JP2004317990A - レンズ固定方法、レンズ固定装置、及びレンズ本体 - Google Patents
レンズ固定方法、レンズ固定装置、及びレンズ本体 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】光学的な不良率を大幅に低減させて光学性能を向上させる。
【解決手段】レンズ玉11を冷蔵庫等の冷却手段21により冷却し、レンズ玉11のレンズ直径を熱収縮によってDより小さくするステップS1と、レンズ枠13へレンズ玉11を収容するステップS2と、加熱手段21を用いて、レンズ玉11とレンズ玉11を収容したレンズ鏡筒12とをともに加熱するステップS3を経ることによって、レンズ玉11がレンズ枠13内に固定される。
【選択図】 図1
【解決手段】レンズ玉11を冷蔵庫等の冷却手段21により冷却し、レンズ玉11のレンズ直径を熱収縮によってDより小さくするステップS1と、レンズ枠13へレンズ玉11を収容するステップS2と、加熱手段21を用いて、レンズ玉11とレンズ玉11を収容したレンズ鏡筒12とをともに加熱するステップS3を経ることによって、レンズ玉11がレンズ枠13内に固定される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学機器の撮像部分に用いる小型レンズのレンズ玉をレンズ枠へ固定するレンズ固定方法及びこの方法にて固定されてできるレンズ本体に関し、特に、熱膨張及び熱収縮を用いるレンズ固定方法及び熱膨張及び熱収縮によりレンズ玉が固定されたレンズ本体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等の光学機器は、急速に普及し、小型化・軽量化が進んでいる。カメラレンズにあたる撮像部に限ってみればこの発展はさらに顕著であって、現在では、画像データ(動画像・静止画像)や音楽データを処理可能とする高性能電子機器や、これらの大容量データを送受信可能なネットワーク通信網の発展と相まって、ノート型PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistants)、さらには携帯電話にまで撮像部が設けられるようになった。
【0003】
小型化された撮像部のレンズ本体において、樹脂材料やガラス材料で加工されたレンズ玉を、このレンズ玉を支架するレンズ枠へと固定する方法には、熱かしめ法やUV接着法がある。
【0004】
熱かしめ法は、図11に示すように、レンズ本体50を作成するに際し、レンズ鏡筒52の端部に設けられたレンズ枠53に予め外部へと飛び出すような余長部分であるかしめリブ53aを形成しておき、レンズ受面53bにレンズ玉51を挿入したうえで、このかしめリブ53aを所定温度に加熱したかしめホーン60にて加圧曲げ変形してレンズ玉51の外縁部をレンズ枠53へと固定する方法である。
【0005】
また、UV接着法は、レンズ枠に収容されたレンズ玉をUVを照射することにより硬化する接着剤で固定する方法である
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、熱かしめ法は、かしめホーン60の温度を高くしすぎるとかしめリブ53a以外の部分にまで熱が伝導して変形が起こり、レンズ玉51の傾きや位置を設計通りの誤差範囲内で固定することが困難なことがあった。また、レンズ玉51に不要な力が加わるため、レンズの面精度を悪化させる原因にもなっていた。
【0007】
逆に、かしめホーン60の温度が低すぎると、かしめリブ53aを十分に曲げ変形させることができないために、やはりレンズ玉51を設計通りの誤差範囲内で固定することが困難な場合があった。また、かしめ圧力が強すぎたり弱すぎたりしても、設計通りの誤差範囲内でレンズ玉をレンズ枠に固定できない。特に、かしめ圧力が強すぎる場合、かしめリブが不均一に変形し、レンズ玉51に不均一な力が加わりレンズ玉51の面精度を悪化させていた。
【0008】
このように熱かしめ法は、温度条件とかしめ圧力の管理が非常に難しく、今後ますます求められるレンズ本体の小型化と高性能化に必要な高い固定位置精度を得ることが難しく、高度な温度条件或いはかしめ圧力の管理が必要になってきている。
【0009】
一方、UV接着法は、レンズ枠に収容されたレンズ玉をUV照射により硬化する接着剤で固定する方法であるが、接着剤が硬化する過程で接着剤が収縮することによりレンズ玉とレンズ枠との間に不均一な力が加わることがある。このような場合、熱かしめ法と同様にレンズ玉の位置決め精度を悪化させていた。この方法も、やはり、今後要求されるレンズ玉11の高い固定位置精度への対応が困難になってきている。
【0010】
また、熱かしめ法とUV接着法の双方に共通することであるが、いずれの固定方法も、レンズ枠53内にレンズ玉51を収容させるためには、レンズ玉51の外径をレンズ枠53の内径よりも小さくしなければならない。そのうえ、この寸法差に成型誤差を考慮した値を採用しなくてはならない。
【0011】
例えば、レンズ玉51の外径とレンズ枠53の内径の寸法公差がいずれも±5μmであれば、少なくとも10μm以上の寸法差が必要であるが、従来は、これ以上の位置決め精度が得られなかった。
【0012】
そこで、本発明は、レンズ玉の固定位置精度を向上させ、レンズ玉の面精度の悪化を低減させ、光学的な不良率を大幅に低減させて光学性能を向上させるレンズ玉のレンズ枠への固定方法及びレンズ固定装置、光学的な不良率を大幅に低減させて光学性能を向上させたレンズ本体とを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するために、本発明に係るレンズ固定方法は、レンズ玉をレンズ鏡筒の他端に設けられたレンズ枠に対して固定するレンズ固定方法において、レンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差を与える温度差付与工程と、温度差付与工程においてレンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差が生じた後、レンズ玉とレンズ鏡筒とを組み付ける組付工程と、組み付けられたレンズ玉とレンズ鏡筒とを同温にする温度調節工程とを有することにより、レンズ玉の外側面がレンズ枠の内側面に密着し、レンズ玉がレンズ枠に固定される。
【0014】
ここで、温度差付与工程をレンズ玉をレンズ鏡筒の温度以下に冷却するレンズ玉冷却工程とし、温度調節工程をレンズ玉及びレンズ鏡筒を加熱する加熱工程とすることが好ましい。あるいは、温度差付与工程を、レンズ枠をレンズ玉の温度以上に加熱するレンズ枠加熱工程とし、温度調節工程をレンズ玉及びレンズ鏡筒を冷却する冷却工程としてもよい。ただし、このときレンズ玉は、レンズ枠のサイズより若干大のサイズとして用意されるものとする。
【0015】
またここで、レンズ玉を構成する素材の線熱膨張係数は、レンズ枠を構成する素材の線熱膨張係数と略等しいことが好ましい。
【0016】
上述した目的を達成するために、本発明に係るレンズ固定装置は、レンズ玉をレンズ鏡筒の他端に設けられたレンズ枠に対して固定するレンズ固定装置において、レンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差を与える温度差付与手段と、温度差付与手段によってレンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差が生じた後、レンズ玉とレンズ鏡筒とを組み付ける組付手段と、組み付けられたレンズ玉とレンズ鏡筒とを同温にする温調節手段とを備えることにより、レンズ玉の外側面がレンズ枠の内側面に密着し、レンズ玉がレンズ枠に固定される。
【0017】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るレンズ本体は、凸型形状を有しレンズ枠部材よりも若干大のサイズを有するレンズ玉と、レンズ玉のレンズ光軸に平行であって、レンズ玉外縁を覆うレンズ枠部材が設けられたレンズ鏡筒とを備え、レンズ枠部材よりも若干大のサイズを有するレンズ玉が温度差による形状変化により組み付けられ固定されてなることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体例について、図面を参照して詳細に説明する。図1に本発明の一具体例であるレンズ本体を示す。
【0019】
レンズ本体1は、レンズ鏡筒12に対してレンズ玉11が固定されてなる。図1では、説明のためレンズ本体1の各部寸法を以下のように定義する。レンズ玉11は、いわゆる凸レンズであって、レンズ玉11は、樹脂材料、ガラス材料等を用いることができる。ここでは、レンズ直径(外径)をD[mm]、レンズ凸部の厚みをh[mm]、外縁部分のレンズ厚みをd[mm]とする。
【0020】
レンズ玉11は、レンズ鏡筒12の他端に設けられたレンズ枠13に凸部を鏡筒外部に向ける方向で取り付けられるようになっている。また、レンズ玉11を取り付けるレンズ枠13は、レンズ鏡筒12の内径と外径との差である厚みを若干切り拡げて、レンズ鏡筒端部の内径を大として加工されている。切り拡げた部分の内径(以下、大内径と記す。)ともともとの内径(小内径)との差としてできる面がレンズ玉11を受けるレンズ受面13aになっている。ここで、レンズ鏡筒端部の大内径をφmm、大内径におけるレンズ鏡筒の肉厚をwmm、鏡筒他端からレンズ受面13aの深さをレンズ玉11の外周の厚みと略同長のdmmとする。
【0021】
ここで、レンズ玉11のレンズ直径Dは、レンズ玉11とレンズ鏡筒12とが互いに同温度のとき、レンズ枠13の大内径φよりも常に大であるとする。しかし、このときのレンズ直径Dとレンズ枠13の大内径φの寸法差は、レンズ鏡筒12の温度がレンズ玉11の温度より所定の大きさ以上に高くなるようにレンズ鏡筒12に温度差ΔTを与えたとき、レンズ鏡筒12が熱膨張し、レンズ枠13の大内径φがレンズ玉11のレンズ直径Dより大になる程度のものであるとする。ただし、ここでの温度とは、レンズ玉11とレンズ鏡筒12とが本来の性能を発揮できる程度の温度範囲であるとする。
【0022】
続いて示す図2は、本発明の具体例として示すレンズ本体1におけるレンズ玉11をレンズ枠13へ固定する様子を説明している。本具体例においてレンズ玉11は、レンズ枠13に対して、例えば図2に示すように固定されている。図3には、図2に示す固定方法を説明するフローチャートを示す。
【0023】
図2の固定方法では、図3に示すように、レンズ玉11を冷却するステップS1と、レンズ枠13へレンズ玉11を収容するステップS2と、レンズ玉11を加熱するステップS3とによって、レンズ玉11をレンズ枠13内に固定している。
【0024】
まず、図2(a)に示すように、冷蔵庫等の冷却手段21によりレンズ玉11を冷却する。冷却することにより、レンズ玉11のレンズ直径は、熱収縮によってDより小さくなる。
【0025】
続いて、図2(b)に示すように、レンズ玉11のレンズ直径Dがレンズ枠13の大内径φよりも小さくなった状態でレンズ枠13にレンズ玉11を収容する。
【0026】
続いて、図2(c)に示すように、加熱手段21を用いて、レンズ玉11とレンズ玉11を収容したレンズ鏡筒12とをともに加熱する。レンズ玉11とレンズ鏡筒12の温度差がなくなると、レンズ玉11は、熱膨張し再びレンズ玉11のレンズ直径Dがもとのサイズに戻る。もともとレンズ玉11のレンズ直径Dは、レンズ枠13の大内径φよりも大であるから、熱膨張を起こす結果、図2(d)に示すように、レンズ玉11の外周がレンズ枠13の内面に密着してレンズ玉11がレンズ枠13内に固定される。
【0027】
このようにして一旦レンズ枠13に固定されたレンズ玉11は、周囲の温度が変化しても、レンズ枠13と同時に熱膨張或いは熱収縮するため、少なくともレンズ玉或いはレンズ鏡筒の保証温度範囲内の温度変化であれば、そのレンズ直径Dがレンズ枠13の内径より小さくなることがない。その結果、レンズ玉11は、レンズ枠13内に常に固定された状態が保たれる。なお、上述した固定方法では、レンズ玉側に温度変化による寸法変化を与えているが、レンズ枠側に温度変化による寸法変化を与えてもよい。
【0028】
図4には、レンズ枠側に温度変化による寸法変化を与える例を示す。図4に示すレンズ固定方法は、レンズ枠13を加熱するステップS11と、レンズ枠13内へレンズ玉11を収容するステップS12と、レンズ枠13を冷却するステップS13とを有する。このように、レンズ枠13側に温度変化による寸法変化を与えても同様にレンズ玉11をレンズ枠13内に固定できる。
【0029】
また、図5に示すように、レンズ玉11とレンズ枠13の双方に温度変化による寸法変化を与えてもよい。すなわち、レンズ玉11を冷却するステップS21と、レンズ枠13を加熱するステップS22に続き、ステップS23にてレンズ枠13内へレンズ玉11を収容し、レンズ玉11を加熱するステップS24とレンズ枠13を冷却するステップS25とを行っても構わない。
【0030】
ここで、レンズ玉11とレンズ枠13の双方の温度を変化させる場合に適用できる固定装置の一例を図6に示す。この場合、ペルチェ素子を用いた温度差生成装置30が挙げられる。
【0031】
温度差生成装置30は、外部との断熱が保たれた断熱容器31内をペルチェ素子32からなる分割壁にて分割し、分割されてできた2つの室間に対してペルチェ効果により温度差ΔTを与えるようにしたものである。この温度差生成装置30は、温度が低い室間となる低温室33a内にレンズ玉11を収容し、温度が高い室間となる高温室33b内にレンズ鏡筒12を収容することで、レンズ玉11の冷却とレンズ枠13の加熱とを同時に行う。温度差ΔTは、ペルチェ素子32に加える電圧を変化することにより制御できる。また、ペルチェ素子32を複数層に重ねて使用すれば、温度差ΔTの上限をより大きくできる。
【0032】
このように、本発明の具体例として示すレンズ本体1は、レンズ玉11をレンズ枠13内に固定させる過程でレンズ玉11を冷却して、そのレンズ直径Dを熱収縮により小さくすること、また、レンズ鏡筒12を加熱してレンズ枠13の大内径φを熱膨張により大きくすること、また、レンズ玉11の熱収縮とレンズ枠13の熱膨張とを併用すること等により、レンズ枠13の大内径φとレンズ玉11のレンズ直径Dの相対的な大きさを一時的に変形させて、レンズ玉11をレンズ枠13内に収容する。その後、双方の温度差を無くすことで、レンズ玉11のレンズ直径Dをレンズ枠13の大内径φよりも大きい状態に戻し、レンズ玉11をレンズ枠13内に固定する。
【0033】
なお、このときレンズ直径Dの方が大内径φより大きいため、レンズ玉11は、レンズ直径Dが小さくなる方向にレンズ枠13によって押圧され、レンズ枠13は、逆に大内径φが大きくなる方向に押圧されている。そのため、レンズ玉11とレンズ枠13とは、押圧される方向に弾性変形した状態になる。そして、弾性変形による押圧力により摩擦力が発生し、この摩擦力によりレンズ玉11がレンズ枠13内に固定保持される。
【0034】
この方法により固定された後は、多少の温度変化があっても、レンズ玉11とレンズ鏡筒12は、どちらも同様に温度に応じて熱膨張或いは熱収縮するため、レンズ玉11の外周の外側面がレンズ枠13の内側面に密着した状態が常に保たれる。その結果、温度変化によってレンズ玉11がレンズ枠13から外れることはない。
【0035】
また、レンズ玉11の弾性変形が大きすぎるとレンズ面精度の悪化を招くため好ましくないが、実際は、各部の寸法の取り方を工夫することにより、弾性変形の大部分をレンズ枠側にて起こさせることにより、レンズ玉側の変形分を無視できる範囲に留めることができ、レンズ面精度の悪化を実用上ないに等しい程度にすることができる。
【0036】
詳細は後述するが、例えば、レンズ直径D=25[mm]、凸部の高さh=5[mm]のレンズ玉11を、上述した方法によりレンズ枠13に固定した場合、レンズ玉11のレンズ直径に対する変形量が最大でも3μm以下、凸部高さに対する変形量が最大でも0.3μm以下にすることが容易に実現できる。
【0037】
また、上述したレンズ固定方法におけるレンズ玉11の固定後の位置ずれや傾きは、レンズ玉11とレンズ枠13の成型時に発生する誤差範囲内となり、固定過程に悪化を招く要因がほとんどないため、厳しい条件が必要になる熱かしめ法やUV接着法に比べ、光学的な不良率を大幅に低減できる。さらには、光学性能を向上できる。
【0038】
そのうえ、熱かしめ法やUV接着法のような厳しい条件が不要となるため、レンズ本体を製造するための設備の調整期間を大幅に短縮でき、この間にかかる経費を削減できる。その結果、熱かしめ法やUV接着法に比べ、小型かつ光学的に高性能なレンズ本体を安価に提供できる。
【0039】
以下では、本発明の具体例として示すレンズ本体について、さらに具体的に説明する。
【0040】
まず、本発明のレンズ本体におけるレンズ玉11のレンズ枠13への固定は、レンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との間に発生する摩擦力により達成される。この摩擦力は、レンズ枠13の大内径φよりも大きなレンズ直径Dを有するレンズ玉11をレンズ枠13内に収容させた状態で、丁度引き延ばされた輪ゴムが元の大きさに戻ろうとするようにレンズ枠13がレンズ玉11の外側面を内側に締め付ける力が働くことにより得られる。
【0041】
ここで、レンズ枠13がレンズ玉11を締め付けるときに発生する力について、図7を用いて説明する。レンズ枠13がレンズ玉11を締め付けるときに発生する力は、図7に実線で示すように、レンズ枠13をリング状と考えると容易に計算できる。図7は、レンズ枠13をリング状と考えたときに各部に発生する力の関係を説明している。
【0042】
レンズ玉11を収容したレンズ枠13は、レンズ玉11と同温度になったとき、レンズ玉11によって外側に向かって押圧されるため2点鎖線で示すように内径が大きくなる方向に変形する。このとき、レンズ枠13を外側に向かって押圧する力をfとし、同方向への変位量をΔrと仮定する。また、レンズ枠13を接線方向へ引き延ばそうとする引張力をFとし、内周Lの変位量をΔLと仮定すると、仮想仕事法により、fΔr=FΔLが成り立つ。ここで、ΔL=2πΔrであるので、以下の式(1)が得られる。
【0043】
f=2πF・・・・・(1)
【0044】
また、本具体例のレンズ本体において、図8に示すように、レンズ枠13内に収容されない状態で直径がDであったレンズ玉11のレンズ枠13内に収容後の外径を2rとすると、レンズ玉11を収容しない状態で内径がφであるレンズ枠13の内径もレンズ玉11を収容した状態では2rとなる。ここでレンズ玉11の外側面に働く力をf1、応力をσ1とすると、下式(2)が得られる。
【0045】
f1=πDdσ1・・・(2)
【0046】
ここで、レンズ玉11のレンズ枠13への収容後における外径方向の半径に対する変形量をΔr1とし、レンズ玉11の歪率をε1、圧縮弾性率をEpとすると、σ1=Epε1、ε1=2Δr1/Dであるので式(2)は、以下の式(3)のようになる。
【0047】
f1=2πdEpΔr1・・・(3)
【0048】
また、レンズ玉11を収容後におけるレンズ枠13の内側面に働く力を図7で定義したfとすれば、レンズ枠13を接線方向へ引き延ばそうとする引張力はFとなり、式(1)が成り立つので、レンズ枠13を接線方向へ引き延ばそうとする応力をσ2とすると、式(4)が得られる。
【0049】
f=2πF=2πσ2dw・・・(4)
【0050】
ここで、レンズ枠13の内径方向の半径に対する変形量をΔr2、レンズ枠13の歪率をε2、レンズ枠13の引張弾性係数をEtとすると、σ2= Etε2、ε2=ΔL/L=2πΔr2/(πφ)=2Δr2/φであるので式(4)は、式(5)となる。
【0051】
f=4πdwEtΔr2/φ・・・(5)
【0052】
そして、レンズ玉11の外側面を押圧する力f1と、レンズ枠13の内側面を押圧する力fとは、等しいので、式(3)、式(5)から以下の式(6)が得られる。
【0053】
2πdEpΔr1=4πdwEtΔr2/φ・・・(6)
【0054】
すなわち、以下の式(7),(8)が成り立つ。
【0055】
Δr1/(Δr1+Δr2)=2wEt/(Epφ+2wEt)・・・(7)
Δr2/(Δr1+Δr2)=Epφ/(Epφ+2wEp)・・・(8)
【0056】
ここで、レンズ玉11のレンズ枠13への固定状態を400G以上(実使用上この衝撃に耐えられれば十分とされる値)の衝撃に耐えられるようにするには、
μ:レンズ玉11とレンズ枠13との間に働く摩擦力の摩擦係数
V:レンズ玉11の体積
ρ:レンズ玉11の比重
とすると、下式(9)を満たす必要がある。
【0057】
fμ≧400ρV・・・(9)
【0058】
式(3)のf1と式(9)のfとは一致するので、式(10)が得られる。
【0059】
2πdEpΔr1μ≧400ρV
Δr1≧200ρV/(πdEpμ)・・・(10)
【0060】
ここで、V<π(D/2)2hであるので、式(10)においてVとπ(D/2)2hとを入れ替えた下式(11)を満たすΔr1は、十分に式(10)を満たすことになる。
【0061】
Δr1≧200ρ(D/2)2h/(dEpμ)・・・(11)
【0062】
ここで、レンズ玉11とレンズ鏡筒12の素材をともにポリカーボネイトとした場合について説明する。レンズ玉11の圧縮弾性率、静止摩擦係数、比重は、表1より、順にEp=24694[Kg/cm2]、μ=0.52、ρ=1.2である。
【0063】
【表1】
【0064】
なお、表1のデータは、工業調査会発行のプラスチック・データブック、啓林館発行の高等学校物理、培風館発行の物理学辞典より抜粋したものである。また、元データの単位がメガパスカル(MPa)表示されていたものは、カッコ内に元データを示した。MPaからKg/cm2への変換時に計算に用いた重力加速度は9.8m/s2である。
【0065】
ただし、ポリカーボネイトのデータにおける静止摩擦係数、ポアソン比及び屈折率を除くデータは、1999年工業調査会発行 プラスチック・データブックp.10より抜粋した。また、メタクリル樹脂のデータにおける静止摩擦係数、ポアソン比及び屈折率を除くデータは、1999年工業調査会発行 プラスチック・データブック p.9より抜粋した。ポリカーボネイトとメタクリル樹脂のデータにおける静止摩擦係数は、1999年工業調査会発行 プラスチック・データブック p.156「a静止摩擦係数」より抜粋した。ポリカーボネイトの静止摩擦係数のカッコ内の値は、1999工業調査会発行 プラスチック・データブック p.153「(143)各種プラスチックの摩擦係数」より抜粋した。ポリカーボネイトのデータにおける屈折率は、1999年工業調査会発行 プラスチック・データブック p.37「(21)屈折率とアッベ数との関係」より抜粋した。メタクリル樹脂のデータにおける屈折率は、1999年工業調査会発行 プラスチック・データブック p.470「(2)PMMA成型材料の屈折率とアッベ数との関係」より抜粋した。ガラスのデータにおける線膨張係数は、1992年培風館発行 物理学辞典 p.2371「表40 種々の物質の線膨張係数β[1/℃]」より抜粋した。ガラスのデータにおけるヤング率、比重及びポアソン比は、1992年培風館発行 物理学辞典 p.2358「表13 固体の力学的性質」より抜粋した。ガラスのデータにおける屈折率は、平成5年度用 啓林館発行 高等学校物理 p.149「表2 いろいろな物質の屈折率」より抜粋した。ガラス繊維強化PC(ガラス繊維含有率30%)のデータにおける線膨張係数は、プラスチック・データブック p.55「(55)ポリカーボネイトのガラス繊維含有率と熱膨張係数」より抜粋した。ガラス繊維強化PC(ガラス繊維含有率30%)のデータにおける引張破断強度、曲げ弾性率及び熱変形温度は、プラスチック・データブック p.790,791「1ファンクスターの物性」より抜粋した。
【0066】
レンズ玉11の外径をD=25[mm]、d=3[mm]、h=5[mm]とすると、以下の値が得られる。
【0067】
【0068】
また、式(9)のfは、式(5)のfと一致するので、以下の式(12)の値が得られる。
【0069】
4πdwEtΔr2μ/φ≧400ρV
Δr2≧100ρVφ/(πdwEtμ)・・・(12)
【0070】
ここで、V<π(D/2)2hであるので、式(12)においてVとπ(D/2)2hとを入れ替えた下式(13)を満たすΔr2は、式(12)を十分満たす。
【0071】
Δr2≧100ρ(D/2)2hφ/(dwEtμ)・・・(13)
【0072】
ここで、レンズ玉11とレンズ鏡筒12の素材をともにポリカーボネイトとした場合、表1によりEt=24286[kg/cm2]、μ=0.52、ρ=1.2である。また、上記説明によりD=25[mm]、d=3[mm]、h=5[mm]である。レンズ枠13の幅はw=1[mm]とし、φもDに略等しいのでφ=25[mm]とすると、以下の値が得られる。
【0073】
【0074】
(a)、(b)の結果から、外径25mm、高さh=5mm、外周の幅d=3mmのレンズ玉11を厚さw=1mmのレンズ枠13に固定させる場合に、レンズ玉11の外径方向の半径に対する変形量をわずかΔr1=0.5μm、レンズ枠13の内径方向の半径に対する変形量をわずかΔr2=6.2μmとするだけで400Gの衝撃に耐えることが証明できた。
【0075】
ここで、レンズ玉11とレンズ枠13の成型誤差が±5μmである場合に、Δr1=0.5[μm]以上、Δr2=6.2[μm]以上を常に維持させるためには、レンズ玉11のレンズ直径Dのセンター設計値を25mmとした場合、レンズ枠13の大内径φのセンター設計値は、以下のようにする必要がある。
【0076】
【0077】
この設計値に対して、レンズ玉11の外径が最大限に大きくなるとともにレンズ枠13の内径が最小限に小さくなる方向にレンズ玉11とレンズ枠13の成型誤差が発生した場合には、レンズ玉11の固定時のレンズ玉11とレンズ枠13の変形量は最大となり、これを計算すると、式(7)、式(8)が成り立つことから、以下の値を得る。
【0078】
【0079】
そこで、Δr2がレンズ枠13の弾性変形の領域を超え塑性変形の領域に入ると、レンズ玉11を安定して固定する力が得られなくなるので、2Δr2=31.174μmがレンズ枠13が弾性変形するに際して無理のない変形量であるかどうかの検証を行ってみる。
【0080】
ポリカーボネイトの引張破断強度は、表1より、σmax1=643〜735[kg/cm2]である。σmax1=650[kg/cm2]とおいて、Δr2の許容最大値について検証してみると、Etε2<σmax1が成り立たなくてはならない。ここで、ε2=ΔL/L、ΔL=2πΔr2、L=πφであるから、以下のような値となる。
【0081】
【0082】
この値に比べて、2Δr2=31.174[μm]は、十分に小さいため許容できる変形量であることが判る。
【0083】
同様に、2Δr1=2.528[μm]がレンズ玉11に対して無理のない変形量であるかどうかの検証を行ってみる。ポリカーボネイトの圧縮強度は、表1より、σmax2=704〜878[kg/cm2]である。σmax2=700[kg/cm2]とおいて、Δr1の許容最大値について検証してみると、Epε1<σmax2が成り立たなくてはならない。ここで、ε1=2Δr1/Dであるから、以下のような値となる。
【0084】
【0085】
この値に比べて、2Δr1=2.528[μm]は、十分に小さいため許容できる変形量であることが判る。
【0086】
続いて、レンズ玉11の外径に対する変形量2Δr1=2.528μmは、面精度を悪化させるかどうかについて検証してみる。本発明によれば、レンズ玉11には外側面を内側に向かって押圧する力が略均等に分布するのみであり、受光面には直接外力が加わることはない。つまり、レンズ玉11の外側面を押圧する力により発生する受光面の変形は、ポアソンの式により導かれる変形のみである。
【0087】
この変形は、レンズ玉11の受光面全体が厚さ方向に膨らむものであり、その表裏の受光面の変形量の合計をΔhとおくと、Δh=2Δr1νh/Dで表せる。ここで、νは、ポアソン比である。ポアソン比が0.5を超える物質は存在しないため、大まかに見積もってν=0.5としたとき、Δh=2.528×0.5×5/25=0.2528μmとなる。
【0088】
ところで、L.Layletghによれば、2つの面を持つ単レンズでは屈折率nのレンズ面において面の各部が他の部分に対してδの誤差を持っている場合、その誤差δがδ≦λ/8(n−1)を満たす値であれば、象の分解能に影響を与えない。
【0089】
ここで、ポリカーボネイトの屈折率は、n=1.58(表1)であり、波長λに可視光における短い側の限界値である380nmを当てはめるとλ/8(n−1)=0.082μmとなる。レンズ玉11の片面側についてのみの変形量は、Δhの半分(0.1264μm)となる。
【0090】
ところで、レンズ全表面は、略均等に変形し、レンズ面の各部の他の部分に対する誤差δは、この値(0.1264μm)よりも大幅に小さくなるため、δ≦λ/8(n−1)=0.082μmが十分に満たされる。このように、レンズ玉11の歪みは十分に小さく面精度への悪影響を与えることはない。
【0091】
最後に、上記のような固定状態を得る過程でレンズ玉11とレンズ枠13との間に熱膨張若しくは熱収縮により必要な隙間を得ることができるかどうかの検証を行う。線熱膨張係数αの素材を用いて長さLに対して、温度差ΔTを与えて、ΔL以上の変位量を得る場合、ΔTは下記式を満たさなくてはならない。
【0092】
ΔT≧ΔL/(αL)
【0093】
ここで、αにはポリカーボネイトの線熱膨張係数(68×10−6[1/℃](表1))を与え、Lにはレンズ玉11のレンズ直径D(25mm)を与える。また、ΔLは、レンズ玉11の固定時におけるレンズ玉11の外径に対する変形量2Δr1とレンズ枠13の内径に対する変形量2Δr2に加えて、レンズ玉11とレンズ枠13の成型誤差による影部分と、レンズ玉11をレンズ枠13内に収容するときに必要なレンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との間に形成すべき距離とからなる。
【0094】
例えば、レンズ玉11をレンズ枠13に容易に収容させるために必要なレンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との間の距離を10μmとし、レンズ玉11の外径φとレンズ枠13の内径の成型誤差をともに実現可能な±5μmとした場合に、レンズ玉11とレンズ枠13とに与えるべき変位量ΔLは、以下のようになる。
【0095】
ΔL=0.5×2+6.2×2+(5+5)×2+10×2
=53.4[μm]
【0096】
したがって、ΔTは、以下のようになる。
【0097】
ΔT≧53.4×10−6/(68×10−6×25×10−3)
≒31.4[℃]
【0098】
この温度差31.4[℃]は、熱変形温度が100℃以上(表1に記載)のポリカーボネイトにとって、十分に与えることが可能な値であり、熱膨張或いは熱収縮によりレンズ玉11をレンズ枠13の間に収容するために必要な隙間を得られることが証明できる。
【0099】
以上の説明によりレンズ玉11とレンズ鏡筒12の素材としてポリカーボネイトを用いることができる。この場合の計算結果を第1例として表2に示す。同様に、レンズ玉11とレンズ鏡筒12の素材がともにメタクリルである場合であっても本具体例のレンズ本体1は、実施可能である。この場合の計算結果は、第2例として表2に示す(途中計算は、省略する。)。
【0100】
【表2】
【0101】
ただし、第1例、第2例、第4例における温度以外の各値は、常温(25℃)における値である。また、第3例におけるレンズ玉のレンズ直径D、レンズ玉の凸部までの厚みh、レンズ玉の外周の厚みd、レンズ鏡筒端部の大内径φ、大内径におけるレンズ鏡筒の肉厚wは、使用温度範囲の上限(70℃)のときの値を示す。第3例におけるレンズ玉のレンズ直径Dの変形歪量2Δr1の最低値、レンズ鏡筒端部の大内径φの変形歪量2Δr2の最低値は、使用温度範囲の上限(70℃)において、D=25[mm]−5[μm]、φ=24.9605[mm]+5[μm]のときの値を示す。第3例におけるレンズ玉のレンズ直径Dの変形歪量2Δr1の最大値、レンズ鏡筒端部の大内径φの変形歪量2Δr2の最小値は、使用温度範囲の下限(−10℃)において、D=25[mm]−5[μm]、φ=24.9605[mm]+5[μm]のときの値を示す。
【0102】
また、レンズ玉11がガラスでレンズ鏡筒12が樹脂である場合、これらは線熱膨張係数が異なる材質同士であり、レンズ玉11の固定後にレンズ本体全体の温度が変化すると固定強度が変化する。そのため、使用温度範囲内で十分な固定強度を保持させる必要がある。そこで、レンズ枠13の変形量Δr2を大きくして線熱膨張係数の差による変形量を吸収させる。ガラスは、表1に示すようにポリカーボネイトやメタクリル樹脂に比べて圧縮弾性率が略30倍と大きいため、レンズ枠13の変形量Δr2をある程度大きくしてもレンズ玉11の外径方向の半径に対する変形量Δr1や厚み方向の変形量Δhを十分小さく抑えることができる。
【0103】
したがって、面精度の悪化を抑制できる。そのうえ、ガラスの比重は、圧縮弾性率の大きさの割にポリカーボネイトやメタクリルに比べて2〜3倍程度と大幅に小さいため、レンズ枠13の変形量Δr2を大きくすれば、広範囲の温度環境下でレンズ玉11とレンズ鏡筒12とが同材質である場合と同様の衝撃(400G)に耐えられる十分な固定強度が得られる。この計算結果も、第1例、第2例と同様に第3例として表2に示す。
【0104】
ここで、第3例の計算過程について説明する。レンズ玉11がガラスであるため、表1によりEp=730071kg/cm2、μ=0.5、ρ=3.6とおくことができる。なお、ここでは、圧縮弾性率としてヤング率を使用した。また、静止摩擦係数μは、ポリカーボネイトと鋼材との間で0.6であることから、少なくとも0.5以上であると思料して0.5とし、比重は、最も条件の悪い最大値ρ=3.6を採用した。第1例、第2例と同様に、レンズ玉11の外径をD=25mm、d=3mm、h=5mmとして、これら値を式(11)に代入すると以下の値が得られる。
【0105】
【0106】
また、同様に、式(13)にμ=0.5、ρ=3.6を代入すると以下の値が得られる。
【0107】
【0108】
本例では、レンズ玉11をレンズ枠13に収容時にレンズ玉11とレンズ枠13の間に隙間を与える過程において、線熱膨張係数の大きい方の材質からなるレンズ枠13側のみに温度変化を与えるのが有効である。そして、レンズ枠13を熱膨張させる過程でレンズ枠13の内径に必要な変形量には、上式(c)、(d)の変形量に加えて、レンズ玉11、レンズ枠13の成型誤差による影響分の20μmと、レンズ玉11のレンズ枠13への収容を容易に行うための隙間分とが必要である。この変形を得るのにレンズ枠13に与えるべき温度変化分ΔTを計算すると以下のようになる。
【0109】
ΔT≧(0.05×2+19.3×2+20+20)×10−6/(68×10−6×25×10−3)
≒46.3[℃]
【0110】
ここで、ポリカーボネイトの耐熱温度の上限が120℃であるので、使用温度の上限は、120−46.3=73.3[℃]となる。そこで使用温度の上限を70℃とし、それより80℃下方の−10℃までの範囲を使用温度範囲とした場合、レンズ玉11の直径とレンズ枠13の大内径の変形量の合計は、−10℃のとき最大となる。そして、その変形量は、温度変化分ΔT=80[℃]によりレンズ玉11の内径とレンズ枠13の外径との間に発生する熱収縮の差、式(c)、(d)で計算した値、及び成型誤差による影響分の合計で略構成される。これを計算すると、以下の値を得る。
【0111】
(68−8)×25×10−3×80+0.05×2+19.3×2+20=178.7[μm]
【0112】
したがって、2Δr1、2Δr2の最大値を計算すると、式(7)、式(8)が成り立つことから、以下のようになる。
【0113】
【0114】
【0115】
また、レンズ玉11の高さ方向の変形量Δhの最大値は、表1からポアソン比ν=0.44であることから、以下のようになる。
【0116】
【0117】
以上の計算過程(一部分計算省略)により表2の第3例のような結果となった。
【0118】
第3例は、レンズ玉11がガラスでレンズ鏡筒12がポリカーボネイトの場合であり、線熱膨張係数が異なる材質の組み合わせであるにもかかわらず、ΔT=80[℃]の範囲で、第1例、第2例と同様に400G以上の衝撃に耐え得ることと、レンズ玉11の変形量を低く抑えることを両立しており、第1例、第2例と実用上同様の性能を得ることができる。
【0119】
続いて、レンズ玉11をガラスとし、レンズ枠13をガラスと線熱膨張係数が略等しいガラス繊維強化ポリカーボネイト(ガラス繊維含有率30%)とした場合について考える。この計算は、レンズ玉11とレンズ枠13の線熱膨張係数が略等しい場合であって、第1例、第2例の場合と同様に求められるため、計算過程を省略する。計算結果を第4例として表2に示す。
【0120】
なお、第4例の計算は、表1に記載のデータを使用し、ガラス繊維強化ポリカーボネイトの引張弾性係数は、近似値として曲げ弾性率を使用した。この計算の結果、第4例は、全ての例の中でレンズ玉11とレンズ枠13の変形歪が最小となり、精度の面では最も好ましい。ただし、レンズ玉11の収容を容易に行うためのレンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との距離を他の例と同じように設けようとすると温度差ΔTが261.5℃となり実現困難となる。
【0121】
そこで、レンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との距離を0μm以上とし、レンズ玉11のレンズ直径Dの成型誤差を±2.5μmとし、レンズ枠13の大内径φの成型誤差を±2.5μmとする。このとき、ΔT=111.5℃となり、実現可能である。
【0122】
この条件では、レンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との距離が0〜10μmとなり、レンズ玉11とレンズ枠13の成型後の寸法によっては、多少の加圧が必要な場合も考えられるが、レンズ玉11をレンズ枠13内に十分に収容できる。
【0123】
また、レンズ直径とレンズ枠の内径の寸法管理において、成型誤差を厳しくする代わりに、出来上がった複数のレンズ玉11のレンズ直径Dとレンズ枠13の大内径φとを同温度下で実測し、その差(D−φ)が所定の範囲となる組み合わせを予め用意し、これらレンズ玉11とレンズ枠13に温度差ΔTを与えてもよい。
【0124】
例えば、(D−φ)が12.3〜17.3μmの範囲内であるレンズ玉11とレンズ枠13の組み合わせでは、86.5℃以上のΔTを与えるだけで、レンズ玉11のレンズ直径Dよりレンズ枠13の大内径φが大きくなり、レンズ玉11をレンズ枠13内に収容させることができる。そして、同温度に戻したときには、レンズ玉11の固定強度は400G以上の衝撃に十分に耐えられる値となる。この方法によれば、成型誤差のバラツキが発生しても、本発明を無理なく実施できる。
【0125】
ところで上記各例において、レンズ枠の変形量Δr2によっては、レンズ玉11の位置ずれが懸念されるが、これはレンズ枠13の全周について均等に発生する変形量であるため、これによってレンズ玉11の位置ずれが発生することは略ないと考えられる。
【0126】
すなわち、レンズ玉11の位置ずれが発生するとすれば、レンズ枠13の各部の断面積のバラツキによって発生することが考えられるが、レンズ枠13の各部の肉厚wと深さdに±5μmの誤差が発生していたとしても、最大でも{(1+0.005)×(3+0.005)−1×3}÷{(1−0.005)×(3−0.005)}×100=0.67[%]のずれで済む。
【0127】
したがって、Δr2がΔr2=89.1μmである第3例のように、大幅に大きくなる例をとっても、0.67%は、0.60μmに過ぎないため、Δr2が位置ずれに影響することは殆どない。
【0128】
上記各例におけるレンズ玉11の固定強度の計算では、レンズ玉は、図9に示すように凸部分を除いた厚さがdmmの円板状とし、レンズ枠13は、レンズ鏡筒12のレンズ枠以外の部分を除いた形状(断面が縦横dmm×wmmで全体がリング状である。)としている。また、レンズ玉11の固定状態が400G以上の衝撃に対して耐えられる条件を与えるところでは、図10に示すように、レンズ玉11の体積を実際よりも大きめに仮定して計算している。そのため、実際には、計算上よりも質量が小さなレンズ玉11に対して計算よりも大きな固定強度が働くことになり、計算よりも信頼性の高い固定状態を得ている。
【0129】
なお、本発明は、上述した具体例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0130】
例えば、本具体例では、レンズ玉11とレンズ枠13がともにポリカーボネイトである場合、レンズ玉11とレンズ枠13がともにメタクリル樹脂である場合、レンズ玉11がガラスでレンズ枠13がポリカーボネイトである場合、レンズ玉11がガラスでレンズ枠13がガラス繊維強化ポリカーボネイト(ガラス繊維含有率30%)である場合について述べたが、レンズ玉とレンズ枠を構成する素材はこれら組み合わせに限定するものではなく、他に任意の素材を使用した場合も可能である。
【0131】
また、本発明によれば、レンズ枠13の内径寸法を上記説明の場合よりも少し大きめの値とした場合に、摩擦だけによる固定強度は少し小さめになるが、接着等の固定手段を併用してもよい。接着等の他の固定手段を併用すれば、十分な固定強度の確保と上記例の場合と同様の高い位置決め精度を得ることができる。そのうえ、レンズ玉をレンズ枠へ収容する際に、レンズ玉とレンズ枠との間に与える温度差ΔTを小さくできるため、特に、第4例の組み合わせのようにレンズ玉とレンズ枠双方の線熱膨張係数が10×10−6[1/℃]前後と小さい場合に、特に有効である。
【0132】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係るレンズ固定方法によれば、レンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差を与え、レンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差が生じた後、レンズ玉とレンズ鏡筒とを組み付け、組み付けられたレンズ玉とレンズ鏡筒とを同温にすることにより、レンズ玉の外側面がレンズ枠の内側面に密着されレンズ玉がレンズ枠に固定される。
【0133】
これにより、レンズ玉の固定位置精度が向上され、レンズ玉の面精度の悪化が低減される。また、レンズ本体の光学的な不良率を大幅に低減させて光学性能を向上させることができる。
【0134】
また、本発明に係るレンズ固定装置によれば、温度差付与手段においてレンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差を与え、レンズ鏡筒との間に温度差が生じた後、レンズ玉とレンズ鏡筒とを組み付け、組み付けられたレンズ玉とレンズ鏡筒とを温度調節手段にて同温にすることにより、レンズ玉の外側面がレンズ枠の内側面に密着されレンズ玉がレンズ枠に固定される。
【0135】
これにより、レンズ玉の固定位置精度が向上され、レンズ玉の面精度の悪化が低減される。また、レンズ本体の光学的な不良率を大幅に低減させて光学性能を向上させることができる。
【0136】
また、本発明に係るレンズ本体は、凸型形状を有しレンズ枠部材よりも若干大のサイズを有するレンズ玉と、レンズ玉のレンズ光軸に平行であって、レンズ玉外縁を覆うレンズ枠部材が設けられたレンズ鏡筒とを備え、レンズ枠部材よりも若干大のサイズを有するレンズ玉が温度差による形状変化によってレンズ玉の外側面がレンズ枠の内側面に密着されレンズ玉がレンズ枠に固定されることで、レンズ玉の固定位置精度が向上され、レンズ玉の面精度の悪化が低減される。また、レンズ本体の光学的な不良率を大幅に低減させて光学性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の具体例として示すレンズ本体を説明する断面図である。
【図2】上記レンズ本体におけるレンズ玉をレンズ枠へ固定する一連の工程を説明する図である。
【図3】上記レンズ本体におけるレンズ玉をレンズ枠へ固定する固定処理を説明するフローチャートである。
【図4】上記固定処理にて、レンズ枠側に温度変化による寸法変化を与える場合を説明するフローチャートである。
【図5】上記固定処理にて、レンズ玉とレンズ枠の双方に温度変化による寸法変化を与える場合を説明するフローチャートである。
【図6】レンズ玉とレンズ枠の双方に温度変化を与える場合の処理に適用できる温度差生成装置を説明する図である。
【図7】上記レンズ本体において、レンズ枠の各部に発生する力を説明する模式図である。
【図8】上記レンズ本体において、レンズ玉及びレンズ鏡筒の各部に発生する力を説明する模式図である。
【図9】レンズ玉のレンズ枠に対する固定強度の計算を説明する図である。
【図10】レンズ玉のレンズ枠に対する固定強度の計算を説明する図である。
【図11】従来の熱かしめ法によるレンズ玉のレンズ枠への固定方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 レンズ本体、11 レンズ玉、12 レンズ鏡筒、13 レンズ枠、21冷却手段、22 加熱手段、30 温度差生成装置、31 容器、32 ペルチェ素子、33a 低温室、33b 高温室
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学機器の撮像部分に用いる小型レンズのレンズ玉をレンズ枠へ固定するレンズ固定方法及びこの方法にて固定されてできるレンズ本体に関し、特に、熱膨張及び熱収縮を用いるレンズ固定方法及び熱膨張及び熱収縮によりレンズ玉が固定されたレンズ本体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等の光学機器は、急速に普及し、小型化・軽量化が進んでいる。カメラレンズにあたる撮像部に限ってみればこの発展はさらに顕著であって、現在では、画像データ(動画像・静止画像)や音楽データを処理可能とする高性能電子機器や、これらの大容量データを送受信可能なネットワーク通信網の発展と相まって、ノート型PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistants)、さらには携帯電話にまで撮像部が設けられるようになった。
【0003】
小型化された撮像部のレンズ本体において、樹脂材料やガラス材料で加工されたレンズ玉を、このレンズ玉を支架するレンズ枠へと固定する方法には、熱かしめ法やUV接着法がある。
【0004】
熱かしめ法は、図11に示すように、レンズ本体50を作成するに際し、レンズ鏡筒52の端部に設けられたレンズ枠53に予め外部へと飛び出すような余長部分であるかしめリブ53aを形成しておき、レンズ受面53bにレンズ玉51を挿入したうえで、このかしめリブ53aを所定温度に加熱したかしめホーン60にて加圧曲げ変形してレンズ玉51の外縁部をレンズ枠53へと固定する方法である。
【0005】
また、UV接着法は、レンズ枠に収容されたレンズ玉をUVを照射することにより硬化する接着剤で固定する方法である
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、熱かしめ法は、かしめホーン60の温度を高くしすぎるとかしめリブ53a以外の部分にまで熱が伝導して変形が起こり、レンズ玉51の傾きや位置を設計通りの誤差範囲内で固定することが困難なことがあった。また、レンズ玉51に不要な力が加わるため、レンズの面精度を悪化させる原因にもなっていた。
【0007】
逆に、かしめホーン60の温度が低すぎると、かしめリブ53aを十分に曲げ変形させることができないために、やはりレンズ玉51を設計通りの誤差範囲内で固定することが困難な場合があった。また、かしめ圧力が強すぎたり弱すぎたりしても、設計通りの誤差範囲内でレンズ玉をレンズ枠に固定できない。特に、かしめ圧力が強すぎる場合、かしめリブが不均一に変形し、レンズ玉51に不均一な力が加わりレンズ玉51の面精度を悪化させていた。
【0008】
このように熱かしめ法は、温度条件とかしめ圧力の管理が非常に難しく、今後ますます求められるレンズ本体の小型化と高性能化に必要な高い固定位置精度を得ることが難しく、高度な温度条件或いはかしめ圧力の管理が必要になってきている。
【0009】
一方、UV接着法は、レンズ枠に収容されたレンズ玉をUV照射により硬化する接着剤で固定する方法であるが、接着剤が硬化する過程で接着剤が収縮することによりレンズ玉とレンズ枠との間に不均一な力が加わることがある。このような場合、熱かしめ法と同様にレンズ玉の位置決め精度を悪化させていた。この方法も、やはり、今後要求されるレンズ玉11の高い固定位置精度への対応が困難になってきている。
【0010】
また、熱かしめ法とUV接着法の双方に共通することであるが、いずれの固定方法も、レンズ枠53内にレンズ玉51を収容させるためには、レンズ玉51の外径をレンズ枠53の内径よりも小さくしなければならない。そのうえ、この寸法差に成型誤差を考慮した値を採用しなくてはならない。
【0011】
例えば、レンズ玉51の外径とレンズ枠53の内径の寸法公差がいずれも±5μmであれば、少なくとも10μm以上の寸法差が必要であるが、従来は、これ以上の位置決め精度が得られなかった。
【0012】
そこで、本発明は、レンズ玉の固定位置精度を向上させ、レンズ玉の面精度の悪化を低減させ、光学的な不良率を大幅に低減させて光学性能を向上させるレンズ玉のレンズ枠への固定方法及びレンズ固定装置、光学的な不良率を大幅に低減させて光学性能を向上させたレンズ本体とを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するために、本発明に係るレンズ固定方法は、レンズ玉をレンズ鏡筒の他端に設けられたレンズ枠に対して固定するレンズ固定方法において、レンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差を与える温度差付与工程と、温度差付与工程においてレンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差が生じた後、レンズ玉とレンズ鏡筒とを組み付ける組付工程と、組み付けられたレンズ玉とレンズ鏡筒とを同温にする温度調節工程とを有することにより、レンズ玉の外側面がレンズ枠の内側面に密着し、レンズ玉がレンズ枠に固定される。
【0014】
ここで、温度差付与工程をレンズ玉をレンズ鏡筒の温度以下に冷却するレンズ玉冷却工程とし、温度調節工程をレンズ玉及びレンズ鏡筒を加熱する加熱工程とすることが好ましい。あるいは、温度差付与工程を、レンズ枠をレンズ玉の温度以上に加熱するレンズ枠加熱工程とし、温度調節工程をレンズ玉及びレンズ鏡筒を冷却する冷却工程としてもよい。ただし、このときレンズ玉は、レンズ枠のサイズより若干大のサイズとして用意されるものとする。
【0015】
またここで、レンズ玉を構成する素材の線熱膨張係数は、レンズ枠を構成する素材の線熱膨張係数と略等しいことが好ましい。
【0016】
上述した目的を達成するために、本発明に係るレンズ固定装置は、レンズ玉をレンズ鏡筒の他端に設けられたレンズ枠に対して固定するレンズ固定装置において、レンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差を与える温度差付与手段と、温度差付与手段によってレンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差が生じた後、レンズ玉とレンズ鏡筒とを組み付ける組付手段と、組み付けられたレンズ玉とレンズ鏡筒とを同温にする温調節手段とを備えることにより、レンズ玉の外側面がレンズ枠の内側面に密着し、レンズ玉がレンズ枠に固定される。
【0017】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るレンズ本体は、凸型形状を有しレンズ枠部材よりも若干大のサイズを有するレンズ玉と、レンズ玉のレンズ光軸に平行であって、レンズ玉外縁を覆うレンズ枠部材が設けられたレンズ鏡筒とを備え、レンズ枠部材よりも若干大のサイズを有するレンズ玉が温度差による形状変化により組み付けられ固定されてなることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体例について、図面を参照して詳細に説明する。図1に本発明の一具体例であるレンズ本体を示す。
【0019】
レンズ本体1は、レンズ鏡筒12に対してレンズ玉11が固定されてなる。図1では、説明のためレンズ本体1の各部寸法を以下のように定義する。レンズ玉11は、いわゆる凸レンズであって、レンズ玉11は、樹脂材料、ガラス材料等を用いることができる。ここでは、レンズ直径(外径)をD[mm]、レンズ凸部の厚みをh[mm]、外縁部分のレンズ厚みをd[mm]とする。
【0020】
レンズ玉11は、レンズ鏡筒12の他端に設けられたレンズ枠13に凸部を鏡筒外部に向ける方向で取り付けられるようになっている。また、レンズ玉11を取り付けるレンズ枠13は、レンズ鏡筒12の内径と外径との差である厚みを若干切り拡げて、レンズ鏡筒端部の内径を大として加工されている。切り拡げた部分の内径(以下、大内径と記す。)ともともとの内径(小内径)との差としてできる面がレンズ玉11を受けるレンズ受面13aになっている。ここで、レンズ鏡筒端部の大内径をφmm、大内径におけるレンズ鏡筒の肉厚をwmm、鏡筒他端からレンズ受面13aの深さをレンズ玉11の外周の厚みと略同長のdmmとする。
【0021】
ここで、レンズ玉11のレンズ直径Dは、レンズ玉11とレンズ鏡筒12とが互いに同温度のとき、レンズ枠13の大内径φよりも常に大であるとする。しかし、このときのレンズ直径Dとレンズ枠13の大内径φの寸法差は、レンズ鏡筒12の温度がレンズ玉11の温度より所定の大きさ以上に高くなるようにレンズ鏡筒12に温度差ΔTを与えたとき、レンズ鏡筒12が熱膨張し、レンズ枠13の大内径φがレンズ玉11のレンズ直径Dより大になる程度のものであるとする。ただし、ここでの温度とは、レンズ玉11とレンズ鏡筒12とが本来の性能を発揮できる程度の温度範囲であるとする。
【0022】
続いて示す図2は、本発明の具体例として示すレンズ本体1におけるレンズ玉11をレンズ枠13へ固定する様子を説明している。本具体例においてレンズ玉11は、レンズ枠13に対して、例えば図2に示すように固定されている。図3には、図2に示す固定方法を説明するフローチャートを示す。
【0023】
図2の固定方法では、図3に示すように、レンズ玉11を冷却するステップS1と、レンズ枠13へレンズ玉11を収容するステップS2と、レンズ玉11を加熱するステップS3とによって、レンズ玉11をレンズ枠13内に固定している。
【0024】
まず、図2(a)に示すように、冷蔵庫等の冷却手段21によりレンズ玉11を冷却する。冷却することにより、レンズ玉11のレンズ直径は、熱収縮によってDより小さくなる。
【0025】
続いて、図2(b)に示すように、レンズ玉11のレンズ直径Dがレンズ枠13の大内径φよりも小さくなった状態でレンズ枠13にレンズ玉11を収容する。
【0026】
続いて、図2(c)に示すように、加熱手段21を用いて、レンズ玉11とレンズ玉11を収容したレンズ鏡筒12とをともに加熱する。レンズ玉11とレンズ鏡筒12の温度差がなくなると、レンズ玉11は、熱膨張し再びレンズ玉11のレンズ直径Dがもとのサイズに戻る。もともとレンズ玉11のレンズ直径Dは、レンズ枠13の大内径φよりも大であるから、熱膨張を起こす結果、図2(d)に示すように、レンズ玉11の外周がレンズ枠13の内面に密着してレンズ玉11がレンズ枠13内に固定される。
【0027】
このようにして一旦レンズ枠13に固定されたレンズ玉11は、周囲の温度が変化しても、レンズ枠13と同時に熱膨張或いは熱収縮するため、少なくともレンズ玉或いはレンズ鏡筒の保証温度範囲内の温度変化であれば、そのレンズ直径Dがレンズ枠13の内径より小さくなることがない。その結果、レンズ玉11は、レンズ枠13内に常に固定された状態が保たれる。なお、上述した固定方法では、レンズ玉側に温度変化による寸法変化を与えているが、レンズ枠側に温度変化による寸法変化を与えてもよい。
【0028】
図4には、レンズ枠側に温度変化による寸法変化を与える例を示す。図4に示すレンズ固定方法は、レンズ枠13を加熱するステップS11と、レンズ枠13内へレンズ玉11を収容するステップS12と、レンズ枠13を冷却するステップS13とを有する。このように、レンズ枠13側に温度変化による寸法変化を与えても同様にレンズ玉11をレンズ枠13内に固定できる。
【0029】
また、図5に示すように、レンズ玉11とレンズ枠13の双方に温度変化による寸法変化を与えてもよい。すなわち、レンズ玉11を冷却するステップS21と、レンズ枠13を加熱するステップS22に続き、ステップS23にてレンズ枠13内へレンズ玉11を収容し、レンズ玉11を加熱するステップS24とレンズ枠13を冷却するステップS25とを行っても構わない。
【0030】
ここで、レンズ玉11とレンズ枠13の双方の温度を変化させる場合に適用できる固定装置の一例を図6に示す。この場合、ペルチェ素子を用いた温度差生成装置30が挙げられる。
【0031】
温度差生成装置30は、外部との断熱が保たれた断熱容器31内をペルチェ素子32からなる分割壁にて分割し、分割されてできた2つの室間に対してペルチェ効果により温度差ΔTを与えるようにしたものである。この温度差生成装置30は、温度が低い室間となる低温室33a内にレンズ玉11を収容し、温度が高い室間となる高温室33b内にレンズ鏡筒12を収容することで、レンズ玉11の冷却とレンズ枠13の加熱とを同時に行う。温度差ΔTは、ペルチェ素子32に加える電圧を変化することにより制御できる。また、ペルチェ素子32を複数層に重ねて使用すれば、温度差ΔTの上限をより大きくできる。
【0032】
このように、本発明の具体例として示すレンズ本体1は、レンズ玉11をレンズ枠13内に固定させる過程でレンズ玉11を冷却して、そのレンズ直径Dを熱収縮により小さくすること、また、レンズ鏡筒12を加熱してレンズ枠13の大内径φを熱膨張により大きくすること、また、レンズ玉11の熱収縮とレンズ枠13の熱膨張とを併用すること等により、レンズ枠13の大内径φとレンズ玉11のレンズ直径Dの相対的な大きさを一時的に変形させて、レンズ玉11をレンズ枠13内に収容する。その後、双方の温度差を無くすことで、レンズ玉11のレンズ直径Dをレンズ枠13の大内径φよりも大きい状態に戻し、レンズ玉11をレンズ枠13内に固定する。
【0033】
なお、このときレンズ直径Dの方が大内径φより大きいため、レンズ玉11は、レンズ直径Dが小さくなる方向にレンズ枠13によって押圧され、レンズ枠13は、逆に大内径φが大きくなる方向に押圧されている。そのため、レンズ玉11とレンズ枠13とは、押圧される方向に弾性変形した状態になる。そして、弾性変形による押圧力により摩擦力が発生し、この摩擦力によりレンズ玉11がレンズ枠13内に固定保持される。
【0034】
この方法により固定された後は、多少の温度変化があっても、レンズ玉11とレンズ鏡筒12は、どちらも同様に温度に応じて熱膨張或いは熱収縮するため、レンズ玉11の外周の外側面がレンズ枠13の内側面に密着した状態が常に保たれる。その結果、温度変化によってレンズ玉11がレンズ枠13から外れることはない。
【0035】
また、レンズ玉11の弾性変形が大きすぎるとレンズ面精度の悪化を招くため好ましくないが、実際は、各部の寸法の取り方を工夫することにより、弾性変形の大部分をレンズ枠側にて起こさせることにより、レンズ玉側の変形分を無視できる範囲に留めることができ、レンズ面精度の悪化を実用上ないに等しい程度にすることができる。
【0036】
詳細は後述するが、例えば、レンズ直径D=25[mm]、凸部の高さh=5[mm]のレンズ玉11を、上述した方法によりレンズ枠13に固定した場合、レンズ玉11のレンズ直径に対する変形量が最大でも3μm以下、凸部高さに対する変形量が最大でも0.3μm以下にすることが容易に実現できる。
【0037】
また、上述したレンズ固定方法におけるレンズ玉11の固定後の位置ずれや傾きは、レンズ玉11とレンズ枠13の成型時に発生する誤差範囲内となり、固定過程に悪化を招く要因がほとんどないため、厳しい条件が必要になる熱かしめ法やUV接着法に比べ、光学的な不良率を大幅に低減できる。さらには、光学性能を向上できる。
【0038】
そのうえ、熱かしめ法やUV接着法のような厳しい条件が不要となるため、レンズ本体を製造するための設備の調整期間を大幅に短縮でき、この間にかかる経費を削減できる。その結果、熱かしめ法やUV接着法に比べ、小型かつ光学的に高性能なレンズ本体を安価に提供できる。
【0039】
以下では、本発明の具体例として示すレンズ本体について、さらに具体的に説明する。
【0040】
まず、本発明のレンズ本体におけるレンズ玉11のレンズ枠13への固定は、レンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との間に発生する摩擦力により達成される。この摩擦力は、レンズ枠13の大内径φよりも大きなレンズ直径Dを有するレンズ玉11をレンズ枠13内に収容させた状態で、丁度引き延ばされた輪ゴムが元の大きさに戻ろうとするようにレンズ枠13がレンズ玉11の外側面を内側に締め付ける力が働くことにより得られる。
【0041】
ここで、レンズ枠13がレンズ玉11を締め付けるときに発生する力について、図7を用いて説明する。レンズ枠13がレンズ玉11を締め付けるときに発生する力は、図7に実線で示すように、レンズ枠13をリング状と考えると容易に計算できる。図7は、レンズ枠13をリング状と考えたときに各部に発生する力の関係を説明している。
【0042】
レンズ玉11を収容したレンズ枠13は、レンズ玉11と同温度になったとき、レンズ玉11によって外側に向かって押圧されるため2点鎖線で示すように内径が大きくなる方向に変形する。このとき、レンズ枠13を外側に向かって押圧する力をfとし、同方向への変位量をΔrと仮定する。また、レンズ枠13を接線方向へ引き延ばそうとする引張力をFとし、内周Lの変位量をΔLと仮定すると、仮想仕事法により、fΔr=FΔLが成り立つ。ここで、ΔL=2πΔrであるので、以下の式(1)が得られる。
【0043】
f=2πF・・・・・(1)
【0044】
また、本具体例のレンズ本体において、図8に示すように、レンズ枠13内に収容されない状態で直径がDであったレンズ玉11のレンズ枠13内に収容後の外径を2rとすると、レンズ玉11を収容しない状態で内径がφであるレンズ枠13の内径もレンズ玉11を収容した状態では2rとなる。ここでレンズ玉11の外側面に働く力をf1、応力をσ1とすると、下式(2)が得られる。
【0045】
f1=πDdσ1・・・(2)
【0046】
ここで、レンズ玉11のレンズ枠13への収容後における外径方向の半径に対する変形量をΔr1とし、レンズ玉11の歪率をε1、圧縮弾性率をEpとすると、σ1=Epε1、ε1=2Δr1/Dであるので式(2)は、以下の式(3)のようになる。
【0047】
f1=2πdEpΔr1・・・(3)
【0048】
また、レンズ玉11を収容後におけるレンズ枠13の内側面に働く力を図7で定義したfとすれば、レンズ枠13を接線方向へ引き延ばそうとする引張力はFとなり、式(1)が成り立つので、レンズ枠13を接線方向へ引き延ばそうとする応力をσ2とすると、式(4)が得られる。
【0049】
f=2πF=2πσ2dw・・・(4)
【0050】
ここで、レンズ枠13の内径方向の半径に対する変形量をΔr2、レンズ枠13の歪率をε2、レンズ枠13の引張弾性係数をEtとすると、σ2= Etε2、ε2=ΔL/L=2πΔr2/(πφ)=2Δr2/φであるので式(4)は、式(5)となる。
【0051】
f=4πdwEtΔr2/φ・・・(5)
【0052】
そして、レンズ玉11の外側面を押圧する力f1と、レンズ枠13の内側面を押圧する力fとは、等しいので、式(3)、式(5)から以下の式(6)が得られる。
【0053】
2πdEpΔr1=4πdwEtΔr2/φ・・・(6)
【0054】
すなわち、以下の式(7),(8)が成り立つ。
【0055】
Δr1/(Δr1+Δr2)=2wEt/(Epφ+2wEt)・・・(7)
Δr2/(Δr1+Δr2)=Epφ/(Epφ+2wEp)・・・(8)
【0056】
ここで、レンズ玉11のレンズ枠13への固定状態を400G以上(実使用上この衝撃に耐えられれば十分とされる値)の衝撃に耐えられるようにするには、
μ:レンズ玉11とレンズ枠13との間に働く摩擦力の摩擦係数
V:レンズ玉11の体積
ρ:レンズ玉11の比重
とすると、下式(9)を満たす必要がある。
【0057】
fμ≧400ρV・・・(9)
【0058】
式(3)のf1と式(9)のfとは一致するので、式(10)が得られる。
【0059】
2πdEpΔr1μ≧400ρV
Δr1≧200ρV/(πdEpμ)・・・(10)
【0060】
ここで、V<π(D/2)2hであるので、式(10)においてVとπ(D/2)2hとを入れ替えた下式(11)を満たすΔr1は、十分に式(10)を満たすことになる。
【0061】
Δr1≧200ρ(D/2)2h/(dEpμ)・・・(11)
【0062】
ここで、レンズ玉11とレンズ鏡筒12の素材をともにポリカーボネイトとした場合について説明する。レンズ玉11の圧縮弾性率、静止摩擦係数、比重は、表1より、順にEp=24694[Kg/cm2]、μ=0.52、ρ=1.2である。
【0063】
【表1】
【0064】
なお、表1のデータは、工業調査会発行のプラスチック・データブック、啓林館発行の高等学校物理、培風館発行の物理学辞典より抜粋したものである。また、元データの単位がメガパスカル(MPa)表示されていたものは、カッコ内に元データを示した。MPaからKg/cm2への変換時に計算に用いた重力加速度は9.8m/s2である。
【0065】
ただし、ポリカーボネイトのデータにおける静止摩擦係数、ポアソン比及び屈折率を除くデータは、1999年工業調査会発行 プラスチック・データブックp.10より抜粋した。また、メタクリル樹脂のデータにおける静止摩擦係数、ポアソン比及び屈折率を除くデータは、1999年工業調査会発行 プラスチック・データブック p.9より抜粋した。ポリカーボネイトとメタクリル樹脂のデータにおける静止摩擦係数は、1999年工業調査会発行 プラスチック・データブック p.156「a静止摩擦係数」より抜粋した。ポリカーボネイトの静止摩擦係数のカッコ内の値は、1999工業調査会発行 プラスチック・データブック p.153「(143)各種プラスチックの摩擦係数」より抜粋した。ポリカーボネイトのデータにおける屈折率は、1999年工業調査会発行 プラスチック・データブック p.37「(21)屈折率とアッベ数との関係」より抜粋した。メタクリル樹脂のデータにおける屈折率は、1999年工業調査会発行 プラスチック・データブック p.470「(2)PMMA成型材料の屈折率とアッベ数との関係」より抜粋した。ガラスのデータにおける線膨張係数は、1992年培風館発行 物理学辞典 p.2371「表40 種々の物質の線膨張係数β[1/℃]」より抜粋した。ガラスのデータにおけるヤング率、比重及びポアソン比は、1992年培風館発行 物理学辞典 p.2358「表13 固体の力学的性質」より抜粋した。ガラスのデータにおける屈折率は、平成5年度用 啓林館発行 高等学校物理 p.149「表2 いろいろな物質の屈折率」より抜粋した。ガラス繊維強化PC(ガラス繊維含有率30%)のデータにおける線膨張係数は、プラスチック・データブック p.55「(55)ポリカーボネイトのガラス繊維含有率と熱膨張係数」より抜粋した。ガラス繊維強化PC(ガラス繊維含有率30%)のデータにおける引張破断強度、曲げ弾性率及び熱変形温度は、プラスチック・データブック p.790,791「1ファンクスターの物性」より抜粋した。
【0066】
レンズ玉11の外径をD=25[mm]、d=3[mm]、h=5[mm]とすると、以下の値が得られる。
【0067】
【0068】
また、式(9)のfは、式(5)のfと一致するので、以下の式(12)の値が得られる。
【0069】
4πdwEtΔr2μ/φ≧400ρV
Δr2≧100ρVφ/(πdwEtμ)・・・(12)
【0070】
ここで、V<π(D/2)2hであるので、式(12)においてVとπ(D/2)2hとを入れ替えた下式(13)を満たすΔr2は、式(12)を十分満たす。
【0071】
Δr2≧100ρ(D/2)2hφ/(dwEtμ)・・・(13)
【0072】
ここで、レンズ玉11とレンズ鏡筒12の素材をともにポリカーボネイトとした場合、表1によりEt=24286[kg/cm2]、μ=0.52、ρ=1.2である。また、上記説明によりD=25[mm]、d=3[mm]、h=5[mm]である。レンズ枠13の幅はw=1[mm]とし、φもDに略等しいのでφ=25[mm]とすると、以下の値が得られる。
【0073】
【0074】
(a)、(b)の結果から、外径25mm、高さh=5mm、外周の幅d=3mmのレンズ玉11を厚さw=1mmのレンズ枠13に固定させる場合に、レンズ玉11の外径方向の半径に対する変形量をわずかΔr1=0.5μm、レンズ枠13の内径方向の半径に対する変形量をわずかΔr2=6.2μmとするだけで400Gの衝撃に耐えることが証明できた。
【0075】
ここで、レンズ玉11とレンズ枠13の成型誤差が±5μmである場合に、Δr1=0.5[μm]以上、Δr2=6.2[μm]以上を常に維持させるためには、レンズ玉11のレンズ直径Dのセンター設計値を25mmとした場合、レンズ枠13の大内径φのセンター設計値は、以下のようにする必要がある。
【0076】
【0077】
この設計値に対して、レンズ玉11の外径が最大限に大きくなるとともにレンズ枠13の内径が最小限に小さくなる方向にレンズ玉11とレンズ枠13の成型誤差が発生した場合には、レンズ玉11の固定時のレンズ玉11とレンズ枠13の変形量は最大となり、これを計算すると、式(7)、式(8)が成り立つことから、以下の値を得る。
【0078】
【0079】
そこで、Δr2がレンズ枠13の弾性変形の領域を超え塑性変形の領域に入ると、レンズ玉11を安定して固定する力が得られなくなるので、2Δr2=31.174μmがレンズ枠13が弾性変形するに際して無理のない変形量であるかどうかの検証を行ってみる。
【0080】
ポリカーボネイトの引張破断強度は、表1より、σmax1=643〜735[kg/cm2]である。σmax1=650[kg/cm2]とおいて、Δr2の許容最大値について検証してみると、Etε2<σmax1が成り立たなくてはならない。ここで、ε2=ΔL/L、ΔL=2πΔr2、L=πφであるから、以下のような値となる。
【0081】
【0082】
この値に比べて、2Δr2=31.174[μm]は、十分に小さいため許容できる変形量であることが判る。
【0083】
同様に、2Δr1=2.528[μm]がレンズ玉11に対して無理のない変形量であるかどうかの検証を行ってみる。ポリカーボネイトの圧縮強度は、表1より、σmax2=704〜878[kg/cm2]である。σmax2=700[kg/cm2]とおいて、Δr1の許容最大値について検証してみると、Epε1<σmax2が成り立たなくてはならない。ここで、ε1=2Δr1/Dであるから、以下のような値となる。
【0084】
【0085】
この値に比べて、2Δr1=2.528[μm]は、十分に小さいため許容できる変形量であることが判る。
【0086】
続いて、レンズ玉11の外径に対する変形量2Δr1=2.528μmは、面精度を悪化させるかどうかについて検証してみる。本発明によれば、レンズ玉11には外側面を内側に向かって押圧する力が略均等に分布するのみであり、受光面には直接外力が加わることはない。つまり、レンズ玉11の外側面を押圧する力により発生する受光面の変形は、ポアソンの式により導かれる変形のみである。
【0087】
この変形は、レンズ玉11の受光面全体が厚さ方向に膨らむものであり、その表裏の受光面の変形量の合計をΔhとおくと、Δh=2Δr1νh/Dで表せる。ここで、νは、ポアソン比である。ポアソン比が0.5を超える物質は存在しないため、大まかに見積もってν=0.5としたとき、Δh=2.528×0.5×5/25=0.2528μmとなる。
【0088】
ところで、L.Layletghによれば、2つの面を持つ単レンズでは屈折率nのレンズ面において面の各部が他の部分に対してδの誤差を持っている場合、その誤差δがδ≦λ/8(n−1)を満たす値であれば、象の分解能に影響を与えない。
【0089】
ここで、ポリカーボネイトの屈折率は、n=1.58(表1)であり、波長λに可視光における短い側の限界値である380nmを当てはめるとλ/8(n−1)=0.082μmとなる。レンズ玉11の片面側についてのみの変形量は、Δhの半分(0.1264μm)となる。
【0090】
ところで、レンズ全表面は、略均等に変形し、レンズ面の各部の他の部分に対する誤差δは、この値(0.1264μm)よりも大幅に小さくなるため、δ≦λ/8(n−1)=0.082μmが十分に満たされる。このように、レンズ玉11の歪みは十分に小さく面精度への悪影響を与えることはない。
【0091】
最後に、上記のような固定状態を得る過程でレンズ玉11とレンズ枠13との間に熱膨張若しくは熱収縮により必要な隙間を得ることができるかどうかの検証を行う。線熱膨張係数αの素材を用いて長さLに対して、温度差ΔTを与えて、ΔL以上の変位量を得る場合、ΔTは下記式を満たさなくてはならない。
【0092】
ΔT≧ΔL/(αL)
【0093】
ここで、αにはポリカーボネイトの線熱膨張係数(68×10−6[1/℃](表1))を与え、Lにはレンズ玉11のレンズ直径D(25mm)を与える。また、ΔLは、レンズ玉11の固定時におけるレンズ玉11の外径に対する変形量2Δr1とレンズ枠13の内径に対する変形量2Δr2に加えて、レンズ玉11とレンズ枠13の成型誤差による影部分と、レンズ玉11をレンズ枠13内に収容するときに必要なレンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との間に形成すべき距離とからなる。
【0094】
例えば、レンズ玉11をレンズ枠13に容易に収容させるために必要なレンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との間の距離を10μmとし、レンズ玉11の外径φとレンズ枠13の内径の成型誤差をともに実現可能な±5μmとした場合に、レンズ玉11とレンズ枠13とに与えるべき変位量ΔLは、以下のようになる。
【0095】
ΔL=0.5×2+6.2×2+(5+5)×2+10×2
=53.4[μm]
【0096】
したがって、ΔTは、以下のようになる。
【0097】
ΔT≧53.4×10−6/(68×10−6×25×10−3)
≒31.4[℃]
【0098】
この温度差31.4[℃]は、熱変形温度が100℃以上(表1に記載)のポリカーボネイトにとって、十分に与えることが可能な値であり、熱膨張或いは熱収縮によりレンズ玉11をレンズ枠13の間に収容するために必要な隙間を得られることが証明できる。
【0099】
以上の説明によりレンズ玉11とレンズ鏡筒12の素材としてポリカーボネイトを用いることができる。この場合の計算結果を第1例として表2に示す。同様に、レンズ玉11とレンズ鏡筒12の素材がともにメタクリルである場合であっても本具体例のレンズ本体1は、実施可能である。この場合の計算結果は、第2例として表2に示す(途中計算は、省略する。)。
【0100】
【表2】
【0101】
ただし、第1例、第2例、第4例における温度以外の各値は、常温(25℃)における値である。また、第3例におけるレンズ玉のレンズ直径D、レンズ玉の凸部までの厚みh、レンズ玉の外周の厚みd、レンズ鏡筒端部の大内径φ、大内径におけるレンズ鏡筒の肉厚wは、使用温度範囲の上限(70℃)のときの値を示す。第3例におけるレンズ玉のレンズ直径Dの変形歪量2Δr1の最低値、レンズ鏡筒端部の大内径φの変形歪量2Δr2の最低値は、使用温度範囲の上限(70℃)において、D=25[mm]−5[μm]、φ=24.9605[mm]+5[μm]のときの値を示す。第3例におけるレンズ玉のレンズ直径Dの変形歪量2Δr1の最大値、レンズ鏡筒端部の大内径φの変形歪量2Δr2の最小値は、使用温度範囲の下限(−10℃)において、D=25[mm]−5[μm]、φ=24.9605[mm]+5[μm]のときの値を示す。
【0102】
また、レンズ玉11がガラスでレンズ鏡筒12が樹脂である場合、これらは線熱膨張係数が異なる材質同士であり、レンズ玉11の固定後にレンズ本体全体の温度が変化すると固定強度が変化する。そのため、使用温度範囲内で十分な固定強度を保持させる必要がある。そこで、レンズ枠13の変形量Δr2を大きくして線熱膨張係数の差による変形量を吸収させる。ガラスは、表1に示すようにポリカーボネイトやメタクリル樹脂に比べて圧縮弾性率が略30倍と大きいため、レンズ枠13の変形量Δr2をある程度大きくしてもレンズ玉11の外径方向の半径に対する変形量Δr1や厚み方向の変形量Δhを十分小さく抑えることができる。
【0103】
したがって、面精度の悪化を抑制できる。そのうえ、ガラスの比重は、圧縮弾性率の大きさの割にポリカーボネイトやメタクリルに比べて2〜3倍程度と大幅に小さいため、レンズ枠13の変形量Δr2を大きくすれば、広範囲の温度環境下でレンズ玉11とレンズ鏡筒12とが同材質である場合と同様の衝撃(400G)に耐えられる十分な固定強度が得られる。この計算結果も、第1例、第2例と同様に第3例として表2に示す。
【0104】
ここで、第3例の計算過程について説明する。レンズ玉11がガラスであるため、表1によりEp=730071kg/cm2、μ=0.5、ρ=3.6とおくことができる。なお、ここでは、圧縮弾性率としてヤング率を使用した。また、静止摩擦係数μは、ポリカーボネイトと鋼材との間で0.6であることから、少なくとも0.5以上であると思料して0.5とし、比重は、最も条件の悪い最大値ρ=3.6を採用した。第1例、第2例と同様に、レンズ玉11の外径をD=25mm、d=3mm、h=5mmとして、これら値を式(11)に代入すると以下の値が得られる。
【0105】
【0106】
また、同様に、式(13)にμ=0.5、ρ=3.6を代入すると以下の値が得られる。
【0107】
【0108】
本例では、レンズ玉11をレンズ枠13に収容時にレンズ玉11とレンズ枠13の間に隙間を与える過程において、線熱膨張係数の大きい方の材質からなるレンズ枠13側のみに温度変化を与えるのが有効である。そして、レンズ枠13を熱膨張させる過程でレンズ枠13の内径に必要な変形量には、上式(c)、(d)の変形量に加えて、レンズ玉11、レンズ枠13の成型誤差による影響分の20μmと、レンズ玉11のレンズ枠13への収容を容易に行うための隙間分とが必要である。この変形を得るのにレンズ枠13に与えるべき温度変化分ΔTを計算すると以下のようになる。
【0109】
ΔT≧(0.05×2+19.3×2+20+20)×10−6/(68×10−6×25×10−3)
≒46.3[℃]
【0110】
ここで、ポリカーボネイトの耐熱温度の上限が120℃であるので、使用温度の上限は、120−46.3=73.3[℃]となる。そこで使用温度の上限を70℃とし、それより80℃下方の−10℃までの範囲を使用温度範囲とした場合、レンズ玉11の直径とレンズ枠13の大内径の変形量の合計は、−10℃のとき最大となる。そして、その変形量は、温度変化分ΔT=80[℃]によりレンズ玉11の内径とレンズ枠13の外径との間に発生する熱収縮の差、式(c)、(d)で計算した値、及び成型誤差による影響分の合計で略構成される。これを計算すると、以下の値を得る。
【0111】
(68−8)×25×10−3×80+0.05×2+19.3×2+20=178.7[μm]
【0112】
したがって、2Δr1、2Δr2の最大値を計算すると、式(7)、式(8)が成り立つことから、以下のようになる。
【0113】
【0114】
【0115】
また、レンズ玉11の高さ方向の変形量Δhの最大値は、表1からポアソン比ν=0.44であることから、以下のようになる。
【0116】
【0117】
以上の計算過程(一部分計算省略)により表2の第3例のような結果となった。
【0118】
第3例は、レンズ玉11がガラスでレンズ鏡筒12がポリカーボネイトの場合であり、線熱膨張係数が異なる材質の組み合わせであるにもかかわらず、ΔT=80[℃]の範囲で、第1例、第2例と同様に400G以上の衝撃に耐え得ることと、レンズ玉11の変形量を低く抑えることを両立しており、第1例、第2例と実用上同様の性能を得ることができる。
【0119】
続いて、レンズ玉11をガラスとし、レンズ枠13をガラスと線熱膨張係数が略等しいガラス繊維強化ポリカーボネイト(ガラス繊維含有率30%)とした場合について考える。この計算は、レンズ玉11とレンズ枠13の線熱膨張係数が略等しい場合であって、第1例、第2例の場合と同様に求められるため、計算過程を省略する。計算結果を第4例として表2に示す。
【0120】
なお、第4例の計算は、表1に記載のデータを使用し、ガラス繊維強化ポリカーボネイトの引張弾性係数は、近似値として曲げ弾性率を使用した。この計算の結果、第4例は、全ての例の中でレンズ玉11とレンズ枠13の変形歪が最小となり、精度の面では最も好ましい。ただし、レンズ玉11の収容を容易に行うためのレンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との距離を他の例と同じように設けようとすると温度差ΔTが261.5℃となり実現困難となる。
【0121】
そこで、レンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との距離を0μm以上とし、レンズ玉11のレンズ直径Dの成型誤差を±2.5μmとし、レンズ枠13の大内径φの成型誤差を±2.5μmとする。このとき、ΔT=111.5℃となり、実現可能である。
【0122】
この条件では、レンズ玉11の外側面とレンズ枠13の内側面との距離が0〜10μmとなり、レンズ玉11とレンズ枠13の成型後の寸法によっては、多少の加圧が必要な場合も考えられるが、レンズ玉11をレンズ枠13内に十分に収容できる。
【0123】
また、レンズ直径とレンズ枠の内径の寸法管理において、成型誤差を厳しくする代わりに、出来上がった複数のレンズ玉11のレンズ直径Dとレンズ枠13の大内径φとを同温度下で実測し、その差(D−φ)が所定の範囲となる組み合わせを予め用意し、これらレンズ玉11とレンズ枠13に温度差ΔTを与えてもよい。
【0124】
例えば、(D−φ)が12.3〜17.3μmの範囲内であるレンズ玉11とレンズ枠13の組み合わせでは、86.5℃以上のΔTを与えるだけで、レンズ玉11のレンズ直径Dよりレンズ枠13の大内径φが大きくなり、レンズ玉11をレンズ枠13内に収容させることができる。そして、同温度に戻したときには、レンズ玉11の固定強度は400G以上の衝撃に十分に耐えられる値となる。この方法によれば、成型誤差のバラツキが発生しても、本発明を無理なく実施できる。
【0125】
ところで上記各例において、レンズ枠の変形量Δr2によっては、レンズ玉11の位置ずれが懸念されるが、これはレンズ枠13の全周について均等に発生する変形量であるため、これによってレンズ玉11の位置ずれが発生することは略ないと考えられる。
【0126】
すなわち、レンズ玉11の位置ずれが発生するとすれば、レンズ枠13の各部の断面積のバラツキによって発生することが考えられるが、レンズ枠13の各部の肉厚wと深さdに±5μmの誤差が発生していたとしても、最大でも{(1+0.005)×(3+0.005)−1×3}÷{(1−0.005)×(3−0.005)}×100=0.67[%]のずれで済む。
【0127】
したがって、Δr2がΔr2=89.1μmである第3例のように、大幅に大きくなる例をとっても、0.67%は、0.60μmに過ぎないため、Δr2が位置ずれに影響することは殆どない。
【0128】
上記各例におけるレンズ玉11の固定強度の計算では、レンズ玉は、図9に示すように凸部分を除いた厚さがdmmの円板状とし、レンズ枠13は、レンズ鏡筒12のレンズ枠以外の部分を除いた形状(断面が縦横dmm×wmmで全体がリング状である。)としている。また、レンズ玉11の固定状態が400G以上の衝撃に対して耐えられる条件を与えるところでは、図10に示すように、レンズ玉11の体積を実際よりも大きめに仮定して計算している。そのため、実際には、計算上よりも質量が小さなレンズ玉11に対して計算よりも大きな固定強度が働くことになり、計算よりも信頼性の高い固定状態を得ている。
【0129】
なお、本発明は、上述した具体例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0130】
例えば、本具体例では、レンズ玉11とレンズ枠13がともにポリカーボネイトである場合、レンズ玉11とレンズ枠13がともにメタクリル樹脂である場合、レンズ玉11がガラスでレンズ枠13がポリカーボネイトである場合、レンズ玉11がガラスでレンズ枠13がガラス繊維強化ポリカーボネイト(ガラス繊維含有率30%)である場合について述べたが、レンズ玉とレンズ枠を構成する素材はこれら組み合わせに限定するものではなく、他に任意の素材を使用した場合も可能である。
【0131】
また、本発明によれば、レンズ枠13の内径寸法を上記説明の場合よりも少し大きめの値とした場合に、摩擦だけによる固定強度は少し小さめになるが、接着等の固定手段を併用してもよい。接着等の他の固定手段を併用すれば、十分な固定強度の確保と上記例の場合と同様の高い位置決め精度を得ることができる。そのうえ、レンズ玉をレンズ枠へ収容する際に、レンズ玉とレンズ枠との間に与える温度差ΔTを小さくできるため、特に、第4例の組み合わせのようにレンズ玉とレンズ枠双方の線熱膨張係数が10×10−6[1/℃]前後と小さい場合に、特に有効である。
【0132】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係るレンズ固定方法によれば、レンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差を与え、レンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差が生じた後、レンズ玉とレンズ鏡筒とを組み付け、組み付けられたレンズ玉とレンズ鏡筒とを同温にすることにより、レンズ玉の外側面がレンズ枠の内側面に密着されレンズ玉がレンズ枠に固定される。
【0133】
これにより、レンズ玉の固定位置精度が向上され、レンズ玉の面精度の悪化が低減される。また、レンズ本体の光学的な不良率を大幅に低減させて光学性能を向上させることができる。
【0134】
また、本発明に係るレンズ固定装置によれば、温度差付与手段においてレンズ玉とレンズ鏡筒との間に温度差を与え、レンズ鏡筒との間に温度差が生じた後、レンズ玉とレンズ鏡筒とを組み付け、組み付けられたレンズ玉とレンズ鏡筒とを温度調節手段にて同温にすることにより、レンズ玉の外側面がレンズ枠の内側面に密着されレンズ玉がレンズ枠に固定される。
【0135】
これにより、レンズ玉の固定位置精度が向上され、レンズ玉の面精度の悪化が低減される。また、レンズ本体の光学的な不良率を大幅に低減させて光学性能を向上させることができる。
【0136】
また、本発明に係るレンズ本体は、凸型形状を有しレンズ枠部材よりも若干大のサイズを有するレンズ玉と、レンズ玉のレンズ光軸に平行であって、レンズ玉外縁を覆うレンズ枠部材が設けられたレンズ鏡筒とを備え、レンズ枠部材よりも若干大のサイズを有するレンズ玉が温度差による形状変化によってレンズ玉の外側面がレンズ枠の内側面に密着されレンズ玉がレンズ枠に固定されることで、レンズ玉の固定位置精度が向上され、レンズ玉の面精度の悪化が低減される。また、レンズ本体の光学的な不良率を大幅に低減させて光学性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の具体例として示すレンズ本体を説明する断面図である。
【図2】上記レンズ本体におけるレンズ玉をレンズ枠へ固定する一連の工程を説明する図である。
【図3】上記レンズ本体におけるレンズ玉をレンズ枠へ固定する固定処理を説明するフローチャートである。
【図4】上記固定処理にて、レンズ枠側に温度変化による寸法変化を与える場合を説明するフローチャートである。
【図5】上記固定処理にて、レンズ玉とレンズ枠の双方に温度変化による寸法変化を与える場合を説明するフローチャートである。
【図6】レンズ玉とレンズ枠の双方に温度変化を与える場合の処理に適用できる温度差生成装置を説明する図である。
【図7】上記レンズ本体において、レンズ枠の各部に発生する力を説明する模式図である。
【図8】上記レンズ本体において、レンズ玉及びレンズ鏡筒の各部に発生する力を説明する模式図である。
【図9】レンズ玉のレンズ枠に対する固定強度の計算を説明する図である。
【図10】レンズ玉のレンズ枠に対する固定強度の計算を説明する図である。
【図11】従来の熱かしめ法によるレンズ玉のレンズ枠への固定方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 レンズ本体、11 レンズ玉、12 レンズ鏡筒、13 レンズ枠、21冷却手段、22 加熱手段、30 温度差生成装置、31 容器、32 ペルチェ素子、33a 低温室、33b 高温室
Claims (10)
- レンズ玉をレンズ鏡筒の他端に設けられたレンズ枠に対して固定するレンズ固定方法において、
上記レンズ玉と上記レンズ鏡筒との間に温度差を与える温度差付与工程と、
上記温度差付与工程において上記レンズ玉と上記レンズ鏡筒との間に温度差が生じた後、上記レンズ玉と上記レンズ鏡筒とを組み付ける組付工程と、
上記組み付けられたレンズ玉とレンズ鏡筒とを同温にする温度調節工程とを有することを特徴とするレンズ固定方法。 - 上記レンズ玉は、上記レンズ枠のサイズより若干大のサイズとして用意され、
上記温度差付与工程は、上記レンズ玉を上記レンズ鏡筒の温度以下に冷却するレンズ玉冷却工程であり、
上記温度調節工程は、上記レンズ玉及び上記レンズ鏡筒を加熱する加熱工程であることを特徴とする請求項1記載のレンズ固定方法。 - 上記レンズ玉は、上記レンズ枠のサイズより若干大のサイズとして用意され、
上記温度差付与工程は、上記レンズ枠を上記レンズ玉の温度以上に加熱するレンズ枠加熱工程であり、
上記温度調節工程は、上記レンズ玉及び上記レンズ鏡筒を冷却する冷却工程であることを特徴とする請求項1記載のレンズ固定方法。 - 上記レンズ玉を構成する素材の線熱膨張係数は、上記レンズ枠を構成する素材の線熱膨張係数と略等しいことを特徴とする請求項1記載のレンズ固定方法。
- レンズ玉をレンズ鏡筒の他端に設けられたレンズ枠に対して固定するレンズ固定装置において、
上記レンズ玉と上記レンズ鏡筒との間に温度差を与える温度差付与手段と、
上記温度差付与手段にて上記レンズ玉と上記レンズ鏡筒との間に温度差が生じた後、上記レンズ玉と上記レンズ鏡筒とを組み付ける組付手段と、
上記組み付けられたレンズ玉とレンズ鏡筒とを同温にする温度調節手段とを備えることを特徴とするレンズ固定装置。 - 上記レンズ玉は、上記レンズ枠のサイズより若干大のサイズを有し、
上記温度差付与手段は、上記レンズ玉を上記レンズ鏡筒の温度以下に冷却するレンズ玉冷却手段を有し、
上記温度調節手段は、上記レンズ玉及び上記レンズ鏡筒を加熱する加熱手段を有することを特徴とする請求項5記載のレンズ固定装置。 - 上記レンズ玉は、上記レンズ枠のサイズより若干大のサイズを有し、
上記温度差付与手段は、上記レンズ枠を上記レンズ玉の温度以上に加熱するレンズ枠加熱手段を有し、
上記温度調節手段は、上記レンズ玉及び上記レンズ鏡筒を冷却する冷却手段を有することを特徴とする請求項5記載のレンズ固定装置。 - 上記温度差付与手段は、外部との断熱が保たれた温室を有し、該温室は、ペルチェ素子からなる壁で仕切られた低温室と高温室とが構成されていることを特徴とする請求項5記載のレンズ固定方法、
- 上記レンズ玉を構成する素材の線熱膨張係数は、上記レンズ枠を構成する素材の線熱膨張係数と略等しいことを特徴とする請求項5記載のレンズ固定装置。
- 凸型形状を有しレンズ枠部材よりも若干大のサイズを有するレンズ玉と、
上記レンズ玉のレンズ光軸に平行であって、上記レンズ玉外縁を覆う上記レンズ枠部材が設けられたレンズ鏡筒とを備え、
上記レンズ枠部材よりも若干大のサイズを有するレンズ玉が温度差による形状変化により組み付けられ固定されてなることを特徴とするレンズ本体。
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- 2003-04-18 JP JP2003114915A patent/JP2004317990A/ja not_active Withdrawn
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