JP3711647B2 - 染料熱転写受容シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、染料熱転写受容シートに関するものである。更に詳しくは、本発明は、サーマル(熱による記録)プリンター、特に染料熱転写プリンターを使用して熱転写された昇華性染料などの画像形成用染料を受容することができる染料熱転写受容シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、サーマルプリンター、特に鮮明なフルカラー画像がプリント可能な染料熱転写プリンターが注目されてきた。染料熱転写プリンターは、染料インクシートに、染料熱転写受容シート(以下、単に受容シートとする)の染料染着性樹脂を含む受容層を重ね合わせ、サーマルヘッドなどから供給される熱により、染料層の所要箇所の染料を所定濃度だけ受容層上に転写して画像を形成するものである。インクシートは、イエロー、マゼンタおよびシアンの3色、あるいはこれにブラックを加えた4色の染料からなる。フルカラー画像は、インクシートの各色の染料を受容シートに順に繰り返し転写することによって得られる。
【0003】
最近の染料熱転写プリンターには、受容シートに高速プリント(高感度)で高画質の画像が得られることが求められている。このため、受容層への移行性が高い染料を用いたインクシートや、染料染着性が高い受容層用樹脂を用いた受容シートが開発されている。
しかし、このような染料や受容層用樹脂によって形成された画像は、記録感度が高く、高画質である反面、画像保存安定性が低下する問題がある。具体的には、画像形成後、受容シートを重ねて保存したりすると、受容層の染料が受容層と接した別の受容シートの裏面に移行してしまうトラブル(裏移りという)が挙げられる。この裏移りが起こると受容シートの外観が非常に悪くなるためこれまで大きな問題となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高感度で高画質なプリントが得られる受容シートであって、プリントされた受容シートを重ねて保存したとき、受容層の染料が受容層と接した別の受容シートの裏面に移行しない(裏写りのない)染料熱転写画像受容シートを提供をしようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、受容シートの裏移り性を低くするために、背面被覆層の成分に関連して鋭意検討した。背面被覆層は、プリント搬送性向上、静電気の防止、背面被覆層を間違えてプリントした場合の融着防止、受容シート相互の擦れによる受像層の損傷防止等の効果を得る為に形成するものである。その中でも、プリント搬送性向上および静電気の防止の為に添加している帯電防止剤が裏移りの原因となっていることを見出した。
【0006】
一般に帯電防止剤にはカチオン系、アニオン系、ノニオン系の導電性高分子をが用いられることが通例である。中でもカチオン系ポリマーが好んで使用されており、例えばポリエチレンイミン、カチオン性モノマーを含むアクリル系重合体、カチオン変性アクリルアミド系重合体およびカチオン澱粉等が使用されていた。しかし、これらの導電性高分子は、染料に着色され易いため、裏移りの発生原因となる。
【0007】
本発明者等は、背面被覆層に用い、導電性に優れ、裏移りの生じ難い材料について研究を重ねた結果、針状導電性酸化チタンを用いることにより、本発明の目的を達成できることを見出だし本発明に至ったのである。本発明は、シート状支持体の片面に染料受容層、他面に背面被覆層を有する染料熱転写受容シートにおいて、背面被覆層に帯電防止剤として針状導電性酸化チタンを0.10〜2.5g/m 2 の使用量となるように含有せしめ、且つ背面被覆層の表面電気抵抗が20℃、60%RHの環境下で測定して1010(Ω)以下であることを特徴とする染料熱転写受容シートである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の背面被覆層には針状導電性酸化チタンが用いられる。酸化チタンは染料染着性が低いので裏移り防止に効果がある。酸化チタンの形状は球状のものよりも針状の方が好ましい。これは針状の方が少ない添加量で低い表面電気抵抗を得ることができるためである。恐らく、針状粒子の方が接触点が多くなるためと考えられている。
【0009】
針状導電性酸化チタンの使用量は、0.10〜2.5g/m2、好ましくは0.8〜2.5g/m2 程度使用するとよい。0.10未満の場合帯電防止効果が充分に得られず、また2.5g/m2を越えるような使用は効果が飽和し不経済である。
【0010】
本発明において、背面被覆層の表面電気抵抗が1010(Ω)以下であることが望ましい。針状導電性酸化チタンを用いることにより裏移りは改良されるが、背面被覆層の表面電気抵抗が1010(Ω)を越えてしまうと、受容シート同士およびプリント時のプリンター内部部品との摩擦により発生する静電気により、プリント搬送性不良が発生し易くなる。なお、背面被覆層の表面電気抵抗は、表面電気抵抗計Hiresta IP MCP-HT260(三菱油化製)によって測定した値である。
【0011】
表面電気抵抗を1010(Ω)以下に調節するためには、針状導電性酸化チタンの使用量で調節すればよいが、例えば公知の導電性無機顔料や、導電性高分子を背面被覆層に更に添加してもよい。導電性高分子を添加する場合、添加量は本発明の効果を損なわない範囲にとどめる必要がある。
【0012】
本発明の背面被覆層には、バインダーとしてアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等、並びにこれらの樹脂の反応硬化物などを用いることができる。これらの樹脂は、背面被覆層の接着強度向上、受容シートのプリント搬送性、受容層面の傷つき防止の為にも有効なものである。
【0013】
更に、背面被覆層には、融着防止剤を含むことができる。融着防止剤は、受容シートの表裏を間違え、背面被覆層にプリントしてしまった場合に、背面被覆層とインクリボンが融着することなく、受容シートをプリンタ内部から正常に排紙させるために添加される。融着防止剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン粒子、滑剤および離型剤などが用いられる。
【0014】
背面被覆層の塗工量は、0.3〜10g/m2 の範囲内にあることが望ましい。好ましくは1〜5g/m2 である。0.3g/m2 未満であると、受容シートが擦れた時の受容層のきずつきを十分に防止できないことがある。また、塗膜欠陥が発生し、表面電気抵抗値が上がることもある。また10g/m2 を越えると、効果が飽和し不経済である。
【0015】
本発明の受容シートは、シート状支持体の一面上にインキリボンの染料画像を受容する画像受容層が設けられ、さらに受容層が設けられる反対の面に設けられた背面被覆層を有している。必要によりシート状支持体と染料受容層との間に中間層が設けられていてもよい。
本発明に用いられる受容層は、染料染着性樹脂を主成分とし、架橋剤、融着防止剤、および紫外線吸収剤等を適宜加えて構成するものである。染料染着性樹脂としては、アセテートブチレート系樹脂、ポリエステル系樹脂等が染料染着性が高く、高感度な受容層となるので適している。また、架橋剤にはイソシアネート、エポキシ等が用いられる。架橋剤の使用量はその種類にもよるが、通常、染料染着性樹脂に対して2〜25重量%程度であることが望ましい。さらに紫外線吸収剤にはベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、フェニルサリシレートおよびシアノアクリレート等、融着防止剤にはアクリルシリコン樹脂、滑剤および離型剤等が用いられる。
【0016】
本発明の受容シートにおいて、受容層の厚さは、好ましくは1〜10μmであり、より好ましくは2〜7μmである。画像受容層の厚さが1μm未満では、熱転写染料画像の濃度および感度が低下し、あるいはプリント面の光沢が低下する等の不都合を生ずることがある。またそれが10μmを越えると、画像受容層の効果が飽和し、不経済であるばかりでなく、受容層の強度が却て低下することがある。また受容層の塗工量は、一般に乾燥重量で3〜10g/m2 程度であることが望ましい。
【0017】
本発明に用いられるシート状支持体としては、コート紙、アート紙、上質紙などの紙基材、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を紙基材にラミネートしたラミネート紙、ポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン)などのプラスチックフィルムや、あるいはポリオレフィン樹脂と無機顔料を主成分とする二軸延伸した空隙を有する多層構造フィルムなどが例示される。さらに、前記の材料を単体で使用するだけでなく、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、溶融ラミネート法などの公知の方法により、前記材料の二種以上を貼り合わせて多層構造にしたものも使用でき、その組み合わせは限定されない。
【0018】
中でも、多層構造フィルムの代表例である合成紙は、その表面に一軸延伸熱可塑性樹脂紙状層フィルム層を有するので、良好な筆記性および天然紙に近い風合を有する受容シートとなる。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムは熱可塑性を有し、かつ耐熱性に優れるので好ましいフィルムである。
【0019】
本発明に用いられるシート状支持体は、20〜300μmの厚さを有することが望ましい。この厚さが20μm未満であると、得られる受容シートの機械的強度が不十分となり、かつその硬さおよび変形に対する反発力が不十分となり、印画の際に生じる受容シートのカールを十分に防止できないという不都合を生ずることがある。また、厚さが300μmを越えると、得られる受容シートの厚さが課題になることがある。所定容積のプリンターでは、受容シート収容容積に限度があり、受容シートの厚さの増大は、当然プリンター内蔵受容シート収容枚数の低下を招く。この場合、所定枚数の受像シートを収容しようとすれば、プリンターの容積を大きくしなければならず、これはプリンターのコンパクト化を困難にする。
【0020】
本発明の受容シートには、必要に応じて、例えば受容層の帯電防止、画像濃度を上げるためのクッション材、受容層とシート状支持体との接着剤として、シート状支持体と受容層との間に中間層を形成することができる。
【0021】
本発明の受容シートの受容層や裏面被覆層、その他の被覆層は、バーコーター、グラビアコーター、カンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーターなどの公知の塗工機を用いて塗工、乾燥して形成することができる。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、勿論本発明はこれによって限定されるものではない。尚、実施例中の「部」および「%」は、すべて「重量部」および「重量%」を示す。
【0023】
実施例1
厚さ50μmのPETフィルムを芯材として、その表裏面にポリオレフィンを主成分とし、無機顔料として約30%の炭酸カルシウムなどを含む2軸延伸された厚さ60μmの多層構造フィルム(商品名:ユポFPG60 ,王子油化合成紙製)を、ウレタン型接着剤でドライラミネート方式で積層、貼合して、シート状支持体を作製した。
【0024】
このシート状支持体の表面上に、下記組成の受容層用塗液を、固形分塗工量が8g/m2 となるように塗工、乾燥することによって受容層を形成した。次にこのシート状支持体の受容層塗工面と反対の面に、下記組成の塗料1を固形分塗工量が1g/m2 となるように塗工、乾燥することによって背面被覆層を形成した。その後50℃48時間でキュアし、染料熱転写画像受容シートを得た。
【0025】
「受容層用塗液」
ポリエステル樹脂 100部
(東洋紡社製,商品名 バイロン200 )
シリコーンオイル 3部
(信越シリコン社製,商品名 KF393)
イソシアネート 5部
(武田薬品社製,商品名 タケネートD-140N)
トルエン 300部
「塗料1」
アクリル酸エステル共重合体 100部
(ロームアンドハース社製,商品名 プライマールWL−81)
エポキシ樹脂 5部
(シェル化学社製,商品名 エポコートDX−225)
針状導電性酸化チタン 10部
(石原産業社製,商品名 FT−3000)
変性エタノール 1420部
【0026】
参考例1
実施例1と同様にして受容層を形成し、塗料2を用いて裏面被覆層を形成した。その後50℃48時間でキュアし、染料熱転写画像受容シートを得た。
「塗料2」
アクリル酸エステル共重合体 100部
(ロームアンドハース社製,商品名 プライマールWL−81)
エポキシ樹脂 5部
(シェル化学社製,商品名 エポコートDX−225)
球状導電性酸化チタン 35部
(石原産業社製,商品名 ET−500W)
変性エタノール 1420部
【0027】
比較例1
実施例1と同様にして受容層を形成し、塗料3を用いて裏面被覆層を形成した。その後50℃48時間でキュアし、染料熱転写画像受容シートを得た。
「塗料3」
アクリル酸エステル共重合体 100部
(ロームアンドハース社製,商品名 プライマールWL−81)
エポキシ樹脂 5部
(シェル化学社製,商品名 エポコートDX−225)
導電性高分子 50部
(三菱油化製,商品名 サフトマーST1000)
変性エタノール 1420部
【0028】
比較例2
実施例1と同様にして受容層を形成し、塗料4を用いて裏面被覆層を形成した。その後50℃48時間でキュアし、染料熱転写画像受容シートを得た。
「塗料4」
アクリル酸エステル共重合体 100部
(ロームアンドハース社製,商品名 プライマールWL−81)
エポキシ樹脂 5部
(シェル化学社製,商品名 エポコートDX−225)
針状導電性酸化チタン 5部
(石原産業社製,商品名 FT−3000)
変性エタノール 1420部
【0029】
比較例3
実施例1と同様にして受容層を形成し、塗料5を用いて裏面被覆層を形成した。その後50℃48時間でキュアし、染料熱転写画像受容シートを得た。
「塗料5」
アクリル酸エステル共重合体 100部
(ロームアンドハース社製,商品名 プライマールWL−81)
エポキシ樹脂 5部
(シェル化学社製,商品名 エポコートDX−225)
球状導電性酸化チタン 10部
(石原産業社製,商品名 ET−500W)
変性エタノール 1420部
【0030】
<裏移り評価>
上記受容シートを昇華カラービデオプリンター(UP5500,ソニー製)を用いて受容層面にプリントされるように装着して黒べたパターンでプリントした。プリントサンプルを重ねることにより、印画された受容層と背面被覆層を接触させ、40g/cm2 の圧力をかけた状態で60℃,48hr加熱した。加熱後、印画された受容層と接触していた背面被覆層の光学濃度をマクベス濃度計(RD−914,Kollmorgen Corp.製)を用いて測定した。裏移り性の判定は、背面被覆層の光学濃度が0.10未満の場合を良好、0.10以上の場合を不良とした。裏移りテスト前の背面被覆層の光学濃度は、0.05〜0.06である。
【0031】
<表面電気抵抗の測定>
上記受容シートを20℃,60%RHの環境下で2時間、背面被覆層面を調湿した。調湿後、表面電気抵抗計Hiresta IP MCP-HT260(三菱油化製)によって背面被覆層の表面電気抵抗を測定した。
結果を表1に示す
【0032】
<プリント搬送性>
上記受容シートを昇華カラービデオプリンター(UP5500,ソニー製)を用いて受容層面にプリントされるように装着してステップパターンで100枚プリントし、搬送不良が発生した場合および搬送不良が発生しない場合をそれぞれ搬送不良および搬送良好とした。
【0033】
【表1】
【0034】
表1の結果から明らかなように、背面被覆層の帯電防止剤として針状導電性酸化チタンを用いた各実施例は、裏移りに対して効果を有し、プリント搬送性に優れていることがわかる。
【0035】
【発明の効果】
本発明により、高速高画質プリントの高感度受容シートにおいて、プリントされた受容シートを重ねて保存したとき、画像が印画面と接した別の受容シートの裏面に移行しない染料熱転写画像受容シートを得ることができるので産業界に寄与するところが大である。
Claims (1)
- シート状支持体の片面に染料受容層、他面に背面被覆層を有する染料熱転写受容シートにおいて、背面被覆層に帯電防止剤として針状導電性酸化チタンを0.10〜2.5g/m 2 の使用量となるように含有せしめ、且つ背面被覆層の表面電気抵抗が20℃、60%RHの環境下で測定して1010(Ω)以下であることを特徴とする染料熱転写受容シート。
Priority Applications (1)
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JP22671896A JP3711647B2 (ja) | 1996-08-28 | 1996-08-28 | 染料熱転写受容シート |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22671896A JP3711647B2 (ja) | 1996-08-28 | 1996-08-28 | 染料熱転写受容シート |
Publications (2)
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JPH1067180A JPH1067180A (ja) | 1998-03-10 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP22671896A Expired - Fee Related JP3711647B2 (ja) | 1996-08-28 | 1996-08-28 | 染料熱転写受容シート |
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-
1996
- 1996-08-28 JP JP22671896A patent/JP3711647B2/ja not_active Expired - Fee Related
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