JP2004315980A - 介護用パジャマ - Google Patents
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Abstract
【課題】おむつを交換するための作業が重労働にならずに容易に行え、上衣の背中部分に寄った皺を簡単に引延ばすことができ、おむつ交換時の患者の気恥ずかしさを軽減することができるような介護用パジャマを提供する。
【解決手段】上衣1の前身頃11の丈が後身頃12よりも15cm以上短く、後身頃の下端の中央には延長部13が設けられており、延長部の自由端部および上衣の前身頃に互いに係合可能な係止具13a、14aが設けらている。ズボンは右足用部分21と左足用部分22とに完全に分離されており、右足用部分および左足用部分はそれぞれ筒状股下部と股上部とからなり、前記股上部は着用者の右側腹部または左側腹部を覆うための前側股上部を有するが、着用者の背中および臀部を覆うための部分が欠けており、前記股上部および上衣にはズボンと上衣とを着脱自在に連結するための連結具16、23が設けられ、右足用部分の股上部と左足用部分の股上部とを着脱自在に連結する係止具が設けられている。
【選択図】 図8
【解決手段】上衣1の前身頃11の丈が後身頃12よりも15cm以上短く、後身頃の下端の中央には延長部13が設けられており、延長部の自由端部および上衣の前身頃に互いに係合可能な係止具13a、14aが設けらている。ズボンは右足用部分21と左足用部分22とに完全に分離されており、右足用部分および左足用部分はそれぞれ筒状股下部と股上部とからなり、前記股上部は着用者の右側腹部または左側腹部を覆うための前側股上部を有するが、着用者の背中および臀部を覆うための部分が欠けており、前記股上部および上衣にはズボンと上衣とを着脱自在に連結するための連結具16、23が設けられ、右足用部分の股上部と左足用部分の股上部とを着脱自在に連結する係止具が設けられている。
【選択図】 図8
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はパジャマに関するものである。特に、本発明は病気や高齢のために身動きできず寝たきりになった人が着用するのに適しているパジャマに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、病気や高齢のため身動きができない状態で寝たきりとなっている人は、おむつを使用するのが一般的である。このような人には、着替えやおむつ交換が容易にできるようにするため寝間着(着物)を着せている。おむつの交換をするときは前を開けて交換すればよいのであるが、着物は前がはだけ易いため、車椅子に乗せて散歩をさせたい場合などは、着物のままでは前が開いてしまうため衣服に着替えさせる必要がある。しかし、身動きが自由にできない人に対して着替えさせることは非常に大変であるため、患者にとっても介護者にとっても億劫な作業であって、気軽に散歩に連れ出すことができなかった。
【0003】
一方、普通のパジャマを着用させた場合は、車椅子に乗せて外出させることはすぐにできるが、おむつの交換が非常に大変である。すなわち、おむつを交換する場合は、パジャマのズボンを完全に脱がせなければならない。ズボンを途中まで下げた状態であると、ズボンに着用者の足が入っている。一方、ズボンはその股上部によって連結されている状態であり、このため自由に足を開くことができず、おむつの交換を容易に行うことができないからである。従って、ズボンを脱がせておむつの交換をし、その後、再びズボンをはかせる作業が必要である。しかも、ズボンをはかせた後、ズボンを腰の上まではかせなければならない。自由に身動きのできない人のズボンを脱がせる場合およびズボンを腰の上まではかせる場合、いずれも介護者が患者の腰を持ち上げることが必要である。しかし、自由に身動きのできない患者の腰を持ち上げることは介護する人にとっては非常に重労働である。しかも、ズボンの股上部を腰まで持ち上げた際に、パジャマの上衣に皺がよってしまう。この皺のよった状態で寝たきりの状態にすると、皺のよった部分により患者は不快に感じるとともに、その部分が押圧されて褥瘡(床ずれ)になったりする。
【0004】
このような点を改良したものとして幾つかのパジャマが提案されている。例えば、特許文献1(特開平11−093006号公報)には、ファスナーにより上衣の前開部と左右のズボンの部分の前面が完全に開くようにするパジャマが提案されている。
【0005】
特許文献2(特開平11−152612号公報)においても同様に、ズボンの二股前面中央部がファスナによって完全に開くようにすることが提案されている。
【0006】
特許文献3(特開平7−278915号公報)には、パジャマのズボンとしてズボンの脇が着部の途中まで開くようにしたものが提案されている。
【0007】
また、特許文献4(特開平8−144110号公報)には、ズボンを左右に分割した状態とし、腰のところをそれぞれ紐で巻付けて固定するようにしたものが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−093006号公報
【特許文献2】特開平11−152612号公報
【特許文献3】特開平07−278915号公報
【特許文献4】特開平08−144110号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1および2に開示された従来技術のように前を開けたもの、或いは従来の寝間着や従来のパジャマなどにおいては、おむつ交換をする場合に下半身が足先まで完全にむき出しの状態となるので、患者としては何も覆うものがなくなり気恥ずかしい気分となってしまう。赤ちゃんのおむつ交換と同じような状態となってしまうので、気持に非常に抵抗感が生じるものである。
【0010】
また、特許文献3に開示されているように、足の途中まで下ろしたものでは、部分的に足が覆われているので裸になったような気はしないが、ズボンが足に引掛かった状態のままであるので、介護する者にとってはおむつの交換が自由にできず、作業が非常に行い難いという点がある。
【0011】
一方、特許文献4に開示されているように、左右に分割されたズボンにおいては、股上部を下げればおむつの交換はできるが、この股上部を下げたり、また再び股上部を腰部まで着せたりする際には、患者の体を持ち上げなければならないため、非常に重労働となってしまうものである。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、このような従来技術の問題を解決し、おむつ交換が容易であり、しかも交換するための作業が重労働にならずに行え、患者にとっては足をズボンによって覆ったままとすることができ、患者の気恥ずかしさを軽減することができるようなパジャマを提供することを目的とする。また、本発明の目的は、おむつの交換時などにも上衣には皺が寄らないように、上衣の背中部分に寄った皺を簡単に引延ばすことができるようにしたパジャマを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上衣とズボンからなる介護用パジャマにおいて、上衣の前身頃の丈が後身頃よりも15cm以上短く、後身頃の下端の中央には延長部が設けられており、該延長部の自由端部および上衣の前身頃に互いに係合可能な係止具が設けられ、ズボンは右足用部分と左足用部分とに完全に分離されており、右足用部分および左足用部分はそれぞれ筒状股下部と股上部とからなり、前記股上部は着用者の右側腹部または左側腹部を覆うための前側股上部を有するが、着用者の背中および臀部を覆うための部分が欠けており、前記股上部および上衣にはズボンと上衣とを着脱自在に連結するための連結具が設けられ、右足用部分の股上部と左足用部分の股上部とを着脱自在に連結する係止具が設けられていることを特徴とする介護用パジャマにより前記目的を達成する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示した実施例に基いて詳細に説明する。図1は本発明のパジャマの一実施例の着用状態における正面図、図2は図1に示したパジャマの着用状態における背面図である。図3は図1に示したパジャマの上衣のみの正面図であり、図4は図1に示したパジャマのズボンの正面図、図5は図4に示したズボンの背面図であり、図6は図4に示したズボンの右足用部分を示し、(a)は正面図、(b)は背面図であり、図7は図4に示したズボンの左足用部分を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【0015】
図1および図2に示すように、本発明のパジャマは上衣1とズボン2から構成されるものである。そして図3に示すように、本発明のパジャマの上衣1においては、前身頃11の丈が後身頃12よりもLだけ短くなっている。この短い長さLは15cm以上、好ましくは18cm以上短くする。
【0016】
パジャマの後身頃12は着用者の臀部を完全に覆えるような丈とすることが好ましいが、それよりもやや短くてもよい。但し、少なくとも、腰掛けた状態で臀部を覆う長さが必要である。
【0017】
前身頃11の丈を短くするのは、おむつの交換時にパジャマの前開きを完全に開かなくとも交換できるようにするためであり、前身頃11は好ましくは着用者の腰骨または臍よりやや下の部分までを覆うような丈とする。
【0018】
後身頃12の下端中央には、図3に示すように、細幅Wの延長部13が設けられている。この細幅の延長部13は全体が同じ幅Wでもよいが、少なくとも折返したときに着用者の股部にかかる部分、すなわち、後身頃12の下端部近傍の部分の幅は、好ましくは8cm〜15cm程度とすることが好ましい。その股部にかかる部分より先の部分は広くなっていてもよい。
【0019】
延長部13の自由端側の先端部には、延長部13を折返した時に前身頃11と係合するような係止具が設けられている。この図面に示した実施例では、前身頃11の前開きがボタン14とボタンホールによって行われるようなタイプとなっており、一番下のボタン14aと延長部13の先端に設けられたボタン穴13が係合可能な係止具となっている。
【0020】
図1〜図3に示すように、この実施例では脇の下の部分に開口15が設けられている。この開口15はパジャマの上衣1を患者に着せる際に腕を袖に通し易くすることができるものである。開口15のところに肘を出し入れすることにより上衣1の袖に腕を通したり、脱がせたりすることが容易にできる。
【0021】
図4および図5に示すように、本発明のパジャマのズボン2は右足用部分21と左足用部分22に完全に分離されたものであり、それぞれの部分21、22は筒状股下部21a、22aと股上部21b、22b、21c、22cからなる。この股上部には、パジャマの着用者の腹部を覆うための前側股上部21b、22bがあるが、後側股上部21c、22cはそれぞれ着用者の臀部および背中を覆うための部分が欠けている状態である。
【0022】
図4〜図7に示した実施例においては、右足用部分21の前側股上部21bは着用者の右腹部を覆うとともに左腹部まで三角形状に延びており、左足用部分22の前側股上部22bも着用者の左腹部を覆うとともに右腹部まで覆えるように三角形状に延びている。そして、それぞれの股上部21b、22bの上端部には右足用部分21と左足用部分22を着脱自在に連結するための一対の係止具24a、24b、25a、25bが設けられている。そして左右の足用部分21、22を連結する場合は、図5に示すように、係止具24aと25bとが連結され、24bと25aとが連結される状態となる。この係止具24a、24b、25a、25bは、例えば、対の面ファスナやボタンとボタンホール、或いはスナップボタン等、適宜な止め具としてもよい。
【0023】
また、右足用部分21に設けられた係止具24a、24b同士も互いに係合可能な一対のものとし、左足用部分22に設けられた係止具25a、25b同士も互いに連結可能な一対のものとしておくことが好ましい。例えば、ループとフックとからなる面ファスナを用いる場合、係止具24a、25aをループ側面ファスナとし、係止具24b、25bをフック側面ファスナとすればよい。このように構成しておくと、おむつの交換時に左右の足用部分21、22の連結状態を解放して、図8を参照して後述するように、股上部21b、22bを足の方に下げた際に股上部21b、22bが邪魔にならないようにそれぞれ右足あるいは左足に巻付け、右足では係止具24a、24bを止め、左足では係止具25aと25bを止めて、股上部21b22bを折返した状態で、交換作業の邪魔にならないように維持することができる。
【0024】
前述した実施例では、前側股上部21b、22bが三角形状をしている部分を有しているが、別の実施態様としては右足用部分21の前側股上部21bはパジャマの着用者の右側腹部を覆うものとし、左足用部分22の前側股上部22bは着用者の左側腹部を覆うようにし、両前側股上部21b、22bを腹部の中央部分で連結するようにしてもよい。この場合は、例えば、オープンファスナを用いて腹部の中央部分を上下に連結するようにすることができる。
【0025】
本発明のパジャマのズボン2においては背中の部分が存在しない。そのため、そのままでは脱げてしまう。そこで、図1に示すように、股上部21b、22bおよび上衣1にそれぞれ両者を着脱自在に連結するための連結具23、16が設けられている。この図示した実施例においては、この連結具は上衣1に設けられたループ16とズボン2に取付けられたボタン23とからなっている。しかし、この連結具はこれに限定されるものではなく、他の連結具、例えば対になった面ファスナ、ボタンとボタンホール、スナップボタン或いは紐と紐等、適宜なものを使用することができる。また、上衣1とズボン2とを連結する箇所は特に限定されず、両脇付近と中央との複数箇所であってもよい。
【0026】
更に、図示した実施例では左右の足用部分21、22の股上部21b、22bの表側にそれぞれボタン23を取付け、上衣1にループ16を取付けたものであるが、別の実施態様としては、下前となる股上部(図1に示した実施例では右足用部分21の股上部21b)の裏側の箇所(例えば2〜4箇所)に連結具(例えば、面ファスナ)を取付けて、上衣1に取付けた連結具と係合するようにしてもよい。
【0027】
また、ズボン2の膝付近には筒状股下部を足に固定するための固定具26が設けられている。図示した実施例では、固定具26は紐通し部26aに通した紐26bである。紐26bで着用者の足に固定することができるようにして、股上部21b、22bを下ろしたときも股下部21a、22aが脱げてしまわないように紐26を締めて足に固定することが好ましい。
【0028】
次に図8に基いておむつの交換の時の手順を説明する。図8(a)は本発明のパジャマを着用した状態であり、おむつ交換前の患者は図8(a)に示した状態となっている。次に図8(b)に示すように、連結具16、23を外し、上前となっている方の股上部(図示した実施例では左足側の股上部22b)を先ず下げる。この場合、好ましくは下げた状態で股上部22bを足に巻き付け、係止具25a、25bを止める。次に反対側の股上部21bも図8(c)に示すように下げる。そして図8(d)に示すように上衣1の延長部13を係止具13a、14aから外して下に下げる。
【0029】
この状態で使用していたおむつ(図示せず)が見えるので、おむつを外し、新しいおむつと交換する。この場合に延長部13が体の中央に当る位置にあるので、新しいおむつの位置決めが行い易い。そして、おむつを新しいおむつに交換した後、後身頃12に設けられた延長部13を下方に引張ることにより、上衣1の後身頃12の皺を容易に取ることができる。
【0030】
新しいおむつを付ける場合も、上衣1の前身頃11が短いので、前開きを大きく開けなくても簡単におむつを付けることができる。その後、再び図8(e)に示すように、延長部13を上に折返して、前身頃11の係止具14aと延長部13の係止具13aを止め合わせる。
【0031】
次に図8(f)に示すように、右足用の股上部21bを腹部まで着せ掛ける。そして、左足用の股上部22bも腹部まで着せ、両股上部21b、22bの係止具24a、24b、25a、25bを止め合わせる。そしてズボン2の連結具23と上衣1に取付けられた連結具16とを止め合わせて、先に図8(a)に示した普通の状態とする。
【0032】
【発明の効果】
このように本発明のパジャマでは、おむつを交換するために患者の腰を持ち上げる必要はあるが、ズボンを脱ぎ着させるために患者を持ち上げる必要がないので、従来のパジャマのと比べて交換が極めて簡単に行える。
【0033】
また、本発明のパジャマを着用している人にとっては、おむつの交換時にも体の極く一部分がはだけた状態になるだけであり、しかも脚部は覆われた状態であるので、従来のように下半身全部が脱がされて大きく露出した状態になるものに比べて寒くもないし、また裸になってしまうとか、他人の目に晒されるいう不快さも大幅に低減される。
【0034】
更に、本発明のものは、着用時に通常のパジャマと同様に見えるパジャマである。すなわち、ズボンの後股上部において背中と臀部に相当する箇所が存在しないが、上衣の後身頃が長めであって、背中と臀部を覆っており、そして着用者が車椅子に乗っている状態では車椅子により背中と臀部が隠れるので、通常のパジャマと同様に見える。そして、本発明のパジャマを着用した状態では、散歩するために車椅子に乗せても前がはだけたりしないので、患者にも介護者にも億劫な着替えを行う必要がなく、気楽に散歩に連れ出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパジャマの一実施例の着用状態における正面図である。
【図2】図1に示したパジャマの着用状態における背面図である。
【図3】図1に示したパジャマの上衣のみの正面図である。
【図4】図1に示したパジャマのズボンの正面図である。
【図5】図4に示したズボンの背面図である。
【図6】図4に示したズボンの右足用部分を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図7】図4に示したズボンの左足用部分を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図8】(a)〜(f)は図1に示したパジャマを着用している状態でのおむつ交換時の手順を示す工程図である。
【符号の説明】
1 上衣
2 ズボン
11 前身頃
12 後身頃
13 延長部
13a、14a 係止具
21 ズボンの右足用部分
22 ズボンの左足用部分
21a、22a 筒状股下部
21b、22b、21c、22c 股上部
16、23 連結具
24a、24b、25a、25b 係止具
【発明の属する技術分野】
本発明はパジャマに関するものである。特に、本発明は病気や高齢のために身動きできず寝たきりになった人が着用するのに適しているパジャマに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、病気や高齢のため身動きができない状態で寝たきりとなっている人は、おむつを使用するのが一般的である。このような人には、着替えやおむつ交換が容易にできるようにするため寝間着(着物)を着せている。おむつの交換をするときは前を開けて交換すればよいのであるが、着物は前がはだけ易いため、車椅子に乗せて散歩をさせたい場合などは、着物のままでは前が開いてしまうため衣服に着替えさせる必要がある。しかし、身動きが自由にできない人に対して着替えさせることは非常に大変であるため、患者にとっても介護者にとっても億劫な作業であって、気軽に散歩に連れ出すことができなかった。
【0003】
一方、普通のパジャマを着用させた場合は、車椅子に乗せて外出させることはすぐにできるが、おむつの交換が非常に大変である。すなわち、おむつを交換する場合は、パジャマのズボンを完全に脱がせなければならない。ズボンを途中まで下げた状態であると、ズボンに着用者の足が入っている。一方、ズボンはその股上部によって連結されている状態であり、このため自由に足を開くことができず、おむつの交換を容易に行うことができないからである。従って、ズボンを脱がせておむつの交換をし、その後、再びズボンをはかせる作業が必要である。しかも、ズボンをはかせた後、ズボンを腰の上まではかせなければならない。自由に身動きのできない人のズボンを脱がせる場合およびズボンを腰の上まではかせる場合、いずれも介護者が患者の腰を持ち上げることが必要である。しかし、自由に身動きのできない患者の腰を持ち上げることは介護する人にとっては非常に重労働である。しかも、ズボンの股上部を腰まで持ち上げた際に、パジャマの上衣に皺がよってしまう。この皺のよった状態で寝たきりの状態にすると、皺のよった部分により患者は不快に感じるとともに、その部分が押圧されて褥瘡(床ずれ)になったりする。
【0004】
このような点を改良したものとして幾つかのパジャマが提案されている。例えば、特許文献1(特開平11−093006号公報)には、ファスナーにより上衣の前開部と左右のズボンの部分の前面が完全に開くようにするパジャマが提案されている。
【0005】
特許文献2(特開平11−152612号公報)においても同様に、ズボンの二股前面中央部がファスナによって完全に開くようにすることが提案されている。
【0006】
特許文献3(特開平7−278915号公報)には、パジャマのズボンとしてズボンの脇が着部の途中まで開くようにしたものが提案されている。
【0007】
また、特許文献4(特開平8−144110号公報)には、ズボンを左右に分割した状態とし、腰のところをそれぞれ紐で巻付けて固定するようにしたものが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−093006号公報
【特許文献2】特開平11−152612号公報
【特許文献3】特開平07−278915号公報
【特許文献4】特開平08−144110号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1および2に開示された従来技術のように前を開けたもの、或いは従来の寝間着や従来のパジャマなどにおいては、おむつ交換をする場合に下半身が足先まで完全にむき出しの状態となるので、患者としては何も覆うものがなくなり気恥ずかしい気分となってしまう。赤ちゃんのおむつ交換と同じような状態となってしまうので、気持に非常に抵抗感が生じるものである。
【0010】
また、特許文献3に開示されているように、足の途中まで下ろしたものでは、部分的に足が覆われているので裸になったような気はしないが、ズボンが足に引掛かった状態のままであるので、介護する者にとってはおむつの交換が自由にできず、作業が非常に行い難いという点がある。
【0011】
一方、特許文献4に開示されているように、左右に分割されたズボンにおいては、股上部を下げればおむつの交換はできるが、この股上部を下げたり、また再び股上部を腰部まで着せたりする際には、患者の体を持ち上げなければならないため、非常に重労働となってしまうものである。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、このような従来技術の問題を解決し、おむつ交換が容易であり、しかも交換するための作業が重労働にならずに行え、患者にとっては足をズボンによって覆ったままとすることができ、患者の気恥ずかしさを軽減することができるようなパジャマを提供することを目的とする。また、本発明の目的は、おむつの交換時などにも上衣には皺が寄らないように、上衣の背中部分に寄った皺を簡単に引延ばすことができるようにしたパジャマを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上衣とズボンからなる介護用パジャマにおいて、上衣の前身頃の丈が後身頃よりも15cm以上短く、後身頃の下端の中央には延長部が設けられており、該延長部の自由端部および上衣の前身頃に互いに係合可能な係止具が設けられ、ズボンは右足用部分と左足用部分とに完全に分離されており、右足用部分および左足用部分はそれぞれ筒状股下部と股上部とからなり、前記股上部は着用者の右側腹部または左側腹部を覆うための前側股上部を有するが、着用者の背中および臀部を覆うための部分が欠けており、前記股上部および上衣にはズボンと上衣とを着脱自在に連結するための連結具が設けられ、右足用部分の股上部と左足用部分の股上部とを着脱自在に連結する係止具が設けられていることを特徴とする介護用パジャマにより前記目的を達成する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示した実施例に基いて詳細に説明する。図1は本発明のパジャマの一実施例の着用状態における正面図、図2は図1に示したパジャマの着用状態における背面図である。図3は図1に示したパジャマの上衣のみの正面図であり、図4は図1に示したパジャマのズボンの正面図、図5は図4に示したズボンの背面図であり、図6は図4に示したズボンの右足用部分を示し、(a)は正面図、(b)は背面図であり、図7は図4に示したズボンの左足用部分を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【0015】
図1および図2に示すように、本発明のパジャマは上衣1とズボン2から構成されるものである。そして図3に示すように、本発明のパジャマの上衣1においては、前身頃11の丈が後身頃12よりもLだけ短くなっている。この短い長さLは15cm以上、好ましくは18cm以上短くする。
【0016】
パジャマの後身頃12は着用者の臀部を完全に覆えるような丈とすることが好ましいが、それよりもやや短くてもよい。但し、少なくとも、腰掛けた状態で臀部を覆う長さが必要である。
【0017】
前身頃11の丈を短くするのは、おむつの交換時にパジャマの前開きを完全に開かなくとも交換できるようにするためであり、前身頃11は好ましくは着用者の腰骨または臍よりやや下の部分までを覆うような丈とする。
【0018】
後身頃12の下端中央には、図3に示すように、細幅Wの延長部13が設けられている。この細幅の延長部13は全体が同じ幅Wでもよいが、少なくとも折返したときに着用者の股部にかかる部分、すなわち、後身頃12の下端部近傍の部分の幅は、好ましくは8cm〜15cm程度とすることが好ましい。その股部にかかる部分より先の部分は広くなっていてもよい。
【0019】
延長部13の自由端側の先端部には、延長部13を折返した時に前身頃11と係合するような係止具が設けられている。この図面に示した実施例では、前身頃11の前開きがボタン14とボタンホールによって行われるようなタイプとなっており、一番下のボタン14aと延長部13の先端に設けられたボタン穴13が係合可能な係止具となっている。
【0020】
図1〜図3に示すように、この実施例では脇の下の部分に開口15が設けられている。この開口15はパジャマの上衣1を患者に着せる際に腕を袖に通し易くすることができるものである。開口15のところに肘を出し入れすることにより上衣1の袖に腕を通したり、脱がせたりすることが容易にできる。
【0021】
図4および図5に示すように、本発明のパジャマのズボン2は右足用部分21と左足用部分22に完全に分離されたものであり、それぞれの部分21、22は筒状股下部21a、22aと股上部21b、22b、21c、22cからなる。この股上部には、パジャマの着用者の腹部を覆うための前側股上部21b、22bがあるが、後側股上部21c、22cはそれぞれ着用者の臀部および背中を覆うための部分が欠けている状態である。
【0022】
図4〜図7に示した実施例においては、右足用部分21の前側股上部21bは着用者の右腹部を覆うとともに左腹部まで三角形状に延びており、左足用部分22の前側股上部22bも着用者の左腹部を覆うとともに右腹部まで覆えるように三角形状に延びている。そして、それぞれの股上部21b、22bの上端部には右足用部分21と左足用部分22を着脱自在に連結するための一対の係止具24a、24b、25a、25bが設けられている。そして左右の足用部分21、22を連結する場合は、図5に示すように、係止具24aと25bとが連結され、24bと25aとが連結される状態となる。この係止具24a、24b、25a、25bは、例えば、対の面ファスナやボタンとボタンホール、或いはスナップボタン等、適宜な止め具としてもよい。
【0023】
また、右足用部分21に設けられた係止具24a、24b同士も互いに係合可能な一対のものとし、左足用部分22に設けられた係止具25a、25b同士も互いに連結可能な一対のものとしておくことが好ましい。例えば、ループとフックとからなる面ファスナを用いる場合、係止具24a、25aをループ側面ファスナとし、係止具24b、25bをフック側面ファスナとすればよい。このように構成しておくと、おむつの交換時に左右の足用部分21、22の連結状態を解放して、図8を参照して後述するように、股上部21b、22bを足の方に下げた際に股上部21b、22bが邪魔にならないようにそれぞれ右足あるいは左足に巻付け、右足では係止具24a、24bを止め、左足では係止具25aと25bを止めて、股上部21b22bを折返した状態で、交換作業の邪魔にならないように維持することができる。
【0024】
前述した実施例では、前側股上部21b、22bが三角形状をしている部分を有しているが、別の実施態様としては右足用部分21の前側股上部21bはパジャマの着用者の右側腹部を覆うものとし、左足用部分22の前側股上部22bは着用者の左側腹部を覆うようにし、両前側股上部21b、22bを腹部の中央部分で連結するようにしてもよい。この場合は、例えば、オープンファスナを用いて腹部の中央部分を上下に連結するようにすることができる。
【0025】
本発明のパジャマのズボン2においては背中の部分が存在しない。そのため、そのままでは脱げてしまう。そこで、図1に示すように、股上部21b、22bおよび上衣1にそれぞれ両者を着脱自在に連結するための連結具23、16が設けられている。この図示した実施例においては、この連結具は上衣1に設けられたループ16とズボン2に取付けられたボタン23とからなっている。しかし、この連結具はこれに限定されるものではなく、他の連結具、例えば対になった面ファスナ、ボタンとボタンホール、スナップボタン或いは紐と紐等、適宜なものを使用することができる。また、上衣1とズボン2とを連結する箇所は特に限定されず、両脇付近と中央との複数箇所であってもよい。
【0026】
更に、図示した実施例では左右の足用部分21、22の股上部21b、22bの表側にそれぞれボタン23を取付け、上衣1にループ16を取付けたものであるが、別の実施態様としては、下前となる股上部(図1に示した実施例では右足用部分21の股上部21b)の裏側の箇所(例えば2〜4箇所)に連結具(例えば、面ファスナ)を取付けて、上衣1に取付けた連結具と係合するようにしてもよい。
【0027】
また、ズボン2の膝付近には筒状股下部を足に固定するための固定具26が設けられている。図示した実施例では、固定具26は紐通し部26aに通した紐26bである。紐26bで着用者の足に固定することができるようにして、股上部21b、22bを下ろしたときも股下部21a、22aが脱げてしまわないように紐26を締めて足に固定することが好ましい。
【0028】
次に図8に基いておむつの交換の時の手順を説明する。図8(a)は本発明のパジャマを着用した状態であり、おむつ交換前の患者は図8(a)に示した状態となっている。次に図8(b)に示すように、連結具16、23を外し、上前となっている方の股上部(図示した実施例では左足側の股上部22b)を先ず下げる。この場合、好ましくは下げた状態で股上部22bを足に巻き付け、係止具25a、25bを止める。次に反対側の股上部21bも図8(c)に示すように下げる。そして図8(d)に示すように上衣1の延長部13を係止具13a、14aから外して下に下げる。
【0029】
この状態で使用していたおむつ(図示せず)が見えるので、おむつを外し、新しいおむつと交換する。この場合に延長部13が体の中央に当る位置にあるので、新しいおむつの位置決めが行い易い。そして、おむつを新しいおむつに交換した後、後身頃12に設けられた延長部13を下方に引張ることにより、上衣1の後身頃12の皺を容易に取ることができる。
【0030】
新しいおむつを付ける場合も、上衣1の前身頃11が短いので、前開きを大きく開けなくても簡単におむつを付けることができる。その後、再び図8(e)に示すように、延長部13を上に折返して、前身頃11の係止具14aと延長部13の係止具13aを止め合わせる。
【0031】
次に図8(f)に示すように、右足用の股上部21bを腹部まで着せ掛ける。そして、左足用の股上部22bも腹部まで着せ、両股上部21b、22bの係止具24a、24b、25a、25bを止め合わせる。そしてズボン2の連結具23と上衣1に取付けられた連結具16とを止め合わせて、先に図8(a)に示した普通の状態とする。
【0032】
【発明の効果】
このように本発明のパジャマでは、おむつを交換するために患者の腰を持ち上げる必要はあるが、ズボンを脱ぎ着させるために患者を持ち上げる必要がないので、従来のパジャマのと比べて交換が極めて簡単に行える。
【0033】
また、本発明のパジャマを着用している人にとっては、おむつの交換時にも体の極く一部分がはだけた状態になるだけであり、しかも脚部は覆われた状態であるので、従来のように下半身全部が脱がされて大きく露出した状態になるものに比べて寒くもないし、また裸になってしまうとか、他人の目に晒されるいう不快さも大幅に低減される。
【0034】
更に、本発明のものは、着用時に通常のパジャマと同様に見えるパジャマである。すなわち、ズボンの後股上部において背中と臀部に相当する箇所が存在しないが、上衣の後身頃が長めであって、背中と臀部を覆っており、そして着用者が車椅子に乗っている状態では車椅子により背中と臀部が隠れるので、通常のパジャマと同様に見える。そして、本発明のパジャマを着用した状態では、散歩するために車椅子に乗せても前がはだけたりしないので、患者にも介護者にも億劫な着替えを行う必要がなく、気楽に散歩に連れ出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパジャマの一実施例の着用状態における正面図である。
【図2】図1に示したパジャマの着用状態における背面図である。
【図3】図1に示したパジャマの上衣のみの正面図である。
【図4】図1に示したパジャマのズボンの正面図である。
【図5】図4に示したズボンの背面図である。
【図6】図4に示したズボンの右足用部分を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図7】図4に示したズボンの左足用部分を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図8】(a)〜(f)は図1に示したパジャマを着用している状態でのおむつ交換時の手順を示す工程図である。
【符号の説明】
1 上衣
2 ズボン
11 前身頃
12 後身頃
13 延長部
13a、14a 係止具
21 ズボンの右足用部分
22 ズボンの左足用部分
21a、22a 筒状股下部
21b、22b、21c、22c 股上部
16、23 連結具
24a、24b、25a、25b 係止具
Claims (7)
- 上衣とズボンからなる介護用パジャマにおいて、上衣の前身頃の丈が後身頃よりも15cm以上短く、後身頃の下端の中央には延長部が設けられており、該延長部の自由端部および上衣の前身頃に互いに係合可能な係止具が設けられ、ズボンは右足用部分と左足用部分とに完全に分離されており、右足用部分および左足用部分はそれぞれ筒状股下部と股上部とからなり、前記股上部は着用者の右側腹部または左側腹部を覆うための前側股上部を有するが、着用者の背中および臀部を覆うための部分が欠けており、前記股上部および上衣にはズボンと上衣とを着脱自在に連結するための連結具が設けられ、右足用部分の股上部と左足用部分の股上部とを着脱自在に連結する係止具が設けられていることを特徴とする介護用パジャマ。
- 前記上衣の前身頃が着用者の腰骨まで覆える丈を有することを特徴とする請求項1に記載の介護用パジャマ。
- 前記上衣の後身頃が着用者の臀部を覆える程度の丈を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の介護用パジャマ。
- 前記ズボンの筒状股下部には着用者の足に固定するための固定具が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の介護用パジャマ。
- 前記上衣の脇の下部分に開口が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の介護用パジャマ。
- 上衣の後身頃の延長部と前身頃とに互いに係合可能に設けられた前記係止具が前身頃の前開き部のボタンと延長部に形成されたボタン穴であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の介護用パジャマ。
- 右足用部分の股上部と左足用部分の股上部とを着脱自在に連結する前記係止具が面ファスナであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の介護用パジャマ。
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- 2003-04-11 JP JP2003107360A patent/JP2004315980A/ja active Pending
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