70%の範囲内とし、芯の直径は軸の直径の60〜90%の範囲内とすることが好ましい。さらに薬剤は縦軸に付着させるとよい。なお、T字形子宮内治療薬では、長さが、好ましくは30〜400mm、より好ましくは50〜280mmであり、直径が、0.170〜0.290mmであるナイロンモノフィラメントを縦軸の下端に装着することが好ましい。
【0033】
ただし、棒状子宮内治療薬において芯を内蔵させる場合には、芯の長さは採用する軸の長さの55〜70%の範囲内とし、芯の直径は該軸の直径の60〜90%の範囲内とすることが好ましい。なお、棒状子宮内治療薬では、長さが、好ましくは30〜400mm、より好ましくは50〜280mmにし、直径が、0.170〜0.290mmのナイロンモノフィラメントを下端に装着することが好ましい。
【0034】
また、本発明の薬剤の形状を環状リングとする場合には、治療期間または症状の軽重に対応した機能性材料の放出率向上の観点から、単層状または二層状のいずれかに形成してもよい。ただし、二層状の環状リングの膣内製剤とする場合には、表層の厚さは、好ましくは少なくとも0.1mm、より好ましくは0.1〜2.0mmである。
【0035】
二層状製剤については、上記の単層状製剤を製造する工程中、得られた混合物を成形型に充填する工程で所望の芯を埋め込み、ついでこれを同様に固化させることにより製造する。なお、芯は前記のものを使用する。本発明の薬剤が生体内で使用される場合には、無菌製剤であることを要求されることから、製造はすべて無菌条件下で行い、得られた最終製剤はアルミヒートシール包材等で包装し、無菌状態を維持することが重要である。
【0036】
本発明に用いる機能性材料は、特に限定されないが、子宮内投与薬、膣内投与薬、子宮内膜症嚢胞の腫瘍内投与薬または骨盤内投与薬等の薬効成分である。薬効成分の具体例は、子宮内膜症治療薬、避妊薬、解熱薬、ホルモン剤、子宮内膜癌治療薬、ホルモン合成阻害薬子宮内膜症治療薬、抗生薬、抗真菌薬、膣炎症治療薬、トリコモナス症治療薬、子宮頸癌治療薬等である。薬効成分が子宮内膜症治療薬である場合には本発明の効果が顕著になる。
【0037】
子宮内膜症治療薬は、ダナゾール、非ステロイド性消炎鎮痛剤、漢方薬、プロゲストーゲン、エストロゲン、GnRH−アンタゴニスト、ジェノゲスト、血管新生阻害剤、アロマターゼ阻害剤等である。なかでもダナゾールは、局所施用した際に顕著な薬効が期待できることから、本発明に好ましく使用することができる。
【0038】
本発明の薬剤が含有する薬効成分が、ダナゾールである場合には、好ましい分解性ゲルの原料化合物はヒアルロン酸(塩)及びその誘導体である。これらであれば、ゲル中へのダナゾールの担持が良好で、さらにそのゲルのヒアルロニダーゼや活性酸素に対する応答も良好なため、ダナゾールを瞬時に放出させることができる。
【0039】
また、本発明に用いる薬効成分が、子宮内膜症治療薬である場合には、薬剤は、内性子宮内膜症、外性子宮内膜症の何れの治療にも使用することができる。
【0040】
薬効成分が、子宮内投与薬、膣内投与薬、腫瘍内投与薬または骨盤内投与薬である場合の使用対象は、人間の婦人に限定されず、豚、牛、馬、羊、犬、猫、猿等の哺乳類の雌にも使用することができる。
【0041】
本発明の薬剤の利用分野は特に限定されるものではなく、医療、食品、農業、衛生管理等に利用される。医療分野であればDDS(ドラッグデリバリーシステム)等に、食品分野であればNDS(ニュートリエントデリバリーシステム)や保存料、日持向上剤等の徐放等に、農業分野であれば農薬、肥料の徐放等に、衛生管理分野であれば、プール、貯水槽、浴槽等に使用する防腐剤、抗菌剤、防カビ剤、抗カビ剤等の徐放にも利用できる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を詳細に説明する。
【0043】
HPLCによる平均分子量の測定
多糖類の分子量測定に適する任意のカラムを用いることができるが、多糖がヒアルロン酸(塩)であれば、例えば、昭和電工(株)製Shodex Ionpak KS806(商品名)及び昭和電工(株)製Ionpak KS−G(商品名)等のカラムを用いることが好ましい。本発明の実施例、比較例においては、昭和電工(株)製Shodex Ionpak KS806(商品名)及び昭和電工(株)製Ionpak KS−G(商品名)を用いた。この場合、溶出液としては0.2mol/lの塩化ナトリウム水溶液を用い、流速1.0ml/分で流した。ヒアルロン酸(塩)の検出は206nmで行った。平均分子量は、極限粘度で求めた分子量既知のヒアルロン酸ナトリウムで作製した検量線を用いて計算により求めることができる。
【0044】
ダナゾール懸濁液の調製
純水(5ml)に特定量のポリソルベート80を分散させ、これに特定量のダナゾールを加え、ホモジナイザー(井内盛栄堂製 ラボ・ディスパーザX10/25、ジェネレータシャフト10F(商品名))で、24000rpm、1分間攪拌してダナゾール懸濁液A、B及びCを得た。ダナゾール懸濁液A、B及びC中のダナゾール、ポリソルベート80の量は以下の通りである。
ダナゾール懸濁液A(ダナゾール12重量%):ダナゾール(600mg)、ポリソルベート80(150mg)
ダナゾール懸濁液B(ダナゾール24重量%):ダナゾール(1200mg)、ポリソルベート80(300mg)
ダナゾール懸濁液C(ダナゾール1.2重量%):ダナゾール(60mg)、ポリソルベート80(15mg)
【0045】
実施例1〜4
インビトロ試験用ダナゾール担持ヒアルロン酸−エチレングリコールジグリシジルエーテルゲル(以下、「D−CHA−EGDGEゲル」ということがある。)の製造。
ダナゾール懸濁液Aまたはダナゾール懸濁液Bのいずれか1種(2.5ml)と2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(2.5ml)とを混合し、これに平均分子量90kDaのヒアルロン酸ナトリウム(チッソ(株)製CHA、以下、「CHA」ということがある。1500mg)を加え攪拌した。これにエチレングリコールジグリシジルエーテル(870mg)を加え攪拌し、所定の形状の型にキャスト後、80℃の恒温槽で実施例1は15分、実施例2は14分、実施例3及び実施例4は20分加温した。
型から取り出したゲルを0.05mol/lのHCl水溶液で中和し、純水で洗浄後、pH4.5の0.14mol/lのPBSに2日間浸漬し、所定の形状(直径10mm、厚み約2mmの円盤状)にカッティングして、ダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルを得た。
以下に、得られたダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルのダナゾール含量、飽和含水率を示す。
実施例1:ダナゾール懸濁液A、ダナゾール含量(1.4mg)、飽和含水率92重量%
実施例2:ダナゾール懸濁液A、ダナゾール含量(0.8mg)、飽和含水率94重量%
実施例3:ダナゾール懸濁液B、ダナゾール含量(3.0mg)、飽和含水率89重量%
実施例4:ダナゾール懸濁液A、ダナゾール含量(1.6mg)、飽和含水率89重量%
【0046】
比較例1
インビトロ試験用D−CHA−EGDGEゲルの製造。
ダナゾール懸濁液B(2.5ml)と2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(2.5ml)とを混合し、これに平均分子量1000kDaのヒアルロン酸ナトリウム(チッソ(株)製CHA、以下、「CHA」ということがある。750mg)を加え攪拌した。これにエチレングリコールジグリシジルエーテル(435mg)とエタノール(0.1ml)との混合液を加え攪拌し、所定の形状の型にキャスト後、60℃の恒温槽で15分間加温した。
型から取り出したゲルを0.05mol/lのHCl水溶液で中和し、純水で洗浄後、pH4.5の0.14mol/lのPBSに2日間浸漬し、所定の形状(直径10mm、厚み約2mmの円盤状)にカッティングして、ダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルを得た。
以下に、得られたダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルのダナゾール含量、飽和含水率を示す。
比較例1:ダナゾール懸濁液B、ダナゾール含量(0.16mg)、飽和含水率99.5重量%。
【0047】
実施例5、6
インビボ試験用D−CHA−EGDGEゲルの製造(ラット子宮内留置用ゲル)。
ダナゾール懸濁液Aまたはダナゾール懸濁液Cのいずれか1種(2.5ml)と2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(2.5ml)とを混合、これに平均分子量90kDaCHA(1500mg)を加え攪拌した。これにエチレングリコールジグリシジルエーテル(870mg)加え攪拌し、所定の形状の型にキャスト後、80℃の恒温槽で15分間加温した。
型から取り出したゲルを0.05mol/lのHCl水溶液で中和し、純水で洗浄後、pH4.5の0.14mol/lのPBSに2日間浸漬し、飽和含水率90重量%のダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルを得た。
以下に、得られたダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルのダナゾール含量、飽和含水率を示す。
実施例5:ダナゾール懸濁液A、ダナゾール含量(1mg)、飽和含水率90重量%。形状は、直径0.7mm、長さ22mmのプラスチック製の指示棒を持つ長さ20mm、直径2mm、内径0.7mmの棒状ゲル。
実施例6:ダナゾール懸濁液C、ダナゾール含量(0.1mg)、飽和含水率90重量%。形状は、直径0.7mm、長さ22mmのプラスチック性の指示棒を持つ長さ20mm、直径2mm、内径0.7mmの棒状ゲル。
【0048】
比較例2、3
ダナゾール担持アセチル化ヒアルロン酸ジメチルジステアリルアンモニウム塩(以下、「D−AcCHA−DSC」ということがある。)の製造。
平均分子量1000kDaのヒアルロン酸ナトリウム(チッソ(株)製CHA、以下、「CHA」ということがある。5.4g)を純水900(ml)に溶解するとともに、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下、「DSC」ということがある。7.41g)を純水(1680ml)に懸濁させた。両液を45℃に加温後、攪拌しながら混合し、5分間攪拌を続けた。生成した錯体を遠心分離(5000rpm、室温)で回収し、45℃の温水にて洗浄した。洗浄終了後、一夜凍結乾燥し、その後さらに50℃で一夜真空乾燥し、CHA−DSC錯体を得た(収量9.9g、収率85%)。このCHA−DSC錯体(9.0g)をDMF(300ml)、塩化アセチル(比較例2では2.4g、比較例3では1.2g)及びピリジン(比較例2では2.4g、比較例3では1.2g)が混合された溶媒に溶解後、60℃、2時間攪拌した。これに氷冷下で水(1.5L)を加えた後、ゲル状物質を濾過回収し、水で洗浄後、50℃で一夜真空乾燥することで、AcCHA−DSC(比較例2では8.5g、比較例3では7.0g)を得た。
【0049】
次に、ダナゾール(比較例2では0.05g、比較例3では0.025g)及びAcCHA−DSC(0.75g)を純水2mlに投入し、得られた懸濁物を所定の成形型(直径10mm、厚み2mmの円盤状)に直ちに充填した。その後、凍結乾燥機で乾燥を行ない、D−AcCHA−DSCを調製した。得られたD−AcCHA−DSCの重量は100mgであった。
以下に、得られたD−AcCHA−DSCのダナゾール含量を示す。
比較例2:ダナゾール含量(5mg)
比較例3:ダナゾール含量(2.5mg)
【0050】
D−CHA−EGDGEゲル及びD−AcCHA−DSCのヒアルロニダーゼによる分解、ダナゾール放出試験。
D−CHA−EGDGEゲル(実施例1〜4、比較例1)及びD−AcCHA−DSC(比較例2、3)をヒアルロニダーゼ(牛睾丸由来 シグマ製タイプIV−S)10unit/mlを含有するpH4.5の0.14mol/lのPBS(25ml)に振とうさせた。定期的にヒアルロニダーゼ含有PBSを交換し、ゲルの重量変化とPBS中のダナゾール濃度とをHPLCにて測定した。図2はゲルの分解量の累積置を、経時的にプロットしたものであり、時間に対してリニアに分解していることが分かる。比較例1は約2日で分解、消失しているのに対して、実施例1〜4は同一の形状、大きさで10〜80日まで、分解時間が制御されていることがわかる。また、比較例2、3では30日後に約15%の重量減少が認められており、塩化アセチルの添加量による差異は見られなかった。図3はダナゾール放出量の累積置を経時的にプロットしたものであり、実施例1〜4では飽和含水率により分解速度を制御できるため、比較例1、2よりも広い範囲でダナゾールの放出量、放出期間を制御されている。なお、図4はゲルの分解とダナゾールの放出量との関係を示したものであり、ゲルの分解量に応じてダナゾールが放出されていることが分かる。
【0051】
D−CHA−EGDGEゲルのラット子宮内留置試験。
子宮腺筋症を疾患させたラット子宮内へラット子宮内留置実験用D−CHA−EGDGEゲル(実施例5、6)とコントロールとしてダナゾール未担持CHA−EGDGEゲルを埋入後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後にそれぞれゲルを取り出し、ゲルの重量を測定し、患部の観察を行った。表3はその結果である。ダナゾール担持量の多い実施例5のゲルは分解し難いことがわかるが、これはダナゾールの薬理作用によりヒアルロニダーゼの発生源である子宮内膜組織が萎縮したためである。すなわち子宮腺筋症の症状が顕著なときはダナゾールが充分に放出され、回復すればCHA−EGDGEゲルの分解が抑えられダナゾールの放出が少なくなるインテリジェント製剤として機能していたことがわかった。実施例6では妊娠時に見られる子宮内膜の組織上の変化が、実施例5ではダナゾールの薬理効果による組織上の変化が認められた。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【発明の効果】
本発明の薬剤であれば、機能性材料の放出速度の制御及び長期に亘る徐放が可能で、且つ機能性材料放出終了後には該ゲル自体が分解消滅する、薬剤を提供することができる。ヒアルロン酸のゲルである場合には、ゲルの飽和含水率を選ぶことにより患部で発生するヒアルロニダーゼによる分解速度を幅広く選択できることから、効果的な機能性材料の放出を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】CHA−EGDGEゲルの飽和含水率と分解の線速度との関係を示すグラフ
【図2】D−CHA−EGDGEゲルの分解量の経時変化(累積置)を示すグラフ
【図3】D−CHA−EGDGEゲルのダナゾール放出量の経時変化(累積置)を示すグラフ
【図4】D−CHA−EGDGEゲルの分解量とダナゾール放出量の関係を示すグラフ
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬剤、その製造方法及び機能性材料放出制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薬剤はヒト及び動植物の治療あるいは害虫の駆除に極めて有用であり、現代社会においてはなくてはならない存在となっている。しかし、その一方においては、生体及び環境に悪影響を及ぼす可能性が高いことから、この弊害を少なくするため、薬剤を的確にかつ効率的に使用する試みが薬剤の誕生以来絶え間なく行われてきた。例えば、長期間にわたる薬効が求められる場合には、薬剤を担体に担持させて、担持物として用いる方法等が考案されてきた。
【0003】
例えば、ダナゾールをはじめとする子宮内膜症治療に用いられている機能性材料は、現在、経口投与薬として用いられているが、その使用に伴って、肝機能障害、体重増加、不妊、月経の消失、むくみ、ほてり、肩こり、頭痛、骨量低下等の副作用が発生することが知られている。それらの副作用を回避する治療方法として、子宮内膜症治療薬であるダナゾールをシリコーンゴムまたはアセチル化ヒアルロン酸(塩)に担持させた、子宮内埋植用製剤が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0004】
しかしながら、子宮内膜症治療薬をシリコーンゴムに担持させた前述の子宮内埋植用製剤では、機能性材料の放出速度が安定しないシリコーンゴムによる子宮内への悪影響が懸念されている。さらに前記治療薬の放出完了後もシリコーンゴムが子宮内に残存することから、放出完了後には該シリコーンゴムを取り出す必要があり、患者の肉体的、精神的負担が大きかった。
【0005】
また、アセチル化ヒアルロン酸−ジメチルジステアリルアンモニウム塩に機能性材料を担持させた場合、機能性材料の放出速度の制御が困難であった。また、難水溶性機能性材料を徐放させる方法として、ヒアルロン酸−エチレングリコールジグリシジルエーテルゲルにマイクロスフィア化した機能性材料を徐放させる方法があるが、機能性材料の放出速度が速く長期間に亘る徐放は困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特許第2590358号公報
【特許文献2】
特開2002−356447公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上の記述から明らかなように、本発明の課題は、分解性ゲルと機能性材料とを含有する薬剤であって、機能性材料の放出速度の制御及び長期に亘る徐放が可能で、且つ機能性材料放出終了後には該ゲル自体が分解消滅する、薬剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、飽和含水率が98重量%以下の分解性ゲルであれば、生体内等で容易に分解しないこと、飽和含水率を98重量%以下の範囲で調節すれば、分解性ゲルの分解速度を制御することが可能であることを見出した。さらに、飽和含水率が98重量%以下の分解性ゲルに、機能性材料を担持させた機能性材料含有分解性ゲルであれば、機能性材料の放出期間と放出速度の制御が可能であり、さらに、機能性材料放出終了後、該分解性ゲルは分解消滅することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
【0009】
本発明は以下の構成を有する。
〔1〕飽和含水率が98重量%以下である分解性ゲルと、機能性材料とを含有する薬剤。
〔2〕飽和含水率が98重量%以下である分解性ゲルと、機能性材料とを含有する薬剤であって、分解性ゲルの飽和含水率を制御することにより機能性材料の放出速度が制御された薬剤。
〔3〕機能性材料が、子宮内投与薬、膣内投与薬、子宮内膜症嚢胞の腫瘍内投与薬及び骨盤内投与薬から選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕項または前記〔2〕項記載の薬剤。
〔4〕機能性材料が、ダナゾールである前記〔1〕項または前記〔2〕項記載の薬剤。
〔5〕分解性ゲルが、多糖ゲルである前記〔1〕項または前記〔2〕項記載の薬剤。
〔6〕多糖ゲルが、アニオン性多糖ゲルである前記〔5〕項記載の薬剤。
〔7〕分解性ゲルが、架橋剤を用いる架橋反応によって得られたゲルである前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載の薬剤。
〔8〕架橋剤が、1分子当たり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物である前記〔7〕項記載の薬剤。
〔9〕エポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテルである前記〔8〕項記載の薬剤。
〔10〕界面活性剤をさらに含有する前記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項記載の薬剤。
〔11〕界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である前記〔10〕項記載の薬剤。
〔12〕分解性ゲルと機能性材料とを含有する薬剤において、分解性ゲルの飽和含水率を制御することにより機能性材料の放出速度を制御することを特徴とする機能性材料放出制御方法。
〔13〕下記工程を有することを特徴とする薬剤の製造方法。
(第1工程)機能性材料と界面活性剤とを混合し機能性材料含有界面活性剤懸濁液を得る。
(第2工程)分解性ゲルの原料化合物を、水系溶媒に重量比で20〜80重量%の範囲になるように溶解させ、分解性ゲル原料溶解液を調製する。
(第3工程)機能性材料含有界面活性剤懸濁液と分解性ゲル原料溶解液とを混合し、それに架橋剤を添加し、分解性ゲルの原料を架橋する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の薬剤は、分解性ゲルと機能性材料とからなる薬剤であって、分解性ゲルは、飽和含水率が98重量%以下であり、機能性材料の放出速度及び放出期間を制御できる。また、本発明の薬剤は、分解性ゲルが、その分解速度が飽和含水率により制御されており、分解性ゲルの分解速度から機能性材料の放出量を制御することができる。
【0011】
本発明において分解性ゲルは、98重量%以下の飽和含水率を有することを特徴とし、その飽和含水率は、好ましくは96重量%以下、より好ましくは93重量%以下、さらに好ましくは89重量%以下である。飽和含水率の下限は、特に限定されるものではなく、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
なお、本発明でいう飽和含水率は、(湿潤ゲルの質量−乾燥ゲルの質量)/湿潤ゲルの質量×100の式により求められる、ゲル中の水の百分率のことである。また、湿潤ゲルの質量とは25℃にて純水中で平衡に達した状態での質量のことである。ここで、平衡に達した状態とは、純水中に100時間放置した状態の湿潤ゲルの状態をいう。
【0012】
分解性ゲルとは、生体内のような湿潤環境下において分解する性質を有するゲルであり、該環境下において分解する高分子化合物と架橋剤により構成されるゲルであるか、高分子化合物と架橋剤との結合部位が分解するゲルである。上記環境下で分解し、本発明の分解性ゲルの原料に用いることができる高分子化合物は、アニオン性多糖、カチオン性多糖、デキストラン、キトサン、リボ核酸、デオキシリボ核酸等である。本発明においては、特にアニオン性多糖が好ましい。本発明に用いる分解性ゲルは複数の高分子化合物により構成されてもよい。また、架橋剤を用いる場合であっても複数の高分子化合物を用いてもよい。
【0013】
アニオン性多糖とは、カルボキシル基、硫酸基等を持つことから負電荷を有する多糖であり、さらにこれらの塩を含む。本発明では、アニオン多糖は、セロウロン酸、セロウロン酸塩、アルギン酸、アルギン酸塩、ポリガラクチュロン酸、ポリガラクチュロン酸塩及びグリコサミノグリカン等である。グリコサミノグリカンは、ヘパリン、ヘパリン塩、ヘパラン硫酸、ヘパラン硫酸塩、コンドロイチン、コンドロイチン塩、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩、デルマタン硫酸、デルマタン硫酸塩、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸塩等である。例えば、これらを高分子化合物として薬剤に用いた場合には、該薬剤を構成する分解性ゲルの生体内での分解及びそれに伴う機能性材料の放出が、該薬剤の投与を受けた患者のバイオリズムに相関する可能性が高いため、より効果的な薬効が期待できる。
【0014】
前記アニオン性多糖のなかでも特にヒアルロン酸またはその塩(以下、「ヒアルロン酸(塩)」ということがある。)から構成される分解性ゲルと子宮内投与薬または膣内投与薬とからなる薬剤の場合には、該薬剤を構成する分解性ゲルの子宮内または膣内での分解及びそれに伴う機能性材料の放出と該薬剤の投与を受けた患者のバイオリズムとが高い相関を示すことが期待できるため、ヒアルロン酸(塩)から構成される分解性ゲルは、本発明において特に好ましく使用できる。
【0015】
本発明において、分解性ゲルの原料化合物としてヒアルロン酸(塩)を用いる場合には、HPLC法により測定されるヒアルロン酸(塩)の平均分子量が、1000kDa以下であることが好ましく、500kDa以下であることがより好ましく、さらに好ましくは300kDa以下である。前記平均分子量がこの範囲内にあることで、特定の架橋条件下で架橋を行った場合に、飽和含水率の低いゲルが好適に得られる。
【0016】
ヒアルロン酸(塩)を分解性ゲルの原料化合物として用いた場合、該薬剤を構成する分解性ゲルの子宮内または膣内での分解及びそれに伴う機能性材料の放出が、該薬剤の投与を受けた患者のバイオリズムに相関するかは、現在のところ明らかではない。しかしながら、子宮内または膣内ではヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ類)の分泌及び活性酸素発生が性周期により影響を受けて変化していることにより、その変化は前記機能性材料の効果的な放出制御に利用できる。すなわち、治療部位のヒアルロニダーゼ及び活性酸素の影響により、分解性ゲルの分解速度が変化するため、周囲のヒアルロニダーゼの濃度及び活性酸素の濃度に応じた徐放が可能になる(表1及び表2参照)。
表1はヒアルロン酸−エチレングリコールジグリシジルエーテルゲルを所定のヒアルロニダーゼを溶解させたpH4.5の0.14mol/lリン酸緩衝液に37℃で振とうさせ定期的にゲルの質量を測定し、ヒアルロニダーゼによる分解の線速度を測定したものである。表2は同ゲルを50mmol/l硫酸鉄(II)溶液に2日間浸漬させたのち、所定の濃度の過酸化水素溶液に浸漬させ、ゲル表面に活性酸素(ヒドロキシラジカル)を発生させ、活性酸素(ヒドロキシラジカル)による分解の線速度をゲルの質量を測定することにより求めたものである。
【0017】
機能性材料の徐放期間(薬効期間)は、必要に応じて適宜決定すればよいが、基本的に本発明に使用する分解性ゲルの分解速度と、該薬剤の表面積及び体積によって徐放期間を調節することができる。分解性ゲルの分解速度は、分解性ゲルの種類、化学構造、三次元構造、分子量等を調節することによって制御することができる。例えばヒアルロン酸(塩)ゲルを用いる場合には、その飽和含水率を選ぶことにより、分解速度を制御することが可能であり、徐放期間を任意に設定することができる(図2参照)。
【0018】
また、アニオン性多糖ゲルに担持させる機能性材料が、後述のダナゾールのように難水溶性である場合には、界面活性剤を用いて懸濁化させ、混入することにより担体からの溶出を防ぐことができる。また、機能性材料がイオン性である場合には、分解性ゲルとイオン的に結合することで担持することも可能であり、機能性材料に官能基がある場合には、共有結合的に結合することで担持することも可能である。
【0019】
本発明に使用するヒアルロン酸(塩)の起源は特に限定されるものではなく、鶏の鶏冠等の各種動物組織由来であっても、ヒアルロン酸(塩)の生産能を有する微生物由来であってもよいが、本発明に使用するヒアルロン酸(塩)は微生物由来であることが好ましい。
【0020】
本発明の薬剤は、その製造の過程で、界面活性剤を含むものとして、大別すると下記3工程からなる。
(第1工程)機能性材料と界面活性剤とを混合し機能性材料含有界面活性剤懸濁液を得る。
(第2工程)分解性ゲルの原料化合物を、水系溶媒に重量比で20〜80重量%の範囲になるように溶解させ、分解性ゲル原料溶解液を調製する。
(第3工程)機能性材料含有界面活性剤懸濁液と分解性ゲル原料溶解液とを混合し、それに架橋剤を添加し、分解性ゲルの原料を架橋する。
【0021】
以下に、第1工程について、ダナゾールを用いて具体的に説明する。
界面活性剤を純水に分散させ、これに機能性材料として婦人科疾患治療薬であるダナゾールを加え、ホモジナイザーで懸濁化させる。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤が好ましく、特にポリソルベート80、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ショ糖ステアリン酸エステル等が好ましく使用できる。婦人科疾患治療薬と界面活性剤との混合割合は、婦人科疾患治療薬1重量部に対して、界面活性剤1/100〜10重量部であることが好ましく、1/20〜1重量部であることがより好ましい。両者をこれらの割合で混合して得られる婦人科疾患治療薬含有界面活性剤懸濁液中のダナゾールの濃度は、最終的な婦人科疾患治療剤中のダナゾール量から逆算して任意に選ぶことができる。ダナゾールの濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜30重量%であり、より好ましくは10〜20重量%である。なお、本発明において、純水とは、例えば、連続イオン交換(Electric Deionization)、逆浸透(Reverse Osmosis)等により精製した水を意味する。
【0022】
以下に、第2工程について、分解性ゲルの原料化合物としてヒアルロン酸(塩)を用いて、具体的に説明する。
水酸化ナトリウム水溶液に重量比で20〜80重量%の範囲となるようにヒアルロン酸(塩)を添加し、均一に混合することで、ヒアルロン酸(塩)ゲル溶液を調製する。
【0023】
以下に、第3工程について、具体的に説明する。
前記懸濁液と、ヒアルロン酸(塩)ゲル溶液を加え、スパーテルで攪拌し、分解性ゲル原料を均一に混合した後、エポキシ化合物を添加し、再びスパーテルで攪拌する。得られた粘凋溶液を素早く型にキャストし、恒温槽で加温する。得られたゲルを0.05mol/lのHCl溶液で中和し、さらに純水で24時間洗浄することでダナゾール担持ヒアルロン酸(塩)−エポキシ化合物ゲルが得られる。
水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、1分子当り2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物による架橋が充分に進行できる濃度で、かつヒアルロン酸(塩)が充分に溶解できる濃度である必要があり、その濃度は、好ましくは、0.01〜10mol/lであり、より好ましくは、0.1〜5mol/lである。ダナゾール懸濁液と水酸化ナトリウム水溶液との混合比は、最終的な婦人科疾患治療剤中のダナゾール量から逆算して任意に選ぶことができる。ダナゾール懸濁液と水酸化ナトリウム水溶液との混合比は、好ましくは、1対10000〜9対1(体積比)である。ヒアルロン酸(塩)含有水酸化ナトリウム水溶液中のヒアルロン酸(塩)の濃度は特に限定されないが、10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは20重量%以上である。
【0024】
本発明の分解性ゲルが、架橋剤を用いる架橋反応によって得られたゲルである場合、これに用いる架橋剤は、1分子当たり2つ以上のエポキシ基を有する化合物が利用できる。ヒアルロン酸の水酸基を架橋できる化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エピクロルヒドリン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の1分子当たり2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物である。なかでも、エチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましく利用できる。なお、架橋剤の添加量は、架橋剤と反応する官能基に対して、好ましくは0.01〜10当量、より好ましくは0.05〜5当量にすればよい。
【0025】
本発明の薬剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、機能性材料以外に、糖質、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、酵素、脂質、無機塩類、有機塩類、金属類等を含有してもよい。
【0026】
本発明でいうダナゾールはHPLC法により分析することができる。例えば、島津GLC製Zorbax CN(商品名)またはメルク製Lichrosorb RP−18(商品名)を用いることができる。前者の場合には、溶出液は混合容積比3:2:7のメタノール、アセトニトリル、水の混合溶媒を用い、溶出速度1ml/min、カラム温度30℃の条件で分析することが好ましく、後者の場合には、溶出液は混合容積比8:2のメタノール、水の混合溶媒を用い、溶出速度1ml/min、カラム温度25℃の条件で分析することが好ましい。両者ともUV260nmの吸光光度を測定することで検出、定量することが好ましい。
【0027】
本発明の薬剤が、子宮内、膣内、子宮内膜症嚢胞の腫瘍内または骨盤内埋植用である場合、本発明の薬剤の形状及び大きさは、子宮内、膣内、子宮内膜症嚢胞の腫瘍内または骨盤内局所投与に適したものであれば特に限定されるものではない。またその形状は、本発明の子宮内治療剤を子宮内において使用する場合には、T字形、太田リング様、シート状ゲル、球状ゲル等の形状であれば利用でき、膣内において使用する場合には、環状リングの形状であれば利用できる。また、子宮内膜症嚢胞の腫瘍内または骨盤内で使用する場合には、流動性のあるゲルまたはシート状ゲルの形状であれば利用できる。
【0028】
本発明の薬剤の大きさは、使用目的によって異なるものの、投与する薬剤がT字形状子宮内治療薬の場合には、横軸の長さは、好ましくは20〜40mm、より好ましくは30〜35mmであり、縦軸の長さは、好ましくは25〜45mm、より好ましくは30〜38mmであり、横軸の直径は、好ましくは3.0〜4.0mmであり、より好ましくは3.2〜3.6mmである。
【0029】
太田リング様子宮内治療薬の場合には、リング外径は、好ましくは20〜25mm、リングの直径(太さ)は、好ましくは、2.55〜4.5mm、より好ましくは約3.0mmである。シート状ゲルの場合には、横の長さは、好ましくは10〜50mm、より好ましくは20〜30mmであり、縦の長さは、好ましくは20〜70mm、より好ましくは40〜60mmであり、その厚さは、好ましくは2〜20mm、より好ましくは5〜10mmである。
【0030】
球状ゲルの場合には、直径は、好ましくは10〜30mm、より好ましくは20〜25mmである。環状リング膣内治療薬の場合には、リング外径は、好ましくは30〜60mm、より好ましくは45〜55mmであり、環の直径は、好ましくは4.0〜12.0mm、より好ましくは7.5〜10.0mmである。また、ペースト状ゲルの場合は、特にその大きさは限定されない。
【0031】
本発明の薬剤の形状をT字型、棒状または太田リング様とする場合には、単層状だけでなく、製剤の硬度を上げる観点から、プラスチック製等の芯を内蔵させて、二層以上の多層構造にしてもよい。
【0032】
ただし、T字形子宮内治療薬において、芯を内蔵させる場合には、通常、横軸、縦軸の双方に行ない、芯の長さは採用する軸の長さの55〜70%の範囲内とし、芯の直径は軸の直径の60〜90%の範囲内とすることが好ましい。さらに薬剤は縦軸に付着させるとよい。なお、T字形子宮内治療薬では、長さが、好ましくは30〜400mm、より好ましくは50〜280mmであり、直径が、0.170〜0.290mmであるナイロンモノフィラメントを縦軸の下端に装着することが好ましい。
【0033】
ただし、棒状子宮内治療薬において芯を内蔵させる場合には、芯の長さは採用する軸の長さの55〜70%の範囲内とし、芯の直径は該軸の直径の60〜90%の範囲内とすることが好ましい。なお、棒状子宮内治療薬では、長さが、好ましくは30〜400mm、より好ましくは50〜280mmにし、直径が、0.170〜0.290mmのナイロンモノフィラメントを下端に装着することが好ましい。
【0034】
また、本発明の薬剤の形状を環状リングとする場合には、治療期間または症状の軽重に対応した機能性材料の放出率向上の観点から、単層状または二層状のいずれかに形成してもよい。ただし、二層状の環状リングの膣内製剤とする場合には、表層の厚さは、好ましくは少なくとも0.1mm、より好ましくは0.1〜2.0mmである。
【0035】
二層状製剤については、上記の単層状製剤を製造する工程中、得られた混合物を成形型に充填する工程で所望の芯を埋め込み、ついでこれを同様に固化させることにより製造する。なお、芯は前記のものを使用する。本発明の薬剤が生体内で使用される場合には、無菌製剤であることを要求されることから、製造はすべて無菌条件下で行い、得られた最終製剤はアルミヒートシール包材等で包装し、無菌状態を維持することが重要である。
【0036】
本発明に用いる機能性材料は、特に限定されないが、子宮内投与薬、膣内投与薬、子宮内膜症嚢胞の腫瘍内投与薬または骨盤内投与薬等の薬効成分である。薬効成分の具体例は、子宮内膜症治療薬、避妊薬、解熱薬、ホルモン剤、子宮内膜癌治療薬、ホルモン合成阻害薬子宮内膜症治療薬、抗生薬、抗真菌薬、膣炎症治療薬、トリコモナス症治療薬、子宮頸癌治療薬等である。薬効成分が子宮内膜症治療薬である場合には本発明の効果が顕著になる。
【0037】
子宮内膜症治療薬は、ダナゾール、非ステロイド性消炎鎮痛剤、漢方薬、プロゲストーゲン、エストロゲン、GnRH−アンタゴニスト、ジェノゲスト、血管新生阻害剤、アロマターゼ阻害剤等である。なかでもダナゾールは、局所施用した際に顕著な薬効が期待できることから、本発明に好ましく使用することができる。
【0038】
本発明の薬剤が含有する薬効成分が、ダナゾールである場合には、好ましい分解性ゲルの原料化合物はヒアルロン酸(塩)及びその誘導体である。これらであれば、ゲル中へのダナゾールの担持が良好で、さらにそのゲルのヒアルロニダーゼや活性酸素に対する応答も良好なため、ダナゾールを瞬時に放出させることができる。
【0039】
また、本発明に用いる薬効成分が、子宮内膜症治療薬である場合には、薬剤は、内性子宮内膜症、外性子宮内膜症の何れの治療にも使用することができる。
【0040】
薬効成分が、子宮内投与薬、膣内投与薬、腫瘍内投与薬または骨盤内投与薬である場合の使用対象は、人間の婦人に限定されず、豚、牛、馬、羊、犬、猫、猿等の哺乳類の雌にも使用することができる。
【0041】
本発明の薬剤の利用分野は特に限定されるものではなく、医療、食品、農業、衛生管理等に利用される。医療分野であればDDS(ドラッグデリバリーシステム)等に、食品分野であればNDS(ニュートリエントデリバリーシステム)や保存料、日持向上剤等の徐放等に、農業分野であれば農薬、肥料の徐放等に、衛生管理分野であれば、プール、貯水槽、浴槽等に使用する防腐剤、抗菌剤、防カビ剤、抗カビ剤等の徐放にも利用できる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を詳細に説明する。
【0043】
HPLCによる平均分子量の測定
多糖類の分子量測定に適する任意のカラムを用いることができるが、多糖がヒアルロン酸(塩)であれば、例えば、昭和電工(株)製Shodex Ionpak KS806(商品名)及び昭和電工(株)製Ionpak KS−G(商品名)等のカラムを用いることが好ましい。本発明の実施例、比較例においては、昭和電工(株)製Shodex Ionpak KS806(商品名)及び昭和電工(株)製Ionpak KS−G(商品名)を用いた。この場合、溶出液としては0.2mol/lの塩化ナトリウム水溶液を用い、流速1.0ml/分で流した。ヒアルロン酸(塩)の検出は206nmで行った。平均分子量は、極限粘度で求めた分子量既知のヒアルロン酸ナトリウムで作製した検量線を用いて計算により求めることができる。
【0044】
ダナゾール懸濁液の調製
純水(5ml)に特定量のポリソルベート80を分散させ、これに特定量のダナゾールを加え、ホモジナイザー(井内盛栄堂製 ラボ・ディスパーザX10/25、ジェネレータシャフト10F(商品名))で、24000rpm、1分間攪拌してダナゾール懸濁液A、B及びCを得た。ダナゾール懸濁液A、B及びC中のダナゾール、ポリソルベート80の量は以下の通りである。
ダナゾール懸濁液A(ダナゾール12重量%):ダナゾール(600mg)、ポリソルベート80(150mg)
ダナゾール懸濁液B(ダナゾール24重量%):ダナゾール(1200mg)、ポリソルベート80(300mg)
ダナゾール懸濁液C(ダナゾール1.2重量%):ダナゾール(60mg)、ポリソルベート80(15mg)
【0045】
実施例1〜4
インビトロ試験用ダナゾール担持ヒアルロン酸−エチレングリコールジグリシジルエーテルゲル(以下、「D−CHA−EGDGEゲル」ということがある。)の製造。
ダナゾール懸濁液Aまたはダナゾール懸濁液Bのいずれか1種(2.5ml)と2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(2.5ml)とを混合し、これに平均分子量90kDaのヒアルロン酸ナトリウム(チッソ(株)製CHA、以下、「CHA」ということがある。1500mg)を加え攪拌した。これにエチレングリコールジグリシジルエーテル(870mg)を加え攪拌し、所定の形状の型にキャスト後、80℃の恒温槽で実施例1は15分、実施例2は14分、実施例3及び実施例4は20分加温した。
型から取り出したゲルを0.05mol/lのHCl水溶液で中和し、純水で洗浄後、pH4.5の0.14mol/lのPBSに2日間浸漬し、所定の形状(直径10mm、厚み約2mmの円盤状)にカッティングして、ダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルを得た。
以下に、得られたダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルのダナゾール含量、飽和含水率を示す。
実施例1:ダナゾール懸濁液A、ダナゾール含量(1.4mg)、飽和含水率92重量%
実施例2:ダナゾール懸濁液A、ダナゾール含量(0.8mg)、飽和含水率94重量%
実施例3:ダナゾール懸濁液B、ダナゾール含量(3.0mg)、飽和含水率89重量%
実施例4:ダナゾール懸濁液A、ダナゾール含量(1.6mg)、飽和含水率89重量%
【0046】
比較例1
インビトロ試験用D−CHA−EGDGEゲルの製造。
ダナゾール懸濁液B(2.5ml)と2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(2.5ml)とを混合し、これに平均分子量1000kDaのヒアルロン酸ナトリウム(チッソ(株)製CHA、以下、「CHA」ということがある。750mg)を加え攪拌した。これにエチレングリコールジグリシジルエーテル(435mg)とエタノール(0.1ml)との混合液を加え攪拌し、所定の形状の型にキャスト後、60℃の恒温槽で15分間加温した。
型から取り出したゲルを0.05mol/lのHCl水溶液で中和し、純水で洗浄後、pH4.5の0.14mol/lのPBSに2日間浸漬し、所定の形状(直径10mm、厚み約2mmの円盤状)にカッティングして、ダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルを得た。
以下に、得られたダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルのダナゾール含量、飽和含水率を示す。
比較例1:ダナゾール懸濁液B、ダナゾール含量(0.16mg)、飽和含水率99.5重量%。
【0047】
実施例5、6
インビボ試験用D−CHA−EGDGEゲルの製造(ラット子宮内留置用ゲル)。
ダナゾール懸濁液Aまたはダナゾール懸濁液Cのいずれか1種(2.5ml)と2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(2.5ml)とを混合、これに平均分子量90kDaCHA(1500mg)を加え攪拌した。これにエチレングリコールジグリシジルエーテル(870mg)加え攪拌し、所定の形状の型にキャスト後、80℃の恒温槽で15分間加温した。
型から取り出したゲルを0.05mol/lのHCl水溶液で中和し、純水で洗浄後、pH4.5の0.14mol/lのPBSに2日間浸漬し、飽和含水率90重量%のダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルを得た。
以下に、得られたダナゾール担持ヒアルロン酸ゲルのダナゾール含量、飽和含水率を示す。
実施例5:ダナゾール懸濁液A、ダナゾール含量(1mg)、飽和含水率90重量%。形状は、直径0.7mm、長さ22mmのプラスチック製の指示棒を持つ長さ20mm、直径2mm、内径0.7mmの棒状ゲル。
実施例6:ダナゾール懸濁液C、ダナゾール含量(0.1mg)、飽和含水率90重量%。形状は、直径0.7mm、長さ22mmのプラスチック性の指示棒を持つ長さ20mm、直径2mm、内径0.7mmの棒状ゲル。
【0048】
比較例2、3
ダナゾール担持アセチル化ヒアルロン酸ジメチルジステアリルアンモニウム塩(以下、「D−AcCHA−DSC」ということがある。)の製造。
平均分子量1000kDaのヒアルロン酸ナトリウム(チッソ(株)製CHA、以下、「CHA」ということがある。5.4g)を純水900(ml)に溶解するとともに、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下、「DSC」ということがある。7.41g)を純水(1680ml)に懸濁させた。両液を45℃に加温後、攪拌しながら混合し、5分間攪拌を続けた。生成した錯体を遠心分離(5000rpm、室温)で回収し、45℃の温水にて洗浄した。洗浄終了後、一夜凍結乾燥し、その後さらに50℃で一夜真空乾燥し、CHA−DSC錯体を得た(収量9.9g、収率85%)。このCHA−DSC錯体(9.0g)をDMF(300ml)、塩化アセチル(比較例2では2.4g、比較例3では1.2g)及びピリジン(比較例2では2.4g、比較例3では1.2g)が混合された溶媒に溶解後、60℃、2時間攪拌した。これに氷冷下で水(1.5L)を加えた後、ゲル状物質を濾過回収し、水で洗浄後、50℃で一夜真空乾燥することで、AcCHA−DSC(比較例2では8.5g、比較例3では7.0g)を得た。
【0049】
次に、ダナゾール(比較例2では0.05g、比較例3では0.025g)及びAcCHA−DSC(0.75g)を純水2mlに投入し、得られた懸濁物を所定の成形型(直径10mm、厚み2mmの円盤状)に直ちに充填した。その後、凍結乾燥機で乾燥を行ない、D−AcCHA−DSCを調製した。得られたD−AcCHA−DSCの重量は100mgであった。
以下に、得られたD−AcCHA−DSCのダナゾール含量を示す。
比較例2:ダナゾール含量(5mg)
比較例3:ダナゾール含量(2.5mg)
【0050】
D−CHA−EGDGEゲル及びD−AcCHA−DSCのヒアルロニダーゼによる分解、ダナゾール放出試験。
D−CHA−EGDGEゲル(実施例1〜4、比較例1)及びD−AcCHA−DSC(比較例2、3)をヒアルロニダーゼ(牛睾丸由来 シグマ製タイプIV−S)10unit/mlを含有するpH4.5の0.14mol/lのPBS(25ml)に振とうさせた。定期的にヒアルロニダーゼ含有PBSを交換し、ゲルの重量変化とPBS中のダナゾール濃度とをHPLCにて測定した。図2はゲルの分解量の累積置を、経時的にプロットしたものであり、時間に対してリニアに分解していることが分かる。比較例1は約2日で分解、消失しているのに対して、実施例1〜4は同一の形状、大きさで10〜80日まで、分解時間が制御されていることがわかる。また、比較例2、3では30日後に約15%の重量減少が認められており、塩化アセチルの添加量による差異は見られなかった。図3はダナゾール放出量の累積置を経時的にプロットしたものであり、実施例1〜4では飽和含水率により分解速度を制御できるため、比較例1、2よりも広い範囲でダナゾールの放出量、放出期間を制御されている。なお、図4はゲルの分解とダナゾールの放出量との関係を示したものであり、ゲルの分解量に応じてダナゾールが放出されていることが分かる。
【0051】
D−CHA−EGDGEゲルのラット子宮内留置試験。
子宮腺筋症を疾患させたラット子宮内へラット子宮内留置実験用D−CHA−EGDGEゲル(実施例5、6)とコントロールとしてダナゾール未担持CHA−EGDGEゲルを埋入後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後にそれぞれゲルを取り出し、ゲルの重量を測定し、患部の観察を行った。表3はその結果である。ダナゾール担持量の多い実施例5のゲルは分解し難いことがわかるが、これはダナゾールの薬理作用によりヒアルロニダーゼの発生源である子宮内膜組織が萎縮したためである。すなわち子宮腺筋症の症状が顕著なときはダナゾールが充分に放出され、回復すればCHA−EGDGEゲルの分解が抑えられダナゾールの放出が少なくなるインテリジェント製剤として機能していたことがわかった。実施例6では妊娠時に見られる子宮内膜の組織上の変化が、実施例5ではダナゾールの薬理効果による組織上の変化が認められた。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【発明の効果】
本発明の薬剤であれば、機能性材料の放出速度の制御及び長期に亘る徐放が可能で、且つ機能性材料放出終了後には該ゲル自体が分解消滅する、薬剤を提供することができる。ヒアルロン酸のゲルである場合には、ゲルの飽和含水率を選ぶことにより患部で発生するヒアルロニダーゼによる分解速度を幅広く選択できることから、効果的な機能性材料の放出を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】CHA−EGDGEゲルの飽和含水率と分解の線速度との関係を示すグラフ
【図2】D−CHA−EGDGEゲルの分解量の経時変化(累積置)を示すグラフ
【図3】D−CHA−EGDGEゲルのダナゾール放出量の経時変化(累積置)を示すグラフ
【図4】D−CHA−EGDGEゲルの分解量とダナゾール放出量の関係を示すグラフ
Claims (13)
- 飽和含水率が98重量%以下である分解性ゲルと、機能性材料とを含有する薬剤。
- 飽和含水率が98重量%以下である分解性ゲルと、機能性材料とを含有する薬剤であって、分解性ゲルの飽和含水率を制御することにより機能性材料の放出速度が制御された薬剤。
- 機能性材料が、子宮内投与薬、膣内投与薬、子宮内膜症嚢胞の腫瘍内投与薬及び骨盤内投与薬から選ばれる少なくとも1種である請求項1または請求項2記載の薬剤。
- 機能性材料が、ダナゾールである請求項1または請求項2記載の薬剤。
- 分解性ゲルが、多糖ゲルである請求項1または請求項2記載の薬剤。
- 多糖ゲルが、アニオン性多糖ゲルである請求項5記載の薬剤。
- 分解性ゲルが、架橋剤を用いる架橋反応によって得られたゲルである請求項1〜6のいずれか1項記載の薬剤。
- 架橋剤が、1分子当たり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物である請求項7記載の薬剤。
- エポキシ化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテルである請求項8記載の薬剤。
- 界面活性剤をさらに含有する請求項1〜9のいずれか1項記載の薬剤。
- 界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である請求項10記載の薬剤。
- 分解性ゲルと機能性材料とを含有する薬剤において、分解性ゲルの飽和含水率を制御することにより機能性材料の放出速度を制御することを特徴とする機能性材料放出制御方法。
- 下記工程を有することを特徴とする薬剤の製造方法。
(第1工程)機能性材料と界面活性剤とを混合し機能性材料含有界面活性剤懸濁液を得る。
(第2工程)分解性ゲルの原料化合物を、水系溶媒に重量比で20〜80重量%の範囲になるように溶解させ、分解性ゲル原料溶解液を調製する。
(第3工程)機能性材料含有界面活性剤懸濁液と分解性ゲル原料溶解液とを混合し、それに架橋剤を添加し、分解性ゲルの原料を架橋する。
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