JP2004311652A - 研磨用スラリー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】長径と短径との比(長径/短径)が1.2〜5.0である不定形コロイダルシリカを酸性下で用いると、多層配線用薄膜に対して優れた研磨能力が発揮され、該薄膜を変性させることもない。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、研磨用スラリーに関する。
【0002】
【従来の技術】
CMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)は、主に、シリコン、ガリウム砒素などからなるウェハ表面に形成された酸化膜、金属膜、セラミックス膜などの多層配線用薄膜を平坦化するために利用され、ウェハ表面に多層配線を構築し、高性能化および高集積化がさらに進んだ超LSIを製造する上で、必要不可欠な技術になっている。
【0003】
CMP工程では、図4に示すように、研磨定盤1に貼付されたパッド2に、ウェハ3の被研磨面(多層配線用薄膜が形成された面)がパッド2に接するようにウェハ3を載せ、ウェハ3に加圧ヘッド4を押し付けてウェハ3に一定の荷重をかけかつ研磨用スラリー5をパッド2表面に供給しながら、パッド2と加圧ヘッド4とを回転させることによって、ウェハ3の研磨が行われる。
【0004】
従来から、CMP工程における研磨用スラリーには、球状コロイダルシリカ、ヒュームドシリカなどのシリカ系研磨剤とアルカリ剤とを含む水性スラリーが汎用されている。すなわち、球状コロイダルシリカの持つ機械的研磨能力とアルカリ剤が持つエッチング作用(化学的研磨能力)との相乗効果によって、研磨が行われる。シリカはアルカリによって膨潤し、アルカリ濃度が高くなるほど膨潤が進行し、その表面が軟質化するという特性を有しているので、アルカリ性下では、球状コロイダルシリカの機械的研磨能力が顕著に向上することはない。一方、シリカが膨潤を起こさない酸性下では、酸が、ウェハ表面に形成される多層配線用薄膜に対するエッチング効果を有していないので、球状コロイダルシリカの研磨能力だけに頼ることになる。しかしながら、球状コロイダルシリカの研磨能力だけでは、研磨速度はアルカリ性下に研磨を行う場合よりもはるかに低くなる。したがって、シリカ系研磨剤を含む水性スラリーを用いて、ウェハ表面に形成される多層配線用薄膜を研磨する際には、アルカリ剤を添加することが技術的な常識とされてきた。
【0005】
一方、短径が10〜200nmかつ長径/短径比が1.4〜2.2である不定形コロイダルシリカが、シリコンウェハの研磨剤として使用できることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1には、不定形コロイダルシリカをシリコンウェハの表面に形成される多層配線用薄膜を研磨するための研磨剤として用いることは記載されていない。さらに、特許文献1には、ウェハの表面に形成される多層配線用薄膜を研磨するに際し、不定形コロイダルシリカを含む酸性の水性スラリーを用いることおよびそれに基づく顕著な効果についての記載はない。
【0006】
また、長径が7〜1000nmかつ短径/長径比が0.3〜0.8である不定形コロイダルシリカが、ガリウム砒素などの化合物半導体の研磨剤として使用できることが知られている(たとえば、特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2には、不定形コロイダルシリカを、シリコン、ガリウム砒素などからなるウェハの表面に形成される多層配線用薄膜の研磨に用いることは一切記載されていない。しかも、特許文献2によれば、この不定形コロイダルシリカによって化合物半導体を研磨するに際しては、アルカリ性下および酸性下のいずれで研磨を行っても、同等の効果が得られることが記載されている。したがって、前述の技術的な常識を踏まえると、特許文献2の記述から、不定形コロイダルシリカを酸性下で多層配線用薄膜の研磨に用いる場合のみに、多層配線用薄膜に対して優れた研磨能力が発揮されることは、当業者といえども容易に想到できることではない。また、特許文献2で使用される不定形コロイダルシリカは、原料化合物に由来する不純物(主にアルカリ金属およびアルカリ土類金属)を含有しているので、このような不定形コロイダルシリカによって多層配線用薄膜を研磨すると、該薄膜が変性を起こし、所望の多層配線を形成できないことがある。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−60232号公報
【特許文献2】
特開平7−221059号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特に、ウェハ表面に形成される酸化膜、金属膜、セラミックス膜などの多層配線用薄膜に対して優れた研磨能力を有し、これら薄膜を高い研磨速度で研磨することができ、研磨後の薄膜が高い平坦化度を有し、しかもこれら薄膜の物性を変化させるような不純物を含まない研磨用スラリーを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ウェハなどの電子部品基板表面の多層配線用薄膜を研磨するに際し、特定の不定形コロイダルシリカを酸性下で用いると、球状コロイダルシリカをアルカリ性下で用いる場合よりも優れた研磨能力が発現されるという、従来の技術的な常識を覆す知見を得、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、長径と短径との比(長径/短径)が1.2〜5.0である不定形コロイダルシリカおよび酸を含有し、残部が水であることを特徴とする研磨用スラリーである。
【0011】
本発明に従えば、長径と短径との比(長径/短径)が特定の範囲にある不定形コロイダルシリカと酸とを併用することによって、特に、ウェハなどの電子部品基板の表面に形成される酸化膜、金属膜、セラミックス膜などの多層配線用薄膜に対して優れた研磨能力を有し、これらの薄膜を高い速度で研磨することができ、研磨後の薄膜が高い平坦化度を有し、しかもこれらの膜を変性させることがない研磨用スラリーが提供される。
【0012】
また本発明の研磨用スラリーは、pHが1〜6であることを特徴とする。
本発明に従えば、前述の本発明の研磨用スラリーはpHが酸性域の中でも1〜6の範囲であることが好ましい。これによって、その研磨能力が充分に発揮され、高い研磨速度が実現できる。
【0013】
また本発明の研磨用スラリーは、不純物の含有量が1ppm以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明に従えば、本発明の研磨用スラリーにおける不純物の含有量は、1ppm以下であることが好ましい。これによって、研磨対象である、ウェハ表面に形成される多層配線用薄膜を変性させることなく、研磨することができる。不純物は、多くの場合、不定形コロイダルシリカを合成する原料に由来するので、不純物含有量を1ppm以下にするには、特定の製造法で合成され、ケイ素以外の金属、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属などを含まない不定形コロイダルシリカが好ましく使用される。
【0015】
また本発明の研磨用スラリーは、前述の不定形コロイダルシリカの長径が5〜500nmであることを特徴とする。
【0016】
本発明に従えば、不定形コロイダルシリカの長径が、5〜500nmの範囲であることが好ましい。これによって、不定形コロイダルシリカはさらに優れた研磨能力を発揮する。
【0017】
また本発明の研磨用スラリーは、前述の不定形コロイダルシリカの含有量がスラリー全量の0.1〜30重量%であることを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、本発明の研磨用スラリーにおける不定形コロイダルシリカの含有量がスラリー全量の0.1〜30重量%であることが好ましい。これによって、不定形コロイダルシリカの研磨能力が最大限に発揮される。
【0019】
また本発明の研磨用スラリーは、前述の酸が無機酸および有機酸から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【0020】
また本発明の研磨用スラリーは、前述の無機酸が塩酸、硝酸、硫酸およびフッ酸から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【0021】
また本発明の研磨用スラリーは、前述の有機酸が炭酸、酢酸、クエン酸、マロン酸、アジピン酸および乳酸から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、酸は有機酸および/または無機酸であることが好ましく、その中でも特定の有機酸および/または無機酸であることがさらに好ましい。これによって、ウェハ表面に形成される多層配線用薄膜の研磨に特に適した研磨用スラリーを得ることができる。
【0023】
また本発明の研磨用スラリーは、前述の酸の含有量がスラリーのpHを1〜6にする量であることを特徴とする。
【0024】
本発明に従えば、本発明の研磨用スラリーにおける酸の含有量は、スラリーのpHが1〜6の範囲になる量であることが好ましい。このpH範囲の研磨用スラリーは、前述のとおり、極めて優れた研磨能力を有している。
【0025】
また本発明の研磨用スラリーは、電子部品基板上に形成される多層配線用薄膜の研磨に用いられることを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、本発明の研磨用スラリーは、研磨対象が、シリコン、ガリウム砒素などの半導体材料からなる電子部品基板上に形成される酸化膜、金属膜、セラミックス膜などの多層配線用薄膜であることが好ましい。本発明の研磨用スラリーは、このような薄膜に対して、特に優れた研磨能力を有する。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の研磨用スラリーは、長径と短径との比が特定の範囲にある不定形コロイダルシリカと酸とを含み、残部が水である組成物である。
【0028】
本発明の研磨用スラリーは、そのpHが、好ましくは1〜6、さらに好ましくは2〜4、特に好ましくは2〜3である。pHが1〜6の酸性域にあると、研磨用スラリーの研磨能力が最大限に発揮される。pHが1未満では、研磨装置などを腐食させる可能性がある。pHが6を超えると、不定形コロイダルシリカの研磨能力が充分に発揮されないおそれがある。このpH範囲は、酸の含有量を適宜変更することによって、容易に達成することができる。
【0029】
本発明の研磨用スラリーは、その不純物含有量が1ppm以下であることが好ましい。ここで不純物としては、たとえば、ケイ素以外の金属が挙げられる。不純物含有量が1ppmをはるかに超えると、研磨対象である、ウェハ表面に形成される多層配線用薄膜を変性するおそれがある。不純物含有量を1ppm以下に調整するには、たとえば、ケイ素以外の金属を含まない不定形コロイダルシリカを用いればよい。このような不定形コロイダルシリカは、後述する方法に従って合成できる。
【0030】
本発明においては、研磨剤として、特定の長径/短径比を有する不定形コロイダルシリカを使用する。このような不定形コロイダルシリカが、ウェハなどの電子部品基板そのものではなく、その表面に形成される多層配線用薄膜に対して優れた研磨能力を示す理由は充分明らかではないけれども、不定形コロイダルシリカの表面状態とその表面に存在する活性シラノール基との相乗作用によるものと推測される。不定形コロイダルシリカの表面は凹凸に富んでいる。このような凹凸は、それ自体が微細な不定形コロイダルシリカの表面に存在するので、極めて微細なものである。凹凸という形状およびその微細さは、ウェハ表面に形成される超極薄膜である多層配線用薄膜の研磨に適している。また、不定形コロイダルシリカの表面に存在する多数の活性シラノール基は多層配線用薄膜の表面に作用し、薄膜表面を活性化する。これによって、薄膜は研磨されやすくなる。
【0031】
不定形コロイダルシリカの研磨能力は、酸性下のみで発揮される。シリカが膨潤するアルカリ性下では、表面の極微細の凹凸が膨潤によって失われるとともに、活性シラノール基がアルカリと中和反応を起こして不活性化するので、その研磨能力は球状コロイダルシリカよりも低くなる。
【0032】
本発明で使用する不定形コロイダルシリカは、平均長径と平均短径との比(平均長径/平均短径)が1.2〜5.0、好ましくは1.5〜3.0である。この比は、不定形コロイダルシリカの平均長径および平均短径に基づいて決定される。不定形コロイダルシリカの平均長径および平均短径は、不定形コロイダルシリカの水分散体を試料とし、25℃の温度下に、粒子径測定機(商品名:N4 PLUS、BECKMAN COULTER社製)によって測定される。平均長径/平均短径が1.2未満では、充分な研磨能力が得られない可能性がある。一方5.0を超えると、研磨対象物にスクラッチなどが発生するおそれがある。
【0033】
不定形コロイダルシリカは、その長径が5〜500nmであることが好ましい。前述の平均長径/平均短径比を有し、かつ5〜500nmの範囲の長径を有する不定形コロイダルシリカは、特に高い研磨能力を示す。
【0034】
不定形コロイダルシリカは、そのBET比表面積が5〜550m2/gであることが好ましい。BET比表面積は、不定形コロイダルシリカを200℃で120分間乾燥し、得られる不定形コロイダルシリカの焼結体の約1gを用い、BET比表面積測定機(商品名:SA3100、BECKMAN COULTER社製)によって測定される。前述の平均長径/平均短径比および長径を有し、かつ5〜550m2/gのBET比表面積を有する不定形コロイダルシリカは、さらに高い研磨能力を示す。
【0035】
不定形コロイダルシリカとしては、前述の平均長径/平均短径比を有する公知のものを使用できる。その中でも、研磨用スラリーの不純物含有量を1ppm以下に調整し、研磨対象である薄膜の変性を防止するという観点から、ケイ素以外金属原子を実質的に含まない不定形コロイダルシリカが好ましい。このような不定形コロイダルシリカは、たとえば、特許第3195569号に記載されている方法に従い、ケイ酸メチルまたはケイ酸メチルとメタノールとの混合物を、水、メタノールおよびアンモニアを含む混合溶媒または水、メタノール、アンモニアおよびアンモニウム塩を含む混合溶媒に滴下することによって合成することができる。これによって、ケイ素以外の金属原子を含まず、平均長径/平均短径比が1.4〜2.2である不定形コロイダルシリカが得られる。
【0036】
不定形コロイダルシリカは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0037】
不定形コロイダルシリカの含有量は特に制限されず、それ自体の粒子径(平均長径)および平均長径と平均短径との比、併用する酸の種類および含有量、研磨対象になる多層配線用薄膜の種類および膜厚などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、通常は本発明スラリー全量の0.1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは5〜12重量%である。0.1重量%未満では、充分な研磨速度が得られない可能性がある。一方30重量%を大幅に超えると、パーティクルの残留、スクラッチの発生などが起こるおそれがある。
【0038】
本発明において、前述の不定形コロイダルシリカとともに使用する酸としては特に制限されず、公知の無機酸および有機酸を使用できる。その中でも、研磨用スラリーの研磨能力を一層向上させるという観点から、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸などの無機酸および炭酸、酢酸、クエン酸、マロン酸、アジピン酸などの有機酸が好ましく、塩酸などが特に好ましい。無機酸および有機酸は、それぞれ、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また、無機酸の1種または2種以上と有機酸の1種または2種以上とを併用することもできる。酸の含有量は特に制限されず、酸そのものの種類、不定形コロイダルシリカの長径/短径比、粒子径(長径)の寸法および含有量、研磨対象である多層配線用薄膜の種類および膜厚などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、通常は研磨用スラリーのpHが1〜6、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3になる量とすればよい。
【0039】
本発明の研磨用スラリーは、その好ましい特性を損なわない範囲で、従来からCMP加工における研磨用スラリーに常用されている各種の添加剤の1種または2種以上を含んでいてもよい。該添加剤の具体例としては、たとえば、ポリカルボン酸アンモニウムなどの分散剤、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリンなどの水溶性アルコール、界面活性剤、緩衝液、粘度調節剤などが挙げられる。
【0040】
本発明の研磨用スラリーは、不定形コロイダルシリカおよび酸のそれぞれの適量、ならびに必要に応じて他の添加剤の適量を用い、さらに水を用いて全量を100重量%とし、これらの成分を一般的な混合方法にしたがって混合することによって製造できる。
【0041】
本発明の研磨用スラリーを用いるCMP加工は、従来の研磨用スラリーに代えて本発明の研磨用スラリーを使用する以外は、従来の方法と同様に実施できる。
【0042】
本発明の研磨用スラリーは、各種電子部品基板上に形成される薄膜を研磨するのに好適に使用できる。ここで、電子部品基板としては、シリコン、ガリウム砒素、インジウム燐、アルミニウム、アルミナ、アルミナ合金またはガラスからなる電子部品基板が挙げられる。電子部品基板上に形成される多層配線用薄膜としては、二酸化ケイ素、p−TEOSなどからなる酸化膜、W、Cu、Ti、Ta、Alなどからなる金属膜、TiN、Ta、TaN、Si3N4などからなるセラミックス膜などが挙げられる。
【0043】
また本発明のスラリーは、半導体関連のCMP加工に限定されず、それ以外の用途で金属、セラミックスなどを研磨する際にも、好適に使用できる。
【0044】
本発明の研磨用スラリーの好ましい形態は、長径/短径比1.2〜5.0の不定形コロイダルシリカならびに酸を含有し、残部が水である組成物であって、該不定形コロイダルシリカの含有量が研磨用スラリー全量の0.1〜30重量%であり、酸が塩酸、硝酸、硫酸およびフッ酸である無機酸ならびに炭酸、酢酸、クエン酸、マロン酸、アジピン酸および乳酸である有機酸から選ばれる1種または2種以上の酸であり、そのpHが1〜6であり、電子部品基板上に形成される多層配線用薄膜を研磨するための組成物である。
【0045】
[実施例]
以下に参考例、実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
【0046】
実施例1
表1に示す長径、短径、長径/短径比およびBET比表面積を有する不定形コロイダルシリカおよび0.5規定塩酸水溶液を用い、不定形コロイダルシリカ含有量5重量%かつpH2である本発明の研磨用スラリーを調製した。
【0047】
比較例1
不定形コロイダルシリカに代えて表1に示す球状コロイダルシリカを使用する以外は、実施例1と同様にして、研磨用スラリーを調製した。
【0048】
なお、不定形コロイダルシリカおよび球状コロイダルシリカの長径、短径およびBET比表面積は、前述の方法に従って測定された。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例2
表1に示す不定形コロイダルシリカおよび0.5規定塩酸水溶液を用い、不定形コロイダルシリカ含有量が12重量%かつpHが2、3または4である3種の本発明の研磨用スラリーを調製した。
【0051】
比較例2
不定形コロイダルシリカに代えて表1に示す球状コロイダルシリカを用いる以外は実施例2と同様にして、3種の比較例の研磨用スラリーを調製した。
【0052】
実施例2および比較例2で得られた研磨用スラリーを用い、表面にp−TEOS膜が形成されシリコンウェハを研磨し、引き続きエクサイチュ(Ex−situ)コンディショニングを行った。研磨条件およびコンディショニング条件はつぎの通りである。研磨条件およびコンディショニング条件はつぎの通りである。
【0053】
〔研磨条件〕
研磨装置:商品名Ecomet、Buehler社製
パッド :商品名IC1400
ウェハへの荷重 :5(psi)
研磨定盤の回転数 :120(rpm)
加圧ヘッドの回転数:120(rpm)
スラリー流量 :10(ml/分)
研磨時間 :120秒
【0054】
〔コンディショニング条件〕
圧 力:2.76kg
回転数:120(rpm)
コンディショニング時間:5秒
【0055】
コンディショニング後のp−TEOS膜について、49の測定点を設け、各点での膜除去量(nm)を膜厚測定器(商品名:Nanospec/AFT5100、Nanometrics社製)によって測定し、研磨時間に基づいて、それらの1分間平均除去量を算出して研磨速度(nm/分)とした。
【0056】
結果を図1に示す。図1において、本発明の研磨用スラリーの研磨速度は―〇―で示され、比較例の研磨用スラリーの研磨速度は―△―で示される。図1から、本発明の研磨用スラリーが、pH2〜4特にpH2〜3の酸性域において、球状コロイダルシリカを含む従来の研磨用スラリーに比べ、p−TEOS膜に対する研磨能力が著しく優れていることが明らかである。
【0057】
参考例1
参考のため、表1に示す不定形コロイダルシリカまたは球状コロイダルシリカおよび水酸化アンモニウムの29重量%水溶液を用い、コロイダルシリカ含有量12重量%かつpHが7または10.5である4種の研磨用スラリーを調製した。
【0058】
これらの4種の研磨用スラリーを用い、前記と同様にして、それぞれの研磨速度(nm/分)を求めた。結果を図2に示す。図2において、不定形コロイダルシリカを含む研磨用スラリーの研磨速度は―〇―で示され、球状コロイダルシリカを含む研磨用スラリーの研磨速度は―△―で示される。図2から、不定形コロイダルシリカを含む場合は、アルカリ性側では研磨速度の向上がほとんどみられないのに対し、球状コロイダルシリカを含む場合は、高アルカリ性になるほど、研磨能力が向上することが判る。
【0059】
図2の結果および高アルカリになるほどエッチング作用が強くなって研磨速度が向上することを踏まえると、不定形コロイダルシリカ自体の研磨能力は、アルカリが強くなるほど、低下することは明らかである。
【0060】
実施例3
表1に示す不定形コロイダルシリカおよび0.5規定塩酸水溶液を用い、pHが2でありかつ不定形コロイダルシリカ含有量が1、3、5、7、10または12重量%である6種の本発明の研磨用スラリーを調製した。
【0061】
比較例3
不定形コロイダルシリカに代えて表1に示す球状コロイダルシリカを使用する以外は、実施例3と同様にして、pHが2でありかつ球状コロイダルシリカ含有量が1、3、5、7、10または12重量%である6種の比較例の研磨用スラリーを調製した。
【0062】
実施例3および比較例3の研磨用スラリーを用い、前記と同様にして、それぞれの研磨速度(nm/分)を求めた。結果を図3に示す。図3において、実施例3の研磨用スラリーの研磨速度は―〇―で示され、比較例3の研磨用スラリーの研磨速度は―△―で示される。表3から、酸性域では、シリカ含有量に関係なく、不定形コロイダルシリカを含む本発明の研磨用スラリーが、球状コロイダルシリカを含む従来の研磨用スラリーよりも、p−TEOS膜に対して優れた研磨能力を有していることが明らかである。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、長径と短径との比(長径/短径)が特定の範囲にある不定形コロイダルシリカと酸とを併用することによって、特に、ウェハなどの電子部品基板の表面に形成される多層配線用薄膜に対して優れた研磨能力を有し、これらの薄膜を高い速度で研磨することができ、研磨後の薄膜が高い平坦化度を有し、しかもこれらの膜を変性させることがない研磨用スラリーが提供される。
【0064】
本発明によれば、本発明の研磨用スラリーのpHを1〜6の範囲にすることによって、その研磨能力が充分に発揮され、高い研磨速度が実現できる。
【0065】
本発明によれば、本発明の研磨用スラリーの不純物含有量を1ppm以下にすることによって、シリコンなどからなるの電子部品基板表面に形成される多層配線用薄膜を変性させることなく研磨することができる。
【0066】
本発明によれば、長径が5〜500nmである不定形コロイダルシリカを用いることによって、さらに優れた研磨能力が得られる。
【0067】
本発明によれば、不定形コロイダルシリカの含有量を研磨用スラリー全量の0.1〜30重量%にすることによって、研磨能力が最大限に発揮される。
【0068】
本発明によれば、酸として有機酸および/または無機酸、その中でも特定の有機酸および/または無機酸を用いることによって、シリコンなどからなる電子部品基板の表面に形成される多層配線用薄膜の研磨に特に適した研磨用スラリーを得ることができる。
【0069】
本発明よれば、酸の含有量を研磨用スラリーのpHが1〜6になる量にすることによって、極めて優れた研磨能力が発揮される。
【0070】
本発明によれば、研磨対象をシリコンなどからなる電子部品基板上に形成される多層配線用薄膜から選択することによって、本発明研磨用スラリーの研磨能力が最大限に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明および従来の研磨用スラリーの、pH2〜3における研磨速度を示すグラフである。
【図2】不定形コロイダルシリカまたは球状コロイダルシリカを含む研磨用スラリーの、pH7〜10.5における研磨速度を示すグラフである。
【図3】本発明および従来の研磨用スラリーにおいて、コロイダルシリカの含有量を変化させたときの研磨速度を示すグラフである。
【図4】CMP工程を簡略的に示す図面である。
Claims (10)
- 長径と短径との比(長径/短径)が1.2〜5.0である不定形コロイダルシリカおよび酸を含有し、残部が水であることを特徴とする研磨用スラリー。
- pHが1〜6であることを特徴とする請求項1記載の研磨用スラリー。
- 不純物の含有量が1ppm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の研磨用スラリー。
- 不定形コロイダルシリカの長径が5〜500nmであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載の研磨用スラリー。
- 不定形コロイダルシリカの含有量がスラリー全量の0.1〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれかに記載の研磨用スラリー。
- 酸が無機酸および有機酸から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれかに記載の研磨用スラリー。
- 無機酸が塩酸、硝酸、硫酸およびフッ酸から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項6記載の研磨用スラリー。
- 有機酸が炭酸、酢酸、クエン酸、マロン酸、アジピン酸および乳酸から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項6記載の研磨用スラリー。
- 酸の含有量が、スラリーのpHを1〜6にする量であることを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれかに記載の研磨用スラリー。
- 電子部品基板上に形成される多層配線用薄膜の研磨に用いられることを特徴とする請求項1〜9のうちのいずれかに記載の研磨用スラリー。
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