JP2004319094A - プラズマディスプレイパネル用前面電極の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】凹版オフセット印刷法により電極パターンを印刷するに際して、(1)パターン形成用凹版に供給された導電性金属インキを印刷用ブランケットに転移する工程、(2)前記ブランケット上に転移した導電性金属インキ層上に、凹版オフセット印刷により黒色金属酸化物または/および黒色複合合金を含有する黒色インキを転移し積層する工程、(3)前記の積層したインキを前記ブランケットから透明基板に転写する工程、(4)上記の印刷形成されたインキパターンを焼成する工程、とを備え、かつ(1)工程の転移速度V1(mm/秒)と(2)工程の転移速度V2(mm/秒)との関係をV1≦V2とすることによってPDP用前面電極を形成する。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプラズマディスプレイパネル(PDP)の前面板におけるバス電極の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PDPは、自己発光型で電力消費の低減を実現できること、薄型で大画面化が容易であること、液晶ディスプレイ(LCD)に比べて構造がシンプルであること、などの理由により、次世代の表示デバイスとして大きな需要が見込まれている。しかしながら、現状ではPDPの製造コストが極めて高く、家庭用向けの表示デバイスとして普及させる上での大きな障害となっている。
【0003】
PDPは、例えば図1に示すように、バス電極(前面電極)11、透明電極12、透明誘電層13および保護層14を備える前面板(フロント基板)10と、アドレス電極(背面電極)21、誘電層22、保護層23、リブ24および蛍光層25(R,G,B)を備える背面板(リア基板)20とを、双方の基板上に設けられた電極11,12,21が蛍光層25を介して向かい合うように配置されたものである。このうち、前面板10のバス電極11には、導電性が優れていることのほかにも、黒色度が高いことが求められている。これは、例えばバス電極11が金属光沢を有していると、前面板10側への反射によってPDPのコントラストを低下させる要因となるからである。
【0004】
PDPの低価格化には、製造コストを下げることが急務であり、複数の製造工程の中でも、隔壁(リブ)の形成と並んで、とりわけ電極形成工程がコスト高の原因となっている。
従来、バス電極のパターンは、前面板の表面全面に黒色の感光性ペーストを塗布し、さらに感光性銀ペースト(例えばデュポン社製の製品名「フォーデル(R) 」)を塗布して所定の厚み(5〜10μm)となるように調整し、これを乾燥させた後、当該パターンの形状に応じて露光および現像することよりなる、フォトリソグラフィーによって形成されている。
【0005】
このように2種類のペーストの塗布を要する理由は、黒色の感光性ペーストではバス電極の黒色度を十分なものとすることができるものの、導電性が不十分となり、一方において感光性銀ペーストでは導電性を良好なものとすることができるものの、黒色度が不十分となるなど、導電性と黒色度との両立が困難なためである。
また、バス電極のパターンは、通常、その線幅が数十μmであり、ピッチが数百μm程度であることから、前面板の表面全面に塗布された黒色ペーストと銀ペーストの大半は露光・現像処理後に洗浄、除去されることとなって、パターン形成材料の無駄が多くなる。しかも、黒色の感光ペーストと感光性銀ペーストとのそれぞれにおいて塗布、露光、現像等の処理を繰り返す必要があることから、バス電極の製造に多大なコストを要することとなる。さらには、感光性の黒色ペーストや銀ペーストがいずれも高価であって、廃棄された銀ペーストから銀のみを回収する工程が提案されてはいるものの、回収にかかるコストも極めて大きいという問題がある。
【0006】
加えて、フォトリソグラフィー法によるパターンの形成に使用する製造設備には極めて高い精度やクリーン度が要求されることからコストがかかり、PDPの大型化(大画面化)に対応させるのが困難であるという問題がある。また、現像処理の際には有害な廃液が多量に発生することから、廃液の処理に多大なコストがかかるという問題もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のバス電極の製造工程は、電極の形成材料、形成方法、形成設備等においてコスト的に極めて不利であって、これらはPDP全体の製造コストを引き上げる大きな要因の一つとなっている。
そこで、本発明は、黒色度(表示面のコントラスト)と導電性(電極の通電性)とのいずれをも高く維持しつつ、簡易に、安価に、しかも高い精度でもってバス電極のパターンを形成し得る方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らは多方面から検討した結果、本発明のプラズマディスプレイパネル用前面板のバス電極の形成方法に到達したものである。
すなわち、本発明は以下のプラズマディスプレイパネル用前面板のバス電極の形成方法に関する。
【0009】
1)凹版オフセット印刷法により電極パターンを印刷するプラズマディスプレイパネル用前面電極の形成方法であって、
(1)パターン形成用凹版に供給された導電性金属インキを印刷用ブランケットに転移する工程、
(2)前記ブランケット上に転移した導電性金属インキ層上に、凹版オフセット印刷により黒色金属酸化物または/および黒色複合合金を含有する黒色インキを転移し積層する工程、
(3)前記の積層したインキを前記ブランケットから透明基板に転写する工程、および、
(4)上記の印刷形成されたインキパターンを焼成する工程、
を備え、かつ前記(1)工程における転移速度V1(mm/秒)と前記(2)工程における転移速度V2(mm/秒)との関係をV1≦V2とすることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用前面電極の形成方法。
【0010】
2)前記(1)工程の印刷パターン幅をW1(μm)とし、前記(2)工程の積層印刷パターン幅をW2(μm)とするとき、0.5×W2≦W1≦W2の条件でパターン形成することを特徴とする上記1)項記載のプラズマディスプレイパネル用前面電極の形成方法。
3)前記導電性金属粉末が銀、銅、金、白金、アルミニウム、ニッケル、鉄およびパラジウムからなる群から選択された1種または2種以上の金属粉末であり、前記黒色金属酸化物が酸化ルテニウム(RuO2)、酸化マンガン(MnO)、酸化モリブデン(MoO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化銅(CuO)、酸化チタン(TiO)、酸化パラジウム(PdO)および酸化鉄(Fe2O3)からなる群から選択された1種または2種以上の金属酸化物であることを特徴とする上記1)項または2)項記載のプラズマディスプレイパネル用前面電極の形成方法。
【0011】
4)前記ブランケットの表面ゴム層が、シリコーンゴムよりなり、JIS−A硬度が20〜80°で、十点平均粗さ(Rz)で表される表面粗さが0.01〜3μmであることを特徴とする上記1)〜3)項のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用前面電極の形成方法。
本発明においては、上述のように、印刷用ブランケット上に前記(1)工程により導電性金属インキを転移させ(1色目)、その上に前記(2)工程により黒色金属酸化物を含有する黒色インキを積層し(2色目)、次いで前記(3)工程によって積層されたインキパターンをガラス基板などの透明基板に転写することが大きな特徴であり、これによって透明基板への転写工程が1回ですみ、かつ前記(1)工程と前記(2)工程における転移速度をV1≦V2の関係とすることによって電極パターンの印刷性を極めて良好なものとすることができる。
【0012】
すなわち、通常の凹版オフセット印刷法に従えば、黒色インキを1色目として印刷用ブランケットに転移し透明板に転写する工程と、導電性金属インキを2色目としてブランケットに転移しガラス板上の前記1色目に積層する工程、とを繰り返すことになるが、本発明ではこの形成方法に比べて透明板上への転写回数が少なくなっており、コンパクトな工程設計ができるとともに、生産性が高くなり製造コスト上極めて有利である。
【0013】
本発明において、転移速度をV1≦V2の関係とするのは、ブランケット上において1色目をまず着実に転移させ、その後に2色目を転移積層しやすくするためである。一色目の転移速度は、通常は5〜200mm/秒程度であり、好ましくは10〜100mm/秒程度である。この範囲を超えると導電性金属インキがブランケットの表面ゴム層へ転移し難くなり、この範囲に達しないときは非画線部分のインキの掻き取りの残り部分(汚れ)も転移し印刷不良の発生原因となる。次に、2色目の転移速度は、上記の範囲から選択した1色目の転移速度と同等もしくはそれ以上とする。この転移速度を逆にすると(V1>V2)、2色目を転移させようとするとき既にブランケット上に転移させた1色目が凹版の方へ逆転移を起こし、その結果ブランケット上に形成されたパターンに部分的な断線やピンホールが発生する。
【0014】
また、1色目インキは透明基板にパターン形成したときにはセル構造の内側に位置することから、できるだけ導電性を向上させるために導電性金属がリッチなインキを印刷する。この場合、導電性金属が主体となることから金属光沢がでてくるためにコントラストが低下する。そこで、2色目はできるだけ黒色化したインキを用い、1色目の上に積層して印刷する。このとき印刷機の精度と印刷パターン幅のバラツキを考慮すると1色目のインキの線幅を2色目の線幅よりも細くする方が有利となる。このためには、前記(1)工程の印刷パターン幅をW1(μm)とし、前記(2)工程の積層印刷パターン幅をW2(μm)とするとき、0.5×W2≦W1≦W2の条件によりパターン形成することが望ましい。この中でも、W2はできる限りW1に近くてかつ線幅が大きいことが望ましく、線幅があまりに小さいときは電気抵抗が高くなり導電性の低下をもたらし、PDPの消費電力が大きくなる。通常、W2は40〜150μmの範囲から選択するのが好ましい。
【0015】
本発明によると、電極パターンが印刷法によって形成されることから、フォトリソグラフィー法でパターンを形成する場合とは異なり、極めて簡易に、低コストで、しかも近年の印刷技術の向上に伴い高い精度でもって、パターンの形成を達成することができる。
本発明において、凹版オフセット印刷法により電極パターンが形成される。バス電極の微細なパターンを高い精度で形成するには、インキパターンの印刷精度も極めて高いことが必要となる。現在、印刷方法には種々のものが知られているが、上記印刷方式によると、40インチ基板(900mm×600mm)のエリア内で誤差が±20μm以内、好ましくは±10μm以内となるような極めて高い印刷精度でもって形成することができる。
【0016】
凹版オフセット印刷法において、使用する印刷用ブランケットは、硬さ(JIS A硬度)が20〜80°、表面粗さ(十点平均粗さRz)が0.01〜3μm、シリコーンよりなる表面ゴム層を備えるものが好ましく使用される。厚みは、通常1〜1500μmの範囲より選択される。
本発明に係るPDP用前面板のバス電極の形成方法において、印刷されたパターンを焼成する温度は、200〜700℃の範囲であることが好ましい。当該パターンを上記の温度で焼成させることにより、積層したインキ層間の結合および透明基板への結合を強固にすることができ、同時に導電性金属粉末同士を溶融結合させることができる。導電性金属粉末同士を溶融結合させることによって、バス電極の導電性をより一層向上させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明によるプラズマディスプレイパネル用前面板と、そのバス電極の形成に用いる部材、形成条件等について詳細に説明する。
〔パターン印刷用インキ〕
本発明において、前記(1)工程における導電性金属インキとしては、導電性金属粉末、樹脂および溶剤を混合・分散して作製したものが用いられる。
【0018】
前記導電性金属粉末は、従来、バス電極の形成に用いられる種々の導電性金属の粉末を用いることができるが、バス電極の導電性をより優れたものとするためには、前述のように、銀、銅、金、白金、アルミニウム、ニッケル、鉄およびパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の粉末を用いるのが好ましい。
導電性金属粉末の粒径は0.05〜20μmであるのが好ましい。粒径が20μmを超えると、導電性粉末の堆積物を圧着する際にその表面が平坦化される程度が小さくなり、バス電極の平坦性が低下するおそれがある。逆に、粒径が0.05μmを下回ると、最終的に得られるバス電極の導電性が低下するおそれがある。一般的には、導電性金属粉末の粒子径を小さくすることで金属同士の溶融温度を下げることが可能となってプロセスを簡素化することができ、さらには、導電性を著しく改善させることができる。
【0019】
導電性金属粉末の厚みは、焼成後に溶融結合して得られる金属膜の厚みが2〜15μmとなるように調整するのが好ましい。焼成後の金属膜の厚みが2μmを下回ると断線が発生し易く、バス電極の導電性も十分なものとならないおそれがある。一方、バス電極の導電性は、焼成後の金属膜の厚みを上記範囲に設定することによって十分なものとなる。焼成後の金属膜の厚みが15μmを超えてもバス電極の導電性の観点からは特段の効果は得られない。むしろ、バス電極の表面の平坦性が低下するなど、他の問題を引き起こすおそれがある。
【0020】
前記樹脂としては、熱硬化型、紫外線硬化型、熱可塑型等の各種の樹脂を使用することができる。熱硬化型樹脂としては、例えばポリエステル−メラミン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、アクリル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂(エチルセルロース等)、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0021】
本発明においては、これらの樹脂の中でも特に、焼成によって(例えば400℃以上の高温での焼成によって)完全にCO2 とH2 Oとに分解するポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂(特にエチルセルロース)、アクリル樹脂等を用いるのが好適である。これらの樹脂は単独で、または印刷適性に応じて2種以上を適宜混合して用いることができる。
前記溶剤はインキの印刷適性を考慮して選択される。凹版オフセット印刷に使用する場合において、インキの溶剤は印刷用ブランケットの表面ゴム層と直接に接触して、当該表面ゴム層を膨潤させてその表面の濡れ特性を変化させる。一般に、表面ゴム層を膨潤させる程度が小さい溶剤であれば印刷を繰り返した場合であっても印刷用ブランケットの表面濡れ性の変化は少なく、安定した印刷を行なうことができる。逆に、表面ゴム層を膨潤させる程度が大きい場合には、印刷を繰り返すことで表面濡れ性が大きく変化してしまい、印刷するパターンの線幅が広がったり、印刷版の表面の微小な汚れまでも転写したり、印刷用ブランケットから被印刷物への転写効率が低下したりする問題を生じるなど、印刷の安定性が著しく低下することとなる。従って、膨潤の程度は小さいのが好ましいが、印刷凹版から印刷用ブランケットへのインキの受理性を考慮すると、ある程度の膨潤を生じるのが好ましい。
【0022】
本発明において、前記(1)工程における導電性金属インキにおける配合割合は、印刷性を考慮して決定されるが、例えば樹脂100重量部と、金属粉末400〜2000重量部、溶剤100〜500重量部の割合であることが好ましい。これらの配合物を、例えば3本ロールを用いて、混合・分散することによって当該インキが作製される。
次に、前記(2)工程における黒色インキの組成は、黒色金属酸化物または/および黒色複合合金を含有し、当該インキの印刷適性と、インキを焼成した後の黒色度とを考慮して設定される。印刷適性が低いと、バス電極に適した微細かつ高精度のパターンを形成することができなくなる。また、黒色度が低いと、PDPのコントラストの低下を招くことになる。
【0023】
本発明における黒色金属酸化物および黒色複合合金は、常温で黒色であって、500〜650℃の温度で5〜60分焼成しても変色せず、また分解、昇華しない金属類であればよい。当該黒色金属酸化物としては、例えば酸化ルテニウム(RuO2)、酸化マンガン(MnO)、酸化モリブデン(MoO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化銅(CuO)、酸化チタン(TiO)、酸化パラジウム(PdO)および酸化鉄(Fe2O3)よりなる群から選択された1種または2種以上の金属酸化物が挙げられる。また、当該黒色複合合金としては、例えばCr−Co−Mn−Fe、Cr−Cu、Cr−Cu−Mn、Mn−Fe−Cu、Cr−Co−Fe、Co−Mn−Fe、Co−Ni−Cr−FeおよびCu−Fe−Crよりなる群から選択された1種または2種以上を挙げることができる。
【0024】
前記黒色インキは、通常、前記の黒色金属酸化物または/および黒色複合合金に、適宜、黒色顔料を併用し、インキ(ペースト)を形成する樹脂と、これらを分散し、印刷に適した粘度に調整する溶剤とにより調製される。黒色顔料としては、例えばカーボンブラック、チタンブラック、黒鉛、その他黒色の顔料または染料等が挙げられる。黒色インキの印刷適性を考慮すると、黒色金属酸化物、複合合金、黒色顔料粉末の粒径は0.05〜20μmであるのが好ましい。黒色インキ用を調製するための樹脂および溶剤は、前記(1)工程における導電性金属インキにおけると同様のものを同様の割合で用いることができる。
【0025】
〔インキパターンの印刷方法〕
本発明においては、前記したように、凹版オフセット印刷により、印刷用ブランケット上に前記(1)工程により導電性金属インキを転移させ(1色目)、その上に前記(2)工程により黒色金属酸化物または/および黒色複合合金を含有する黒色インキを転移積層し(2色目)、次いで前記(3)工程によって積層されたインキパターンを透明基板に転写することとし、かつ前記(1)工程と前記(2)工程における転移速度をV1≦V2の関係とすることによって電極パターンが印刷される。
【0026】
凹版オフセット印刷にあたっては、前記(1)工程と前記(2)工程の転移毎に、ブランケット上のインキ表面を乾燥させ、次いで冷却する工程を設けることにより、印刷精度をより高めることができる。ここで、乾燥は、例えば80〜120℃の熱風を5〜30秒程度吹き付けることにより、また冷却は10〜15℃の冷風を0.3〜2分程度吹き付けることにより実施できる。
また、印刷を繰り返すときには、表面ゴム層中に吸収されたインキの溶剤を、表面ゴム層を加熱することによって蒸散、乾燥させるのが好ましい。加熱による蒸散、乾燥によって、表面ゴム層の状態をインキの溶剤によって膨潤する前の状態に戻すことができる。
【0027】
溶剤の蒸散、乾燥のし易さは加熱温度、インキの溶剤の沸点、表面ゴム層の厚さ等によって変動するものであるが、通常、加熱温度が40〜200℃であれば、十分効果的な蒸散、乾燥を達成することができる。加熱・乾燥の方法は特に限定されるものではなく、ブランケット胴を介して間接的に加熱してもよく、表面ゴム層に外部から熱風を吹き付けて直接に加熱してもよい。
加熱・乾燥処理後には印刷用ブランケットの表面温度が高くなっており、このままの状態で印刷を行なうと、表面ゴム層やこれと接触する印刷版が熱膨張することから、これに伴って印刷精度が低下するおそれがある。そこで、印刷版の表面温度の変化は±1℃以内に、印刷用ブランケット(表面ゴム層)の表面温度の変化は±5℃以内に、それぞれ収まるように、例えば印刷用ブランケットの表面に冷風を吹き付けたり、印刷用ブランケットの表面を金属等の熱容量の大きな部材に接触させたり、ブランケット胴を介して熱を放散させたりするなどの、冷却処理を行なうのが好ましい。
【0028】
本発明は、従来公知の印刷法のうちから、凹版オフセット印刷法を採用するものである。これ以外の印刷方法、例えばスクリーン印刷法は、パターンの線幅が100μmを下回ることによってその形状の忠実な再現が不可能となったり、断線等を発生したりする問題があり、薄膜のパターンを形成するのが難しいという問題もある。さらに、原理上、スクリーンの中央部分と周辺部分とでかかる力が異なり、伸び量に差異が生じることから、同一の背面基板上でパターンの印刷精度が異なるという結果を招いてしまう。それゆえ、バス電極に要求される印刷精度〔40インチ基板(900mm×600mm)のエリア内で誤差が±20μm以内、好ましくは±10μm以内〕を十分に満足することができない。
【0029】
また、凸版直刷り印刷法や凸版オフセット印刷法は、パターンの周辺にマージナルゾーンと呼ばれるインキのはみ出し部分を生じることから、印刷版自身の解像度が低く、パターンを忠実に再現することも極めて困難である。さらに、凹版直刷り印刷(グラビア印刷)の場合は、直刷り印刷に用いられる版が剛直な部材であることに起因して、剛直でしかも厚みムラのあるガラス基板等に均一な印圧をかけることが難しくなり、転写ムラが発生し易くなるという問題がある。
【0030】
これらの印刷法に対して、凹版オフセット印刷法は、凹版の凹部の深さを変えることでパターンの膜厚を自由に制御することが可能である。しかも、シリコーンゴム等の表面エネルギーの低い素材からなる表面ゴム層を備えた印刷用ブランケットを用いることによって、剛直な基板等に対しても、印刷版(凹版)から印刷用ブランケットに転移したインキを100%転写させることが可能になる。
特に、本発明においては、前記(1)工程と前記(2)工程により凹版オフセット印刷法を採用したことから、印刷されたパターンの形状を非常に良好なものとすることができる。さらに、凹版オフセット印刷法によってパターンを形成するのに要するコストは、フォトリソグラフィー法の場合の1/3〜1/10程度であることから、極めて低コストでもってPDP用前面板のバス電極を形成することができる。
【0031】
〔印刷用ブランケット〕
インキパターンを凹版オフセット印刷法によって形成する場合に用いられる印刷用ブランケットについては、インキパターンを高い精度でもって形成する目的上、前述のように、印刷用ブランケットとして、硬さ(JIS A硬度)が20〜80、表面粗さ(十点平均粗さRz)が0.01〜3μmの、表面ゴム層を備えるものであって、当該表面ゴム層はシリコーンゴムで構成されているものが好ましい。
【0032】
表面ゴム層の硬さが上記範囲を超えると、印刷時に表面ゴム層の変形が生じにくくなって、印刷版のインキの受理性が低下するおそれがある。逆に、表面ゴム層の硬さが上記範囲を下回ると、印刷時における表面ゴム層の変形の程度が大きくなって、印刷精度の低下を招くおそれがある。表面ゴム層の硬さは、上記範囲(JIS A硬度)の中でも特に20〜70°であるのが好ましく、30〜60°であるのがより好ましい。
【0033】
表面ゴム層の表面粗さは、印刷形成するパターンが微細なものとなるほど、印刷形状に大きな影響を及ぼす。PDP用前面板のバス電極を形成する場合には、インキパターンに求められる線幅は数十μm程度、より具体的には20μm程度であることから、表面ゴム層の表面粗さは、インキパターンの印刷形状を良好なものにするという観点から、10点平均粗さ(Rz)で0.01〜3μmであることが求められる。
【0034】
表面ゴム層の10点平均粗さ(Rz)が上記範囲を超えると、パターンのエッジ形状がシャープでなくなるなど、その印刷形状が低下するおそれがある。一方、表面ゴム層の10点平均粗さ(Rz)が上記範囲を下回る程度にまで小さくすることは困難であって、しかも表面粗さが極端に小さいとかえってインキの受理性が低下するおそれがある。表面ゴム層の10点平均粗さ(Rz)は、上記範囲の中でも特に0.01〜0.5μmであるのがより好ましい。
【0035】
表面ゴム層の厚みは、印刷時の変形の程度に応じて設定されるものであって、通常、1〜1500μmの範囲で設定される。表面ゴム層の厚みが1μmを下回ると、印刷時に表面ゴム層の変形が生じにくくなって、印刷版のインキの受理性が低下するおそれがある。逆に、表面ゴム層の厚みが1500μmを超えると、印刷時における表面ゴム層の変形の程度が大きくなって、印刷精度の低下を招くおそれがある。
【0036】
表面ゴム層を形成する材料としては、前記のように、シリコーンゴムが好ましいが、それ以外にもインキの溶剤によって膨潤しにくい材料であれば使用可能であって、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等が挙げられる。
〔印刷凹版〕
本発明において、凹版オフセット印刷法に用いられる凹版としては特に限定されるものではなく、従来公知のものを採用することができる。凹版パターンは、所望のプラズマディスプレイパネル用前面電極パターンに応じたものが用いられる。
【0037】
〔インキパターンの焼成条件〕
インキパターンを焼成する際の条件は、従来の方法に準じて、黒色インキに使用する樹脂の種類(熱分解温度)、導電性金属粉末の種類(溶融点)等に応じて適宜設定されるものであるが、バス電極の導電性を優れたものにするという観点から、通常、焼成温度を200〜700℃の範囲で設定するのが好ましい。
インキパターンの焼成温度が上記範囲にあるときは、インキパターン中の樹脂分をほぼ完全に熱分解させることができ、かつ導電性金属粉末の溶融結合を達成することができる。それゆえ、前面板の全面側におけるバス電極表面の黒色度を維持しつつ、当該バス電極の導電性を優れたものとすることができる。インキパターンの焼成温度は、インキの樹脂を分解して導電性金属粉末を溶融させる温度であればよいが、上記範囲の中でも特に、400〜600℃であるのがより好ましい。
【0038】
〔透明基板〕
PDP用の前面板として用いられる透明基板は、透明性および耐熱性が高いことのほかには特に限定されるものではないが、例えばソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等のガラス基板が好適に用いられる。透明基板の材質は、上記例示のガラス基板等の中から、その耐熱性、耐薬品性、透過性等の各種特性に応じて適宜選択される。
【0039】
〔他の部材等〕
本発明におけるPDP用前面板において、バス電極を形成するための黒色インキおよび導電性金属粉末、ならびにバス電極の基盤となる透明基板については前述のとおりであるが、その他の部材(例えば、透明電極、透明誘電体層、保護層等)や、その材料、形成方法等については本発明において特に限定されるものではなく、従来公知のPDP用前面板に準じて適宜設定、選択すればよい。
【0040】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
凹版オフセット印刷方式を採用し、以下に述べる手順により、プラズマディスプレイパネル(PDP)前面板用の基板(対角42インチのガラス基板)の表面に、導電性金属インキ層とその上に黒色インキ(導電性ペーストインキ)を積層することにより、PDP用前面電極を形成した。
【0041】
(1) インキパターンの印刷形成
黒色インキとしては、アクリル樹脂100重量部と、平均粒径0.5μmの銀粉末40重量部と、平均粒径0.9μmの黒色金属酸化物[CI77428,pigment黒28、CuO、Cr2O3およびMnOを含む]150重量部と、平均粒径1μmのガラスフリット20重量部とを、溶剤としての酢酸ブチルカルビトール(BCA)50重量部中に添加し、3本ロールにて混合・分散し作製したものを用いた。
【0042】
導電性金属インキとしては、アクリル樹脂100重量部と、、平均粒径0.5μmの銀粉末1200重量部と、平均粒径1μmのガラスフリット20重量部とを、溶剤としての酢酸ブチルカルビトール(BCA)50重量部中に添加し、3本ロールにて混合・分散し作製したものを用いた。
印刷版としての凹版には、ガラス基板上に線幅70μm、線間隔(ピッチ)360μm、深さ30μmのストライプ状パターン(凹部)を形成したものを1色目用として使用した。また、2色目用としては、線幅85μm、線間隔(ピッチ)360μm、深さ30μmのストライプ状パターン(凹部)を形成したものを使用した。
【0043】
印刷用ブランケットには、シリコーンゴム[ゴム硬度JIS A:40°、厚さ:300μm、表面粗さ(十点平均粗さRz):0.1μm]を表面ゴム層として備えるものを使用した。上記のシリコーンゴムには、常温硬化型付加型のシリコーンゴム〔信越化学工業(株)製の製品名「KE1600」〕を使用した。電極パターンの印刷にあたっては、室温23℃±1℃に調整したクリーンルームにおいて、まず前記の1色目凹版に充填した導電性金属インキを、50mm/秒の速度でブランケット上に転移した(このときのブランケット上での線幅は60μmであった。)。次いで、その表面に100℃の熱風を20秒、吹きつけることにより乾燥し、その後強制的にブランケット表面に10℃の冷風を5分間吹き付けて、冷却処理を行った。冷却後のブランケットの表面温度は、室温+3℃の範囲におさまっていた。
【0044】
ブランケットの1色目の導電性金属インキのパターン上に、2色目用凹版に充填した黒色インキを80mm/秒の速度で転移した。その結果ブランケット上での線幅は75μmとなり、1色目の導電性インキのパターンが完全に被覆された状態で、2色目が積層されていた。その積層されたパターン表面を、前と同じ条件で、熱風乾燥と冷却処理を行なった。冷却処理後、ブランケット上の積層パターンを前記のガラス基板に転写することにより、目的とする電極パターンの印刷を行った。このとき、ブランケット上に転移したインキは、ガラス基板上に100%完全に転写され、印刷パターンは線幅80μm、厚み(未焼成)8μmであった。
【0045】
この方法によると、連続印刷性も良好でほとんど形状の変化もなく、印刷精度への悪影響も見られなかった。また、ガラス基板にインキを100%完全に転写されることから、印刷後のパターン形状は非常に良好で膜厚みも安定したものが得られた。なお、上記乾燥処理と冷却処理とを施した結果、連続的にインキパターンの印刷形成を繰り返し行なったにも拘わらず、印刷精度が低下するという問題は生じなかった。
【0046】
(2) 印刷パターンの焼成
上記の印刷パターンを、550℃で1時間焼成することによって、インキパターンの樹脂分を完全に分解させ、かつ導電性金属粉末を溶融結合させた。焼成により得られたバス電極(銀電極)の厚みは、5μmであった。
(3) 透明電極等の形成
ガラス基板にあらかじめITO(透明電極)をスパータ、フォトリソ法バスでパターン化(エッチング)して形成し、バス電極を形成した後、常法に従って透明電極、透明導電層および保護層を形成することにより、PDP用の前面板を得た。
(4) 総合評価
こうして得られたPDP用前面板において、バス電極の印刷精度は、上記基板(対角42インチ)のエリア内での誤差を±10μm以内に収めることができた。この誤差の範囲は、PDPを実装する上で全く問題のない程度であった。また、バス電極の導電性は極めて良好であった。
【0047】
PDP用前面板の製造に際して使用したインキの量は、例えば黒色の感光性ペーストを前面板の全面に塗布する場合と比べると、極めて少量であって、材料そのもののコストが低いことと併せて、大幅なコストの削減を実現することができた。しかも、フォトリソグラフィー法を採用する場合に生じる廃液の問題がなく、インキパターンの形成に用いる印刷設備自体も安価であることから、PDP用前面板の製造にかかるコストを極めて低く抑えることができた。また、得られたPDP用前面板は、インキパターンを形成したことによって、前面板の全面側におけるバス電極表面の黒色度が極めて高く、PDPに実装した場合に極めて高いコントラストを発揮することができた。
【0048】
比較例1
PDPの前面板(対角42インチ)に感光性ペーストインキ(Dupont社、「フォーデル」)を、スクリーン印刷により、全面厚み10μmで均一に塗布した。ここで、はじめに黒色の感光性ペーストを塗布、乾燥し、次いで導電性の感光性銀ペーストを塗布し2層形成した。次に、露光・現像によりストライプ状の電極パターンを形成し、最後に550℃で1時間、焼成し、銀電極を形成した。ここで、実施例1と同じく、パターンの線幅を80μm、ピッチを360μmとなるように設定した。バス電極を形成した後、常法に従って透明電極、透明導電層および保護層を形成することにより、PDP用の前面板を得た。
【0049】
こうして得られたPDP用前面板において、バス電極の印刷精度は、フォトリソグラフィー法を採用したこともあって、上記前面板用の基板(対角42インチ)のエリア内での誤差を±3μm以内に収めることができた。また、バス電極の導電性は、実施例1の場合と同様に極めて良好であった。しかしながら、バス電極の露光・現像に際して多量の銀廃液が発生したこと、バス電極に十分な黒色度を付与すべく、黒色ペーストと銀ペーストの2種類のペーストを印刷する必要があったこと、等の理由により、PDP用前面板の製造に際して、実施例1に比べて5〜10倍のコストを要した。
【0050】
比較例2
PDPの前面板(対角42インチ)に、実施例1と同一の導電性銀ペーストを用いて、スクリーン印刷により、線幅80μm、ピッチ360μmに設定してパターン印刷を行った。この方法によると、安定な線幅でパターン形成することができず、断線等が多く発生、印刷精度が非常に悪く、42インチ面内で印刷精度±50μmであった。この結果、PDP実装すると電極に位置ずれが発生し、実用化が困難であった。
【0051】
比較例3
実施例1において、印刷条件として1色目の導電性インキをブランケット上に50mm/秒で転移させ、2色目の黒色インキを20mm/秒で転移したこと以外は実施例1と同様にしてパターン印刷を行なった。その結果、1色目に転移したブランケット上のインキの一部が、2色目の転移時に凹版に移り、ピンホールが多数発生し、良好なパターン形成をすることができなかった。
【0052】
【発明の効果】
本発明によると、プラズマディスプレイパネル用前面電極のパターンを、凹版オフセット印刷方式により極めて精度よく、安定な抵抗で形成することができる。また、フォトリソグラフィー法におけるような廃液の発生がなく、製造設備も安価ですみ、製造コストの低減化が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】PDPの構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 前面板
11 前面電極/バス電極
12 ITO(透明電極)
30 インキパターン
32 導電性金属粉末
33 印刷用ブランケット
Claims (4)
- 凹版オフセット印刷法により電極パターンを印刷するプラズマディスプレイパネル用前面電極の形成方法であって、
(1)パターン形成用凹版に供給された導電性金属インキを印刷用ブランケットに転移する工程、
(2)前記ブランケット上に転移した導電性金属インキ層上に、凹版オフセット印刷により黒色金属酸化物または/および黒色複合合金を含有する黒色インキを転移し積層する工程、
(3)前記の積層したインキを前記ブランケットから透明基板に転写する工程、および、
(4)上記の印刷形成されたインキパターンを焼成する工程、
を備え、かつ前記(1)工程における転移速度V1(mm/秒)と前記(2)工程における転移速度V2(mm/秒)との関係をV1≦V2とすることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用前面電極の形成方法。 - 前記(1)工程の印刷パターン幅をW1(μm)とし、前記(2)工程の積層印刷パターン幅をW2(μm)とするとき、0.5×W2≦W1≦W2の条件でパターン形成することを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイパネル用前面電極の形成方法。
- 前記導電性金属粉末が銀、銅、金、白金、アルミニウム、ニッケル、鉄およびパラジウムからなる群から選択された1種または2種以上の金属粉末であり、前記黒色金属酸化物が酸化ルテニウム(RuO2)、酸化マンガン(MnO)、酸化モリブデン(MoO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化銅(CuO)、酸化チタン(TiO)、酸化パラジウム(PdO)および酸化鉄(Fe2O3)からなる群から選択された1種または2種以上の金属酸化物であることを特徴とする請求項1または2記載のプラズマディスプレイパネル用前面電極の形成方法。
- 前記ブランケットの表面ゴム層が、シリコーンゴムよりなり、JIS−A硬度が20〜80°で、十点平均粗さ(Rz)で表される表面粗さが0.01〜3μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用前面電極の形成方法。
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