JP3532146B2 - 透光性電磁波シールド部材とその製造方法 - Google Patents

透光性電磁波シールド部材とその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばCRT(ブ
ラウン管)、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネ
ル)等の表示画面から照射される電磁波を効果的にシー
ルド(遮蔽)することができ、しかも上記表示画面にお
ける表示の視認性を阻害しないために透光性にも優れた
透光性電磁波シールド部材と、その製造方法とに関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器類などから放射される電
磁波が人体に与える影響について種々の報告がなされて
おり、それに伴って例えばCRT(ブラウン管)、PD
P(プラズマ・ディスプレイ・パネル)等の表示画面か
ら照射される電磁波を効果的にシールド(遮蔽)する技
術について関心が高まっている。通常の電気機器などか
ら放射される電磁波をシールドするためには、その筐体
を金属製にするか、あるいは筐体に金属板を貼り付ける
といった方法が行われる。
【0003】しかし、上記CRTやPDPの表示画面か
ら照射される電磁波をシールドするためには、ただ単に
電磁波のシールド効果に優れるだけでなく、上記表示画
面の表示の視認性を阻害しないために可視光の透過性
(透光性)にも優れることが求められるので、金属板を
そのまま使用することはできない。そこで、CRT等の
表示画面から照射される電磁波を、表示の視認性を阻害
することなくシールドすることを目的として、例えば
(1) 導電性の高い金属フィラメントを混入した繊維から
なるメッシュ、(2) ステンレス、タングステン等の導電
性材料の繊維を内部に埋め込んだ透明基板(特開平3−
35284号公報、特開平5−269912号公報、特
開平5−327274号公報)、(3) 表面に金属または
金属酸化物の蒸着膜を形成した透明基板(特開平1−2
78800号公報、特開平5−323101号公報)な
どが用いられている。
【0004】しかし、上記のうち(1)のメッシュを用い
ると表示画面が暗くなって、コントラストや解像度が低
下するという問題がある。また(2)の透明部材は内部に
繊維が埋め込まれていることから、製造方法が複雑にな
ってコストが高くつく上、やはり表示画面が暗くなっ
て、コントラストや解像度が低下するという問題があ
る。さらに(3)の場合には、十分な透光性を維持し得る
程度にまで蒸着膜を薄くすると、当該膜の表面抵抗が低
下して電磁波の減衰特性が低下することから、透光性と
シールド効果とを両立できないという問題がある。
【0005】CRT等の表示画面を覆って電磁波をシー
ルドする部材としては、上記例示の他にも例えば、透明
基板の表面に、導電性の高い金属粉末を混合したインキ
を、スクリーン印刷法によって格子状または縞状のパタ
ーンに印刷形成したもの(特開昭62−57297号公
報、特開平9−283977号公報)や、導電性インキ
からなる網目状のパターンを、スクリーン印刷法によっ
て印刷形成したのち真空中で焼き付けたもの(特開平2
−52499号公報)、あるいは紫外線硬化型エポキシ
アクリレート樹脂に金属粉末を混合したインキを、印刷
法は不明であるが透明基板の表面に、格子状に印刷形成
したのち紫外線を照射して硬化したもの(特公平2−4
8159号公報)などが知られているが、これらの部材
を用いても、十分な電磁波のシールド効果と透光性とを
両立することはできない。
【0006】すなわち、優れた電磁波のシールド効果と
透光性とを両立するには、パターンの線幅とパターンの
間隙(ピッチ)とを最適化し、さらにパターンの電気抵
抗を小さくする必要があるが、このような観点に対する
考慮は、上記各公報のいずれに記載の技術においてもな
されておらず、またパターンの作成方法に対する考慮も
不十分であると考えられる。例えば十分な透光性を得る
には、パターンの線幅を極めて細くし、かつその間隔を
大きくするのが好ましいが、この場合にはシールド効果
が不十分になる。また、スクリーン印刷法によって数1
0μm以下といった極めて細い線幅のパターンを形成す
るのは困難であって、パターンの線幅にばらつきが生じ
たり、パターンが途切れる箇所が多数発生したりすると
いった問題が生じる。
【0007】特公平2−48159号公報に記載のもの
についても、その実施例ではパターンの線幅が100μ
mとなっていることから、やはりスクリーン印刷法等の
従来法にて印刷を行っているものと推測され、数10μ
m以下といった極めて細い線幅のパターンを形成するの
は困難であって、上記のようにパターンの線幅にばらつ
きが生じたり、パターンが途切れる箇所が多数発生した
りするといった問題がある。
【0008】一方、シールド効果を高めるには、パター
ンの電気抵抗を極力低くすることが好ましいが、金属粉
末と樹脂とからなる一般的な導電性ペーストをインキと
して用いた場合、その比抵抗は十分に小さいものの、極
めて細いパターンを形成した際に、パターン間の電気抵
抗が非常に高くなってしまって、シールド効果を十分に
高めることが困難になる。また上記導電性ペーストにて
形成したパターンは金属光沢を有し、外光や内部発光の
反射によって、表示画面のコントラストの低下を引き起
こすという問題がある。
【0009】そこでコントラストの低下を抑制するため
に、導電性のカーボンブラックを金属粉末と併用して、
印刷パターンを黒くすることが考えられるが、カーボン
ブラックは金属粉末に比べて抵抗値が高いために、併用
すると印刷パターンの導電性が低くなって電磁波のシー
ルド性が悪くなるという問題がある。また特にPDP用
途では厳しい電磁波シールド性能が要求されているとと
もに、今後その要求がますます厳しくなることが予想さ
れており、上記の、金属粉末やカーボンブラックを主と
する導電性ペーストのみにてパターン形成されたシール
ド部材では、この要求に対応する十分なシールド性能が
得られなくなりつつあるという問題もある。
【0010】特開平3−35284号公報には、透明プ
ラスチック基板の表面に、金属薄膜を蒸着等によって形
成した後、ケミカルエッチングプロセスによってパター
ニングする旨の記載があり、また特開平10−4168
2号公報には、金属薄膜からなる幾何学模様を、これも
ケミカルエッチングプロセスによって透明基板の表面に
設ける旨の記載がある。また同様に特開平10−163
673号公報には、透明基板の表面にめっき触媒を含む
透明樹脂塗膜を形成し、その上に無電解めっきによって
銅などの金属薄膜を形成したのち、やはりケミカルエッ
チングプロセスによってパターニングする旨の記載があ
る。
【0011】これらの方法によれば、非常に微細なパタ
ーンを高い精度でもって形成することができる上、特に
PDP用途で要求される厳しい電磁波シールド性能を達
成することもできる。しかしながらケミカルエッチング
プロセスにおいては、かかる微細なパターンを形成する
ためにフォトリソグラフ法を用いる必要があり、製造コ
ストが極めて高くつくため、コスト面で不利である。特
に、PDP等の大型画面に対応させるためには露光装置
やエッチング装置を大型化せねばならず、製造設備が非
常に高価になる。
【0012】また、透明基板の表面に一旦、形成した金
属薄膜の大部分を除去する必要があって無駄が多い上、
エッチング後の廃液の処理に時間と手間と費用とがかか
るという問題もある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】そこで発明者らは先
に、凹版の表面に形成したインキ像を転写体の表面に転
写し、ついでこの転写体の表面から被印刷物の表面に印
刷する凹版オフセット印刷法によって、被印刷物として
の透明基板の表面に、導電性インキ組成物からなる、線
幅5〜40μmの微細な印刷パターンを印刷したのち、
この印刷パターン上に選択的に、無電解めっきまたは電
気めっきによって、金属層を積層、形成することで電磁
波シールドパターンを構成して、透光性電磁波シールド
部材を製造することを検討した。
【0014】この方法によれば、上記のように線幅5〜
40μmという、スクリーン印刷法では印刷不可能な微
細な電磁波シールドパターンを、凹版オフセット印刷法
とめっき法とを採用することで、ケミカルエッチングプ
ロセスに比べて簡易かつ低コストで形成することができ
る。また、電磁波シールドパターンの導電性は主に金属
層が担っており、導電性インキ組成物からなる印刷パタ
ーンは、前記無電解めっきまたは電気めっきによる金属
層の積層、形成時に、めっき金属をその表面のみへ選択
的に析出させるために機能するだけでよいため、それ自
体が高い導電性を有する必要がない。
【0015】それゆえ、印刷パターン自体に高い導電性
を付与するには、導電性インキ組成物中の樹脂を十分に
硬化させるベく、より高温、長時間の加熱が必要であっ
たものが、上記のように金属層を積層、形成すること
で、かかる高温、長時間の加熱が不要となるため、例え
ば熱可塑性樹脂等の耐熱性の低い透明基板の表面にも、
透光性と電磁波のシールド効果との両方に優れるととも
にコントラストを低下させるおそれがない電磁波シール
ドパターンを、簡易かつ低コストで形成することが可能
となる。
【0016】ところがその後、上記の方法を実用化し
て、実際に透光性電磁波シールド部材を生産すべく、発
明者らがさらに検討を行ったところ、金属層の形成工程
で、下記の問題を生じることが明らかとなった。 (a) 金属層の形成方法として無電解めっきを採用した
場合には、印刷パターンを形成した透明基板を無電解め
っき液に浸漬するだけで、当該印刷パターンの表面に選
択的に、めっき金属を析出させて金属層を形成すること
ができる。
【0017】しかし無電解めっきは一般にめっきの速度
が遅いため、十分な膜厚を有する金属層を形成しようと
すると、一つの透明基板をめっき液中に長時間にわたっ
て浸漬する必要があり、めっきに時間がかかって生産性
の点で問題がある。また、上記のように1回のめっき時
間が長くなるほど、無電解めっき液の劣化が速くなって
交換の頻度が高くなり、しかも無電解めっき液は非常に
高価であるため、生産コストが著しく上昇するという問
題もある。
【0018】(b) 一方、金属層の形成方法として電気
めっきを採用した場合には、かかる電気めっきの速度
を、上記無電解めっきに比べて速くすることができ、一
つの透明基板を電気めっき液中に浸漬してめっきする時
間を短くできる生産性が高い。また電気めっき液は、無
電解めっき液に比べて相対的に安価であるため、生産コ
ストを低く抑えることもできる。しかし特に、前記のよ
うに印刷パターンの導電性があまり高くない場合には、
当該印刷パターンを電極として電圧をかけることで、そ
の表面にめっき金属を析出させるめっき初期の時点で、
印刷パターンの表面全面に均一にめっき金属を析出させ
ることができず、断線等を生じて連続した金属層を形成
できないおそれがある。
【0019】またそれを防止して、印刷パターンの表面
全面にめっき金属を析出させるべく、当該印刷パターン
に印加する電圧を上昇させた場合には、印刷パターンの
角などに電圧が集中する度合いが高くなるため、金属層
の膜厚の不均一が助長されたり、あるいは絶縁破壊によ
る印刷パターンや金属層の破損などを生じたりするおそ
れがある他、消費電力が増加して、前述した電気めっき
を採用したことによる生産コストの低減効果が不十分に
なるおそれもある。
【0020】本発明の主たる目的は、上記のような従来
法の問題を解決して、簡易かつ低コストで生産性よく、
連続的に製造することができ、しかも透光性と電磁波の
シールド効果の両方に優れるとともにコントラストを低
下させるおそれがない、良好で品質の安定した、新規な
透光性電磁波シールド部材と、その製造方法とを提供す
ることにある。
【0021】
【課題を解決するための手段および発明の効果】上記課
題を解決するための、本発明の透光性電磁波シールド部
材は、透明基板の表面に、導電性粉末を含む導電性イン
キ組成物を印刷して形成された、その線幅が5〜40μ
mで、かつ式(1): 1≦Sk/Ss≦9 (1) 〔式中Ssは、透明基板の表面における印刷された領域
の全表面積、Skは印刷されていない領域の全表面積を
示す〕を満足する、ストライプ状、格子状または幾何学
模様からなる印刷パターンと、当該印刷パターン上に、
無電解めっきによって選択的に積層、形成された第1の
金属層と、この第1の金属層を電極として使用して、そ
の上に、電気めっきによって選択的に積層、形成され
、第1の金属層の厚みの1.2〜10倍の厚みを有す
第2の金属層とによって、総厚み1〜50μmの電磁
波シールドパターンが構成されたことを特徴とする。
【0022】また本発明の製造方法は、インキ離型性に
優れた転写体を用いた凹版オフセット印刷法により、透
明基板の表面に、導電性粉末を含む導電性インキ組成物
を印刷して、その線幅が5〜40μmで、かつ式(1) 1≦Sk/Ss≦9 (1) 〔式中Ssは、透明基板の表面における印刷された領域
の全表面積、Skは印刷されていない領域の全表面積を
示す〕を満足する、ストライプ状、格子状または幾何学
模様からなる印刷パターンを形成し、次いでこの印刷パ
ターン上に、無電解めっきによって選択的に、第1の金
属層を積層、形成したのち、この第1の金属層を電極と
して使用して、その上に、電気めっきによって選択的
に、第2の金属層を積層、形成して、総厚み1〜50μ
mの電磁波シールドパターンを構成することを特徴とす
る。
【0023】上記本発明によれば、 ・精密でかつ微細なパターン形成が可能であるととも
に、1回の印刷でおよそ0.5μm程度の膜厚しか稼げ
ない平版や凸版に比べて、同じ1回の印刷で十分に厚肉
の、したがって良好な導電性を有する印刷パターンの形
成が可能であり、所定の膜厚を得るのに重ね印刷が不要
である上、凹部の深さを調整することで上記印刷パター
ンの厚みを自由に制御することもできる凹版と、 ・インキ離型性に優れ、上記凹版のインキをほぼ100
%、透明基板に転写できるため、インキの分断を、凹版
から転写体への転写の際の1回のみとすることができ
て、微細なパターンであっても原版にきわめて忠実な、
断線などを生じない非常に良好な印刷物形状を有する印
刷パターンを形成できる転写体とを用いた凹版オフセッ
ト印刷法を採用することで、電磁波シールドパターンを
構成する、線幅が5〜40μmといった極めて微細な印
刷パターンを、1度の印刷で生産性よく、かつ断線や、
あるいは重ね印刷によるずれなどを生じることなく精度
よく形成することができる。
【0024】このため、例えばフォトリソグラフ法を用
いる場合に比べて簡易かつ低コストで、上記のように微
細な印刷パターンを形成することが可能となり、生産性
の向上と生産コストの低減とをはかることができる。例
えばフォトリソグラフ法のランニングコストを1とする
と、凹版オフセット印刷法のランニングコストは、その
およそ1/10〜1/3程度まで低減することが可能で
ある。また形成された印刷パターンは、上記のようにそ
の線幅が40μm以下と非常に細いために透光性に優れ
る上、印刷領域と非印刷領域との比Sk/Ssが1〜9
の範囲に限定されるため透光性と電磁波シールド効果と
の両方に優れ、なおかつコントラストを低下させるおそ
れのない良好な電磁波シールドパターンを構成できるも
のとなる。
【0025】また上記印刷パターンとともに電磁波シー
ルドパターンを構成する金属層は、本発明では、前記の
ように印刷パターン上に、無電解めっきによって選択的
に積層、形成された第1の金属層と、この第1の金属層
を電極として使用して、その上に、電気めっきによって
選択的に積層、形成された、第1の金属層の厚みの1.
2〜10倍の厚みを有する第2の金属層とを有してお
り、前述した従来の金属層の問題点を全て解消すること
ができる。すなわち、上記の積層構造によれば、無電解
めっきによる第1の金属層の厚みを、これまでの、全体
を無電解めっきによって形成していた金属層に比べて小
さくすることができるため、その分だけ、透明基板を無
電解めっき液に浸漬して無電解めっきを行う時間を短く
することができる。このため第2の金属層が、前記のよ
うにめっき速度の速い電気めっきによって形成されるこ
とと相まって、透光性電磁波シールド部材の生産性を向
上することができる。
【0026】また1回のめっきの時間が短くなる分、無
電解めっき液の劣化が抑制されるため、これまでよりも
生産コストの上昇を抑えることができる。また第2の金
属層は、印刷パターンよりも著しく高い導電性を有する
上記第1の金属層を電極として使用した電気めっきによ
って、当該第1の金属層上に、選択的に形成される。こ
のため、印刷パターンを電極として使用する場合に比べ
てより低電圧、低電力でしかもスムースに、すなわち前
述した印刷パターンの角などへの電圧の集中を緩和し
て、金属層の膜厚の不均一を抑制しつつ、また絶縁破壊
による印刷パターンや金属層の破損など防止しつつ、第
2の金属層を積層、形成することができる。
【0027】また上記のように低電力化が可能であるた
め、消費電力の増加に伴う生産コストの上昇をなくする
こともできる。したがって本発明によれば、簡易かつ低
コストで生産性よく、連続的に製造することができ、し
かも透光性と電磁波のシールド効果の両方に優れるとと
もにコントラストを低下させるおそれがない、良好で品
質の安定した、新規な透光性電磁波シールド部材とその
製造方法とを提供することが可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を説明する。 〈導電性インキ組成物〉導電性インキ組成物としては、
従来同様に溶剤可溶の樹脂と、当該樹脂を溶解しうる溶
剤と、導電性粉末とを含むものが好ましい。このうち導
電性粉末としては、特に金属粉末が好適に使用され、金
属粉末としては、例えば銀、銅、鉄、ニッケル、アルミ
ニウムおよび金などが挙げられる。金属粉末はそれぞれ
1種単独で使用できる他、2種以上を併用することもで
きる。またメッキ複合体(例えば銀メッキ銅)や合金体
としてもよい。
【0029】これら金属粉末の中でも特に導電性とコス
ト、そして耐酸化性、すなわち絶縁性の高い酸化物を生
成しにくい特性を考慮すると銀、ニッケルまたは銅の粉
末が好適に使用される。金属粉末は、印刷パターンの導
電性を高くして、電磁波シールド効果をより一層、良好
にするという観点から、その充填密度が高いほど好まし
い。また印刷パターンの導電性は、使用する金属粉末自
体の体積固有抵抗のみで決まるものではなく、パターン
中での金属粉末間の接触抵抗によっても大きく左右され
る。例えば、印刷パターンの内部に金属粒子が高密度で
充填されていても、金属粉末間の接触抵抗が大きけれ
ば、印刷パターン全体の導電性が低くなる。
【0030】それゆえ金属粉末としては、球状や粟状の
ものなどよりも、金属粉末同士の接触面を大きくするこ
とを考慮してフレーク状のものが好ましく使用される
が、上記球状や粟状のものを排除するものではない。ま
たその粒径は、印刷適正などを考慮すると、およそ0.
01〜20μmであるのが好ましく、0.1〜10μm
であるのがさらに好ましい。上記金属粉末などの導電性
粉末の、導電性インキ組成物への添加量は、樹脂の総量
100重量部に対して640〜960重量部であるのが
好ましく、700〜900重量部であるのがさらに好ま
しい。
【0031】導電性粉末の添加量がこの範囲未満では、
無電解めっき時にめっき金属析出の核となる、印刷パタ
ーンの表面に露出した導電性粉末の個数が少なくなるた
め、その表面に、均一でかつ導電性に優れるとともに密
着性にも優れた第1の金属層を積層、形成するのが容易
でなくなる。したがって電気めっきによる第2の金属層
の積層、形成も容易でなくなる。また印刷パターンそれ
自体の導電性も低下することから、電磁波シールドパタ
ーン全体としての導電性が低下して、電磁波シールド効
果に優れた電磁波シールドパターン、ひいては透光性電
磁波シールド部材が得られないおそれがある。
【0032】また逆に、導電性粉末の添加量がこの範囲
を超えた場合には、粉末同士を結合させるバインダー樹
脂の結合力が弱まるため、却って印刷パターンの導電性
が低下する結果、やはり電磁波シールドパターン全体と
しての導電性が低下して、電磁波シールド効果に優れた
電磁波シールドパターン、ひいては透光性電磁波シール
ド部材が得られないおそれがある。上記導電性粉末とと
もに導電性インキ組成物を形成する樹脂としては、熱硬
化性、紫外線硬化性、あるいは熱可塑性などの種々の樹
脂がいずれも使用可能であるが、特に印刷パターンの耐
熱性、耐候性などを考慮すると熱硬化性または紫外線硬
化性の樹脂が好適に使用される。
【0033】熱硬化性の樹脂としては、例えばポリエス
テル−メラミン、メラミン、エポキシ−メラミン、フェ
ノール、ポリイミド、熱硬化性アクリル、およびポリウ
レタンなどの各種樹脂が挙げられる。また紫外線硬化性
の樹脂としては、例えばポリエステル、ポリビニルブチ
ラール、アクリル、フェノール、ポリウレタンなどの各
種樹脂が挙げられる。また前者の熱硬化性の樹脂を使用
する際に、例えば被印刷物の耐熱性などの関係で硬化温
度を高くできないようなときには、パラトルエンスルホ
ン酸やアミンでブロックしたパラトルエンスルホン酸、
あるいはブロックイソシアネートなどの硬化触媒を添加
してもよい。
【0034】溶剤は、上記樹脂を溶解して、当該樹脂と
導電性粉末とを含む導電性インキ組成物の粘度を、凹版
オフセット印刷に適した範囲に調整するために添加され
るもので、かかる溶剤としては、例えばその沸点が15
0℃以上であるような従来公知の種々の溶剤が、好適に
使用される。溶剤の沸点が150℃を下回ると、印刷時
に乾燥しやすくなって、インキ組成物が経時変化を起こ
しやすくなるためである。
【0035】かかる溶剤の具体例としては、例えばアル
コール類〔ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、
デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカ
ノール、テトラデカノール、ベンタデカノール、ステア
リルアルコール、セリルアルコール、シクロヘキサノー
ル、テルピネオールなど〕や、アルキルエーテル類〔エ
チレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソル
ブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエ
チレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエ
ーテル(ブチルカルビトール)、セロソルブアセテー
ト、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテ
ート、ブチルカルビトールアセテートなど〕が挙げら
れ、この中から1種または2種以上が、印刷適性や作業
性等を考慮して適宜、選択される。
【0036】溶剤として高級アルコールを使用する場合
は、インキ組成物の乾燥性や流動性が低下するおそれが
あるため、これらよりも乾燥性が良好なブチルカルビト
ール、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチル
セロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート
などを併用すればよい。導電性インキ組成物にはさら
に、印刷パターンを黒色化して外光の反射を防ぐことで
画面のコントラストを向上させるために、カーボンブラ
ック等の黒色顔料を添加してもよい。
【0037】黒色顔料の添加量は、導電性インキ組成物
の総量中、0.5〜50重量%であるのが好ましい。黒
色顔料の添加量がこの範囲未満では、印刷パターンの表
面を黒色化して、画面のコントラストを向上させる効果
が十分に得られないおそれがあり、逆に上記の範囲を超
えた場合には、相対的に導電性粉末の含有割合が低下す
るため印刷パターンの導電性が低下する結果、電磁波シ
ールド効果に優れた電磁波シールドパターン、ひいては
透光性電磁波シールド部材が得られないおそれがある。
【0038】導電性インキ組成物は、上記の各成分を配
合し、十分に攪拌混合したのち、混練することによって
調製される。 〈透明基板〉上記導電性インキ組成物によって、その表
面に印刷パターンが形成される透明基板としては、可視
光線に対する十分な透光性を有するガラスやフィルムが
いずれも使用可能であるが、特にロール状にして連続処
理できる樹脂のフィルムやシートが好ましい。
【0039】フィルムやシートを形成する樹脂として
は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)に代
表されるポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレ
ンなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化
ビニリデンなどの含ハロゲン樹脂類、ポリスチレンなど
のスチレン系樹脂類、ポリエーテルスルホン、ポリカー
ボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂など
が挙げられ、中でも特に透光性が良好であり、かつ安価
であるうえ柔軟性に優れ、しかも導電性インキ組成物を
印刷した後、加熱工程もしくは紫外線照射工程を経る場
合にも熱変形などしない耐熱性を有するPETが、最も
好適に使用される。
【0040】透明基板の厚みは特に限定されないが、電
磁波シールド部材の透光性を維持するという観点からす
ると薄いほど好ましく、通常は、使用時の形態(フィル
ム状、シート状)や必要とされる機械的強度に応じて
0.05〜5mmの範囲で適宜、厚みが設定される。 〈凹版〉上記導電性インキ組成物を用いて、透明基板の
表面に、凹版オフセット印刷法によって印刷パターンを
形成する際に原版として使用される凹版としては、基板
の表面に、印刷パターンに対応した所定の凹部を形成し
た平板状のものや、平板状のものを円筒状に巻き付けた
もの、円筒状のもの、あるいは円柱状のものなどが挙げ
られる。
【0041】上記基板は、表面の平滑性が重要である。
平滑性が悪いと、インキ組成物をドクターブレードによ
って凹版の凹部に充てんする際に、凹版表面の、凹部以
外の個所にインキのかき残りが発生して、非画線部の汚
れ(地汚れ)が発生する。平滑性の程度については特に
限定されないが、十点平均粗さRzで表しておよそ1μ
m以下であるのが好ましく、0.5μm以下であるのが
さらに好ましい。かかる基板としては、例えばソーダラ
イムガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス、低アル
カリガラス、低膨張ガラスなどのガラス製の基板のほ
か、フッ素樹脂、ポリカーポネート(PC)、ポリエー
テルスルホン(PES)、ポリエステル、ポリメタクリ
ル樹脂等の樹脂板、ステンレス、銅、ニッケル、低膨脹
合金アンバー等の金属基板などが使用可能である。中で
も、最も安価に表面平滑性の良好な凹版を製造できる
上、パターンのエッヂ形状を非常にシャープに形成する
ことが可能なガラス製のものを用いるのが好ましい。
【0042】ただし、LSIなどの分野でフォトリソグ
ラフ用の印刷原版などに用いられるノンアルカリガラス
は非常に高価であるため、透光性電磁波シールド部材の
印刷パターン程度の精度であれば、ソーダライムガラス
で十分である。凹版の凹部は、フォトリングラフ法、エ
ッチング法もしくは電鋳法等により形成される。凹部の
深さは、目的とする印刷パターンの厚みに応じて適宜、
設定すればよいが、凹部内へのインキの残り(通常は、
その深さの約半分量程度のインキが凹部内へ残る)や、
あるいは溶剤の蒸発による印刷後の厚みの減少などを考
慮すると、およそ1〜50μm、特に3〜20μmであ
るのが好ましい。
【0043】〈転写体〉上記凹版とともに凹版オフセッ
ト印刷法に使用される転写体としては、その表面がイン
キの離型性に優れたものであれば特に限定されないが、
インキ離型性を示す指標としての表面エネルギーの値が
15〜30dyn/cm、特に18〜25dyn/cm
であるものが、転写体として好ましい。かかる転写体と
しては、少なくともその表面層がシリコーンゴム、フッ
素樹脂、フッ素ゴムまたはこれらの混合物などで形成さ
れた種々のものが挙げられるが、中でもシリコーンゴム
がインキ離型性に優れており、凹版から転写されたイン
キをほぼ100%、被印刷物上に転写できるため好適に
使用される。
【0044】またシリコーンゴムとしては加熱硬化型
(HTV)、室温硬化型(RTV)等の種々のシリコー
ンゴムが挙げられるが、特に室温硬化型の付加型シリコ
ーンゴムは硬化の際に副生成物を全く発生せず、寸法精
度において優れているので、好適に使用される。上記シ
リコーンゴムなどで形成される転写体の表面層の硬さ
は、印刷精度などを考慮すると、日本工業規格JISK
6301に規定されたスプリング式硬さ(JIS A)
で表して20〜70°、特に30〜60°であるのが好
ましい。
【0045】すなわち表面層の硬さがこの範囲を超える
硬い転写体は、凹版オフセット印刷において凹版に圧接
した際に、上記表面層が凹部内に十分に圧入されないた
めに、凹部内のインキが転写体の表面に十分に転写され
ず、精度のよい印刷を行えないおそれがある。また逆
に、表面層の硬さがこの範囲未満の柔らかい転写体は、
凹版オフセット印刷において凹版や被印刷物に圧接した
際に、上記表面層の変形が大きくなるために、やはり精
度のよい印刷を行えないおそれがある。
【0046】また転写体の表面は、これも印刷精度など
を考慮すると平滑で、その表面の凹凸などが印刷に影響
を及ぼさないことが好ましく、具体的には十点平均粗さ
で表して1.0μm以下、特に0.5μm以下であるの
が好ましい。転写体の形状はブランケット状(シート
状)のもの(円筒状の胴に巻き付けるなどして使用)、
ローラ状のもの、あるいは印刷ずれの生じないものであ
ればパット印刷等に用いられる曲面状の弾性体などであ
ってもよい。
【0047】〈印刷パターン〉透明基板の表面に印刷形
成される印刷パターンは、前述したように、その線幅が
5〜40μmで、かつ式(1): 1≦Sk/Ss≦9 (1) 〔式中Ssは、透明基板の表面における印刷された領域
の全表面積、Skは印刷されていない領域の全表面積を
示す〕を満足するものである必要がある。その理由は以
下のとおりである。
【0048】発明者のうち近藤は先に、線幅5〜80μ
m、線間隔200〜3000μmのストライプパターン
が、周波数1〜500MHzでの電界成分を十分にカッ
トできる性能を有することを見出した。しかし発明者ら
がさらに検討したところ、この線幅の範囲では、特に周
波数が500MHzを超える領域での電磁波シールド性
能が不十分であり、前述したPDP用途で要求される厳
しい電磁波シールド性能、具体的には周波数0.1MH
z〜1GHzでの電界成分を十分にカットする性能を達
成できない場合のあることが明らかとなった。
【0049】そこで発明者らは、前記導電性インキ組成
物からなる印刷パターンと、後述する金属層との積層構
造を有するストライプ状のモデルパターンを作製して、
等価回路から、印刷パターンの線幅および開口率〔印刷
されていない領域の割合、式(2): 開口率(%)=Sk/(Sk+Ss)×100 (2) で求められる。〕と、電磁波シールド性能との関係につ
いて検討を行った。
【0050】その結果、同じ開口率であれば線幅の細い
方が、電磁波シールド性能が向上することが明らかとな
った。つまり、開口率によって規定される透光性を落と
さずに電磁波シールド性能を向上させて、上記PDP用
途で要求される厳しい電磁波シールド性能を達成するた
めには、できるだけ線幅の細いパターンを数多く形成す
ればよく、その具体的な範囲について検討したところ、
線幅が40μm以下であればよいことを見出した。
【0051】また、線幅の下限値についても検討を行っ
たところ、線幅が5μm未満では、印刷パターンを形成
する際に断線が発生しやすくなって、良品を安定して生
産できないことも判明し、これらの結果から印刷パター
ンの線幅は、5〜40μmの範囲内である必要のあるこ
とが明らかとなった。また前記開口率が高いほど、透光
性の指標である可視光線の透過率は向上するが、逆に電
磁波シールド性が低下するので、その兼ね合いを考慮す
ると開口率は50〜90%の範囲内である必要があるこ
とも判明した。
【0052】そこでこの開口率の範囲と、上記線幅の範
囲とをもとに、透明基板の表面における印刷された領域
の全表面積Ssと、印刷されていない領域の全表面積S
kとの比Sk/Ssを求めたところ、前記のように1〜
9の範囲内である必要のあることが明らかとなったので
ある。なおPDP用途で要求される厳しい電磁波シール
ド性能を達成するためには、開口率は、上記の範囲内で
も特に60〜80%であるのが好ましく、この開口率の
範囲と、線幅(=5〜40μm)とから、上記比Sk/
Ssのより好適な範囲を求めたところ2〜7であること
も明らかとなった。
【0053】印刷パターンの形状は、例えば図1(a)お
よび図2に示す、前述したストライプ状の他、図3〜図
5に示す格子状などが好適に採用される。このうちスト
ライプ状の印刷パターン10においては、例えば図2に
示すように、当該印刷パターン10を構成する各インキ
層10aの線幅Wsと、インキ層10a間の、透明基板
2が露出した領域の幅Wkと、そしてインキ層10aの
本数とを調整することで、比Sk/Ssが前記の範囲に
規定される。
【0054】また同様に図3、図4に示す格子状の印刷
パターン10においては、それぞれの図に示すように縦
方向および横方向のインキ層10b、10cの線幅Ws
1、Ws2と、上記両方向のそれぞれにおける、インキ層
10b、10c間の、透明基板2が露出した領域の幅W
1、Wk2と、そして両方向のインキ層10b、10c
の本数とをそれぞれ調整することで、比Sk/Ssが前
記の範囲に規定される。
【0055】また図5は、正方形の格子状の印刷パター
ン10であって、縦方向および横方向のインキ層10
b、10cの線幅Ws1、Ws2が同一(Ws1=Ws2
で、かつインキ層10b、10c間の、透明基板2が露
出した領域の幅Wk1、Wk2が同一(Wk1=Wk2)で
ある場合を示しており、この場合にもやはり上記線幅W
1、Ws2、および領域の幅Wk1、Wk2と、そして両
方向のインキ層10b、10cの本数とをそれぞれ調整
することで、比Sk/Ssが前記の範囲に規定される。
【0056】なおこの際、各図において各インキ層10
a、10b、10cの線幅Ws、Ws1、Ws2が、それ
ぞれ前述した5〜40μmの範囲に限定されることは言
うまでもない。また、表示画面のドットピッチとの関係
で、画像にモアレ縞(干渉縞)が生じないように、上記
線幅などに注意することも肝要である。上記以外の印刷
パターンとしては、例えば図6(a)に示す円形模様、図
6(b)に示す菱形模様、図6(c)に示す正六角形模様など
の幾何学模様が挙げられる。
【0057】上記各図において符号10aが、印刷パタ
ーン10を構成する各インキ層、符号2が、インキ層1
0a間で露出した透明基板を示すことは、先の各図の例
と同様である。なお図6(a)の円形模様の印刷パターン
10においては、当該円を同面積の正方形と置き換えた
と仮定したときに、隣り合う正方形間に設けられる印刷
パターンの幅を、線幅として規定する。
【0058】印刷パターン10の寸法、形状を規定する
他の数値については特に限定されないが、当該印刷パタ
ーン10を構成するインキ層10a、10b、10c
の、硬化後の膜厚は、前述したように断線などがなく、
原版に忠実な正確な印刷パターン10を得るとともに、
当該印刷パターン10の上に、無電解めっきによって第
1の金属層11を、これも原版に忠実な正確なパターン
でもって積層、形成するために、およそ0.5〜25μ
mであるのが好ましく、1〜10μmであるのがさらに
好ましい。
【0059】〈金属層〉本発明では、図2(b)に示した
ように、上記各印刷パターン10を構成するインキ層1
0aの上に、無電解めっきによって選択的に、第1の金
属層11を積層、形成し、次いでこの第1の金属層11
上に、当該第1の金属層11を電極(陰極)とする電気
めっきによって選択的に、第2の金属層12を積層、形
成することで、電磁波シールドパターン1が構成され
て、図2(a)に示すような透光性電磁波シールド部材が
完成する。
【0060】上記両金属層11、12を形成する金属と
しては、導電性にすぐれ、かつ無電解めっき、および/
または電気めっきが可能である種々の金属の組み合わせ
がいずれも使用可能である。金属の例としては銀、銅、
鉄、ニッケル、アルミニウムおよび金からなる群より選
ばれた少なくとも1種が挙げられ、特に導電性やコスト
の点で銀または銅が好適に使用される。また、第2の金
属層12の表面を黒色化して、主に内部発光の反射によ
る表示画面のコントラストの低下を防止するために、そ
の最表層に、黒色ニッケルめっきなどを施すこともでき
る。
【0061】第1および第2の金属層11、12の合計
の厚みは、良好な電磁波シールド効果を得ることを考慮
すると、0.5μm以上であるのが好ましい。また膜厚
が厚すぎても、それ以上の電磁波シールド効果が得られ
ないだけでなく、めっき工程の全体に長時間を要するた
めに生産性やコストの点で問題を生じるおそれがあるた
め、合計の厚みは25μm以下であるのが好ましい。な
お合計の膜厚は、上記の範囲内でも特に1〜10μmで
あるのがさらに好ましい。
【0062】また、個々の金属層11、12の厚みは特
に限定されないが、第1の金属層11は、第2の金属層
12を電気めっきによって積層、形成する際に電極とな
りうる導電性さえ有していれば、前述した生産性やコス
ト等を考慮して、できるだけ薄く形成するのが望まし
く、具体的には0.25〜2μmであるのが好ましい。
一方、第2の金属層12は、上記第1の金属層11の厚
みを補って、前述した合計の厚みの好適な範囲とするの
に必要な厚みを有しているとともに、積層構造を採用し
たことによる、第1の金属層11の膜厚を小さくして生
産性を高め、かつコストを引き下げる効果をより一層、
明確なものにする必要がある。そのためこの発明では、
前記のように第2の金属層12の厚みを、第1の金属層
11の厚みの1.2〜10倍とする必要がある
【0063】〈電磁波シールドパターン〉印刷パターン
と、第1および第2の金属層とで構成される電磁波シー
ルドパターンの総厚みは、本発明では1〜50μmに限
定される。総厚みが1μm未満では断線が発生しやすく
なり、また導電性が低下して良好な電磁波シールド効果
が得られないという問題を生じる。一方、総厚みが50
μmを超えた場合には生産性が低下するだけでなく、表
示の視認性が著しく悪くなるという問題を生じる。
【0064】なお総厚みは、上記の範囲内でも特に2〜
20μm程度であるのが好ましい。
【0065】
【実施例】以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて
説明する。なお、各実施例、比較例で製造した透光性電
磁波シールド部材について、以下の各試験を行って、そ
の特性を評価した。 電磁波シールド効果試験 各実施例、比較例の透光性電磁波シールド部材を縦20
cm×横20cmに切り出し、クローズセルに挟みこん
で作製したサンプルについて、社団法人関西電子工業振
興センターが制定したKEC法によって、周波数0.1
MHz〜1GHzの範囲の電磁波の減衰率(dB)を測
定して、上記周波数範囲での、各サンプルの電磁波シー
ルド効果を評価した。
【0066】なお後述する表には、シールド効果の指標
として、周波数1GHzでの電磁波の減衰率(dB)
を、下記の評価基準で評価した結果を示す。 (評価基準) ××:0〜20dB ×:20〜40dB △:40〜60dB ○:60〜70dB ◎:70dB超 透光性試験 各実施例、比較例の透光性電磁波シールド部材におけ
る、可視光線(波長400〜700nm)の分光透過率
を測定した。そしてその最低値を指標として、各透光性
電磁波シールド部材の透光性を、下記の評価基準で評価
した。
【0067】(評価基準) ××:0〜50% ×:50〜60% △:60〜70% ○:70〜80% ◎:80%超 視認性試験 各実施例、比較例の透光性電磁波シールド部材を、電磁
波シールドパターンを内側にして、PDPパネルの表示
画面に、アクリル系透明粘着剤を介して接着したのち、
表示画像の視認性を下記の基準で評価した。
【0068】(評価基準) ×:全面にわたってムラやメッシュが見られた。 △:かすかにムラやメッシュが見られた。 ○:ムラやメッシュは全く見られなかった。またコント
ラストも十分に高く、良好な画像が得られた。 ◎:ムラやメッシュが全く見られない上、コントラスト
が著しく高く、きわめて良好な画像が得られた。
【0069】製造コスト比較 以下に述べる実施例1において、透光性電磁波シールド
部材の製造に要した製造コストを1としたときの、各実
施例、比較例の製造コストを比較した。 実施例1 〈導電性インキ組成物の作製〉下記の各成分を十分に攪
拌混合し、3本ロールで混練して導電性インキ組成物を
作製した。
【0070】 (成分) (重量部) ・導電性粉末 フレーク状銀粉末 800 (平均粒径5μm) ・黒色顔料 アセチレンブラック 5 ・樹脂 ポリエステル樹脂 80 〔無水トリメリト酸とネオペンチルグリコールとのエス
テル(重量平均分子量:20000)、住友ゴム工業
(株)製〕 メラミン樹脂 20 ・硬化触媒 パラトルエンスルホン酸 1 ・溶剤 ブチルカルビトールアセテート 40 〈透光性電磁波シールド部材の製造〉 (1) 印刷パターンの形成 上記で作製した導電性インキ組成物を、下記の凹版、お
よび転写体としてのシリコーンブランケットを使用した
凹版オフセット印刷法によって、透明基板としての、厚
み100μmの透明PETフィルムの表面に印刷した
後、クリーンオーブンにて100℃で20分間、加熱、
硬化させて、凹版のパターンに対応した、図5に示す正
方形の格子状で、かつインキ層10b、10cの厚み5
μm、線幅Ws1=Ws2=20μm、線間隔Wk1=W
2=100μm、Sk/Ss=2.27である印刷パ
ターン10を形成した。 (凹版)ソーダライムガラス製の基板の表面に、上記所
定のパターンに対応した凹部(深さ=5μm)をエッチ
ング形成したもの。 (シリコーンブランケット)最表層に、スプリング式硬
さ(JIS A)が40°の付加型RTVシリコーンゴ
ムの層(表面の十点平均粗さ0.1μm)を形成したも
の。
【0071】(2) 第1の金属層の形成 上記印刷パターンが形成されたPETフィルムを、液温
23℃の無電解銅めっき液〔奥野製薬工業(株)製の商品
名OPC750化学銅A〕に浸漬して5分間、無電解銅
めっきを行って、印刷パターン上に選択的に、厚み1μ
mの第1の金属層としての銅被覆層を積層、形成した。 (3) 第2の金属層の形成 無電解銅めっき後のPETフィルムを十分に水洗したの
ち硫酸酸銅めっき液に浸漬し、上記第1の金属層を陰極
として、2A/dm2の電流を流して電気銅めっきを行
って、当該第1の金属層の上に選択的に、厚み5μm
の、第2の金属層としての銅被覆層を積層、形成して、
前述した図5に示す正方形の格子状にパターン形成され
た電磁波シールドパターン(総厚み11μm)を有する
透光性電磁波シールド部材を製造した。
【0072】上記実施例1の透光性電磁波シールド部材
は、周波数0.1MHz〜1GHzの全範囲で、減衰率
が70dBを超えるというすぐれた電磁波シールド効果
を有するとともに、波長400〜700nmの、可視光
線の全波長範囲で分光透過率が80%を超えるという、
良好な透光性を有していることが確認された。また実施
例1の部材は視認性についても全く問題なく、良好な視
認性を有していることがわかった。
【0073】実施例2 実施例1で使用したのと同じPETフィルムの表面に、
実施例1と同様にして、同形状、同寸法でかつ厚み5μ
mの印刷パターンと、厚み1μmの、第1の金属層とし
ての銅被覆層とを積層、形成した。次いでこのPETフ
ィルムを十分に水洗したのち電界ニッケルめっき液に浸
漬し、上記第1の金属層を陰極として電気ニッケルめっ
きを行って、当該第1の金属層の上に選択的に、厚み5
μmの、第2の金属層としてのニッケル被覆層を積層、
形成して、前述した図5に示す正方形の格子状にパター
ン形成された電磁波シールドパターン(総厚み11μ
m)を有する透光性電磁波シールド部材を製造した。
【0074】上記実施例2の透光性電磁波シールド部材
は、やはり周波数0.1MHz〜1GHzの全範囲で、
減衰率が70dBを超えるというすぐれた電磁波シール
ド効果を有するとともに、波長400〜700nmの、
可視光線の全波長範囲で分光透過率が80%を超えると
いう、良好な透光性を有していることが確認された。ま
た実施例2の部材は視認性についても全く問題なく、良
好な視認性を有していることがわかった。なお、製造に
要したコストは実施例1と同じ1であった。
【0075】実施例3 凹版を変更して、印刷パターンの線幅Ws1=Ws2=4
0μm、線間隔Wk1=Wk2=250μm、Sk/Ss
=2.89としたこと以外は実施例1と同様にして、寸
法以外は同形状の電磁波シールドパターン(総厚み11
μm)を有する透光性電磁波シールド部材を製造した。
上記実施例3の透光性電磁波シールド部材は、やはり周
波数0.1MHz〜1GHzの全範囲で、減衰率が70
dBを超える、すぐれた電磁波シールド効果を有すると
ともに、波長400〜700nmの、可視光線の全波長
範囲で分光透過率が80%を超える、良好な透光性を有
していることが確認された。またこの実施例3の部材
は、実施例1と同等の良好な視認性を有していることも
確認された。なお、製造に要したコストは実施例1と同
じ1であった。
【0076】実施例4 フレーク状銀粉末に代えて、同量のフレーク状銅粉末
(平均粒径5μm)を使用したこと以外は実施例1と同
様にして導電性インキ組成物を作製し、かかる導電性イ
ンキ組成物を使用したこと以外は実施例1と同様にし
て、同寸法、同形状の電磁波シールドパターン(総厚み
11μm)を有する透光性電磁波シールド部材を製造し
た。
【0077】上記実施例4の透光性電磁波シールド部材
もまた、周波数0.1MHz〜1GHzの全範囲で、減
衰率が70dBを超える、すぐれた電磁波シールド効果
を有するとともに、波長400〜700nmの、可視光
線の全波長範囲で分光透過率が80%を超える、良好な
透光性を有していることが確認された。またこの実施例
4の部材は、実施例1と同等の良好な視認性を有してい
ることも確認された。なお、製造に要したコストは実施
例1と同じ1であった。
【0078】比較例1 特開平10‐163673号公報の実施例1と同様にし
て透光性電磁波シールド部材を製造した。すなわち透明
樹脂としてのポリビニルブチラールと、パラジウム触媒
とを含む塗布液を、透明基板としてのPETフィルムの
表面に塗布し、乾燥させて、上記パラジウム触媒を含む
透明樹脂塗膜を形成したのち、この上に無電解めっきを
施して、PETフィルムの全面に、厚み15μmの銅薄
膜を形成した。
【0079】つぎにこの銅薄膜の上に感光性のエッチン
グレジストを塗布したのち、露光、現像して、実施例1
の印刷パターンと同寸法、同形状のレジストパターンを
形成した。そして、塩化第2鉄液に浸漬して銅薄膜をエ
ッチングすることで、上記レジストパターンに対応した
寸法、形状を有する電磁波シールドパターンを形成した
のち、レジストパターンをはく離、除去して透光性電磁
波シールド部材を得た。
【0080】上記比較例1の透光性電磁波シールド部材
もまた、周波数0.1MHz〜1GHzの全範囲で、減
衰率が70dBを超える、すぐれた電磁波シールド効果
を有するとともに、波長400〜700nmの、可視光
線の全波長範囲で分光透過率が80%を超える、良好な
透光性を有していることが確認された。またこの比較例
1の部材は、実施例1と同等の良好な視認性を有してい
ることも確認された。ただし、製造に要したコストは実
施例1の5倍の5であった。
【0081】比較例2 特公平2‐48159号公報の実施例1と同様にして透
光性電磁波シールド部材を製造した。すなわち透明基板
としてのPETフィルムの表面に、スクリーン印刷法に
よって、紫外線硬化型の導電性銀ペーストを印刷したの
ち、紫外線を照射してペーストを硬化させて、線幅10
0μm、線間隔1mm、Sk/Ss=4.76、厚み2
0μmの電磁波シールドパターンを有する透光性電磁波
シールド部材を得た。
【0082】上記比較例2の透光性電磁波シールド部材
は線幅が太すぎるとともに、線間隔が広すぎるために、
とくに周波数500MHz以上の範囲での減衰率が20
〜40dB程度と低く、かかる周波数範囲での電磁波シ
ールド効果が不十分であることがわかった。また、波長
400〜700nmの、可視光線の全波長範囲で分光透
過率が80%を超えることから、透光性は良好であるこ
とが確認されたが、線幅が太すぎるために視認性が悪い
ことがわかった。なお、製造に要したコストは実施例1
の半分の0.5であった。
【0083】比較例3 印刷パターン上に第1および第2の金属層をいずれも積
層、形成しなかったこと以外は実施例4と同様にして透
光性電磁波シールド部材を得た。上記比較例3の透光性
電磁波シールド部材は良好な透光性、視認性を有してい
るものの、減衰率が30dBと低く、電磁波シールド効
果が不十分であることがわかった。なお、製造に要した
コストは実施例1の半分の0.5であった。
【0084】比較例4 第2の金属層を省略したこと以外は実施例1と同様にし
て透光性電磁波シールド部材を得た。上記比較例4の透
光性電磁波シールド部材は良好な透光性、視認性を有し
ているものの、減衰率が40〜60dBとやや低く、電
磁波シールド効果が未だ十分でないことがわかった。な
お、製造に要したコストは実施例1の0.8倍の0.8
であった。
【0085】比較例5 第1の金属層を省略したこと以外は実施例1と同様にし
て透光性電磁波シールド部材を得たが、印刷パターンの
導電性が十分でなかったために、電気めっきによって均
一な膜形成ができず、第2の金属層の厚みにばらつきが
生じた。また第2の金属層の形成には長時間を要した。
上記比較例5の透光性電磁波シールド部材は良好な透光
性、視認性を有しているものの、減衰率が40〜60d
Bとやや低く、電磁波シールド効果が未だ十分でないこ
とがわかった。また、上記のように第2の金属層の形成
に長時間を要した結果、製造に要したコストは実施例1
の1.5倍の1.5であった。
【0086】以上の結果を表1にまとめる。
【0087】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透光性電磁波シールド部材の、実施の
形態の一例を示す図であって、同図(a)は全体を示す斜
視図、同図(b)は同図(a)のB−B線拡大断面図である。
【図2】本発明の透光性電磁波シールド部材における、
印刷パターンの一例としてのストライプ状のパターンを
示す平面図である。
【図3】印刷パターンの他の例としての、格子状のパタ
ーンを示す平面図である。
【図4】印刷パターンのさらに他の例としての、別の格
子状のパターンを示す平面図である。
【図5】印刷パターンのさらに他の例としての、さらに
別の格子状のパターンを示す平面図である。
【図6】印刷パターンのさらに他の例としての幾何学模
様のパターンを示す平面図であって、同図(a)は円形模
様のパターン、同図(b)は菱形模様のパターン、同図(c)
は正六角形模様のパターンである。
【符号の説明】
1 電磁波シールドパターン 10 印刷パターン 11 第1の金属層 12 第2の金属層 2 透明基板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開2000−196286(JP,A) 特開 平11−233992(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G09F 9/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明基板の表面に、導電性粉末を含む導電
    性インキ組成物を印刷して形成された、その線幅が5〜
    40μmで、かつ式(1): 1≦Sk/Ss≦9 (1) 〔式中Ssは、透明基板の表面における印刷された領域
    の全表面積、Skは印刷されていない領域の全表面積を
    示す〕を満足する、ストライプ状、格子状または幾何学
    模様からなる印刷パターンと、当該印刷パターン上に、
    無電解めっきによって選択的に積層、形成された第1の
    金属層と、この第1の金属層を電極として使用して、そ
    の上に、電気めっきによって選択的に積層、形成され
    、第1の金属層の厚みの1.2〜10倍の厚みを有す
    第2の金属層とによって、総厚み1〜50μmの電磁
    波シールドパターンが構成されたことを特徴とする透光
    性電磁波シールド部材。
  2. 【請求項2】第1の金属層と第2の金属層の、合計の厚
    みが0.5〜25μmであることを特徴とする請求項1
    記載の透光性電磁波シールド部材。
  3. 【請求項3】第1および第2の金属層が、それぞれ銀、
    銅、ニッケル、アルミニウムおよび金からなる群より選
    ばれた少なくとも1種の金属によって形成されたことを
    特徴とする請求項1記載の電磁波シールド部材。
  4. 【請求項4】インキ離型性に優れた転写体を用いた凹版
    オフセット印刷法により、透明基板の表面に、導電性粉
    末を含む導電性インキ組成物を印刷して、その線幅が5
    〜40μmで、かつ式(1) 1≦Sk/Ss≦9 (1) 〔式中Ssは、透明基板の表面における印刷された領域
    の全表面積、Skは印刷されていない領域の全表面積を
    示す〕を満足する、ストライプ状、格子状または幾何学
    模様からなる印刷パターンを形成し、次いでこの印刷パ
    ターン上に、無電解めっきによって選択的に、第1の金
    属層を積層、形成したのち、この第1の金属層を電極と
    して使用して、その上に、電気めっきによって選択的
    に、第2の金属層を積層、形成して、総厚み1〜50μ
    mの電磁波シールドパターンを構成することを特徴とす
    る電磁波シールド部材の製造方法。
  5. 【請求項5】転写体として、導電性インキ組成物と直接
    に接触する表面がシリコーンゴムにて形成されたものを
    用いることを特徴とする請求項4記載の透光性電磁波シ
    ールド部材の製造方法。
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