JP4443150B2 - オフセット印刷装置およびそれを用いるプラズマディスプレイ用電極パターンの印刷方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフセット印刷装置とそれを用いるプラズマディスプレイ用電極パターンの印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オフセット印刷は、凹版に供給されたインキを、表面がゴム層で構成されたブランケット(転写体ロール)に一旦転移した後に、被印刷体に転写する印刷方法である。
近年、オフセット印刷は液晶用カラーフィルタ、配線パターン、プラズマディスプレイ(PDP)用電極パターンを印刷形成に利用するための検討が盛んに進められている。なかでも、PDPは、自己発光型で電力消費の低減を実現できること、薄型で大画面化が容易であること、液晶ディスプレイ(LCD)に比べて構造がシンプルであること、などの理由により、次世代の表示デバイスとして大きな需要が見込まれている。しかしながら、現状ではPDPの製造コストが極めて高く、家庭用向けの表示デバイスとして普及させる上での大きな障害となっており、オフセット印刷による電極パターン形成は、以下に述べるように、コスト低減にきわめて有効である。
【0003】
PDP電極10は、図3に示すように、バス電極(前面電極)11、透明電極12、透明誘電層13および保護層14を備える前面板(フロント基板)15と、アドレス電極(背面電極)21、誘電層22、保護層23、リブ24および蛍光層25(R,G,B)を備える背面板(リア基板)20とを、双方の基板上に設けられた電極11,12,21が蛍光層25を介して向かい合うように配置されたものである。ここで、バス電極11は、透明電極(ITO)12側から黒色電極とバス主電極を積層した2層から構成される。
【0004】
バス電極のパターンは、従来、前面板の表面全面に黒色の感光性ペーストを塗布し、さらに感光性銀ペースト(例えばデュポン社製の製品名「フォーデル(R) 」)を塗布して所定の厚み(5〜10μm)となるように調整し、これを乾燥させた後、当該パターンの形状に応じて露光および現像することよりなる、フォトリソグラフィーによって主に形成されている。
この場合、バス電極のパターンは、通常、その線幅が数十μmであり、ピッチが数百μm程度であることから、前面板の表面全面に塗布された黒色ペーストと銀ペーストの大半は露光・現像処理後に洗浄、除去されることとなって、パターン形成材料の無駄が多くなる。しかも、黒色の感光ペーストと感光性銀ペーストとのそれぞれにおいて塗布、露光、現像等の処理を繰り返す必要があることから、バス電極の製造に多大なコストを要することとなる。さらには、感光性の黒色ペーストや銀ペーストがいずれも高価であって、廃棄された銀ペーストから銀のみを回収する工程が提案されてはいるものの、回収にかかるコストも極めて大きいという問題がある。
【0005】
これらの問題を解決するために、PDP用電極パターンをフォトリソグラフィーに代えてオフセット印刷により形成方法が進められている(例えば、特許文献1参照)。また、オフセット印刷をエレクトロニクス分野に対応させること目的に、転写体ロールの弾性体層の潰し量を可変する手段を設けることと、それに加えて弾性体層に、加熱冶具、冷却冶具、およびクリーニング冶具を設けたオフセット印刷機が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−245931号公報(請求項1、図1など)
【特許文献2】
特開平7−81038号公報(請求項4〜6、[0023]〜[0025]、図2など)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
PDP用電極パターンをオフセット印刷するにあたっては、微細なパターンを精度よく、しかも安定に連続印刷できることが工業上実施するにあたって重要になる。連続印刷などの印刷適性は、PDP電極パターンの印刷に用いるインキによって左右されることが多い。PDP電極パターン形成用インキは、導電性金属粉末、ガラスフリット、黒色金属類粉末などの無機成分と、これらに印刷性を付与するために樹脂および溶剤などの有機性成分とを電極パターンの機能目的応じて配合することによって調製される。このインキを用いてオフセット印刷するとき、インキに含まれる溶剤が印刷性に影響を与える重要な因子となる。
【0008】
すなわち、印刷時にはインキ中の溶剤が常にブランケットの表面に接触するために、その表面ゴムは溶剤で膨潤し表面の濡れ特性が変化する。一般的には、ブランケットの膨潤が少ない溶剤を用いれば表面濡れ性の変化が少なくなり安定した印刷が可能となる。しかし、ブランケット本来の機能であるインキ受理性は若干膨潤する溶剤を選択する方が良好であり、その目的で溶剤を決めざるを得ないことが多い。この場合、連続印刷すると膨潤し、ブランケット表面の濡れ性の変化が大きくなり安定した印刷ができなくなるという問題を生ずる。表面濡れ性が増加すると、例えば、印刷パターンの線幅が広がってくること、版表面の微小な汚れまで転写すること、被印刷体への転写が悪くなること、などの問題が出てくる。本発明は、これらの課題を解決しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らはPDP電極パターンを印刷性能よく、しかも連続印刷性に適したオフセット印刷方式について鋭意検討した結果、以下のオフセット印刷装置とそれを用いるプラズマディスプレイ用電極パターンの印刷方法の印刷方法に到達したものである。
1)印刷版に充填されたインキを、ブランケットロールを介して被印刷体に転写させて印刷するオフセット印刷装置であって、前記ブランケットロールの表面から、インキに含まれる溶剤を主とする揮発成分を除去するための加熱を行なう乾燥手段と、加熱による乾燥処理されたブランケットロールを印刷版に接触させたときに印刷版が膨張しないようにブランケットロールの表面温度を下げて冷却するようにブランケットロール表面に接触回転する金属ロールよりなる冷却手段とを備えており、前記接触回転時における金属ロールの表面速度Aとブランケットロールの表面速度Bとの関係がA>Bとなるように構成されており、かつ前記金属ロールの表面に接触して設けたブレードによりその表面をクリーニングするための手段を備えていることを特徴とするオフセット印刷装置。
【0010】
2)前記金属ロールの表面速度Aとブランケットロールの表面速度Bとの関係が式(1):
0.5(%)≦(A−B)/B(%)≦50(%) (1)
を満足するように構成されていることを特徴とする上記1)項記載のオフセット印刷装置。
3)前記金属ロールの表面粗度が十点平均粗さ(Rz)で0.001〜5μmであることを特徴とする上記1)または2)項記載のオフセット印刷装置。
【0011】
4)プラズマディスプレイ用電極パターンをオフセット印刷するに際し、
印刷版に充填されたインキを、ブランケットロールを介して被印刷体に転写させて印刷するオフセット印刷装置であって、前記ブランケットロールの表面から、インキに含まれる溶剤を主とする揮発成分を除去するための加熱を行なう乾燥手段と、加熱による乾燥処理されたブランケットロールを印刷版に接触させたときに印刷版が膨張しないようにブランケットロールの表面温度を下げて冷却するようにブランケットロール表面に接触回転する金属ロールよりなる冷却手段とを備えており、前記接触回転時における金属ロールの表面速度Aとブランケットロールの表面速度Bとの関係がA>Bとなるように構成されており、かつ前記金属ロールの表面に接触して設けたブレードによりその表面をクリーニングするための手段を備えている印刷装置を用いて、
印刷版、ブランケットロール、および被印刷体の各表面の温度差を5℃以内に調整しながら印刷する、
ことを特徴とするプラズマディスプレイ用電極パターンの印刷方法。
【0012】
5)前記金属ロールの表面速度Aとブランケットロールの表面速度Bとの関係が式(1):
0.5(%)≦(A−B)/B(%)≦50(%) (1)
を満足するように構成されており、かつ前記金属ロールの表面粗さが十点平均粗さ(Rz)で0.001〜5μmであるオフセット印刷装置を用いることを特徴とする上記4)項記載のプラズマディスプレイ用電極の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明に係るオフセット印刷装置とそれを用いるオフセット印刷方法の一工程例を示す模式図である。
図1および図2に示すオフセット印刷装置1は、印刷用ブランケットロール2と、その表面を乾燥する手段(この装置例では、温風噴射口4および赤外線照射装置5を備える)と、その表面に接触回転する冷却手段用の金属ロール6と、その金属ロール表面をクリーニングするためのクリーニング手段7を備えて構成される。オフセット印刷に際して、印刷版(凹版)30に充填されたインキが、上記の印刷用ブランケットを介して被印刷体(被転写体)33に転写される。このオフセット印刷装置は、定盤16の上に載置されている。
【0014】
図1(a) に示すように、印刷版(凹版)30の画線部(凹部)にスキージ35を用いて印刷インキ34が充填され、同図(b) 〜(c) に示すように、定盤16を移動しかつブランケット胴3を回動することで、印刷版30から印刷用ブランケット31へと印刷インキ34が転写される。さらに、図2(d) 〜(e) に示すように、定盤16を移動し、被印刷体33上で印刷用ブランケット2を接触させつつブランケット胴3を回動することによって、印刷用ブランケット2から被印刷体33へと印刷インキが転写されて、被印刷体33上に印刷パターン34aが形成される(同図(f) )。
【0015】
こうして、一連の転写工程を終えた後、図2(f) に示すように、印刷用ブランケット2に乾燥手段の温風噴射口4からの温風の噴射と赤外線照射装置5からの赤外線(IR)照射とによる乾燥処理が行われ、引き続いて、冷却手段としての金属ロール6と接触回転させることによる冷却処理が行われる。金属ロール7は、冷却機能と共に、ブランケット表面に残存インキ、異物、汚れなどの印刷性低下物が堆積しないように、印刷ごとに除去する機能も有する。金属ロールに移行した印刷性低下物は、クリーニング手段7によって除去廃棄される。クリーニング手段としては、図1および2に示すように金属ロールの表面に当接させてブレードを設けることや、別の手段として金属ロールと接触回転するように粘着ロールを設けてもよい。
【0016】
以下に本発明のオフセット印刷装置の各構成手段と印刷方法についてさらに説明する。
〔ブランケットロール〕
ブランケットロール(転写体ロール)は、印刷版からインキパターンを受理し、被印刷体に転写するための機能を有する。本発明のオフセット印刷法において、PDP電極のような微細パターンを高い精度でもって印刷するために、印刷用ブランケットは、硬さ(JIS A硬度)が20〜80、表面粗さ(十点平均粗さRz)が0.01〜3μmの、表面ゴム層を備えるものであって、当該表面ゴム層はシリコーンゴムで構成されているものが好ましい。
【0017】
表面ゴム層の硬さが上記範囲を超えると、印刷時に表面ゴム層の変形が生じにくくなって、印刷版のインキの受理性が低下するおそれがある。逆に、表面ゴム層の硬さが上記範囲を下回ると、印刷時における表面ゴム層の変形の程度が大きくなって、印刷精度の低下を招くおそれがある。表面ゴム層の硬さは、上記範囲(JIS A硬度)の中でも特に20〜70°であるのが好ましく、30〜60°であるのがより好ましい。
【0018】
表面ゴム層の表面粗さは、印刷形成するパターンが微細なものとなるほど、印刷形状に大きな影響を及ぼす。PDP用前面板のバス電極を形成する場合には、インキパターンに求められる線幅は数十μm程度、より具体的には20μm程度であることから、表面ゴム層の表面粗さは、インキパターンの印刷形状を良好なものにするという観点から、10点平均粗さ(Rz)で0.01〜3μmであることが求められる。
【0019】
表面ゴム層の10点平均粗さ(Rz)が上記範囲を超えると、パターンのエッジ形状がシャープでなくなるなど、その印刷形状が低下するおそれがある。一方、表面ゴム層の10点平均粗さ(Rz)が上記範囲を下回る程度にまで小さくすることは困難であって、しかも表面粗さが極端に小さいとかえってインキの受理性が低下するおそれがある。表面ゴム層の10点平均粗さ(Rz)は、上記範囲の中でも特に0.01〜0.5μmであるのがより好ましい。
【0020】
表面ゴム層の厚みは、印刷時の変形の程度に応じて設定されるものであって、通常、1〜1500μmの範囲で設定される。表面ゴム層の厚みが1μmを下回ると、印刷時に表面ゴム層の変形が生じにくくなって、印刷版のインキの受理性が低下するおそれがある。逆に、表面ゴム層の厚みが1500μmを超えると、印刷時における表面ゴム層の変形の程度が大きくなって、印刷精度の低下を招くおそれがある。
【0021】
表面ゴム層を形成する材料としては、前記のように、シリコーンゴムが好ましいが、それ以外にもインキの溶剤によってなるべく膨潤しにくい材料であれば使用可能であって、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等が挙げられる。
〔乾燥手段〕
ブランケットロールの表面は、インキに含まれる溶剤と接触することにより濡れ特性が変化し、膨潤するようになる。連続印刷する場合、この膨潤が進むことにより、PDP電極のような微細なパターンを精度よく印刷することが困難になり、例えばパターンの線幅が当初の設定よりも次第に広がってくるなどの現象が見られる。そこで本発明のオフセット印刷装置では、インキパターンを転写後、ブランケットの表面から、溶剤を主とする揮発成分を速やかに除去することを目的に、乾燥を行なうための乾燥手段が設けられている。
【0022】
上記の乾燥は、例えばブランケットの表面を40〜200℃、好ましくは50〜150℃に加熱すればよく、このためにはブランケットの表面を直接、加熱する方法、上記の温度の熱風を吹き付ける方法、あるいは赤外線を照射する方法などを、単独または組み合わせることにより実施できる。図1および2における乾燥冶具は、ブランケットロールの表面に温風噴射口4と赤外線照射装置5を併用した例を示す。
【0023】
温風噴射によるときは、パターンインキを被印刷体に転写したあと、そのブランケット表面に80〜500℃の熱風が5〜30秒程度吹きつけられる。例えば、転写工程毎に、ブランケットの表面上に設置したノズルから上記温度の温風を、設定時間、間歇的に吹き付けられる。直接加熱するときは、ブランケット胴3の内部に配置したヒータで印刷用ブランケット2の裏面から加熱したり、印刷用ブランケット2自体の内部に配置したヒータで加熱したりする(図示せず)といった方法を採用することができる。
【0024】
〔冷却手段としての金属ロール、およびクリーニング手段〕
インキパターンを転写した後のブランケットロールは、回転して次の印刷のためのインキパターンの受理が行なわれる。この場合、乾燥手段によって乾燥処理されたブランケットを表面温度が高い状態で印刷版30に接触させると、版が膨張し、印刷精度が低下する原因になる。版の表面温度は通常、±1℃以内の変動に保つことが要求される。このためには、通常、印刷を行うクリーンルームの温度が制御される。本発明のオフセット印刷装置では、乾燥のために加熱処理されたブランケットを、その表面温度が設定温度の+5℃以内の温度上昇に止まるように冷却するために金属ロール6が設けられている。
【0025】
金属ロール6は、ブランケットロールと接触して回転しており、熱交換作用によりブランケット表面の冷却を行なう。金属ロール6に冷却機能を持たせるために、ロール内部を中空耕造にして冷却管を配置しその中に、例えば冷却水を循環させて金属ロールの表面温度を結露しない下限温度から室温までの温度、例えば10〜23℃程度に保持する。これによって、加熱乾燥されたブランケットの表面が冷却される。このとき、ブランケット表面を設定温度の+5℃以内までに冷却できれば、版まで移行するときにさらに熱拡散が行なわれて、版の表面温度を±1℃の変動内に制御することが可能になる。冷却用金属ロールは、図1および2に示すように、1本のローラに限定することなく、複数個(2、3個)をブランケットロール表面に接触回転させてもよい。
【0026】
ブランケットロールの表面は、残存インキ、異物、汚れが付着してくると印刷性能低下の原因となる。本発明における金属ロールは、冷却機能と共に、これらの付着物がブランケット表面に堆積しないように、印刷ごとに除去する機能を有する。このために、金属ロール6はその表面速度Aが、ブランケットロールの表面速度Bよりも大きくなるように設定する。一般的に前記金属ロールの表面速度Aとブランケットロールの表面速度Bとの関係が、前記表面速度Bを100とするとき、式(1):
0.5(%)≦(A−B)/B(%)≦50(%) (1)
を満足するように設定するのが好ましく、1〜30%となるように設定するのがより好ましい。ここにおける表面速度は、各ロールの回転速度によって設定される。この回転速度差がないときはブランケット上の異物やインキをピッキングすることはできない。一方、回転速度差の上限は式(1)で示される程度がよく、あまりに大き過ぎるときは、ロールとブランケットとの間に磨耗が発生し、そのためにブランケット表面が粗くなり印刷品質を低下させることになり好ましくない。通常、式(1)に規定するように表面速度の関係を設定することにより、金属ロール上の異物や汚れの移行が防止され、かつブランケットを冷却するときの効率も上昇する。
【0027】
ブランケット表面に異物や汚れが付着することを防ぐためには、さらに金属ロールの表面粗度を十点平均粗さ(Rz)で0.001〜5μmにすることが好ましい。金属ロールの表面粗度を上記の範囲に調整するためには、例えば硬質クロム材料などで表面をコートしてから精密研磨などの方法により研磨すればよい。上記のように、金属ロールが目的とする機能をよりよく発揮させるためには、金属材料として、冷却用金属ローラは、印刷用ブランケットとの接触によって急速に除熱させることが必要となることから、これを形成する材料には、熱伝導率の高い材料を用いるのが好ましい。具体的には、銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄等の金属またはこれらの合金(例、42合金)などを選択するのが好ましく、冷却効率や耐久性の面からみるととりわけステンレスがより好ましく用いられる。
【0028】
次に、金属ロール上の残存インキ、異物、汚れなどは、当該金属ロールに接触して配置するクリーニング冶具によって除去・廃棄される。当該クリーニング手段としては、図1および2に示すように金属ロール6の表面に接触させてブレード7を設けることの外に、金属ロール6と接触回転するように粘着ロールを設けてもよい。前記ブレードとしては、例えばポリウレタン、ポリイソブチレン、ポリブチルゴムなどの樹脂で作製されたものが好ましく使用される。また、粘着ロールとしては、軟質または低硬質のウレタンゴムやポリイソブチレン系ゴム、ブチル系ゴムなどを表層ゴムとするロールが好ましく使用される。
【0029】
〔PDP電極パターンの印刷方法〕
本発明のオフセット印刷装置を用いるPDP電極パターンの印刷方法について説明する。PDP電極パターンは、PDP用前面板におけるバス主電極、黒色電極あるいはこれらを積層したバス電極や、背面電極のパターンを含み、これらのパターンをオフセット印刷することを対象とする。以下、PDP用前面板電極の印刷を例にあげて説明する。
【0030】
本発明によるPDP前面電極のパターン印刷は、前記の本発明のオフセット印刷装置を用いて、導電性金属インキ、黒色インキを積層印刷することによって行われる。この場合、前記金属ロールの表面速度Aとブランケットロールの表面速度Bとの関係は、前述のように、B>Aとし、好ましくは式(1)を満足するように制御する。
また、印刷版、ブランケットロールおよび被印刷体の各表面の温度差を5℃以内に調整するが、この調整は本発明のオフセット印刷装置を用いることによって達成できる。さらに、印刷版の表面温度の変化を±1℃以内に抑えることもできる。本発明の印刷方法によると、剛直な基板等に対しても、印刷版(凹版)から印刷用ブランケットに転移したインキを100%転写させることが可能になる。
【0031】
<パターン印刷用インキ>
バス主電極を印刷するためのインキ(以下、「導電性金属インキ」と称することがある)としては、導電性金属粉末およびガラスフリットと、焼成することにより除去可能な有機成分(樹脂、溶剤など)とを少なくとも含む成分を、混合・分散して作製したものが用いられる。
前記導電性金属粉末は、従来、バス電極の形成に用いられる種々の導電性金属の粉末を用いることができるが、バス電極の導電性をより優れたものとするためには、銀、銅、金、白金、アルミニウム、ニッケル、鉄およびパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の粉末を用いるのが好ましい。
【0032】
導電性金属粉末の粒径は、好ましくは0.05〜20μmの範囲であり、より好ましくは0.1〜5.0μmの範囲である。粒径が20μmを超えると、導電性金属粉末の堆積物を圧着する際にその表面が平坦化される程度が小さくなり、バス電極の平坦性が低下するおそれがある。逆に、粒径が0.05μmを下回ると、最終的に得られるバス電極の導電性が低下するおそれがある。一般的には、導電性金属粉末の粒子径を小さくすることで金属同士の溶融温度を下げることが可能となってプロセスを簡素化することができ、さらには、導電性を著しく改善させることができる。
【0033】
前記ガラスフリットは、従来使用されているもの、例えば軟化温度が400〜600℃であり、膨張係数α300が70×10-7〜95×10-7/℃、ガラス転移温度が400〜500℃であるものが使用できる。その例としては、Bi2O3/SiO2/B2O3系ガラス、Bi2O3/ZnO/B2O3系ガラス、PbO/SiO2/B2O3系ガラス、ZnO/B2O3アルカリ土類金属酸化物系ガラスなどが挙げられる。ガラスフリットの平均粒子径は0.1〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0034】
前記樹脂としては、熱硬化型、紫外線硬化型、熱可塑型等の各種の樹脂を使用することができる。熱硬化型樹脂としては、例えばポリエステル−メラミン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、アクリル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂(エチルセルロース等)、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、これらの樹脂の中でも特に、焼成によって(例えば400℃以上の高温での焼成によって)完全にCO2 とH2 Oとに分解するポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂(特にエチルセルロース)、アクリル樹脂等を用いるのが好適である。これらの樹脂は単独で、または印刷適性に応じて2種以上を適宜混合して用いることができる。
次に、インキの調製に用いる溶剤に関して、前述のとおり、印刷適性と深く関係する。すなわち、凹版オフセット印刷に使用する場合において、インキの溶剤は印刷用ブランケットの表面ゴム層と直接に接触して、当該表面ゴム層を膨潤させてその表面の濡れ特性を変化させる。一般に、表面ゴム層を膨潤させる程度が小さい溶剤であれば印刷を繰り返した場合であっても印刷用ブランケットの表面濡れ性の変化は少なく、安定した印刷を行なうことができる。逆に、表面ゴム層を膨潤させる程度が大きい場合には、印刷を繰り返すことで表面濡れ性が大きく変化してしまい、印刷するパターンの線幅が広がったり、印刷版の表面の微小な汚れまでも転写したり、印刷用ブランケットから被印刷物への転写効率が低下したりする問題を生じるなど、印刷の安定性が著しく低下することとなる。従って、膨潤の程度は小さいのが好ましいが、印刷凹版から印刷用ブランケットへのインキの受理性を考慮すると、ある程度の膨潤を生じる溶剤を使用せざるを得ない。
【0036】
このような状況下、本発明のオフセット印刷装置を用いることにより、ブランケットをある程度膨潤させる溶剤を用いたインキであっても、印刷するパターンの線幅が広がったり、印刷版の表面の微小な汚れまでも転写したり、印刷用ブランケットから被印刷物への転写効率が低下したりするといった問題点を生じることなく、安定に連続印刷することが可能になる
本発明において、前記導電性金属インキにおける各成分の配合割合は、前記のとおり、焼成後において導電性金属粉末を90〜99重量%およびガラスフリットを1〜10重量%の範囲で含有することを要件とし、さらにオフセット印刷性を考慮して決定されるが、例えば樹脂100重量部と、導電性金属粉末500〜2,500重量部、ガラスフリット10〜150重量部、溶剤50〜300重量部の割合であることが好ましい。これらの配合物を、例えば3本ロールを用いて、混合・分散することによって当該インキが作製される。
【0037】
次に、黒色電極を印刷形成するためのインキ(以下、「黒色インキ」と称することがある)としては、導電性金属粉末、黒色金属酸化物または/および黒色複合合金、ガラスフリット、および焼成することにより除去可能な有機成分(樹脂、溶剤など)とを少なくとも含む成分を、混合・分散して作製したものが用いられる。ここで、導電性金属粉末、ガラスフリット、および有機成分(樹脂、溶剤など)は、いずれも前記の導電性金属インキと同様のものを用いることができる。
【0038】
本発明における黒色金属酸化物および黒色複合合金は、常温で黒色であって、500〜700℃の温度で5〜60分焼成しても変色せず、また分解、昇華しない金属類であればよい。当該黒色金属酸化物としては、例えば酸化ルテニウム(RuO2)、酸化マンガン(MnO)、酸化モリブデン(MoO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化銅(CuO)、酸化チタン(TiO)、酸化パラジウム(PdO)および酸化鉄(Fe2O3)よりなる群から選択された1種または2種以上の金属酸化物が挙げられる。また、当該黒色複合合金としては、例えばCr−Co−Mn−Fe、Cr−Cu、Cr−Cu−Mn、Mn−Fe−Cu、Cr−Co−Fe、Co−Mn−Fe、Co−Ni−Cr−FeおよびCu−Fe−Crよりなる群から選択された1種または2種以上を挙げることができる。これらの黒色金属酸化物および黒色複合合金は、粒径が0.05〜20μm程度の粉末として添加される。
【0039】
当該黒色インキの配合割合は、焼成後において前記のとおりの、導電性金属粉末、黒色金属酸化物または/および黒色複合合金、およびガラスフリットを含有することを要件に、さらにオフセット印刷性などを考慮して決定される。印刷適性が低いと、バス電極に適した微細かつ高精度のパターンを形成することができなくなる。また、黒色度が低いと、PDPのコントラストの低下を招くことになる。
【0040】
黒色インキの好ましいに配合例は、樹脂100重量部、導電性金属粉末10〜1,000重量部、黒色金属酸化物または/および黒色複合合金500〜2,500重量部、ガラスフリット10〜150重量部、溶剤50〜500重量部の割合である。これらの配合物を、例えば3本ロールを用いて、混合・分散することによって当該インキが作製される。
前記黒色インキには、上記の成分に加えて、適宜、黒色顔料を併用してもよい。当該黒色顔料としては、例えばカーボンブラック、チタンブラック、黒鉛、その他黒色の顔料または染料等が挙げられる。黒色インキの印刷適性を考慮すると、黒色金属酸化物、複合合金、黒色顔料粉末の粒径は0.05〜20μmであるのが好ましい。
【0041】
前記の導電性金属インキおよび黒色インキには、他の無機成分を焼成時のパターン流延防止や、反射率や誘電率の制御などを目的として公知方法に従って添加することができる。他の無機成分の例として、酸化ホウ素、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ、シリケート、ステアタイト、ジルコン、フォルステライト、ベリリアなどが挙げられる。これらの無機成分を、平均粒径が0.05〜20μmの粉末とし、ガラスフリット100重量部に対して100〜500重量部の範囲で含有させることができる。
【0042】
<印刷凹版>
本発明において、凹版オフセット印刷法に用いられる凹版としては特に限定されるものではなく、従来公知のものを採用することができる。凹版パターンは、所望のプラズマディスプレイパネル用前面電極パターンに応じたものが用いられる。
<被印刷体>
PDP用の基板を被印刷体とする。PDP前面板は、透明基板を被印刷体とする。この透明基板は、透明性および耐熱性が高いことのほかには特に限定されるものではないが、例えばソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等のガラス基板が好適に用いられる。透明基板の材質は、上記例示のガラス基板等の中から、その耐熱性、耐薬品性、透過性等の各種特性に応じて適宜選択される。
【0043】
<インキパターンの焼成>
前記の方法によって印刷された電極パターンを、焼成することによって目的とするPDP電極が得られる。インキパターンを焼成する際の条件は、従来の方法に準じて、導電性金属インキおよび黒色インキに使用する樹脂の種類(熱分解温度)、導電性金属粉末、ガラスフリットの種類(溶融点)等に応じて適宜設定されるものであるが、バス電極の導電性を優れたものにするという観点から、通常、焼成温度を200〜700℃の範囲で設定するのが好ましい。
【0044】
インキパターンの焼成温度が上記範囲にあるときは、インキパターン中の樹脂などの有機成分をほぼ完全に熱分解させることができ、かつ導電性金属粉末、黒色無機酸化物、ガラスフリットの溶融結合が行なわれ、2層構造を有するバス電極が作製される。それゆえ、前面板の全面側におけるバス電極表面の黒色度を維持しつつ、当該バス電極の導電性を優れたものとすることができる。インキパターンの焼成温度は、インキの樹脂を分解して導電性金属粉末を溶融させる温度であればよいが、上記範囲の中でも特に、400〜600℃であるのがより好ましい。
【0045】
<他の部材等>
PDP用前面板を形成するには、バス電極を形成するための黒色インキおよび導電性金属粉末、ならびにバス電極の基盤となる透明基板については前述のとおりであるが、その他の部材(例えば、透明電極、透明誘電体層、保護層等)や、その材料、形成方法等については本発明において特に限定されるものではなく、従来公知のPDP用前面板に準じて適宜設定、選択すればよい。
【0046】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
図1および2の構成を有するオフセット印刷装置を用いて、PDP前面板用の透明基板(対角42インチ)に、導電性ペーストインキによるパターンを印刷した。当該インキは、アクリル樹脂5重量%、平均粒径0.4μmの銀粉末87重量%、平均粒径0.5μmの酸化ビスマス系ガラスフリット3重量%、および溶剤(酢酸ブチルカルビトール)5重量%を、3本ロールを用いて混合・分散させて、作製した。オフセット印刷用凹版5には、ガラス基板上に線幅80μm、線間隔(ピッチ)360μm、深さ30μmのストライプ状パターン(凹部)を形成したものを使用した。
【0047】
印刷用ブランケット2には、シリコーンゴム[ゴム硬度JIS A:40、厚さ:300μm、表面粗さ(十点平均粗さRz):0.1μm]を表面ゴム層として備えるものを使用した。上記のシリコーンゴムには、常温硬化型付加型のシリコーンゴム〔信越化学工業(株)製の製品名「KE1600」〕を使用した。
電極パターンの印刷にあたっては、室温23℃±1℃に調整したクリーンルームにおいて、導電性金属粉末インキを、50mm/秒の表面速度Aで回転するブランケット2上に転移させた。その表面を、乾燥手段4により100℃の熱風を20秒、吹きつけることにより乾燥した。また、赤外線照射装置5により、適宜、乾燥を補った。次いで、ブランケットの表面に接触させて51mm/秒の表面速度Bで回転する金属ロール(鉄製、表面粗度Rz:0.1μm)6の中空(図示せず)に冷却水(23℃)を通すことにより、ブランケットの表面を冷却した。この場合、[(A−B)/B]×100の値は、1.9%となる。この印刷中、ブランケット表面の残存インキと汚れは、金属ロール6の表面に移行し、その金属ロール6に移行した残存インキと汚れはクリーニングブレード7により除去廃棄した。この印刷工程繰り返しても、凹版の表面温度が23±1℃に治まり、かつブランケット表面は乾燥を繰りかえし行なっても凹版表面と±5℃以内に治めることができた。この印刷方法によると、連続印刷性も良好でほとんど形状の変化もなく、42インチ面内で±10μmの印刷精度を確保することができて、PDP実装上全く問題のないレベルであった。
【0048】
比較例1
実施例1において、ブランケットの表面速度と金属ロールの表面速度をいずれも50mm/秒とした以外は、同様にして電極パターンの印刷を行った。この結果、ブランケット表面上の残存インキや汚れが除去されず、印刷精度が低下した。
【0049】
【発明の効果】
本発明のオフセット印刷装置を用いると、PDP電極の微細パターンを印刷精度よく、連続印刷することができる。従って、これまでのフォトリソグラフィー法によるパターン形成に比べて、PDP電極の製造コストを安くすることが可能であり、また廃液処理の問題も生じなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオフセット印刷装置の構成例と、それを用いる印刷工程例を示す。
【図2】図1のつづきを示す。
【図3】PDPの構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 オフセット印刷装置
2 ブランケットロール
3 ブランケット胴
4 乾燥手段(温風噴射口)
5 乾燥手段(赤外線照射装置)
6 金属ロール
7 クリーニングブレード
30 印刷版
33 被印刷体
34 印刷用インキ
Claims (5)
- 印刷版に充填されたインキを、ブランケットロールを介して被印刷体に転写させて印刷するオフセット印刷装置であって、前記ブランケットロールの表面から、インキに含まれる溶剤を主とする揮発成分を除去するための加熱を行なう乾燥手段と、加熱による乾燥処理されたブランケットロールを印刷版に接触させたときに印刷版が膨張しないようにブランケットロールの表面温度を下げて冷却するようにブランケットロール表面に接触回転する金属ロールよりなる冷却手段とを備えており、前記接触回転時における金属ロールの表面速度Aとブランケットロールの表面速度Bとの関係がA>Bとなるように構成されており、かつ前記金属ロールの表面に接触して設けたブレードによりその表面をクリーニングするための手段を備えていることを特徴とするオフセット印刷装置。
- 前記金属ロールの表面速度Aとブランケットロールの表面速度Bとの関係が式(1):
0.5(%)≦(A−B)/B(%)≦50(%) (1)
を満足するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷装置。 - 前記金属ロールの表面粗度が十点平均粗さ(Rz)で0.001〜5μmであることを特徴とする請求項1または2記載のオフセット印刷装置。
- プラズマディスプレイ用電極パターンをオフセット印刷するに際し、
印刷版に充填されたインキを、ブランケットロールを介して被印刷体に転写させて印刷するオフセット印刷装置であって、前記ブランケットロールの表面から、インキに含まれる溶剤を主とする揮発成分を除去するための加熱を行なう乾燥手段と、加熱による乾燥処理されたブランケットロールを印刷版に接触させたときに印刷版が膨張しないようにブランケットロールの表面温度を下げて冷却するようにブランケットロール表面に接触回転する金属ロールよりなる冷却手段とを備えており、前記接触回転時における金属ロールの表面速度Aとブランケットロールの表面速度Bとの関係がA>Bとなるように構成されており、かつ前記金属ロールの表面に接触して設けたブレードによりその表面をクリーニングするための手段を備えている印刷装置を用いて、
印刷版、ブランケットロール、および被印刷体の各表面の温度差を5℃以内に調整しながら印刷する、
ことを特徴とするプラズマディスプレイ用電極パターンの印刷方法。 - 前記金属ロールの表面速度Aとブランケットロールの表面速度Bとの関係が式(1):
0.5(%)≦(A−B)/B(%)≦50(%) (1)
を満足するように構成されており、かつ前記金属ロールの表面粗さが十点平均粗さ(Rz)で0.001〜5μmであるオフセット印刷装置を用いることを特徴とする請求項4記載のプラズマディスプレイ用電極の製造方法。
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