JP2004321006A - 光学活性2−ピペラジンカルボン酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】加水分解酵素を用いて高い光学純度の光学活性2−ピペラジンカルボン酸を工業的に高い収率で得る。
【解決手段】一般式(I)
【化1】
(式中、Rは、C1〜3のアルキル基を、*は、不斉炭素原子を示す。)で表されるピペラジンカルボン酸エステルをCandida cylindracea株、Candida rugosa株、Pseudomonas aeruginosa株、Alcaligenes sp.株、Candida antarctica株、Mucor miehei株由来のリパーゼを使用して加水分解することにより式(S)−(II)又は(R)−(II)
【化2】
(S)−(II) (R)−(II)
で表される光学活性2−ピペラジンカルボン酸を高収率で得ることが出来る。
【選択図】 なし
【解決手段】一般式(I)
【化1】
(式中、Rは、C1〜3のアルキル基を、*は、不斉炭素原子を示す。)で表されるピペラジンカルボン酸エステルをCandida cylindracea株、Candida rugosa株、Pseudomonas aeruginosa株、Alcaligenes sp.株、Candida antarctica株、Mucor miehei株由来のリパーゼを使用して加水分解することにより式(S)−(II)又は(R)−(II)
【化2】
(S)−(II) (R)−(II)
で表される光学活性2−ピペラジンカルボン酸を高収率で得ることが出来る。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、式(S)−(II)又は(R)−(II)
【化3】
で表される光学活性な2−ピペラジンカルボン酸の製造方法に関する。
本発明により製造される光学活性な2−ピペラジンカルボン酸は例えば、HIVプロテアーゼ阻害剤
【化4】
等の原料として利用できる[文献Tetrahedron Asymmetry., 8(7),979(1997)]。
【0002】
【従来の技術】
これら光学活性なピペラジン2−カルボン酸類の製造については、下記特許文献に示すような光学分割剤を用いる方法、例えばカンファースルホン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、汎用のアミノ酸もしくは、それぞれの誘導体を用いることが知られている。
【特許文献1】特開2000−239266号公報
【特許文献2】特開2002−128765号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これら分割剤を用いた光学分割法は操作が煩雑であり、大量生産に適した簡便な方法により光学活性ピペラジン2−カルボン酸又は光学活性ピペラジン2−カルボン酸エステルを得る方法の開発が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、ピペラジン2−カルボン酸のカルボン酸部位を種々アルコールを用いてエステル化し、このエステル体に酵素を作用させて不斉加水分解を行えば光学活性体を取得できると考え、検討を重ねてきた。その結果、キャンディダ(Candida)属に属する微生物或いはシュードモナス(Pseudomonas)属もしくはアルカリジェネス(Alcaligenes)属に属する微生物或いは該微生物から得られる酵素を作用させ、不斉的に加水分解し、(S)−(II)と(R)−ピペラジン2−カルボン酸エステルR−(I)を生成させた後、有機溶媒で分離、抽出することにより(S)−(II)と(R)−(I)を夫々採取でき、更に採取した(R)−(I)をアルカリ加水分解、又は酵素分解を行って(R)−(II)を生成、採取できることを見い出し、本発明を完成した。即ち、本発明は一般式(I)
【化5】
(式中、RはC1〜3のアルキル基を、*は不斉炭素原子を示す。)で表わされるピペラジン2−カルボン酸エステルをCandida cylindracea株、Candida rugosa株、Pseudomonas aeruginosa株、Alcaligenes sp.株、Candida antarctica株、Mucor miehei株由来のリパーゼを使用して加水分解することを特徴とする式(S)−(II)又は(R)−(II)で表される光学活性2−ピペラジンカルボン酸の製造方法である。
【0005】
Rで表されるC1−3のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、その中でもイソプロピル基が好ましい。
【0006】
一般式(I)で表されるピペラジン2−カルボン酸エステルは例えば次のようにして得られる。即ち(R,S)−ピペラジン2−カルボン酸2塩酸塩に溶媒と反応試剤とを兼ねたアルコールを加え、ピペラジン2−カルボン酸の濃度5〜30%(w/v)の範囲で、濃硫酸などの強酸性下、60℃〜還流温度の範囲で1〜30時間脱水反応を行う。更に、この反応液に水と有機溶媒を加え、pH9.0に調整後、有機溶媒と水層を分離する。その有機溶媒を減圧濃縮により有機溶媒と過剰のアルコールを除去する。濃縮液にヘキサン等の疎水性有機溶媒を用いて結晶化し、その結晶を濾過後、乾燥すれば高純度の(R,S)−ピペラジン2−カルボン酸エステルが得られる。
【0007】
一般式(I)で表されるラセミ体を不斉的に加水分解し、式(S)−(II)で表される化合物を生成させる立体選択的エステラーゼを有する微生物としては、Candida cylindracea又はCandida rugosa(Lipase ChiroCLECTM−CR)があり、該微生物を10〜100g/mol用いる。
【0008】
式(R)−(II)で表される化合物を生成させる立体選択的エステラーゼを有する微生物として、Pseudomonas aeruginosa、Alcaligenes sp.、Candida antarctica、Mucor mieheiがある。
【0009】
ピペラジン2−カルボン酸エステルの微生物による不斉加水分解反応においては、一般に用いることのできる有機溶媒例えばトルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、クロロホルムを用いることができる。
【0010】
不斉加水分解に用いられる反応試剤としては水もしくはイオン抑制剤を溶解させたpH7の水を基質に対し、1〜20倍mol量好ましくは1〜10倍mol量を使用する。
【0011】
反応条件は温度0〜50℃、好ましくは0〜25℃の範囲であり、pHは5〜8、好ましくは6.5〜7.5の範囲で行い、反応時間は基質と酵素量の比により変化するが、未反応のエステルと生成物のカルボン酸がモル比50%に達したところで止めれば良い。但し、酵素の反応活性の観点から通常3〜24時間で50%に達するように基質の添加量を決めるのが望ましい。
【0012】
酵素を用いる方法としては、市販されているCandida cylindracea属もしくはCandida rugosa属を起源とするもの等を使用することにより式(S)−(II)で表される化合物を生成させることができる。
【0013】
不斉加水分解反応は、基質のラセミ体Iを濃度1〜10%(w/v)の範囲で好ましくは1〜5%の反応液に懸濁もしくは溶解し、酵素を適量、例えば酵素と基質の重量比として1:5ないし1:2〜10の割合で加え、温度0〜50℃、好ましく0〜20℃の範囲で反応を行い、高速液体クロマトグラフィーによってカルボン酸の生成量及びカルボン酸エステルの減少量を測定し、反応液中の一般式(I)で表される化合物のR体(R)−(I)と(S)−(II)のモル比50%になった時点で反応を止めれば良い。また加水分解を行う際のpH範囲は4〜8.5であれば良く、好ましくはイオン抑制剤を用いてpH7.0に調整することが望ましい。更に、上記の不斉加水分解反応を、酵素を固定化させることにより繰り返し行うこともできる。
【0014】
酵素を用いて不斉加水分解した後、反応液中の(S)−(II)と(R)−(I)を分離する方法としては、反応液をそのまま濾過し、反応液中に析出している(S)−(II)と使用した酵素を濾別し、濾別して得られた(S)−(II)及び酵素を水に添加し、室温で攪拌し(S)−(II)を溶解させ、酵素を濾別し、水で洗浄して(S)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を得る。
【0015】
分離して得られた光学活性ピペラジン2−カルボン酸エステルは、そのまま濃縮すれば高光学純度のエステル体で得られるが、更に次のようにして光学活性ピペラジン2−カルボン酸とすることができる。即ち、光学活性ピペラジン2−カルボン酸エステル(R)−(I)を室温下、pH10〜13.5の範囲で2〜5時間アルカリ加水分解を行えば、(R)−(II)が生成する。また、(R)−(I)を加水分解する能力を有する酵素、例えばNovozyme SP 435を作用させて前記酵素による加水分解条件下に加水分解を行って(R)−(II)を得ることもできる。
【0016】
このようにして得られた加水分解液は冷却下で攪拌し、HCl水溶液をゆっくり加え(S)−(II)の2塩酸塩を析出させ、析出した結晶を桐山ロ−トで濾別した後に塩酸水もしくは、(S)−(II)の2塩酸塩が溶解しない溶媒例えば、メノール、エタノールなどで洗浄し、乾燥させて高光学純度の(S)−(II)の2塩酸塩を容易に得ることができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0018】
実施例1
(S)−2−ピペラジンカルボン酸・2塩酸塩の製造:
rac−2−ピペラジンカルボン酸イソプロピルエステル1.72g(0.01mol)をTHF50mlに溶解し、リン酸Buffer1.62g(162g/mol)、Lipase(Altus社製:ChiroCLECTM−CR)0.86g(86g/mol)をそれぞれ加え、その混合物を5℃で6時間攪拌した。得られた反応液から反応中に析出した(S)−2−ピペラジンカルボン酸及びLipaseを桐山ロ−トを用いて濾別した後にTHF15mlで洗浄した。濾別して得られた(S)−2−ピペラジンカルボン酸及びLipaseを水5mlに添加し、室温で10分間攪拌し(S)−2−ピペラジンカルボン酸を溶解させ、桐山ロ−トを用いてLipaseを濾別し、水1.5mlで洗浄して(S)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を得た。得られた(S)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を5℃で攪拌下、35%HCl水溶液3.6mlをゆっくり加え(S)−2−ピペラジンカルボン酸の2塩酸塩を析出させ、35%HCl水溶液全量滴下後5℃で1時間攪拌し、桐山ロ−トで濾別した後にMeOH10mlで洗浄し、乾燥させて(S)−2−ピペラジンカルボン酸の2塩酸塩0.38gを得た。化学純度98.0%、光学純度98.7%ee、収率18.7%。
【0019】
実施例2
rac−2−ピペラジンカルボン酸イソプロピルエステル3.44g(0.02mol)をトルエン100mlに溶解し、ハイフロ2g、リン酸Buffer0.54g(27g/mol)、Lipase(Altus社製:ChiroCLECTM−CR)0.86g(43g/mol)をそれぞれ加え、その混合物を5℃で3時間攪拌した。得られた反応液から反応中に析出した(S)−2−ピペラジンカルボン酸及びハイフロ、Lipaseを桐山ロ−トを用いて濾別した後にトルエン30mlで洗浄した。濾別して得られた(S)−2−ピペラジンカルボン酸及びハイフロ、Lipaseを水12mlに添加し、室温で15分間攪拌し(S)−2−ピペラジンカルボン酸を溶解させ、桐山ロ−トを用いてハイフロ、Lipaseを濾別し、水3mlで洗浄して(S)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を得た。得られた(S)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を 5℃で攪拌下、35%HCl水溶液7.1mlをゆっくり加え(S)−2−ピペラジンカルボン酸の2塩酸塩を析出させ、35%HCl水溶液全量滴下後5℃で1時間攪拌し、桐山ロ−トで濾別した後にMeOH20mlで洗浄し、乾燥させて(S)−2−ピペラジンカルボン酸の2塩酸塩1.00gを得た。化学純度100%、光学純度89.2%ee、収率24.6%。
【0020】
実施例3
rac−2−ピペラジンカルボン酸イソプロピルエステル0.1g(0.58mmol)をTHF3mlに溶解し、リン酸Buffer0.03g(51.7g/mol)、Lipase(novozymes社製:novozym435)0.05g(86g/mol)をそれぞれ加え、その混合物を5℃で10時間攪拌した。得られた反応液から反応中に析出した(R)−2−ピペラジンカルボン酸及びLipaseを桐山ロ−トを用いて濾別した後にTHF10mlで洗浄した。濾別して得られた(R)−2−ピペラジンカルボン酸及びLipaseを水12mlに添加し、室温で15分間攪拌し(R)−2−ピペラジンカルボン酸を溶解させ、桐山ロ−トを用いてLipaseを濾別し、水3mlで洗浄して(R)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を得た。得られた(R)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を以下のHPLCで分析して収率、光学純度を求めた。収率42.3%、光学純度91.3%ee。
【0021】
HPLC分析条件
カラム Mightysil RP−18GP AQUA 250−4.6(5μm)
移動相 4%CH3CN in Buffer (wt)
Buffer=3mM 1−オクタンスルホン酸ナトリウム、40mMリン酸二水素カリウム、85%リン酸24mM
カラム温度 40℃
流量 1.0ml/min
検出波長 210nm
注入量 8μl
内部標準物質 テオフィリン
光学純度は、以下のHPLC条件で分析をおこない、その結果をもとに算出した。
カラム SUMICHIRAL OA−5000 (5μm)4.6mmφ×25cm
移動相 2.0mM CuSO4aq
カラム温度 40℃
UV 254nm
flow 1.0ml/min
注入量 2μl
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、立体選択性をもつ加水分解酵素エステラーゼ又は、同加水分解能を有する酵素を適宜選んで使用することにより、(R,S)−ピペラジン2−カルボン酸エステルから該エステルの光学活性体の(R)体、(S)体を、あるいは光学活性なピペラジン−2−カルボン酸の(R)体もしくは(S)体を得ることが出来る。
【発明の属する技術分野】
本発明は、式(S)−(II)又は(R)−(II)
【化3】
で表される光学活性な2−ピペラジンカルボン酸の製造方法に関する。
本発明により製造される光学活性な2−ピペラジンカルボン酸は例えば、HIVプロテアーゼ阻害剤
【化4】
等の原料として利用できる[文献Tetrahedron Asymmetry., 8(7),979(1997)]。
【0002】
【従来の技術】
これら光学活性なピペラジン2−カルボン酸類の製造については、下記特許文献に示すような光学分割剤を用いる方法、例えばカンファースルホン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、汎用のアミノ酸もしくは、それぞれの誘導体を用いることが知られている。
【特許文献1】特開2000−239266号公報
【特許文献2】特開2002−128765号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これら分割剤を用いた光学分割法は操作が煩雑であり、大量生産に適した簡便な方法により光学活性ピペラジン2−カルボン酸又は光学活性ピペラジン2−カルボン酸エステルを得る方法の開発が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、ピペラジン2−カルボン酸のカルボン酸部位を種々アルコールを用いてエステル化し、このエステル体に酵素を作用させて不斉加水分解を行えば光学活性体を取得できると考え、検討を重ねてきた。その結果、キャンディダ(Candida)属に属する微生物或いはシュードモナス(Pseudomonas)属もしくはアルカリジェネス(Alcaligenes)属に属する微生物或いは該微生物から得られる酵素を作用させ、不斉的に加水分解し、(S)−(II)と(R)−ピペラジン2−カルボン酸エステルR−(I)を生成させた後、有機溶媒で分離、抽出することにより(S)−(II)と(R)−(I)を夫々採取でき、更に採取した(R)−(I)をアルカリ加水分解、又は酵素分解を行って(R)−(II)を生成、採取できることを見い出し、本発明を完成した。即ち、本発明は一般式(I)
【化5】
(式中、RはC1〜3のアルキル基を、*は不斉炭素原子を示す。)で表わされるピペラジン2−カルボン酸エステルをCandida cylindracea株、Candida rugosa株、Pseudomonas aeruginosa株、Alcaligenes sp.株、Candida antarctica株、Mucor miehei株由来のリパーゼを使用して加水分解することを特徴とする式(S)−(II)又は(R)−(II)で表される光学活性2−ピペラジンカルボン酸の製造方法である。
【0005】
Rで表されるC1−3のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、その中でもイソプロピル基が好ましい。
【0006】
一般式(I)で表されるピペラジン2−カルボン酸エステルは例えば次のようにして得られる。即ち(R,S)−ピペラジン2−カルボン酸2塩酸塩に溶媒と反応試剤とを兼ねたアルコールを加え、ピペラジン2−カルボン酸の濃度5〜30%(w/v)の範囲で、濃硫酸などの強酸性下、60℃〜還流温度の範囲で1〜30時間脱水反応を行う。更に、この反応液に水と有機溶媒を加え、pH9.0に調整後、有機溶媒と水層を分離する。その有機溶媒を減圧濃縮により有機溶媒と過剰のアルコールを除去する。濃縮液にヘキサン等の疎水性有機溶媒を用いて結晶化し、その結晶を濾過後、乾燥すれば高純度の(R,S)−ピペラジン2−カルボン酸エステルが得られる。
【0007】
一般式(I)で表されるラセミ体を不斉的に加水分解し、式(S)−(II)で表される化合物を生成させる立体選択的エステラーゼを有する微生物としては、Candida cylindracea又はCandida rugosa(Lipase ChiroCLECTM−CR)があり、該微生物を10〜100g/mol用いる。
【0008】
式(R)−(II)で表される化合物を生成させる立体選択的エステラーゼを有する微生物として、Pseudomonas aeruginosa、Alcaligenes sp.、Candida antarctica、Mucor mieheiがある。
【0009】
ピペラジン2−カルボン酸エステルの微生物による不斉加水分解反応においては、一般に用いることのできる有機溶媒例えばトルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、クロロホルムを用いることができる。
【0010】
不斉加水分解に用いられる反応試剤としては水もしくはイオン抑制剤を溶解させたpH7の水を基質に対し、1〜20倍mol量好ましくは1〜10倍mol量を使用する。
【0011】
反応条件は温度0〜50℃、好ましくは0〜25℃の範囲であり、pHは5〜8、好ましくは6.5〜7.5の範囲で行い、反応時間は基質と酵素量の比により変化するが、未反応のエステルと生成物のカルボン酸がモル比50%に達したところで止めれば良い。但し、酵素の反応活性の観点から通常3〜24時間で50%に達するように基質の添加量を決めるのが望ましい。
【0012】
酵素を用いる方法としては、市販されているCandida cylindracea属もしくはCandida rugosa属を起源とするもの等を使用することにより式(S)−(II)で表される化合物を生成させることができる。
【0013】
不斉加水分解反応は、基質のラセミ体Iを濃度1〜10%(w/v)の範囲で好ましくは1〜5%の反応液に懸濁もしくは溶解し、酵素を適量、例えば酵素と基質の重量比として1:5ないし1:2〜10の割合で加え、温度0〜50℃、好ましく0〜20℃の範囲で反応を行い、高速液体クロマトグラフィーによってカルボン酸の生成量及びカルボン酸エステルの減少量を測定し、反応液中の一般式(I)で表される化合物のR体(R)−(I)と(S)−(II)のモル比50%になった時点で反応を止めれば良い。また加水分解を行う際のpH範囲は4〜8.5であれば良く、好ましくはイオン抑制剤を用いてpH7.0に調整することが望ましい。更に、上記の不斉加水分解反応を、酵素を固定化させることにより繰り返し行うこともできる。
【0014】
酵素を用いて不斉加水分解した後、反応液中の(S)−(II)と(R)−(I)を分離する方法としては、反応液をそのまま濾過し、反応液中に析出している(S)−(II)と使用した酵素を濾別し、濾別して得られた(S)−(II)及び酵素を水に添加し、室温で攪拌し(S)−(II)を溶解させ、酵素を濾別し、水で洗浄して(S)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を得る。
【0015】
分離して得られた光学活性ピペラジン2−カルボン酸エステルは、そのまま濃縮すれば高光学純度のエステル体で得られるが、更に次のようにして光学活性ピペラジン2−カルボン酸とすることができる。即ち、光学活性ピペラジン2−カルボン酸エステル(R)−(I)を室温下、pH10〜13.5の範囲で2〜5時間アルカリ加水分解を行えば、(R)−(II)が生成する。また、(R)−(I)を加水分解する能力を有する酵素、例えばNovozyme SP 435を作用させて前記酵素による加水分解条件下に加水分解を行って(R)−(II)を得ることもできる。
【0016】
このようにして得られた加水分解液は冷却下で攪拌し、HCl水溶液をゆっくり加え(S)−(II)の2塩酸塩を析出させ、析出した結晶を桐山ロ−トで濾別した後に塩酸水もしくは、(S)−(II)の2塩酸塩が溶解しない溶媒例えば、メノール、エタノールなどで洗浄し、乾燥させて高光学純度の(S)−(II)の2塩酸塩を容易に得ることができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0018】
実施例1
(S)−2−ピペラジンカルボン酸・2塩酸塩の製造:
rac−2−ピペラジンカルボン酸イソプロピルエステル1.72g(0.01mol)をTHF50mlに溶解し、リン酸Buffer1.62g(162g/mol)、Lipase(Altus社製:ChiroCLECTM−CR)0.86g(86g/mol)をそれぞれ加え、その混合物を5℃で6時間攪拌した。得られた反応液から反応中に析出した(S)−2−ピペラジンカルボン酸及びLipaseを桐山ロ−トを用いて濾別した後にTHF15mlで洗浄した。濾別して得られた(S)−2−ピペラジンカルボン酸及びLipaseを水5mlに添加し、室温で10分間攪拌し(S)−2−ピペラジンカルボン酸を溶解させ、桐山ロ−トを用いてLipaseを濾別し、水1.5mlで洗浄して(S)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を得た。得られた(S)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を5℃で攪拌下、35%HCl水溶液3.6mlをゆっくり加え(S)−2−ピペラジンカルボン酸の2塩酸塩を析出させ、35%HCl水溶液全量滴下後5℃で1時間攪拌し、桐山ロ−トで濾別した後にMeOH10mlで洗浄し、乾燥させて(S)−2−ピペラジンカルボン酸の2塩酸塩0.38gを得た。化学純度98.0%、光学純度98.7%ee、収率18.7%。
【0019】
実施例2
rac−2−ピペラジンカルボン酸イソプロピルエステル3.44g(0.02mol)をトルエン100mlに溶解し、ハイフロ2g、リン酸Buffer0.54g(27g/mol)、Lipase(Altus社製:ChiroCLECTM−CR)0.86g(43g/mol)をそれぞれ加え、その混合物を5℃で3時間攪拌した。得られた反応液から反応中に析出した(S)−2−ピペラジンカルボン酸及びハイフロ、Lipaseを桐山ロ−トを用いて濾別した後にトルエン30mlで洗浄した。濾別して得られた(S)−2−ピペラジンカルボン酸及びハイフロ、Lipaseを水12mlに添加し、室温で15分間攪拌し(S)−2−ピペラジンカルボン酸を溶解させ、桐山ロ−トを用いてハイフロ、Lipaseを濾別し、水3mlで洗浄して(S)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を得た。得られた(S)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を 5℃で攪拌下、35%HCl水溶液7.1mlをゆっくり加え(S)−2−ピペラジンカルボン酸の2塩酸塩を析出させ、35%HCl水溶液全量滴下後5℃で1時間攪拌し、桐山ロ−トで濾別した後にMeOH20mlで洗浄し、乾燥させて(S)−2−ピペラジンカルボン酸の2塩酸塩1.00gを得た。化学純度100%、光学純度89.2%ee、収率24.6%。
【0020】
実施例3
rac−2−ピペラジンカルボン酸イソプロピルエステル0.1g(0.58mmol)をTHF3mlに溶解し、リン酸Buffer0.03g(51.7g/mol)、Lipase(novozymes社製:novozym435)0.05g(86g/mol)をそれぞれ加え、その混合物を5℃で10時間攪拌した。得られた反応液から反応中に析出した(R)−2−ピペラジンカルボン酸及びLipaseを桐山ロ−トを用いて濾別した後にTHF10mlで洗浄した。濾別して得られた(R)−2−ピペラジンカルボン酸及びLipaseを水12mlに添加し、室温で15分間攪拌し(R)−2−ピペラジンカルボン酸を溶解させ、桐山ロ−トを用いてLipaseを濾別し、水3mlで洗浄して(R)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を得た。得られた(R)−2−ピペラジンカルボン酸の水溶液を以下のHPLCで分析して収率、光学純度を求めた。収率42.3%、光学純度91.3%ee。
【0021】
HPLC分析条件
カラム Mightysil RP−18GP AQUA 250−4.6(5μm)
移動相 4%CH3CN in Buffer (wt)
Buffer=3mM 1−オクタンスルホン酸ナトリウム、40mMリン酸二水素カリウム、85%リン酸24mM
カラム温度 40℃
流量 1.0ml/min
検出波長 210nm
注入量 8μl
内部標準物質 テオフィリン
光学純度は、以下のHPLC条件で分析をおこない、その結果をもとに算出した。
カラム SUMICHIRAL OA−5000 (5μm)4.6mmφ×25cm
移動相 2.0mM CuSO4aq
カラム温度 40℃
UV 254nm
flow 1.0ml/min
注入量 2μl
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、立体選択性をもつ加水分解酵素エステラーゼ又は、同加水分解能を有する酵素を適宜選んで使用することにより、(R,S)−ピペラジン2−カルボン酸エステルから該エステルの光学活性体の(R)体、(S)体を、あるいは光学活性なピペラジン−2−カルボン酸の(R)体もしくは(S)体を得ることが出来る。
Claims (7)
- 請求項1の製造方法において、Candida cylindracea株又はCandida rugosa株由来のリパーゼを使用する(S)−(II)で表されるS−体の製造方法。
- 請求項1の製造方法において、Pseudomonas aeruginosa株、Alcaligenes sp.株、Candida antarctica株、Mucor miehei株由来のリパーゼを使用する(R)−(II)で表されるR−体の製造方法。
- 加水分解を有機溶媒と水もしくはpH緩衝剤を溶解した水を用いて行う請求項1〜3記載の製造方法。
- リパーゼの使用量が、一般式(I)で表されるエステルに対して、10〜100g/molである請求項1〜4記載の製造方法。
- 加水分解における反応温度が、0〜60℃である請求項1〜5記載の製造方法。
- リパーゼを再利用して加水分解反応を行う請求項1〜6記載の製造方法。
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JP2003115787A JP2004321006A (ja) | 2003-04-21 | 2003-04-21 | 光学活性2−ピペラジンカルボン酸の製造方法 |
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JP2007117034A (ja) * | 2005-10-31 | 2007-05-17 | Koei Chem Co Ltd | 光学活性ニペコチン酸化合物の製造方法 |
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2003
- 2003-04-21 JP JP2003115787A patent/JP2004321006A/ja not_active Withdrawn
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