JP2004315762A - 水分散型金属加工剤組成物及びその製造方法 - Google Patents

水分散型金属加工剤組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】防腐剤を用いる必要がなく、分散安定性に優れ、かつ低濃度で使用できる金属加工剤組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】グラファイト、雲母、硫化モリブデンなどの層状化合物 (a) 、ステアリン酸亜鉛などの有機金属塩 (b) 又は酸化ケイ素などの無機金属塩(c)を素材とし、平均粒径を、1nm以上1000nm以下とした超微粒子(A)の群から選ばれた少なくとも1種とカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコールなどの、親水基を有する分散剤(B)の群から選ばれた少なくとも1種を混合し、水中に分散させてなる水分散型金属加工剤組成物及び前記素材の少なくとも1種と分散剤の少なくとも1種と、水とを混合し、摩砕媒体とともに湿式微粉砕機中に投入して素材を摩砕する、水分散型金属加工剤組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属の切削、研削などに用いられる加工性と耐腐敗性にすぐれ、しかも分散安定性にすぐれた水分散型金属加工組成物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属の切削、研削、塑性加工等の加工用組成物としては、一般に鉱油、油脂、石鹸、消泡剤、極圧剤、界面活性剤、防食剤, 防腐剤などを含有し、水に希釈して使用する水溶性加工油剤が使用されている。
これらの加工油剤は、含有成分に腐敗性のものが含まれており、腐敗すると寿命が低下し、悪臭により作業性も低下するので、耐腐敗性を高めるため、上記のように防腐剤を添加するなどの対策を施さざるを得なかった。一方、防腐剤を用いると人体への悪影響が懸念されるため、取り扱いがむずかしくなるという問題がある。
そこで、なるべく人体への影響も少ないものが探求され、特定のアミンを特定比で組み合わせることにより、人体への影響が少なくて、耐腐敗性を高める防腐剤の探求がおこなわれてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−279688号公報(第2〜3頁)。
【0004】
しかし、防腐剤を使用しない金属加工用組成物はなく、金属加工剤組成物として必要な潤滑性等の加工性を得るには、その濃度を少なくとも2重量%以上とする必要があった。
そして、このような高濃度の水溶液又は懸濁液を使用すると、使用後そのまま排水することができず、一定の処理を必要とするという問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、防腐剤を用いる必要がなく、分散安定性に優れ、かつ低濃度で使用できる金属加工剤組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、
層状化合物 (a) 、有機金属塩 (b) 又は無機金属塩(c)を素材とする超微粒子(A)の群から選ばれた少なくとも1種と、親水基を有する分散剤(B)の群から選ばれた少なくとも1種を混合し、水中に分散させてなる水分散型金属加工剤組成物であって、
前記超微粒子(A)の平均粒径は、1nm以上1000nm以下とし、
前記層状化合物(a)は、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、グラファイト、窒化ホウ素、タルク、雲母、モンモリロナイト、カオリナイト、メラミンシアヌレート、チタン酸マグネシウムカリウム、チタン酸リチウムカリウムを含み、
前記有機金属塩(b)は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、又はリノレン酸とカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛又はバリウムとの塩を含み、
前記無機金属塩(c)は、酸化カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、窒化ケイ素を含み
前記分散剤(B)は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ナフタリンスルホン酸ソーダのホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸ソーダ、変形ポリカルボキシレート、ポリエチレンイミン、エチレンオキサイド付加物、グリコールエーテル類、硫酸エステル類、アクリル酸、マレイン酸コポリマーのナトリウム塩、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ジアルキルスルホコハク酸塩およびエステル誘導体を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によると、潤滑性のよい超微粒子を有するので、金属加工性がよく、また親水基を有する分散剤(B)は、その親水基が層状構造化合物(a)、有機金属塩(b)、又は無機金属塩(c)からなる超微粒子(A)との親和性がよく、その表面によく吸着するとともに、水分子とも結合するので、超微粒子を水中に安定的に分散させる。また、この分散剤(B)の濃度を、超微粒子(A)の濃度の3倍以下とすると、防腐剤を用いなくても腐敗が発生するおそれがない。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の水分散型金属加工剤組成物において、
極圧剤(C)、防錆剤(D)又は消泡剤(E)のいずれか1種以上を含むことを特徴とする。
【0009】
極圧剤(C)を添加したものは、金属表面と反応して摩擦抵抗を下げるので、耐荷重能が上がり、切削、研削などの加工性もさらに向上する。
防錆剤(D)を添加したものは、防錆性能がさらに向上する。
消泡剤(E)を添加したものは、泡立ち性をさらに低下させるので、オーバーフロー等による作業性低下の問題が生じにくい。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の水分散型金属加工剤組成物であって、
前記超微粒子(A)及び分散剤(B)の濃度をそれぞれ、
超微粒子(A):50〜2,000ppm、
分散剤(B) :50〜6000ppm
としてなることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、超微粒子(A)が含まれているので、低濃度でも必要な耐荷重能を有するため、すぐれた加工性が得られる。しかも分散剤(B)の作用により分散安定性にすぐれている。
ただし、超微粒子(A)が50ppm未満では、充分な耐荷重能が得られず、2000ppmを超えると耐荷重能が飽和するため、経済的ではない。また、分散剤(B)が50ppm未満では、分散安定性が低下し、6000ppmを超えると、耐腐敗性が低下する。
【0012】
請求項4記載の発明は、層状化合物 (a) 、有機金属塩 (b) 又は無機金属塩(c)の群から選ばれた超微粒子素材少なくとも1種と、親水基を有する分散剤(B)の群から選ばれた分散剤少なくとも1種と、水とを混合して混合液を生成する混合工程と、
前記混合液を摩砕媒体とともに湿式微粉砕機中に投入して前記超微粒子素材を摩砕し、超微粒子を水中に分散させて前記超微粒子の分散液を生成する摩砕工程とからなることを特徴とする水溶性金属剤組成物の製造方法であって、
前記超微粒子径は、70%以上が1000nm以下となるように摩砕媒体及び摩砕条件を選定することを特徴とする。
【0013】
この構成によると、混合工程において、超微粒子の素材が水中で親水基を有する分散剤(B)と混合されたものは、摩砕工程において、超微粒子の素材がいずれも超微粒子化しやすく、かつ摩砕媒体の種類や大きさ、摩砕時間などの摩砕条件を選定することにより、均一に超微細化することが容易である。またこの製造方法で得られる水分散型金属加工剤組成物は、超微粒子の径の70%以上が1000nm以下であり、超微細で均一であるから、これを用いると、いっそう金属加工性がよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明する。
図1は、水分散型金属加工剤組成物の基本構成を示す模式図、図2は、水分散型金属加工剤組成物の製造に用いる媒体ミルの一例である湿式微粉砕機の模式図、図3は、耐腐食性試験の説明図である。
【0015】
本発明の水分散型金属加工剤組成物の第1の実施の形態は、組成物の原液である。組成物の原液は、図1に示すように、超微粒子の素材(以下、超微粒子化材という)を摩砕して得られる超微粒子1と、親水基を有する分散剤2とを、水3の中で混合し、分散させたものである。
【0016】
超微粒子化材としては、それを摩砕して得られる超微粒子が固体潤滑剤として用いられるような潤滑性のよいものが選択される。例えば、層状化合物 (a) 、有機金属塩 (b) 又は無機金属塩(c)などから選択される。
層状化合物(a)としては、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、グラファイト、窒化ホウ素、タルク、雲母、モンモリロナイト、カオリナイト、メラミンシアヌレート、チタン酸マグネシウムカリウム、チタン酸リチウムカリウムなどがある。
また、有機金属塩(b)としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、又はリノレン酸とカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛又はバリウムとの塩などがある。
そして、無機金属塩(c)としては、酸化カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、窒化ケイ素などがある。
これらの超微粒子化材を摩砕して平均粒径1nm以上1000nm以下の超微粒子とする。
【0017】
また、分散剤(B)としては、親水基を有し、選択された超微粒子とも吸着しやすく、かつ耐腐敗性のよいものが選択される。例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ナフタリンスルホン酸ソーダのホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸ソーダ、変形ポリカルボキシレート、ポリエチレンイミン、エチレンオキサイド付加物、グリコールエーテル類、硫酸エステル類、アクリル酸、マレイン酸コポリマーのナトリウム塩、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ジアルキルスルホコハク酸塩およびエステル誘導体などがある。
【0018】
上記超微粒子化材の群から選ばれた少なくとも1種と、上記分散剤から選ばれた少なくとも1種とを、水中に分散させた水分散型金属加工剤組成物は、図1に示すように、分散剤2の水酸基2aが超微粒子1に吸着され、かつ水酸基2bが、水3の分子と相互作用するので、超微粒子1は、水中に均一に安定的に分散する。超微粒子の平均粒径は、1000nm以下の小さいものであることが望ましい。1000nmを超えると、分散安定性が低下するからである。
また、分散剤(B)の濃度は、超微粒子(A)の濃度の3倍以下であることが望ましい。3倍を超えると、腐敗発生の要因となり、保管できる期間が短くなる。
【0019】
本発明の第2の実施の形態は、上記原液を水で希釈して、切削、研削などの金属加工の潤滑剤として使用するのに適した濃度とした希釈液に関するものである。
超微粒子の濃度は、50〜2000ppmとするのが好ましい。50ppmに満たないと、加工に必要な耐荷重能の値(加工の種類にもよるが金属の切削の場合、7.0kg/cm以上がのぞましい)が得られない。また、2000ppmを超えると、耐荷重能の値が飽和するので不経済である。さらには、200〜1000ppmとするのが好ましい。
【0020】
さらに、必要に応じて、極圧剤、防錆剤又は消泡剤を添加しても良い。
極圧剤(C)としては、アルカノールアミン(モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン)の1種又は2種以上との組み合わせにより水溶化可能なオレイン酸やリミノール酸のチオエーテル及びその誘導体などの硫化脂肪酸が好ましい。
好ましい濃度範囲は、10ppm〜1000ppmである。
極圧剤(C)を添加したものは、極圧剤(C)が金属表面と反応して摩擦抵抗を下げるので、 耐荷重能が上がり、切削、研削などの加工性もさらに向上する。10%未満では、あまり効果がなく、1000ppmを超えると、効果が飽和する。
【0021】
防錆剤(D)としては、オレイン酸ネオデカン酸、ドデカン2酸、セバチン酸などの脂肪酸及び5−アミノー1−H−テトラゾール、アルケニルコハク酸などのアミン塩又は無機塩などが好ましい。好ましい濃度範囲は、1000ppm〜20000ppmである。防錆剤(D)を添加したものは、防錆性能がさらに向上する。1000ppm未満では、効果が乏しく、20000ppmを超えると、効果が飽和する。
【0022】
消泡剤(E)としては、シリコーン系消泡剤、アルコール系消泡剤などが好ましい。好ましい濃度範囲は、10ppm〜500ppmである。
消泡剤(E)を添加したものは、泡立ち性をさらに低下させるので、オーバーフロー等による作業性低下の問題が生じにくい。10ppm未満では、効果が乏しく、500ppmを超えると、効果が飽和する。
【0023】
次に、この水分散型金属加工剤組成物の原液の製造方法の一例について説明する。
まず、層状化合物(a)、有機金属塩(b)又は無機金属塩(c)の群から選ばれた超微粒子化材1種以上と、親水基を有する分散剤(B)の群から選ばれた1種以上と、水とを容器内で混合し、スラリーとする(混合工程)。
次に、図2に示す媒体ミル10を用いて、このスラリー中の超微粒子化材を摩砕して超微粒子(A)とするとともに分散剤(B)をその表面に吸着させ、水中に均一に分散させる(摩砕工程)。
【0024】
媒体ミル10は、摩砕部11とこれを保持し、駆動、制御する駆動・制御部20とからなる。摩砕部11は、駆動・制御部20によって回転、制御されるロータ12とそれを覆うベッセル13とロータ内に設けられたダイナミックスクリーン14と、これを保持するホルダー15を備えている。ロータ12の外周とベッセル13の内周には、バリアー12a、13aが設けられている。
【0025】
摩砕にあたっては、このロータ12とベッセル13の間に、あらかじめ図示しないビーズを入れておく。そして、スラリーLaを図示しないポンプにより供給管P1から摩砕部11に供給する。スラリーLaは、あらかじめ入れられたビーズとともに、ロータ12とベッセル13の間に形成される空間をロータ12の回転により、ビーズとともに攪拌されつつ、バリアー12a、13bによって形成されるスリットを通過する。そして、その間に、スラリー内の超微粒子化材は超微粒子(A)となる。その超微粒子化材が超微粒子(A)となったスラリーLaは、ダイナミックスクリーン14内に浸透し、ホルダー15の排出孔15a、排出管P2を経て水分散型金属加工剤組成物Lの原液として出力される。この際、ビーズはダイナミックスクリーンによって阻止されるので、ベッセル13内に保持される。
【0026】
ビーズとしては直径が、0.2mm〜0.3mmのものが好ましい。
また、その充填率、すなわち摩砕部のベッセル13とロータ12の間に形成される空間の体積に対するビーズの充填率は、60〜70%が好ましい。ロータ12の回転速度は、周速9〜15m/sとし、スラリーの流速は、50〜100L/hとするのが好ましい。そして、分散時間、すなわち超微粒子化材の摩砕開始から超微粒子ができるまでの時間は、10〜30hとするのが好ましい。
【0027】
次に、実施例と比較例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
表1は、水分散型金属加工剤組成物の原液に関する実施例の組成、超微粒子の平均粒径及びその分散安定性の評価、表2〜表4は、それを所定の濃度に希釈した希釈液の組成並びに耐荷重能、分散安定性、発泡性、耐腐敗性及び耐腐食性の評価を示す。
また、表5は、比較例の水溶性金属加工剤組成物の組成、超微粒子の平均粒径、濃度とその特性評価である。
【0028】
【表1】
Figure 2004315762
【0029】
【表2】
Figure 2004315762
【0030】
【表3】
Figure 2004315762
【0031】
【表4】
Figure 2004315762
【0032】
【表5】
Figure 2004315762
【0033】
評価の方法は次のとおりである。
(1)分散安定性
試験液100mlをガラス容器に入れ、−5℃に12時間、20℃に12時間のヒートサイクルを10サイクル加えたのち、外観を観察した。
判定基準は、次の通りとする。
A・・・分離、色相の変化のなかったもの
B・・・分離、沈殿が発生したもの
【0034】
(2)耐荷重能
曹田式四球試験により試験液の耐荷重能(油膜破壊強度)を測定した。
具体的には、神鋼造機株式会社製の四球形摩擦試験機を用い、回転速度毎分200回転とし、0.5kgで1分間加圧後、0.5kgきざみで荷重を増やしそれぞれ1分間づつ加圧するステップ法で、焼き付きが発生し回転が停止したときの圧力を測定した。
判定基準は、特に規定されていないが、7kg/cm以上が好ましい。
【0035】
(3)発泡性
ガラス管に150mlの試験液を注ぎ入れ、ガラス管の下端から延びるチューブを通し、送液ポンプを経て、ガラス管上端に固定されたチューブよりガラス管内の液面に射出して,循環させる。送液ポンプによる流量は、360ml/分とし、60秒後のガラス管内の泡立ちの程度を測定した。
判定基準は次の通りである。
A・・・2.5cm(純水と同レベル)、
B・・・10cm未満
C・・・10cm以上
【0036】
(4)耐腐敗性
試験液50mlにとうもろこし粉2gと、鋳鉄切粉10gを加えて容器に蓋をし、37.8℃で5日間放置したのち、1ml中の生菌数を測定した。
判定基準は、次の通りである。
A・・・生菌数10個未満
B・・・生菌数10個以上
【0037】
(5)耐腐食性
図3に示すように、圧延鋼板の試験片Sを40℃の試験液L50ml中に半分浸漬し、2時間後の気相部Sa,界面部Sb,液中部Scの変色の程度を目視で観察した。
判定基準は次のとおりである。
A・・・変色は見られない
B・・・変色が見られる
【0038】
<実施例1〜12>
表1の実施例1〜12は、水分散型金属加工剤組成物の原液の組成と分散安定性の評価をまとめたものである。
これらがいずれも分散安定性の判定がAであるのに対し、表5の比較例1は、分散安定性の判定がBとなっている。実施例は平均粒径が1000nm以下であるのに対し、比較例1は超微粒子化材も分散剤も実施例1と同じであるが、超微粒子の平均粒径が2000nmと大きいため、分散安定性が良くないものと思われる。
【0039】
<実施例13〜53>
表2〜表4の実施例13〜53は、実施例1〜12のいずれかを用い、そのまま又は必要に応じて極圧剤、防錆剤、消泡剤等の添加剤を加えて所定の濃度に希釈したものである。なお、極圧剤としては、硫化脂肪酸である大日本インキ社製DAILUBE GS550のTEA塩、防錆剤としては、ドデカン2酸のTEA塩、消泡剤としてはシリコーン系である東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSH5507 EMULを使用した。
これらはいずれも耐荷重能が7kg/cm以上であり、分散安定性の判定は、いずれもAであった。実施例はいずれもこの二つの基本特性にすぐれていることを示している。これに対し、比較例3で、超微粒子化材及び分散剤が実施例1と同じであるのに、耐荷重能が6kg/cmと低いのは超微粒子の濃度が40ppmと低いためと思われる。
【0040】
比較例2も超微粒子化材及び分散剤がが実施例1と同じであるのに、耐腐敗性の判定がBとなっている。これは分散剤の濃度が比較例3に比して多いためと思われる。
【0041】
比較例4は、防錆剤の濃度以外は組成が実施例23と同じであり、基本の特性に問題はないが、耐腐食性が劣る。
【0042】
比較例5は、消泡剤の濃度以外は、実施例27と同じであり、基本の特性に問題はないが、発泡性がやや高い(消泡性が悪い)。
【0043】
比較例6,7はいずれも従来の市販切削剤である。つまり超微粒子を用いていない従来の市販切削剤では、濃度が2000ppm以下では、耐荷重能が低く切削性が悪い。したがって、比較例8〜10のように、20000ppm以上にしないと実用性がない。濃度が高いとそのまま排水できないなどの不便が生じる。
また発泡性があり、作業性低下などの問題を生じる場合がある。
【0044】
超微粒子及び分散剤が本発明の基本的要件を満たしている実施例相互の比較において、添加剤の作用を検討するに、実施例23,24は、防錆剤を添加したことによって、実施例21,22に比し、界面部及び液中部の耐食性が向上している。
また、実施例27,28は、消泡剤を加えたことにより、実施例25、26に比べ消泡性を改善している。実施例33,34と実施例35,36との対比及び実施例41,42と実施例43、44との対比、実施例46と実施例47の対比、実施例48と実施例49の対比、実施例50と実施例51の対比においても同じことが言える。
【0045】
次に、実施例45〜51において、極圧剤の添加量が増えるにつれて耐荷重能も向上することが分かる。
【0046】
超微粒子化材及び分散剤が実施例1と同じである実施例13〜18において、超微粒子の濃度が1000ppm以上になると、耐荷重能が変わらなくなる。
【0047】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明の水分散型金属加工剤組成物は、潤滑性にすぐれた超微粒子(A)を含んでいるので、金属加工性にすぐれている。また、親水基を有する分散剤(B)は、超微粒子(A)との親和性がよく、その表面によく吸着するとともに、水分子とも結合するので、超微粒子を水中に安定的に分散させるので、長期に保管できる。分散剤(B)の濃度を超微粒子(A)の濃度の3倍以下とすると、防腐剤を用いなくても腐敗のおそれがない。
【0048】
また、極圧剤(C)を添加すると、金属表面と反応して摩擦抵抗を下げるので、耐荷重能が上がり、切削、研削などの加工性がさらに向上する。
防錆剤(D)を添加すると、防錆性能がさらに向上する。
消泡剤(E)を添加すると、泡立ち性をさらに低下させるので、切削、研削などの加工性がさらに向上する。
【0049】
さらに、超微粒子(A)が含まれているので、低濃度でも必要な耐荷重能を有し、しかも分散安定性にすぐれており、すぐれた加工性が得られるので経済的である。
ただし、超微粒子が50ppm未満では、充分な耐荷重能が得られず、2000ppmを超えると耐荷重能が飽和する。また、分散剤が50ppm未満では、分散安定性が低下し、6000ppmを超えると、耐腐敗性が低下する。
【0050】
そして、本発明の水分散型金属加工剤組成物の製造方法によれば、
微粒子化材(A)が摩砕し易い素材であり、かつ摩砕媒体の種類や大きさを選定し、摩砕時間などの摩砕条件を選定することにより、均一に超微細化することが容易である。またこの製造方法で得られる水分散型金属加工剤組成物は、超微粒子の径の70%以上が1000nm以下であり、微細で均一であるから、これを用いると、いっそう金属加工性がよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】水分散型金属加工剤組成物の基本構成を示す模式図である。
【図2】水分散型金属加工剤組成物の製造に用いる媒体ミルの一例である湿式微粉砕機の模式図である。
【図3】耐腐食性試験の説明図である。
【符号の説明】
1 超微粒子
2 分散剤
3 水
10 媒体ミル
11 摩砕部
12 ロータ
12a バリアー
13 ベッセル
13a バリアー
14 ダイナミックスクリーン
15 ホルダー
20 駆動・制御部
L 水分散型金属加工剤組成物
La スラリー

Claims (4)

  1. 層状化合物 (a) 、有機金属塩 (b) 又は無機金属塩(c)を素材とする超微粒子(A)の群から選ばれた少なくとも1種と、親水基を有する分散剤(B)の群から選ばれた少なくとも1種を混合し、水中に分散させてなる水分散型金属加工剤組成物であって、
    前記超微粒子(A)の平均粒径は、1nm以上1000nm以下とし、
    前記層状化合物(a)は、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、グラファイト、窒化ホウ素、タルク、雲母、モンモリロナイト、カオリナイト、メラミンシアヌレート、チタン酸マグネシウムカリウム、チタン酸リチウムカリウムを含み、
    前記有機金属塩(b)は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、又はリノレン酸とカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛又はバリウムとの塩を含み、
    前記無機金属塩(c)は、酸化カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、窒化ケイ素を含み
    前記分散剤(B)は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ナフタリンスルホン酸ソーダのホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸ソーダ、変形ポリカルボキシレート、ポリエチレンイミン、エチレンオキサイド付加物、グリコールエーテル類、硫酸エステル類、アクリル酸、マレイン酸コポリマーのナトリウム塩、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ジアルキルスルホコハク酸塩およびエステル誘導体を含むことを特徴とする水分散型金属加工剤組成物。
  2. 請求項1に記載の水分散型金属加工剤組成物において、
    極圧剤(C)、防錆剤(D)又は消泡剤(E)のいずれか1種以上を含むことを特徴とする水分散型金属加工剤組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の水分散型金属加工剤組成物であって、
    前記超微粒子(A)及び分散剤(B)の濃度をそれぞれ、
    超微粒子(A):50〜2000ppm、
    分散剤(B) :50〜6000ppm
    としてなることを特徴とする水分散型金属加工剤組成物。
  4. 層状化合物 (a) 、有機金属塩 (b) 又は無機金属塩(c)の群から選ばれた超微粒子の素材少なくとも1種と、親水基を有する分散剤(B)の群から選ばれた少なくとも1種と、水とを混合して混合液を生成する混合工程と、
    前記混合液を摩砕媒体とともに湿式微粉砕機中に投入して前記超微粒子の素材を摩砕し、超微粒子を水中に分散させて前記超微粒子の分散液を生成する摩砕工程とからなることを特徴とする水溶性金属剤組成物の製造方法であって、
    前記超微粒子径は、70%以上が1000nm以下となるように摩砕媒体及び摩砕条件を選定することを特徴とする水分散型金属加工剤組成物の製造方法。
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