JP2004317827A - 屈折率の異なる無機材料で構成される液晶表示素子、それを用いた液晶プロジェクタ及びマイクロレンズ基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】対向基板18とアクティブマトリックス基板24とがシール材20によって封入された液晶層22を介して張り合わされて液晶表示素子が構成されている。対向基板18に含まれるマイクロレンズ基板10は、無機材料の透明基板2上にその透明基板2と同一材料にて一体的に形成されたレンズ形成部分4を有するマイクロレンズアレイ6と、マイクロレンズアレイ6のレンズ形成部分4に接してそのレンズ形成部分6を被う無機材料層8とから構成されている。無機材料層8はマイクロレンズアレイ6の屈折率とは異なる屈折率を有し、その表面が平坦化されてその表面にブラックマトリクス12、透明電極14及び配向膜16が形成されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は透過型液晶用表示デバイス、それに用いる液晶表示素子、及びその液晶表示素子に用いるマトリックス基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レンズ等の光学デバイスとして、従来の研磨法によるのでなく、種々の物理的・化学的な方法で製造されるものが提案され、実用化されつつある。
例えば、透明なガラス基板上にフォトレジスト層を設け、これにフォトリソグラフィ法により円形状や楕円形状をパターニングし、パターニングされたフォトレジスト層をガラス転移点以上に加熱し、フォトレジスト層の熱流動と表面張力の作用で、フォトレジストの表面を凸球面形状に形成したのち、フォトレジストと透明基板とに対してエッチングを行い、フォトレジスト表面による凸球面形状を、透明基板に彫り写すことにより、透明基板自体の表面形状として「凸球面の屈折面」を形成することが提案されている(特許文献1参照。)。このような方法で製造される光学デバイスは、例えば、マイクロレンズ、マイクロレンズアレイやレンチキュラーレンズアレイとして使用できる。
【0003】
このような光学デバイスの製造方法では、フォトレジストに形成される凸球面形状が、フォトレジストの熱流動と表面張力によるので、形成される球面形状は良好であるが、球面の曲率半径の制御は必ずしも容易でない。このため、精度の良い光学デバイスを設計通りに得ようとすると、光学デバイス製造の歩留まりを向上させることが困難であった。また、フォトレジストに形成される凸面形状は、熱流動と表面張力によるから、球面形状以外の形状は形成が容易でない。このため非球面形状をもった光学デバイスの製造が難しい。
【0004】
これに対して、高精度の光学デバイスを得る方法として、濃度分布マスクを使用した方法が光通信用マイクロレンズ、計測器用マイクロレンズや産業機器用マイクロレンズとして提案され実用化している(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
従来は、マイクロレンズ基板を用いた透過型液晶シャッターデバイスよりも光源側に近い側に配置して、液晶デバイスの光利用効率向上に寄与する液晶表示素子においては、レンズ基板とこのレンズ基板上に形成されたレンズ形状部分とを有するマイクロレンズアレイ又はレンチキュラーレンズアレイに、レンズ形成部分と対向するように透明基板を張り合わせて構成されたマイクロレンズ基板を用いた液晶表示素子を使用していた。その張り合わせは、透明基板と異なる屈折率を有し、かつ透明基板と異なる熱膨張係数を有する接着剤にておこなわれている(例えば、特許文献3,4参照。)。
【0006】
図6はそのような液晶表示素子を示したものであり、対向基板210とアクティブマトリックス基板207とがシール材205によって封入された液晶層205を介して張り合わされて構成されている。アクティブマトリックス基板207は透明基板上に図示されていない絵素電極、スイッチング素子、バス配線等が形成されたものである。対向基板210はマイクロレンズ基板209上の液晶層206側の面に、ブラックマトリクス211、透明電極212、配向膜213が順に形成されたものである。マイクロレンズ基板209は、透明基板201上に複数のマイクロレンズ202が形成されてなるマイクロレンズアレイ208と、カバーガラス204とが接着剤からなる接着剤層203を介して張り合わされた構成であり、カバーガラス4における接着剤層203と接する面には密着処理面204aが形成されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−173003号公報
【特許文献2】
特願平6−021114号公報
【特許文献3】
特願平8−328002号公報
【特許文献4】
特願平8−327986号公報
【特許文献5】
特公平2−35697号公報
【特許文献6】
実公平7−10323号公報
【特許文献7】
特開2000−335926号公報
【特許文献8】
特開昭58−105111号公報
【非特許文献1】
Izawa.T., Kobayashi.S., Sudo.S. and Hanawa.F. ”Continuous Fabrication of High Silica fiber Preform”, IOOC ’77, C1−1, 1977
【非特許文献2】
Koenings.J. et al. ”Deposition of SiO2 with Low Impurity Content by Oxidation of SiCl4 in a Nonthermal Plasma”, Chemical Vaper Deposition, Fifth International Conference, 1975
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような接着剤層を有する液晶表示素子は、以下の問題を有していた。
曲面を有するマイクロレンズアレイは、屈折率の異なる接着剤層と接合されているため光を有効に屈折させることが可能である。しかし、熱膨張係数の大きく異なる接着剤で張り合わされていたため、表示素子が高温度で使用される場合はマイクロレンズアレイと接着剤層との間に応力や歪が発生し、マイクロレンズ基板が変形し平面度が悪化する現象が発生した。
【0009】
また、接着剤は、種類によるが多くは有機物質で合成されている。有機物質の接着剤は、材料物性の基本骨格上、共有結合による部分が多い。そのためTg(ガラス転移点)温度が100℃以下のものが多く、製品の製造プロセス中で或いは製品使用中において150℃以上の環境条件下では接着剤層が軟化し、接着力の低下や変形を起こすことが避けられなかった。
【0010】
これによって、接着剤の変色による透過率低下、接着剤収縮が生じ、以下の問題が発生していた。
▲1▼表示画面内の段差発生。また、これを誘引とする液晶厚さの変化と色ムラが発生する。
▲2▼パネル平行度低下。また、これを誘引とするコントラストムラが発生する。
その結果、バラツキに伴う不良品の発生が避けられなかった。
【0011】
更には、マイクロレンズを形成した透明基板とこれに対向する別の透明基板とを接着剤で接合し、一方を研磨加工によって薄肉化加工していた。そのため材料費が嵩み、また工程が長いため高コストであった。
【0012】
また、マイクロレンズを形成した透明基板とこれに対向する別の透明基板の材質が異なる場合がある。例えば、前者が耐熱性低膨張ガラス(例えば、商品名:ネオセラム(日本電気ガラス社製))、後者が石英材料といった場合である。そのように材質が異なる場合は、マイクロレンズ基板を用いた透過型液晶シャッターデバイスの製造プロセスにおいて僅かに画素ズレが生じるなどの問題を有していた。
【0013】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、光学性能を従来品と同等に維持したまま、耐熱性と耐環境性に優れた液晶表示素子とそれを用いた液晶プロジェクタの提供を目的としている。
本発明はまた、そのような液晶表示素子を低コストに製造する方法を提供することも目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、対向基板とアクティブマトリックス基板とが液晶層を介して張り合わされて構成された液晶表示素子において、対向基板はマイクロレンズ基板の光屈折面を有する側の平坦化された表面上に少なくとも透明電極及び配向膜が形成されたものであり、マイクロレンズ基板は、無機材料の透明基板上にその透明基板と同一材料にて一体的に形成されたレンズ形成部分を有するマイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイのレンズ形成部分に接してそのレンズ形成部分を被う無機材料層とから構成されており、無機材料層はマイクロレンズアレイの屈折率と異なる屈折率を有し、その表面が平坦化されてその表面に前記透明電極及び配向膜が形成されているものである。
【0015】
無機材料層は有機物質の接着剤よりも耐熱性があり、熱膨張係数は同じく無機材料からなるマイクロレンズアレイに近い。そのため、有機物質の接着剤層を備えた従来の液晶表示素子の抱える上記の問題は生じない。
【0016】
また、マイクロレンズアレイ上に他の透明基板を設ける必要がなく、この無機材料層の表面を平坦にしてそこに透明電極及び配向膜、さらに必要に応じてブラックマトリクスを形成することができるので、構成が簡単になり、低コストに製作することができる。
【0017】
本発明の液晶プロジェクタは液晶表示素子として本発明の液晶表示素子を用いたものである。液晶プロジェクタは光源からの光を青、緑及び赤の3原色の光に分離し、再び同一の光路上でそれらの3原色の光を合成する光学系と、その合成された光の光軸上に配置された投影レンズと、青、緑及び赤の3原色の光の光軸上にそれぞれ配置された本発明の液晶表示素子とを備えている。
【0018】
このような液晶表示素子に用いられるマイクロレンズ基板は、本発明の製造方法によれば、透明基板を加工してその透明基板と同一材料にて一体的に形成されたレンズ形成部分を有するマイクロレンズアレイを形成する工程と、マイクロレンズアレイのレンズ形成部分を被うようにマイクロレンズアレイ材料の屈折率とは異なる屈折率をもつ無機材料層を堆積する工程とを含んで製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の液晶表示素子では、無機材料層の表面はマイクロレンズ基板の光屈折面を有する側の面とは反対側の面と平行である。無機材料層の表面上に透明電極及び配向膜、さらに必要に応じてブラックマトリクスが形成され、液晶層を介してアクティブマトリクス基板と対向して張り合わされるので、無機材料層の表面がマイクロレンズ基板の光屈折面を有する側の面とは反対側の面と平行であれば、出来あがるパネルの平行度を確保することができ、コントラストムラを抑えることができる。
【0020】
マイクロレンズアレイと無機材料層との間に応力や歪が発生してマイクロレンズ基板が変形し平面度が悪化するのを抑えるために、マイクロレンズアレイ材料の線膨張係数とこの無機材料層の線膨張係数との差は10倍以内であることが好ましい。これにより、高温プロセス及び高温使用条件下でも使用に耐えうる新規な液晶表示素子を得ることができる。
【0021】
そのような線膨張係数の差の小さいマイクロレンズアレイ材料と無機材料層材料の組合せの一例は、マイクロレンズアレイ材料が石英、耐熱性ガラス、光学ガラス等のガラスである場合、無機材料層材料としてはシリコン酸化物やシリコン酸化物と金属酸化物との混合物が好ましい。しかし、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなどの無機材料であってもよい。
【0022】
無機材料層材料がシリコン酸化物と金属酸化物との混合物のように複数原材料の混合によって得られるものである場合、原材料の混合比によって屈折率が変更可能である。そのような無機材料層は、例えば、SiO2の成膜時に微量に屈折率変更材料、例えばTiO2,Ta2O5などの単体又は複合材料、を混合することによって形成することができる。
【0023】
無機材料層は均一な屈折率の一層構造とすることも、膜厚方向に屈折率が徐々に変化する層構造とすることも、また互いに屈折率の異なる複数層が積層されたものとすることできる。
【0024】
膜厚方向に屈折率が徐々に変化する層構造は、膜厚方向に対して混合する材料成分を徐々に増加又は減少させるように濃度分布をもたせることによって形成することができる。
【0025】
屈折率の異なる複数層が積層された無機材料層を形成する1つの方法は、膜厚方向に対して、例えば2段階、3段階というように段階的に分けて材料成分濃度を変更して段階的屈折率分布をもたせる方法である。例えば、1層目と2層目がSiO2とTiO2の混合膜で、TiO2濃度が1層目よりも2層目の方が薄くなるように形成されたものであり、3層目がSiO2膜となっているような構成のものである。
【0026】
屈折率の異なる複数層が積層された無機材料層を形成する他の方法は、膜厚方向に対して、例えば2段階、3段階というように段階的に分けて材料成分の組合わせを変更して段階的屈折率分布をもたせる方法である。例えば、1層目がSiO2とTa2O3の混合膜、2層目がSiO2とTiO2の混合膜、3層目がSiO2層となっているような構成のものである。
【0027】
無機材料層として膜厚方向に屈折率分布をもった無機材料層を使用すれば、無機材料層の光学性能を調整することができ、屈折率の選択の範囲(自由度)が広がり液晶表示素子の性能向上を図ることができる。
【0028】
本発明において、マイクロレンズアレイ又はマイクロレンズ基板という場合のマイクロレンズは、半球状のマイクロレンズのみでなく、蒲鉾型のレンチキュラーレンズも含む意味で使用している。また、マイクロレンズのレンズは凸面状に限らず凹状に形成されたものも含んでおり、その形状は球面及び非球面を含む曲面又は円錐形状である。レンズ形状は光学的使用目的と構成する材料の屈折率等によって、凸面状にするか凹面状にするかを決定すればよい。
【0029】
本発明の製造方法において、マイクロレンズアレイは従来のマイクロレンズデバイス製作方法によって製造することができる。
すなわち、マイクロレンズアレイを製造する第1の方法は、マイクロレンズアレイ材料の平坦な表面に熱可塑性材料層を所定の厚さに形成し、この熱可塑性材料層をマイクロレンズアレイパターンに応じてレリーフ状にパターニングしたのち、パターニングされた熱可塑性材料層を熱処理し、熱可塑性材料の熱流動と表面張力により、熱可塑性材料の表面形状を、マイクロレンズアレイパターンごとに凸曲面形状としたのち、熱可塑性材料とマイクロレンズアレイ材料とに対してドライエッチングを行い、上記熱可塑性材料の凸曲面形状をマイクロレンズアレイ材料に彫り写すことにより、その材料の表面に所望の曲率の凸曲面を有するマイクロレンズアレイを製造する。
【0030】
マイクロレンズアレイを製造する第2の方法は、濃度分布マスクを使用する方法である。その方法では、マイクロレンズアレイ材料の平坦な表面に感光性材料層を所定の厚さに形成し、この感光性材料層をマイクロレンズアレイパターンに対応した濃度分布マスクを用いて露光し、現像することにより凸曲面形状又は凹曲面形状のレンズ形状をもつ感光性材料層パターンをえる。この感光性材料パターンとマイクロレンズアレイ材料とに対してドライエッチングを行い、上記熱可塑性材料パターンのレンズ形状をマイクロレンズアレイ材料に彫り写すことにより、その材料の表面に所望の曲率の凸曲面又は凹曲面を有するマイクロレンズアレイを製造する。
【0031】
マイクロレンズアレイを製造する第3の方法は、型を使用する方法である。その方法では、マイクロレンズアレイ材料の平坦な表面に熱又は紫外線で硬化する硬化性材料層を所定の厚さに形成し、この硬化性材料層にマイクロレンズアレイの型を押し当ててパターンを転写する。パターンが転写された硬化性材料層を加熱又は紫外線照射により硬化させた後、この硬化性材料パターンとマイクロレンズアレイ材料とに対してドライエッチングを行い、上記硬化性材料パターンのレンズ形状をマイクロレンズアレイ材料に彫り写すことにより、その材料の表面に所望の曲率の凸曲面又は凹曲面を有するマイクロレンズアレイを製造する。
【0032】
これらの方法では、熱可塑性材料表面又は硬化性材料表面の凸曲面形状又は凹曲面形状の曲率と、マイクロレンズアレイの表面に形成すべき凸曲面の曲率との大小関係に応じて、ドライエッチングの選択比を調整したり、又は経時的に変化させたりすることにより、マイクロレンズアレイの表面に形成すべき凸曲面の曲率を変化させることができる。ドライエッチングにおける選択比は精密な制御が容易であるから、上記のような方法で、凸面又は凹面を精度よく形成できる。
【0033】
本発明において、マイクロレンズアレイのレンズ形成部分を被うようにマイクロレンズアレイ材料の屈折率とは異なる屈折率をもつ無機材料層は、下記の3方法のいずれかの方法で堆積することができる。
【0034】
▲1▼FHD(Frame Hydrolysis Deposition:火焔堆積)法(例えば、特許文献5−8参照。)。
FHD法の先駆技術としてVAD(Vapor phase Axial Deposition:気相軸付け)法がある。両者の原理は同じである。FHD法は基板上に製膜する方法であり、VAD法は光ファイバー用のプリフォームとしてのガラス棒を製作する方法である。VAD法が初めに開発され、改良後に続いてFHD法が開発された。
【0035】
(イ)VAD法について
VAD法は、工程が単純で、連続製造、大型プリフォームの製造が可能である特徴を有する。回転している石英棒の下方から光ファイバーの原料となるSiCl4、屈折率を制御するために必要なドーパントとしてGeCl4などをH2、O2ガスとともに吹き付け、酸水素バーナーにより火炎加水分解反応を起こさせる。これによりプリフォームを石英棒の軸のまわりに堆積させる。この棒を回転させながら上方に引き上げ、リング状ヒーターで加熱することにより多孔質プリフォームを透明ガラス化し、プリフォームを得る。このプリフォームを透明ガラス化する際は、SOCl2雰囲気中で加熱することにより水酸イオン(OH−)を十分に除去することが可能である。極めて低損失の光ファイバーを作ることが出来る。
【0036】
本方法は、1997年NTTの伊沢らによって発表され、後にNTTの稲垣、枝広、中原らによって幾多の洗練を受け進歩を遂げている(非特許文献1,2参照。)。
【0037】
(ロ)FHD法について
FHD法は、VAD法と同様の原理によって基板材料上に石英の粉を堆積した後に、1500℃前後の熱処理により石英を透明化し、光導波路を形成する方法として開発された。光導波路用としては、コアとクラッドの屈折率差を得るためにコアにゲルマニウム単独、酸化チタン単独、又は燐とボロンの両方がドープされた石英を得ている。
【0038】
▲2▼プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法:
被膜を形成する成分元素を基板表面で化学反応させて被膜を形成する方法である。
まず、熱CVD法について説明する。熱CVD法は、被膜材料を一旦気化しやすい化合物(ハロゲン化物、水素化物、有機金属化合物など)に変えて気化させ、適当なキャリアガスを用いて反応管へ導き、高温の基材表面での化学反応により被膜を析出させる方法である。
【0039】
一方、プラズマCVD法は、熱CVD法において化学反応の駆動力となっていた熱に代え、プラズマ状態を用いた化学反応により被膜を形成させる技術である。その為、熱CVD装置と比べプラズマ発生装置が付加されているのが装置の特徴である。また、処理上では低温における被膜形成が可能であることが大きなメリットとして挙げられる。
【0040】
本発明の場合は、プラズマCVD装置にTEOS(テトラエトキシシラン)ガスを導入し、基板表面を300〜350℃に加熱しながらプラズマ中で処理する。基板表面上にはTEOSガスが化学反応で分解しSiO2膜が生成する。
また、SiH4ガスを導入することでも同様にSiO2膜を成膜することが可能である。
【0041】
反応性ガスの種類は、成膜するSiO2膜の組成安定性、成膜速度、膜質、表面モホロジー、装置構成・特性によって異なる。
成膜条件の一例を挙げると、▲1▼Novellus社製CVD装置では、TEOS=0.20μm/分、SiH4=0.20〜0.60μm/分、▲2▼Applied Materials社製PECVD装置では、SiH4=0.89μm/分である。
【0042】
屈折率を変更する場合には、TEOSガスやSiH4ガス中に、例えば、Ti成分を含むチタンエトキシド(Titanium Ethoxide)ガスを同時に導入することによってSiO2中のTiO2量を調整し屈折率を調整することができる。
【0043】
▲3▼スパッタリング法:
スパッタリング法は、加速された粒子が固体表面に衝突したとき、固体を構成する原子又は分子が空間に放出される現象を利用し、蒸着が困難な高融点材料や化合物でも容易に膜形成ができること、付着力が大きいこと、大面積化が容易であることなどの利点を備えているので広く利用されている。スパッタリング法による薄膜製作法には、直流二極スパッタリング、高周波スパッタリング、イオンビームスパッタリング、化成スパッタリングなどがある。
【0044】
【実施例】
図1は一実施例の液晶表示素子を表わし、対向基板18とアクティブマトリックス基板24とがシール材20によって封入された液晶層22を介して張り合わされて構成されている。アクティブマトリックス基板24は透明基板上に図示されていない絵素電極、スイッチング素子、バス配線等が形成されたものである。
【0045】
対向基板18はマイクロレンズ基板10の光屈折面を有する側、すなわち液晶層22側、の平坦化された表面上に、ブラックマトリクス12、透明電極14、配向膜16が順に形成されたものである。
マイクロレンズ基板10は、無機材料の透明基板2上にその透明基板2と同一材料にて一体的に形成されたレンズ形成部分4を有するマイクロレンズアレイ6と、マイクロレンズアレイ6のレンズ形成部分4に接してそのレンズ形成部分6を被う無機材料層8とから構成されている。
【0046】
無機材料層8はマイクロレンズアレイ6の屈折率とは異なる屈折率を有し、その表面が平坦化されてその表面にブラックマトリクス12、透明電極14及び配向膜16が形成されている。
【0047】
レンズ形成部分6の平面パターンが円形であれば、その表面形状は凸球面である。レンズ形成部分6の平面パターンが楕円形であれば、その表面形状は長軸方向に大きい曲率半径を有し、単軸方向に短い曲率半径を有する回転楕円面状の凸曲面になる。また、レンズ形成部分6の平面パターンが矩形状や多角形状の場合には、そのパターンに対応した形状の凸曲面になる。
【0048】
レンズ形成部分6の平面パターンが、楕円形状や矩形形状、多角形形状のように、非円形形状である場合には、凸曲面の曲率」とは、表面形状の頂部近傍における曲率のうちで、最大又は最小のものをいうものという。
【0049】
以下、マイクロレンズ基板を製作する方法を具体的に説明する。
(実施例1)
図2(a)に示すように、マイクロレンズアレイ材料として屈折率1.52のネオセラムガラスの平行平板基板2を用意し、その表面に熱可塑性材料層32としてフォトレジスト(商品名:OFPR800)をスピンコートした後、プリベークして厚さ10μmに形成した(パターニング後の行なうポストベーク後は8.9μmに変化した)。
【0050】
つぎに、マスク38を用いて熱可塑性材料層32を露光する。そのマスク38は、透明ガラス基板36の片面にクロムなどの金属薄膜で形成された直径19.7μmの黒円(概略円形状である)34がピッチ20μmで碁盤の目状に配列されたものである。
【0051】
その後、光照射された部分を現像して除去することにより、熱可塑性材料層32を1以上のレンズパターン(黒円に対応する円形)に応じてレリーフ状にパターニングした。図2(b)は、パターニング後の状態を示している。
【0052】
パターニングされた熱可塑性材料層32aを熱処理し、熱可塑性材料32aの熱流動と表面張力により、熱可塑性材料32aの表面形状を、レンズパターンごとに凸曲面形状としたところ、高さが9.2μmの凸球面形状が得られた。
【0053】
続いて行なうECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチングにおいて、選択比を1.1に設定したところ、ネオセラム基板2の表面に、直径19.7μm、高さ10.12μmの凸球面を20mmピッチで形成することができ、マイクロレンズアレイを得ることができた。このエッチング工程では、途中段階において選択比を経時的に変更することにより、製作後の形状を非球面形状とした。このときのドライエッチングの条件は、以下の通りである。選択比を1.1にするために、導入ガスは、O2:1.8sccM(経時的に変更し時間と共に減少させる。)、CHF3:25.0sccMとし、反応室内圧力:3〜4×10−4Torr、マイクロ波実行電力:620W、RF実行電力:480W、エッチング時間:25分とした。
【0054】
次いで、図3(a),(b)に示すように、このマイクロレンズアレイ6のレンズ形成面上にCVD法によって、無機材料層としてSiO2層(屈折率:1.452)8を成膜した。本実施例では、CVD法はNovellus社製プラズマCVD装置にTEOSガス40を導入し、基板2を350℃に加熱しながらプラズマ中で処理した。マイクロレンズアレイ6の表面上にはTEOSガスが化学反応で分解しSiO2膜が生成する。本実施例では、SiO2膜を0.4μm/分の成膜速度で約27分間成膜した。結果として、10.8μmのSiO2膜がマイクロレンズのない平坦部にアレイ6上に成膜できた。
また、マイクロレンズアレイ6の凸形状トップ上には1.6μmのSiO2膜8が積層された状態になる。
【0055】
次に、図3(c)に示されるように、マイクロレンズアレイ6上のSiO2膜8の表面を研磨加工する。これは、CVDにより形成したSiO2膜8で、レンズ4の凸形状表面上部に発生する「表面盛り上がり」を除去するためである。この研磨加工工程として、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械的研磨)法を用い、レンズ凸形状トップ上のSiO2膜を1.0μm程度研磨加工して表面を平坦化してマイクロレンズのない基板平坦部でのSiO2膜(CVD膜)厚さを10.72μmとした。
これにより、レンズ側の表面が無機材料で平坦化されたマイクロレンズ基板が得られる。
【0056】
(実施例2)
図4(a)に示されるように、マイクロレンズアレイ材料として屈折率1.452の石英ガラスの平行平板基板2aを用意した。また、別途用意した凸形状型51(例えば、上記実施例1に示したマイクロレンズアレイ6)を用意し、その型51の表面に光硬化性樹脂55を塗布する。光硬化性樹脂55との付着強度を高めるためのシランカップリング剤処理を施した石英ガラス基板2aを樹脂55上から押し当てた後、紫外線を石英ガラス基板2a側から照射する。
【0057】
この後、型51を剥離すると、図4(b)に示されるように、石英ガラス基板2aの表面上に凸形状が転写された凹形状の樹脂形状55が形成される。
これをドライエッチング法によって石英ガラス基板2aに転写してマイクロレンズアレイとする。このドライエッチングはECRエッチングにより行う。そのECRエッチングにおいて、選択比を1.1に設定したところ、石英ガラス基板2aの表面に、直径19.7μm、深さ11.2μmの凹球面4aを20mmピッチで形成することができた。
【0058】
このエッチングでは、途中段階において、選択比を経時的に変更することにより、製作後の形状を非球面形状とした。このときのドライエッチングの条件は、以下の通りである。選択比を1.1とするために、導入ガスは、O2:3.0sccM(経時的変更し時間と共に減少させている)、CHF3:15.0sccMとし、反応室内圧力:3×10−4Torr、マイクロ波実行電力:620W、RF実行電力:500W、エッチング時間:32分とした。
【0059】
次いで、図4(c)に示されるように、このマイクロレンズアレイ50の凹球面4a形成面上にCVD法によって、SiO2とTiO2の混合膜8a,8b((SiO2+TiO2)膜と表記する。)(屈折率:1.56)を成膜した。本実施例の場合は、Novellus社製プラズマCVD装置にTEOSガスと、チタンエトキシドガスを導入し、マイクロレンズアレイ基板を350℃に加熱しながらプラズマ中で処理する。基板表面上にはTEOSガスとチタンエトキシドガスが化学反応で分解し(SiO2+TiO2)膜が生成する。本実施例では、(SiO2+TiO2)膜を0.36μm/分の成膜速度で約40分間成膜した。その結果、12.6μmの(SiO2+TiO2)膜8a,8bをマイクロレンズアレイ基板2a上に成膜できた。したがって、石英ガラスのマイクロレンズアレイ基板2aの凹形状外周部に形成された凸形状トップ上には1.4μmの(SiO2+TiO2)膜8a,8bが積層された状態になる。成膜の際、初期の32分間は、TEOSガスと、チタンエトキシドガスを導入し(SiO2+TiO2)膜8aを成膜したが、残りの8分間は徐々にチタンエトキシドガス量を減少させ、TEOSガスのみ導入しSiO2膜8bを成膜した。これによって、成膜の成長方向に層状の屈折率分布を有する膜が製作できた。
【0060】
次に、マイクロレンズアレイ基板2a上の(SiO2+TiO2)膜8aとSiO2膜8bの積層膜の表面を研磨加工する。これは、CVD法により形成した(SiO2+TiO2)膜8aとSiO2膜8bの積層膜で、レンズの凸形状表面上部に発生する「表面盛り上がり」を除去するためである。この研磨加工工程として、CMP法を用い、凸形状トップ上のSiO2膜8bを1.0μm程度研磨加工して表面を平坦化する。
これにより、レンズ側の表面が無機材料で平坦化されたマイクロレンズ基板が得られる。
【0061】
図5は実施例の液晶表示素子の応用例の一例としての液晶プロジェクタの一実施例を表わしたものである。
117はメタルハライドランプ等の白色光源であり、その白色光源117の照射光でUV−IRフィルタ118を透過した光を赤、緑、及び青の三原色に分離するために、その照射光の光軸上にダイクロイックミラー119aと119bが配置されている。ダイクロイックミラー119aは青色光を反射しそれより長波長の光を透過させる特性をもつものであり、ダイクロイックミラー119bは緑色光を反射しそれより長波長の光を透過させる特性をもつものである。
【0062】
ダイクロイックミラー119aにより反射された青色光は反射鏡120aにより反射され、その反射光の光軸上に液晶表示素子121aとフィールドレンズ122aが配置されており、その液晶表示素子121aとフィールドレンズ122aを透過した光の光軸上に投影レンズ124が配置されている。
【0063】
ダイクロイックミラー119bにより反射された緑色光の光軸上に液晶表示素子121bとフィールドレンズ122bが配置されており、その液晶表示素子121bとフィールドレンズ122bを透過した光の光軸上には青色光の光軸との交点にダイクロイックミラー123aが配置されている。ダイクロイックミラー123aは青色光を透過しそれより長波長の光を反射する特性をもち、このダイクロイックミラー123aにより青色光と緑色光が同一の光軸上で合成されて投影レンズ124に導かれる。
【0064】
ダイクロイックミラー119bを透過した赤色光の光軸上には液晶表示素子121cとフィールドレンズ122cが配置されている。液晶表示素子121cとフィールドレンズ122cを透過した光の光軸上には反射鏡120bが配置され、その反射鏡120bによる反射光の光軸上には青色光と緑色光の合成光の光軸との交点にダイクロイックミラー123bが配置されている。ダイクロイックミラー123bは緑色光よりも短波長光を透過しそれより長波長の光を反射する特性をもち、このダイクロイックミラー123bにより青色光、緑色光及び赤色光が同一の光軸上で合成されて投影レンズ124に導かれる。
【0065】
液晶表示素子121a〜121cは実施例に示した本発明の液晶表示素子であり、映像信号に基づいて各原色画像を表示する。液晶表示素子121a〜121cをそれぞれ透過した原色光が合成された後、投影レンズ124により図示されていないスクリーン上に映像が拡大投影される。
【0066】
【発明の効果】
本発明では、液晶表示素子の対向基板に含まれるマイクロレンズ基板は、無機材料の透明基板上にその透明基板と同一材料にて一体的に形成されたレンズ形成部分を有するマイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイのレンズ形成部分に接してそのレンズ形成部分を被う無機材料層とから構成されたものとし、無機材料層はマイクロレンズアレイの屈折率と異なる屈折率を有し、その表面が平坦化されてその表面に少なくとも透明電極及び配向膜が形成されたものとしたので、無機材料層は有機物質の接着剤よりも耐熱性があり、熱膨張係数は同じく無機材料からなるマイクロレンズアレイに近いため、耐熱性と耐環境性に優れた液晶表示素子を得ることができる。
また、マイクロレンズアレイ上に他の透明基板を設ける必要がなく、この無機材料層の表面を平坦にしてそこに透明電極及び配向膜、さらに必要に応じてブラックマトリクスを形成することができるので、構成が簡単になる。
このような液晶表示素子を備えた本発明の液晶プロジェクタは、液晶表示素子の特性によって耐熱性と耐環境性に優れ、また低コストに製作することできる。
このような液晶表示素子に用いられるマイクロレンズ基板は、本発明の製造方法によれば、透明基板を加工してその透明基板と同一材料にて一体的に形成されたレンズ形成部分を有するマイクロレンズアレイを形成する工程と、マイクロレンズアレイのレンズ形成部分を被うようにマイクロレンズアレイ材料の屈折率とは異なる屈折率をもつ無機材料層を堆積する工程とを含んでいるので、低コストに液晶表示素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例の液晶表示素子を示す断面図である。
【図2】製造方法の一実施例においてマイクロレンズアレイを製作する工程を示す工程断面図である。
【図3】製造方法の同実施例において無機材料層を形成する工程を示す工程断面図である。
【図4】製造方法の他の実施例を示す工程断面図である。
【図5】液晶プロジェクタの一実施例を示す概略構成図である。
【図6】従来の液晶表示素子を示す断面図である。
【符号の説明】
2,2a 透明基板
4,4a レンズ形成部分
6 マイクロレンズアレイ
8,8a,8b 無機材料層
10 マイクロレンズ基板
12 ブラックマトリクス
14 透明電極
16 配向膜
18 対向基板
22 液晶層
24 アクティブマトリックス基板
117 白色光源
119a,119b,123a,123b ダイクロイックミラー
121a,121b,121c 液晶表示素子
124 投影レンズ
Claims (11)
- 対向基板とアクティブマトリックス基板とが液晶層を介して張り合わされて構成された液晶表示素子において、
前記対向基板はマイクロレンズ基板の光屈折面を有する側の平坦化された表面上に少なくとも透明電極及び配向膜が形成されたものであり、
前記マイクロレンズ基板は、無機材料の透明基板上にその透明基板と同一材料にて一体的に形成されたレンズ形成部分を有するマイクロレンズアレイと、前記マイクロレンズアレイのレンズ形成部分に接してそのレンズ形成部分を被う無機材料層とから構成されており、
前記無機材料層は前記マイクロレンズアレイの屈折率と異なる屈折率を有し、その表面が平坦化されてその表面に前記透明電極及び配向膜が形成されていることを特徴とする液晶表示素子。 - 前記無機材料層の表面は前記マイクロレンズ基板の光屈折面を有する側の面とは反対側の面と平行である請求項1に記載の液晶表示素子。
- 前記マイクロレンズアレイ材料の線膨張係数と前記無機材料層の線膨張係数との差は10倍以内である請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
- 前記マイクロレンズアレイ材料はガラスであり、前記無機材料層はシリコン酸化物又はシリコン酸化物と他の金属酸化物との混合物である請求項1から3のいずれかに記載の液晶表示素子。
- 前記無機材料層は互いに屈折率の異なる複数層からなる請求項1から3のいずれかに記載の液晶表示素子。
- 前記マイクロレンズアレイ材料はガラスであり、前記無機材料層はマイクロレンズアレイ側がシリコン酸化物とチタン酸化物との混合物層で、その上にシリコン酸化物層が積層されたものである請求項5に記載の液晶表示素子。
- 前記マイクロレンズアレイのレンズは凸面状又は凹面状に形成され、その形状は球面及び非球面を含む曲面又は円錐形状である請求項1から6のいずれかに記載の液晶表示素子。
- 光源からの光を青、緑及び赤の3原色の光に分離し、再び同一の光路上でそれらの3原色の光を合成する光学系と、その合成された光の光軸上に配置された投影レンズと、前記の青、緑及び赤の3原色の光の光軸上にそれぞれ配置された液晶表示素子とを備えた液晶プロジェクタにおいて、
前記液晶表示素子として請求項1から8のいずれかに記載の液晶表示素子を用いたことを特徴とする液晶プロジェクタ。 - 透明基板を加工してその透明基板と同一材料にて一体的に形成されたレンズ形成部分を有するマイクロレンズアレイを形成する工程と、
前記マイクロレンズアレイのレンズ形成部分を被うようにマイクロレンズアレイ材料の屈折率とは異なる屈折率をもつ無機材料層を堆積する工程と、を含むマイクロレンズ基板の製造方法。 - 前記堆積工程は火焔堆積法、化学気相成長法及びスパッタリング法のいずれかである請求項9に記載のマイクロレンズ基板の製造方法。
- 前記堆積工程の後に、堆積された前記無機材料層表面を平坦化する工程をさらに含んでいる請求項9又は10に記載のマイクロレンズ基板の製造方法。
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