JP2004314414A - インフレーションフィルムの製造方法、装置および成形フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】インフレーションフィルムの引張強度等の力学的性質、及び縦延伸倍率や膜厚等を幅広い範囲にわたって調整でき、成形速度の上昇が可能なインフレーションフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】高分子量ポリオレフィンを押出機で溶融し、ついでマンドレルが押出機の第1スクリューと独立して回転する第2スクリューをもつスクリューダイから押し出した後、この押し出しにより形成された溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込むことを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法において、第2スクリュー、マンドレル、アウターダイのいずれかに表面滑性化処理を施したことを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法を用いる。
【選択図】図1
【解決手段】高分子量ポリオレフィンを押出機で溶融し、ついでマンドレルが押出機の第1スクリューと独立して回転する第2スクリューをもつスクリューダイから押し出した後、この押し出しにより形成された溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込むことを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法において、第2スクリュー、マンドレル、アウターダイのいずれかに表面滑性化処理を施したことを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法を用いる。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インフレーションフィルムの製造方法およびそれを用いて得られるインフレーションフィルムに関するものであり、より詳しくは、引張強度等の力学的性質や、膜厚等を幅広い範囲にわたって調整できるインフレーションフィルムの製造方法およびそれを用いて得られる優れた強度物性のインフレーションフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子量ポリオレフィンは、汎用のポリオレフィンに比べ、耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、引張強度等に優れており、エンジニアリング樹脂としてその用途が拡がりつつある。しかしながら、汎用のポリオレフィンに比較して溶融粘度が極めて高く、流動性が悪いため、高分子量ポリオレフィン単体では、汎用ポリオレフィン用の成形機での成形加工が困難である。
【0003】
このため、本出願人は、本発明に先立って、高分子量ポリオレフィンを押出機で溶融し、次いでマンドレルが押出機のスクリューと独立して回転する少なくともL/Dが5のスクリューダイを用い、マンドレルの回転数を可及的に低速にする製造方法を提案し、引張強度や衝撃強度等の力学的性質、及び縦延伸倍率や膜厚等を広い範囲にわたって調整し得ることを提案した(特開平9−183156)。
【0004】
また、特定の成形温度にて成形を行うことにより、従来のフィルム製造方法に比べて分子量の低下の少ないインフレーションフィルムを成形し得ることを知見し、そのことに起因して高分子量ポリオレフィンの優れた物性を保持しうる事実を確認した.(特開平11−10729)。しかしながら、上記発明における生産速度は特開平11−10729の実施例に記載されているように4.5ないしは9kg/h程度であり、経済性の点からさらに高速で成形する技術の開発が必要であった。
【0005】
従来の装置にて生産速度を上げるとダイス内での滞留時間が短くなることから、第二スクリューによって生じたフライトマークを十分に融着することができず、チューブ状に膨らます際にこのフライトマークが起点となり、外観不良やチューブ破れが発生することから、安定的にフィルム化することは困難であった。また、さらに生産速度をあげるとダイス内での樹脂圧が高くなり、押出機の供給能力よりも樹脂圧力が高くなると樹脂を押出すこと自体が不可能となることから、生産速度の上昇には自ずと限界があった。
【0006】
滞留時間を長くするためにダイスを長くする方法があるが、この方法ではダイスにおける樹脂圧が上昇し、樹脂圧が押出機の供給輸送能力よりも高くなると樹脂を押出すこと自体が不可能となる閉塞現象が生じる。さらに高速成形においてはマンドレルおよびアウターダイと樹脂の摩擦熱による樹脂の劣化が生じ、その結果インフレーションフィルムの引張強度(縦方向、横方向とも)、衝撃強度等の力学的特性の低下や色相が悪化するという問題も派生する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、インフレーションフィルムの引張強度、衝撃強度等の力学的性質、及び縦延伸倍率や膜厚等を幅広い範囲にわたって調整できるインフレーションフィルムの製造方法及びその装置、ならびに従来のフィルム製造方法にくらべて少なくとも2倍以上の速度で成形しても分子量の低下を抑え、超高分子量ポリオレフィンの物性を保持した厚みむらのないインフレーションフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる技術的課題を踏まえて、その解決を図るべく研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂を押出機で溶融し、ついでマンドレルが押出機のスクリューと独立して回転し、マンドレル、アウターダイ、第2スクリューの各表面に滑性化処理を施し、ダイス表面の摩擦係数がマンドレル表面の摩擦係数と同等あるいはそれより大きくし、マンドレルの回転数を可及的に低速にすることで、引張強度、衝撃強度等の力学的性質、及び縦延伸倍率や膜厚等を幅広い範囲にわたって調整しうること、ならびに従来のフィルム製造方法にくらべて少なくとも2倍以上の押出量で成形しても分子量の低下の少ないインフレーションフィルムを成形し得ることを知見し、発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、高分子量ポリオレフィンを押出機で溶融し、ついでマンドレルが押出機の第1スクリューと独立して回転する第2スクリューをもつスクリューダイから押し出した後、この押し出しにより形成された溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込むことを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法において、第2スクリュー、マンドレル、アウターダイのいずれかに表面滑性化処理を施したことを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法が提供される。
【0010】
また、前記第1スクリューと第2スクリューの回転数がそれぞれ可変自在であって、かつ、第2スクリューの回転数を第1スクリューの回転数よりも低く設定することが好ましい。
【0011】
また、前記高分子量ポリオレフィンは、極限粘度が4〜10dl/gであるものが好ましく用いられる。
【0012】
本発明は、押出機とスクリューダイからなり、押出機は第1スクリューを装備し、スクリューダイは、第2スクリュー、マンドレル、アウターダイ、気体流路を装備し、第1スクリューと第2スクリューが別々の速度で回転し、気体流路を通して気体を吹き込むことを特徴とする成形機であって、第2スクリュー、マンドレル、アウターダイの表面が表面滑性剤で処理されていることを特徴とするインフレーションフィルムの製造装置を提供する。
【0013】
前記アウターダイとマンドレルが、同等の摩擦係数を有する表面滑性剤で処理されていることは本発明の好ましい態様の1つである。
【0014】
前記アウターダイとマンドレルが、摩擦係数が異なる表面滑性化剤により処理されてており、摩擦係数がより大きい表面滑性化剤がアウターダイに、より小さい表面滑性化剤がマンドレルに処理されていることは好ましい態様の1つである。
【0015】
本発明によれば、極限粘度[η]が4ないし10dl/gの高分子量ポリオレフィンを押出機で溶融し、次いでマンドレルが押出機の第1スクリューと独立して回転する第2スクリューをもつスクリューダイから押し出した後、この押し出しにより形成された溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込むことによって得られた、縦方向(MD)および横方向(TD)の引張強度が750MPaを越え、厚みが1ないし1000μm、フィルムの極限粘度[η]が4dl/g以上であることを特徴とするインフレーションフィルムが提供される。
【0016】
また、本発明によれば、前記高分子量ポリオレフィンが高分子量ポリエチレンである上記インフレーションフィルムが提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のインフレーションフィルムの製造方法は、第2スクリューを持つ表面滑性化処理されたスクリューダイの表面滑性化処理されたマンドレルが、押出機の第1スクリューと独立して回転するので、第2スクリューダイの口径を大きくして第2スクリューの回転数を第1スクリューの回転数よりも低速化することが可能であり、表面滑性化処理されたマンドレルと樹脂の摩擦熱による樹脂の熱劣化を防止できる。その結果、インフレーションフィルムの引張強度(縦方向、横方向とも)、衝撃強度等の力学的性質や、縦延伸倍率、膜厚等を幅広く調整できるインフレーションフィルムを製造できるようになる。なお、スクリューダイから押出されたチューブ状のフィルム内部には、気体が吹き込まれ、チューブ状のフィルムが膨張し、同時に延伸・冷却されて完成品としてのフィルムとなる。
【0018】
本発明において最も重要な点は、第2スクリュー21、アウターダイ22、マンドレル23に表面滑性化処理をしていることである。表面滑性化処理をすることにより、ダイ内を流れる樹脂と第2スクリュー表面、アウターダイ表面、およびマンドレル表面との間でスリップが生じ、高吐出量で樹脂を押し出しても圧力を過大にすることなく、安定した押出が可能となる。これに対して、表面滑性化処理をしない場合は、圧力が過大となり、押出しができなくなる場合がある。また、押出ができる場合でも、熱可塑性樹脂を均一融合した溶融物とならないため、ダイから押出されたチューブ状フィルムの内部に空気を吹き込んだ際にチューブが均一に膨らまなかったり、破れたりして良好なフィルムが得られないことがある。
【0019】
本発明において、表面滑性化処理とは、装置の部材表面を摩擦係数を小さくする物質でコーティングあるいはメッキ等により部材表面を覆う処理をすることをいい、そのような性質のある物質を表面滑性化剤と称する。
【0020】
表面滑性化剤としては、特に限定はしないが、金属表面の摩擦係数を低下させる方法として知られているテフロン(登録商標)を含有した無電解ニッケルメッキ(商標名カニフロン)、ニッケル−ホウ素メッキ(商標名カニボロン)、セラッミックコーティング、4ふっ化エチレン(商標名テフロン(登録商標)PTFE)、4ふっ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(商標名テフロン(登録商標)PFA)、4ふっ化エチレン・6ふっ化プロピレン共重合樹脂(商標名テフロン(登録商標)FEP)などのフッ素樹脂コーティング等が使用できる。また、表面の粗度も滑り性に影響する。成形時のダイスの圧力を低下させるには表面の摩擦係数が低いものほどよく、例えば、後述の摩擦係数の測定方法により測定した場合に、好ましくは0.22以下、より好ましくは0.17以下の処理を行うことが好ましい。
【0021】
本発明に用いられるスクリューダイにおいては、アウターダイ表面の摩擦係数がマンドレル表面の摩擦係数と同等あるいはそれ以上大きいものを用いることが好ましい。ダイス内に生じる圧力が効率的にフライトマークの融着に費やされるため、従来より短い滞留時間での融着ができ、ダイスを長くすることなく高速での成形が可能となる。
【0022】
また、アウターダイとマンドレルの表面を処理する表面滑性化剤は、同等の摩擦係数のものを使用しても、異なるものから使用してもよい。異なる摩擦係数のものを処理する場合は、摩擦係数のより大きいものをアウターダイに、より小さいものをマンドレルに用いて処理することが好ましい。摩擦係数が異なる場合とは、例えば後述する方法で測定される摩擦係数の差異が0.02以上の場合をいう。これにより、マンドレルの回転に追随するチューブの回転を抑制することができ、さらに膨らんだチューブのゆれが小さくなるため、安定な成形が可能となる。
【0023】
本発明においては、入口部20Aからスクリューダイ出口20Cまでの長さ(Lと略す。)と、スクリューダイ出口20Cにおけるアウターダイ22の内径(Dと略す)との比L/Dは、少なくとも4以上、より好ましくは5以上である。L/Dが5未満のスクリューダイでは、しばしば、ダイから押出されたチューブ状フィルムの内部に空気を吹き込んだ際にチューブが均一に膨らまなかったり、破れたりして良好なフィルムが得られないことがある。一方、L/Dの上限は、特に限定されないが、高速押出成形時の圧力上昇を抑えるために実用上70以下が好ましい。L/Dが20以下のスクリューダイを用いた場合は、ダイ内の溶融樹脂に歪みが残留することによりチューブが破れたりすることが少なく、なおかつ圧力が過大とならないため良好なフィルムを、高速で安定的に得られるために、より好ましい。なお、スクリューダイの出口20Cの断面積は生産性と相関関係があり、断面積が大きい方が成形速度を上げることができる。
【0024】
また、本発明において、高分子量ポリオレフィンの成形温度は、原料として用いる超高分子量ポリオレフィンの種類等によってもことなるが、通常、融点以上、370℃以下、好ましくは160℃ないし350℃、より好ましくは160℃ないし220℃の温度範囲で行うことが好ましい。押出温度が融点未満の温度では、ダイ内での樹脂の閉塞現象が生じやすくなる。
【0025】
チューブ状フィルムの内部に吹き込む上記の気体は通常空気であるが、窒素等を用いてもよい。また、溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込む場合には、膨比は6以上、好ましくは7ないし20倍、特に、7ないし12倍とするのが好ましい。
【0026】
膨比が6未満では、横方向(TD)の厚みが不均一になる傾向があるばかりでなく、横方向の配向結晶が小さいために、引張強度、衝撃強度等の機械的物性を向上させることが困難となる場合があり、一方、膨比が20倍を越えると、フィルムが白濁したり、破裂現象を生じる傾向にある。また、高速で成形するとダイスから出てくるチューブの厚みが厚くなるダイスウェル現象が生じるため、横方向の厚みを均一にするには膨比を大きくとる必要がある。
【0027】
本発明においては、縦延伸倍率を7以上、好ましくは7ないし50倍、特に8ないし40倍とすることが好ましい。縦延伸倍率が7倍未満では、バルーン(膨張チューブ)が揺れる傾向があり、結果的に縦方向(MD)、横方向(TD)の厚みが不均一になるばかりでなく、機械的特性のバラツキが大きくなることがある。一方、縦延伸倍率が40倍を越えると、フィルムが破裂現象を生じる傾向がある。
【0028】
本発明において、膨比とは、スクリューダイ出口における膨張前のチューブの円周長さと、膨張後のチューブの円周長さとの比をいい、縦延伸倍率とは、ダイからの樹脂の流出速度(線速度)に対するピンチロールの引き取り速度の比をいう。
【0029】
膨張させたフィルムの冷却は、フィルムの外部をブロアー(送風機)を具備したエアーリングから均一に吹き出されるエアーによって行うか、又はフィルムに密着する水冷あるいは空冷式の冷却リングによって行うこともできる。冷却後のフィルムは常法、すなわち、安定板で次第に折りたたまれ、次にピンチロールで2枚合わせのフラットなフィルムになり、製品巻取機に巻き取られる。なお、本発明によって得られたフィルムは、予めヒートセットしておくことにより熱収縮率を10%未満程度に下げることができる。
【0030】
本発明に用いられる前記超高分子量ポリオレフィンとしては、デカリン溶媒中135℃で測定した極限粘度[η]が4以上、好ましくは4ないし10dl/gである高分子量ポリオレフィンが用いられる。
【0031】
極限粘度が4dl/g未満のものは、引張強度、衝撃強度等の機械的強度が充分でない。また、溶融粘度が低いため、スクリューダイ中で超高分子量ポリオレフィンの溶融物とマンドレルの共廻りによるねじれや、マンドレルの撓みによる偏肉が生じ易く均一なフィルムが得られ難く成形性が劣る。極限粘度[η]の上限は、10dl/gである。極限粘度が10dl/gを越えるものは、溶融粘度が高いため、押出成形温度を上げざるをえず、その結果、前記したように、樹脂の劣化が激しくなり、極限粘度[η]が大きく低下し、得られるフィルムの機械的物性が悪化する。
【0032】
本発明で用いられる高分子量ポリオレフィンとは、エチレン、プロピレンおよび炭素数4ないし8のα−オレフィンを、例えばチーグラー系触媒を用いたスラリー重合により、単独もしくは二つ以上の組み合わせで重合して得られる。好ましい共重合体はエチレンと少量のプロピレンもしくは炭素数4ないし8のα−オレフィンの単独ないし二つ以上の組み合わせによる共重合体である。エチレン共重合体の場合、共単量体の量は5モル%以下が好ましい。これらの中で特に好ましいのはエチレンの単独重合体である。高分子量ポリエチレンは、直鎖状の分子構造を有しているので、成形されたインフレーションフィルムを延伸加工することにより、さらに高強度、高弾性の繊維とすることが可能である。本発明によって製造される超分子量ポリエチレンのインフレーションフィルムの好ましい極限粘度[η]は4dl/g以上である。
【0033】
本発明にもちいられるインフレーションフィルムの製造装置は、押出機に連結されるスクリューダイが表面滑性化処理されているものを用いる点に特徴を有するものである。すなわち、本発明のスクリューダイは、第1スクリューとは別個に表面滑性化処理された第2スクリューを備えており、この第2スクリュー先端に連結された表面滑性化処理されたマンドレルが表面滑性化処理された第2スクリューの回転と共に回転するように構成されており、しかも、押出機の第1スクリューと表面滑性化処理された第2スクリューとが任意の回転数で独立して回転し、第2のスクリューの回転数を第1スクリューの回転数よりも低く設定できるようになっている。この構成を有することによって、前述した請求項1と同様の作用により、インフレーションフィルムの引張強度、衝撃強度等の力学的性質や、縦延伸倍率、膜厚等を幅広い範囲にわたって調整できるようになる。
【0034】
また、このインフレーションフィルムの製造装置には、表面滑性化処理されたマンドレルの先端に安定棒を設けることにより、パイプ状に押出された溶融状態の高分子量ポリオレフィンの、エアーリングから吹き出されるエアーの圧力による横揺れが防げるので、膨張したフィルムの膜厚精度が一層向上する。本発明の装置を用いて製造されたインフレーションフィルムの円周方向の膜圧の最大値と最小値の差は、10μm以下であった。
【0035】
本発明に係るインフレーションフィルムの製造装置を図面に基づいて説明する。図1に示す如く、溝付シリンダー2と、圧縮比が1ないし2.5、好ましくは、1.3ないし1.8の範囲の第1スクリュー3とを有する押出機1を備えており、この第1スクリュー3の先端部には、トーピド10がネジによって連結されている。このトーピド10は、第1スクリュー3の先端部で樹脂が滞留するのを防ぐため、円錐状に形成することが好ましい。
【0036】
また、トーピド10の先端、すなわち、溶融樹脂の流れ方向下流側には、スクリューダイ20が、その軸線をトーピド10の軸線方向と直交する
方向へ向けた状態で設けられている。このスクリューダイ20は、トーピド10と対向する位置に第2スクリュー21を備えており、この第2スクリュー21は、駆動手(図示せず)によって、第1スクリュー3とは、独立に回転されるようになっている。第2スクリューの先端におけるアウターダイとマンドレルはいずれも表面滑性化処理が行われているが、同軸精度は0.5mm以下、好ましくは0.2mm以下さらに好ましくは0.1mm以下である。同軸度が0.5mmを超えるとスクリューダイからでる膨張前のチューブ状成形品において円周方向に極端な厚み差が生じ、ダイスから垂直に出てくることが難しくなり、膨張したチューブ状フィルムが不安定となり偏肉のおおきいフィルムとなる。
【0037】
また、第2スクリュー21は、略円柱状のスペースが形成された中空状のアウターダイ22を備えており、このアウターダイ22のスペースにマンドレル23が挿通されている。上記中空状のアウターダイ22は、図1の上方へいくに従って、次第に縮径していてもよいし、縮径していなくてもよい。このマンドレル23は第2スクリュー21の先端部(上端部)に固着されており、第2スクリュー21と共に回転されるようになっている。
【0038】
また、第2スクリュー21の内部及びマンドレル23の内部には気体流路24が形成されている。この気体流路24は、第2スクリュー21の下端から金属シャフトを通って安定棒26の先端まで形成されている。
【0039】
なお、上記インフレーションフィルムの製造装置では、溝付きシリンダー2の溝部2Aにより、超高分子量ポリオフィン粉末が押出機前方へ安定して供給されるようになっている。上記のスクリューダイ20は、L/Dが少なくとも4以上、より好ましくは少なくとも5以上、好ましくは5ないし70、より好ましくは5ないし20である。
【0040】
スクリューダイ20の流路は前述の如く、基本的には、スクリューダイ出口20Cに向かって流路面積が狭くなる。すなわち、テーパダイであるが、スクリューダイ上端部(20Cより上部)は、流路面積が変化しない、いわゆるストレートであることが成形品の寸法精度および寸法安定性を高度に保持することができるので好ましい。ただしストレート部が長くなると圧力が大きくなる。ストレート部の長さは、L/Dが0.1ないし5.0、好ましくは0.5ないし3.0である。
【0041】
本発明に用いられるインフレーションフィルムの製造装置は、前記構成を備えていることが重要な特徴であり、スクリューダイ20の下流側には、スクリューダイ20から押し出されたパイプ状のパリソン30をエアリング25で冷却した後、気体流路24を通して、空気等の気体により膨比7倍以上に膨張させ、厚さ1ないし1000μm、好ましくは1ないし100μmのインフレーションフィルム31とし、それを折り畳んだ後引取る安定板、ピンチロール、引取機(いすれも図示せず)等、公知のインフレーションフィルム成形機が具備する装置を備えている。
【0042】
また、必要に応じて、アウターダイ22の上端部内方へ安定棒26が、エアーリング25、さらには、防風筒27を挿通した状態に設けられており、安定棒26は、金属シャフトとシャフトに遊嵌されたパイプ形状物から構成され、金属シャフトは、マンドレルの先端とネジにより連結されている。金属シャフトは第2スクリュー21の回転に同調して回転するが、パイプ形状物はシャフトに遊嵌されているので、パイプ形状物の外表面に接触しながら直線的に押出されるパリソン30をねじることはない。
【0043】
上記インフレーションフィルムの製造装置の押出機1から押出された溶融樹脂は、スクリューダイ20の第2スクリュー21に受け止められる。また、上記第2スクリュー21の回転数は押出機1の図1に示す圧力計11で示される圧力の値が一定範囲となるように設定されている。スクリューダイ20から押出された溶融状態のパリソン30は、押出し速度よりも速い速度で引き取られる。次いで、気体流路を経て安定棒の先端から放出される気体により所定の膨比に膨張されてインフレーションフィルムが得られる。
【0044】
本願発明の装置を用い、極限粘度[η]が4ないし10dl/gの高分子量ポリオレフィンを押出機で溶融し、次いでマンドレルが押出機の第1スクリューと独立して回転し、表面に滑性化処理を施しかつアウターダイ表面の摩擦係数がマンドレル表面の摩擦係数と同等あるいはそれより大きい、第2のスクリュー をもつスクリューダイから前記溶融状態の高分子量ポリオレフィンを押し出した後、この押し出しにより形成された溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込むことによって高分子量ポリエチレンのインフレーションフィルムが得られる。かかる方法によって得られる高分子量ポリエチレンのインフレーションフィルムは、厚みが1ないし1000μm、縦方向(MD)および横方向(TD)の引張強度が70MPaを越え、R値が10μm以下、およびフィルムの極限粘度[η]が4dl/g以上であるインフレーションフィルムを得ることができる。
【0045】
ここで、縦方向(MD)とはフィルムの引き取り方向を言い、横方向(TD)とはそれに直交する方向である。また、R値とは、フィルムの厚みのバラツキを示す指標であって、インフレーションフィルムの厚みを横方向で等間隔に32点で測定した時の最大値と最小値の差を示すものである。
【0046】
このフィルムは、成形時に分子量の低下を低く抑えるために、超高分子量ポリオレフィンの高強度物性を発現することができるものであり、かつ、成形物であるインフレーションフィルムの膜厚の最大値と最小値の差が10μm以下という、実質的に厚みむらのないインフレーションフィルムが提供されるものであり、この点で、従来の高分子量ポリオレフィンのフィルム成形法に比べて顕著性がある。
【0047】
本発明によって得られる超高分子量ポリオレフィンインフレーションフィルムの用途としては、サイロ、ホッパー、シュート等のライニング材、アルカリ電池、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の非水電解質電池および電解質電池用セパレータ、ロール、パイプ、鋼管等の被覆用収縮フィルム、食品包装用等の包装フィルム、包装用バック、包装用容器、ヘルメット、セイルボード、スキー滑走面等のスポーツ用品などが例示され、その他、具体的には、スライディングテープ、スラストワッシャー、すべりシート、ガイド、ドクターナイフ、カセットテープライナー、カセットテープ用スリットシート、耐極低温性袋、熱収縮性フィルム、低温保存用バック、包装用テープ、高強度延伸糸用原糸、コンデンサーフィルム、絶縁フィルム、回路基板用フィルム、ポリオレフィン被覆ゴムロール、食品充充填パック、血液パック、スプリットヤーン、登山用ロープ、織布、延伸テープ、血小板凍結防止用フィルター、帆布、防爆シート、切傷防止用保護衣、安全手袋、重布、電気ケーブル、テンションメンバー、スピーカー振動板、装甲板、レーダードーム、不織布、防刃および防弾用衣類、合成紙、屋外展示物用印刷紙、航空便用封筒、水分吸収剤、酸素吸収剤等の包装材料、通気性包装体、滅菌・殺菌包装材料、医療用基布、医療用器具の包装材料、水分調節物品のシール・包装、分離膜、各種フィルター等のろ過材、フィルターの担持体、農業用ハウス、マルチフィルム等の農業用フィルム、グリーンフィルム、エレクトレットフィルム、ハウスラップ等の建築用資材等を例示することができる。
【0048】
【実施例】以下に実施例によって本発明を説明する。この実施例は、本発明の好適な態様を説明するためのものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0049】
【実施例1】図1に示すインフレーションフィルムの製造装置において、以下の仕様による装置を用いて高分子量ポリエチレン製インフレーションフィルムを製造した。
装置の仕様押出機の第1スクリュー外径60mmφ、スクリュー有効長さ1800mm、フライトピッチ50mm一定、スクリュー圧縮比1.5、押出機に対して立設してなるスクリューダイ有効長さ800mm(L/D=9)、ダイ出口アウターダイ内径105mmφ、ダイ出口マンドレル外径95mmφ、スクリューダイの第2スクリュー外径110mmφ、第2スクリュー有効長さ200mm、フライトピッチ62mm一定、第2スクリュー圧縮比1.0、第2スクリュー、アウターダイ、マンドレルの各表面にテフロン(登録商標)を含有した無電解ニッケルメッキ(表面摩擦係数0.21)、安定棒の外径60mmφ、安定棒長さ800mm、第2スクリュー内部、マンドレル内部及び安定棒シャフト内部に延在してなる18mmφの気体流路、安定板、ピンチロール及び製品巻取機を具備している。
【0050】
<インフレーションフィルムの製造>高分子量ポリエチレン[η]:8.2dl/g、嵩密度:0.45g/cm3 の粉末樹脂を用い、押出機、図1に示すジョイント部(J)、ダイ基部(D1)及びダイ先端部(D2)の設定温度を各々200℃、180℃、160℃、160℃にし、第1スクリュー回転数を21rpm、第2スクリュー回転数を1.3rpmに設定し、樹脂押出量を20kg/h、ピンチロールで6.0m/mimの速度で引取りながら、第2スクリュー内部、マンドレル及び安定棒シャフトの内部に延在してなる18mmφの気体流路から圧搾空気を吹込んで、パリソンをアウターダイ内径105mmφの7.6倍に膨らませて、折り幅1250mm、厚み25μmからなる高分子量ポリエチレン製インフレーションフィルムを20kg/hにて安定して製造した。
【0051】
【実施例2】アウターダイおよびマンドレルの表面にテフロン(登録商標)PFA樹脂をコーティング(摩擦係数0.17)を施した以外は実施例1と同様のスクリューダイスを具備し、第1スクリュー回転数を43rpm、第2スクリュー回転数を1.3rpmに設定し、樹脂押出量を40kg/h、アウターダイ内径105mmφの8.5倍に膨らませて、ピンチロールで6.5m/mimの速度で折幅1400mmの40μからなる高分子量ポリエチレン製インフレーションフィルムを安定して成形した。
【0052】
【実施例3】アウターダイの表面にテフロン(登録商標)PTFEコーティング(摩擦係数0.17)、マンドレルの表面にテフロン(登録商標)PTFEコーティング(摩擦係数0.13)を施した以外は実施例2と同様のスクリューダイスを具備し、第1スクリュー回転数を52rpm、第2スクリュー回転数を1.5rpmに設定し、樹脂押出量を50kg/h、アウターダイ内径105mmφの9.5倍に膨らませて、ピンチロールで7.0m/minの速度で折幅1560mmの40μmからなる高分子量ポリエチレン製インフレーションフィルムを安定して成形した。
【0053】
【比較例1】<比較例1>第2スクリュー、アウターダイ、マンドレルの各表面にクロムメッキ(摩擦係数0.25)を施したダイスを具備した以外は実施例1の条件にて成形したところ、ダイスにおける樹脂圧力が過大となり成形できなかった。
【0054】
実施例1ないし3、比較例1で得られた結果を表1に示す。なお、実施例1ないし3で得られたインフレーションフィルムのR値の測定値は、すべて10μm以下であった。
【0055】
(1)引張強度(MD:機械方向)、引張強度(TD:機械交差方向)の各値は、以下の条件下で得られた引張強度(TS:MPa)の値である。
引張試験:試験片形状 JIS K6781チャック間:86mm引張速度:200mm/min温 度:23℃
(2)フィルムの厚みは、以下の条件で測定された値(μm)である。
測定装置:東洋精機製測厚器 デジシックネステスター検出能力1μm(検出精度2μm)
測定方法:フィルム円周方向(TD)を等間隔に32点測定し、その平均値を厚みとし、最大値と最小値の差をR値とした。
規 格:JIS Z1702圧 子:5mmφ荷 重:125g測定圧:0.637kg/cm2温 度:23℃
(3) 本願明細書中における極限粘度[η]は、デカリン溶媒にて135℃で測定した値である。測定法はASTM D4020に基づいて行う。
【0056】
(4)摩擦係数は、新東科学株式会社HEIDONトライボキヤミューズTYPE94i(分解能00.01)をもいちて測定した。
【0057】
【表1】
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、インフレーションフィルムの引張強度等の力学的性質、及び縦延伸倍率や膜厚等を幅広い範囲にわたって調整でき、成形速度の上昇が可能なインフレーションフィルムの製造方法が提供される。また、これを用いて製造されたインフレーションフィルムは、高速成形時においても分子量の低下を抑えることができ、高分子量ポリオレフィンの物性を保持し、かつ、経済性にすぐれたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】インフレーションフィルム製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 押出機
2 溝付きシリンダー
3 第1スクリュー
10 トーピード
11 押出機圧力計
20 スクリューダイ
21 第2スクリュー
22 アウターダイ
23 マンドレル
24 気体流路
25 エアリング
26 安定棒
27 防風筒
30 パリソン
31 インフレーションフィルム
【発明の属する技術分野】
本発明は、インフレーションフィルムの製造方法およびそれを用いて得られるインフレーションフィルムに関するものであり、より詳しくは、引張強度等の力学的性質や、膜厚等を幅広い範囲にわたって調整できるインフレーションフィルムの製造方法およびそれを用いて得られる優れた強度物性のインフレーションフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子量ポリオレフィンは、汎用のポリオレフィンに比べ、耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、引張強度等に優れており、エンジニアリング樹脂としてその用途が拡がりつつある。しかしながら、汎用のポリオレフィンに比較して溶融粘度が極めて高く、流動性が悪いため、高分子量ポリオレフィン単体では、汎用ポリオレフィン用の成形機での成形加工が困難である。
【0003】
このため、本出願人は、本発明に先立って、高分子量ポリオレフィンを押出機で溶融し、次いでマンドレルが押出機のスクリューと独立して回転する少なくともL/Dが5のスクリューダイを用い、マンドレルの回転数を可及的に低速にする製造方法を提案し、引張強度や衝撃強度等の力学的性質、及び縦延伸倍率や膜厚等を広い範囲にわたって調整し得ることを提案した(特開平9−183156)。
【0004】
また、特定の成形温度にて成形を行うことにより、従来のフィルム製造方法に比べて分子量の低下の少ないインフレーションフィルムを成形し得ることを知見し、そのことに起因して高分子量ポリオレフィンの優れた物性を保持しうる事実を確認した.(特開平11−10729)。しかしながら、上記発明における生産速度は特開平11−10729の実施例に記載されているように4.5ないしは9kg/h程度であり、経済性の点からさらに高速で成形する技術の開発が必要であった。
【0005】
従来の装置にて生産速度を上げるとダイス内での滞留時間が短くなることから、第二スクリューによって生じたフライトマークを十分に融着することができず、チューブ状に膨らます際にこのフライトマークが起点となり、外観不良やチューブ破れが発生することから、安定的にフィルム化することは困難であった。また、さらに生産速度をあげるとダイス内での樹脂圧が高くなり、押出機の供給能力よりも樹脂圧力が高くなると樹脂を押出すこと自体が不可能となることから、生産速度の上昇には自ずと限界があった。
【0006】
滞留時間を長くするためにダイスを長くする方法があるが、この方法ではダイスにおける樹脂圧が上昇し、樹脂圧が押出機の供給輸送能力よりも高くなると樹脂を押出すこと自体が不可能となる閉塞現象が生じる。さらに高速成形においてはマンドレルおよびアウターダイと樹脂の摩擦熱による樹脂の劣化が生じ、その結果インフレーションフィルムの引張強度(縦方向、横方向とも)、衝撃強度等の力学的特性の低下や色相が悪化するという問題も派生する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、インフレーションフィルムの引張強度、衝撃強度等の力学的性質、及び縦延伸倍率や膜厚等を幅広い範囲にわたって調整できるインフレーションフィルムの製造方法及びその装置、ならびに従来のフィルム製造方法にくらべて少なくとも2倍以上の速度で成形しても分子量の低下を抑え、超高分子量ポリオレフィンの物性を保持した厚みむらのないインフレーションフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる技術的課題を踏まえて、その解決を図るべく研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂を押出機で溶融し、ついでマンドレルが押出機のスクリューと独立して回転し、マンドレル、アウターダイ、第2スクリューの各表面に滑性化処理を施し、ダイス表面の摩擦係数がマンドレル表面の摩擦係数と同等あるいはそれより大きくし、マンドレルの回転数を可及的に低速にすることで、引張強度、衝撃強度等の力学的性質、及び縦延伸倍率や膜厚等を幅広い範囲にわたって調整しうること、ならびに従来のフィルム製造方法にくらべて少なくとも2倍以上の押出量で成形しても分子量の低下の少ないインフレーションフィルムを成形し得ることを知見し、発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、高分子量ポリオレフィンを押出機で溶融し、ついでマンドレルが押出機の第1スクリューと独立して回転する第2スクリューをもつスクリューダイから押し出した後、この押し出しにより形成された溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込むことを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法において、第2スクリュー、マンドレル、アウターダイのいずれかに表面滑性化処理を施したことを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法が提供される。
【0010】
また、前記第1スクリューと第2スクリューの回転数がそれぞれ可変自在であって、かつ、第2スクリューの回転数を第1スクリューの回転数よりも低く設定することが好ましい。
【0011】
また、前記高分子量ポリオレフィンは、極限粘度が4〜10dl/gであるものが好ましく用いられる。
【0012】
本発明は、押出機とスクリューダイからなり、押出機は第1スクリューを装備し、スクリューダイは、第2スクリュー、マンドレル、アウターダイ、気体流路を装備し、第1スクリューと第2スクリューが別々の速度で回転し、気体流路を通して気体を吹き込むことを特徴とする成形機であって、第2スクリュー、マンドレル、アウターダイの表面が表面滑性剤で処理されていることを特徴とするインフレーションフィルムの製造装置を提供する。
【0013】
前記アウターダイとマンドレルが、同等の摩擦係数を有する表面滑性剤で処理されていることは本発明の好ましい態様の1つである。
【0014】
前記アウターダイとマンドレルが、摩擦係数が異なる表面滑性化剤により処理されてており、摩擦係数がより大きい表面滑性化剤がアウターダイに、より小さい表面滑性化剤がマンドレルに処理されていることは好ましい態様の1つである。
【0015】
本発明によれば、極限粘度[η]が4ないし10dl/gの高分子量ポリオレフィンを押出機で溶融し、次いでマンドレルが押出機の第1スクリューと独立して回転する第2スクリューをもつスクリューダイから押し出した後、この押し出しにより形成された溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込むことによって得られた、縦方向(MD)および横方向(TD)の引張強度が750MPaを越え、厚みが1ないし1000μm、フィルムの極限粘度[η]が4dl/g以上であることを特徴とするインフレーションフィルムが提供される。
【0016】
また、本発明によれば、前記高分子量ポリオレフィンが高分子量ポリエチレンである上記インフレーションフィルムが提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のインフレーションフィルムの製造方法は、第2スクリューを持つ表面滑性化処理されたスクリューダイの表面滑性化処理されたマンドレルが、押出機の第1スクリューと独立して回転するので、第2スクリューダイの口径を大きくして第2スクリューの回転数を第1スクリューの回転数よりも低速化することが可能であり、表面滑性化処理されたマンドレルと樹脂の摩擦熱による樹脂の熱劣化を防止できる。その結果、インフレーションフィルムの引張強度(縦方向、横方向とも)、衝撃強度等の力学的性質や、縦延伸倍率、膜厚等を幅広く調整できるインフレーションフィルムを製造できるようになる。なお、スクリューダイから押出されたチューブ状のフィルム内部には、気体が吹き込まれ、チューブ状のフィルムが膨張し、同時に延伸・冷却されて完成品としてのフィルムとなる。
【0018】
本発明において最も重要な点は、第2スクリュー21、アウターダイ22、マンドレル23に表面滑性化処理をしていることである。表面滑性化処理をすることにより、ダイ内を流れる樹脂と第2スクリュー表面、アウターダイ表面、およびマンドレル表面との間でスリップが生じ、高吐出量で樹脂を押し出しても圧力を過大にすることなく、安定した押出が可能となる。これに対して、表面滑性化処理をしない場合は、圧力が過大となり、押出しができなくなる場合がある。また、押出ができる場合でも、熱可塑性樹脂を均一融合した溶融物とならないため、ダイから押出されたチューブ状フィルムの内部に空気を吹き込んだ際にチューブが均一に膨らまなかったり、破れたりして良好なフィルムが得られないことがある。
【0019】
本発明において、表面滑性化処理とは、装置の部材表面を摩擦係数を小さくする物質でコーティングあるいはメッキ等により部材表面を覆う処理をすることをいい、そのような性質のある物質を表面滑性化剤と称する。
【0020】
表面滑性化剤としては、特に限定はしないが、金属表面の摩擦係数を低下させる方法として知られているテフロン(登録商標)を含有した無電解ニッケルメッキ(商標名カニフロン)、ニッケル−ホウ素メッキ(商標名カニボロン)、セラッミックコーティング、4ふっ化エチレン(商標名テフロン(登録商標)PTFE)、4ふっ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(商標名テフロン(登録商標)PFA)、4ふっ化エチレン・6ふっ化プロピレン共重合樹脂(商標名テフロン(登録商標)FEP)などのフッ素樹脂コーティング等が使用できる。また、表面の粗度も滑り性に影響する。成形時のダイスの圧力を低下させるには表面の摩擦係数が低いものほどよく、例えば、後述の摩擦係数の測定方法により測定した場合に、好ましくは0.22以下、より好ましくは0.17以下の処理を行うことが好ましい。
【0021】
本発明に用いられるスクリューダイにおいては、アウターダイ表面の摩擦係数がマンドレル表面の摩擦係数と同等あるいはそれ以上大きいものを用いることが好ましい。ダイス内に生じる圧力が効率的にフライトマークの融着に費やされるため、従来より短い滞留時間での融着ができ、ダイスを長くすることなく高速での成形が可能となる。
【0022】
また、アウターダイとマンドレルの表面を処理する表面滑性化剤は、同等の摩擦係数のものを使用しても、異なるものから使用してもよい。異なる摩擦係数のものを処理する場合は、摩擦係数のより大きいものをアウターダイに、より小さいものをマンドレルに用いて処理することが好ましい。摩擦係数が異なる場合とは、例えば後述する方法で測定される摩擦係数の差異が0.02以上の場合をいう。これにより、マンドレルの回転に追随するチューブの回転を抑制することができ、さらに膨らんだチューブのゆれが小さくなるため、安定な成形が可能となる。
【0023】
本発明においては、入口部20Aからスクリューダイ出口20Cまでの長さ(Lと略す。)と、スクリューダイ出口20Cにおけるアウターダイ22の内径(Dと略す)との比L/Dは、少なくとも4以上、より好ましくは5以上である。L/Dが5未満のスクリューダイでは、しばしば、ダイから押出されたチューブ状フィルムの内部に空気を吹き込んだ際にチューブが均一に膨らまなかったり、破れたりして良好なフィルムが得られないことがある。一方、L/Dの上限は、特に限定されないが、高速押出成形時の圧力上昇を抑えるために実用上70以下が好ましい。L/Dが20以下のスクリューダイを用いた場合は、ダイ内の溶融樹脂に歪みが残留することによりチューブが破れたりすることが少なく、なおかつ圧力が過大とならないため良好なフィルムを、高速で安定的に得られるために、より好ましい。なお、スクリューダイの出口20Cの断面積は生産性と相関関係があり、断面積が大きい方が成形速度を上げることができる。
【0024】
また、本発明において、高分子量ポリオレフィンの成形温度は、原料として用いる超高分子量ポリオレフィンの種類等によってもことなるが、通常、融点以上、370℃以下、好ましくは160℃ないし350℃、より好ましくは160℃ないし220℃の温度範囲で行うことが好ましい。押出温度が融点未満の温度では、ダイ内での樹脂の閉塞現象が生じやすくなる。
【0025】
チューブ状フィルムの内部に吹き込む上記の気体は通常空気であるが、窒素等を用いてもよい。また、溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込む場合には、膨比は6以上、好ましくは7ないし20倍、特に、7ないし12倍とするのが好ましい。
【0026】
膨比が6未満では、横方向(TD)の厚みが不均一になる傾向があるばかりでなく、横方向の配向結晶が小さいために、引張強度、衝撃強度等の機械的物性を向上させることが困難となる場合があり、一方、膨比が20倍を越えると、フィルムが白濁したり、破裂現象を生じる傾向にある。また、高速で成形するとダイスから出てくるチューブの厚みが厚くなるダイスウェル現象が生じるため、横方向の厚みを均一にするには膨比を大きくとる必要がある。
【0027】
本発明においては、縦延伸倍率を7以上、好ましくは7ないし50倍、特に8ないし40倍とすることが好ましい。縦延伸倍率が7倍未満では、バルーン(膨張チューブ)が揺れる傾向があり、結果的に縦方向(MD)、横方向(TD)の厚みが不均一になるばかりでなく、機械的特性のバラツキが大きくなることがある。一方、縦延伸倍率が40倍を越えると、フィルムが破裂現象を生じる傾向がある。
【0028】
本発明において、膨比とは、スクリューダイ出口における膨張前のチューブの円周長さと、膨張後のチューブの円周長さとの比をいい、縦延伸倍率とは、ダイからの樹脂の流出速度(線速度)に対するピンチロールの引き取り速度の比をいう。
【0029】
膨張させたフィルムの冷却は、フィルムの外部をブロアー(送風機)を具備したエアーリングから均一に吹き出されるエアーによって行うか、又はフィルムに密着する水冷あるいは空冷式の冷却リングによって行うこともできる。冷却後のフィルムは常法、すなわち、安定板で次第に折りたたまれ、次にピンチロールで2枚合わせのフラットなフィルムになり、製品巻取機に巻き取られる。なお、本発明によって得られたフィルムは、予めヒートセットしておくことにより熱収縮率を10%未満程度に下げることができる。
【0030】
本発明に用いられる前記超高分子量ポリオレフィンとしては、デカリン溶媒中135℃で測定した極限粘度[η]が4以上、好ましくは4ないし10dl/gである高分子量ポリオレフィンが用いられる。
【0031】
極限粘度が4dl/g未満のものは、引張強度、衝撃強度等の機械的強度が充分でない。また、溶融粘度が低いため、スクリューダイ中で超高分子量ポリオレフィンの溶融物とマンドレルの共廻りによるねじれや、マンドレルの撓みによる偏肉が生じ易く均一なフィルムが得られ難く成形性が劣る。極限粘度[η]の上限は、10dl/gである。極限粘度が10dl/gを越えるものは、溶融粘度が高いため、押出成形温度を上げざるをえず、その結果、前記したように、樹脂の劣化が激しくなり、極限粘度[η]が大きく低下し、得られるフィルムの機械的物性が悪化する。
【0032】
本発明で用いられる高分子量ポリオレフィンとは、エチレン、プロピレンおよび炭素数4ないし8のα−オレフィンを、例えばチーグラー系触媒を用いたスラリー重合により、単独もしくは二つ以上の組み合わせで重合して得られる。好ましい共重合体はエチレンと少量のプロピレンもしくは炭素数4ないし8のα−オレフィンの単独ないし二つ以上の組み合わせによる共重合体である。エチレン共重合体の場合、共単量体の量は5モル%以下が好ましい。これらの中で特に好ましいのはエチレンの単独重合体である。高分子量ポリエチレンは、直鎖状の分子構造を有しているので、成形されたインフレーションフィルムを延伸加工することにより、さらに高強度、高弾性の繊維とすることが可能である。本発明によって製造される超分子量ポリエチレンのインフレーションフィルムの好ましい極限粘度[η]は4dl/g以上である。
【0033】
本発明にもちいられるインフレーションフィルムの製造装置は、押出機に連結されるスクリューダイが表面滑性化処理されているものを用いる点に特徴を有するものである。すなわち、本発明のスクリューダイは、第1スクリューとは別個に表面滑性化処理された第2スクリューを備えており、この第2スクリュー先端に連結された表面滑性化処理されたマンドレルが表面滑性化処理された第2スクリューの回転と共に回転するように構成されており、しかも、押出機の第1スクリューと表面滑性化処理された第2スクリューとが任意の回転数で独立して回転し、第2のスクリューの回転数を第1スクリューの回転数よりも低く設定できるようになっている。この構成を有することによって、前述した請求項1と同様の作用により、インフレーションフィルムの引張強度、衝撃強度等の力学的性質や、縦延伸倍率、膜厚等を幅広い範囲にわたって調整できるようになる。
【0034】
また、このインフレーションフィルムの製造装置には、表面滑性化処理されたマンドレルの先端に安定棒を設けることにより、パイプ状に押出された溶融状態の高分子量ポリオレフィンの、エアーリングから吹き出されるエアーの圧力による横揺れが防げるので、膨張したフィルムの膜厚精度が一層向上する。本発明の装置を用いて製造されたインフレーションフィルムの円周方向の膜圧の最大値と最小値の差は、10μm以下であった。
【0035】
本発明に係るインフレーションフィルムの製造装置を図面に基づいて説明する。図1に示す如く、溝付シリンダー2と、圧縮比が1ないし2.5、好ましくは、1.3ないし1.8の範囲の第1スクリュー3とを有する押出機1を備えており、この第1スクリュー3の先端部には、トーピド10がネジによって連結されている。このトーピド10は、第1スクリュー3の先端部で樹脂が滞留するのを防ぐため、円錐状に形成することが好ましい。
【0036】
また、トーピド10の先端、すなわち、溶融樹脂の流れ方向下流側には、スクリューダイ20が、その軸線をトーピド10の軸線方向と直交する
方向へ向けた状態で設けられている。このスクリューダイ20は、トーピド10と対向する位置に第2スクリュー21を備えており、この第2スクリュー21は、駆動手(図示せず)によって、第1スクリュー3とは、独立に回転されるようになっている。第2スクリューの先端におけるアウターダイとマンドレルはいずれも表面滑性化処理が行われているが、同軸精度は0.5mm以下、好ましくは0.2mm以下さらに好ましくは0.1mm以下である。同軸度が0.5mmを超えるとスクリューダイからでる膨張前のチューブ状成形品において円周方向に極端な厚み差が生じ、ダイスから垂直に出てくることが難しくなり、膨張したチューブ状フィルムが不安定となり偏肉のおおきいフィルムとなる。
【0037】
また、第2スクリュー21は、略円柱状のスペースが形成された中空状のアウターダイ22を備えており、このアウターダイ22のスペースにマンドレル23が挿通されている。上記中空状のアウターダイ22は、図1の上方へいくに従って、次第に縮径していてもよいし、縮径していなくてもよい。このマンドレル23は第2スクリュー21の先端部(上端部)に固着されており、第2スクリュー21と共に回転されるようになっている。
【0038】
また、第2スクリュー21の内部及びマンドレル23の内部には気体流路24が形成されている。この気体流路24は、第2スクリュー21の下端から金属シャフトを通って安定棒26の先端まで形成されている。
【0039】
なお、上記インフレーションフィルムの製造装置では、溝付きシリンダー2の溝部2Aにより、超高分子量ポリオフィン粉末が押出機前方へ安定して供給されるようになっている。上記のスクリューダイ20は、L/Dが少なくとも4以上、より好ましくは少なくとも5以上、好ましくは5ないし70、より好ましくは5ないし20である。
【0040】
スクリューダイ20の流路は前述の如く、基本的には、スクリューダイ出口20Cに向かって流路面積が狭くなる。すなわち、テーパダイであるが、スクリューダイ上端部(20Cより上部)は、流路面積が変化しない、いわゆるストレートであることが成形品の寸法精度および寸法安定性を高度に保持することができるので好ましい。ただしストレート部が長くなると圧力が大きくなる。ストレート部の長さは、L/Dが0.1ないし5.0、好ましくは0.5ないし3.0である。
【0041】
本発明に用いられるインフレーションフィルムの製造装置は、前記構成を備えていることが重要な特徴であり、スクリューダイ20の下流側には、スクリューダイ20から押し出されたパイプ状のパリソン30をエアリング25で冷却した後、気体流路24を通して、空気等の気体により膨比7倍以上に膨張させ、厚さ1ないし1000μm、好ましくは1ないし100μmのインフレーションフィルム31とし、それを折り畳んだ後引取る安定板、ピンチロール、引取機(いすれも図示せず)等、公知のインフレーションフィルム成形機が具備する装置を備えている。
【0042】
また、必要に応じて、アウターダイ22の上端部内方へ安定棒26が、エアーリング25、さらには、防風筒27を挿通した状態に設けられており、安定棒26は、金属シャフトとシャフトに遊嵌されたパイプ形状物から構成され、金属シャフトは、マンドレルの先端とネジにより連結されている。金属シャフトは第2スクリュー21の回転に同調して回転するが、パイプ形状物はシャフトに遊嵌されているので、パイプ形状物の外表面に接触しながら直線的に押出されるパリソン30をねじることはない。
【0043】
上記インフレーションフィルムの製造装置の押出機1から押出された溶融樹脂は、スクリューダイ20の第2スクリュー21に受け止められる。また、上記第2スクリュー21の回転数は押出機1の図1に示す圧力計11で示される圧力の値が一定範囲となるように設定されている。スクリューダイ20から押出された溶融状態のパリソン30は、押出し速度よりも速い速度で引き取られる。次いで、気体流路を経て安定棒の先端から放出される気体により所定の膨比に膨張されてインフレーションフィルムが得られる。
【0044】
本願発明の装置を用い、極限粘度[η]が4ないし10dl/gの高分子量ポリオレフィンを押出機で溶融し、次いでマンドレルが押出機の第1スクリューと独立して回転し、表面に滑性化処理を施しかつアウターダイ表面の摩擦係数がマンドレル表面の摩擦係数と同等あるいはそれより大きい、第2のスクリュー をもつスクリューダイから前記溶融状態の高分子量ポリオレフィンを押し出した後、この押し出しにより形成された溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込むことによって高分子量ポリエチレンのインフレーションフィルムが得られる。かかる方法によって得られる高分子量ポリエチレンのインフレーションフィルムは、厚みが1ないし1000μm、縦方向(MD)および横方向(TD)の引張強度が70MPaを越え、R値が10μm以下、およびフィルムの極限粘度[η]が4dl/g以上であるインフレーションフィルムを得ることができる。
【0045】
ここで、縦方向(MD)とはフィルムの引き取り方向を言い、横方向(TD)とはそれに直交する方向である。また、R値とは、フィルムの厚みのバラツキを示す指標であって、インフレーションフィルムの厚みを横方向で等間隔に32点で測定した時の最大値と最小値の差を示すものである。
【0046】
このフィルムは、成形時に分子量の低下を低く抑えるために、超高分子量ポリオレフィンの高強度物性を発現することができるものであり、かつ、成形物であるインフレーションフィルムの膜厚の最大値と最小値の差が10μm以下という、実質的に厚みむらのないインフレーションフィルムが提供されるものであり、この点で、従来の高分子量ポリオレフィンのフィルム成形法に比べて顕著性がある。
【0047】
本発明によって得られる超高分子量ポリオレフィンインフレーションフィルムの用途としては、サイロ、ホッパー、シュート等のライニング材、アルカリ電池、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の非水電解質電池および電解質電池用セパレータ、ロール、パイプ、鋼管等の被覆用収縮フィルム、食品包装用等の包装フィルム、包装用バック、包装用容器、ヘルメット、セイルボード、スキー滑走面等のスポーツ用品などが例示され、その他、具体的には、スライディングテープ、スラストワッシャー、すべりシート、ガイド、ドクターナイフ、カセットテープライナー、カセットテープ用スリットシート、耐極低温性袋、熱収縮性フィルム、低温保存用バック、包装用テープ、高強度延伸糸用原糸、コンデンサーフィルム、絶縁フィルム、回路基板用フィルム、ポリオレフィン被覆ゴムロール、食品充充填パック、血液パック、スプリットヤーン、登山用ロープ、織布、延伸テープ、血小板凍結防止用フィルター、帆布、防爆シート、切傷防止用保護衣、安全手袋、重布、電気ケーブル、テンションメンバー、スピーカー振動板、装甲板、レーダードーム、不織布、防刃および防弾用衣類、合成紙、屋外展示物用印刷紙、航空便用封筒、水分吸収剤、酸素吸収剤等の包装材料、通気性包装体、滅菌・殺菌包装材料、医療用基布、医療用器具の包装材料、水分調節物品のシール・包装、分離膜、各種フィルター等のろ過材、フィルターの担持体、農業用ハウス、マルチフィルム等の農業用フィルム、グリーンフィルム、エレクトレットフィルム、ハウスラップ等の建築用資材等を例示することができる。
【0048】
【実施例】以下に実施例によって本発明を説明する。この実施例は、本発明の好適な態様を説明するためのものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0049】
【実施例1】図1に示すインフレーションフィルムの製造装置において、以下の仕様による装置を用いて高分子量ポリエチレン製インフレーションフィルムを製造した。
装置の仕様押出機の第1スクリュー外径60mmφ、スクリュー有効長さ1800mm、フライトピッチ50mm一定、スクリュー圧縮比1.5、押出機に対して立設してなるスクリューダイ有効長さ800mm(L/D=9)、ダイ出口アウターダイ内径105mmφ、ダイ出口マンドレル外径95mmφ、スクリューダイの第2スクリュー外径110mmφ、第2スクリュー有効長さ200mm、フライトピッチ62mm一定、第2スクリュー圧縮比1.0、第2スクリュー、アウターダイ、マンドレルの各表面にテフロン(登録商標)を含有した無電解ニッケルメッキ(表面摩擦係数0.21)、安定棒の外径60mmφ、安定棒長さ800mm、第2スクリュー内部、マンドレル内部及び安定棒シャフト内部に延在してなる18mmφの気体流路、安定板、ピンチロール及び製品巻取機を具備している。
【0050】
<インフレーションフィルムの製造>高分子量ポリエチレン[η]:8.2dl/g、嵩密度:0.45g/cm3 の粉末樹脂を用い、押出機、図1に示すジョイント部(J)、ダイ基部(D1)及びダイ先端部(D2)の設定温度を各々200℃、180℃、160℃、160℃にし、第1スクリュー回転数を21rpm、第2スクリュー回転数を1.3rpmに設定し、樹脂押出量を20kg/h、ピンチロールで6.0m/mimの速度で引取りながら、第2スクリュー内部、マンドレル及び安定棒シャフトの内部に延在してなる18mmφの気体流路から圧搾空気を吹込んで、パリソンをアウターダイ内径105mmφの7.6倍に膨らませて、折り幅1250mm、厚み25μmからなる高分子量ポリエチレン製インフレーションフィルムを20kg/hにて安定して製造した。
【0051】
【実施例2】アウターダイおよびマンドレルの表面にテフロン(登録商標)PFA樹脂をコーティング(摩擦係数0.17)を施した以外は実施例1と同様のスクリューダイスを具備し、第1スクリュー回転数を43rpm、第2スクリュー回転数を1.3rpmに設定し、樹脂押出量を40kg/h、アウターダイ内径105mmφの8.5倍に膨らませて、ピンチロールで6.5m/mimの速度で折幅1400mmの40μからなる高分子量ポリエチレン製インフレーションフィルムを安定して成形した。
【0052】
【実施例3】アウターダイの表面にテフロン(登録商標)PTFEコーティング(摩擦係数0.17)、マンドレルの表面にテフロン(登録商標)PTFEコーティング(摩擦係数0.13)を施した以外は実施例2と同様のスクリューダイスを具備し、第1スクリュー回転数を52rpm、第2スクリュー回転数を1.5rpmに設定し、樹脂押出量を50kg/h、アウターダイ内径105mmφの9.5倍に膨らませて、ピンチロールで7.0m/minの速度で折幅1560mmの40μmからなる高分子量ポリエチレン製インフレーションフィルムを安定して成形した。
【0053】
【比較例1】<比較例1>第2スクリュー、アウターダイ、マンドレルの各表面にクロムメッキ(摩擦係数0.25)を施したダイスを具備した以外は実施例1の条件にて成形したところ、ダイスにおける樹脂圧力が過大となり成形できなかった。
【0054】
実施例1ないし3、比較例1で得られた結果を表1に示す。なお、実施例1ないし3で得られたインフレーションフィルムのR値の測定値は、すべて10μm以下であった。
【0055】
(1)引張強度(MD:機械方向)、引張強度(TD:機械交差方向)の各値は、以下の条件下で得られた引張強度(TS:MPa)の値である。
引張試験:試験片形状 JIS K6781チャック間:86mm引張速度:200mm/min温 度:23℃
(2)フィルムの厚みは、以下の条件で測定された値(μm)である。
測定装置:東洋精機製測厚器 デジシックネステスター検出能力1μm(検出精度2μm)
測定方法:フィルム円周方向(TD)を等間隔に32点測定し、その平均値を厚みとし、最大値と最小値の差をR値とした。
規 格:JIS Z1702圧 子:5mmφ荷 重:125g測定圧:0.637kg/cm2温 度:23℃
(3) 本願明細書中における極限粘度[η]は、デカリン溶媒にて135℃で測定した値である。測定法はASTM D4020に基づいて行う。
【0056】
(4)摩擦係数は、新東科学株式会社HEIDONトライボキヤミューズTYPE94i(分解能00.01)をもいちて測定した。
【0057】
【表1】
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、インフレーションフィルムの引張強度等の力学的性質、及び縦延伸倍率や膜厚等を幅広い範囲にわたって調整でき、成形速度の上昇が可能なインフレーションフィルムの製造方法が提供される。また、これを用いて製造されたインフレーションフィルムは、高速成形時においても分子量の低下を抑えることができ、高分子量ポリオレフィンの物性を保持し、かつ、経済性にすぐれたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】インフレーションフィルム製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 押出機
2 溝付きシリンダー
3 第1スクリュー
10 トーピード
11 押出機圧力計
20 スクリューダイ
21 第2スクリュー
22 アウターダイ
23 マンドレル
24 気体流路
25 エアリング
26 安定棒
27 防風筒
30 パリソン
31 インフレーションフィルム
Claims (6)
- 高分子量ポリオレフィンを押出機で溶融し、ついでマンドレルが押出機の第1スクリューと独立して回転する第2スクリューをもつスクリューダイから押し出した後、この押し出しにより形成された溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込むことを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法において、第2スクリュー、マンドレル、アウターダイのいずれかに表面滑性化処理を施したことを特徴とするインフレーションフィルムの製造方法。
- 前記スクリューダイにおいて、アウターダイ表面の摩擦係数がマンドレル表面の摩擦係数と同等あるいはそれより大きいことを特徴とする請求項1記載のインフレーションフィルムの製造方法。
- 前記第1スクリューと第2スクリューの回転数がそれぞれ可変自在であって、かつ、第2スクリューの回転数を第1スクリューの回転数よりも低く設定した請求項1記載のインフレーションフィルムの製造方法。
- 押出機とスクリューダイからなり、押出機は第1スクリューを装備し、スクリューダイは、第2スクリュー、マンドレル、アウターダイ、気体流路を装備し、第1スクリューと第2スクリューが別々の速度で回転し、気体流路を通して気体を吹き込むことを特徴とする成形機であって、第2スクリュー、マンドレル、アウターダイの表面が表面滑性剤で処理されていることを特徴とするインフレーションフィルムの製造装置。
- アウターダイとマンドレルが、同等の摩擦係数を有する表面滑性剤で処理されていることを特徴とする請求項4のインフレーションフィルムの製造装置。
- アウターダイとマンドレルが、摩擦係数が異なる表面滑性化剤により処理されてており、摩擦係数がより大きい表面滑性化剤がアウターダイに、より小さい表面滑性化剤がマンドレルに処理されていることを特徴とする請求項4のインフレーションフィルム製造装置。
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JP2006056169A (ja) * | 2004-08-20 | 2006-03-02 | Mitsui Chemicals Inc | 超高分子量ポリオレフィンインフレーションフィルムおよびフラットヤーン |
JP2017080949A (ja) * | 2015-10-26 | 2017-05-18 | キヤノン株式会社 | 環状ダイスおよびチューブ状物の製造方法 |
JP2022083569A (ja) * | 2020-11-25 | 2022-06-06 | Jx金属株式会社 | 焼却金銀滓輸送用コンテナ、及び焼却金銀滓の輸送方法 |
-
2003
- 2003-04-15 JP JP2003110905A patent/JP2004314414A/ja active Pending
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