JP2004321395A - 医療用チューブ - Google Patents
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Abstract
【課題】YAGレーザーによる鮮明なレーザーマーキングが施されていて、しかも、表面平滑性の高い医療用チューブを提供すること。
【解決手段】シースイントロデューサー1は、シースチューブ4を備えている。このシースチューブ4は、ETFE製のチューブ材からなり、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマーク4a,4b,4cが記されている。ETFEは、波長1064nmのYAGレーザーを吸収しない部分と同YAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体であるため、波長1064nmのYAGレーザーを利用してレーザーマーキングを施すと、その出力を調整することにより、表面平滑性を損ねることなく、鮮明なマーキングを施すことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】シースイントロデューサー1は、シースチューブ4を備えている。このシースチューブ4は、ETFE製のチューブ材からなり、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマーク4a,4b,4cが記されている。ETFEは、波長1064nmのYAGレーザーを吸収しない部分と同YAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体であるため、波長1064nmのYAGレーザーを利用してレーザーマーキングを施すと、その出力を調整することにより、表面平滑性を損ねることなく、鮮明なマーキングを施すことができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用チューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、医療用チューブにおいて、チューブ上の特定位置からの距離を示す目盛り(マーク)がチューブの外周に施されているものは公知である。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−347130号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献1に記載のチューブの場合、上記目盛りは、印刷あるいは刻印などの手段により、チューブの外周に形成してあった(上記特許文献1段落[0040]参照。)。
【0005】
しかし、この種の目盛りを印刷すると、印刷された目盛りが徐々に摩耗するため、目盛りを読み取りにくくなるという問題があった。また、フッ素樹脂系の樹脂材料でできたチューブのように、平滑性ないし潤滑性の高い表面を有する場合、目盛りを印刷すること自体が困難であったり、仮に印刷ができたとしても、きわめて短期間に消失してしまう、といった問題を招くことがあった。また、この種の目盛りを刻印すると、刻印部分においてチューブ表面の平滑性が損なわれてしまう、という問題があった。
【0006】
そこで、このような問題に対処するため、発明者は、チューブに対してレーザーマーキングを施すことを検討した。
しかし、CO2レーザーやエキシマレーザーでは、出力が高い場合は、依然としてチューブ表面の平滑性が損なわれてしまうという問題を解決できず、場合によっては、チューブの物性が劣化してしまうこともあった。また、出力が低い場合は、十分に鮮明なマークが施されないという欠点があった。
【0007】
また、YAGレーザーでも、樹脂材料の種類によっては、チューブ表面の平滑性が損なわれてしまうことがあり、その一方、樹脂材料の種類によっては、レーザーがチューブを透過してしまい、鮮明なマーキングを施すことができないことがあった。
【0008】
ただし、このような検討を重ねる中で、発明者は、YAGレーザーの場合、特定の樹脂材料を用いることにより、鮮明なマーキングを施すことができ、且つチューブ表面の平滑性も損なわれないことを見いだすに至った。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、その目的は、YAGレーザーによる鮮明なレーザーマーキングが施されていて、しかも、表面平滑性の高い医療用チューブを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明においては、次のような特徴的構成を採用した。
すなわち、本発明の医療用チューブは、
波長1064nmのYAGレーザーを吸収しない部分と前記YAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体を主成分とする樹脂材料によって形成されたチューブ材であって、前記YAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマークが記されている
ことを特徴とするものである。
【0010】
前記共重合体としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリ塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)を利用することができる。
【0011】
これらの共重合体は、いずれか一種を単独で用いてもよいし、均一に混合できるもの同士であれば二種以上を混合した混合物を用いてもよい。
また、これら共重合体を主成分とするものであれば、樹脂材料中に主成分となる共重合体以外の成分を含んでいてもよい。
【0012】
主成分となる共重合体以外の成分としては、例えば、前記YAGレーザーを吸収して発熱する発熱成分が、前記樹脂材料中に含まれていると望ましい。
前記発熱成分としては、硫酸バリウム、カーボンブラック、雲母、イリオジン(登録商標)、酸化ケイ素、金属水酸化物、および金属酸化物(例えば、酸化ビスマス、酸化チタン、二酸化チタン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化コバルト等)を利用することができる。
【0013】
また、主成分となる共重合体による効果を損ねない範囲内の配合比であれば、主成分に対して均一に混合できるような別の樹脂成分が配合されていてもよい。
この別の樹脂成分としては、この種の医療用チューブを形成する際に利用される各種樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、シリコーン樹脂、ポリスルホン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、フッ素樹脂などを挙げることができる。
【0014】
[作用、および発明の効果]
上記医療用チューブにおいて、レーザーマーキングの際に用いる波長1064nmのYAGレーザーは、CO2レーザーやエキシマレーザーに比べて樹脂材料を透過しやすいため、CO2レーザーやエキシマレーザーとは異なり、出力を調整することにより、チューブ材の表面をほぼ削ることなく、チューブ材の内部(深層)まで到達させることができる。
【0015】
上記チューブ材を形成する樹脂材料は、波長1064nmのYAGレーザーを吸収しない部分と前記YAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体を主成分とするものになっているので、YAGレーザーがチューブ材の内部(深層)に到達すると、分子レベルまたはミクロレベルで共重合体が変色し、巨視的には、変色した微小領域の集合体として、外周側から視認可能なマークが記されている状態になる。
【0016】
したがって、この医療用チューブであれば、レーザーマーキングが施されているにもかかわらず、きわめて表面平滑性の高い医療用チューブとなり、より具体的には、指での触感によってザラツキを感じさせない程度の表面平滑性を有するものとなる。また、このように表面平滑性は高いものの、YAGレーザーはチューブ材の内部(深層)に到達しているので、鮮明にマークが記されているものとなる。
【0017】
なお、一般的なレーザーマーキングの手法としては、レーザーを吸収して変色する顔料等の微粉末をあらかじめ樹脂材料中に分散させておく手法もある。しかし、微粉末と樹脂材料との相性、配合比、混合方法等によっては、樹脂材料中において微粉末が凝集したり沈降したりして不均一に偏在する状態になりやすい。これに対し、上記医療用チューブにおいては、YAGレーザーを吸収しない部分とYAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体を用いているので、樹脂材料とは別の微粉末を混合したものとは異なり、樹脂材料中において変色成分が不均一に偏在する状態にならない。
【0018】
さらに、主成分となる共重合体以外の成分として、YAGレーザーを吸収して発熱する発熱成分が樹脂材料中に含まれている場合は、発熱成分の近傍においても熱によって樹脂成分が変色するので、発熱成分が含まれていない場合以上に、レーザーマーキングの際の感度を高めることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態についていくつかの例を挙げて説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、シースイントロデューサー1は、一端にシースハブ2が設けられたシースチューブ4と、シースハブ2とシースチューブ4との接続部分においてシースチューブ4が折れ曲がるのを防止するキンク防止具6と、一端がシースハブ2に接続されていて、シースチューブ4内へ薬液(例えば、ヘパリンなど)や生理食塩水を注入する際に利用される側管チューブ8と、側管チューブ8の端部に設けられた三方活栓9とを備えている。これらの構成のうち、シースチューブ4が、本発明の医療用チューブに相当する。
【0020】
シースチューブ4は、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)製のチューブ材からなり、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマーク4a,4b,4cが記されている。このようなマーク4a,4b,4cが記されているので、シースチューブ4を血管内に挿入する際には、このマーク4a,4b,4cを目安にして挿入長を確認しながら処置を行うことができる。
【0021】
ところで、ETFEは、波長1064nmのYAGレーザーを吸収しない部分と同YAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体である。そのため、ETFE製のチューブ材であるシースチューブ4に対して、波長1064nmのYAGレーザーを利用してレーザーマーキングを施すと、その出力を調整することにより、表面平滑性を損ねることなく、鮮明なマーキングを施すことができる。
【0022】
これが、例えばCO2レーザーやエキシマレーザーを利用したレーザーマーキング法であると、その出力を調整しても、高出力側に調整すると表面平滑性を損ねるという問題を招く一方、低出力側に調整するとレーザーがチューブ材の内部(深層)に到達せず、鮮明なマーキングを施すことができないという問題を招く。そのため、表面平滑性を損ねることなく鮮明なマーキングを施し得るような調整は不能であるか、不能ではないとしてもきわめて困難である。また、YAGレーザーを利用したレーザーマーキング法であっても、樹脂材料によってはYAGレーザーが透過してしまうため、鮮明なマーキングを施すことができないという問題を招く。
【0023】
これに対し、上記シースイントロデューサー1の場合、シースチューブ4がETFE製で、且つ、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によってマーク4a,4b,4cが記されているので、表面平滑性を損なわない程度の出力であっても、YAGレーザーがチューブ材の内部(深層)にまで到達し、深さ方向に多数の微小な変色域が重なる状態でマーク4a,4b,4cが形成される。
【0024】
その結果、マーク4a,4b,4cが鮮明になり、且つ、チューブ材の表面が削れたりごく表層に変色域が集中したりしないので、シースチューブ4の表面平滑性が高くなる。
[第2実施形態]
図2に示すように、シースイントロデューサー11は、一端にシースハブ12が設けられたシースチューブ14と、シースハブ12とシースチューブ14との接続部分においてシースチューブ14が折れ曲がるのを防止するキンク防止具16と、一端がシースハブ12に接続されていて、シースチューブ14内へ薬液(例えば、ヘパリンなど)や生理食塩水を注入する際に利用される側管チューブ18と、側管チューブ18の端部に設けられた三方活栓19とを備えている。これらの構成のうち、シースチューブ14が、本発明の医療用チューブに相当する。
【0025】
シースチューブ14は、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)製のチューブ材からなり、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマーク14a〜14fが記されている。このようなマーク14a〜14fが記されているので、シースチューブ14を血管内に挿入する際には、このマーク14a〜14fを目安にして挿入長を確認しながら処置を行うことができる。
【0026】
また、シースチューブ14がFEP製で、且つ、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によってマーク14a〜14fが記されているので、上記第1実施形態で説明したETFEの場合と同様の理由により、マーク14a〜14fは鮮明になり、且つ、シースチューブ14の表面平滑性が高くなる。
【0027】
さらに、このシースイントロデューサー11の場合、キンク防止具16が、じゃばら部16aと、可動端部16bと、ウィング部16cとを有する形状で、じゃばら部16aを伸縮させることにより、キンク防止具16による保護範囲を変更することができる。したがって、シースチューブ14の挿入長が短い場合には、じゃばら部16aを伸ばすことにより、折れ曲がり(キンク)を防止する範囲を拡大する一方、シースチューブ14の挿入長が長い場合には、じゃばら部16aを縮ませることにより、キンク防止具16が挿入作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0028】
[第3実施形態]
図3(a)に示すように、シースイントロデューサー21は、一端にシースハブ22が設けられたシースチューブ24と、シースハブ22とシースチューブ24との接続部分においてシースチューブ24が折れ曲がるのを防止するキンク防止具26と、一端がシースハブ22に接続されていて、シースチューブ24内へ薬液(例えば、ヘパリンなど)や生理食塩水を注入する際に利用される側管チューブ28と、側管チューブ28の端部に設けられた三方活栓29とを備えている。これらの構成のうち、シースチューブ24が、本発明の医療用チューブに相当する。
【0029】
シースチューブ24は、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)製のチューブ材からなり、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマーク24aが記されている。このようなマーク24aが記されているので、シースチューブ24を血管内に挿入する際には、このマーク24aを目安にして挿入長を確認しながら処置を行うことができる。
【0030】
また、シースチューブ24がETFE製で、且つ、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によってマーク24aが記されているので、上記第1実施形態で説明した通りの理由により、マーク24aは鮮明になり、且つ、シースチューブ24の表面平滑性が高くなる。
【0031】
さらに、このシースイントロデューサー21の場合、キンク防止具26が、シースイントロデューサー21の本体側(シースチューブ24側)に対し装着/脱着可能な構造となっている。本体側に装着する前のキンク防止具26は、可変長部26aと、固定長部26bと、ウィング部26cとを有する形状で、可変長部26aを適当な箇所(例えば、図3(b)中において破線で示した箇所)で切断した上で本体側に装着することにより、キンク防止具26による保護範囲を変更することができる。したがって、シースチューブ24の挿入長が短い場合には、可変長部26aの切断長を短くすることにより、折れ曲がり(キンク)を防止する範囲を拡大する一方、シースチューブ24の挿入長が長い場合には、可変長部26aの切断長を長くすることにより、キンク防止具26が挿入作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0032】
なお、上記キンク防止具26の可変長部26aは、適度な弾力のあるエラストマー材によって形成されるが、シースチューブ24の折れ曲がりを防止できるものであれば、必ずしもチューブ状のものでなくてもよい。
具体例を挙げれば、例えば、図3(c)に示すような、キンク防止具36であってもよい。このキンク防止具36は、上記キンク防止具26と同様の可変長部36aと、固定長部36bと、ウィング部36cとを有する形状であるが、可変長部36aに螺線を描く切れ目36dが入れられており、可変長部36aがコイルスプリング状になっている。このような形態の可変長部36aであれば、可変長部36aの形成材料自体が上記可変長部26aの形成材料より多少硬質なものであったとしても、可変長部36aを柔軟に湾曲させることができる。
【0033】
また、キンク防止具26において全長に渡って分割スリットが入っている場合および36b全長に渡って分割スリットが入っている場合においては、シースイントロデューサー21を体内に挿入した後に、挿入長に合わせて任意の長さに26a又は36aを切断してシースイントロデューサー21に装着することができる。
【0034】
[第4実施形態]
上記第1実施形態で例示したシースチューブ4について、下記の方法で表面平滑性を評価した。
まず、シースチューブ4の表面平滑性を、指の腹での触感によって確認したところ、ザラツキを感じるような凹凸が無い滑らかな表面であった。
【0035】
次に、このシースチューブの挿入抵抗を、以下のような方法で測定した。
引張圧縮試験機の台座上にポリ塩化ビニルシート(厚さ0.1mm)を固定し、引張圧縮試験機のロードセルにシースチューブ(外径2.0mm)を固定し、このシースチューブを上記ポリ塩化ビニルシートの中心に、速度100mm/minで差し込み、その時のシースチューブとポリ塩化ビニルシートとの間の摩擦抵抗値を測定した(以下、実施例ともいう)。
【0036】
また、比較のため、レーザーマーキングが施されていないETFE製のチューブ(以下、比較例1ともいう。)と、上記YAGレーザーによるレーザーマーキングが施されたポリカーボネート製のチューブ(以下、比較例2ともいう。)についても、上記と同様の試験を行った。
【0037】
なお、摩擦抵抗を測定する際に材質間の摩擦係数の差を考慮しないようにするために、接触面にはシリコーンオイルを塗布した。測定結果を図4に示す。
上記実施例の場合、比較例1よりは挿入抵抗が僅かに大きくなるものの、その摩擦抵抗値は20g未満であり、十分に高い表面平滑性が確保されていた。一方、比較例2の場合、20g以上の大きな摩擦抵抗を示し、特に最も高いピークでは35gを超える摩擦抵抗値を示しており、十分に高い表面平滑性を確保することは困難であった。
【0038】
[第5実施形態]
テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)に対し、0.5重量%の「イリオジン(登録商標)LS」(メルクジャパン社製)を添加、混合し、この樹脂材料で上記第1実施形態で例示したシースチューブ4と同様のシースチューブを作製し、これに波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマークを形成した。
【0039】
目視にてマークを確認したところ、第1実施形態のシースチューブ4よりもさらに鮮明なマークが記されていた。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0040】
例えば、上記第1〜第5実施形態においては、マーキング対象となるチューブの形成材料として、ETFEとFEPを例示したが、波長1064nmのYAGレーザーを吸収しない部分と前記YAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体を主成分とする樹脂材料であれば、他の共重合体を利用してもよい。他の共重合体としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリ塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)などを利用できる。これらの共重合体は、いずれか一種を単独で用いてもよいし、均一に混合できるもの同士であれば二種以上を混合した混合物を用いてもよい。
【0041】
また、上記第5実施形態では、共重合体以外の成分として、0.5重量%の「イリオジン(登録商標)LS」(メルクジャパン社製)を添加、混合する例を示したが、YAGレーザーを吸収して発熱する発熱成分であれば、他の発熱成分が樹脂材料中に含まれていてもよい。他の発熱成分としては、例えば、硫酸バリウム、カーボンブラック、雲母、酸化ケイ素、金属水酸化物、および金属酸化物(例えば、酸化ビスマス、酸化チタン、二酸化チタン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化コバルト等)を利用できる。
【0042】
さらに、上記実施形態では言及しなかったが、主成分となる共重合体による効果を損ねない範囲内の配合比であれば、主成分に対して均一に混合できるような別の樹脂成分が配合されていてもよい。別の樹脂成分としては、例えば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、シリコーン樹脂、ポリスルホン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、フッ素樹脂などを利用できる。
【0043】
加えて、上記各実施形態では、シースイントロデューサーの一部であるシースチューブにレーザーマーキングを施す例を示したが、本発明の構成は、各種カテーテルやカニューレ等、種々の医療用チューブにおいて採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のシースイントロデューサーの側面図である。
【図2】第2実施形態のシースイントロデューサーの側面図である。
【図3】第3実施形態のシースイントロデューサーを示す図であり、(a)はその側面図、(b)はキンク防止具の側面図、(c)は別のキンク防止具の側面図である。
【図4】挿入抵抗の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1,11,21・・・シースイントロデューサー、2,12,22・・・シースハブ、4,14,24・・・シースチューブ、4a〜4c,14a〜14f,24a・・・マーク、6,16,26,36・・・キンク防止具、8,18,28・・・側管チューブ、9,19,29・・・三方活栓。
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用チューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、医療用チューブにおいて、チューブ上の特定位置からの距離を示す目盛り(マーク)がチューブの外周に施されているものは公知である。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−347130号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献1に記載のチューブの場合、上記目盛りは、印刷あるいは刻印などの手段により、チューブの外周に形成してあった(上記特許文献1段落[0040]参照。)。
【0005】
しかし、この種の目盛りを印刷すると、印刷された目盛りが徐々に摩耗するため、目盛りを読み取りにくくなるという問題があった。また、フッ素樹脂系の樹脂材料でできたチューブのように、平滑性ないし潤滑性の高い表面を有する場合、目盛りを印刷すること自体が困難であったり、仮に印刷ができたとしても、きわめて短期間に消失してしまう、といった問題を招くことがあった。また、この種の目盛りを刻印すると、刻印部分においてチューブ表面の平滑性が損なわれてしまう、という問題があった。
【0006】
そこで、このような問題に対処するため、発明者は、チューブに対してレーザーマーキングを施すことを検討した。
しかし、CO2レーザーやエキシマレーザーでは、出力が高い場合は、依然としてチューブ表面の平滑性が損なわれてしまうという問題を解決できず、場合によっては、チューブの物性が劣化してしまうこともあった。また、出力が低い場合は、十分に鮮明なマークが施されないという欠点があった。
【0007】
また、YAGレーザーでも、樹脂材料の種類によっては、チューブ表面の平滑性が損なわれてしまうことがあり、その一方、樹脂材料の種類によっては、レーザーがチューブを透過してしまい、鮮明なマーキングを施すことができないことがあった。
【0008】
ただし、このような検討を重ねる中で、発明者は、YAGレーザーの場合、特定の樹脂材料を用いることにより、鮮明なマーキングを施すことができ、且つチューブ表面の平滑性も損なわれないことを見いだすに至った。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、その目的は、YAGレーザーによる鮮明なレーザーマーキングが施されていて、しかも、表面平滑性の高い医療用チューブを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明においては、次のような特徴的構成を採用した。
すなわち、本発明の医療用チューブは、
波長1064nmのYAGレーザーを吸収しない部分と前記YAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体を主成分とする樹脂材料によって形成されたチューブ材であって、前記YAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマークが記されている
ことを特徴とするものである。
【0010】
前記共重合体としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリ塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)を利用することができる。
【0011】
これらの共重合体は、いずれか一種を単独で用いてもよいし、均一に混合できるもの同士であれば二種以上を混合した混合物を用いてもよい。
また、これら共重合体を主成分とするものであれば、樹脂材料中に主成分となる共重合体以外の成分を含んでいてもよい。
【0012】
主成分となる共重合体以外の成分としては、例えば、前記YAGレーザーを吸収して発熱する発熱成分が、前記樹脂材料中に含まれていると望ましい。
前記発熱成分としては、硫酸バリウム、カーボンブラック、雲母、イリオジン(登録商標)、酸化ケイ素、金属水酸化物、および金属酸化物(例えば、酸化ビスマス、酸化チタン、二酸化チタン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化コバルト等)を利用することができる。
【0013】
また、主成分となる共重合体による効果を損ねない範囲内の配合比であれば、主成分に対して均一に混合できるような別の樹脂成分が配合されていてもよい。
この別の樹脂成分としては、この種の医療用チューブを形成する際に利用される各種樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、シリコーン樹脂、ポリスルホン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、フッ素樹脂などを挙げることができる。
【0014】
[作用、および発明の効果]
上記医療用チューブにおいて、レーザーマーキングの際に用いる波長1064nmのYAGレーザーは、CO2レーザーやエキシマレーザーに比べて樹脂材料を透過しやすいため、CO2レーザーやエキシマレーザーとは異なり、出力を調整することにより、チューブ材の表面をほぼ削ることなく、チューブ材の内部(深層)まで到達させることができる。
【0015】
上記チューブ材を形成する樹脂材料は、波長1064nmのYAGレーザーを吸収しない部分と前記YAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体を主成分とするものになっているので、YAGレーザーがチューブ材の内部(深層)に到達すると、分子レベルまたはミクロレベルで共重合体が変色し、巨視的には、変色した微小領域の集合体として、外周側から視認可能なマークが記されている状態になる。
【0016】
したがって、この医療用チューブであれば、レーザーマーキングが施されているにもかかわらず、きわめて表面平滑性の高い医療用チューブとなり、より具体的には、指での触感によってザラツキを感じさせない程度の表面平滑性を有するものとなる。また、このように表面平滑性は高いものの、YAGレーザーはチューブ材の内部(深層)に到達しているので、鮮明にマークが記されているものとなる。
【0017】
なお、一般的なレーザーマーキングの手法としては、レーザーを吸収して変色する顔料等の微粉末をあらかじめ樹脂材料中に分散させておく手法もある。しかし、微粉末と樹脂材料との相性、配合比、混合方法等によっては、樹脂材料中において微粉末が凝集したり沈降したりして不均一に偏在する状態になりやすい。これに対し、上記医療用チューブにおいては、YAGレーザーを吸収しない部分とYAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体を用いているので、樹脂材料とは別の微粉末を混合したものとは異なり、樹脂材料中において変色成分が不均一に偏在する状態にならない。
【0018】
さらに、主成分となる共重合体以外の成分として、YAGレーザーを吸収して発熱する発熱成分が樹脂材料中に含まれている場合は、発熱成分の近傍においても熱によって樹脂成分が変色するので、発熱成分が含まれていない場合以上に、レーザーマーキングの際の感度を高めることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態についていくつかの例を挙げて説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、シースイントロデューサー1は、一端にシースハブ2が設けられたシースチューブ4と、シースハブ2とシースチューブ4との接続部分においてシースチューブ4が折れ曲がるのを防止するキンク防止具6と、一端がシースハブ2に接続されていて、シースチューブ4内へ薬液(例えば、ヘパリンなど)や生理食塩水を注入する際に利用される側管チューブ8と、側管チューブ8の端部に設けられた三方活栓9とを備えている。これらの構成のうち、シースチューブ4が、本発明の医療用チューブに相当する。
【0020】
シースチューブ4は、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)製のチューブ材からなり、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマーク4a,4b,4cが記されている。このようなマーク4a,4b,4cが記されているので、シースチューブ4を血管内に挿入する際には、このマーク4a,4b,4cを目安にして挿入長を確認しながら処置を行うことができる。
【0021】
ところで、ETFEは、波長1064nmのYAGレーザーを吸収しない部分と同YAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体である。そのため、ETFE製のチューブ材であるシースチューブ4に対して、波長1064nmのYAGレーザーを利用してレーザーマーキングを施すと、その出力を調整することにより、表面平滑性を損ねることなく、鮮明なマーキングを施すことができる。
【0022】
これが、例えばCO2レーザーやエキシマレーザーを利用したレーザーマーキング法であると、その出力を調整しても、高出力側に調整すると表面平滑性を損ねるという問題を招く一方、低出力側に調整するとレーザーがチューブ材の内部(深層)に到達せず、鮮明なマーキングを施すことができないという問題を招く。そのため、表面平滑性を損ねることなく鮮明なマーキングを施し得るような調整は不能であるか、不能ではないとしてもきわめて困難である。また、YAGレーザーを利用したレーザーマーキング法であっても、樹脂材料によってはYAGレーザーが透過してしまうため、鮮明なマーキングを施すことができないという問題を招く。
【0023】
これに対し、上記シースイントロデューサー1の場合、シースチューブ4がETFE製で、且つ、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によってマーク4a,4b,4cが記されているので、表面平滑性を損なわない程度の出力であっても、YAGレーザーがチューブ材の内部(深層)にまで到達し、深さ方向に多数の微小な変色域が重なる状態でマーク4a,4b,4cが形成される。
【0024】
その結果、マーク4a,4b,4cが鮮明になり、且つ、チューブ材の表面が削れたりごく表層に変色域が集中したりしないので、シースチューブ4の表面平滑性が高くなる。
[第2実施形態]
図2に示すように、シースイントロデューサー11は、一端にシースハブ12が設けられたシースチューブ14と、シースハブ12とシースチューブ14との接続部分においてシースチューブ14が折れ曲がるのを防止するキンク防止具16と、一端がシースハブ12に接続されていて、シースチューブ14内へ薬液(例えば、ヘパリンなど)や生理食塩水を注入する際に利用される側管チューブ18と、側管チューブ18の端部に設けられた三方活栓19とを備えている。これらの構成のうち、シースチューブ14が、本発明の医療用チューブに相当する。
【0025】
シースチューブ14は、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)製のチューブ材からなり、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマーク14a〜14fが記されている。このようなマーク14a〜14fが記されているので、シースチューブ14を血管内に挿入する際には、このマーク14a〜14fを目安にして挿入長を確認しながら処置を行うことができる。
【0026】
また、シースチューブ14がFEP製で、且つ、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によってマーク14a〜14fが記されているので、上記第1実施形態で説明したETFEの場合と同様の理由により、マーク14a〜14fは鮮明になり、且つ、シースチューブ14の表面平滑性が高くなる。
【0027】
さらに、このシースイントロデューサー11の場合、キンク防止具16が、じゃばら部16aと、可動端部16bと、ウィング部16cとを有する形状で、じゃばら部16aを伸縮させることにより、キンク防止具16による保護範囲を変更することができる。したがって、シースチューブ14の挿入長が短い場合には、じゃばら部16aを伸ばすことにより、折れ曲がり(キンク)を防止する範囲を拡大する一方、シースチューブ14の挿入長が長い場合には、じゃばら部16aを縮ませることにより、キンク防止具16が挿入作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0028】
[第3実施形態]
図3(a)に示すように、シースイントロデューサー21は、一端にシースハブ22が設けられたシースチューブ24と、シースハブ22とシースチューブ24との接続部分においてシースチューブ24が折れ曲がるのを防止するキンク防止具26と、一端がシースハブ22に接続されていて、シースチューブ24内へ薬液(例えば、ヘパリンなど)や生理食塩水を注入する際に利用される側管チューブ28と、側管チューブ28の端部に設けられた三方活栓29とを備えている。これらの構成のうち、シースチューブ24が、本発明の医療用チューブに相当する。
【0029】
シースチューブ24は、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)製のチューブ材からなり、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマーク24aが記されている。このようなマーク24aが記されているので、シースチューブ24を血管内に挿入する際には、このマーク24aを目安にして挿入長を確認しながら処置を行うことができる。
【0030】
また、シースチューブ24がETFE製で、且つ、波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によってマーク24aが記されているので、上記第1実施形態で説明した通りの理由により、マーク24aは鮮明になり、且つ、シースチューブ24の表面平滑性が高くなる。
【0031】
さらに、このシースイントロデューサー21の場合、キンク防止具26が、シースイントロデューサー21の本体側(シースチューブ24側)に対し装着/脱着可能な構造となっている。本体側に装着する前のキンク防止具26は、可変長部26aと、固定長部26bと、ウィング部26cとを有する形状で、可変長部26aを適当な箇所(例えば、図3(b)中において破線で示した箇所)で切断した上で本体側に装着することにより、キンク防止具26による保護範囲を変更することができる。したがって、シースチューブ24の挿入長が短い場合には、可変長部26aの切断長を短くすることにより、折れ曲がり(キンク)を防止する範囲を拡大する一方、シースチューブ24の挿入長が長い場合には、可変長部26aの切断長を長くすることにより、キンク防止具26が挿入作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0032】
なお、上記キンク防止具26の可変長部26aは、適度な弾力のあるエラストマー材によって形成されるが、シースチューブ24の折れ曲がりを防止できるものであれば、必ずしもチューブ状のものでなくてもよい。
具体例を挙げれば、例えば、図3(c)に示すような、キンク防止具36であってもよい。このキンク防止具36は、上記キンク防止具26と同様の可変長部36aと、固定長部36bと、ウィング部36cとを有する形状であるが、可変長部36aに螺線を描く切れ目36dが入れられており、可変長部36aがコイルスプリング状になっている。このような形態の可変長部36aであれば、可変長部36aの形成材料自体が上記可変長部26aの形成材料より多少硬質なものであったとしても、可変長部36aを柔軟に湾曲させることができる。
【0033】
また、キンク防止具26において全長に渡って分割スリットが入っている場合および36b全長に渡って分割スリットが入っている場合においては、シースイントロデューサー21を体内に挿入した後に、挿入長に合わせて任意の長さに26a又は36aを切断してシースイントロデューサー21に装着することができる。
【0034】
[第4実施形態]
上記第1実施形態で例示したシースチューブ4について、下記の方法で表面平滑性を評価した。
まず、シースチューブ4の表面平滑性を、指の腹での触感によって確認したところ、ザラツキを感じるような凹凸が無い滑らかな表面であった。
【0035】
次に、このシースチューブの挿入抵抗を、以下のような方法で測定した。
引張圧縮試験機の台座上にポリ塩化ビニルシート(厚さ0.1mm)を固定し、引張圧縮試験機のロードセルにシースチューブ(外径2.0mm)を固定し、このシースチューブを上記ポリ塩化ビニルシートの中心に、速度100mm/minで差し込み、その時のシースチューブとポリ塩化ビニルシートとの間の摩擦抵抗値を測定した(以下、実施例ともいう)。
【0036】
また、比較のため、レーザーマーキングが施されていないETFE製のチューブ(以下、比較例1ともいう。)と、上記YAGレーザーによるレーザーマーキングが施されたポリカーボネート製のチューブ(以下、比較例2ともいう。)についても、上記と同様の試験を行った。
【0037】
なお、摩擦抵抗を測定する際に材質間の摩擦係数の差を考慮しないようにするために、接触面にはシリコーンオイルを塗布した。測定結果を図4に示す。
上記実施例の場合、比較例1よりは挿入抵抗が僅かに大きくなるものの、その摩擦抵抗値は20g未満であり、十分に高い表面平滑性が確保されていた。一方、比較例2の場合、20g以上の大きな摩擦抵抗を示し、特に最も高いピークでは35gを超える摩擦抵抗値を示しており、十分に高い表面平滑性を確保することは困難であった。
【0038】
[第5実施形態]
テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)に対し、0.5重量%の「イリオジン(登録商標)LS」(メルクジャパン社製)を添加、混合し、この樹脂材料で上記第1実施形態で例示したシースチューブ4と同様のシースチューブを作製し、これに波長1064nmのYAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマークを形成した。
【0039】
目視にてマークを確認したところ、第1実施形態のシースチューブ4よりもさらに鮮明なマークが記されていた。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0040】
例えば、上記第1〜第5実施形態においては、マーキング対象となるチューブの形成材料として、ETFEとFEPを例示したが、波長1064nmのYAGレーザーを吸収しない部分と前記YAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体を主成分とする樹脂材料であれば、他の共重合体を利用してもよい。他の共重合体としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリ塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)などを利用できる。これらの共重合体は、いずれか一種を単独で用いてもよいし、均一に混合できるもの同士であれば二種以上を混合した混合物を用いてもよい。
【0041】
また、上記第5実施形態では、共重合体以外の成分として、0.5重量%の「イリオジン(登録商標)LS」(メルクジャパン社製)を添加、混合する例を示したが、YAGレーザーを吸収して発熱する発熱成分であれば、他の発熱成分が樹脂材料中に含まれていてもよい。他の発熱成分としては、例えば、硫酸バリウム、カーボンブラック、雲母、酸化ケイ素、金属水酸化物、および金属酸化物(例えば、酸化ビスマス、酸化チタン、二酸化チタン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化コバルト等)を利用できる。
【0042】
さらに、上記実施形態では言及しなかったが、主成分となる共重合体による効果を損ねない範囲内の配合比であれば、主成分に対して均一に混合できるような別の樹脂成分が配合されていてもよい。別の樹脂成分としては、例えば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、シリコーン樹脂、ポリスルホン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、フッ素樹脂などを利用できる。
【0043】
加えて、上記各実施形態では、シースイントロデューサーの一部であるシースチューブにレーザーマーキングを施す例を示したが、本発明の構成は、各種カテーテルやカニューレ等、種々の医療用チューブにおいて採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のシースイントロデューサーの側面図である。
【図2】第2実施形態のシースイントロデューサーの側面図である。
【図3】第3実施形態のシースイントロデューサーを示す図であり、(a)はその側面図、(b)はキンク防止具の側面図、(c)は別のキンク防止具の側面図である。
【図4】挿入抵抗の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1,11,21・・・シースイントロデューサー、2,12,22・・・シースハブ、4,14,24・・・シースチューブ、4a〜4c,14a〜14f,24a・・・マーク、6,16,26,36・・・キンク防止具、8,18,28・・・側管チューブ、9,19,29・・・三方活栓。
Claims (4)
- 波長1064nmのYAGレーザーを吸収しない部分と前記YAGレーザーを吸収して変色する部分が分子鎖中に存在する共重合体を主成分とする樹脂材料によって形成されたチューブ材であって、前記YAGレーザーを利用したレーザーマーキング法によって、外周側から視認可能なマークが記されている
ことを特徴とする医療用チューブ。 - 前記共重合体が、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリ塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)の中から選ばれる一種または二種以上の混合物である
ことを特徴とする請求項1に記載の医療用チューブ。 - 前記YAGレーザーを吸収して発熱する発熱成分が、前記樹脂材料中に含まれている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医療用チューブ。 - 前記発熱成分が、硫酸バリウム、カーボンブラック、雲母、イリオジン(登録商標)、酸化ケイ素、金属水酸化物、および金属酸化物の中から選ばれる少なくとも一種である
ことを特徴とする請求項3に記載の医療用チューブ。
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Legal Events
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060315 |
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20091201 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20100622 |