JP2006297075A - 皮膚貼着材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電子線照射による滅菌工程後であっても優れた抗菌性を発揮できる皮膚貼着材を提供する。
【解決手段】基材上に、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を抗菌剤として含む粘着層を設けてなる皮膚貼着材。
【選択図】なし

Description

本発明は、皮膚貼着材およびその製造方法に関するものである。特に、本発明は、電子線照射による滅菌工程を経た後であっても十分な抗菌性を発揮できる皮膚貼着材、特に外科手術に使用される手術用の覆布(ドレープ)、絆創膏、サージカルテープおよびその製造方法に関するものである。
近年、清潔志向や安全性志向が高まり、衣料等の繊維製品、キッチン・バス・トイレ用品をはじめとして電気製品、文具、玩具、自動車等に「抗菌性」を付与した加工製品が増加している。例えば、無機系抗菌剤をポリ塩化ビニル樹脂主体とするフィルム基材に配合する抗菌性粘着テープがある(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の粘着テープは、屋内配線の結束や端末処理などへの用途を目的として、基材に抗菌剤を添加することによりフィルムにカビ・細菌に汚染されないようにしている。
一般的に使用されている抗菌剤には、無機系、天然有機系、および合成有機系の抗菌剤がある。無機系抗菌剤としては、銀、銅、亜鉛等の金属およびその化合物、酸化物光触媒系がある。金属およびその化合物系の抗菌剤は、一般に坦持体として使用され、耐熱性があり、抗菌効果が半永久的であり、また、抗菌スペクトルが広い等の長所があるが、有機系抗菌剤に比較して抗菌効果が弱く、同じ効果を得るには添加量を増やす必要がある。また、銀系抗菌剤は加工時の熱によりポリマー中の添加剤との作用により変色する場合がある。さらに、実際に抗菌性を発現するのは粘着剤の表面に存在する抗菌剤のみで、埋没している抗菌剤は活用されないと言った短所がある。また、酸化物光触媒系は、アナターゼ型酸化チタンが知られており、光照射による電荷分離を利用して空気中の水蒸気や酸素と反応して活性酸素を発生し、強力な酸化力で抗菌性を発現する。従って、光の照射がなければ効果が無いという短所がある。
また、天然有機系の抗菌剤には、ヒノキチオール系、キトサン系、唐辛子抽出物などがあり、食品添加物として使用されたり、食品包装材料等に用いられる。天然有機系の長所は安全性が最も高いこと、微生物の増殖防止の緩やかな抗菌性であるが、有効期間が極めて短く、耐熱性がないため、樹脂等と混合して膜を形成(成形)する時などは熱処理が必要であるため使用できないという短所がある。
次に、合成有機系の抗菌剤には、含窒素複素環系、フェノール系、ビグアナイド系、ニトリル系、ハロゲン系、アニリド系、有機ケイ素四級アンモニウム塩系、四級アンモニウム塩系、アミノ酸系、有機金属系、エステル系等がある。これらは長年の使用実績があり、抗菌剤の8割を占め、種類も多い。合成有機系抗菌剤は、少量添加で効果を発揮し、即効性があり、比較的安価である長所がある。しかしながら、十分な安全性が確保されておらず、毒性が強いもの、薬剤が水に溶けたり、揮発性があるものがあり、特に医療用途に適したものが少ない。また、合成有機系の抗菌剤は、水に分解されやすく寿命が短く、有効期間が短いといった短所がある。
一方、ヨウ素は優れた広スペクトル抗菌性を示し、人体に対して比較的安全であり、従来から消毒剤として広く使用されている。ただし、ヨウ素は特有の臭気と色があり、昇華するので取扱いの点で問題がある。そこで、取扱い易くするため、ヨウ素をポリビニルピロリドンとの錯体にしたポビドンヨードが使用されている。しかしながら、ヨウ素自体は揮発性があるので保存性に問題があり、比較的短時間で効果が失われ抗菌性が持続されないという問題がある。
上記加工製品に加えて、従来、開腹、開胸、虫垂炎等の外科手術では、患者の身体を覆い、手術野を露出させるための開窓部が設けられた手術用覆布で患者の体を覆うことが行なわれている。外科手術では、臓器を露出させるため、非常に高度な滅菌状態に維持されることが要求される上、近年、院内感染が問題視されているため、手術用覆布、特に人体表面と接触しかつ切開部分の近くに位置する開窓部の人体表面への固定部分は特に高い抗菌性が要求されている。このため、この固定(粘着)部分には抗菌剤が含まれていることが多い。また、同様にして、救急絆創膏、サージカルバンド、ドレッシングテープ等の医療用テープの粘着層にも、雑菌の増殖により傷口の治癒を遅らせたりまたは傷を悪化させることを防止するために、抗菌剤が含まれていることが多い。
このような医療用テープや当該テープに使用される粘着剤は、いうまでもなく、場合によっては命にかかわるものである。このため、上記一般的な加工製品に比して、滅菌性の管理が厳しい。このような点を考慮して、医療用テープや当該テープに使用される粘着剤がいくつか報告されている。例えば、特許文献2には、金属銀を酸化チタンに担持させ、これをアクリル系粘着剤に配合して粘着剤を調製し、これを離型紙上に塗工して乾燥させたものを、基材に転写することにより医療用テープを製造することが記載されている。さらに、抗菌剤としてヨウ素を使用するものも報告されており(例えば、特許文献3および4)、特許文献3〜6には、粘着剤にヨウ素(またはヨウ素/ヨウ化ナトリウム)−ポリビニルピロリドン複合物(PVP−I)を抗菌剤として2−エチルヘキシルアクリレート/N−ビニルピロリドン粘着物配合し、これを遊離ライナーに塗布、乾燥して乾燥フィルムを作製し、この乾燥フィルムをポリエチレンフィルムにラミネートすることが記載されている。
特開2002−47460号公報 特開2001−137279号公報 特開昭56−22728号公報 特許第1923028号明細書 特許第1697910号明細書 特許第1894591号明細書
しかしながら、特許文献2に記載される医療用テープは、金属銀を使用しているため、抗菌剤濃度が増えるに従い、粘着剤との相溶性が低下し、粘着物性も低下し、抗菌性と粘着物性との良好なバランスがとりにくいという問題がある。また、特許文献3〜6に記載される粘着テープは、前述のようにヨウ素は優れた抗菌性を発揮するものの、それ自体揮発するので、保存中にヨウ素特有の臭気がしたり、またテープが着色したりするという問題がある上、保存性に問題があり、比較的短時間で効果が失われ抗菌性が持続されないという問題がある。また、上記したような手術用覆布は一般的に電子線照射により滅菌されているが、電子線照射による滅菌工程を経ると、ヨウ素は分解してその抗菌特性が大きく低下してしまう。
したがって、本発明は、従来事情を鑑みてなされたものであり、一般的に医療分野で滅菌工程に使用される電子線照射後であっても優れた抗菌性を発揮できる皮膚貼着材を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、生物に対して安全であり、持続性があり、消臭性に優れ、微生物に対して幅広い抗菌スペクトルを有し、数秒〜数分で殺菌し、かつ耐性ができにくい皮膚貼着材を提供することである。
本発明の別の目的は、このような皮膚貼着材を、抗菌性を低下させることなく、容易に製造できる方法を提供することである。
本発明者らは、上記諸目的を達成するために鋭意検討を行なったところ、シクロデキストリンヨウ素包接体は、塩素や臭素よりも抗菌力が強く(塩素の3倍)、かつ酸化作用、腐食性が少ないため、生物に対して安全である点;ヨウ素の除放性を有するので、持続性がある点;ヨウ素特有の臭気が無く、シクロデキストリンの包接作用とヨウ素の酸化作用・ヨウ素化作用により優れた消臭性を有する点;微生物に対して幅広い抗菌スペクトルを有し、数秒〜数分で殺菌し、かつ耐性ができにくい点を考慮して、抗菌剤としてシクロデキストリンヨウ素包接体を使用することに着目した。本発明者らは、まず、ヨウ素−シクロデキストリン包接化物内へのヨウ素の包接量の調整が容易であるため、従来最も一般的に使用されるβ−シクロデキストリンヨウ素包接体を抗菌剤として使用して、一般的に粘着層に使用されるエタノールやアセトンに溶かしたところ、ヨウ素は包接から外れて飛散し、β−シクロデキストリンは溶液に沈殿してしまい、粘着層には使用できないことが判明した。このため、種々のシクロデキストリンヨウ素包接体についてさらに鋭意検討を行なった結果、シクロデキストリンのメチル化体でヨウ素を包接したメチルシクロデキストリンヨウ素包接体は、ヨウ素の包接を維持したまま、メタノール、エタノール、プロピレングリコールなどの溶液中に溶解できることを見出した。また、このメチルシクロデキストリンヨウ素包接体を使用して粘着テープを作製し、これに電子線を照射してみたところ、電子線はほとんどがシェルの役割を果たしているシクロデキストリンに照射されて、中のヨウ素にまでは届かないため、ヨウ素が分解せず、その抗菌性はほとんど低下しないことが判明した。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記目的は、基材上に、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を抗菌剤として含む粘着層を設けてなる皮膚貼着材によって達成される。
本発明の別の目的は、メタノール、エタノール及びプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも一種の溶剤に溶解し、この溶液を基材に塗布する段階を有する、本発明の皮膚貼着材の製造方法によって達成される。
本発明の皮膚貼着材は、抗菌剤としてメチルシクロデキストリンヨウ素包接体を含む粘着層を有することを特徴とする。このため、本発明の皮膚貼着材は、包接されたヨウ素により、幅広い抗菌スペクトル、高い殺菌能、耐性菌が発生しにくいなど、優れた抗菌特性を長期間発揮することができる。また、本発明では、ヨウ素はシクロデキストリンに包接されているので、ヨウ素特有の臭気が無く、かつ経時的に徐々にヨウ素を放出することができるため、長期間優れた抗菌性を発揮することができる。このため、本発明の皮膚貼着材は、外科手術など一時的に使用される手術用の覆布(ドレープ)、絆創膏、サージカルテープのみならず、より長期間の抗菌性が要求される長期留置カテーテルの固定用のテープにも、患者に不快感を与えることなく、好適に使用できる。
また、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体は、従来粘着層の形成に使用されてきたメタノール、エタノール、プロピレングリコール等の溶剤中に、ヨウ素の包接が外れることなく、溶解できるため、従来の粘着層の形成と同様の方法がそのまま適用でき、また、粘着層の基材上への形成も非常に簡便に行なうことができる。
本発明の第一は、基材上に、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を抗菌剤として含む粘着層を設けてなる皮膚貼着材に関するものである。本発明の皮膚貼着材に抗菌剤として使用されるメチルシクロデキストリンヨウ素包接体は、滅菌工程時に電子線を照射しても、抗菌性がほとんど損なわれない。このようにメチルシクロデキストリンヨウ素包接体に電子線を照射しても抗菌性がほとんど損なわれない理由は明らかではないが、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体は、シクロデキストリンがヨウ素をすっぽり中に取り囲んでいる構造をしているため、ヨウ素を包接しているシクロデキストリンが防御壁の役割を果たして、電子線があたるのを防いでいるためであると考えられる。また、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体は、包接されたヨウ素により、幅広い抗菌スペクトル、高い殺菌能、耐性菌が発生しにくいなど、優れた抗菌特性を発揮することができる。上記利点に加えて、粘着層に、ヨウ素がシクロデキストリンに包接されたメチルシクロデキストリンヨウ素包接体を使用しているので、ヨウ素特有の臭気が無く、かつ経時的に徐々にヨウ素を放出することができるため、長期間優れた抗菌性を発揮することができる。本発明の皮膚貼着材は、外科手術など一時的に使用される手術用の覆布(ドレープ)、絆創膏、サージカルテープのみならず、より長期間の抗菌性が要求される長期留置カテーテルの固定用のテープに対しても、患者に不快感を与えることなく、好適に使用できる。
本発明に係るメチルシクロデキストリンヨウ素包接体は、特開昭51−88625号公報、特開2002−193719号公報等の、公知の方法によって製造できる。好ましくは、特開2002−193719号公報に記載の方法が使用される。すなわち、ヨウ素溶解助剤含有溶液に、ヨウ素1モル:ヨウ素含有助剤1.5〜5モルの割合で溶解し、これにヨウ素1モルに対して0.67〜100モルのメチルシクロデキストリンを添加してヨウ素−デキストリン包接化合物を析出させることによって製造できる。
本発明で使用するメチルシクロデキストリンは、メチル−α−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン若しくはメチル−γ−シクロデキストリンのいずれの形態でもよく、またはこれらの2種若しくは3種の混合物の形態であってもよい。粘着層を形成する際の材料の配合の容易さなどを考慮するすると、溶剤溶解性に優れたメチル−β−シクロデキストリンが好ましく使用される。
または、本発明に係るメチルシクロデキストリンヨウ素包接体は、市販品を使用してもよい。具体的には、MCDI(日宝化学株式会社製)などが挙げられる。
本発明において、抗菌剤としてのメチルシクロデキストリンヨウ素包接体の添加量は、皮膚貼着材に所望の抗菌性を付与できる量であれば特に制限されない。具体的には、抗菌剤としてのメチルシクロデキストリンヨウ素包接体の添加量は、粘着層を構成する粘着剤の不揮発分に対して、0.01〜20質量%、より好ましくは1〜18質量%、最も好ましくは5〜15質量%であることが好ましい。この際、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体の添加量が上記範囲の下限を下回ると、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体の量が少なすぎて、所望の抗菌性が達成できない可能性があり、逆に上記範囲の上限を超えても、添加に見合う抗菌性が得られず経済的でないのに加えて、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体の量が粘着剤に対して多く含まれすぎて、粘着物性が低下する可能性がある。
本発明によると、電子線による滅菌処理を施しても、シクロデキストリン部分がシェルの役割を果たして電子線がシクロデキストリン内のヨウ素に到達するのが有効に防止できる。このため、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体の添加量が少量であっても、大腸菌や黄色ブドウ球菌等の種々の微生物に対する抗菌性を十分発揮できる。このため、一般的な使用状況下(例えば、製造後一般的な期間で使用する、通常の電子線照射滅菌による場合など)では、抗菌剤としてのメチルシクロデキストリンヨウ素包接体の添加量は、粘着層を構成する粘着剤の不揮発分に対して、0.01〜5質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、最も好ましくは1〜3質量%程度である。なお、上記添加量は、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体の粘着層での配置のさせ方によって異なる。例えば、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を粘着剤層表面に付着させる、あるいは粘着層を2層構造にし、皮膚と接触する層側のみにメチルシクロデキストリンヨウ素包接体を添加し、かつメチルシクロデキストリンヨウ素包接体を含む層及び含まない層の粘着層を構成する粘着剤の不揮発分の比が1:9である場合では、粘着層を構成する粘着剤の不揮発分に対して、0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%、最も好ましくは0.1〜0.3質量%であることが好ましい。または、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を粘着剤層に混ぜて使用する場合には、抗菌剤としてのメチルシクロデキストリンヨウ素包接体の添加量は、粘着層を構成する粘着剤の不揮発分に対して、0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、最も好ましくは1〜3質量%であることが好ましい。
また、皮膚貼着材を比較的高い照射強度で電子線照射による滅菌を行なう場合には、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体中のヨウ素が一部失活してしまう可能性がある。また、皮膚貼着材の分野では品質保証期間は一般的に常温で5年程度であるため、皮膚貼着材を品質保証期間近くまで長期間貯蔵した後に使用する場合には、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体中のヨウ素が一部失活してしまう可能性がある。さらに、本発明の皮膚貼着材は、以下に詳述するような製造工程中に塗工乾燥を行なう。一般的には、ヨウ素は、シェルとしてのメチルシクロデキストリンの存在により、単体の場合に比して、加熱条件下でもヨウ素が飛散しにくくなっているものの、温度が高い場合には、このような塗工乾燥によってヨウ素の一部が揮発してしまう場合もある。さらにまた、皮膚貼着材は、通常、手術するために消毒した部分など、一度イソジン等で消毒した後ハイポアルコールで脱色した部分に適用され、製品の注意書きには十分乾燥してから皮膚貼着材を貼るように記載されている。しかし、実際の現場では、手術中に血液やリンパ液等の体液と粘着面とが接触したりする状況が多々あり、このような場合にはヨウ素が失活してしまう。このため、このような点を考慮すると、上記量より多くの添加量であることが好ましい場合がある。具体的には、例えば、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を粘着剤層表面に付着させる、あるいは粘着層を2層構造にし、皮膚と接触する層側のみにメチルシクロデキストリンヨウ素包接体を添加し、かつメチルシクロデキストリンヨウ素包接体を含む層及び含まない層の粘着層を構成する粘着剤の不揮発分の比が1:9である場合では、粘着層を構成する粘着剤の不揮発分に対して、1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%、最も好ましくは5〜10質量%であることが好ましい。または、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を粘着剤層に混ぜて使用する場合には、抗菌剤としてのメチルシクロデキストリンヨウ素包接体の添加量は、粘着層を構成する粘着剤の不揮発分に対して、2〜20質量%、より好ましくは5〜20質量%、最も好ましくは10〜20質量%であることが好ましい。このような範囲であれば、上記したような厳しい条件下であっても十分な抗菌活性を発揮できる。なお、上記メチルシクロデキストリンヨウ素包接体の添加量は、粘着製品が生産された(離型紙上に粘着剤組成物を一定厚みに塗工して、熱風乾燥機内で乾燥させる工程を含む)直後の量を示す。
また、本発明に係る粘着層は、上記メチルシクロデキストリンヨウ素包接体に加えて、粘着性を付与するための粘着性物質を含む。この際使用できる粘着性物質としては、特に制限されず、公知の粘着剤が使用できる。例えば、アクリル系重合体、シリコーン系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリビニル系重合体、ポリエステル系重合体、天然ゴム、合成ゴム、ビニルエーテル系重合体等の重合体などが好ましく使用できる。この際、ゴム系粘着性物質としては、例えば、ネオプレンゴム、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴムが使用できる。また、アクリル系粘着性物質としては、例えば、通常、ベースポリマー、コモノマー、官能基含有モノマー等から構成され、シリコーン系、ポリビニル系、ポリエステル系、ポリウレタン系の粘着性物質は、通常、ベースポリマー、軟化剤等から構成される。
これらの粘着性物質は、水若しくは溶剤系の溶液型または懸濁液型、ホットメルト型、固形糊型、反応系型等の様々な使用状態で使用できる。
または、粘着性物質として、少なくとも3本の鎖状ポリマー部分がメルカプト基を中心にして放射状に延びている星型構造の複数個が互いに鎖状ポリマー部分で繋がっており、前記ポリマー部分の全構造単位の50〜100質量%が炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステル構造単位である星型アクリル系ブロックポリマー(以下、単に「星型アクリル系ブロックポリマー」とも称する)が好ましく使用される。当該ポリマーは、炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの残存量が全不揮発分に対して900ppm以下であることが特に好ましい。このように炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの残存量を少なくすることによって、ポリマーは、架橋剤が存在しなくとも粘着力と凝集力との優れたバランスを発揮できる。このため、このようなポリマーを本発明の皮膚貼着材の粘着層に使用することによって、得られる皮膚貼着材は、皮膚貼着用として安全面、性能面ともに特に優れたものとなる。
上記星型アクリル系ブロックポリマーは、少なくとも3本の鎖状ポリマー部分がメルカプト基を中心にして放射状に延びている星型構造の複数個が互いに鎖状ポリマー部分で繋がった構造を有する。また、星型アクリル系ブロックポリマーは、当該ブロックポリマーが有する鎖状ポリマー部分の全構造単位の50〜100質量%が炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステル構造単位である。鎖状ポリマー部分の全構造単位中、炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステル構造単位の含有割合は、好ましくは、60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは90〜100質量%である。鎖状ポリマー部分の全構造単位中、炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステル構造単位の含有割合が50質量%未満の場合、粘着性を十分に付与できない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、ポリマー部分の「構造単位」は、ポリマーを構成する重合性モノマー由来の構造からなる単位を意味する。
炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステル構造単位に対応する重合性モノマー、すなわち、炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸イソオクチルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸イソノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが挙げられる。本発明の効果をより十分に発揮するためには、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸イソオクチルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルがより好ましく、アクリル酸オクチルエステル、アクリル酸イソオクチルエステル、アクリル酸ノニルエステル、アクリル酸デシルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステルがさらに好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが特に好ましい。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
星型アクリル系ブロックポリマーが有する鎖状ポリマー部分は、炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の重合性モノマー(その他の重合性モノマー)由来の構造単位を全構造単位の50質量%未満の含有割合で含んでいてもよい。
その他の重合性モノマーとしては、ラジカル重合により単独重合または共重合が可能な重合性モノマーが挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの炭素数6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレンなどのスチレン系単量体;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体;メチルビニルエ−テル、エチルビニルエ−テル、イソブチルビニルエ−テルなどのビニルエ−テル系単量体;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、フマル酸のジアルキルエステル;マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、マレイン酸のジアルキルエステル;イタコン酸、イタコン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸のジアルキルエステル;N−ビニル−2−ピロリドンなどのビニルピロリドン;メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレートなど、下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル;(メタ)アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルケトン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾ−ルなどのその他のビニル化合物などが挙げられる。
Figure 2006297075
上記式(1)において、X及びYは、それぞれ独立して、水素原子(H)またはメチル基(−CH)を表し;Zは、炭素原子数1〜18のアルキル基を表し;およびnは、2〜12の整数である。
粘着性、凝集性及び粘着力と凝集力とのバランスをより十分に発揮するためには、その他の重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニルを併用することが好ましい。
また、その他の重合性モノマーとしてN−ビニル−2−ピロリドン(NVP)などのビニルピロリドンを用いると、得られる星型アクリル系ブロックポリマーの皮膚刺激性が少なくなる。その他の重合性モノマーとしての(メタ)アクリル酸は、得られる星型アクリル系ブロックポリマーに凝集力を付与することができるが、皮膚刺激性が強く、最終製品(例えば、皮膚貼着材)に極微量でも残存していると、敏感な皮膚を持つ人に対してはかぶれを引き起こす原因となる。N−ビニル−2−ピロリドンなどのビニルピロリドンは、得られる星型アクリル系ブロックポリマーに凝集力を付与することができるとともに、(メタ)アクリル酸よりも皮膚刺激性が低いという利点を有する。
また、その他の重合性モノマーとして上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステルを用いると、得られる星型アクリル系ブロックポリマーの透湿性を向上させることができる。一般に、皮膚貼着材による皮膚のかゆみやかぶれの原因のひとつとして、皮膚から蒸発する水分(水蒸気)が皮膚貼着材中の粘着層で遮断されて内部で蒸れることが挙げられる。上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステルは、得られる星型アクリル系ブロックポリマーの透湿性を向上させることができ、粘着材として皮膚に貼着した際の皮膚のかゆみやかぶれを低減させることができるという利点を有する。この利点を発現させるために、その他の重合性モノマーとして上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステルを含む場合は、そのモノマー由来の構造単位を星型アクリル系ブロックポリマー全構造単位の1〜45質量%で含むことが好ましく、10〜40質量%で含むことがより好ましい。上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステルの含有量が1質量%未満の場合には、透湿性向上の効果がなく、45質量%を超える場合には、粘着物性バランスが崩れてしまう。
上記その他の重合性モノマーは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
星型アクリル系ブロックポリマーは、炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの残存量が全不揮発分に対して900ppm以下であり、好ましくは700ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは400ppm以下、特に好ましくは300ppm以下、最も好ましくは200ppm以下である。炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの残存量が全不揮発分に対して900ppm以下であることによって、粘着力と凝集力とのバランスが優れた皮膚貼着材を形成することができ、しかも、皮膚刺激性が極めて少ないために、皮膚貼着材に非常に好ましく適用できる。
星型アクリル系ブロックポリマーは、その特徴的な星型ブロックポリマー構造のためにミクロ層分離構造による物理的架橋が発現でき、架橋剤を使用しなくても粘着力と凝集力とのバランスを実現できる。
星型アクリル系ブロックポリマーの製造方法は、多価メルカプタンの存在下で重合性モノマーの多段階ラジカル重合を行う従来公知の星型アクリル系ブロックポリマーの製造方法において、重合性モノマーの全使用量中の50〜100質量%を炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとするとともに、前記多段階の中の少なくとも1つの素段階において後述する多官能性モノマーを用い、重合後における炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの残存量を全不揮発分に対して900ppm以下とするように重合条件を適宜設定すればよい。以下、星型アクリル系ブロックポリマーを得るために特に適した製造方法について説明する。
星型アクリル系ブロックポリマーを得るために特に適した製造方法としては、多価メルカプタンを用いた多段階ラジカル重合方法において、その多段階の中の少なくとも1つの素段階において後述する多官能性モノマーを重合性モノマーと併用するとともに、反応系への全重合性モノマーの供給が完了した後に重合開始剤をさらに後添加する方法が挙げられる。このように後添加する重合開始剤を本発明では「ブースター」と称する。
多価メルカプタンの存在下で第1重合性モノマーのラジカル重合を行うと、多価メルカプタンのメルカプト基を発端として第1重合性モノマーがラジカル重合し、少なくとも3本の鎖状ポリマー部分がメルカプト基を中心にして放射状に延びている第1星型構造を構成する。その際、多価メルカプタンの一部のメルカプト基はこのラジカル重合の発端とならずに残る。そこで、さらに第2重合性モノマーを加えてラジカル重合を行うと、多価メルカプタンの残ったメルカプト基を発端として第2重合性モノマーがラジカル重合し、第1星型構造とは異なる第2星型構造を構成する。そして、このように多段階(本例では2段階)に行われるラジカル重合の際に、その少なくとも一つの重合段階において多官能性モノマーを併用すると、上記のようにして得られる星形構造同士が多官能性モノマーを介して結合され、星型ブロックポリマーとなる。このとき、ラジカル重合時に副成する重合性モノマーのホモポリマ−(メルカプト基を発端として生成しない鎖状重合体)も多官能性モノマーを介して、星形ブロックポリマーの鎖状ポリマー部分に結合する効果も期待できる。
星型アクリル系ブロックポリマーを得るためには、前記多段階ラジカル重合方法が2段階からなることが特に好適である。すなわち、多価メルカプタンの存在下で重合性モノマーのラジカル重合を行う第1重合工程と、前記第1重合工程で得られた中間体ポリマーと多官能性モノマーの存在下で重合性モノマーのラジカル重合を行う第2重合工程とを含み、重合性モノマーの全使用量の50〜100質量%が炭素数7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、反応系への全重合性モノマーの供給が完了した後にブースターをさらに後添加する製造方法が特に好適である。
第2重合工程では、第1重合工程で得られたポリマー溶液に第2重合工程で使用する重合性モノマーと多官能性モノマーとを混合して重合を行う。
第2重合工程では、第1重合工程で得られたポリマー溶液と第2重合工程で使用する重合性モノマーと多官能性モノマーとを一括混合して重合してもよいし、第1重合工程で得られたポリマー溶液に第2重合工程で使用する重合性モノマーと多官能性モノマーとを少しずつ添加混合してもよい。
特に好ましい第2重合工程の形態としては、(1a)第1重合工程で得られたポリマー溶液と(1b)第2重合工程で使用する重合性モノマーの一部と(1c)第2重合工程で使用する多官能性モノマーの一部とを必須に含む初期仕込み混合物(1)に重合開始剤を加えて重合を開始した後に、(2a)第1重合工程で得られたポリマー溶液と(2b)第2重合工程で使用する重合性モノマーの残りと(2c)第2重合工程で使用する多官能性モノマーの残りとを必須に含むモノマー混合物(2)および重合開始剤を少しずつ添加混合(好ましくは滴下混合)し、添加混合が終了した後(すなわち、反応系への全重合性モノマーの供給が完了した後)に、ブースターをさらに後添加する形態である。この方法であれば、第1重合工程で得られたポリマー溶液と第2重合工程で使用する重合性モノマーとが十分に均一混合できる。
初期仕込み混合物(1)に重合開始剤を加えて重合を開始した後に、モノマー混合物(2)および重合開始剤を少しずつ添加混合して重合する場合、その添加混合は滴下によることが好ましく、滴下時間は、好ましくは20〜300分、より好ましくは40〜200分、さらに好ましくは60〜120分である。添加混合を行う際の反応系の温度は、30〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましい。
第1重合工程で得られたポリマー溶液(上記(1a)と(2a))は、第2重合工程で用いる際には重合が停止していることが好ましく、その時の重合率は、好ましくは50〜90%、より好ましくは55〜85%、さらに好ましくは60〜80%である。重合を停止させる方法としては、例えば、第1重合工程で得られたポリマー溶液に重合禁止剤を添加する方法やポリマー溶液の温度を下げる方法等を挙げることができる。
重合を停止させるために用いることができる重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノン、メトキシフェノール、6−ターシャリーブチル−2,4−キシレノール、3,5−ジターシャリーブチルカテコールなどのフェノール類;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩;フェノチアジン;などを挙げることができ、これらの1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。その使用量は、第1重合工程で用いた重合性モノマーに対して、好ましくは1〜10000ppm、より好ましくは10〜1000ppm、さらに好ましくは20〜200ppmである。重合禁止剤の使用量が1ppmよりも少ない場合は重合を効率的に停止させることができないおそれがある。一方、10000ppmよりも過剰であると、第2重合工程の重合が開始しなくなるおそれがある。
第1重合工程の重合は、ポリマー溶液の温度を40℃以下に温度を下げれば、実質的に停止させることが可能である。重合開始剤の分解速度は温度に依存しているので、ポリマー溶液の温度が40℃以下になればラジカルがほとんど発生しないからである。重合の停止をより確実にするためには、ポリマー溶液の温度を20℃以下に下げればよい。
以下において、星型アクリル系ブロックポリマーを製造するために好適な方法に用いる原料を詳しく述べる。
本発明で用いることができる重合性モノマーは、その全使用量中の50〜100質量%が炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。全重合性モノマー中の炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、好ましくは、60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは90〜100質量%である。全重合性モノマー中の炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合が50質量%未満の場合、粘着性を十分に付与できない。
炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好ましい具体例は前述した通りであり、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明で用いることができる重合性モノマーは、炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の重合性モノマー(その他の重合性モノマー)を全使用量中の50質量%未満の含有割合で含んでいてもよい。
その他の重合性モノマーとしては、ラジカル重合により単独重合または共重合が可能な重合性モノマーが挙げられ、好ましい具体例は前述した通りであり、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
星型アクリル系ブロックポリマーを製造するために好適な方法では、多価メルカプタンの存在下でのラジカル重合を多段階行うが、各素段階では種類の異なる重合性モノマーを使用することが好ましい。ここに、種類の異なる重合性モノマーとは、化学的構造の違う重合性モノマーを意味するのみでなく、同一化学構造の重合性モノマーの組合せにおいて配合割合の異なる場合をも意味する。各素段階で種類の異なる重合性モノマーを使用する例としては、例えば、メタクリル酸メチル90質量部およびアクリル酸ブチル10質量部からなる第1重合工程で使用する重合性モノマーの組合せに対して、メタクリル酸メチル10質量部およびアクリル酸ブチル90質量部からなる第2重合工程で使用する重合性モノマーの組合せを挙げることができ、この場合は、得られる星型アクリル系ブロックポリマーがTgの大きく異なる鎖状ポリマー部分を有することになるので、本発明の効果を十分に発揮することができ、実用上の性能が高くなる。
上記方法で用いることができる多価メルカプタンとしては、例えば、エチレングリコールジチオグリコレート、エチレングリコールジチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールジチオグリコレート、1,4−ブタンジオールジチオプロピオネートなどエチレングリコールや1,4−ブタンジオールのようなジオールとカルボキシル基含有メルカプタン類のジエステル;トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピオネートなどトリメチロールプロパンのようなトリオールとカルボキシル基含有メルカプタン類のトリエステル;ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートなどペンタエリスリトールのような水酸基を4個有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類のポリエステル;ジペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオプロピオネートなどジペンタエリスリトールのような水酸基を6個有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類のポリエステル化合物;その他水酸基を3個以上有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類のポリエステル化合物;トリチオグリセリンなどのメルカプト基を3個以上有する化合物;2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジンなどのトリアジン多価チオール類;多価エポキシ化合物の複数のエポキシ基に硫化水素を付加させて複数のメルカプト基を導入してなる化合物;多価カルボン酸の複数のカルボキシル基とメルカプトエタノールをエステル化してなるエステル化合物;などを挙げることができ、これらの1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ここで、カルボキシル基含有メルカプタン類とは、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸など、1個のメルカプト基と1個のカルボキシル基を有する化合物を言う。
上記方法で用いることができる多官能性モノマーとは、1分子当たり2個以上の重合性不飽和基を有する化合物である。1分子当たりの重合性不飽和基の個数が2であるモノマーを2官能性モノマーと言い、3であるモノマーを3官能性モノマーと言う。上記方法で用いることができる多官能性モノマーは、星型構造のポリマー同士を結合するという観点からは、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物(すなわち、2官能性以上のモノマー)であることが必要であるが、一般的には重合性不飽和基数は多すぎない方が良く、2官能性モノマーか3官能性モノマーを用いることが好ましい。重合性不飽和基を4個以上有する化合物は、星型構造のポリマー同士を結合する結合構造の数を多くするという観点からはより好ましいと考えられるが、重合性不飽和基数が4個以上であると重合体が網目状の構造を形成して重合中にゲル化が起き易いからである。
上記方法で用いることができる多官能性モノマーを例示すれば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパンなどのジオールと(メタ)アクリル酸のジエステル化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メタ)アクリレートなどの1分子当たり3個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸のポリエステル化合物;アリル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン;などを挙げることができ、これらの1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、多官能性モノマーと多価メルカプタンの質量比(多官能性モノマー質量/多価メルカプタン質量)は2未満が好ましく、0.05〜1.5がより好ましく、0.05〜1がさらに好ましい。この質量比が2以上になると、星型ブロックポリマー1分子当たりに含まれる多官能性モノマーの数が多過ぎるために、ポリマーが網目状の構造を形成して重合中にゲル化を起こすおそれがあるからである。
本発明においては、多官能性モノマーと重合性モノマーの質量比(多官能性モノマー質量/全重合性モノマー質量)は0.05未満が好ましく、0.001〜0.03がより好ましく、0.001〜0.01がさらに好ましい。この質量比が0.05以上だと、製造時の粘度が高くなるために生産性の点で好ましくないからであり、この質量比がさらに多くなると、ポリマーが網目状の構造を形成して重合中にゲル化を起こすおそれがあるからである。ここに、全重合性モノマー使用量とは各段階のラジカル重合で用いられる重合性モノマーの質量を合計したものである。
本発明においては、ラジカル重合は、通常のラジカル重合である塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などで行うことができる。
ラジカル重合を行う際の温度は、いずれの重合工程の重合においても、30〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましい。
ラジカル重合には通常の重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルなどのアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイルなどの過酸化物系重合開始剤;などが使用できる。ラジカル重合において用いる重合開始剤の使用量は、質量比で、多価メルカプタンの1/3以下が好ましく、1/5以下がより好ましい。重合開始剤を上記比率よりも多量に使用すると、メルカプト基から伸びた鎖状ポリマー部分以外に、重合開始剤から伸びたポリマーも多量に生成してしまい、星型ブロックポリマーの生成効率が低下し易く、また、得られた星型ブロックポリマーの物性も低下し易いからである。重合開始剤を反応系に添加する際には、1度に投入してもよいし、分割して投入してもよい。分割投入の場合は、それぞれを一括投入してもよいし、逐次投入してもよい。
ラジカル重合には通常の溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤;などが挙げられ、これらの1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
星型アクリル系ブロックポリマーを製造するための特に好適な方法においては、第2重合工程(3段以上の重合工程を含む場合には最後の重合工程)で使用する重合性モノマーの全ての反応系への供給が完了した後に、ブースターをさらに後添加することが好ましい。ブースターとしては、前述の重合開始剤が挙げられ、これらの1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ブースターの使用量は、特に限定されないが、全重合性モノマーの使用量に対して、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜2質量%、さらに好ましくは0.3〜1質量%である。ブースターの使用量が0.1質量%未満であると、ブースターの効果が発現できず、5質量%を超えると、低分子量物が著しく生成して物性低下を招き、不経済である。ブースターの添加方法としては、特に限定されないが、例えば、連続的に滴下する連続滴下法や、一定時間毎に添加する分割滴下法が挙げられる。ブースターを添加する際の温度としては、特に限定されないが、30〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましい。ブースターの添加時間としては、特に限定されないが、1〜10時間が好ましく、2〜8時間がより好ましい。
ブースターの添加が完了した後は、好ましくは30〜200℃、より好ましくは50〜150℃で、反応系をさらに熟成させてもよい。具体的には、用いる溶剤の還流条件下(前記温度範囲内)で行うことが好ましい。熟成時間は、特に限定されないが、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上である。熟成時間の上限は特に限定されないが、通常は、10時間以内とすることが好ましい。
星型アクリル系ブロックポリマーを製造するための特に好適な方法においては、第2重合工程における重合開始時から前記熟成終了までの総時間が、好ましくは8〜20時間、より好ましくは9〜15時間、さらに好ましくは10〜12時間である。第2重合工程における重合開始時から前記熟成終了までの総時間が8時間よりも短いと、得られる星型アクリル系ブロックポリマーにおいて本発明の効果が十分に発揮できず、特に、炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの残存量が増えてしまうので好ましくない。第2重合工程における重合開始時から前記熟成終了までの総時間が20時間よりも長いと、生産性が著しく低下するとともにエネルギーコストが増大するという問題が生じるとともに、得られる星型アクリル系ブロックポリマーの性能も低下するおそれがあるので好ましくない。
星型アクリル系ブロックポリマーを製造するために好適な方法としては、以上述べた以外にも、星形ブロックポリマーの従来の製造方法において用いられる一般的な方法が適宜用いられてもよい。
星型アクリル系ブロックポリマーは、ポリマー溶液の状態で得られることが一般的である。星型アクリル系ブロックポリマーが溶液の状態で得られる場合、溶液中の不揮発分の含有割合は、好ましくは40〜70質量%、より好ましくは45〜65質量%、さらに好ましくは50〜60質量%である。溶液中の不揮発分の含有割合が40質量%未満であると、溶液粘度が低くなって塗工しにくくなり、また、揮発させる溶剤量が多くなるため、乾燥に多くのエネルギーを必要として不経済である。70質量%を超えると、溶液の粘度が著しく増加するためにハンドリングが悪くなる。また、溶液の粘度は、好ましくは1000〜30000mPa・s、より好ましくは2000〜20000mPa・s、さらに好ましくは3000〜10000mPa・sである。
本発明において、上記粘着性物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらのうち、アクリル系ポリマー及び星型アクリル系ブロックポリマーが好ましく、特に星型アクリル系ブロックポリマーが粘着力と凝集力との優れたバランスにより好ましい。また、本発明に係る粘着層を構成するは、必要に応じて架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、可塑剤、酸化防止剤等が配合されてもよい。必要に応じて使用できる架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、可塑剤、酸化防止剤は、特に制限されず、公知のものが同様にして使用できる。
また、粘着性物質は、その他の添加剤として、皮膚貼着用粘着剤に用いられる従来公知の添加剤を含んでいてもよい。粘着性物質は、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコールに代表される可塑剤;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸架橋体、ポリビニルピロリドンに代表される水溶性あるいは吸水性の樹脂;ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂に代表される粘着性付与樹脂;軟化剤;充填剤;顔料などを含んでいてもよい。
本発明にかかる皮膚貼着用粘着剤が溶剤を含むポリマー溶液の場合、溶液中の不揮発分の含有割合は、好ましくは40〜70質量%、より好ましくは45〜65質量%、さらに好ましくは50〜60質量%である。溶液中の不揮発分の含有割合が40質量%未満であると、溶液粘度が低くなって塗工しにくくなり、また、揮発させる溶剤量が多くなるため、乾燥に多くのエネルギーを必要として不経済である。70質量%を超えると、溶液の粘度が著しく増加するために塗工時のハンドリングが悪くなる。また、溶液の粘度は、好ましくは1000〜30000mPa・s、より好ましくは2000〜20000mPa・s、さらに好ましくは3000〜10000mPa・sである。
本発明では、抗菌剤として使用されるメチルシクロデキストリンヨウ素包接体は、メタノール、エタノール、プロピレングリコール等の従来の医療用テープでの粘着層の形成に使用されるのと同様の溶剤に溶解することができる。このため、基材上への粘着層の形成方法は、特に制限されず、従来公知の方法が適用できる。したがって、本発明の第二は、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を、メタノール、エタノール及びプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも一種の溶剤に溶解し、この溶液を基材に塗布する段階を有する、本発明の皮膚貼着材の製造方法に関するものである。
本発明においては、粘着層が基材上に形成されて、皮膚貼着材が製造される。ここで、皮膚貼着材は、抗菌性が要求される様々な用途で使用できるが、例えば、手術用の覆布(ドレープ)、絆創膏、サージカルテープ、ドレッシングテープ、長期留置カテーテルの固定用のテープ、救急絆創膏(First−Aid Unit Bandage)、及び傷口閉止テープ(Wound Closure Strip)などが挙げられる。
本発明において、基材は、いずれの形態であってもよいが、手術用の覆布(ドレープ)、絆創膏、サージカルテープなどの医療用途に使用される場合には、テープ状またはシート状であることが好ましい。また、基材は、粘着層をその上に設けることができるものであれば特に限定されないが、皮膚貼着を目的とするため、透湿性を有することが好ましい。
テープ状またはシート状の本発明において使用される基材の材質は、特に制限されず、従来手術用の覆布(ドレープ)、絆創膏、サージカルテープなどの医療用途で使用されるのと同様の材料が使用できる。具体的には、例えば、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタンなどのウレタン系ポリマー;ポリアミド、ポリエーテルポリアミドブロックポリマーなどのアミド系ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系ポリマー;ポリエステル、ポリエーテルポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリビニールアルコール、ポリ無水マレイン酸、ポリエチレンイミン、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、各種ラテックス、これらの共重合体やブレンドなどが挙げられる。これらの中でも、水蒸気透過性を有する点で、ウレタン系ポリマーやアミド系ポリマーが好ましい。
または、本発明では、基材として、水蒸気透過性であって非透水性である従来公知の多孔性フィルムを用いてもよい。多孔性フィルムに好適な基材としては、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系ポリマーからなる多孔質プラスチックフィルム;紙類、不織布などが挙げられる。
上記基材は、1種のみからなるものでもよいし、2種以上の基材を積層した積層体であってもよい。また、上記基材は、安全性、粘着層の形成のしやすさ、要求される機械的特性(例えば、剛性や柔軟性)、成形性、ラミネート性、シール性などを考慮して、選択できる。
基材の厚みは、特に制限されるものではなく、基材の形状や所望の用途によって適宜選択できる。例えば、基材がテープまたはシート状である場合には、基材の厚みは、その用途によって適宜選択すればよいが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは10〜80μm、特に好ましくは20〜60μmである。
上記基材上に、粘着層が形成される。この際、粘着層の形成は、上記したように、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体が従来と同様の溶剤(例えば、メタノール、エタノール、プロピレングリコール)に溶解するので、従来と同様の方法が使用できる。例えば、(1)メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を溶剤に溶解して粘着剤溶液を調製し、この粘着剤溶液を、基材上に直接塗布した後、乾燥する方法;(2)固形状態で原料をブレンドした後、カレンダーコーティングなどの方法によって基材に塗布する方法;(3)メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を溶剤に溶解して粘着剤溶液を調製し、この粘着剤溶液をコンマコーター等で基材上に塗工する方法;(4)基材上に、まず下塗り剤を塗布して下塗層を形成した後、その上に粘着層を間接的に形成する方法;(5)公知の方法と同様にして粘着層を形成し、当該層上に、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体の粉末を適当量(好ましくは、粘着層を構成する粘着剤の不揮発分に対して、0.01〜5質量%)付着させる方法;(6)公知の方法と同様にして2層の積層体の形態で粘着層を形成し、皮膚と接触する層側にメチルシクロデキストリンヨウ素包接体を付着させる方法;及び(7)予めメチルシクロデキストリンヨウ素包接体を上記溶剤に溶解した後、別途作製した粘着剤溶液(好ましくはメチルシクロデキストリンヨウ素包接体を溶解する溶剤は、粘着剤を溶解する溶剤と相溶性を有するものである)と混合して粘着剤混合物を調製し、この粘着剤混合物を離型紙等の剥離ライナー上に塗工し、乾燥した後、基材に転写させる方法などが使用できる。上記方法のうち、上記(5)及び(6)は、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体の添加量を少なく抑えることができる。また、上記(7)の方法は、1回の工程で粘着剤層が形成できるため、好ましく使用される。
上記塗布工程において、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を溶解する溶剤としては、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を溶解できかつ安全性を有するものであることが必要であり、このため、メタノール、エタノール、プロピレングリコールである。これらのうち、メタノール、プロピレングリコールが好ましく、メタノールが最も好ましい。また、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体の溶液中への添加量は、溶剤中に溶解できる量であれば特に制限されず、上記したような粘着層への導入量範囲になるように調節されることが好ましい。このため、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体は、上記溶剤中に、1〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%の濃度になるように、溶解されることが好ましい。また、粘着剤溶液の基材上への塗布方法も、特に制限されず、公知の塗布方法が使用できる。具体的には、刷毛塗り、浸漬処理、スピンコーティング、バーコーティング、グラビアコーティング、リバースロースコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、さらにはコンマコーターやリップコーターを使用した塗布方法などが挙げられる。基材上に形成される粘着剤溶液の塗布量は、特に制限されず、上記したような粘着層への導入量範囲になるように、また用途、接着/粘着性を考慮して適宜選択される。具体的には、粘着層の厚みが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは10〜80μm、特に好ましくは20〜60μmとなるような量である。この際、粘着層の厚みが5μmに満たない場合には、十分な皮膚貼着性を発揮できないおそれがある。粘着層の厚みが100μmを超えると、皮膚貼着材全体として十分な水蒸気透過性を発現しにくくなり、蒸れの問題や、発汗時の皮膚貼着性低下の問題が起こりやすくなる。また、粘着剤溶液を基材上に塗布した後、溶剤を蒸散させるために管腔工程を行なうが、この際の乾燥条件は、溶剤が十分蒸散して粘着層が形成できる条件であれば特に制限されず、使用される溶剤の種類や量によって適宜選択できるが、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、乾燥を行なえばよい。なお、乾燥時間は、乾燥炉の長さや設備によって異なり、溶剤が十分蒸散して良好な粘着層が形成できる条件であれば特に制限されない。
本発明にかかる皮膚貼着材において、粘着層が上記星型アクリル系ブロックポリマーを粘着性物質として有する場合には、粘着層中における炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの残存量が、全不揮発分に対して500ppm以下であり、より好ましくは400ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、特に好ましくは200ppm以下、最も好ましくは100ppm以下であることが好ましい。本発明にかかる皮膚貼着材は、このように粘着層中における炭素数7〜17の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの残存量が極めて少なくすることによって、長期間使用しても皮膚刺激性がほとんどなく、粘着力と凝集力とのバランスの点でも優れるからである。
このようにして基材上に形成された粘着層は、粘着層側に離型紙を付着して、長尺フィルムの場合には巻芯に巻きつけられる。このような皮膚貼着材は、一般的に、エチレンオキサイドや電子線(例えば、γ線)、特に電子線で滅菌されている。上述したように、本発明の皮膚貼着材は、電子線により滅菌されても、シクロデキストリンが防御壁の役割を果たして、電子線があたるのを防ぐため、優れた広スペクトルで抗菌性を発揮するヨウ素は飛散することなく、長持間にわたって、抗菌性を発揮することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、下記実施例および比較例において、特記しない限り、「部」および「%」は、それぞれ、「質量部」および「質量%」を表す。
また、実施例及び比較例で使用される特性は、以下の方法によって測定・評価される。
[1]粘着剤組成物のスペック測定
(1)粘度
B型粘度計を用いて、25℃で測定した。回転数は毎分12回転とした。
(2)不揮発分
熱風循環乾燥機中で200℃×15分間乾燥させて、質量変化より算出した。
[2]試験片の作製方法
(1)抗菌試験用
離型紙(カイト化学工業社製、商品名SL70S)上に粘着剤組成物を片面に乾燥後の厚みが40μmとなるように塗工した後、熱風循環乾燥機中75℃で30秒間乾燥させ、さらに隣接する別の熱風循環乾燥機中100℃で30秒間乾燥させ、その後、55μm厚のポリオレフィンフィルム(MEDIFOL elastic plus 44538/99, RKWAG社製)の片面に粘着剤組成物を転着し、一昼夜放置したものを抗菌性試験用粘着テープとした。
(2)テストパネル貼着試験用
一方、55μm厚のポリオレフィンフィルム(MEDIFOL elastic plus 44538/99, RKWAG社製)では基材が伸びすぎて正確な粘着力が測定できないため、粘着力測定用に基材を25μm厚のポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記)に替えて粘着テープを作製した。
[3]粘着物性試験
皮膚貼着材の粘着特性に関する評価試験は、JIS Z 0237に準じ、以下に示す方法に従って行った。
(1)粘着力(180度剥離)
温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で行なった。被着体であるベークライト板上に、幅25mmのテープ状の試験片を載せ、この試験片上を、重さ2kgのゴムローラーで1往復させることによって貼着した。貼着してから25分後に、試験片の一端を180°方向に速度300mm/分で剥離させた時の強度を測定し、これを粘着力(N/cm)とした。粘着力は常態(表1中、「粘着力(N/cm)(180度剥離:初期)」で示す)と50℃で1ヶ月保存後(表1中、「粘着力(N/cm)(180度剥離:50℃×1ヶ月)」で示す)の2つの場合を測定した。
(2)粘着力(90度剥離)
温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で行なった。被着体であるサンドペーパー(日本研紙株式会社製、WTCC−S P1000)を両面テープでステンレス鋼板に固定し、幅25mmのテープ状の試験片を載せ、この試験片上を、重さ2kgのゴムローラーで1往復させることによって貼着した。貼着してから25分後に、試験片の一端を90度方向に速度200mm/分で剥離させた時の強度を測定し、これを粘着力(N/cm)とした。
粘着力は電子線照射前(表1中、「粘着力(N/cm)(90度剥離:初期)」で示す)と電子線照射後(表1中、「粘着力(N/cm)(90度剥離:滅菌後)」で示す)の2つの場合を測定した。
(3)保持力
上記[2](2)で作製したPETフィルム試験片について以下の方法に従って測定した。温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、被着体であるSUS板に貼り付け面積が25mm×25mmとなるようにPETフィルム試験片を貼り付けた後、25分後に50℃に昇温して放置した。放置20分後に1kgの荷重をかけて粘着フィルムが落下するまでの時間(時間)、または24時間後の粘着フィルムのズレ(mm)を測定した。この際、落下しない場合は測定値が小さい程(ズレ幅が小さい程)、落下した場合は測定値(時間)が大きい程、保持力が優れていることを示す。
(4)ボールタック
上記[2](2)で作製したPETフィルム試験片について以下の方法に従って測定した。温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、傾斜式ボールタック装置を用いて測定した。助走路及び粘着面測定部は夫々100mmとし、傾斜角は30°とした。測定値が小さい程(ボールが小さい程)、タック性が劣っていることを示す。
[4]抗菌性試験
皮膚貼着材の抗菌性は、JIS Z 2801:2000(フィルム密着法)に準拠して評価した。
すなわち、試料を消毒エタノールで拭いて殺菌し、25mm×27mmの四角形に裁断した。別途、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus IFO No.12732)を、1,700,000個/mlの菌濃度(0.2ml中に約3×10個の菌濃度)になるように、SCDLP培地(抗菌剤不活化培地:JIS L1902:1998)に接種して、菌液1を調製した。また、同様にして、大腸菌(Escherichia coli IFO No.3972)を、1,400,000個/mlの菌濃度(0.2ml中に約2.5×10個の菌濃度)になるように、SCDLP培地に接種して、菌液2を調製した。なお、上記SCDLP培地は、精製水またはイオン交換水1000mlに対して、カゼイン製ペプトン17.0g、大豆製ペプトン3.0g、塩化ナトリウム5.0g、リン酸水素二カリウム2.5g、グルコース2.5g、レシチン1.0gを秤量し、フラスコに入れて混合し、内容物を十分に溶解した後、非イオン界面活性剤7.0gを加えて溶解させる。この溶液をpHが6.8〜7.2(25℃)となるように、水酸化ナトリウム溶液または塩酸溶液で調整し、高圧蒸気滅菌した後、室温まで冷却することによって調製した。
次に、シャーレに、菌液1及び2を、それぞれ、0.20mlずつ、シャーレに播種した後、試験片の紙片を剥がして粘着面がなるべく広く菌液と接するようにシャーレを覆った後、シャーレにフタをして、インキュベーター(FI−45型、東洋製作所製)中で、35℃で24時間培養した。24時間培養後のシャーレについて、シャーレ1枚当たり、10mlのSCDLP培地(抗菌剤不活化培地)を加えて、菌を洗い出し、寒天平板培養法により、コロニーカウンター(MC−707P型、東京エム・アイ商会製)を用いて生菌数を測定した。なお、この際、抗菌剤を含まない試験片をコントロールとした。また、菌液を播種した直後のシャーレについて、上記と同様にして、寒天平板培養法で生菌数を測定した。
上記生菌数から、下記式に従って、抗菌活性値を算出し、抗菌活性値が2.0以上である場合に、抗菌性ありと判定した。
Figure 2006297075
上記式において、Aは、抗菌剤を含まない試験片の接種直後の生菌数の平均値(個)であり;Bは、抗菌剤を含まない試験片の24時間培養後の生菌数の平均値(個)であり;Cは、抗菌剤を含む本発明の試験片の24時間培養後の生菌数の平均値(個)である。
[5]ヨウ素濃度測定
離型紙(カイト化学工業社製、商品名SL70S)上に粘着剤組成物を片面に乾燥後の厚みが40μmとなるように塗工した後、熱風循環乾燥機中75℃で30秒間乾燥させ、さらに隣接する別の熱風循環乾燥機中100℃で30秒間乾燥させた。このようにして形成した粘着剤層上に上記と同様の離型紙をのせ、これを試料とした。
このようにして作製された試料(大きさ:10cm×10cm)をメタノールに室温で2時間浸漬してヨウ素を抽出し、チオ硫酸水溶液よりヨウ素を還元滴定して、粘着剤中のヨウ素濃度を滴定した。
[6]貯蔵安定性
離型紙(カイト化学工業社製、商品名SL70S)上に粘着剤組成物を片面に乾燥後の厚みが40μmとなるように塗工した後、熱風循環乾燥機中75℃で30秒間乾燥させ、さらに隣接する別の熱風循環乾燥機中100℃で30秒間乾燥させた。
このようにして形成した粘着剤層を離型紙から剥がし、これを試料とした。得られた粘着テープ(大きさ:10cm×25cm)をアルミニウムラミネートポリフィルムに入れ、熱融着して密封した後、60℃の恒温層内で1ヶ月間放置した。その後、室温下にて開封し、粘着物性とヨウ素濃度滴定を行なった。本評価は、皮膚貼着材を長期間保存・貯蔵した場合を想定してヨウ素の有効性を評価したものである。このため、本評価は、60℃での加熱促進試験で行なった。
製造例1
1.1段目重合:中間ポリマー溶液の合成
温度計、撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた4つ口フラスコにメタクリル酸メチル24部、ジペンタエリスリトール−β−メルカプトプロピオネート(以下DPMPと略記)1.2部、及び溶剤として酢酸エチル24.82部を仕込んだ。窒素気流下に撹拌し、83±2℃に保って重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオネート(商品名:V−601、和光純薬工業社製、以下V−601と略記)0.048部および溶解溶剤として酢酸エチル0.432部を加えて重合を開始させた。反応開始から30分後にメタクリル酸メチル56部および酢酸エチル15.25部を120分かけて、またV−601溶液(V−601 0.084部、DPMP2.8部および酢酸エチル2.8部の混合物)を90分かけて滴下し、内温を還流下で制御しながら反応を行った。メタクリル酸メチル滴下終了後に酢酸エチル2部添加し、さらに130分反応を行った。その後、重合禁止剤溶液(ヒドロキノンモノメチルエーテル0.04部および酢酸エチル0.36部からなる混合物)と希釈用酢酸エチル38.431部を加えて冷却し、粘着剤用中間ポリマー溶液(A1)を得た。得られた中間ポリマー溶液(A1)は、不揮発分34.5%、粘度90mPa・sであった。
2.2段目の反応:粘着剤用ポリマーの合成
温度計、撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた4つ口フラスコに上記の反応で得られた中間ポリマー溶液(A1)33.02部、アクリル酸ブチル82.91部、アクリル酸2−エチルヘキシル96.74部、アクリル酸9.67部、テトラエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステルA−200;以下、「TEGDA」と略する)0.02部、及び溶剤として酢酸エチル150部を仕込んだ。窒素気流下に撹拌し、86±2℃に保って重合開始剤としてV−601溶液(V−601の0.165部と酢酸エチル10部の混合物)を加えて重合を開始させた。反応開始から10分後にポリマー中間溶液(A1)77.05部、アクリル酸ブチル193.46部、アクリル酸2−エチルヘキシル225.74部、アクリル酸22.57部、TEGDA 0.04部、酢酸ビニル13.87部、および酢酸エチル156部からなるモノマー混合物と、V−601溶液(V−601:0.395部および酢酸エチル40部の混合物)とを80分かけて滴下し、還流下で制御しながら反応を行った。滴下終了後に酢酸エチル10部添加し、さらに60分反応を続けた。その後、ブースターとしてV−601溶液(V−601:3.36部および酢酸エチル40部の混合物)を15分毎に12分割ずつ滴下し、さらに還流下で120分反応を続けた。その後、希釈溶剤として酢酸エチルを247.3部添加し、冷却し粘着剤用ポリマー溶液(B1)を得た。得られたポリマー溶液(B1)は、不揮発分52.2%、粘度18360mPa・sであった。また、残存するアクリル酸2−エチルヘキシルは256ppm(対不揮発分)であった。
次いで、このポリマー溶液(B1)の不揮発分100部に対し、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製:YSポリスターT100)10部と粘度調整に酢酸エチルを混合し、粘着剤組成物(C1)を得た。得られた粘着剤溶液(C1)は、不揮発分48.0%、粘度7150mPa・sであった。
実施例1
メチル化−β−シクロデキストリンヨウ素包接体(商品名:MCDI、有効ヨウ素濃度約13%、日宝化学(株)社製)10gをメタノール20gに溶解して、MCDI溶液を調製した。次に、上記製造例1で得られた粘着剤(C1)に、粘着剤(C1)の不揮発分に対してMCDIが0.25%となるように、MCDI溶液を添加し、十分に撹拌して、MCDI含有粘着剤溶液(D1)を得た。
MCDI含有粘着剤溶液(D1)を、離型紙(カイト化学工業社製、商品名SL70S)上に片面に乾燥後の厚みが40μmとなるように塗工した後、熱風循環乾燥機中75℃で30秒間乾燥させ、さらに隣接する別の熱風循環乾燥機中100℃で30秒間乾燥させ、その後、55μm厚のポリオレフィンフィルム(MEDIFOL elastic plus 44538/99, RKWAG社製)の片面に粘着剤組成物を転着し、一昼夜放置して、粘着テープ(E1)を製造した。このようにして得られた粘着テープ(E1)の粘着物性を評価して、その結果を下記表1に示す。
また、このようにして得られた粘着テープ(E1)に対し、電子線照射による滅菌を行ない、抗菌性を評価した。その結果を表2(黄色ぶどう球菌に対する抗菌性の結果)及び表3(大腸菌に対する抗菌性の結果)に示す。下記表2,3において、実験は、各試料について、3連で行ない、生菌数の平均値として記載される。また、電子線照射は、日本電子照射サービス株式会社にて、照射強度が20、40、および60kGyになるように行った。照射量の調整は20kGy/パスの繰り返しにより行った。
実施例2〜5
実施例1において配合するMCDI量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてMCDI含有粘着剤溶液(D2)〜(D5)を作製した。次いで、実施例1と同様にMCDI含有粘着剤溶液(D2)〜(D5)を用いて粘着テープ(E2)〜(E5)を作製し、この粘着テープ(E2)〜(E5)の粘着物性を評価した。得られた結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして、粘着テープ(E2)〜(E5)の抗菌性を評価して、得られた結果を表2(黄色ぶどう球菌に対する抗菌性の結果)及び表3(大腸菌に対する抗菌性の結果)に示す。
比較例1
実施例1においてMCDIを配合しない以外は、実施例1と同様にして比較用粘着テープ(E6)を作製し、実施例1と同様に電子線照射前と後における粘着物性、および抗菌性試験を行った。得られた結果を表1(粘着物性)ならびに表2(黄色ぶどう球菌に対する抗菌性の結果)及び表3(大腸菌に対する抗菌性の結果)に示す。
Figure 2006297075
上記表1の結果から、本発明の皮膚貼着材(E1)〜(E5)は、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を添加しない皮膚貼着材(E6)と同等の粘着特性を示していることから、本発明の皮膚貼着材は、抗菌剤としてメチルシクロデキストリンヨウ素包接体を添加しても、粘着物性、特に粘着力が低下することなく、優れた粘着物性、特に優れた粘着特性を発揮することができることが示される。
Figure 2006297075
Figure 2006297075
表2,3の結果から、MCDIの添加量が0.25質量%では、抗菌性は認められなかったが、0.5質量%では20kGyの強度で、さらには1.0質量%以上の添加量では、いずれの照射強度でも十分な抗菌性が示されることが分かる。なお、外科手術に使用される手術用の覆布(ドレープ)、絆創膏、サージカルテープなどの医療用途では、一般的に20kGyの強度が滅菌工程に使用されていることから、MCDIの添加量はこれらの用途では、0.5質量%以上であれば、十分実用に供させると考察される。
製造例2
1.1段目重合:中間ポリマー溶液の合成
製造例1 1.と同様にして中間ポリマー溶液(A1)を製造した。
2.2段目の反応:粘着剤用ポリマーの合成
温度計、撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた4つ口フラスコに上記の反応で得られた中間ポリマー溶液(A1)60.9部、アクリル酸ブチル34.46部、アクリル酸2−エチルヘキシル136.02部、アクリル酸8.98部、ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステルA−200;以下、「TEGDA」と略する)0.09部、及び溶剤として酢酸エチル170部を仕込んだ。窒素気流下に撹拌し、86±2℃に保って重合開始剤としてV−601溶液(V−601の0.336部と酢酸エチル10部の混合物)を加えて重合を開始させた。反応開始から10分後にポリマー中間溶液(A1)142.1部、アクリル酸ブチル220.8部、アクリル酸2−エチルヘキシル163.23部、アクリル酸20.95部、酢酸ビニル13.77部、TEGDA 0.21部および酢酸エチル176部からなるモノマー混合物と、V−601溶液(V−601 0.784部および酢酸エチル40部の混合物)とを80分かけて滴下し、還流下で制御しながら反応を行った。滴下終了後に酢酸エチル10部添加し、さらに60分反応を続けた。その後、ブースターとしてV−601溶液(V−601 3.36部および酢酸エチル40部の混合物)を30分毎に12分割ずつ滴下し、さらに還流下で120分反応を続けた。その後、希釈溶剤として酢酸エチルを100部添加し、冷却し粘着剤用ポリマー溶液(B2)を得た。得られたポリマー溶液(B2)は、不揮発分52.8、粘度6170mPa・sであった。また、残存するアクリル酸2−エチルヘキシルは424ppm(対不揮発分)であった。
次いで、このポリマー溶液(B2)の不揮発分100部に対し、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製:YSポリスターT100)10部と粘度調整に酢酸エチルを混合し、粘着剤溶液(C2)を得た。得られた粘着剤溶液(C2)は、不揮発分52.2%、粘度5120mPa・sであった。
実施例6
メチル化−β−シクロデキストリンヨウ素包接体(商品名:MCDI、有効ヨウ素濃度約13%、日宝化学(株)社製)30gをメタノール70gに溶解して、MCDI溶液を調製した。次に、上記製造例2で得られた粘着剤溶液(C2)に、粘着剤(C2)の不揮発分に対してMCDIが2.5%となるように、上記MCDI溶液と添加し、さらに可塑剤(ミリスチン酸イソプロピル)を粘着剤不揮発分に対し2%となるように配合し、十分に撹拌して、粘着剤溶液(D7)を得た。次いで、粘着剤溶液(D7)を用いて、実施例1に記載の方法と同様にして、粘着力テープ(E7)を作製した。
また、このようにして得られた粘着テープ(E7)に対し、照射強度が20および40kGyになるように電子線照射による滅菌を行なった。このように電子線照射滅菌を行なった粘着テープ(E7)は、未照射のものと合わせて粘着物性を測定した。その結果を表4に示す。なお、本実施例では、上記[3](2)粘着力(90度剥離)において、被着体として、サンドペーパーの代わりにベークライト板(日本テストパネル社製)を使用する以外は、上記[3](2)粘着力(90度剥離)に記載の試験方法と同様にして、粘着物性を評価した。
また、この粘着テープ(E7)に対し、上記[6]の方法により貯蔵安定性を評価した。すなわち、貯蔵時のヨウ素濃度変化を見るために初期のもの(表5中の初期)と、アルミニウムラミネートフィルム内に密封して60℃×1ヶ月放置した試料(表5中の1ヶ月後)についてチオ硫酸ナトリウムによる還元滴定法でヨウ素濃度を測定した。その結果を表5に示す。
実施例7
実施例6において配合するMCDI量を7.5質量%に変更した以外は、実施例6と同様にして粘着剤溶液(D8)を作製した。次いで、実施例1と同様に粘着剤溶液(D8)を用いて粘着テープ(E8)を作製し、この粘着テープ(E8)について、実施例6と同様に粘着物性及び貯蔵安定性を測定した。得られた結果を表4及び表5に示す。
実施例8
実施例6において配合するMCDI量を15質量%に変更した以外は、実施例6と同様にして粘着剤溶液(D9)を作製した。次いで、実施例1と同様に粘着剤溶液(D9)を用いて粘着テープ(E9)を作製し、この粘着テープ(E9)について、実施例6と同様に粘着物性及び貯蔵安定性を測定した。得られた結果を表4及び表5に示す。
Figure 2006297075
Figure 2006297075
上記表4の結果から、本発明の皮膚貼着材(E7)〜(E9)は、ヨウ素の添加量が多くとも十分な粘着物性を発揮することができることが示される。
また、上記表5の結果から、本発明の皮膚貼着材(E7)〜(E9)は、電子線を照射しかつ1ヶ月という長期間貯蔵した後という厳しい条件下にあっても、ヨウ素のメチルシクロデキストリンヨウ素包接体からの飛散を有効に抑制・防止することができ、ゆえに、本発明の皮膚貼着材(E7)〜(E9)は、電子線照射による滅菌を行なった後であっても長期間にわたって十分な抗菌性を発揮できることが分かる。
また、上記結果から、本発明の皮膚貼着材(E7)〜(E9)は、外科手術に使用される手術用の覆布(ドレープ)、絆創膏、サージカルテープなどの医療用途に十分実用に供させると考察される。

Claims (3)

  1. 基材上に、メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を抗菌剤として含む粘着層を設けてなる皮膚貼着材。
  2. メチルシクロデキストリンヨウ素包接体は、粘着層を構成する粘着剤の不揮発分に対して、0.01〜20質量%である、請求項1に記載の皮膚貼着材。
  3. メチルシクロデキストリンヨウ素包接体を、メタノール、エタノール及びプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも一種の溶剤に溶解し、この溶液を基材に塗布する段階を有する、請求項1または2に記載の皮膚貼着材の製造方法。
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