JP2004313619A - 消臭組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含む消臭組成物の除菌性能を、長期間に渡って保持する手段を提供する。
【解決手段】(a)シクロデキストリン、(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ならびに(c)ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物、およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される溶解助剤を含む、消臭組成物によって、上記課題は解決される。
【選択図】 なし
【解決手段】(a)シクロデキストリン、(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ならびに(c)ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物、およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される溶解助剤を含む、消臭組成物によって、上記課題は解決される。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、除菌性の消臭組成物に関し、特に、シクロデキストリンを含む消臭組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
生活空間の悪臭を除去し、居住空間を快適にするために、種々の消臭組成物が開発されている。消臭組成物中には、芳香によって悪臭をマスキングする成分、臭気の原因物質を除去する成分などが含まれる。芳香によって悪臭をマスキングする成分は、芳しい香りを発散することによって、人体が悪臭を感じるのを妨げる。臭気の原因物質を除去する成分は、臭気の原因となる化合物を包接したり、臭気の原因となる化合物に吸着したりする。
【0003】
消臭組成物中に配合される成分としては、シクロデキストリンが知られている(例えば、特許文献1参照)。シクロデキストリンは、d−グルコースがα−1,4結合により環状に結合した化合物であり、臭気の原因となる化合物を分子中に包接する。シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、およびこれらの誘導体などが知られている。
【0004】
近年においては、消臭作用に加えて、除菌作用を消臭組成物に付与することが所望されている。除菌は、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系除菌剤やフェノール系除菌剤などの除菌剤によって達成されうる。しかしながら、かような除菌剤は、人体に悪影響を及ぼす虞がある。
【0005】
人体に安全な除菌性化合物としては、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、包接されているヨウ素が徐々に放出されるため、比較的長期間に渡って除菌性能が保たれうる。しかしながら、より長期間に渡って除菌性能が保持されることが求められている。例えば、家庭用消臭剤に使用される場合には、数ヶ月以上に渡って除菌性能が保持されることが求められる。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−291857号公報
【特許文献2】
特開2002−193719号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が目的とするところは、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含む消臭組成物の除菌性能を、長期間に渡って保持する手段を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)シクロデキストリン、(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ならびに(c)ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物、およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される溶解助剤を含む、消臭組成物である。
【0009】
本発明の消臭組成物に含まれるシクロデキストリンによって、悪臭の原因物質が除去される。ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素を徐々に放出する。放出されたヨウ素によって、除菌作用が発現する。一方、ヨウ素を放出したシクロデキストリンによって、悪臭の原因物質が除去される。ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物のみによって、消臭および除菌することも可能であるが、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、シクロデキストリンに比べて、一般に高価である。本発明によれば、除菌に必要な量のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を配合すればよいので、消臭組成物の製造コストを抑制しつつ、効果的な除菌性能を発現させうる。
【0010】
シクロデキストリンおよびヨウ素は、哺乳動物における必須栄養素の一つであるヨウ素及び食品添加物として認可されているシクロデキストリンからなり、安全性が高い。また、同様の化合物が併用される場合には、相互作用による悪影響などが生じにくい上、消臭効果も予測しやすい。従って、シクロデキストリンを消臭成分として含む消臭組成物に添加される成分として、シクロデキストリン構造を有するヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は好適である。
【0011】
また、本発明の消臭組成物中には、溶解助剤が含まれる。溶解助剤を含む消臭組成物においては、長期間に渡ってヨウ素が消臭組成物中に保持されうる。このため、消臭組成物を用いた製品の耐用期間が長期化する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、(a)シクロデキストリン、(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ならびに(c)ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物、およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される溶解助剤を含む、消臭組成物である。以下、本発明の消臭組成物中に含まれる成分について、順に説明する。
【0013】
(a)シクロデキストリンについて
シクロデキストリンは、d−グルコースがα−1、4結合により環状に結合した化合物である。シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体などが用いられうる。なお、d−グルコースが6個結合したものがα−シクロデキストリン、7個結合したものがβ−シクロデキストリン、8個の結合したものがγ−シクロデキストリンである。
【0014】
シクロデキストリンの誘導体としては、ヒドロキシメチルシクロデキストリン、ヒドロキシエチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシブチルシクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン、トリメチルシクロデキストリン、ジエチルシクロデキストリン、トリエチルシクロデキストリン、カルボキシメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン、ジマルトシルシクロデキストリン、モノクロロトリアジニルシクロデキストリン、シクロデキストリンエピクロルヒドリンポリマー等が挙げられる。
【0015】
シクロデキストリンの濃度は、好ましくは、消臭組成物の総質量に対して、0.05〜20質量%の範囲である。
【0016】
シクロデキストリンは、特に制限されるものではなく、市販品をそのまま使用してもよい。また、シクロデキストリンは、デンプンにBacillus macerans由来のアミラーゼを作用させることなどの公知の方法によって製造してもよい。
【0017】
シクロデキストリンの市販品の具体例としては、CAVAMAX W6及びCAVAMAX W6 Pharmaとして市販されるα−シクロデキストリン;CAVAMAX W7及びCAVAMAX W7 PHARMAとして市販されるβ−シクロデキストリン;CAVAMAX W8、CAVAMAX W8 Food及びCAVAMAX W8 Pharmaとして市販されるγ−シクロデキストリン;CAVASOL W7 M、CAVASOL W7 M Pharma及びCAVASOL W7 M TLとして市販されるメチル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 HP及びCAVASOL W7 HP Pharmaとして市販されるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 Aとして市販されるモノアセチル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 TAとして市販されるトリアセチル−β−シクロデキストリン;ならびにCAVASOL W7 MCTとして市販されるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンなどが挙げられる(いずれも、ワッカーケミカルズ イーストアジア株式会社製)。
【0018】
(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(CDI)について
ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(以下、「CDI」と記載)は、ヨウ素がシクロデキストリンによって包接された構造を有する化合物である。CDIから放出されるヨウ素によって、消臭作用がもたらされる。同時に、CDIから放出されるヨウ素によって、除菌作用および抗菌作用ももたらされる。そして、シクロデキストリン中に臭気成分が包接されることによって、消臭作用がもたらされる。つまり、CDIは、ヨウ素による除菌効果および消臭効果、ならびにシクロデキストリンによる更なる消臭効果を兼ね備える。
【0019】
CDI自体は、前述のように公知である(例えば、特開昭51−88625号公報、特開2002−193719号公報参照)。製造方法についても特に限定はない。例えば、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素およびヨウ素溶解助剤を含む水溶液に、シクロデキストリンを添加することによって製造されうる。
【0020】
CDIは、CDIを構成するシクロデキストリンの種類によって、数種に分類される。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体などが用いられうる。誘導体の具体例は、上述の通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0021】
使用するシクロデキストリンは、用途や入手容易性などを考慮して選択すればよい。例えば、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を溶解させることを所望する場合には、水溶性に優れるメチル−β−シクロデキストリンをシクロデキストリンとして含むヨウ素−シクロデキストリン包接化合物であるMCDIなどが用いられるとよい。また、固体のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物が用いられる場合には、β−シクロデキストリンをシクロデキストリンとして含むヨウ素−シクロデキストリン包接化合物であるBCDIなどが用いられるとよい。
【0022】
シクロデキストリンの中では、経済性を考慮すると、β−シクロデキストリンが好ましい。ただし、β−シクロデキストリンは、溶解度が低いため、水性の消臭組成物中に配合しづらい。この場合には、後述するように、アルキレングリコールが、消臭組成物中に含まれるとよい。また、アルキレングリコールが含まれていると、水性の消臭組成物の凝固点が低下しうる。
【0023】
本発明において用いられるCDIにおけるヨウ素含有量は、CDIの質量に対して、5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは19〜25質量%である。ヨウ素含有量がこのような範囲内であると、ヨウ素の安定性が高まり、消臭組成物の除菌効果が長期間に渡って持続しうる。また、上述の範囲でヨウ素が含まれていると、ヨウ素の本来の機能である除菌作用とシクロデキストリンの本来の機能である消臭作用とが特に効果的に発現する。CDIにおけるヨウ素含有量は、CDIを製造する際に用いられるシクロデキストリンの添加量を調整することによって、制御されうる。また、CDIにおけるヨウ素含有量を制御することによって、CDIからのヨウ素の放出が制御されうる。
【0024】
CDIの濃度は、好ましくは、消臭組成物の総質量に対して、0.002〜0.05質量%である。CDIの濃度が低すぎると、十分な除菌作用が発現しない虞がある。逆に、CDIの濃度が高すぎると、消臭組成物が噴霧された物体に、ヨウ素色が付く虞がある。この範囲のCDI濃度であれば、十分な除菌作用が得られ、かつ、ヨウ素による着色の恐れも少ない。
【0025】
本発明において、CDIの製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法またはこれらの組み合わせが使用されうる。例えば、特開昭51−88625号公報、特開昭51−100892号公報、特開2002−193719号公報、特開2003−40717号公報などに記載の方法;ヨウ素量とヨウ素溶解助剤(KIなど)量を所定範囲に調整して溶解し、これにシクロデキストリンを添加する方法;またはこれらの方法で製造されたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物に、本発明によるヨウ素の含有量を上記範囲になるように、シクロデキストリンを添加する方法などが挙げられる。このうち、ヨウ素量とヨウ素溶解助剤(NaI、KIなど)量を所定範囲に調整して溶解し、これにシクロデキストリンを添加する方法においては、シクロデキストリン量を調整することによって、ヨウ素をシクロデキストリン内に包接される量を制御できる。かような方法を用いれば、19質量%を越えるヨウ素含量のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を得ることも可能である。しかもヨウ素含有率の高いヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素臭が薄れる傾向がある。
【0026】
原料としてのヨウ素は、特に制限されるものではなく、市販品をそのまま使用してもよい。また、ヨウ素は、ヨウ化カリウムと重クロム酸カリウムとを加熱蒸留するなどの方法に従って合成されてもよい。原料としてのシクロデキストリンの入手方法は、既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0027】
(c)溶解助剤について
本発明の消臭組成物は、溶解助剤を含む。本発明において溶解助剤とは、ヨウ素の溶液への溶解を補助する化合物をいう。
【0028】
溶解助剤は、ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される。ハロゲン酸とは、ハロゲン原子および水素原子からなる酸を意味する。ハロゲン酸の具体例としては、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、フッ化水素酸(HF)が挙げられる。アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の具体例としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム等が挙げられる。2種以上の溶解助剤を組み合わせて良い。
【0029】
消臭組成物中に含まれる溶解助剤によって、除菌効果を長期化させうる。つまり、溶解助剤が消臭組成物中に含まれていると、消臭組成物中においてヨウ素が長期間に渡って保持され、ヨウ素による除菌作用が、長期間に渡って保持されうる。このことは、製品としての消臭組成物の耐用期限が長くなり、製品の品質が向上することを意味する。
【0030】
溶解助剤は、好ましくは、ヨウ素原子を有する化合物である。ヨウ素はCDI中に含まれる成分であり、CDIを用いた除菌に悪影響を及ぼす恐れがない。また、本発明の洗浄組成物を工業的に大量に用いる実施態様を想定すると、処理後の回収の観点から、塩素や臭素といった他のハロゲンが混入しないことが好ましい。ヨウ素原子を有する化合物の中では、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムが好ましい。ヨウ化ナトリウムおよびヨウ化カリウムの溶解度は非常に高く、それぞれ184.1g/100ml(水)および148.2g/100ml(水)である。これは、溶解度が35.9g/100ml(水)である塩化ナトリウムと比較しても、高い数値である。かような高い溶解度を有するヨウ化ナトリウムおよびヨウ化カリウムは、凝固点を所望する温度にまで低下させる上で便利である。
【0031】
溶解助剤は、ヨウ素の溶解を補助するものであれば、上記例示した化合物に限定されない。ただし、組成物をアルカリ性にする化合物は避けるべきである。組成物がアルカリ性であると、ヨウ素(I2)がイオン化してしまい、消臭組成物の除菌効果が薄れる。
【0032】
本発明の消臭組成物においては、溶解助剤の濃度は、好ましくは、組成物の全質量に対して0.1〜10質量%である。溶解助剤が少なすぎると、溶解助剤による効果が十分に得られない虞がある。一方、10質量%を超えると、未溶解が発生したり、相対的に界面活性剤やCDIの存在量が減少したりするため、消臭作用および除菌作用が低下する。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0033】
(d)アルキレングリコールについて
本発明の消臭組成物は、必要に応じて、アルキレングリコールを含む。CDIがアルキレングリコール中で安定に存在するため、アルキレングリコールを消臭組成物中の溶媒として用いることによって、消臭組成物においてCDIを長期間、安定に保持しうる。特に、CDIとして、β−シクロデキストリンをシクロデキストリンとして含むヨウ素−シクロデキストリン包接化合物であるBCDIが用いられる場合には、アルキレングリコールが消臭組成物中に含まれることが好ましい。
【0034】
また、アルキレングリコールを消臭組成物中に含ませることによって、消臭組成物の凝固点を低下させうる。例えば、本発明の消臭組成物が、家庭用の消臭剤として用いられる水性の消臭剤である場合、消臭剤は四季を通じて使用される。地域によっては、当然、気温が氷点下になることがある。このような場合に、消臭組成物が凍結してしまうと、消臭組成物を使用できない。一般には、室内は温暖であることが多いが、搬送中は、外気に曝される。消臭組成物が凍結し、体積の膨張に伴い容器が破裂する虞もある。アルキレングリコールを消臭組成物に含ませて、消臭組成物の凝固点を低下させることによって、消臭組成物の使用の幅が拡がる。特に、CDIとしてBCDIが用いられる場合には、BCDIの溶解性向上および凝固点低下の双方の効果が発現しうるため、有効である。
【0035】
アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられる。これらの2種以上が併用されてもよい。これらの中では、入手容易性やCDIの安定性を考慮すると、プロピレングリコールが好ましい。
【0036】
本発明の消臭組成物におけるアルキレングリコールの濃度は、組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%である。0.01質量%未満であると、アルキレングリコールによる効果が十分に発現しない虞がある。一方、5質量%を超えると、相対的に他成分の量が減少するため、消臭作用および除菌作用が低下する。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0037】
(f)その他の成分について
本発明の消臭組成物は、必要に応じて、上記(a)〜(e)の成分以外の成分を含んでいてもよい。例えば、精製水、イオン交換水等の水;エタノール、メタノール等の低分子量アルコールなどが、溶媒として用いられる。ゲル状の消臭組成物を製造する場合には、ゲル化剤が用いられうる。
【0038】
製品に付加価値を付与するために、保湿剤、有機溶剤、染料、酸化防止剤、香料などが、本発明の消臭組成物中に配合されてもよい。これらの成分は、一般的には、消臭組成物の質量に対して、それぞれ1質量%以下の量で存在する。
【0039】
本発明の消臭組成物は、消臭剤として用いられる。好ましい実施態様としては、液状の消臭組成物を用いてなる、消臭スプレーが挙げられる。消臭スプレーを用いて消臭するには、臭気の原因に対して本発明の消臭組成物を噴霧すればよい。消臭組成物が噴霧される対象は、特に限定されない。例えば、臭気を発しているソファ、靴、マット、衣服、蒲団などの繊維;臭気を発している気体などに噴霧されうる。
【0040】
本発明の消臭組成物は、従来用いられていた消臭組成物に、所定のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を添加すれば製造できるため、従来用いられていた製造工程を、本発明の消臭組成物の製造工程として活用できる。この点は、工業的に本発明を適用する上で、大きな利点である。ただし、本発明の消臭組成物の製造方法が、かような製造方法に限定されるわけではなく、特別な手法を用いずに製造されうる。
【0041】
【実施例】
本発明の効果について、以下の実施例を用いてより詳細に説明する。しかしながら、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0042】
<実施例1>
シクロデキストリンを含む液状の消臭剤(P&G社製、商品名「ファブリーズ」;300g)に、アルカリ金属のハロゲン化物であるヨウ化カリウム(KI;1.5013g)を溶解させた。さらに、溶液に、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(BCDI)を含むプロピレングリコール溶液(0.0618g)を加えて、さらにプロピレングリコール(0.6612g)を添加し、均一に撹拌し、有効ヨウ素量4ppmの消臭組成物1を得た。用いたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物中のヨウ素含有量は、20質量%であった。また、BCDIとプロピレングリコール(PG)との質量比は、BCDI:PG≒1:9とした。
【0043】
消臭組成物1におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を3ヶ月間続けたが、ヨウ素色の退色は確認されなかった。また、消臭組成物1を−5℃の環境下に放置したが、消臭組成物1は凍結しなかった。結果を表1に示す。
【0044】
<実施例2>
シクロデキストリンを含む液状の消臭剤(P&G社製、商品名「ファブリーズ」;100g)に、アルカリ金属のハロゲン化物であるヨウ化カリウム(KI;0.5028g)を溶解させた。さらに、溶液に、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(BCDI)を含むプロピレングリコール溶液(0.1162g)を加えて、さらにプロピレングリコール(1.2g)を添加し、均一に撹拌し、有効ヨウ素量20ppmの消臭組成物2を得た。用いたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物中のヨウ素含有量は、20質量%であった。また、BCDIとプロピレングリコール(PG)との質量比は、BCDI:PG≒1:9とした。
【0045】
消臭組成物2におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を3ヶ月間続けたが、ヨウ素色の退色は確認されなかった。また、消臭組成物2を−5℃の環境下に放置したが、消臭組成物2は凍結しなかった。結果を表1に示す。
【0046】
<実施例3>
シクロデキストリンを含む液状の消臭剤(P&G社製、商品名「ファブリーズ」;100g)に、アルカリ金属のハロゲン化物であるヨウ化カリウム(KI;0.5021g)を溶解させた。さらに、溶液に、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(BCDI)を含むプロピレングリコール溶液(0.2037g)を加えて、さらにプロピレングリコール(2.8g)を添加し、均一に撹拌し、有効ヨウ素量40ppmの消臭組成物3を得た。用いたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物中のヨウ素含有量は、20質量%であった。また、BCDIとプロピレングリコール(PG)との質量比は、BCDI:PG≒1:9とした。
【0047】
消臭組成物3におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を3ヶ月間続けたが、ヨウ素色の退色は確認されなかった。また、消臭組成物3を−5℃まで冷却したが、消臭組成物3は凍結しなかった。結果を表1に示す。
【0048】
<実施例4>
プロピレングリコールを含まない以外は、実施例1と同様の組成からなる消臭組成物4を調製した。
【0049】
消臭組成物4におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を3ヶ月間続けたが、ヨウ素色の退色は確認されなかった。また、消臭組成物4を冷却したところ、消臭組成物4は−1〜0℃で凍結した。結果を表1に示す。
【0050】
<比較例1>
溶解助剤としてのヨウ化カリウムを含まない以外は、実施例1と同様の組成からなる消臭組成物5を調製した。
【0051】
消臭組成物5におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を3ヶ月間続けたところ、1日でヨウ素色が退色した。また、消臭組成物5を−5℃まで冷却したが、消臭組成物5は凍結しなかった。結果を表1に示す。
【0052】
<比較例2>
溶解助剤としてのヨウ化カリウム、および、プロピレングリコールを含まない以外は、実施例1と同様の組成からなる消臭組成物6を調製した。
【0053】
消臭組成物6におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を続けたところ、1日でヨウ素色が退色した。また、消臭組成物6を冷却したところ、消臭組成物6は0〜2℃で凍結した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、本発明の消臭組成物は、長期間に渡って除菌作用が維持される。また、アルキレングリコールによって、消臭組成物の凝固点が低下する。
【0056】
【発明の効果】
本発明の消臭組成物においては、長期間に渡ってヨウ素が消臭組成物中に保持されうる。このため、消臭組成物を用いた製品の耐用期間が長期化する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、除菌性の消臭組成物に関し、特に、シクロデキストリンを含む消臭組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
生活空間の悪臭を除去し、居住空間を快適にするために、種々の消臭組成物が開発されている。消臭組成物中には、芳香によって悪臭をマスキングする成分、臭気の原因物質を除去する成分などが含まれる。芳香によって悪臭をマスキングする成分は、芳しい香りを発散することによって、人体が悪臭を感じるのを妨げる。臭気の原因物質を除去する成分は、臭気の原因となる化合物を包接したり、臭気の原因となる化合物に吸着したりする。
【0003】
消臭組成物中に配合される成分としては、シクロデキストリンが知られている(例えば、特許文献1参照)。シクロデキストリンは、d−グルコースがα−1,4結合により環状に結合した化合物であり、臭気の原因となる化合物を分子中に包接する。シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、およびこれらの誘導体などが知られている。
【0004】
近年においては、消臭作用に加えて、除菌作用を消臭組成物に付与することが所望されている。除菌は、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系除菌剤やフェノール系除菌剤などの除菌剤によって達成されうる。しかしながら、かような除菌剤は、人体に悪影響を及ぼす虞がある。
【0005】
人体に安全な除菌性化合物としては、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、包接されているヨウ素が徐々に放出されるため、比較的長期間に渡って除菌性能が保たれうる。しかしながら、より長期間に渡って除菌性能が保持されることが求められている。例えば、家庭用消臭剤に使用される場合には、数ヶ月以上に渡って除菌性能が保持されることが求められる。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−291857号公報
【特許文献2】
特開2002−193719号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が目的とするところは、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含む消臭組成物の除菌性能を、長期間に渡って保持する手段を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)シクロデキストリン、(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ならびに(c)ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物、およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される溶解助剤を含む、消臭組成物である。
【0009】
本発明の消臭組成物に含まれるシクロデキストリンによって、悪臭の原因物質が除去される。ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素を徐々に放出する。放出されたヨウ素によって、除菌作用が発現する。一方、ヨウ素を放出したシクロデキストリンによって、悪臭の原因物質が除去される。ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物のみによって、消臭および除菌することも可能であるが、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、シクロデキストリンに比べて、一般に高価である。本発明によれば、除菌に必要な量のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を配合すればよいので、消臭組成物の製造コストを抑制しつつ、効果的な除菌性能を発現させうる。
【0010】
シクロデキストリンおよびヨウ素は、哺乳動物における必須栄養素の一つであるヨウ素及び食品添加物として認可されているシクロデキストリンからなり、安全性が高い。また、同様の化合物が併用される場合には、相互作用による悪影響などが生じにくい上、消臭効果も予測しやすい。従って、シクロデキストリンを消臭成分として含む消臭組成物に添加される成分として、シクロデキストリン構造を有するヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は好適である。
【0011】
また、本発明の消臭組成物中には、溶解助剤が含まれる。溶解助剤を含む消臭組成物においては、長期間に渡ってヨウ素が消臭組成物中に保持されうる。このため、消臭組成物を用いた製品の耐用期間が長期化する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、(a)シクロデキストリン、(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ならびに(c)ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物、およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される溶解助剤を含む、消臭組成物である。以下、本発明の消臭組成物中に含まれる成分について、順に説明する。
【0013】
(a)シクロデキストリンについて
シクロデキストリンは、d−グルコースがα−1、4結合により環状に結合した化合物である。シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体などが用いられうる。なお、d−グルコースが6個結合したものがα−シクロデキストリン、7個結合したものがβ−シクロデキストリン、8個の結合したものがγ−シクロデキストリンである。
【0014】
シクロデキストリンの誘導体としては、ヒドロキシメチルシクロデキストリン、ヒドロキシエチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシブチルシクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン、トリメチルシクロデキストリン、ジエチルシクロデキストリン、トリエチルシクロデキストリン、カルボキシメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン、ジマルトシルシクロデキストリン、モノクロロトリアジニルシクロデキストリン、シクロデキストリンエピクロルヒドリンポリマー等が挙げられる。
【0015】
シクロデキストリンの濃度は、好ましくは、消臭組成物の総質量に対して、0.05〜20質量%の範囲である。
【0016】
シクロデキストリンは、特に制限されるものではなく、市販品をそのまま使用してもよい。また、シクロデキストリンは、デンプンにBacillus macerans由来のアミラーゼを作用させることなどの公知の方法によって製造してもよい。
【0017】
シクロデキストリンの市販品の具体例としては、CAVAMAX W6及びCAVAMAX W6 Pharmaとして市販されるα−シクロデキストリン;CAVAMAX W7及びCAVAMAX W7 PHARMAとして市販されるβ−シクロデキストリン;CAVAMAX W8、CAVAMAX W8 Food及びCAVAMAX W8 Pharmaとして市販されるγ−シクロデキストリン;CAVASOL W7 M、CAVASOL W7 M Pharma及びCAVASOL W7 M TLとして市販されるメチル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 HP及びCAVASOL W7 HP Pharmaとして市販されるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 Aとして市販されるモノアセチル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 TAとして市販されるトリアセチル−β−シクロデキストリン;ならびにCAVASOL W7 MCTとして市販されるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンなどが挙げられる(いずれも、ワッカーケミカルズ イーストアジア株式会社製)。
【0018】
(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(CDI)について
ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(以下、「CDI」と記載)は、ヨウ素がシクロデキストリンによって包接された構造を有する化合物である。CDIから放出されるヨウ素によって、消臭作用がもたらされる。同時に、CDIから放出されるヨウ素によって、除菌作用および抗菌作用ももたらされる。そして、シクロデキストリン中に臭気成分が包接されることによって、消臭作用がもたらされる。つまり、CDIは、ヨウ素による除菌効果および消臭効果、ならびにシクロデキストリンによる更なる消臭効果を兼ね備える。
【0019】
CDI自体は、前述のように公知である(例えば、特開昭51−88625号公報、特開2002−193719号公報参照)。製造方法についても特に限定はない。例えば、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素およびヨウ素溶解助剤を含む水溶液に、シクロデキストリンを添加することによって製造されうる。
【0020】
CDIは、CDIを構成するシクロデキストリンの種類によって、数種に分類される。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体などが用いられうる。誘導体の具体例は、上述の通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0021】
使用するシクロデキストリンは、用途や入手容易性などを考慮して選択すればよい。例えば、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を溶解させることを所望する場合には、水溶性に優れるメチル−β−シクロデキストリンをシクロデキストリンとして含むヨウ素−シクロデキストリン包接化合物であるMCDIなどが用いられるとよい。また、固体のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物が用いられる場合には、β−シクロデキストリンをシクロデキストリンとして含むヨウ素−シクロデキストリン包接化合物であるBCDIなどが用いられるとよい。
【0022】
シクロデキストリンの中では、経済性を考慮すると、β−シクロデキストリンが好ましい。ただし、β−シクロデキストリンは、溶解度が低いため、水性の消臭組成物中に配合しづらい。この場合には、後述するように、アルキレングリコールが、消臭組成物中に含まれるとよい。また、アルキレングリコールが含まれていると、水性の消臭組成物の凝固点が低下しうる。
【0023】
本発明において用いられるCDIにおけるヨウ素含有量は、CDIの質量に対して、5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは19〜25質量%である。ヨウ素含有量がこのような範囲内であると、ヨウ素の安定性が高まり、消臭組成物の除菌効果が長期間に渡って持続しうる。また、上述の範囲でヨウ素が含まれていると、ヨウ素の本来の機能である除菌作用とシクロデキストリンの本来の機能である消臭作用とが特に効果的に発現する。CDIにおけるヨウ素含有量は、CDIを製造する際に用いられるシクロデキストリンの添加量を調整することによって、制御されうる。また、CDIにおけるヨウ素含有量を制御することによって、CDIからのヨウ素の放出が制御されうる。
【0024】
CDIの濃度は、好ましくは、消臭組成物の総質量に対して、0.002〜0.05質量%である。CDIの濃度が低すぎると、十分な除菌作用が発現しない虞がある。逆に、CDIの濃度が高すぎると、消臭組成物が噴霧された物体に、ヨウ素色が付く虞がある。この範囲のCDI濃度であれば、十分な除菌作用が得られ、かつ、ヨウ素による着色の恐れも少ない。
【0025】
本発明において、CDIの製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法またはこれらの組み合わせが使用されうる。例えば、特開昭51−88625号公報、特開昭51−100892号公報、特開2002−193719号公報、特開2003−40717号公報などに記載の方法;ヨウ素量とヨウ素溶解助剤(KIなど)量を所定範囲に調整して溶解し、これにシクロデキストリンを添加する方法;またはこれらの方法で製造されたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物に、本発明によるヨウ素の含有量を上記範囲になるように、シクロデキストリンを添加する方法などが挙げられる。このうち、ヨウ素量とヨウ素溶解助剤(NaI、KIなど)量を所定範囲に調整して溶解し、これにシクロデキストリンを添加する方法においては、シクロデキストリン量を調整することによって、ヨウ素をシクロデキストリン内に包接される量を制御できる。かような方法を用いれば、19質量%を越えるヨウ素含量のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を得ることも可能である。しかもヨウ素含有率の高いヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素臭が薄れる傾向がある。
【0026】
原料としてのヨウ素は、特に制限されるものではなく、市販品をそのまま使用してもよい。また、ヨウ素は、ヨウ化カリウムと重クロム酸カリウムとを加熱蒸留するなどの方法に従って合成されてもよい。原料としてのシクロデキストリンの入手方法は、既に説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0027】
(c)溶解助剤について
本発明の消臭組成物は、溶解助剤を含む。本発明において溶解助剤とは、ヨウ素の溶液への溶解を補助する化合物をいう。
【0028】
溶解助剤は、ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される。ハロゲン酸とは、ハロゲン原子および水素原子からなる酸を意味する。ハロゲン酸の具体例としては、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、フッ化水素酸(HF)が挙げられる。アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物の具体例としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム等が挙げられる。2種以上の溶解助剤を組み合わせて良い。
【0029】
消臭組成物中に含まれる溶解助剤によって、除菌効果を長期化させうる。つまり、溶解助剤が消臭組成物中に含まれていると、消臭組成物中においてヨウ素が長期間に渡って保持され、ヨウ素による除菌作用が、長期間に渡って保持されうる。このことは、製品としての消臭組成物の耐用期限が長くなり、製品の品質が向上することを意味する。
【0030】
溶解助剤は、好ましくは、ヨウ素原子を有する化合物である。ヨウ素はCDI中に含まれる成分であり、CDIを用いた除菌に悪影響を及ぼす恐れがない。また、本発明の洗浄組成物を工業的に大量に用いる実施態様を想定すると、処理後の回収の観点から、塩素や臭素といった他のハロゲンが混入しないことが好ましい。ヨウ素原子を有する化合物の中では、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムが好ましい。ヨウ化ナトリウムおよびヨウ化カリウムの溶解度は非常に高く、それぞれ184.1g/100ml(水)および148.2g/100ml(水)である。これは、溶解度が35.9g/100ml(水)である塩化ナトリウムと比較しても、高い数値である。かような高い溶解度を有するヨウ化ナトリウムおよびヨウ化カリウムは、凝固点を所望する温度にまで低下させる上で便利である。
【0031】
溶解助剤は、ヨウ素の溶解を補助するものであれば、上記例示した化合物に限定されない。ただし、組成物をアルカリ性にする化合物は避けるべきである。組成物がアルカリ性であると、ヨウ素(I2)がイオン化してしまい、消臭組成物の除菌効果が薄れる。
【0032】
本発明の消臭組成物においては、溶解助剤の濃度は、好ましくは、組成物の全質量に対して0.1〜10質量%である。溶解助剤が少なすぎると、溶解助剤による効果が十分に得られない虞がある。一方、10質量%を超えると、未溶解が発生したり、相対的に界面活性剤やCDIの存在量が減少したりするため、消臭作用および除菌作用が低下する。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0033】
(d)アルキレングリコールについて
本発明の消臭組成物は、必要に応じて、アルキレングリコールを含む。CDIがアルキレングリコール中で安定に存在するため、アルキレングリコールを消臭組成物中の溶媒として用いることによって、消臭組成物においてCDIを長期間、安定に保持しうる。特に、CDIとして、β−シクロデキストリンをシクロデキストリンとして含むヨウ素−シクロデキストリン包接化合物であるBCDIが用いられる場合には、アルキレングリコールが消臭組成物中に含まれることが好ましい。
【0034】
また、アルキレングリコールを消臭組成物中に含ませることによって、消臭組成物の凝固点を低下させうる。例えば、本発明の消臭組成物が、家庭用の消臭剤として用いられる水性の消臭剤である場合、消臭剤は四季を通じて使用される。地域によっては、当然、気温が氷点下になることがある。このような場合に、消臭組成物が凍結してしまうと、消臭組成物を使用できない。一般には、室内は温暖であることが多いが、搬送中は、外気に曝される。消臭組成物が凍結し、体積の膨張に伴い容器が破裂する虞もある。アルキレングリコールを消臭組成物に含ませて、消臭組成物の凝固点を低下させることによって、消臭組成物の使用の幅が拡がる。特に、CDIとしてBCDIが用いられる場合には、BCDIの溶解性向上および凝固点低下の双方の効果が発現しうるため、有効である。
【0035】
アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられる。これらの2種以上が併用されてもよい。これらの中では、入手容易性やCDIの安定性を考慮すると、プロピレングリコールが好ましい。
【0036】
本発明の消臭組成物におけるアルキレングリコールの濃度は、組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%である。0.01質量%未満であると、アルキレングリコールによる効果が十分に発現しない虞がある。一方、5質量%を超えると、相対的に他成分の量が減少するため、消臭作用および除菌作用が低下する。ただし、この範囲に限定されるわけではない。
【0037】
(f)その他の成分について
本発明の消臭組成物は、必要に応じて、上記(a)〜(e)の成分以外の成分を含んでいてもよい。例えば、精製水、イオン交換水等の水;エタノール、メタノール等の低分子量アルコールなどが、溶媒として用いられる。ゲル状の消臭組成物を製造する場合には、ゲル化剤が用いられうる。
【0038】
製品に付加価値を付与するために、保湿剤、有機溶剤、染料、酸化防止剤、香料などが、本発明の消臭組成物中に配合されてもよい。これらの成分は、一般的には、消臭組成物の質量に対して、それぞれ1質量%以下の量で存在する。
【0039】
本発明の消臭組成物は、消臭剤として用いられる。好ましい実施態様としては、液状の消臭組成物を用いてなる、消臭スプレーが挙げられる。消臭スプレーを用いて消臭するには、臭気の原因に対して本発明の消臭組成物を噴霧すればよい。消臭組成物が噴霧される対象は、特に限定されない。例えば、臭気を発しているソファ、靴、マット、衣服、蒲団などの繊維;臭気を発している気体などに噴霧されうる。
【0040】
本発明の消臭組成物は、従来用いられていた消臭組成物に、所定のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を添加すれば製造できるため、従来用いられていた製造工程を、本発明の消臭組成物の製造工程として活用できる。この点は、工業的に本発明を適用する上で、大きな利点である。ただし、本発明の消臭組成物の製造方法が、かような製造方法に限定されるわけではなく、特別な手法を用いずに製造されうる。
【0041】
【実施例】
本発明の効果について、以下の実施例を用いてより詳細に説明する。しかしながら、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0042】
<実施例1>
シクロデキストリンを含む液状の消臭剤(P&G社製、商品名「ファブリーズ」;300g)に、アルカリ金属のハロゲン化物であるヨウ化カリウム(KI;1.5013g)を溶解させた。さらに、溶液に、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(BCDI)を含むプロピレングリコール溶液(0.0618g)を加えて、さらにプロピレングリコール(0.6612g)を添加し、均一に撹拌し、有効ヨウ素量4ppmの消臭組成物1を得た。用いたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物中のヨウ素含有量は、20質量%であった。また、BCDIとプロピレングリコール(PG)との質量比は、BCDI:PG≒1:9とした。
【0043】
消臭組成物1におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を3ヶ月間続けたが、ヨウ素色の退色は確認されなかった。また、消臭組成物1を−5℃の環境下に放置したが、消臭組成物1は凍結しなかった。結果を表1に示す。
【0044】
<実施例2>
シクロデキストリンを含む液状の消臭剤(P&G社製、商品名「ファブリーズ」;100g)に、アルカリ金属のハロゲン化物であるヨウ化カリウム(KI;0.5028g)を溶解させた。さらに、溶液に、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(BCDI)を含むプロピレングリコール溶液(0.1162g)を加えて、さらにプロピレングリコール(1.2g)を添加し、均一に撹拌し、有効ヨウ素量20ppmの消臭組成物2を得た。用いたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物中のヨウ素含有量は、20質量%であった。また、BCDIとプロピレングリコール(PG)との質量比は、BCDI:PG≒1:9とした。
【0045】
消臭組成物2におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を3ヶ月間続けたが、ヨウ素色の退色は確認されなかった。また、消臭組成物2を−5℃の環境下に放置したが、消臭組成物2は凍結しなかった。結果を表1に示す。
【0046】
<実施例3>
シクロデキストリンを含む液状の消臭剤(P&G社製、商品名「ファブリーズ」;100g)に、アルカリ金属のハロゲン化物であるヨウ化カリウム(KI;0.5021g)を溶解させた。さらに、溶液に、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(BCDI)を含むプロピレングリコール溶液(0.2037g)を加えて、さらにプロピレングリコール(2.8g)を添加し、均一に撹拌し、有効ヨウ素量40ppmの消臭組成物3を得た。用いたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物中のヨウ素含有量は、20質量%であった。また、BCDIとプロピレングリコール(PG)との質量比は、BCDI:PG≒1:9とした。
【0047】
消臭組成物3におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を3ヶ月間続けたが、ヨウ素色の退色は確認されなかった。また、消臭組成物3を−5℃まで冷却したが、消臭組成物3は凍結しなかった。結果を表1に示す。
【0048】
<実施例4>
プロピレングリコールを含まない以外は、実施例1と同様の組成からなる消臭組成物4を調製した。
【0049】
消臭組成物4におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を3ヶ月間続けたが、ヨウ素色の退色は確認されなかった。また、消臭組成物4を冷却したところ、消臭組成物4は−1〜0℃で凍結した。結果を表1に示す。
【0050】
<比較例1>
溶解助剤としてのヨウ化カリウムを含まない以外は、実施例1と同様の組成からなる消臭組成物5を調製した。
【0051】
消臭組成物5におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を3ヶ月間続けたところ、1日でヨウ素色が退色した。また、消臭組成物5を−5℃まで冷却したが、消臭組成物5は凍結しなかった。結果を表1に示す。
【0052】
<比較例2>
溶解助剤としてのヨウ化カリウム、および、プロピレングリコールを含まない以外は、実施例1と同様の組成からなる消臭組成物6を調製した。
【0053】
消臭組成物6におけるヨウ素の保持量を確認すべく、室温かつ密閉系で放置された消臭組成物の目視観察を続けたところ、1日でヨウ素色が退色した。また、消臭組成物6を冷却したところ、消臭組成物6は0〜2℃で凍結した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、本発明の消臭組成物は、長期間に渡って除菌作用が維持される。また、アルキレングリコールによって、消臭組成物の凝固点が低下する。
【0056】
【発明の効果】
本発明の消臭組成物においては、長期間に渡ってヨウ素が消臭組成物中に保持されうる。このため、消臭組成物を用いた製品の耐用期間が長期化する。
Claims (5)
- (a)シクロデキストリン、(b)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ならびに(c)ハロゲン酸、アルカリ金属のハロゲン化物、およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択される溶解助剤を含む、消臭組成物。
- 前記ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を形成するシクロデキストリンは、β−シクロデキストリンであることを特徴とする、請求項1に記載の消臭組成物。
- 前記溶解助剤は、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムであることを特徴とする、請求項1または2に記載の消臭組成物。
- さらに、(d)アルキレングリコールを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の消臭組成物。
- 前記アルキレングリコールは、プロピレングリコールであることを特徴とする、請求項4に記載の消臭組成物。
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