JP2004315750A - 除菌性洗剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】人体への毒性が少なく、かつ、除菌性を有する洗剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)界面活性剤、および(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含み、20℃におけるpHが、4.0〜6.8であることを特徴とする、洗剤組成物である。
【選択図】 なし
【解決手段】(a)界面活性剤、および(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含み、20℃におけるpHが、4.0〜6.8であることを特徴とする、洗剤組成物である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、除菌性の洗剤組成物に関し、特に、除菌性の台所用洗剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
食器具類等を洗浄するための台所用洗剤は、食品によるタンパク質や脂肪等の有機物汚れの洗浄を目的とする。食器具類等には、汚れ以外にも、大腸菌、ブドウ球菌、セレウス菌、サルモネラ菌等の食中毒菌が付着し、食器具類を媒介した感染が生じうる。したがって、食器具類の洗浄にあたっては、洗浄と同時に除菌も行うことが望ましい。
【0003】
台所用洗剤は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤を主成分として含み、必要に応じて、キレート剤、増粘剤、乳濁剤、香料、着色剤等が適宜配合される。しかしながら、通常の台所用洗剤では、食中毒菌を除菌することは難しい。
【0004】
除菌のみを目的とすれば、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系界面活性剤や次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系除菌剤やフェノール系除菌剤などの除菌剤によって達成可能である(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、食器具類に残存した除菌剤によって、人体に悪影響が及ぶ虞がある。このため、これらの除菌剤を洗剤に適用することは問題がある。
【0005】
このため、人体への毒性が低く、かつ、十分な除菌力を有する洗剤が所望されていた。このような目的を達成するために、例えば、ポリヘキサメチレングアニジン塩を含有する洗剤が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
ところで、除菌効果を有する化合物としては、ヨウ素シクロデキストリン包接化合物が知られている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。しかしながら、これまでのところ、ヨウ素シクロデキストリン包接化合物の洗剤への適用に関しては、何ら知見が得られていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−234500号公報
【特許文献2】
特開2002−47111号公報
【特許文献3】
特開昭51−88625号公報
【特許文献4】
特開2002−193719号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が目的とするところは、人体への毒性が少なく、かつ、除菌性を有する洗剤組成物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)界面活性剤、および(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含み、20℃におけるpHが、4.0〜6.8であることを特徴とする、洗剤組成物である。
【0010】
本発明の洗剤組成物は、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含む。ヨウ素シクロデキストリン包接化合物(以下、「CDI」とも記載)から放出されるヨウ素によって、洗剤組成物に除菌作用および抗菌作用がもたらされる。したがって、本発明の洗剤組成物を用いて物品を洗浄することによって、物品を除菌および抗菌することができる。また、ヨウ素を放出した後のシクロデキストリンは、臭気成分を包接しうるため、消臭効果も発現する。例えば、生ものが付着した食器類を洗浄する場合に、消臭効果は有益である。さらに、CDIは、哺乳動物における必須栄養素の一つであるヨウ素及び食品添加物として認可されているシクロデキストリンからなり、安全性が高い。その上、洗剤組成物のpHが所定の範囲内であると、ヨウ素を包接するCDIからは、除菌成分であるヨウ素が徐々に放出され、洗剤組成物の除菌作用が長期間に渡って持続しうる。このため、洗剤組成物自体の耐用期限を長期化させることにも寄与する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明は、(a)界面活性剤、および(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含み、20℃におけるpHが、4.0〜6.8であることを特徴とする、洗剤組成物である。本願において、「洗剤組成物」とは、少なくとも界面活性剤およびCDIを含み、洗浄剤として用いられる組成物を意味する。洗剤組成物のpHを制御することによって、組成物中のヨウ素を安定して保持することができ、洗剤組成物の除菌作用が長期間に渡って効果的に発現する。
【0013】
なお、本願において、洗剤組成物のpHは、後述する実施例に記載の方法に準じて、測定されうる。
【0014】
(a)界面活性剤について
界面活性剤の種類や配合量については、本発明においては特に限定されない。洗剤組成物中において洗剤としての機能発現に寄与する化合物から、機能、用途、コストなどを考慮して選択すればよい。2種以上の界面活性剤が用いられてもよい。
【0015】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが用いられうる。以下、界面活性剤について例示する。ただし、本発明の洗剤組成物に含まれる界面活性剤が、例示する界面活性剤に限定される趣旨ではない。
【0016】
陰イオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。陰イオン界面活性剤は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、またはアンモニウム塩などとして含まれうる。
【0017】
非イオン界面活性剤としては、ジエタノールアミド、アミンオキシドなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが挙げられる。
【0018】
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アミンオキサイドなどが挙げられる。
【0019】
本発明の洗剤組成物は、他の陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および両性界面活性剤を含んでもよい。また、場合によっては、陽イオン性界面活性剤が配合されてもよい。
【0020】
本発明の洗剤組成物における界面活性剤の濃度は、組成物の全質量に対して、好ましくは40〜90質量%である。界面活性剤の濃度が低すぎると、洗浄効果が十分に発現しない虞がある。一方、界面活性剤の濃度が高すぎると、粘度上昇によって作業性が低下する。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0021】
(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(CDI)について
CDIとは、ヨウ素がシクロデキストリンによって包接された構造を有する化合物である。CDIから放出されるヨウ素によって、除菌、抗菌作用がもたらされる。そして、シクロデキストリン中に臭気成分が包接されることによって、消臭効果がもたらされる。つまり、CDIは、ヨウ素による除菌効果および消臭効果、ならびにシクロデキストリンによる更なる消臭効果を兼ね備える。台所洗剤として用いられる場合に、除菌効果および抗菌効果は特に有益である。台所周辺には、食べかすなどの細菌発生の温床となる有機成分が多数存在する。本発明の洗剤組成物を用いれば、細菌の繁殖を有意義に抑制し、台所周辺の衛生状態を良好に保つことが可能である。また、CDIは、哺乳動物における必須栄養素の一つであるヨウ素及び食品添加物として認可されているシクロデキストリンからなり、安全性が高い。また、包接化合物にすることによって、ヨウ素特有の臭気を減少させうる。このため、台所など臭気に留意する必要がある箇所においても、ヨウ素を含む洗剤組成物を適用しうる。
【0022】
また、ヨウ素が除菌作用を有することは知られていたが、洗剤に直接ヨウ素を混入させると、臭気及び保存安定性について難点があった。つまり、ヨウ素は強い臭気を有するため、洗剤組成物中に混入させると、洗剤組成物の消費者に与える印象を悪化させる虞があった。また、ヨウ素の安定性が低いために、洗剤組成物による除菌効果が長期間に渡って保持され得ない問題があった。本発明の洗剤組成物においては、ヨウ素は、シクロデキストリンによって包接されており、徐々に洗剤組成物中に放出される。このため、組成物の臭気も比較的良好であり、長期間に渡ってヨウ素による除菌効果が保持される。
【0023】
CDI自体は、前述のように公知である(例えば、特開昭51−88625号公報、特開2002−193719号参照)。製造方法についても特に限定はない。例えば、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素およびヨウ素溶解助剤を含む水溶液に、シクロデキストリンを添加することによって製造されうる。
【0024】
CDIは、CDIを構成するシクロデキストリンの種類によって、数種に分類される。例えば、シクロデキストリンには、β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリンなどのアルキル化−β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンなどが挙げられる。使用するシクロデキストリンは、用途や入手容易性などを考慮して選択すればよい。例えば、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を溶解させることを所望する場合には、水溶性に優れるメチル−β−シクロデキストリンをシクロデキストリンとして含むヨウ素−シクロデキストリン包接化合物であるMCDIなどが用いられるとよい。また、固体のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物が用いられる場合には、β−シクロデキストリンをシクロデキストリンとして含むヨウ素−シクロデキストリン包接化合物であるBCDIなどが用いられるとよい。
【0025】
本発明において用いられるCDIにおけるヨウ素含有量は、CDIの質量に対して、5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは19〜25質量%である。ヨウ素含有量がこのような範囲内であると、不安定で長期保存に適さないヨウ素が長期間安定した形態で存在しうる。上述の範囲でヨウ素が含まれていると、ヨウ素の本来の機能である除菌作用とシクロデキストリンの本来の機能である消臭作用とが特に効果的に発現する。CDIにおけるヨウ素含有量は、CDIを製造する際に用いられるシクロデキストリンの添加量を調整することによって、制御されうる。また、CDIにおけるヨウ素含有量を制御することによって、CDIからのヨウ素の放出が制御されうる。
【0026】
本発明において、CDIの製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法またはこれらの組み合わせが使用されうる。例えば、特開昭51−88625号公報、特開昭51−100892号公報、特開2002−193719号公報などに記載の方法;ヨウ素量とヨウ素溶解助剤(KIなど)量を所定範囲に調整して溶解し、これにシクロデキストリンを添加する方法;またはこれらの方法で製造されたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物に、本発明によるヨウ素の含有量を上記範囲になるように、シクロデキストリンを添加する方法などが挙げられる。このうち、ヨウ素量とヨウ素溶解助剤(NaI、KIなど)量を所定範囲に調整して溶解し、これにシクロデキストリンを添加する方法においては、シクロデキストリン量を調整することによって、ヨウ素をシクロデキストリン内に包接される量を制御できる。かような方法を用いれば、19質量%を越えるヨウ素含量のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を得ることも可能である。しかもヨウ素含有率の高いヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素特有の臭気を持たない傾向がある。
【0027】
原料としてのヨウ素は、特に制限されるものではなく、市販品をそのまま使用してもよい。また、ヨウ素は、ヨウ化カリウムと重クロム酸カリウムとを加熱蒸留するなどの方法に従って合成されてもよい。
【0028】
原料としてのシクロデキストリンは、特に制限されるものではなく、市販品をそのまま使用してもよい。また、シクロデキストリンは、デンプンにBacillus macerans由来のアミラーゼを作用させることなどの公知の方法によって製造してもよい。なお、本明細書において、「シクロデキストリン」は、それぞれ6、7及び8個の環状α−(1→4)結合したD−グルコピラノース単位から構成されるα−、β−及びγ−シクロデキストリンを包含するのみならず、例えば、アルキル化(メチル化、エチル化、プロピル化、イソプロプル化、ブチル化など)、モノアセチル化、トリアセチル化、モノクロロトリアジニル化等の化学修飾体も含む。ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物内におけるヨウ素包接量の調整の容易さを考慮すると、好ましくは、シクロデキストリンとしてβ−シクロデキストリン及びこの化学修飾体が用いられる。安全性の観点からは、食品添加物として認可されているβ−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、およびこれらの化学修飾体が好ましい。
【0029】
シクロデキストリンの市販品の具体例としては、CAVAMAX W6及びCAVAMAX W6 Pharmaとして市販されるα−シクロデキストリン;CAVAMAX W7及びCAVAMAX W7 PHARMAとして市販されるβ−シクロデキストリン;CAVAMAX W8、CAVAMAX W8 Food及びCAVAMAX W8 Pharmaとして市販されるγ−シクロデキストリン;CAVASOL W7 M、CAVASOL W7 M Pharma及びCAVASOL W7 M TLとして市販されるメチル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 HP及びCAVASOL W7 HP Pharmaとして市販されるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 Aとして市販されるモノアセチル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 TAとして市販されるトリアセチル−β−シクロデキストリン;ならびにCAVASOL W7 MCTとして市販されるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンなどが挙げられる(シクロデキストリンの入手先は、いずれも、ワッカーケミカルズ イーストアジア株式会社)。
【0030】
本発明の洗剤組成物におけるCDIの濃度は、組成物の全質量に対して、好ましくは17〜27質量%である。17質量%未満であると、除菌および抗菌が十分にされない虞がある。一方、27質量%を超えると、薬液コストが上昇する。また、27質量%もあれば十分な臭気除去効果が得られる。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0031】
(c)アルキレングリコールについて
本発明の洗剤組成物は、必要に応じて、アルキレングリコールを含む。CDIがアルキレングリコール中で安定に存在するため、アルキレングリコールを洗剤組成物中の溶媒として用いることによって、洗剤組成物においてCDIを長期間、安定に保持しうる。つまり、製品としての洗剤組成物の耐用期限を長期化させうる。
【0032】
アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられる。これらの2種以上が併用されてもよい。これらの中では、入手容易性やCDIの安定性を考慮すると、プロピレングリコールが好ましい。
【0033】
本発明の洗剤組成物におけるアルキレングリコールの濃度は、組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%である。0.01質量%未満であると、アルキレングリコールによる効果が十分に発現しない虞がある。一方、5質量%を超えると、相対的に界面活性剤やCDIの存在量が減少するため、洗剤としての効力および除菌作用が低下する。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0034】
(d)溶解助剤について
本発明の洗剤組成物は、必要に応じて、溶解助剤を含む。本発明において溶解助剤とは、ヨウ素の溶液への溶解を補助する化合物をいう。
【0035】
溶解助剤は、ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される。ハロゲン酸とは、ハロゲン原子および水素原子からなる酸を意味する。ハロゲン酸の具体例としては、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、フッ化水素酸(HF)が挙げられる。アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の具体例としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム等が挙げられる。2種以上の溶解助剤を組み合わせて良い。
【0036】
溶解助剤は、好ましくは、ヨウ素原子を有する化合物である。ヨウ素はCDI中に含まれる成分であり、CDIを用いた除菌および抗菌に悪影響を及ぼす恐れがない。また、本発明の洗浄組成物を工業的に大量に用いる実施態様を想定すると、処理後の回収の観点から、塩素や臭素といった他のハロゲンが混入しないことが好ましい。ヨウ素原子を有する化合物の中では、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムが好ましい。ヨウ化ナトリウムおよびヨウ化カリウムの溶解度は非常に高く、それぞれ184.1g/100ml(水)および148.2g/100ml(水)である。これは、溶解度が35.9g/100ml(水)である塩化ナトリウムと比較しても、高い数値である。かような高い溶解度を有するヨウ化ナトリウムおよびヨウ化カリウムは、凝固点を所望する温度にまで低下させる上で便利である。
【0037】
溶解助剤は、ヨウ素の溶解を補助するものであれば、上記例示した化合物に限定されない。ただし、組成物をアルカリ性にする化合物は避けるべきである。組成物がアルカリ性であると、ヨウ素(I2)がイオン化してしまい、洗剤組成物の除菌効果が薄れる。
【0038】
本発明の洗剤組成物においては、溶解助剤の濃度は、好ましくは、組成物の全質量に対して0.1〜10質量%である。溶解助剤が少なすぎると、溶解助剤による効果が十分に得られない虞がある。一方、10質量%を超えると、未溶解が発生したり、相対的に界面活性剤やCDIの存在量が減少したりするため、洗剤としての効力および除菌作用が低下する。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0039】
(e)pH調整剤について
本発明の洗剤組成物は、必要に応じて、pH調整剤を含む。前述のように、組成物がアルカリ性であると、組成物中のヨウ素(I2)がイオン化してしまい、除菌効果が薄れる。このため、好ましくは、pH調整剤を用いて、組成物のpHが調整される。
【0040】
pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸などの有機酸が挙げられる。これらの2種以上が併用されてもよい。これらの中では、除菌性および安全性を考慮すると、クエン酸が好ましい。
【0041】
(f)その他の成分について
本発明の洗剤組成物は、必要に応じて、上記(a)〜(e)の成分以外の成分を含んでいてもよい。例えば、精製水、イオン交換水等の水;エタノール、メタノール等の低分子量アルコールなどが、溶媒として用いられる。前記(c)の概念に含まれるポリアルキレングリコールを溶媒として用いてもよい。
【0042】
製品に付加価値を付与するために、保存料、染料、色移り防止剤、酵素、酵素安定化剤、消泡剤、可溶化剤、酸化防止剤、香料、抗菌防腐剤などが、本発明の洗剤組成物中に配合されてもよい。これらの成分は、一般的には、洗剤組成物の質量に対して、それぞれ1質量%以下の量で存在する。
【0043】
なお、本発明の洗剤組成物は、特別な手法を用いずに製造されうるものであり、特に製造方法について制限はない。
【0044】
【実施例】
本発明の効果について、以下の実施例を用いてより詳細に説明する。しかしながら、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0045】
<実施例1>
弱アルカリ性台所用洗剤(P&G社製、商品名「アロマジョイリラックスモード」;100g)に、pH調整剤としてクエン酸・1水和物(2g)を加えて、室温で溶解させた。溶液に、アルカリ金属のハロゲン化物であるヨウ化カリウム(KI;5g)を溶解させた。さらに、溶液に、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(BCDI)を含むプロピレングリコール溶液(1.2g)を加えて、均一に撹拌し、洗剤組成物1を得た。洗剤組成物の20℃でのpHは4.81であった。用いたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物中のヨウ素含有量は、20質量%であった。また、BCDIとプロピレングリコール(PG)との質量比は、BCDI:PG=1:9とした。
【0046】
また、洗剤組成物中のヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された洗剤組成物の目視観察を3ヶ月間続けたが、ヨウ素色の退色は確認されなかった。結果を表1に示す。
【0047】
<pH測定方法>
洗剤組成物のpHは、堀場製作所製pH計「HORIBA pH meterF−21(卓上型)」(電極:第S005号6378Lot109030)を用いて測定された。
【0048】
まず、pH試験機を、pH4.01のフタル酸塩pH標準液、pH6.86中性リン酸pH標準液、およびpH9.18ホウ酸塩pH標準液で、校正した。
【0049】
測定される洗剤組成物50mlをビーカーにとり、マグネチックスターラーで撹拌しながら、pH試験機の電極を洗剤組成物中に入れた。pH試験機の表示値が一定値に落ち着いた時の値を、洗剤組成物のpHとした。pH測定後は、pH試験機を超純水で洗浄し、ティッシュで付着した水を拭き取った。
【0050】
<比較例1>
クエン酸・1水和物およびヨウ化カリウムを加えない以外は、実施例1と同様にして洗剤組成物2を得た。洗剤組成物2の20℃でのpHは7.75であった。
【0051】
また、洗剤組成物中のヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された洗剤組成物の目視観察を続けたところ、3日間でヨウ素色が消失した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を洗剤組成物中に添加することによって、洗剤組成物の殺菌能力が向上する。また、表1に示すように、洗剤組成物のpHを制御することによって、殺菌能力を向上させうる。さらに、溶解助剤を洗剤組成物中に添加することによって、殺菌能力の効果を長期化させうる。しかも、本発明の洗剤組成物は、従来用いられていた洗剤に、所定のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を添加すれば製造できるため、従来用いられていた製造工程を、本発明の洗剤組成物の製造工程として活用できる。この点は、工業的に本発明を適用する上で、大きな利点である。
【0054】
【発明の効果】
本発明の洗剤組成物は、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含む。ヨウ素シクロデキストリン包接化合物(以下、「CDI」とも記載)から放出されるヨウ素によって、洗剤組成物に除菌作用および抗菌作用がもたらされる。したがって、本発明の洗剤組成物を用いて物品を洗浄することによって、物品を除菌および抗菌することができる。
【0055】
また、本発明の洗浄組成物中に含まれるCDIは、哺乳動物における必須栄養素の一つであるヨウ素及び食品添加物として認可されているシクロデキストリンからなり、安全性が高く、人体への毒性が少ない。
【0056】
さらに、洗剤組成物のpHを制御することによって、殺菌効果を長期間に渡って持続させることが可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、除菌性の洗剤組成物に関し、特に、除菌性の台所用洗剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
食器具類等を洗浄するための台所用洗剤は、食品によるタンパク質や脂肪等の有機物汚れの洗浄を目的とする。食器具類等には、汚れ以外にも、大腸菌、ブドウ球菌、セレウス菌、サルモネラ菌等の食中毒菌が付着し、食器具類を媒介した感染が生じうる。したがって、食器具類の洗浄にあたっては、洗浄と同時に除菌も行うことが望ましい。
【0003】
台所用洗剤は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤を主成分として含み、必要に応じて、キレート剤、増粘剤、乳濁剤、香料、着色剤等が適宜配合される。しかしながら、通常の台所用洗剤では、食中毒菌を除菌することは難しい。
【0004】
除菌のみを目的とすれば、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系界面活性剤や次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系除菌剤やフェノール系除菌剤などの除菌剤によって達成可能である(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、食器具類に残存した除菌剤によって、人体に悪影響が及ぶ虞がある。このため、これらの除菌剤を洗剤に適用することは問題がある。
【0005】
このため、人体への毒性が低く、かつ、十分な除菌力を有する洗剤が所望されていた。このような目的を達成するために、例えば、ポリヘキサメチレングアニジン塩を含有する洗剤が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
ところで、除菌効果を有する化合物としては、ヨウ素シクロデキストリン包接化合物が知られている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。しかしながら、これまでのところ、ヨウ素シクロデキストリン包接化合物の洗剤への適用に関しては、何ら知見が得られていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−234500号公報
【特許文献2】
特開2002−47111号公報
【特許文献3】
特開昭51−88625号公報
【特許文献4】
特開2002−193719号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が目的とするところは、人体への毒性が少なく、かつ、除菌性を有する洗剤組成物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)界面活性剤、および(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含み、20℃におけるpHが、4.0〜6.8であることを特徴とする、洗剤組成物である。
【0010】
本発明の洗剤組成物は、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含む。ヨウ素シクロデキストリン包接化合物(以下、「CDI」とも記載)から放出されるヨウ素によって、洗剤組成物に除菌作用および抗菌作用がもたらされる。したがって、本発明の洗剤組成物を用いて物品を洗浄することによって、物品を除菌および抗菌することができる。また、ヨウ素を放出した後のシクロデキストリンは、臭気成分を包接しうるため、消臭効果も発現する。例えば、生ものが付着した食器類を洗浄する場合に、消臭効果は有益である。さらに、CDIは、哺乳動物における必須栄養素の一つであるヨウ素及び食品添加物として認可されているシクロデキストリンからなり、安全性が高い。その上、洗剤組成物のpHが所定の範囲内であると、ヨウ素を包接するCDIからは、除菌成分であるヨウ素が徐々に放出され、洗剤組成物の除菌作用が長期間に渡って持続しうる。このため、洗剤組成物自体の耐用期限を長期化させることにも寄与する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明は、(a)界面活性剤、および(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含み、20℃におけるpHが、4.0〜6.8であることを特徴とする、洗剤組成物である。本願において、「洗剤組成物」とは、少なくとも界面活性剤およびCDIを含み、洗浄剤として用いられる組成物を意味する。洗剤組成物のpHを制御することによって、組成物中のヨウ素を安定して保持することができ、洗剤組成物の除菌作用が長期間に渡って効果的に発現する。
【0013】
なお、本願において、洗剤組成物のpHは、後述する実施例に記載の方法に準じて、測定されうる。
【0014】
(a)界面活性剤について
界面活性剤の種類や配合量については、本発明においては特に限定されない。洗剤組成物中において洗剤としての機能発現に寄与する化合物から、機能、用途、コストなどを考慮して選択すればよい。2種以上の界面活性剤が用いられてもよい。
【0015】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが用いられうる。以下、界面活性剤について例示する。ただし、本発明の洗剤組成物に含まれる界面活性剤が、例示する界面活性剤に限定される趣旨ではない。
【0016】
陰イオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。陰イオン界面活性剤は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、またはアンモニウム塩などとして含まれうる。
【0017】
非イオン界面活性剤としては、ジエタノールアミド、アミンオキシドなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが挙げられる。
【0018】
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アミンオキサイドなどが挙げられる。
【0019】
本発明の洗剤組成物は、他の陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および両性界面活性剤を含んでもよい。また、場合によっては、陽イオン性界面活性剤が配合されてもよい。
【0020】
本発明の洗剤組成物における界面活性剤の濃度は、組成物の全質量に対して、好ましくは40〜90質量%である。界面活性剤の濃度が低すぎると、洗浄効果が十分に発現しない虞がある。一方、界面活性剤の濃度が高すぎると、粘度上昇によって作業性が低下する。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0021】
(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(CDI)について
CDIとは、ヨウ素がシクロデキストリンによって包接された構造を有する化合物である。CDIから放出されるヨウ素によって、除菌、抗菌作用がもたらされる。そして、シクロデキストリン中に臭気成分が包接されることによって、消臭効果がもたらされる。つまり、CDIは、ヨウ素による除菌効果および消臭効果、ならびにシクロデキストリンによる更なる消臭効果を兼ね備える。台所洗剤として用いられる場合に、除菌効果および抗菌効果は特に有益である。台所周辺には、食べかすなどの細菌発生の温床となる有機成分が多数存在する。本発明の洗剤組成物を用いれば、細菌の繁殖を有意義に抑制し、台所周辺の衛生状態を良好に保つことが可能である。また、CDIは、哺乳動物における必須栄養素の一つであるヨウ素及び食品添加物として認可されているシクロデキストリンからなり、安全性が高い。また、包接化合物にすることによって、ヨウ素特有の臭気を減少させうる。このため、台所など臭気に留意する必要がある箇所においても、ヨウ素を含む洗剤組成物を適用しうる。
【0022】
また、ヨウ素が除菌作用を有することは知られていたが、洗剤に直接ヨウ素を混入させると、臭気及び保存安定性について難点があった。つまり、ヨウ素は強い臭気を有するため、洗剤組成物中に混入させると、洗剤組成物の消費者に与える印象を悪化させる虞があった。また、ヨウ素の安定性が低いために、洗剤組成物による除菌効果が長期間に渡って保持され得ない問題があった。本発明の洗剤組成物においては、ヨウ素は、シクロデキストリンによって包接されており、徐々に洗剤組成物中に放出される。このため、組成物の臭気も比較的良好であり、長期間に渡ってヨウ素による除菌効果が保持される。
【0023】
CDI自体は、前述のように公知である(例えば、特開昭51−88625号公報、特開2002−193719号参照)。製造方法についても特に限定はない。例えば、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素およびヨウ素溶解助剤を含む水溶液に、シクロデキストリンを添加することによって製造されうる。
【0024】
CDIは、CDIを構成するシクロデキストリンの種類によって、数種に分類される。例えば、シクロデキストリンには、β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリンなどのアルキル化−β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンなどが挙げられる。使用するシクロデキストリンは、用途や入手容易性などを考慮して選択すればよい。例えば、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を溶解させることを所望する場合には、水溶性に優れるメチル−β−シクロデキストリンをシクロデキストリンとして含むヨウ素−シクロデキストリン包接化合物であるMCDIなどが用いられるとよい。また、固体のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物が用いられる場合には、β−シクロデキストリンをシクロデキストリンとして含むヨウ素−シクロデキストリン包接化合物であるBCDIなどが用いられるとよい。
【0025】
本発明において用いられるCDIにおけるヨウ素含有量は、CDIの質量に対して、5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは19〜25質量%である。ヨウ素含有量がこのような範囲内であると、不安定で長期保存に適さないヨウ素が長期間安定した形態で存在しうる。上述の範囲でヨウ素が含まれていると、ヨウ素の本来の機能である除菌作用とシクロデキストリンの本来の機能である消臭作用とが特に効果的に発現する。CDIにおけるヨウ素含有量は、CDIを製造する際に用いられるシクロデキストリンの添加量を調整することによって、制御されうる。また、CDIにおけるヨウ素含有量を制御することによって、CDIからのヨウ素の放出が制御されうる。
【0026】
本発明において、CDIの製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法またはこれらの組み合わせが使用されうる。例えば、特開昭51−88625号公報、特開昭51−100892号公報、特開2002−193719号公報などに記載の方法;ヨウ素量とヨウ素溶解助剤(KIなど)量を所定範囲に調整して溶解し、これにシクロデキストリンを添加する方法;またはこれらの方法で製造されたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物に、本発明によるヨウ素の含有量を上記範囲になるように、シクロデキストリンを添加する方法などが挙げられる。このうち、ヨウ素量とヨウ素溶解助剤(NaI、KIなど)量を所定範囲に調整して溶解し、これにシクロデキストリンを添加する方法においては、シクロデキストリン量を調整することによって、ヨウ素をシクロデキストリン内に包接される量を制御できる。かような方法を用いれば、19質量%を越えるヨウ素含量のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を得ることも可能である。しかもヨウ素含有率の高いヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素特有の臭気を持たない傾向がある。
【0027】
原料としてのヨウ素は、特に制限されるものではなく、市販品をそのまま使用してもよい。また、ヨウ素は、ヨウ化カリウムと重クロム酸カリウムとを加熱蒸留するなどの方法に従って合成されてもよい。
【0028】
原料としてのシクロデキストリンは、特に制限されるものではなく、市販品をそのまま使用してもよい。また、シクロデキストリンは、デンプンにBacillus macerans由来のアミラーゼを作用させることなどの公知の方法によって製造してもよい。なお、本明細書において、「シクロデキストリン」は、それぞれ6、7及び8個の環状α−(1→4)結合したD−グルコピラノース単位から構成されるα−、β−及びγ−シクロデキストリンを包含するのみならず、例えば、アルキル化(メチル化、エチル化、プロピル化、イソプロプル化、ブチル化など)、モノアセチル化、トリアセチル化、モノクロロトリアジニル化等の化学修飾体も含む。ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物内におけるヨウ素包接量の調整の容易さを考慮すると、好ましくは、シクロデキストリンとしてβ−シクロデキストリン及びこの化学修飾体が用いられる。安全性の観点からは、食品添加物として認可されているβ−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、およびこれらの化学修飾体が好ましい。
【0029】
シクロデキストリンの市販品の具体例としては、CAVAMAX W6及びCAVAMAX W6 Pharmaとして市販されるα−シクロデキストリン;CAVAMAX W7及びCAVAMAX W7 PHARMAとして市販されるβ−シクロデキストリン;CAVAMAX W8、CAVAMAX W8 Food及びCAVAMAX W8 Pharmaとして市販されるγ−シクロデキストリン;CAVASOL W7 M、CAVASOL W7 M Pharma及びCAVASOL W7 M TLとして市販されるメチル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 HP及びCAVASOL W7 HP Pharmaとして市販されるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 Aとして市販されるモノアセチル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 TAとして市販されるトリアセチル−β−シクロデキストリン;ならびにCAVASOL W7 MCTとして市販されるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンなどが挙げられる(シクロデキストリンの入手先は、いずれも、ワッカーケミカルズ イーストアジア株式会社)。
【0030】
本発明の洗剤組成物におけるCDIの濃度は、組成物の全質量に対して、好ましくは17〜27質量%である。17質量%未満であると、除菌および抗菌が十分にされない虞がある。一方、27質量%を超えると、薬液コストが上昇する。また、27質量%もあれば十分な臭気除去効果が得られる。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0031】
(c)アルキレングリコールについて
本発明の洗剤組成物は、必要に応じて、アルキレングリコールを含む。CDIがアルキレングリコール中で安定に存在するため、アルキレングリコールを洗剤組成物中の溶媒として用いることによって、洗剤組成物においてCDIを長期間、安定に保持しうる。つまり、製品としての洗剤組成物の耐用期限を長期化させうる。
【0032】
アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられる。これらの2種以上が併用されてもよい。これらの中では、入手容易性やCDIの安定性を考慮すると、プロピレングリコールが好ましい。
【0033】
本発明の洗剤組成物におけるアルキレングリコールの濃度は、組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%である。0.01質量%未満であると、アルキレングリコールによる効果が十分に発現しない虞がある。一方、5質量%を超えると、相対的に界面活性剤やCDIの存在量が減少するため、洗剤としての効力および除菌作用が低下する。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0034】
(d)溶解助剤について
本発明の洗剤組成物は、必要に応じて、溶解助剤を含む。本発明において溶解助剤とは、ヨウ素の溶液への溶解を補助する化合物をいう。
【0035】
溶解助剤は、ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される。ハロゲン酸とは、ハロゲン原子および水素原子からなる酸を意味する。ハロゲン酸の具体例としては、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、フッ化水素酸(HF)が挙げられる。アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の具体例としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム等が挙げられる。2種以上の溶解助剤を組み合わせて良い。
【0036】
溶解助剤は、好ましくは、ヨウ素原子を有する化合物である。ヨウ素はCDI中に含まれる成分であり、CDIを用いた除菌および抗菌に悪影響を及ぼす恐れがない。また、本発明の洗浄組成物を工業的に大量に用いる実施態様を想定すると、処理後の回収の観点から、塩素や臭素といった他のハロゲンが混入しないことが好ましい。ヨウ素原子を有する化合物の中では、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムが好ましい。ヨウ化ナトリウムおよびヨウ化カリウムの溶解度は非常に高く、それぞれ184.1g/100ml(水)および148.2g/100ml(水)である。これは、溶解度が35.9g/100ml(水)である塩化ナトリウムと比較しても、高い数値である。かような高い溶解度を有するヨウ化ナトリウムおよびヨウ化カリウムは、凝固点を所望する温度にまで低下させる上で便利である。
【0037】
溶解助剤は、ヨウ素の溶解を補助するものであれば、上記例示した化合物に限定されない。ただし、組成物をアルカリ性にする化合物は避けるべきである。組成物がアルカリ性であると、ヨウ素(I2)がイオン化してしまい、洗剤組成物の除菌効果が薄れる。
【0038】
本発明の洗剤組成物においては、溶解助剤の濃度は、好ましくは、組成物の全質量に対して0.1〜10質量%である。溶解助剤が少なすぎると、溶解助剤による効果が十分に得られない虞がある。一方、10質量%を超えると、未溶解が発生したり、相対的に界面活性剤やCDIの存在量が減少したりするため、洗剤としての効力および除菌作用が低下する。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0039】
(e)pH調整剤について
本発明の洗剤組成物は、必要に応じて、pH調整剤を含む。前述のように、組成物がアルカリ性であると、組成物中のヨウ素(I2)がイオン化してしまい、除菌効果が薄れる。このため、好ましくは、pH調整剤を用いて、組成物のpHが調整される。
【0040】
pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸などの有機酸が挙げられる。これらの2種以上が併用されてもよい。これらの中では、除菌性および安全性を考慮すると、クエン酸が好ましい。
【0041】
(f)その他の成分について
本発明の洗剤組成物は、必要に応じて、上記(a)〜(e)の成分以外の成分を含んでいてもよい。例えば、精製水、イオン交換水等の水;エタノール、メタノール等の低分子量アルコールなどが、溶媒として用いられる。前記(c)の概念に含まれるポリアルキレングリコールを溶媒として用いてもよい。
【0042】
製品に付加価値を付与するために、保存料、染料、色移り防止剤、酵素、酵素安定化剤、消泡剤、可溶化剤、酸化防止剤、香料、抗菌防腐剤などが、本発明の洗剤組成物中に配合されてもよい。これらの成分は、一般的には、洗剤組成物の質量に対して、それぞれ1質量%以下の量で存在する。
【0043】
なお、本発明の洗剤組成物は、特別な手法を用いずに製造されうるものであり、特に製造方法について制限はない。
【0044】
【実施例】
本発明の効果について、以下の実施例を用いてより詳細に説明する。しかしながら、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0045】
<実施例1>
弱アルカリ性台所用洗剤(P&G社製、商品名「アロマジョイリラックスモード」;100g)に、pH調整剤としてクエン酸・1水和物(2g)を加えて、室温で溶解させた。溶液に、アルカリ金属のハロゲン化物であるヨウ化カリウム(KI;5g)を溶解させた。さらに、溶液に、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(BCDI)を含むプロピレングリコール溶液(1.2g)を加えて、均一に撹拌し、洗剤組成物1を得た。洗剤組成物の20℃でのpHは4.81であった。用いたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物中のヨウ素含有量は、20質量%であった。また、BCDIとプロピレングリコール(PG)との質量比は、BCDI:PG=1:9とした。
【0046】
また、洗剤組成物中のヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された洗剤組成物の目視観察を3ヶ月間続けたが、ヨウ素色の退色は確認されなかった。結果を表1に示す。
【0047】
<pH測定方法>
洗剤組成物のpHは、堀場製作所製pH計「HORIBA pH meterF−21(卓上型)」(電極:第S005号6378Lot109030)を用いて測定された。
【0048】
まず、pH試験機を、pH4.01のフタル酸塩pH標準液、pH6.86中性リン酸pH標準液、およびpH9.18ホウ酸塩pH標準液で、校正した。
【0049】
測定される洗剤組成物50mlをビーカーにとり、マグネチックスターラーで撹拌しながら、pH試験機の電極を洗剤組成物中に入れた。pH試験機の表示値が一定値に落ち着いた時の値を、洗剤組成物のpHとした。pH測定後は、pH試験機を超純水で洗浄し、ティッシュで付着した水を拭き取った。
【0050】
<比較例1>
クエン酸・1水和物およびヨウ化カリウムを加えない以外は、実施例1と同様にして洗剤組成物2を得た。洗剤組成物2の20℃でのpHは7.75であった。
【0051】
また、洗剤組成物中のヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された洗剤組成物の目視観察を続けたところ、3日間でヨウ素色が消失した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を洗剤組成物中に添加することによって、洗剤組成物の殺菌能力が向上する。また、表1に示すように、洗剤組成物のpHを制御することによって、殺菌能力を向上させうる。さらに、溶解助剤を洗剤組成物中に添加することによって、殺菌能力の効果を長期化させうる。しかも、本発明の洗剤組成物は、従来用いられていた洗剤に、所定のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を添加すれば製造できるため、従来用いられていた製造工程を、本発明の洗剤組成物の製造工程として活用できる。この点は、工業的に本発明を適用する上で、大きな利点である。
【0054】
【発明の効果】
本発明の洗剤組成物は、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含む。ヨウ素シクロデキストリン包接化合物(以下、「CDI」とも記載)から放出されるヨウ素によって、洗剤組成物に除菌作用および抗菌作用がもたらされる。したがって、本発明の洗剤組成物を用いて物品を洗浄することによって、物品を除菌および抗菌することができる。
【0055】
また、本発明の洗浄組成物中に含まれるCDIは、哺乳動物における必須栄養素の一つであるヨウ素及び食品添加物として認可されているシクロデキストリンからなり、安全性が高く、人体への毒性が少ない。
【0056】
さらに、洗剤組成物のpHを制御することによって、殺菌効果を長期間に渡って持続させることが可能である。
Claims (8)
- (a)界面活性剤、および(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含み、20℃におけるpHが、4.0〜6.8であることを特徴とする、洗剤組成物。
- 前記ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を形成するシクロデキストリンは、β−シクロデキストリンであることを特徴とする、請求項1に記載の洗剤組成物。
- さらに、(c)アルキレングリコールを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の洗剤組成物。
- 前記アルキレングリコールは、プロピレングリコールであることを特徴とする、請求項3に記載の洗剤組成物。
- さらに、(d)ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物、およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される溶解助剤を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗剤組成物。
- 前記溶解助剤は、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムであることを特徴とする、請求項5に記載の洗剤組成物。
- さらに、(e)pH調整剤を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗剤組成物。
- 前記pH調整剤は、クエン酸であることを特徴とする、請求項7に記載の洗剤組成物。
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-
2003
- 2003-04-18 JP JP2003114856A patent/JP2004315750A/ja not_active Withdrawn
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