JP5493609B2 - 液体レンズ、及び撮像装置 - Google Patents

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Description

本発明は、可変焦点レンズとして使用される液体レンズ、及びこの液体レンズを用いた撮像装置に関する。
従来、スチルカメラやビデオカメラなどの撮像装置の撮像レンズの物体側、すなわち前方に装着し、全系の焦点面を一定位置に維持した状態で撮像系全体の焦点距離を広角側に変化させるフロント装着方式のコンバージョンレンズ(いわゆるワイドコンバータ)が種々提案されている。
例えば、下記特許文献1には、主レンズ系であるズームレンズの物体側に装着して、レンズ全系の画角を広げることのできる広角コンバージョンレンズが記載されている。この広角コンバージョンレンズは、物体側に凸面を向けて配置される凹メニスカスレンズと、プラスチックスの非球面レンズと、凹メニスカスレンズよりも像側に配置される凸レンズの3枚のレンズで構成される。
特開2002−214529号公報
ところで、先に本出願人は、可変焦点レンズとして液体レンズを提案している。この液体レンズは、一方が透明で変形可能な変形膜で形成した一対の透明部材と、この一対の透明部材に挟まれた気密空間に封入した液体とから構成される。この液体レンズは、封入された液体に外力を加えることで、透明な変形膜を球面形状に凸もしくは凹に変形させ焦点距離を可変させることができる。このため、この液体レンズは、通常の焦点距離域から広角域及びマクロ域への切り替えを可能とするコンバージョンレンズとして適用できる。
上述の液体レンズは、変形膜が液体によって膨潤や溶解を起し、変形形状が球面にならなかったり、封入されている液体が変形膜を通して滲出する等の不都合が生じないように構成することが望まれる。変形膜を樹脂薄膜やガラス薄膜で形成することにより、この問題は解決できるが、この場合、変形膜の柔軟性が損なわれ、レンズの可変焦点幅が大幅に減少し、目的のレンズ性能が得られない。
本発明は、上述の点に鑑み、膨潤や溶解、液体の滲出が起こらず、可変焦点範囲の大きな液体レンズ、及びこの液体レンズを用いた撮像装置を提供するものである。
本発明に係る液体レンズは、少なくとも一方がフッ素系エラストマー膜による変形可能な変形膜で形成された一対の透明部材と、一対の透明部材に挟まれた密閉空間に充填される、フッ素系エラストマー膜に対して親和性を有しないシリコーンオイルによる透明な液体とから構成される。
上記シリコーンオイルは、重量平均分子量500以上で、粘度50(25℃ mm/s)以上のシリコーンオイル用いることが好ましい。
上記シリコーンオイルは、メチルフェニル系シリコーンオイルを用いることが好ましい。
本発明に係る撮像装置は、撮像光学系を有する撮像装置本体と、撮像装置本体の撮像光学系の物体側に装着される、上述のいずれかの液体レンズとを含んで構成される。
本発明の液体レンズでは、変形膜と液体の組み合わせを、上述したエラストマー膜と、シリコーンオイルの組み合わせに設定することにより、変形膜が化学的に安定し、変形膜の液体による膨潤、すなわち重量変化率が低く、かつ液体の滲出がおこらない。
本発明に係る液体レンズによれば、変形膜の液体膨潤による体積変化率が低く、かつ液体の滲出がないので、化学的に安定し、かつ十分な膜変形量が得られ、大きな可変焦点幅を確保できる液体レンズを提供することができる。
本発明に係る撮像装置によれば、上述の本発明液体レンズを装着した状態で、ワイド撮影、通常撮影、マクロ撮影の切り替えができ、長期にわたり安定して使用することができる。
本発明に係る液体レンズの第1実施の形態を示す概略断面構成図である。 第1実施の形態に係る液体レンズの動作説明に供する概略断面図である。 第1実施の形態に係る液体レンズの動作説明に供する概略断面図である。 本発明に係る液体レンズの第2実施の形態を示す概略断面構成図である。 本発明に係る液体レンズの第3実施の形態を示す概略断面構成図である。 第3実施の形態に係る液体レンズの動作説明に供する概略断面図である。 本発明に係る液体レンズの第4実施の形態を示す概略断面構成図である。 第4実施の形態に係る液体レンズの動作説明に供する概略断面図である。 フッ素系エラストマー膜の浸漬膨張試験の結果を示すグラフである。 ポリウレタンエラストマー膜の浸漬膨張試験の結果を示すグラフである。 本発明に係る撮像装置の一実施の形態を示す外観の概略構成図である。 本発明に係る撮像装置の一実施の形態を示す主要構成のブロック図である。
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1. 本発明の液体レンズの実施の形態(概要)
2. 第1実施の形態(液体レンズの概略構成例)
3. 第2実施の形態(液体レンズの概略構成例)
4. 第3実施の形態(液体レンズの概略構成例)
5. 第4実施の形態(液体レンズの概略構成例)
6. 変形膜と液体の組み合わせ材料の実施の形態
7. 第5実施の形態(撮像装置の概略構成例)
<1.本発明の液体レンズの実施の形態>
[概要]
本発明の実施の形態に係る液体レンズは、変形膜と液体の材料の組み合わせを特定することにより、化学的に安定で、かつ十分な膜変形量を得て、大きな可変焦点幅を確保できるようにしたことを特徴としている。
<2.第1実施の形態>
[液体レンズの概略構成例]
図1〜図3に、本発明に係る液体レンズの第1実施の形態の概略構成を示す。本実施の形態に係る液体レンズ1は、図1に示すように、固定の第1の透明部材2と、変形可能な変形膜で形成された第2の透明部材3とからなる一対の透明部材が設けられ、一対の透明部材に挟まれた密閉空間5に透明な液体4が充填されて構成される。液体レンズ1を構成する一対の透明部材のうち、第1の透明部材2は、物体側に配置され、変形膜である第2の透明部材は、像側に配置される。固定の第1の透明部材2は、本例では固定レンズで構成される。この液体レンズ1は、第1の透明部材2である固定レンズと、第2の透明部材3の変形膜及び第1の透明部材2の固定レンズを境界面にもつ液体4とからなる接合型のダブレットレンズとされる例である。
第1の透明部材2である固定レンズは、例えば、ガラス、アクリル、プラスチックス等の光透過性を有する透明な材料で構成され、物体側の面を凸球面状に形成され、液体4に接する面を平面状に形成される。
第2の透明部材3である変形可能な変形膜は、弾性及び柔軟性を有し、光透過性を有する透明な膜で構成される。密閉空間5に充填された液体4は、光透過性を有する透明な液体である。本実施の形態では、この第2の透明部材2である変形膜と液体4とを、後述で明らかなように、最適な組み合わせの材料で構成される。
第1の透明部材2と第2の透明部材3は、両透明部材2及び3で挟まれた密閉空間5を形成するように、例えばリング状の連結部6を介して外周部で連結される。連結部6は、第1の透明部材2の外周部に接合された第1の枠体7と、第2の透明部材3の外周部に接合された第2の枠体8を介して第1及び第2の透明部材2及び3に連結される。この連結部6により、密閉空間5内部に充填された液体4は、液密に保持される。連結部6は、伸縮性のある襞状の蛇腹構造とされており、この蛇腹構造は、例えば、気密性のある薄いアルミ箔をポリエチレンなどの樹脂でラミネートした柔軟性のあるシートを、熱融着などの手段で重ねて形成することができる。
密閉空間5に充填される液体4は、第2の透明部材3である変形膜が平面状に保持できる量に調整される。
次に、第1実施の形態の液体レンズ1の動作を説明する。液体レンズ1は、図1に示すように、通常時においては、第2の透明部材3である変形膜は、平面状に保持されている。そして、液体レンズ1は、第1の枠体7又は第2の枠体8を固定にして、固定されていない方の枠体を引いたり、押したりすることにより、封止されている液体4に圧力を与えて、第2の透明部材である変形膜の曲率を変形させることができる。
例えば、図2に示すように、第1の枠体7を固定し、第2の枠体8を矢印f1で示す方向に引くと、蛇腹構造の連結部6が伸び、第2の枠体8に囲まれた部分の第2の透明部材3である変形膜が凹状に変形する。
すなわち、密閉空間5に充填された液体4の体積は一定であるから、外周部の第1の枠体7と第2の枠体8との間隔を広げることにより、液体4が外周部に移動する。このため、第1の枠体7及び第2の枠体8に囲まれた範囲の中央部の液体の体積が減る。このとき、第1の透明部材2は固定レンズで構成されているので、図2に示すように、変形膜で構成された第2の透明部材3が凹状に変形する。これにより、液体4と変形膜である第2の透明部材3とによるレンズは凹レンズとなる。
今度は反対に、第1の枠体7又は第2の枠体8を固定して、固定されていない方の枠体を押す。例えば、図3に示すように、第1の枠体7を固定し、第2の枠体8を矢印f2で示す方向に押すと、蛇腹構造の連結部6が縮み、第2の枠体8に囲まれた部分の第2の透明部材3である変形膜が凸状に変形する。
すなわち、密閉空間5に充填された液体4の体積は一定であるから、外周部の第1の枠体7と第2の枠体8との間隔を縮めることにより、液体4が第1及び第2の枠体7及び8で囲まれた範囲の中央部に移動する。つまり、中央部の液体の体積が増える。このとき、第1の透明部材2は固定レンズで構成されているので、図3に示すように、変形膜で構成された第2の透明部材3が凸状に変形する。これにより、液体4と変形膜である第2の透明部材3とによるレンズは凸レンズとなる。
このように、第1実施の形態の液体レンズ1は、第1の枠体7、第2の枠体8のいずれか一方を固定して、他方の枠体を引いたり、押したりすることで、第2の枠体8に囲まれた変形膜による第2の透明部材3の曲率を変えることができる。
<3.第2実施の形態>
[液体レンズの概略構成例]
図4に、本発明に係る液体レンズの第2実施の形態の概略構成を示す。第2実施の形態に係る液体レンズ9は、第1の透明部材が固定の平行平板10で形成される。それ以外の構成は図1と同様であるので、図1と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。この第2実施の形態の液体レンズの動作は、図1〜図3で説明したものと同様である。
<4.第3実施の形態>
[液体レンズの概略構成例]
図5に、本発明に係る液体レンズの第3実施の形態の概略構成を示す。第3実施の形態に係る液体レンズ11は、第1の透明部材2と第2の透明部材3である変形膜とを連結する連結部12が第1の透明部材の外周部に設けられた例えばリング状の枠体13と一体に形成されて成る。第2の透明部材の外周部はダイアフラム14を構成する。第2の透明部材3のうち、液体レンズを構成する主要部分と、ダイアフラム14を構成する外周部との境界であって、第2の透明部材3の液体4に接する面側には、仕切り板15が形成される。仕切板15の一部には開口15aが形成される。ダイアフラム14を構成する第2の透明部材3表面には、支持部16が形成される。
仕切板15は、液体4における主要部分と外周部を仕切るも、開口部15aを通して液体4の主要部と外周部とを移動できるように構成される。仕切板15は、連結部12に一部連結されて形成されている。ダイアフラム14は、第2の透明部材3と一体に形成してもよいし、柔軟性を有する別部材で形成してもよい。
その他の構成は、前述の図1で説明したと同様であるので、対応する部分に同一符号を付して重複説明を省略する。
第3実施の形態の液体レンズ11では、図6に示すように、支持部16を押引することで、中央部の液体4の体積が増減して、第2の透明部材3の曲率が変化する。図6の実線は凹レンズの状態、破線は凸レンズの状態を示す。
<5.第4実施の形態>
[液体レンズの概略構成例]
図7に、本発明に係る液体レンズの第4実施の形態の概略構成を示す。第4実施の形態に係る液体レンズ21は、第1の透明部材2と第2の透明部材3とを連結する連結部22が第1の透明部材2の外周部に設けられた第1の枠体23及び第2の透明部材3の外周部に設けられた第2の枠体24と一体に構成されている。連結部22の一部に、例えば管状の液体移動部25が形成される。この液体移動部25は、密閉空間5に充填された液体4の移動を可能としている。液体移動部25は、図示しない外部のポンプ機構などの駆動により、液体4の移動、すなわち液体4の密閉空間5への供給、排出が行われるように構成される。液体移動部25は、密閉空間5の液体の流入口に設けられる。
その他の構成は、前述の図1で説明したと同様であるので、対応する部分に同一符号を付して重複説明を省略する。
第4実施の形態に係る液体レンズ21では、外部のポンプ機構を駆動して密閉空間5に充填された液体4を移動させることにより、密閉空間5に充填される液体4の体積を変化させることができる。これにより、図8に示すように、変形可能な変形膜からなる第2の透明部材3の曲率を変化することができる。図8の実線は液体4が矢印P1方向に移動して形成された凹レンズの状態、破線は液体4が矢印P2方向に移動して形成された凸レンズの状態を示す。
第3実施の形態、第4実施の形態において、第1の透明部材を、第2実施の形態(図4)と同様に、固定の平行平板10に置き換えた構成とすることもできる。
さらに、第1の透明部材を、第2の透明部材と同様に、変形膜で構成する例としてもよい。すなわち、本発明の液体レンズにおいては、一対の透明部材のうち、少なくとも一方の透明部材が変形可能な変形膜で構成されていればよく、レンズ設計により種々の組み合わせが可能である。
<6.変形膜と液体の組み合わせ材料の実施の形態>
上述したように、本実施の形態に係る液体レンズ(すなわち可変焦点レンズ)は、充填されている液体の変形膜下に存在する分の体積を変化させて、変形膜を凸もしくは凹の球面形状に変形させている。変形膜としては、液体により膨潤や溶解を起さないこと、液体が膜を通して外部に滲出しないことが重要である。変形膜にエラストマー膜を用い、液体にオイルを用いるのが好ましいとされてきたが、本発明者らは、エラストマー膜とオイルの組み合わせの中でも、特に長期にわたり安定した好ましい組み合わせを見出した。
次に、変形膜にエラストマー膜を用い、液体にオイルを用いたときの、安定した好ましい組み合わせ材料の検証結果を示す。
まず、本発明の理解を容易にするために、上記検証に至った背景について説明する。一例として、変形膜にウレタン系エラストマーを用い、液体にメチルフェニルシリコーンオイルを用いた場合、当初は良好なレンズ特性が得られた。しかし、1ヶ月後に再度使用したところ、変形膜の歪曲化と液体の滲出が起こっており、光学的に使用不可能な状態になっていることが認められた。同時期に作製した別の材料の組み合わせでは、このような現象が起こらなかった。このため、シリコーンオイルとエラストマー膜の組み合わせにより、液体レンズとしての安定性に差があることが推測された。
一般に加硫ゴム材料を油、溶剤中に浸漬すると膨れを起すことが知られており、JIS規格に浸漬試験方法(JIS K 6301)も規定されている。シリコーンオイルは、前記試験で使用している鉱物油と比べ分子量が大きく揮発性も少ないため、エラストマー膜に対しても安定と考えられていた。しかし、前述の変形膜とオイルの組み合わせで特性差が生じたことに基づき、シリコーンオイルと透明エラストマー材料について検証を行った。
[検証試験]
まず、フッ素エラストマー(T530)を10mm×10mm×2mmの大きさに切り出し、オイル中に浸漬し、一定時間経過後に取り出して重量変化量の測定を行った。浸漬中は85℃に固定し、約90倍の加速試験を行った。図9に、フッ素エラストマーと各種オイルの浸漬膨潤試験結果を示す。図9において、横軸に浸漬時間から換算した経過年数、縦軸に重量変化率(%)をとっている。図9において、曲線fはHIVAC−F4、曲線gはHIVAC−F5、曲線hはKF54、曲線iはFL100−100cs、曲線jはKF96−100cs、曲線kはTSF437、曲線mはX−22−821を示す。
次に、ポリウレタンエラストマー(XN2001)を20mm×50mm×0.2mmの大きさに切り出し、オイル中に浸漬し、一定時間経過後に取り出して重量変化・体積変化の測定を行った。図10に、ポリウレタンエラストマーと各種オイルの浸漬膨潤試験結果を示す。図10において、横軸に浸漬時間、縦軸に重量変化率をとっている。図10において、曲線aはHIVAC−F5、曲線bはKF54、曲線cはKF96−100cs、曲線dはX−22−821、曲線eはHIVAC−F4を示す。
図示しないが、同様の測定を各エラストマー膜について行い、これら各エラストマー膜の重量変化率(%)について、表1にまとめて示す。重量変化率0.5%未満を「○」、0.5〜1%未満を「△」、1%以上を「×」、測定試料無しを「−」として、それぞれ評価した。液体レンズとして安定に使用するには、浸漬膨潤試験での重量変化率が0.5%未満であることが望ましい。
更に、100μm〜200μm厚の薄膜が用意できるエラストマー膜については、レンズと同等の形状で常に凸となるように液体4を充填した試料を作成し、液体の滲出(ブリードアウト)の有無について測定を行った。表2及び表3にその測定結果を示す。いずれも室温放置を1ヶ月以上行い、ブリードアウトの有無を観察した。ブリードアウト無し、膜変形なしを「○」、ブリードアウト無し、膜変形が生じるを「△」、ブリードアウト有りを「×」、測定試料無しを「−」として、それぞれ評価した。
表2は、2年経過後の液体レンズの評価である。表3は、換算10年経過後の液体レンズの評価である。表3は、表2において、ブリードアウト無しであった試料について、85℃での加速試験を行い、換算10年経過後の状態を観察した。この加速試験により長期信頼性が確認できる。
Figure 0005493609
Figure 0005493609
Figure 0005493609
表1、表3の試験結果から、表4に、各種エラストマー膜と各種シリコーンオイルの組み合わせ可否の結果を示す。この表4では、特にオイル分子量と膨潤の関係を示している。
エラストマー膜の試料は、ポリウレタン系エラストマー膜、フッ素系エラストマー膜、シリコーン系エラストマー膜である。
[ポリウレタン系エラストマー]
・XN2001 (商品名:日本ポリウレタン工業社製)
・ピットクッション (商品名:エクシールコーポレーション社製)
・NY85A (商品名:BASFジャパン社製)
[フッ素系エラストマー]
・T530 (商品名:ダイキン工業社製)
・SIFEL3155(商品名:信越化学工業社製)
[シリコーンゴム]
・KE1935 (商品名:信越化学工業社製)
シリコーンオイルの試料は、メチルフェニル系シリコーンオイル、ジメチル系シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルである。具体的には、下記の試料を用いた。
[メチルフェニル系シリコーンオイル]
・HIVAC−F4 (Mw=476 粘度37 商品名:信越化学工業社製)
・HIVAC−F5 (Mw=563 粘度160 商品名:信越化学工業社製)
・SH705 (Mw=554 粘度180 商品名:東レ・ダウコーニング社製)
・TSF437 (Mw=755 粘度22 商品名:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
・KF54 (Mw=2770 粘度400 商品名:信越化学工業社製)
[ジメチル系シリコーンオイル]
・KF96−100cs (Mw=7730 粘度100 商品名:信越化学工業社製)
[フッ素変性シリコーンオイル]
・FL100−100cs(Mw=1960 粘度100 商品名:信越化学工業社製)
・X−22−821 (Mw=7790 粘度100 商品名:信越化学工業社製)
但し、Mwは重量平均分子量(スチレン換算)である。
[その他]
・エチレングリコール
Figure 0005493609
上記表4から、液体レンズを構成する変形膜となるエラストマー膜と液体に用いるシリコーンオイルの安定した組み合わせは、次のように設定することが望ましい。
(1)フッ素系エラストマー膜と、フッ素系エラストマー膜に対して親和性を有しないシリコーンオイル。
(2)好ましくは、フッ素系エラストマー膜と、分子量500以上で粘度50(25℃ mm/s)以上のシリコーンオイル。
(3)好ましくは、フッ素系エラストマー膜と、分子量500以上で粘度50(25℃ mm/s)以上である、メチルフェニル系シリコーンオイル、もしくはジメチル系シリコーンオイル。
(4)ポリウレタン系エラストマー膜と、ジメチル系シリコーンオイル。
上記(1)のシリコーンオイルは、より詳しくはフッ素系エラストマー膜に対して親和性を有しない官能基を有するシリコーンオイルである。
上記(4)のポリウレタン系エラストマー膜として適用可能なXN−2001は、無黄変イソシアネートとポリカーボネートポリオールを含んで構成される熱可塑性ポリウレタンエラストマーである。XN−2001は、ブルームの少ないポリウレタン系エラストマーである。なお、ブルームとは、白い粉がポリウレタン表面に出てくる現象である。
本実施の形態に係る液体レンズによれば、その変形膜3となるエラストマー膜と液体4となるシリコーンオイルの組み合わせを、上記(1)〜(4)の組み合わせのうちの、いずれかの組み合わせを用いるようになす。これにより、化学的に安定で、かつ十分な膜変形量を得て大きな可変焦点幅を確保できる、液体レンズの作成が可能になる。一例として、柔らかいエラストマー膜と屈折率1.5のシリコーンオイルを用いた場合、平面から焦点距離f9までをカバーするような可変焦点幅の大きな液体レンンズを作成することができる。
上述した本発明の実施の形態に係る液体レンズは、液体4の体積変化により第2の透明部材3である変形膜の曲率を可変できるもので、いわば可変焦点レンズとなる。そして、この可変焦点レンズとなる液体レンズは、スチルカメラやビデオカメラなどの撮像装置本体の撮像レンズの物体側、すなわち前方に装着して焦点距離を変化させるコンバージョンレンズとして用いることができる。本実施の形態の液体レンズによるコンバージョンレンズを撮像装置本体に装着することにより、コンバージョンレンズを撮像本体から外すことなく、ワイド撮影、通常撮影、マクロ撮影の切り替えが可能となる。
<7.第5実施の形態>
[撮像装置の構成例]
次に、図11及び図12を用いて、本実施の形態に係る液体レンズによるコンバージョンレンズ装置が撮像装置本体に装着された撮像装置について説明する。図11は、撮像装置の外観の概略構成を示すものであり、例えばデジタルビデオカメラを例としたものである。
図11に示す撮像装置100は、中空の外装ケース102内部に、撮像光学系が構成されるレンズ鏡筒、撮像素子、駆動制御回路等が備えられた撮像装置本体103と、コンバージョンレンズ装置31とから構成される。コンバージョンレンズ装置31は、前述した本実施の形態の液体レンズのいずれかをコンバージョンレンズとして構成されている。
撮像装置本体103を構成する外装ケース102は、横長の略直方体をなす中空の筐体からなり、長手方向を前後方向にした状態で使用されている。図11では図示されないが、外装ケース102の前部にレンズ鏡筒の撮像レンズが臨むように配設されている。レンズ鏡筒は、レンズ鏡筒内に配設された撮像光学系の光軸を水平方向に向けた状態で外装ケース102に収容されている。この例において、撮像光学系41の撮像レンズは、ズームレンズを構成するものである。外装ケース102の内部において、レンズ鏡筒の後部には後述する撮像素子が取り付けられている。そして、レンズ鏡筒の後方であって、外装ケース102の後方にはビューファインダ装置106が配置されている。
外装ケース102の上部には、外付けビデオライトや外付けマイクロホン等のアクセサリーが着脱自在に装着されるアクセサリーシューを露出させる開口部が設けられている。アクセサリーシューは、ビューファインダ装置106の直前に配置されており、通常は、開口部を開閉するシューキャップ107によって着脱可能に覆われている。更に、外装ケース102の前面の下部には、ステレオ方式のマイクロホン108が内蔵されて設けられている。そして、図示しないが、レンズ鏡筒の前面の上部には、外装ケース102に一体的に設けられているフラッシュ装置の発光部が配置されている。
外装ケース102の一方の側面には、この外装ケース102を把持するための把持部110が設けられている。この把持部110は、その内部に収納された、図には表れないメカデッキのカバー部材を兼ねている。この把持部110の上部を外側へ開くことにより、例えば内蔵されたメカデッキのカセット挿入口が露出され、テープカセット等の着脱操作が可能となっている。
更に、把持部110の上部後方には、モード選択スイッチを兼ねる電源スイッチ112と、静止画の撮影を行うシャッタボタン113と、所定の範囲内で画像を連続的に拡大(テレ)又は縮小(ワイド)させるズームボタン114が設けられている。更に、電源スイッチ112の下方には、図には表れない録画ボタンが設けられている。また、図示しないが、電源スイッチ112の下方には録画ボタンが設けられており、その録画ボタンの横、即ち外装ケース102の背面には、携帯用電源であるバッテリー装置が着脱可能に装着されるバッテリー収納部が設けられている。
外装ケース102の把持部110と反対側の面には、連結部材140を介して表示装置104が姿勢変更可能に取り付けられている。表示装置104は、例えば、ビューファインダやタッチパネルの機能を果たすものであり、液晶パネル等より構成されるものである。
そして、上述した撮像装置本体の撮像光学系の前面、すなわち、撮像レンズ前面に、コンバージョンレンズ装置31が取り付けられる。
図12に、撮像装置100の主要部分の概略構成を示すブロック図を示す。
撮像装置100は、撮像光学系41と、撮像光学系41を通して結像された被写体光を光電変換することにより、信号として出力する撮像素子46と、撮像素子46から送られた信号を処理する映像信号処理部40と、映像信号処理部40により所定の映像信号に処理された信号を、記録再生する映像信号記録/再生部42とから構成されている。
撮像光学系41を構成する撮像レンズは、前述したように、ズームレンズを構成するものである。撮像素子46は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等により構成されている。 映像信号記録/再生部42は、例えばマイクロコンピュータ(CPU)を有する演算回路等を備えて構成されており、この映像信号記録/再生部42には映像信号処理部40の他、映像信号を記録する内部メモリ43、表示装置104を駆動するモニタ駆動部44、撮像光学系41を制御する制御部45等が接続されている。制御部45には、ズームボタン114の操作等、外部からの操作信号が入力され、制御部45からの信号により、撮像光学系41のレンズ位置が調整される。
以上の構成を有する撮像装置100においては、コンバージョンレンズ装置31を装着した状態で、通常撮影、ワイド撮影、マクロ撮影が可能となる。
まず、撮像装置100を用いて、通常撮影を行う場合を説明する。この場合、コンバージョンレンズ装置31を第2の透明部材3が平状になるように、操作して調整する。第2の透明部材3が平状になったとき、コンバージョンレンズは、ワイド機能もマクロ機能も有さない。このため、撮像装置100に取り込まれる画像は、コンバージョンレンズ装置31を装着しない場合と同様の画像となり、撮像装置本体103で設定された撮像光学系の倍率設定で画像が撮影される。
次に、撮像装置100を用いて、撮像装置本体103におけるワイド端で、ワイド撮影を行う場合を説明する。まず、ズームボタン114を操作して、ズームレンズを構成する撮像光学系41を操作することにより、撮像装置本体103の撮像光学系41の焦点距離が最小となる、ワイド端(広角端)とする。この状態において、コンバージョンレンズ装置31を操作してコンバージョンレンズの第2の透明部材3が、凹状になるように調整する。第2の透明部材3が凹状とされることにより、コンバージョンレンズは、ワイド機能を有するワイドエンドコンバータとなるので、撮像装置100に取り込まれる画像の画角が広角側に拡大される。
そして、コンバージョンレンズ装置31を操作して調整することにより、第2の透明部材3の曲率を、任意の曲率となるように連続的に変化させることができる。これにより、撮像装置本体103の撮像光学系41のワイド端において、最大画角まで、任意の画角で広角側に自由に倍率を変化させることができる。
次に、撮像装置100を用いて、撮像装置本体103におけるテレ端で、マクロ撮影を行う場合を説明する。まず、ズームボタン114を操作して、ズームレンズを構成する撮像光学系41を操作することにより、撮像装置本体103の撮像光学系41の焦点距離が最大となる、テレ端(望遠端)とする。この状態において、コンバージョンレンズ装置31を操作して、第2の透明部材3が凸状になるように調整する。第2の透明部材3が凸状とされることにより、コンバージョンレンズは、マクロ機能を有するクローズアップレンズとなるので、より被写体に近づいて撮影することができる。この場合も、コンバージョンレンズ装置31を操作して調整することにより、第2の透明部材3の曲率を、任意の曲率となるように連続的に変化させることができる。これにより、撮像装置本体103の被写体に近づける距離を自由に設定することができる。
以上のように、本実施形態の液体レンズによるコンバージョンレンズ装置31を用いた撮像装置100によれば、撮像装置本体103の撮像光学系41の前面に装着されたコンバージョンレンズ装置31を装着したままの状態で、ワイド撮影、通常撮影、マクロ撮影の切り換えができる。そして、本発明の撮像装置は、化学的に安定な本発明液体レンズによるコンバージョンレンズ装置31を装着するので、長期にわたり安定して使用することができる。
1,9,11,21・・液体レンズ、2・・第1の透明部材、3・・第2の透明部材(変形膜)、4・・液体、5・・密閉空間、6・・連結部、7,8・・枠体、14・・ダイアフラム、31・・コンバージョンレンズ装置、100・・撮像装置、103・・撮像装置本体

Claims (8)

  1. 少なくとも一方がフッ素系エラストマー膜による変形可能な変形膜で形成された一対の透明部材と、
    前記一対の透明部材に挟まれた密閉空間に充填される、前記フッ素系エラストマー膜に対して親和性を有しないシリコーンオイルによる透明な液体と
    を有する液体レンズ。
  2. 前記シリコーンオイルが、重量平均分子量500以上で、粘度50(25℃ mm/s)以上のシリコーンオイルである
    請求項1記載の液体レンズ。
  3. 前記シリコーンオイルが、メチルフェニル系シリコーンオイルもしくはジメチル系シリコーンオイルである
    請求項2記載の液体レンズ。
  4. 少なくとも一方がポリウレタン系エラストマー膜による変形可能な変形膜で形成された一対の透明部材と、
    前記一対の透明部材に挟まれた密閉空間に充填されるジメチルシリコーンオイルによる透明の液体と
    を有する液体レンズ。
  5. 撮像光学系を有する撮像装置本体と、
    少なくとも一方がフッ素系エラストマー膜による変形可能な変形膜で形成された一対の透明部材と、前記一対の透明部材に挟まれた密閉空間に充填される、前記フッ素系エラストマー膜に対して親和性を持たないシリコーンオイルによる透明な液体とを有し、前記撮像装置本体の撮像光学系の物体側に装着される液体レンズと
    を含む撮像装置。
  6. 前記シリコーンオイルが、重量平均分子量500以上で、粘度50(25℃ mm/s)以上のシリコーンオイルである
    請求項5記載の撮像装置
  7. 前記シリコーンオイルが、メチルフェニル系シリコーンオイルもしくはジメチル系シリコーンオイルである
    請求項6記載の撮像装置
  8. 撮像光学系を有する撮像装置本体と、
    少なくとも一方がポリウレタンエラストマー膜による変形可能な変形膜で形成された一対の透明部材と、前記一対の透明部材に挟まれた密閉空間に充填されるジメチルシリコーンオイルによる透明な液体とを有し、前記撮像装置本体の撮像光学系の物体側に装着される液体レンズと
    を含む撮像装置。
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