JP2004314417A - 画像受容体基材用多層フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】画像受容体用基材多層フィルムにおいて、幅広い温度・湿度環境下におけるカール変動値を小さくする事を目的とする。
【解決手段】表面側フィルム、芯材、裏面側フィルムを積層した2層以上(芯材は無くても構わない)から構成される画像受容体用基材多層フィルムにおいて、表面フィルムと裏面フィルムのマイクロ波法分子配向計で測定したときのMOR値差が±1.0以下であり、かつ、吸湿膨張率差が1×10−5 1/%RH以下とする。または、前記要件に加え、表面フィルムと裏面フィルムとの分子配向角差を±20°以下とする。
【効果】本発明は、感熱記録、溶融型熱転写、昇華型熱転写、インクジェット記録、ゼロックス等のプレインペーパーコピー等のオフィス、家庭用の各種情報記録プリンターに使用する場合において、温度・湿度環境変化による白紙カール度を抑制できるため、走行トラブルが防止され、有用である。
【選択図】なし
【解決手段】表面側フィルム、芯材、裏面側フィルムを積層した2層以上(芯材は無くても構わない)から構成される画像受容体用基材多層フィルムにおいて、表面フィルムと裏面フィルムのマイクロ波法分子配向計で測定したときのMOR値差が±1.0以下であり、かつ、吸湿膨張率差が1×10−5 1/%RH以下とする。または、前記要件に加え、表面フィルムと裏面フィルムとの分子配向角差を±20°以下とする。
【効果】本発明は、感熱記録、溶融型熱転写、昇華型熱転写、インクジェット記録、ゼロックス等のプレインペーパーコピー等のオフィス、家庭用の各種情報記録プリンターに使用する場合において、温度・湿度環境変化による白紙カール度を抑制できるため、走行トラブルが防止され、有用である。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像受容体基材用多層フィルムに関するものである。さらに詳しく述べるならば、感熱記録、溶融型熱転写、昇華型熱転写、インクジェット記録、電子写真(ゼロックス)等のプレインペーパーコピー等の各種画像受容体基材用として、幅広い温度・湿度の環境変動に対してカール変化が少なく好適な多層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高度情報化社会の発展に伴い、感熱記録方式、熱転写記録方式、インクジェット記録方式を採用する各種事務機器等のプリンター、あるいは電子写真(ゼロックス)等のプレインペーパーコピー機が多用されている。
感熱記録方式では、感熱記録紙とサーマルヘッド(以下、「ヘッド」と言う)とを接触させ、ヘッドからパルス信号を発して感熱記録シートを加熱し、加熱された記録層において発色が起こり記録像を形成する。感熱記録方式は、システムが簡便でありプリンターの保守が容易である上ランニングコストが比較的安価といった利点を要する。
一方、最近では、カラーハードコピーの多色性が強く望まれている。そのようなカラーハードコピーの手段として、色材に昇華性染料を用いた熱転写記録方式、あるいは、色材に顔料を含み溶融性の樹脂を用いた溶融転写型の記録方式などがある。このような熱転写方式を用いて得られたハードコピーは、色彩の再現が容易で美しいことに特色がある。
【0003】
熱転写方式のプリンター原理は、画像を電気信号に変換し、さらにこの電気信号をヘッドにより熱信号に変換して色材が塗布されたシート(インクシート)を加熱し、色材をインクシートに密着した熱転写記録シート上に転写・固定し、画像を再生するものである。
最近では、フルカラーハードコピー機のもう一つとして、インクジェット記録方式が多用されつつある。近年の飛躍的な技術革新によって、インクジェット記録方式の画像品質は、銀塩写真で得られる品質に匹敵するようになり、ますます注目を集めている。
インクジェット記録方式の原理は、画像から変換された電気信号に応じて多数のインク液滴を、シート支持体上に形成されたバインダーと顔料微粒子からなるインク吸収層に重ねて打ち込む事によって画像再生を行っている。
このような各種情報記録プリンター類において、良好なプリント画像を得るためには、厚さが均一で柔軟性があり、かつ剛度や寸法安定性に富み、さらに感熱や熱転写などの熱記録用途の場合には、熱伝導度の低いシート状基材フィルムを使用する必要がある。これを実現するために、例えば、紙などの熱的にも力学的にも安定な芯材の両面に1軸ないしは2軸の延伸フィルムや多層構造・発泡フィルムを積層させた基材を用いる構成が提案されている(例えば、特開昭62−198497号公報:特許文献1参照)。
【0004】
しかし、このような異なる層を積層させた多層構造の基材フィルムにおいては、フィルムの組み合わせによっては、温度・湿度の環境変化でカール(反り)が発生し、大きく変化する事が知られている。一般に、各種プリンターの動作は、0〜50℃程度の温度範囲、さらには、20〜80%RHの湿度範囲で保証されており、このような環境下で多層フィルムのカールが大きく変動すると、プリンター中で走行トラブルを起こしやすくなる。例えば、多層フィルムのカールが大きいと、給紙用のピックアップロールやプリンター内部のロール、ガイドに引っかかり、ミスフィードやジャミングが発生する。
【0005】
このような課題を解決するため、従来、受容体基材用多層フィルムとしては、表裏同一のフィルムを添合したり(例えば、特開昭63−290790号公報:特許文献2参照)、裏面に熱可塑性樹脂層を用いたフィルム(例えば、特開平6−15975号公報:特許文献3参照)、あるいは、各層の層内力を一定の関係にバランスさせたフィルム(例えば、特開平7−314917号公報:特許文献4あるいは特開2000−118157号公報:特許文献5参照)などが提案されている。
また、特開2000−335116号公報:特許文献6によると、受容体基材用多層フィルムを構成する表裏フィルムの分子配向角度差を15°以内にすると、ねじれカールを抑制できる技術を提案している。
さらに、特開平10−249935号公報:特許文献7において、2軸延伸ポリエステルフィルムの湿度膨張率を18×10−3cm/cm/%RH以下とすることによって、当該フィルムのカール防止を狙った技術が開示されている。
【0006】
他方、感熱記録体の巻き癖カールの防止技術として、基材フィルムの分子配向度MOR値を制御したり(例えば、特開平10−226164号公報:特許文献8参照)、インクジェット記録用シートの温度・湿度変化による環境カールの防止技術として、支持基材裏面に鱗片状シリカを含む塗工層を形成する技術が提案されている(例えば、特開2002−52813号公報:特許文献9参照)。
しかしながら、いずれの場合も、他の品質を損なわずに温度・湿度変化に起因したカール変動を充分抑制できるに至っておらず、特に、湿度変化に対しては、殆ど効果的ではない。しかるに、受容体基材用多層フィルにおいて、広い温度・湿度変化に対する環境カールの防止に有効な技術に関しては、従来開示されていない。我が国においては、梅雨時期を含む夏季と冬季では湿度変化が著しく大きく、この間におけるカールの変動も大きな課題である。さらには、特許文献7、8、9においては、いずれも支持体は単層の基材に関する構成であり、多層構成されたフィルムのカール抑制技術に関しては、例示も示唆も無い。
【特許文献1】
特開昭62−198497号公報(第2〜3頁)
【特許文献2】
特開昭63−290790号公報(第3頁)
【特許文献3】
特開平6−15975号公報(第2頁)
【特許文献4】
特開平7−314917号公報(第2〜3頁)
【特許文献5】
特開2000−118157号公報(第2頁)
【特許文献6】
特開2000−335116号公報(第3〜5頁)
【特許文献7】
特開平10−249935号公報(第2頁)
【特許文献8】
特開平10−226164号公報(第2頁)
【特許文献9】
特開2002−52813号公報(第2頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に対し、幅広い温度・湿度環境下においてカール変動値が小さい画像受容体基材用多層フィルムを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、「表面側フィルム、芯材、裏面側フィルムを積層した2層以上(芯材は無くても構わない)から構成される画像受容体用基材多層フィルムにおいて、表面フィルムと裏面フィルムのマイクロ波法分子配向計で測定したときのMOR値差が±1.0以下であり、かつ、吸湿膨張率差が1×10−5 1/%RH以下であることを特徴とする画像受容体基材用多層フィルム」である。
本発明のもう一つは、「表面フィルムと裏面フィルムとの分子配向角差が±20°以下である事を特徴とする前記載の画像受容体基材用多層フィルム」である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について説明する。
本発明において積層される表面側フィルム、裏面側フィルムとしては、特に限定されるものではないが、印画された画質の均一性や階調性の点から、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどを主成分とした延伸フィルムや発泡フィルム、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を主成分とする多層構造フィルムが用いられる。
また、これら表面側フィルム、裏面側フィルムには、必要に応じて各種添加物が添加されていても良い。添加物としては、無機、有機粒子のいずれでも可能であり、粒子形状も真球、凝集、鱗片状、数珠状等各種形状が可能である。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、各種ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、シリコン樹脂等の熱可塑性樹脂や、フッ素樹脂、イミド樹脂等が混合、添加されていても良く、さらには、エチレン−酢酸ビニル、アイオノマー等の各種変性樹脂を添加する事も出来る。
【0010】
本発明で用いられる芯材層としては、セルロースパルプを主成分とする紙、コート紙、アート紙、キャスト塗被紙などの紙類、少なくとも一方に熱可塑性樹脂層を設けたラミネート紙、金属蒸着層を設けた金属蒸着紙などの加工紙、または、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の単独種あるいは複数種の合成樹脂を主成分とするフィルム、または、シートが用いられる。これらのフィルム、シートには、添加物を含んでも良い。これらの中でも紙類やポリエステルフィルムの使用が好ましい。芯材層の厚さは、一般に4〜250μmであり、好ましくは、10〜200μmである。また、用途によっては、この芯材層は無くても構わない。芯材層は力学強度、印字ムラを無くすためのクッション性、力学的なバランスのために用いられる。
【0011】
積層方法としては、特に限定されるものではないが、ウェットラミネート、エキストルージョンラミネート、ドライラミネート、ワックスラミネート等の公知の技術が用いられてもよく、ホットメルト接着方式や加熱プレス接着方式等も用いる事が出来る。一般にドライラミネート法が好ましく用いられる。ドライラミネート接着剤としてはポリエーテル系、ポリエステル系、ポリウレタン系などの接着剤を用いることができる。接着剤の塗工量は、1.0〜50.0g/m2 の範囲が望ましく、また、カールバランスを保つために、表面側フィルム側、裏面側フィルム側の接着樹脂層の厚さを同一にするのが好ましい。また、本発明で得られる積層材は、20〜300μmの厚さを有することが望ましい。これら接着樹脂層は、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーターなどのコーターを一般的に良く知られた方法を用いて塗工、乾燥して形成することができる。
【0012】
本発明では、上記表面フィルムと裏面フィルムとの組み合わせにおいて、両フィルムの吸湿膨張率差を、1×10−5 1/%RH以下になるように選択し、かつ、マイクロ波法分子配向計で測定した両フィルムのMOR(Molecular Orienrated Ratio)値差が ±1.0以下(絶対値が1.0以下)になるように選択する。さらに、好ましくは、前記載の要件に加え、マイクロ波法分子配向計で測定した表裏フィルムの分子配向角差を±20°以下になるような組み合わせを選択する。
【0013】
MOR値差は、 ±1.0以下であれば良いが、好ましくは、±0.5以下であり、±0.2以下が更に好ましい。また、分子配向角度差は、±20°以下が良く、好ましくは、±15°であり、特に好ましくは、±10°以下である。
ここで、MOR(Molecular Orienrated Ratio)値とは、マイクロ波法分子配向計で測定された透過マイクロ波強度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)を指す。このMOR値は、縦方向と横方向の延伸倍率の差違が小さくバランスされたフィルムほど小さくなる、一方、どちらかの方向の延伸配向強度が大きくなると、MOR値は大きくなる。したがって、所望のMOR値を得るためには、二軸延伸する際の縦方向と横方向の延伸程度を制御する事によって達成する事が出来る。
本発明における分子配向角とは、マイクロ波法分子配向計で測定された透過マイクロ波強度の最大値(または最小値)を示す方向と基準方向(例えば、フィルムの製造上のマシン流れ方向(いわゆるMD方向))とがなす角度の事である。
本発明におけるMOR値および分子配向角度は、王子計測機器(株)製のマイクロ波法分子配向計(型式:MOA−3012AS)を用いて行った測定により得た。
【0014】
このMOR値は、縦方向と横方向の延伸倍率の差が小さく、バランスされたフィルムほど小さくなり、一方この差が大きく、いずれか一方の延伸強度が強いほど大きくなる。したがって、MOR値を小さくするには二軸延伸する際の縦方向と横方向の延伸程度をできるだけ同程度になるようにして作成することで所望のものを得ることができる。
【0015】
表面および裏面フィルム間の吸湿膨張率差は、1×10−5 1/%RH以下であるのが良いが、好ましくは、0.5×10−5 1/%RH以下である。なお、本発明における吸湿膨張率値は、JIS K7197(「プラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法))に準拠しながら、温度の代わりに湿度を連続的に変化させて、湿度の上昇に伴う極小さな非振動的な荷重の下でのフィルムの変形量を湿度又は時間の関数として測定して得た値である。 測定条件は以下の通りである。
測定モード:引張り荷重印加モード
湿度変化速度:0.2 %RH/min
試験片の大きさ:4mm×30mm
荷重:19.6mN
装置:調湿装置付きTMA(セイコーインスツルメンツ社製 TMA/SS6100)
表面および裏面フィルムの組み合わせは、本発明の条件を満たしていれば、同種のフィルム同士であっても異なる種のフィルムの組み合わせであっても構わない。また、表面および裏面フィルムの組み合わせにおいて、本発明の条件を満たしていれば、これらが延伸フィルムの場合には延伸倍率や延伸方法、発泡体の場合には発泡倍率や発泡の状態、添加物を用いている場合にはその種類や量、充填状態等が、同じ条件同士の組み合わせであっても、異なっていても良い。
【0016】
表面及び裏面に同種のフィルムを使ってもこれらの実測値が条件を満たすとは限らない。一方、表面と裏面のフィルムを異なるものとすることにより、例えば表面(記録層塗工側)で、画像の記録を向上させるフィルム、例えば断熱性のあるもの、クッション性のあるものを選択でき、また裏面には支持体として機械的強度や耐熱性に優れる素材を選択できる。
【0017】
得られた本発明に係る画像受容体基材用多層フィルム面上には、感熱記録層、溶融型熱転写層、昇華型熱転写層、インクジェット記録層など、公知の記録層を設ける。また、更にその反対面上に、走行性向上、静電気の防止、画像受容体シート相互の擦れによる記録層損傷防止などを目的として、背面被覆層を設けても良い。
記録層および背面被覆層の塗工量は、ともに、0.1〜50g/m2 の範囲である事が望ましい。50g/m2より層が厚くなると、本発明に係る多層フィルムのカール特性や寸法安定性に影響を及ぼす懸念がある。
また、記録層および背面被覆層の形成には、ブレードコーター、エアナイフコーター、ゲートロールコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーターなど、公知の塗工方法により塗工・乾燥して形成する事が出来る。
【0018】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらにより限定されるものではない。
フィルムの物性試験方法
(1)MOR値および分子配向角の測定
表面側および裏面側フィルムのMOR値および分子配向角は、王子計測機器(株)製 マイクロ波法 分子配向測定装置 MOA−3012AS を使用し、透過マイクロ波のパターンから求めた。測定周波数は12GHzであった。分子配向角度において、フィルム原反の製造上のマシン流れ方向(MD方向)を角度0°(基準方向)とした。
(2)吸湿膨張率の測定
吸湿膨張率値は、JIS K7197(「プラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法))に準拠しながら、温度の代わりに湿度を一定速度で連続的に変化させ、調湿装置付きTMA(熱機械測定装置、Thermal Mechanical Analysis,セイコーインスツルメンツ社製 TMA/SS6100)を用いて、湿度の上昇に伴うフィルムの伸長量を測定し求めた。 測定は引張り荷重印加モードで、0.2 %RH/minの湿度変化速度で測定した。チャック間距離は20mmであり、荷重は19.6mNとした。
実施例、比較例で使用するフィルムの物性一覧を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
実施例1
「表面側フィルムの積層」
厚さ100μmの上質紙の一方面上に、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を約5μmの厚さで設け、その面上に無機顔料を含む2軸延伸された厚さ50μmのポリエステルフィルムA(商標:テトロンU2、帝人デュポンフィルム社製)を、ドライラミネート方式で積層し芯材層と表面側フィルムを貼り合わせた。
「裏面側フィルムの積層」
さらに上質紙の反対面に、表面側フィルムとはメーカーが異なる無機顔料を含む2軸延伸された厚さ50μmのポリエステルフィルムB(商標:ルミラーE20、東レ社製)を、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を用いて、表面側フィルムとMD方向を合致させてドライラミネート方式で積層し画像受容体基材用多層フィルムを作製した。
【0021】
実施例2
無機顔料を含む2軸延伸された厚さ100μmのポリエステルブレンドフィルムC(商標:トレパロイUW、東レ合成フィルム社製)上に、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を約5μmの厚さで設け、その面上に無機顔料を含む2軸延伸された厚さ100μmのポリエステルフィルムD(商標:テトロンU2、帝人デュポンフィルム社製)を、フィルムCとMD方向を合致させてドライラミネート方式で積層し画像受容体基材用多層フィルムを得た。
【0022】
実施例3
無機顔料を含む2軸延伸された厚さ110μmのポリプロピレン系多層構造フィルムE(商標:ユポFPG110、ユポコーポレーション社製、多孔質延伸フィルム層が3層より構成される。上下2層はMD延伸があ優勢で、中心層は横延伸が強い)上に、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を約5μmの厚さで設け、その面上に厚さ・品種が異なる2軸延伸された無機顔料を含むポリプロピレン系多層構造フィルムF(商標:ユポGFG95、厚さ95μm、ユポコーポレーション社製、多孔質延伸フィルム層が3層より構成される。上下2層はMD延伸があ優勢で、中心層は横延伸が強い)を、フィルムEとMD方向を合致させてドライラミネート方式で積層し画像受容体基材用多層フィルムを得た。
【0023】
比較例1
無機顔料を含む2軸延伸された厚さ100μmのポリエステルフィルムG(商標:ダイヤホイルW200、三菱化学ポリエステルフィルム社製)上に、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を約5μmの厚さで設け、その面上に無機顔料を含む2軸延伸された厚さ100μmのポリエステルフィルムD(商標:テトロンU2、帝人デュポンフィルム社製)を、フィルムGとMD方向を合致させてドライラミネート方式で積層し画像受容体基材用多層フィルムを得た。
【0024】
比較例2
「表面側フィルムの積層」
厚さ100μmの上質紙の一方面上に、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を約5μmの厚さで設け、その面上に無機顔料を含む2軸延伸された厚さ50μmのポリエステルフィルムA(商標:テトロンU2、帝人社製)を、ドライラミネート方式で積層し芯材層と表面側フィルムを貼り合わせた。
「裏面側フィルムの積層」
さらに上質紙の反対面に、無機顔料を含む2軸延伸された厚さ60μmのポリプロピレン系多層構造フィルムH(商標:ユポFPG60、ユポコーポレーション社製、多孔質延伸フィルム層が3層より構成される。上下2層はMD延伸があ優勢で、中心層は横延伸が強い)を、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を用いて、表面側フィルムとMD方向を合致させてドライラミネート方式で積層し画像受容体基材用多層フィルムを作製した。
【0025】
カール評価
上記の各実施例および比較例で得られた画像受容体基材用多層フィルムについて、それぞれ下記のカール評価を実施し評価した。
画像受容体基材用多層フィルムをA6サイズに断裁し、10℃・50%RH(低温、常湿)の環境下で24時間放置し、水平な机上に受容層面を上にして放置したときのカールを測定した。カールの程度は、凹面側を上にして放置したときの4隅の持ち上がり量を測定しそれらの平均値で表した。次に同一のシートを下記の環境条件下でそれぞれ24時間放置し同様にカールを測定した。
〔環境条件〕
30℃・50%RH(常温・常湿)
30℃・80%RH(常温・高湿)
50℃・20%RH(高温・低湿)
50℃・80%RH(高温・高湿)
各環境下におけるカール値を4隅の持ち上がり量の平均値で表した。10℃・50%RH(低温・常湿)のカール値を基準値として、各環境下のカール値との差の絶対値のうち、最大値をカール変動値とした。一般にプリンターは10〜50℃程度・20〜80%RHの温度・湿度範囲で動作を保証されており、このような環境下でシートのカールが大きく変動すると、プリンター中で走行トラブルを起こしやすくなる。プリンターごとの給紙機構にもよるが、この環境範囲でのカール変動を10mm以下に抑えることが必要である。カール値5mm以下が、実用上「最も好ましい」。
得られた結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
表2が明らかに示しているように、本発明に係る条件を満たしていれば、表面側フィルムと裏面側フィルムが同種のポリマーフィルムであっても(実施例1および3)、異種ポリマーフィルムであっても(実施例2)、環境変化によるカール変動を効果的に抑制する事が出来る。また、ポリマーの種類にも依存せず(実施例1〜3)、ポリマー種が同じであるが、メーカー(実施例1)、あるいは品種・厚さが異なる(実施例3)場合においても本発明に係る条件を満たしていれば、カール抑制に効果的である。また、芯材はあっても(実施例1)、無くても(実施例2および3)、本発明の条件を満たしていれば、効果に変わりない。
しかしながら、表裏フィルムに同ポリマー種を用いていても、MOR値差が大きい場合には、カール値が大き過ぎて好ましくなく(比較例1)、例え配向を揃えMOR値差、分子配向角差が小さくても、吸湿膨張率差が本発明の条件外であっても、カール変動値が大きく実用的ではない。
本発明の条件を満たす場合においてのみ、カール値を実用上好ましい範囲内に抑制する事ができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明は、幅広い温度・湿度の環境変動に対してカール変動の少ない画像受容体基材用多層フィルムである。感熱記録、溶融型熱転写、昇華型熱転写、インクジェット記録、ゼロックス等のプレインペーパーコピー等のオフィス、家庭用の各種情報記録プリンターに使用する場合において、温度・湿度環境変化による白紙カール度を抑制できるため、走行トラブルが防止され、好適である。
【発明の属する技術分野】本発明は、画像受容体基材用多層フィルムに関するものである。さらに詳しく述べるならば、感熱記録、溶融型熱転写、昇華型熱転写、インクジェット記録、電子写真(ゼロックス)等のプレインペーパーコピー等の各種画像受容体基材用として、幅広い温度・湿度の環境変動に対してカール変化が少なく好適な多層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高度情報化社会の発展に伴い、感熱記録方式、熱転写記録方式、インクジェット記録方式を採用する各種事務機器等のプリンター、あるいは電子写真(ゼロックス)等のプレインペーパーコピー機が多用されている。
感熱記録方式では、感熱記録紙とサーマルヘッド(以下、「ヘッド」と言う)とを接触させ、ヘッドからパルス信号を発して感熱記録シートを加熱し、加熱された記録層において発色が起こり記録像を形成する。感熱記録方式は、システムが簡便でありプリンターの保守が容易である上ランニングコストが比較的安価といった利点を要する。
一方、最近では、カラーハードコピーの多色性が強く望まれている。そのようなカラーハードコピーの手段として、色材に昇華性染料を用いた熱転写記録方式、あるいは、色材に顔料を含み溶融性の樹脂を用いた溶融転写型の記録方式などがある。このような熱転写方式を用いて得られたハードコピーは、色彩の再現が容易で美しいことに特色がある。
【0003】
熱転写方式のプリンター原理は、画像を電気信号に変換し、さらにこの電気信号をヘッドにより熱信号に変換して色材が塗布されたシート(インクシート)を加熱し、色材をインクシートに密着した熱転写記録シート上に転写・固定し、画像を再生するものである。
最近では、フルカラーハードコピー機のもう一つとして、インクジェット記録方式が多用されつつある。近年の飛躍的な技術革新によって、インクジェット記録方式の画像品質は、銀塩写真で得られる品質に匹敵するようになり、ますます注目を集めている。
インクジェット記録方式の原理は、画像から変換された電気信号に応じて多数のインク液滴を、シート支持体上に形成されたバインダーと顔料微粒子からなるインク吸収層に重ねて打ち込む事によって画像再生を行っている。
このような各種情報記録プリンター類において、良好なプリント画像を得るためには、厚さが均一で柔軟性があり、かつ剛度や寸法安定性に富み、さらに感熱や熱転写などの熱記録用途の場合には、熱伝導度の低いシート状基材フィルムを使用する必要がある。これを実現するために、例えば、紙などの熱的にも力学的にも安定な芯材の両面に1軸ないしは2軸の延伸フィルムや多層構造・発泡フィルムを積層させた基材を用いる構成が提案されている(例えば、特開昭62−198497号公報:特許文献1参照)。
【0004】
しかし、このような異なる層を積層させた多層構造の基材フィルムにおいては、フィルムの組み合わせによっては、温度・湿度の環境変化でカール(反り)が発生し、大きく変化する事が知られている。一般に、各種プリンターの動作は、0〜50℃程度の温度範囲、さらには、20〜80%RHの湿度範囲で保証されており、このような環境下で多層フィルムのカールが大きく変動すると、プリンター中で走行トラブルを起こしやすくなる。例えば、多層フィルムのカールが大きいと、給紙用のピックアップロールやプリンター内部のロール、ガイドに引っかかり、ミスフィードやジャミングが発生する。
【0005】
このような課題を解決するため、従来、受容体基材用多層フィルムとしては、表裏同一のフィルムを添合したり(例えば、特開昭63−290790号公報:特許文献2参照)、裏面に熱可塑性樹脂層を用いたフィルム(例えば、特開平6−15975号公報:特許文献3参照)、あるいは、各層の層内力を一定の関係にバランスさせたフィルム(例えば、特開平7−314917号公報:特許文献4あるいは特開2000−118157号公報:特許文献5参照)などが提案されている。
また、特開2000−335116号公報:特許文献6によると、受容体基材用多層フィルムを構成する表裏フィルムの分子配向角度差を15°以内にすると、ねじれカールを抑制できる技術を提案している。
さらに、特開平10−249935号公報:特許文献7において、2軸延伸ポリエステルフィルムの湿度膨張率を18×10−3cm/cm/%RH以下とすることによって、当該フィルムのカール防止を狙った技術が開示されている。
【0006】
他方、感熱記録体の巻き癖カールの防止技術として、基材フィルムの分子配向度MOR値を制御したり(例えば、特開平10−226164号公報:特許文献8参照)、インクジェット記録用シートの温度・湿度変化による環境カールの防止技術として、支持基材裏面に鱗片状シリカを含む塗工層を形成する技術が提案されている(例えば、特開2002−52813号公報:特許文献9参照)。
しかしながら、いずれの場合も、他の品質を損なわずに温度・湿度変化に起因したカール変動を充分抑制できるに至っておらず、特に、湿度変化に対しては、殆ど効果的ではない。しかるに、受容体基材用多層フィルにおいて、広い温度・湿度変化に対する環境カールの防止に有効な技術に関しては、従来開示されていない。我が国においては、梅雨時期を含む夏季と冬季では湿度変化が著しく大きく、この間におけるカールの変動も大きな課題である。さらには、特許文献7、8、9においては、いずれも支持体は単層の基材に関する構成であり、多層構成されたフィルムのカール抑制技術に関しては、例示も示唆も無い。
【特許文献1】
特開昭62−198497号公報(第2〜3頁)
【特許文献2】
特開昭63−290790号公報(第3頁)
【特許文献3】
特開平6−15975号公報(第2頁)
【特許文献4】
特開平7−314917号公報(第2〜3頁)
【特許文献5】
特開2000−118157号公報(第2頁)
【特許文献6】
特開2000−335116号公報(第3〜5頁)
【特許文献7】
特開平10−249935号公報(第2頁)
【特許文献8】
特開平10−226164号公報(第2頁)
【特許文献9】
特開2002−52813号公報(第2頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に対し、幅広い温度・湿度環境下においてカール変動値が小さい画像受容体基材用多層フィルムを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、「表面側フィルム、芯材、裏面側フィルムを積層した2層以上(芯材は無くても構わない)から構成される画像受容体用基材多層フィルムにおいて、表面フィルムと裏面フィルムのマイクロ波法分子配向計で測定したときのMOR値差が±1.0以下であり、かつ、吸湿膨張率差が1×10−5 1/%RH以下であることを特徴とする画像受容体基材用多層フィルム」である。
本発明のもう一つは、「表面フィルムと裏面フィルムとの分子配向角差が±20°以下である事を特徴とする前記載の画像受容体基材用多層フィルム」である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について説明する。
本発明において積層される表面側フィルム、裏面側フィルムとしては、特に限定されるものではないが、印画された画質の均一性や階調性の点から、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどを主成分とした延伸フィルムや発泡フィルム、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を主成分とする多層構造フィルムが用いられる。
また、これら表面側フィルム、裏面側フィルムには、必要に応じて各種添加物が添加されていても良い。添加物としては、無機、有機粒子のいずれでも可能であり、粒子形状も真球、凝集、鱗片状、数珠状等各種形状が可能である。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、各種ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、シリコン樹脂等の熱可塑性樹脂や、フッ素樹脂、イミド樹脂等が混合、添加されていても良く、さらには、エチレン−酢酸ビニル、アイオノマー等の各種変性樹脂を添加する事も出来る。
【0010】
本発明で用いられる芯材層としては、セルロースパルプを主成分とする紙、コート紙、アート紙、キャスト塗被紙などの紙類、少なくとも一方に熱可塑性樹脂層を設けたラミネート紙、金属蒸着層を設けた金属蒸着紙などの加工紙、または、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の単独種あるいは複数種の合成樹脂を主成分とするフィルム、または、シートが用いられる。これらのフィルム、シートには、添加物を含んでも良い。これらの中でも紙類やポリエステルフィルムの使用が好ましい。芯材層の厚さは、一般に4〜250μmであり、好ましくは、10〜200μmである。また、用途によっては、この芯材層は無くても構わない。芯材層は力学強度、印字ムラを無くすためのクッション性、力学的なバランスのために用いられる。
【0011】
積層方法としては、特に限定されるものではないが、ウェットラミネート、エキストルージョンラミネート、ドライラミネート、ワックスラミネート等の公知の技術が用いられてもよく、ホットメルト接着方式や加熱プレス接着方式等も用いる事が出来る。一般にドライラミネート法が好ましく用いられる。ドライラミネート接着剤としてはポリエーテル系、ポリエステル系、ポリウレタン系などの接着剤を用いることができる。接着剤の塗工量は、1.0〜50.0g/m2 の範囲が望ましく、また、カールバランスを保つために、表面側フィルム側、裏面側フィルム側の接着樹脂層の厚さを同一にするのが好ましい。また、本発明で得られる積層材は、20〜300μmの厚さを有することが望ましい。これら接着樹脂層は、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーターなどのコーターを一般的に良く知られた方法を用いて塗工、乾燥して形成することができる。
【0012】
本発明では、上記表面フィルムと裏面フィルムとの組み合わせにおいて、両フィルムの吸湿膨張率差を、1×10−5 1/%RH以下になるように選択し、かつ、マイクロ波法分子配向計で測定した両フィルムのMOR(Molecular Orienrated Ratio)値差が ±1.0以下(絶対値が1.0以下)になるように選択する。さらに、好ましくは、前記載の要件に加え、マイクロ波法分子配向計で測定した表裏フィルムの分子配向角差を±20°以下になるような組み合わせを選択する。
【0013】
MOR値差は、 ±1.0以下であれば良いが、好ましくは、±0.5以下であり、±0.2以下が更に好ましい。また、分子配向角度差は、±20°以下が良く、好ましくは、±15°であり、特に好ましくは、±10°以下である。
ここで、MOR(Molecular Orienrated Ratio)値とは、マイクロ波法分子配向計で測定された透過マイクロ波強度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)を指す。このMOR値は、縦方向と横方向の延伸倍率の差違が小さくバランスされたフィルムほど小さくなる、一方、どちらかの方向の延伸配向強度が大きくなると、MOR値は大きくなる。したがって、所望のMOR値を得るためには、二軸延伸する際の縦方向と横方向の延伸程度を制御する事によって達成する事が出来る。
本発明における分子配向角とは、マイクロ波法分子配向計で測定された透過マイクロ波強度の最大値(または最小値)を示す方向と基準方向(例えば、フィルムの製造上のマシン流れ方向(いわゆるMD方向))とがなす角度の事である。
本発明におけるMOR値および分子配向角度は、王子計測機器(株)製のマイクロ波法分子配向計(型式:MOA−3012AS)を用いて行った測定により得た。
【0014】
このMOR値は、縦方向と横方向の延伸倍率の差が小さく、バランスされたフィルムほど小さくなり、一方この差が大きく、いずれか一方の延伸強度が強いほど大きくなる。したがって、MOR値を小さくするには二軸延伸する際の縦方向と横方向の延伸程度をできるだけ同程度になるようにして作成することで所望のものを得ることができる。
【0015】
表面および裏面フィルム間の吸湿膨張率差は、1×10−5 1/%RH以下であるのが良いが、好ましくは、0.5×10−5 1/%RH以下である。なお、本発明における吸湿膨張率値は、JIS K7197(「プラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法))に準拠しながら、温度の代わりに湿度を連続的に変化させて、湿度の上昇に伴う極小さな非振動的な荷重の下でのフィルムの変形量を湿度又は時間の関数として測定して得た値である。 測定条件は以下の通りである。
測定モード:引張り荷重印加モード
湿度変化速度:0.2 %RH/min
試験片の大きさ:4mm×30mm
荷重:19.6mN
装置:調湿装置付きTMA(セイコーインスツルメンツ社製 TMA/SS6100)
表面および裏面フィルムの組み合わせは、本発明の条件を満たしていれば、同種のフィルム同士であっても異なる種のフィルムの組み合わせであっても構わない。また、表面および裏面フィルムの組み合わせにおいて、本発明の条件を満たしていれば、これらが延伸フィルムの場合には延伸倍率や延伸方法、発泡体の場合には発泡倍率や発泡の状態、添加物を用いている場合にはその種類や量、充填状態等が、同じ条件同士の組み合わせであっても、異なっていても良い。
【0016】
表面及び裏面に同種のフィルムを使ってもこれらの実測値が条件を満たすとは限らない。一方、表面と裏面のフィルムを異なるものとすることにより、例えば表面(記録層塗工側)で、画像の記録を向上させるフィルム、例えば断熱性のあるもの、クッション性のあるものを選択でき、また裏面には支持体として機械的強度や耐熱性に優れる素材を選択できる。
【0017】
得られた本発明に係る画像受容体基材用多層フィルム面上には、感熱記録層、溶融型熱転写層、昇華型熱転写層、インクジェット記録層など、公知の記録層を設ける。また、更にその反対面上に、走行性向上、静電気の防止、画像受容体シート相互の擦れによる記録層損傷防止などを目的として、背面被覆層を設けても良い。
記録層および背面被覆層の塗工量は、ともに、0.1〜50g/m2 の範囲である事が望ましい。50g/m2より層が厚くなると、本発明に係る多層フィルムのカール特性や寸法安定性に影響を及ぼす懸念がある。
また、記録層および背面被覆層の形成には、ブレードコーター、エアナイフコーター、ゲートロールコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーターなど、公知の塗工方法により塗工・乾燥して形成する事が出来る。
【0018】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらにより限定されるものではない。
フィルムの物性試験方法
(1)MOR値および分子配向角の測定
表面側および裏面側フィルムのMOR値および分子配向角は、王子計測機器(株)製 マイクロ波法 分子配向測定装置 MOA−3012AS を使用し、透過マイクロ波のパターンから求めた。測定周波数は12GHzであった。分子配向角度において、フィルム原反の製造上のマシン流れ方向(MD方向)を角度0°(基準方向)とした。
(2)吸湿膨張率の測定
吸湿膨張率値は、JIS K7197(「プラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法))に準拠しながら、温度の代わりに湿度を一定速度で連続的に変化させ、調湿装置付きTMA(熱機械測定装置、Thermal Mechanical Analysis,セイコーインスツルメンツ社製 TMA/SS6100)を用いて、湿度の上昇に伴うフィルムの伸長量を測定し求めた。 測定は引張り荷重印加モードで、0.2 %RH/minの湿度変化速度で測定した。チャック間距離は20mmであり、荷重は19.6mNとした。
実施例、比較例で使用するフィルムの物性一覧を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
実施例1
「表面側フィルムの積層」
厚さ100μmの上質紙の一方面上に、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を約5μmの厚さで設け、その面上に無機顔料を含む2軸延伸された厚さ50μmのポリエステルフィルムA(商標:テトロンU2、帝人デュポンフィルム社製)を、ドライラミネート方式で積層し芯材層と表面側フィルムを貼り合わせた。
「裏面側フィルムの積層」
さらに上質紙の反対面に、表面側フィルムとはメーカーが異なる無機顔料を含む2軸延伸された厚さ50μmのポリエステルフィルムB(商標:ルミラーE20、東レ社製)を、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を用いて、表面側フィルムとMD方向を合致させてドライラミネート方式で積層し画像受容体基材用多層フィルムを作製した。
【0021】
実施例2
無機顔料を含む2軸延伸された厚さ100μmのポリエステルブレンドフィルムC(商標:トレパロイUW、東レ合成フィルム社製)上に、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を約5μmの厚さで設け、その面上に無機顔料を含む2軸延伸された厚さ100μmのポリエステルフィルムD(商標:テトロンU2、帝人デュポンフィルム社製)を、フィルムCとMD方向を合致させてドライラミネート方式で積層し画像受容体基材用多層フィルムを得た。
【0022】
実施例3
無機顔料を含む2軸延伸された厚さ110μmのポリプロピレン系多層構造フィルムE(商標:ユポFPG110、ユポコーポレーション社製、多孔質延伸フィルム層が3層より構成される。上下2層はMD延伸があ優勢で、中心層は横延伸が強い)上に、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を約5μmの厚さで設け、その面上に厚さ・品種が異なる2軸延伸された無機顔料を含むポリプロピレン系多層構造フィルムF(商標:ユポGFG95、厚さ95μm、ユポコーポレーション社製、多孔質延伸フィルム層が3層より構成される。上下2層はMD延伸があ優勢で、中心層は横延伸が強い)を、フィルムEとMD方向を合致させてドライラミネート方式で積層し画像受容体基材用多層フィルムを得た。
【0023】
比較例1
無機顔料を含む2軸延伸された厚さ100μmのポリエステルフィルムG(商標:ダイヤホイルW200、三菱化学ポリエステルフィルム社製)上に、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を約5μmの厚さで設け、その面上に無機顔料を含む2軸延伸された厚さ100μmのポリエステルフィルムD(商標:テトロンU2、帝人デュポンフィルム社製)を、フィルムGとMD方向を合致させてドライラミネート方式で積層し画像受容体基材用多層フィルムを得た。
【0024】
比較例2
「表面側フィルムの積層」
厚さ100μmの上質紙の一方面上に、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を約5μmの厚さで設け、その面上に無機顔料を含む2軸延伸された厚さ50μmのポリエステルフィルムA(商標:テトロンU2、帝人社製)を、ドライラミネート方式で積層し芯材層と表面側フィルムを貼り合わせた。
「裏面側フィルムの積層」
さらに上質紙の反対面に、無機顔料を含む2軸延伸された厚さ60μmのポリプロピレン系多層構造フィルムH(商標:ユポFPG60、ユポコーポレーション社製、多孔質延伸フィルム層が3層より構成される。上下2層はMD延伸があ優勢で、中心層は横延伸が強い)を、2液型ポリウレタン系接着剤(商標:TM−329(硬化剤、CAT8B)、東洋モートン社製)を用いて、表面側フィルムとMD方向を合致させてドライラミネート方式で積層し画像受容体基材用多層フィルムを作製した。
【0025】
カール評価
上記の各実施例および比較例で得られた画像受容体基材用多層フィルムについて、それぞれ下記のカール評価を実施し評価した。
画像受容体基材用多層フィルムをA6サイズに断裁し、10℃・50%RH(低温、常湿)の環境下で24時間放置し、水平な机上に受容層面を上にして放置したときのカールを測定した。カールの程度は、凹面側を上にして放置したときの4隅の持ち上がり量を測定しそれらの平均値で表した。次に同一のシートを下記の環境条件下でそれぞれ24時間放置し同様にカールを測定した。
〔環境条件〕
30℃・50%RH(常温・常湿)
30℃・80%RH(常温・高湿)
50℃・20%RH(高温・低湿)
50℃・80%RH(高温・高湿)
各環境下におけるカール値を4隅の持ち上がり量の平均値で表した。10℃・50%RH(低温・常湿)のカール値を基準値として、各環境下のカール値との差の絶対値のうち、最大値をカール変動値とした。一般にプリンターは10〜50℃程度・20〜80%RHの温度・湿度範囲で動作を保証されており、このような環境下でシートのカールが大きく変動すると、プリンター中で走行トラブルを起こしやすくなる。プリンターごとの給紙機構にもよるが、この環境範囲でのカール変動を10mm以下に抑えることが必要である。カール値5mm以下が、実用上「最も好ましい」。
得られた結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
表2が明らかに示しているように、本発明に係る条件を満たしていれば、表面側フィルムと裏面側フィルムが同種のポリマーフィルムであっても(実施例1および3)、異種ポリマーフィルムであっても(実施例2)、環境変化によるカール変動を効果的に抑制する事が出来る。また、ポリマーの種類にも依存せず(実施例1〜3)、ポリマー種が同じであるが、メーカー(実施例1)、あるいは品種・厚さが異なる(実施例3)場合においても本発明に係る条件を満たしていれば、カール抑制に効果的である。また、芯材はあっても(実施例1)、無くても(実施例2および3)、本発明の条件を満たしていれば、効果に変わりない。
しかしながら、表裏フィルムに同ポリマー種を用いていても、MOR値差が大きい場合には、カール値が大き過ぎて好ましくなく(比較例1)、例え配向を揃えMOR値差、分子配向角差が小さくても、吸湿膨張率差が本発明の条件外であっても、カール変動値が大きく実用的ではない。
本発明の条件を満たす場合においてのみ、カール値を実用上好ましい範囲内に抑制する事ができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明は、幅広い温度・湿度の環境変動に対してカール変動の少ない画像受容体基材用多層フィルムである。感熱記録、溶融型熱転写、昇華型熱転写、インクジェット記録、ゼロックス等のプレインペーパーコピー等のオフィス、家庭用の各種情報記録プリンターに使用する場合において、温度・湿度環境変化による白紙カール度を抑制できるため、走行トラブルが防止され、好適である。
Claims (2)
- 少なくとも表面側フィルム、裏面側フィルムを積層した2層以上から構成される画像受容体用基材多層フィルムにおいて、表面フィルムと裏面フィルムのマイクロ波法分子配向計で測定したときのMOR値差が±1.0以下であり、かつ、吸湿膨張率差が1×10−5 1/%RH 以下であることを特徴とする画像受容体基材用多層フィルム。
- 表面フィルムと裏面フィルムとの分子配向角差が±20°以下である事を特徴とする請求項1記載の画像受容体基材用多層フィルム。
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JP2009113380A (ja) * | 2007-11-07 | 2009-05-28 | Ricoh Co Ltd | 画像シート、画像シートの製造方法、及び画像形成装置 |
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2003
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