JP2004316008A - 袖付手袋の製造方法、及び袖付手袋 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】手袋本体部と袖部とを連続して編むと共に少なくとも袖部に溶着糸を用いる編み工程と、前記袖部に対応する箇所を末広がり状に形成した成形型に装着する型装着工程と、前記袖部の形状を袖部開口端に向かって末広がり状に成形するために、前記成形型に装着した状態で加熱処理する熱処理工程とを有することにした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、袖付手袋の製造方法、及び袖付手袋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、着脱の多い作業において使用される手袋には、袖部にリングを取り付けたり(例えば、特許文献1参照。)、別部材としてスカート状に形成した袖部を、手の形状に形成した手袋本体部に縫いつけたりして(例えば、特許文献2参照。)、袖口が開口しやすいようにしたものがあり、このように袖口を開口しやすくすることによって、手袋の着脱が容易に行えるようにしていた。
【0003】
特に、後者のように別部材として設けておいた袖部を手袋本体部に縫いつける場合には、袖部は手袋本体部と袖部との縫合箇所で支持されて折れにくくなり、袖口が開口しやすくなっていた。
【0004】
【特許文献1】
実開昭60−152619号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2000−212812号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の袖付手袋においては、リングを取付けたり、手袋本体部と袖部とを別々に形成した後に両者を縫合したりしなければならないので、製造工程が複雑になりコストが高くなってしまっていた。
【0007】
しかも、後者のように袖部と手袋本体部とを縫合する場合には、縫合者の違いによって袖付手袋の形状にもばらつきが生じてしまい、不良品が発生しやすかった。また、手袋を装着した際に手袋本体部と袖部との縫合部が手に触り、装着性が悪くなっていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)そこで、請求項1記載の本発明では、手袋本体部と袖部とを連続して編むと共に少なくとも袖部に溶着糸を用いる編み工程と、前記袖部に対応する箇所を所定の形状に形成した成形型に装着する型装着工程と、前記袖部を所定の形状に成形するために、前記成形型に装着した状態で加熱処理する熱処理工程とを有することにした。
(2)請求項2記載の本発明では、前記成形型は、袖部の端部の開口面積が前記手袋本体部と前記袖部との境界部における断面積よりも大となるように形成した。
(3)請求項3記載の本発明では、前記成形型は、袖部に対応する箇所を末広がり状に形成した。
(4)請求項4記載の本発明では、型装着工程と熱処理工程との間に、溶着性のコーティング材を付着させるコーティング工程を有することにした。
(5)請求項5記載の本発明では、編み工程は、手袋本体部から同手袋本体部に連接する袖部にかけて連続して袋状に編むことにした。
(6)請求項6記載の本発明では、編み工程は、手袋本体部を成す部分と袖部を成す部分とを連続した生地として編み、同生地を予め掌部用と甲部用に裁断した後、両者を縫合することにした。
(7)請求項7記載の本発明では、指部と掌部と甲部とからなる手袋本体部と、溶着糸を用いて前記手袋本体部に連続して編まれた所定の形状の袖部とからなり、同袖部は、所定の形状に形成した成形型に装着した状態で、前記溶着糸を加熱処理して成形することにした。
(8)請求項8記載の本発明では、前記袖部の端部の開口面積は、前記手袋本体部と前記袖部との境界部における断面積よりも大となるようにした。
(9)請求項9記載の本発明では、前記袖部は、袖部開口端に向かって末広がり状に形成した。
(10)請求項10記載の本発明では、前記袖付手袋の表面に溶着性のコーティング材を付着させた後に前記加熱処理を行うことにより、表面にコーティングを施すことにした。
(11)請求項11記載の本発明では、手袋本体部から同手袋本体部に連接する袖部にかけて連続して袋状に編んで形成することにした。
(12)請求項12記載の本発明では、手袋本体部を成す部分と袖部を成す部分とを連続した生地として編み、同生地を予め掌部用と甲部用に裁断した後、両者を縫合して形成することにした。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係る袖付手袋は、手袋本体部と袖部とを連続して編むと共に少なくとも袖部に溶着糸を用いる編み工程と、前記袖部に対応する箇所を所定の形状に形成した成形型に装着する型装着工程と、前記袖部の形状を所定の形状に成形するために、前記成形型に装着した状態で加熱処理する熱処理工程とを経て製造している。
【0010】
このように、編み工程において少なくとも袖部に溶着糸を用いて形成した袖付手袋を、型装着工程において袖部に対応する箇所を所定の形状に形成した成形型に装着し、熱処理工程において加熱処理して溶着糸を袖部に溶着させることにより袖付手袋を製造するようにしたので、溶着糸により袖部を硬化・補強して、袖部の形状を前記成形型に沿った所定の形状に成形することができると共に、同形状を保形して袖部を折れにくくすることができ、着脱のし易い袖付手袋を製造することができる。
【0011】
また、上述の如く溶着糸により少なくとも袖部を硬化・補強しているので、袖部を構成する糸が切れたり解れたりするのを防止することもでき、袖付手袋の耐久性を高めることができると共に、本袖付手袋を装着した際には、袖部で装着者の手首を保護することができる。
【0012】
しかも、溶着糸で袖部を硬化・補強することにより袖部の形状を保形するので、強度のある別部材で袖部を形成しなくても袖部の形状を保形することができ、編み工程において手袋本体部と袖部とを連続して編むことができる。従って、手袋本体部と袖部とを別々に製造して両者を縫合する手間を省いて、製造コストを削減することができる。
【0013】
また、手袋本体部と袖部とを連続して編むことにより、手袋本体部と袖部との間に縫合箇所が発生しないので、同縫合箇所から糸が解けたり、縫合者の違いによって縫合された袖付手袋の品質にばらつきが生じたり、或いは袖付手袋を着脱する際に縫合箇所が手に触って装着性が低下したりすることがなく、耐久性が高く装着性の良い袖付手袋を歩留まり良く製造することができる。
【0014】
なお、編み行程において溶着糸を用いるに際しては、少なくとも袖部に溶着糸を用いるようにすれば、袖部から溶着糸を用い始めても、手袋本体部から溶着糸を用い始めてそのまま連続して袖部に溶着糸を用いるようにしてもよい。しかも、成形型に即した形状に袖部を保形できるのであれば、袖部全体に溶着糸を用いるのみならず、袖部の中途から溶着糸を用い始めたり、或いは、袖部の中途まで溶着糸を用いたりして、袖部の一部にだけ溶着糸を用いるようにしてもよい。
【0015】
また、袖部に溶着糸を用いる際には、溶着糸を袖部の全コースに用いたり、数コース毎に用いたりと、溶着糸を用いる間隔を選択することもできる。前者のように溶着糸を袖部の全コースに用いた場合には、袖部の溶着をより強固なものとして、袖部の強度を高めることができる。一方、後者のように溶着糸を数コース毎に用いた場合には、溶着糸の使用量を減らして、コストを削減することができると共に、袖部の柔らかさを適度に調整することができる。
【0016】
また、袖部には溶着糸だけでなく例えばゴム糸のような弾性糸も用いることができ、このように弾性糸を用いるようにすれば、弾性糸により袖部に厚みを出して、袖部の強度をさらに向上させることができる。しかも、型装着工程においては、弾性糸の弾力により袖部を成形型に密着させることができるので、袖部をより確実に成形型に沿った形状に保形することができる。
【0017】
また、前記成形型は、袖部の端部の開口面積が前記手袋本体部と前記袖部との境界部における断面積よりも大となるように形成するのが望ましく、かかる形状とすれば、袖部の端部の開口面積が前記手袋本体部と前記袖部との境界部における断面積よりも大となるように袖付手袋の袖部を形成して、袖部開口端が広がった一層着脱のし易い袖付手袋を製造することができる。
【0018】
なお、上記袖部の端部の開口面積が前記手袋本体部と前記袖部との境界部における断面積よりも大となる形状としては、例えば、境界部から袖部開口端に向かって末広がり状に拡開した形状や、境界部から袖部を段状に突出させて、そのまま袖部開口端へと円筒状に伸延させた形状や、袖部の中途部を膨出させて略提灯状に形成し、袖部開口端側を境界部側よりも大きく開口させた形状等が考えられる。
【0019】
特に、1番目に述べたように、成形型の袖部に対応する箇所を末広がり状に形成して、袖付手袋の袖部を袖部開口端に向かって末広がり状に形成した場合には、袖部から手袋本体部にかけて凹凸のない傾斜面を形成することができ、袖部に沿って手をスライドさせていくことによりそのまま手袋本体部まで円滑に手を挿入することができる。従って、袖付手袋の装着性を一層向上させることができる。
【0020】
また、2番目に述べたように、袖部を円筒状に形成した場合には、装着者の衣服の袖口に袖部を沿わせることができ、袖口の厚い衣服を着用した状態であっても容易に装着可能な袖付手袋とすることができる。
【0021】
また、3番目に述べたように、袖部を略提灯状に形成した場合には、空気中に飛散した異物を膨出部で受け止めて、同異物が袖口から手袋内部へと進入するのを防止することができる。例えば、清掃作業中であれば、塵等の異物が手袋内部へと進入するのを防止することができる。
【0022】
また、袖付手袋には、溶着性のあるゴム素材や合成樹脂素材等を用いてコーティングを施すこともでき、その場合には、型装着工程と熱処理工程との間に、前述したゴム素材や合成樹脂素材の如きコーティング材を付着させるコーティング工程を設ける。
【0023】
前記ゴム素材としては、例えば、天然ゴムやニトリルゴムやクロロプレンゴムを用いることができ、前記合成樹脂素材としては、例えば、塩化ビニル樹脂やアクリル樹脂やウレタン樹脂を用いることができる。また、コーティング材を袖付手袋に付着させるコーティング方法としては、浸漬法やシャワー法やスプレー法やカーテンフロー法や塗り法や張り付け法等を適宜採用することができる。
【0024】
このように、コーティング工程を設けることにより、袖付手袋をコーティング材によって補強して、袖付手袋の耐久性を向上させることができる。しかも、袖部にまでコーティングを施せば、袖部を溶着糸とコーティング材とで二重に補強することができるので、袖部の形状をより確実に保形することができる。
【0025】
また、コーティング工程は、型装着工程と熱処理工程との間に設けるようにしているので、袖部における溶着糸の溶着と、コーティング材の溶着とを一度の加熱処理で同時に行うことができ、溶着糸の溶着とコーティング材の溶着とをそれぞれ別々に加熱処理する手間を省いて、製造コストを削減することができる。
【0026】
また、前記編み工程において、手袋本体部と袖部とを連続して編むと共に袖部に溶着糸を用いる方法としては、以下の2つの方法が考えられる。
【0027】
第1の方法は、手袋本体部から同手袋本体部に連接する袖部にかけて連続して袋状に編むと共に、前記袖部を編む際に溶着糸を追加して編んでいく方法である。或いは、手袋本体部から同手袋本体部に連接する袖部にかけて連続して袋状に編みつつ、前記袖部を編む際に編み糸を溶着糸に変えることもできる。
【0028】
このように手袋本体部と袖部とを連続して袋状に編むようにすれば、全体にわたって縫合箇所のない袖付手袋を製造することができ、袖付手袋の装着性を一層向上させることができる。
【0029】
しかも、上述の如く縫合箇所がないことにより、袖付手袋表面にコーティング材を付着させる際には、袖付手袋全体にわたって凹凸なく均一にコーティング材を付着させることができ、コーティング材により全体を均一に保護することができると共に、外観的も滑らかで美しいコーティングとすることができ、袖付手袋の品質を向上させることができる。
【0030】
また、袖付手袋全体を連続して編むので、別々に形成した部材を継ぎ合わせる手間が全くなく、一層製造コストを抑えることができる。
【0031】
第2の方法は、手袋本体部を成す部分と袖部を成す部分とを連続して編むと共に、前記袖部を編む際に溶着糸を追加して編んだ生地をまず製造し、次に、前記手袋本体部を成す部分と袖部を成す部分とを連続して編んだ生地を掌部用と甲部用に裁断し、その後、両者を縫合する方法である。なお、前記生地は、手袋本体部を成す部分と袖部を成す部分とを連続して編みつつ、前記袖部を成す部分を編む際に編み糸を溶着糸に変えることにより製造することも可能である。
【0032】
このように、手袋本体部と袖部とが連続して編まれた生地から袖付手袋を製造するようにすれば、前記生地を成形型に沿った形状に裁断・縫合し、予め成形型に沿った形状に袖付手袋を形成した後に加熱処理を行うことができる。従って、成形型がどのような形状であったとしても、無理なく袖付手袋を成形型に装着することができ、袖部の形状を成形型に沿った形状に保形することができる。そのため、成形型の形状を様々に変化させて、袖部の形状を自由に変化させることができる。
【0033】
また、掌部用と甲部用とで生地の種類を変えることもできるので、使用目的に応じて掌部用の生地と甲部用の生地とを使い分けて、袖付手袋の機能性を高上させることができる。例えば、ケブラー(登録商標)のように硬く切れにくい編み糸で編んだ生地と、ナイロンのように柔らかい編み糸で編んだ生地とを用意して、掌部用と甲部用とで両生地を使い分けるようにすれば、前者の生地を用いた側においては保護性を高めることができる一方、後者の生地を用いた側においては柔軟性を高めることができる。
【0034】
さらに、掌部用に裁断した生地と甲部用に裁断した生地とを縫合する際に、完全に両者を縫合してしまうのではなく、袖部側に縫合されていない箇所を残して、袖付手袋の袖部側に1個或いは2個のスリットを簡単に設けることができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明に係る袖付手袋の一実施例を図面に基づき説明する。
【0036】
図1に示すように、本実施例における袖付手袋Aは、指部1と掌部2と甲部3とからなる手袋本体部4と、同手袋本体部4に連続して編まれた袖部5とからなる。
【0037】
前記指部1は、小指部1aと、薬指部1bと、中指部1cと、人差指部1dと、親指部1eとからなり、前記掌部2と甲部3は、それぞれ前記指部1の小指部1aと薬指部1bと中指部1cと人差指部1dとに連接する四本胴部6と、同四本胴部6と前記指部1の親指部1eに連接する五本胴部7とからなる(図2参照)。
【0038】
次に、上記袖付手袋Aの製造方法を(i)〜(iv)の工程に沿って説明する。
【0039】
(i)編み工程
図2に示すように、まず、手袋本体部4と袖部5とを自動編機により連続して編む。
【0040】
すなわち、小指部1a、薬指部1b、中指部1c、人差指部1dを、袖付手袋Aの基本糸で順に編み(図2(a)〜(d))、これら4つの指部1に連続して四本胴部6を編む(図2(e))。次に、親指部1eを編んで(図2(f))、同親指部1eと前記四本胴部6と連続するように五本胴部7を編む(図2(g))。五本胴部7が編み終わったところで、これまで編んできた基本糸を例えば編機の転換機能を利用して溶着糸に切り替え、五本胴部7に連続して袖部5を編み(図2(h))、編み工程を終了する。さらに、袖口をオーバーロック糸でかがって袖口かがり部8を形成する(図2(i))。
【0041】
なお、図2(h)の袖部5を編む工程においては、五本胴部7を編み終わったところでこれまで編んできた基本糸に溶着糸及びゴム糸を追加し、基本糸と溶着糸とゴム糸とで五本胴部7に連続して袖部5を編むようにすることもできる。或いは、袖部5の一部分を溶着糸に切り替えて編むこともできる。
【0042】
上述のようにして編まれた袖付手袋Aは、手袋本体部4から同手袋本体部4に連接する袖部5にかけて連続して袋状に編まれており、且つ、袖部5には、全体に溶着糸が編まれている。
【0043】
図3には、上記編み工程の他実施例として、手袋本体部4を成す部分と袖部5を成す部分とを連続して編んだ生地9を掌部2用と甲部3用に裁断し、その後、両者を縫合することにより袖付手袋Aを形成する方法を示している。
【0044】
上記他実施例においては、図3(a)に示すように、まず、袖付手袋Aを形成するための生地9を、基本糸と溶着糸とで編む。すなわち、基本糸で生地9を編みながら、所定間隔ごとに編み糸を溶着糸に切り換えて、基本糸により編まれた箇所と、溶着糸により編まれた箇所とが一定間隔で交互に現れた生地9を作る。
【0045】
或いは、基本糸で生地9を編みながら、所定間隔ごとに溶着糸を追加して、基本糸により編まれた箇所と、溶着糸が追加された箇所とが一定間隔で交互に現れた生地9を作ってもよい。
【0046】
次に、図3(b)に示すように、上記生地9を袖付手袋Aの形状に裁断する。すなわち、上記生地9において、基本糸により編まれた箇所が手袋本体部4となり、溶着糸により編まれた箇所(或いは溶着糸が追加された箇所)が袖部5となるように、生地9を掌部用と甲部用に裁断する。そして、裁断した掌部2用と甲部3用の生地9を縫い合わせて、編み工程を終了する。
【0047】
このように、袖付手袋Aは、手袋本体部4と袖部5とが連続して編まれた生地9から製造することもできる。
【0048】
(ii)型装着工程
次に、上記編み工程において形成した袖付手袋Aを、熱処理用に設けた成形型10に装着する。この成形型10は、熱処理後の袖付手袋Aの形状を決定するものであり、図4に示すように、手の形状に形成した型本体部11と、同型本体部11に連続する末広がり状に形成した型胴部12とを具備する。そして、編み工程において製造した袖付手袋Aを成形型10に装着する場合には、型本体部11に手袋本体部4を装着すると共に、型胴部12に袖部5を装着する。
【0049】
このように、本実施例では、袖付手袋Aの袖部5に対応する箇所となる成形型10の型胴部12の形状を末広がり状に形成しており、袖付手袋Aを成形型10に装着した際には、袖部5が成形型10に沿って末広がり状に広がるようにしている。しかも、このように成形型10に装着した状態の袖付手袋Aは、袖部5の端部5aの開口面積が、手袋本体部4と袖部5との境界部bにおける断面積よりも大となる。
【0050】
なお、成形型10の型胴部12の形状は、前記図4に示すように、型本体部11と型胴部12とを一体形成しながら末広がり状になるようにしてもよいし、図5に示すように、コーティングを施すために従来より使用されている型胴部12が円筒状に形成された成形型10’に、末広がり状に形成したスカート体13を後付けすることによって、末広がり状となるようにしてもよい。
【0051】
また、型胴部12の先端縁には、図6(a)に示すように、型胴部12の周面から外側に突出させた先端凸部14を形成したり、図6(b)に示すように、型胴部12の周面から内側に窪ませた先端凹部15を形成したりすることができる。
【0052】
前者のように先端凸部14を設けた場合には、成形型10に装着した袖付手袋Aの袖部開口端5bは、前記先端凸部14に沿って外側に反ることとなり、後述する熱処理工程において加熱処理した後には、その外側に向かって反った状態で袖部開口端5bの形状が保形される。従って、袖付手袋Aの袖口をより手を挿入しやすい形状とすることができる。
【0053】
一方、後者のように先端凹部15を設けた場合には、成形型10に装着した袖付手袋Aの袖部開口端5bは、前記先端凹部15に沿って内側に陥入することとなり、後述する熱処理工程において加熱処理した後には、その内側に入り込んだ状態で袖部開口端5bの形状が保形される。
【0054】
従って、本実施例のように、袖部開口端5bに袖口かがり部8を形成していて袖部開口端5bが膨らんでいる場合には、前記先端凹部15で袖口かがり部8の膨らみを吸収して、袖部5の外表面全体を平坦な状態にすることができ、袖付手袋Aの外観を良好なものとすることができる。
【0055】
(iii)コーティング工程
次に、上記型装着工程において成形型10に装着した袖付手袋Aに、溶着性のコーティング材16を付着させる。
【0056】
すなわち、図7に示すように、成形型10ごと袖付手袋Aを傾倒させて、溶着性のコーティング材16を収容した浸漬槽17に手袋本体部4の掌部2側を浸漬し、手袋本体部4の掌部2側表面にコーティング材16を付着させる。
【0057】
このように、型装着工程と熱処理工程との間に、コーティング工程を挿入することにより、後述する熱処理工程において、袖部5の溶着糸の溶着と、コーティング材16の溶着とを一度に行うことができる。
【0058】
なお、図1に示すように、本実施例では、通気性を良くすべく手袋本体部4の掌部2側にのみコーティングを施しているが、これに限らず、図8(a)に示すように、手袋本体部4全体を前記浸漬槽17のコーティング材16に浸漬して、手袋本体部4全体にコーティングを施したり、図8(b)に示すように、袖付手袋A全体を前記浸漬槽17のコーティング材16に浸漬して、袖付手袋A全体にコーティングを施したりしてもよい。
【0059】
(iv)熱処理工程
次に、上記コーティング工程においてコーティング材16を付着させた袖付手袋Aを加熱処理する。すなわち、図9に示すように、コーティング材16を付着させた袖付手袋Aを成形型10ごと加熱炉18に挿入し、袖部5の溶着糸と手袋本体部4のコーティング材16とをそれぞれ袖付手袋Aに溶着させる。
【0060】
このように、成形型10に装着した状態で加熱処理することにより、袖部5の形状は、成形型10の型胴部12の形状に沿って、袖部開口端5bに向かって末広がり状に広がった形状に保形され、手袋本体部4の形状は、成形型10の型先端部の形状に沿って、立体的な手の形状に保形される。
【0061】
以上のようにして、(i)〜(iv)の工程に沿って製造した袖付手袋Aは、袖部5全体が硬化・補強されて、袖部開口端5bに向かって末広がり状に保形されているので、着脱がしやすく、頻繁に手袋の着脱を行う清掃作業等において良好に用いることができる。しかも、袖部5全体が硬化・補強されているので、同袖部5で装着者の手首を保護することができる。さらに、手袋本体部4と袖部5とが連続して編まれているので、装着性も良好である。
【0062】
【発明の効果】
本発明は上記のような形態で実施されるもので、以下の効果を奏する。
(1)請求項1記載の本発明では、手袋本体部と袖部とを連続して編むと共に少なくとも袖部に溶着糸を用いる編み工程と、前記袖部に対応する箇所を所定の形状に形成した成形型に装着する型装着工程と、前記袖部を所定の形状に成形するために、前記成形型に装着した状態で加熱処理する熱処理工程とを有することにしたので、溶着糸により少なくとも袖部を硬化・補強して、袖部の形状を前記成形型に沿った所定の形状に成形することができると共に、同形状を保形して袖部を折れにくくすることができ、着脱のし易い袖付手袋を製造することができる。しかも、袖付手袋は、手袋本体部と袖部とが連続して編まれているので、手袋本体部と袖部とを別々に製造して、両者を縫合する手間を省くことができ、製造コストを削減することができる。また、このように手袋本体部と袖部との間に縫合箇所がないことにより、袖付手袋を着脱する際に縫合箇所が手に触って装着性が低下したりすることがなく、装着性の良い袖付手袋を製造することができる。
(2)請求項2記載の本発明では、前記成形型は、袖部の端部の開口面積が前記手袋本体部と前記袖部との境界部における断面積よりも大となるように形成したので、袖部開口端が広がったより着脱のし易い袖付手袋を製造することができる。
(3)請求項3記載の本発明では、袖部に対応する箇所を末広がり状に形成したので、袖部から手袋本体部にかけて凹凸のない傾斜面を有する袖付手袋を形成することができ、装着時には、袖部に沿って手をスライドさせていくことによりそのまま手袋本体部まで円滑に手を挿入することができる。従って、一層装着性の高い袖付手袋を製造することができる。
(4)請求項4記載の本発明では、型装着工程と熱処理工程との間に、溶着性のコーティング材を付着させるコーティング工程を有することにしたので、袖部における溶着糸の溶着と、コーティング材の溶着とを一度の加熱処理で同時に行うことができ、溶着糸の溶着とコーティング材の溶着とをそれぞれ別々に加熱処理する手間を省いて、製造コストを削減することができる。
(5)請求項5記載の本発明では、編み工程は、手袋本体部から同手袋本体部に連接する袖部にかけて連続して袋状に編むことにしたので、全体にわたって縫合箇所のない袖付手袋を製造することができ、袖付手袋の装着性を一層向上させることができる。また、袖付手袋全体を連続して編むので、別々に形成した部材を継ぎ合わせる手間が全くなく、一層製造コストを抑えることができる。
(6)請求項6記載の本発明では、編み工程は、手袋本体部と袖部とが連続して編まれた生地を、予め掌部用と甲部用に裁断した後、両者を縫合することにしたので、前記生地を成形型に沿った形状に裁断・縫合し、袖付手袋を予め成形型に沿った形状に形成した後に加熱処理することができる。従って、成形型がどのような形状であったとしても、無理なく袖付手袋を成形型に装着することができ、袖部の形状を成形型に沿った形状に保形することができる。そのため、成形型の形状を様々に変化させて、袖部の形状を自由に変化させることができる。
(7)請求項7記載の本発明では、指部と掌部と甲部とからなる手袋本体部と、溶着糸を用いて前記手袋本体部に連続して編まれた所定の形状の袖部とからなり、同袖部は、所定の形状に形成した成形型に装着した状態で、前記溶着糸を加熱処理して成形することにしたので、溶着糸により袖部を硬化・補強して、袖部の形状を前記成形型に沿った所定の形状に成形することができると共に、同形状を保形して袖部を折れにくくすることができ、着脱のし易い袖付手袋とすることができる。しかも、袖付手袋は、手袋本体部と袖部とが連続して編まれているので、手袋本体部と袖部とを別々に製造して、両者を縫合する手間を省くことができ、安価に製造することができる。また、このように手袋本体部と袖部との間に縫合箇所がないことにより、袖付手袋を着脱する際に縫合箇所が手に触って装着性が低下したりすることがなく、装着性の良い袖付手袋とすることができる。
(8)請求項8記載の本発明では、前記袖部の端部の開口面積は、前記手袋本体部と前記袖部との境界部における断面積よりも大となるようにしたので、袖部開口端が広がったより着脱のし易い袖付手袋とすることができる。
(9)請求項9記載の本発明では、前記袖部は、袖部開口端に向かって末広がり状に形成したので、袖部から手袋本体部にかけて凹凸のない傾斜面が形成されて、袖部に沿って手をスライドさせていくことによりそのまま手袋本体部まで手を円滑に挿入することができる。従って、袖付手袋の装着性を一層向上させることができる。
(10)請求項10記載の本発明では、前記袖付手袋の表面に溶着性のコーティング材を付着させた後に前記加熱処理を行うことにより、表面にコーティングを施すことにしたので、袖部における溶着糸の溶着と、コーティング材の溶着とを一度の加熱処理で同時に行うことができ、溶着糸の溶着とコーティング材の溶着とをそれぞれ別々に加熱処理する手間を省いて、安価に製造することができる。また、袖部をコーティング材によっても補強するので、袖部の形状をより確実に保形することができる。
(11)請求項11記載の本発明では、手袋本体部から同手袋本体部に連接する袖部にかけて連続して袋状に編んで形成することにしたので、全体にわたって縫合箇所がなく、一層装着性の良い袖付手袋とすることができる。また、袖付手袋全体を連続して編むので、別々に形成した部材を継ぎ合わせる手間が全くなく、一層安価に製造することができる。
(12)請求項12記載の本発明では、手袋本体部と袖部とが連続して編まれた生地を、予め掌部用と甲部用に裁断した後、両者を縫合して形成することにしたので、前記生地を成形型に沿った形状に裁断・縫合し、袖付手袋を予め成形型に沿った形状に形成した後に加熱処理することができる。従って、成形型がどのような形状であったとしても、無理なく袖付手袋を成形型に装着することができ、袖部の形状を成形型に沿った形状に保形することができる。そのため、成形型の形状を様々に変化させて、袖部の形状を自由に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る袖付手袋の一実施例の正面図である。
【図2】編み工程の説明図である。
【図3】他実施例としての編み工程の説明図である。
【図4】型装着工程の説明図である。
【図5】他実施例としての成形型の説明図である。
【図6】他実施例としての成形型の部分説明図である。
【図7】コーティング工程の説明図である。
【図8】コーティング工程の説明図である。
【図9】熱処理工程の説明図である。
【符号の説明】
A 袖付手袋
b 境界部
1 指部
2 掌部
3 甲部
4 手袋本体部
5 袖部
5b 袖部開口端
5a 端部
16 コーティング材
Claims (12)
- 手袋本体部と袖部とを連続して編むと共に少なくとも袖部に溶着糸を用いる編み工程と、
前記袖部に対応する箇所を所定の形状に形成した成形型に装着する型装着工程と、
前記袖部を所定の形状に成形するために、前記成形型に装着した状態で加熱処理する熱処理工程と、
を有することを特徴とする袖付手袋の製造方法。 - 前記成形型は、袖部の端部の開口面積が前記手袋本体部と前記袖部との境界部における断面積よりも大となるように形成したことを特徴とする請求項1記載の袖付手袋の製造方法。
- 前記成形型は、袖部に対応する箇所を末広がり状に形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の袖付手袋の製造方法。
- 型装着工程と熱処理工程との間に、溶着性のコーティング材を付着させるコーティング工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の袖付手袋の製造方法。
- 編み工程は、手袋本体部から同手袋本体部に連接する袖部にかけて連続して袋状に編むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の袖付手袋の製造方法。
- 編み工程は、手袋本体部を成す部分と袖部を成す部分とを連続した生地として編み、同生地を予め掌部用と甲部用に裁断した後、両者を縫合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の袖付手袋の製造方法。
- 指部と掌部と甲部とからなる手袋本体部と、溶着糸を用いて前記手袋本体部に連続して編まれた所定の形状の袖部とからなり、同袖部は、所定の形状に形成した成形型に装着した状態で、前記溶着糸を加熱処理して成形したことを特徴とする袖付手袋。
- 前記袖部の端部の開口面積は、前記手袋本体部と前記袖部との境界部における断面積よりも大となることを特徴とする請求項7記載の袖付手袋。
- 前記袖部は、袖部開口端に向かって末広がり状に形成したことを特徴とする請求項7又は請求項8記載の袖付手袋。
- 前記袖付手袋の表面に溶着性のコーティング材を付着させた後に前記加熱処理を行うことにより、表面にコーティングを施したことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の袖付手袋。
- 手袋本体部から同手袋本体部に連接する袖部にかけて連続して袋状に編んで形成したことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の袖付手袋。
- 手袋本体部を成す部分と袖部を成す部分とを連続した生地として編み、同生地を予め掌部用と甲部用に裁断した後、両者を縫合して形成したことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の袖付手袋。
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