JP2004311114A - 電解質用組成物、高分子電解質およびそれを用いた電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】電解液と同等の高いイオン伝導率を得ることができ、かつ、サイクル寿命特性および低温放電特性を向上させることができる電解質用組成物、および高分子電解質、並びにそれを用いた電池を提供する。
【解決手段】高分子電解質23は、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物が重合された構造を有する高分子化合物と、ビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートなどの不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液とを含有している。電解液における不飽和化合物の環状炭酸エステルの割合は、電解液100質量部に対して、不飽和化合物の環状炭酸エステル0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【選択図】 図2
【解決手段】高分子電解質23は、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物が重合された構造を有する高分子化合物と、ビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートなどの不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液とを含有している。電解液における不飽和化合物の環状炭酸エステルの割合は、電解液100質量部に対して、不飽和化合物の環状炭酸エステル0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解液と重合性化合物とを含む電解質用組成物、この電解質用組成物を重合することにより得られる高分子電解質、およびそれを用いた電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カメラ一体型VTR(videotape recorder)、携帯電話あるいは携帯用コンピューターなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。それに伴い、電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池の開発が活発に進められている。中でも、リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を実現できるものとして注目されており、薄型で折り曲げ可能な形状の自由度が高いものについても多く研究されている。
【0003】
このような形状の自由度が高い電池には、高分子化合物に電解質塩を溶解させた全固体状の高分子電解質や、あるいは高分子化合物に電解液を保持させたゲル状の高分子電解質などが用いられている。中でも、ゲル状の高分子電解質は、電解液を保持しているために全固体状に比べて活物質との接触性およびイオン伝導率に優れており、また、電解液に比べて漏液が起こりにくいという特徴を有していることから注目を浴びている。
【0004】
このゲル状の高分子電解質を作製する方法としては、例えば、重合性化合物および電解液を混合した電解質用組成物を重合開始剤を用いて重合させてゲル化するもの、または高分子化合物と電解液とを希釈溶媒を用いて混合しキャストしたのち希釈溶媒を揮発させてゲル化するものがある。このうち重合開始剤を用いる方法は、キャストによる方法に比べて電解液の選択肢が広く、また希釈溶媒を使用する必要がないので好ましい。
【0005】
この重合により得られる高分子電解質は、例えば電極を巻回した電池に用いる場合、電極を巻回する前に、電極上に重合性化合物を含む電解質用組成物を塗布して紫外線照射あるいは加熱するか、または、電極を巻回して巻回電極体を作製したのち、巻回電極体に電解質用組成物を注入して加熱することにより作製される(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、高分子電解質と電極およびセパレータとの界面における接合性を向上させることができるので、望ましい。
【0006】
また、高分子電解質の組成についても種々の研究がなされており、例えば、リチウムポリマー二次電池において、ビニレンカーボネートを使用することによって、電池内に重合性化合物が残存するのを防ぐと共に、ビニレンカーボネートにより負極の表面に被膜を形成して、電池の内部抵抗を低減し、電池の放電容量の低下および充放電サイクル寿命の低下を改善したものがある(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特公昭58−56467号公報
【特許文献2】
特開2002−313425号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2に記載されている高分子電解質では、重合性化合物にエーテル基を有しているので、解離により生じたカチオンがエーテル基の酸素に配位してカチオンの移動度が低下し、イオン伝導率が低下してしまい、しかも、エーテル基の部分は耐酸化性も低いので、充放電効率は優れないという問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、電解液と同等の高いイオン伝導率を得ることができ、かつ、サイクル寿命特性および低温放電特性を向上させることができる電解質用組成物、および高分子電解質、並びにそれを用いた電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による電解質用組成物は、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物と、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液とを含有するものである。
【0011】
本発明による高分子電解質は、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物が重合された構造を有する高分子化合物と、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液とを含有するものである。
【0012】
本発明による電池は、正極および負極と共に高分子電解質を備えたものであって、高分子電解質は、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物が重合された構造を有する高分子化合物と、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液とを含有するものである。
【0013】
本発明による電解質用組成物、高分子電解質および電池では、エーテル基を含まない重合性化合物を用いているので、イオンの移動が容易となり、高いイオン伝導率が得られる。また、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液を用いているので、負極と高分子電解質との界面に、重合性化合物と不飽和化合物の環状炭酸エステルとの複合被膜が形成される。充電状態の負極と電解液とは反応しやすいが、この複合被膜により負極と電解液との副反応が抑制される。よって、サイクル寿命特性が向上する。加えて、不飽和化合物の環状炭酸エステルのみにより形成される被膜では、低温放電特性が低下してしまうが、この複合被膜により、低温放電特性も向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本発明の一実施の形態に係る電解質用組成物は、電解液と、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物とを含有している。また、本発明の一実施の形態に係る高分子電解質は、この電解質用組成物を重合させることにより得られたものであり、電解液と、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物が重合された構造を有する高分子化合物とを含有している。なお、本明細書において「電解質用組成物を重合させる」というのは、具体的には「電解質用組成物中の重合性化合物を重合させる」ということを意味しており、電解質用組成物に含まれる電解液などについても重合させるわけではない。
【0016】
電解液は、溶媒と、溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン,γ−バレロラクトン,δ−バレロラクトンあるいはε−カプロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート,プロピレンカーボネート,ブチレンカーボネート,ジメチルカーボネート,エチルメチルカーボネートあるいはジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶媒、1,2−ジメトキシエタン,1−エトキシ−2−メトキシエタン,1,2−ジエトキシエタン,テトラヒドロフランあるいは2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、またはピロリドン類などの非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
電解質塩は、溶媒に溶解してイオンを生ずるものであればいずれを用いてもよく、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。例えばリチウム塩であれば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 ),四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 ),六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 ),過塩素酸リチウム(LiClO4 ),トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 ),ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO2 CF3 )2 ),トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(LiC(SO2 CF3 )3 ),四フッ化アルミン酸リチウム(LiAlCl4 )あるいは六フッ化ケイ酸リチウム(LiSiF6 )などが挙げられ、特に六フッ化リン酸リチウムあるいは四フッ化ホウ酸リチウムが酸化安定性の点から好ましい。電解質塩の濃度は、溶媒1リットル(l)に対して0.1mol〜3.0molが好ましく、より好ましくは0.5mol〜2.0molである。
【0018】
電解液は、また、添加剤として、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含んでいる。負極と高分子電解質との界面に、重合性化合物と不飽和化合物の環状炭酸エステルとの複合被膜を形成し、負極と電解液との副反応を抑制するためである。電解液における不飽和化合物の環状炭酸エステルの割合は、電解液100質量部に対して、不飽和化合物の環状炭酸エステル0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。これよりも少ないと添加による効果を得ることができず、これよりも多いと複合被膜が厚くなり、抵抗の増大により容量が低下してしまうからである。
【0019】
不飽和化合物の環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネートあるいはビニルエチレンカーボネートが挙げられる。なお、不飽和化合物の炭酸エステルは溶媒として機能することもあるが、本明細書では上述した機能に注目し、添加剤として説明している。もちろん、添加されたものの少なくとも一部が上述したような反応に寄与すればよく、反応に寄与しないものは溶媒として機能してもよい。
【0020】
重合性化合物としては、例えば、エーテル基を含有していない単官能アクリレート,単官能メタクリレート,多官能アクリレートあるいは多官能メタクリレートが挙げられる。具体的には、アクリル酸エステル,メタクリル酸エステル,アクリロニトリル,メタクリロニトリル,ジアクリル酸エステル,トリアクリル酸エステル,ジメタクリル酸エステルあるいはトリメタクリル酸エステルなどがこれに該当する。このようにエーテル基を含まない重合性化合物を用いるのは、エーテル基が存在するとエーテル基にカチオンが配位し、それによりカチオン伝導率が低下してしまうからである。
【0021】
特に、重合性化合物として、化34で表される構造と、化35で表される構造と、化36で表される構造との少なくとも3つの構造部を有する化合物を用いるようにすれば、極めて優れた電池特性を得ることができ好ましい。
【0022】
【化34】
【0023】
【化35】
【0024】
【化36】
【0025】
化34ないし化36において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R1は炭素を含みエーテル基を含まない構造部を表し、R2およびR3は水素原子、あるいは炭素を含みエーテル基を含まない構造部を表す。好ましくは、R1はエーテル基を含まないアルキレン基を有し、R2はエーテル基を含まない鎖状あるいは環状のアルキル基を有する。1化合物に含まれる化34ないし化36の各構造部の数は任意であり、2以上の場合、X11,X12,X2,X3,R1,R2あるいはR3は、各構造部において同一でもよく、異なっていてもよい。また、化34ないし化36の各構造部の結合関係も任意である。すなわち、化34ないし化36の各構造部は例えば一定の順番で繰り返し結合していてもよく、順不同に結合していてもよい。
【0026】
このような重合性化合物としては、例えば、化37で表される構造と、化38で表される構造と、化39で表される構造とを有する化合物が好ましい。
【0027】
【化37】
【0028】
【化38】
【0029】
【化39】
【0030】
化37ないし化39において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R21は水素原子、炭素数10以下のアルキル基、あるいは芳香環を有する炭素数12以下の基を表し、R31は水素原子、炭素数10以下のアルキル基、芳香環を有する炭素数12以下の基、化40で表される基、あるいは化41で表される基を表す。
【0031】
【化40】
【0032】
化40において、R32は水素原子、フッ素原子、あるいはフッ化メチル(CF3 )基を表し、aは0以上6以下の整数、bは0以上16以下の整数、cは1または2、dは1または2である。
【0033】
【化41】
【0034】
化41において、R33は2価の連結基を表し、R34は環状カーボネート基を表す。
【0035】
重合性化合物のより具体的な例としては、例えば、化42で表される構造と、化43で表される構造と、化44で表される構造とを有する化合物が挙げられる。
【0036】
【化42】
【0037】
【化43】
【0038】
【化44】
【0039】
化42ないし化44において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R22およびR35は炭素数6以下のアルキル基を表す。
【0040】
また例えば、化45で表される構造と、化46で表される構造と、化47で表される構造とを有する化合物も挙げられる。
【0041】
【化45】
【0042】
【化46】
【0043】
【化47】
【0044】
化45ないし化47において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R22は炭素数6以下のアルキル基を表し、R36は芳香環を有する炭素数12以下の基を表す。R36としては、例えば、化48で表される基が挙げられる。
【0045】
【化48】
【0046】
更に例えば、化49で表される構造と、化50で表される構造と、化51で表される構造とを有する化合物も挙げられる。
【0047】
【化49】
【0048】
【化50】
【0049】
【化51】
【0050】
化49ないし化51において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R22は炭素数6以下のアルキル基を表し、R32は水素原子、フッ素原子、あるいはフッ化メチル基を表し、aは0以上6以下の整数、bは0以上16以下の整数、cは1または2、dは1または2である。
【0051】
加えて例えば、化52で表される構造と、化53で表される構造と、化54で表される構造とを有する化合物も挙げられる。
【0052】
【化52】
【0053】
【化53】
【0054】
【化54】
【0055】
化52ないし化54において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R22は炭素数6以下のアルキル基を表す。
【0056】
重合性化合物はいずれか1種を単独で用いてもよいが、単官能体と多官能体を混合するか、または、多官能体を単独あるいは2種類以上混合して用いることが望ましい。このように構成することにより、重合した高分子電解質の機械的強度と電解液保持性とが両立させやすくなるからである。
【0057】
電解液に対する重合性化合物あるいはそれを重合させた構造を有する高分子化合物の割合は、電解液100質量部に対して、重合性化合物あるいは高分子化合物が3質量部以上10質量部以下であることが好ましい。重合性化合物あるいは高分子化合物が少ないと十分な機械的強度を得ることができず、重合性化合物あるいは高分子化合物が多いとイオン伝導率が低くなってしまうからである。
【0058】
電解質用組成物は、更に、必要に応じて重合開始剤を含んでいる。重合開始剤としては、例えばパーオキシエステル系重合開始剤を用いることが好ましい。パーオキシエステル系重合開始剤を用いるようにすれば、ゲル化時における気体の発生を抑制することができると共に、重合性化合物の割合を少なくしても十分にゲル化させることができ、十分な機械的強度を得ることができるからである。
【0059】
パーオキシエステル系重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、あるいはt−ブチルパーオキシアセテートが挙げられる。パーオキシエステル系重合開始剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
電解質用組成物における重合開始剤の割合は、電解液100質量部に対して、重合開始剤が0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましい。この範囲内において、高分子電解質の機械的強度とイオン伝導率とを共に高くすることができるからである。
【0061】
なお、本実施の形態に係る高分子電解質は、この電解質用組成物を加熱することにより得られる。その際、加熱温度は、90℃以下とすることが好ましく、75℃以下とすればより好ましい。加熱温度が高すぎると、電解液に含まれる電解質塩が分解してしまう恐れがあるからである。
【0062】
この高分子電解質は、例えば、次のようにして電池に用いられる。
【0063】
図1は本実施の形態に係る高分子電解質を用いた二次電池を分解して表すものである。この二次電池は、正極端子11および負極端子12が取り付けられた電池素子20をフィルム状の外装部材30A,30Bの内部に封入したものである。正極端子11および負極端子12は、外装部材30A,30Bの内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極端子11および負極端子12は、例えば、アルミニウム(Al),銅(Cu),ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されている。
【0064】
外装部材30A,30Bは、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に張り合わせた矩形状のラミネートフィルムにより構成されている。外装部材30A,30Bは、例えば、ポリエチレンフィルム側と電池素子20とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材30A,30Bと正極端子11および負極端子12との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム31が挿入されている。密着フィルム31は、正極端子11および負極端子12に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極端子11および負極端子12が上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0065】
なお、外装部材30A,30Bは、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムなどにより構成するようにしてもよい。
【0066】
図2は、図1に示した電池素子20のI−I線に沿った断面構造を表すものである。電池素子20は、正極21と負極22とが本実施の形態に係る高分子電解質23およびセパレータ24を介して対向して位置し、巻回されているものであり、最外周部は保護テープ25により保護されている。
【0067】
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面あるいは片面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。正極集電体21Aには、長手方向における一方の端部に正極活物質層21Bが設けられず露出している部分があり、この露出部分に正極端子11が取り付けられている。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
【0068】
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて導電剤および結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料としては、例えば、硫化チタン(TiS2 ),硫化モリブデン(MoS2 ),セレン化ニオブ(NbSe2 )あるいは酸化バナジウム(V2 O5 )などのリチウムを含有しない金属硫化物あるいは金属酸化物など、またはリチウムを含有するリチウム複合酸化物、またはポリアセチレンあるいはポリピロールなどの高分子化合物が挙げられる。
【0069】
中でも、リチウム複合酸化物は、高電圧および高エネルギー密度を得ることができるものがあるので好ましい。このようなリチウム複合酸化物としては、例えば、化学式Lix MIO2 あるいはLiy MIIPO4 で表されるものが挙げられる。式中、MIおよびMIIは1種類以上の遷移金属を表し、特にコバルト(Co),ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。化学式Lix MIO2 で表されるリチウム複合酸化物の具体例としては、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LiNiz Co1−z O2 (0<z<1))、あるいはリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 O4 )などが挙げられる。
【0070】
負極22は、例えば、正極21と同様に、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面あるいは片面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
【0071】
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料および金属リチウムのいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて導電剤および結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料,金属酸化物あるいは高分子化合物が挙げられる。炭素材料としては、難黒鉛化炭素材料あるいは黒鉛系材料などが挙げられ、より具体的には、熱分解炭素類,コークス類,黒鉛類,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,炭素繊維あるいは活性炭などがある。このうち、コークス類にはピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。また、金属酸化物としては、酸化鉄,酸化ルテニウムあるいは酸化モリブテンなどが挙げられ、高分子化合物としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0072】
リチウムを吸臓および離脱することが可能な負極材料としては、また、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物も挙げられる。なお、合金には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうち2種以上が共存するものがある。
【0073】
このような金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム,インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr)およびイットリウム(Y)が挙げられる。これらの合金あるいは化合物としては、例えば化学式Mas Mbt で表されるものが挙げられる。この化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはMa以外の元素のうちの少なくとも1種を表す。sおよびtの値はそれぞれs>0、t≧0である。
【0074】
中でも、長周期型周期表における14族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるいは化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0075】
このような合金あるいは化合物について具体的に例を挙げれば、LiAl、AlSb、CuMgSb、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Mg2 Sn、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2)、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSiOあるいはLiSnOなどがある。
【0076】
セパレータ24は、例えば、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜など、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を有する絶縁性の薄膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0077】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層21Bからリチウムイオンが離脱し、高分子電解質23を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウムイオンが離脱し、高分子電解質23を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。その際、リチウムイオンの移動度は高分子電解質23に含まれる電解液に依存する。本実施の形態では、エーテル基を含まない重合性化合物を用いているので、リチウムイオンの移動が容易となり、高いイオン伝導率が得られる。
【0078】
また、電解液に不飽和化合物の環状炭酸エステルを用いているので、負極22と高分子電解質23との界面に、重合性化合物と不飽和化合物の環状炭酸エステルとの複合被膜が形成される。充電状態の負極22と電解液とは反応しやすいが、この複合被膜により負極22と電解液との副反応が抑制される。
【0079】
この二次電池は例えば次のようにして製造することができる。
【0080】
まず、正極21を作製する。例えば、粒子状の正極活物質を用いる場合には、正極活物質と必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて正極合剤スラリーを作製する。そののち、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層21Bを形成する。
【0081】
また、負極22を作製する。例えば、粒子状の負極活物質を用いる場合には、負極活物質と必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて負極合剤スラリーを作製する。そののち、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層22Bを形成する。
【0082】
次いで、正極21に正極端子11を取り付けると共に、負極22に負極端子12を取り付けたのち、セパレータ24,正極21,セパレータ24および負極22を順次積層して巻回し、最外周部に保護テープ25を接着して巻回電極体を形成する。続いて、この巻回電極体を外装部材30A,30Bで挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とする。
【0083】
そののち、上述した電解液と重合性化合物と必要に応じて重合開始剤とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材30A,30Bの開口部から巻回電極体の内部に注入して、外装部材30A,30Bの開口部を熱融着し封入する。次いで、電解質用組成物を注入した巻回電極体を外装部材30A,30Bの外部から加熱して重合性化合物を重合させることにより、ゲル状の高分子電解質23を形成する。その際、加熱温度は上述したように90℃以下、更には75℃以下とすることが好ましい。これにより図1および図2に示した二次電池が完成する。
【0084】
なお、この二次電池は次のようにして製造してもよい。例えば、巻回電極体を作製してから電解質用組成物を注入するのではなく、正極21および負極22の上に電解質用組成物を塗布したのちに巻回し、外装部材30A,30Bの内部に封入して加熱するようにしてもよい。また、正極21および負極22の上に電解質用組成物を塗布し、加熱して高分子電解質23を形成したのちに巻回し、外装部材30A,30Bの内部に封入するようにしてもよい。但し、外装部材30A,30Bの内部に封入してから加熱するようにした方が好ましい。加熱して高分子電解質23を形成したのちに巻回すると、高分子電解質23とセパレータ24との界面接合が不十分となり、内部抵抗が高くなってしまう場合があるからである。
【0085】
このように本実施の形態では、エーテル基を含まない重合性化合物を用いるようにしたので、イオンの移動を容易とすることができ、電解液と同等の高いイオン伝導率を得ることができる。また、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液を用いるようにしたので、負極22と高分子電解質23との界面に、重合性化合物と不飽和化合物の環状炭酸エステルとの複合被膜が形成される。充電状態の負極22と電解液とは反応しやすいが、この複合被膜により負極22と電解液との副反応が抑制される。よって、サイクル寿命特性を向上させることができる。加えて、不飽和化合物の環状炭酸エステルのみにより形成される被膜では、低温放電特性が低下してしまうが、この複合被膜により、低温放電特性も向上させることができる。
【0086】
特に、電解液100質量部に対して、不飽和化合物の環状炭酸エステルを0.1質量部以上5質量部以下の割合で含有するようにすれば、または、重合性化合物として、化34,化35および化36で表される各構造を有する化合物を用いるようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0087】
加えて、パーオキシエステル系重合開始剤を用いるようにすれば、ゲル化時における気体の発生を抑制することができると共に、重合性化合物の割合を少なくしても十分にゲル化させることができ、十分な機械的強度を得ることができる。
【0088】
【実施例】
更に、本発明の具体的な実施例について図1および図2を参照して詳細に説明する。
【0089】
(実施例1〜6)
まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )0.5molに対して炭酸コバルト(CoCO3 )1molの割合で混合し、空気中において900℃で5時間焼成することにより、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。次いで、得られたリチウムコバルト複合酸化物85質量部と、導電剤である黒鉛5質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して正極合剤を調製し、さらにこれを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。続いて、この正極合剤スラリーを厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成形して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製した。そののち、正極21に正極端子11を取り付けた。
【0090】
また、粉砕した黒鉛粉末を負極活物質として用意し、この黒鉛粉末90質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤を調製し、さらにこれを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させ負極合剤スラリーとした。次いで、この負極合剤スラリーを厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成形して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製した。続いて、負極22に負極端子12を取り付けた。
【0091】
更に、電解液100質量部に対して、重合性化合物溶液を5質量部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカノエートを0.1質量部の割合で混合し、電解質用組成物を作製した。その際、電解液にはエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとをエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7の質量比で混合した溶媒に六フッ化リン酸リチウムおよびビニレンカーボネート(VC)またはビニルエチレンカーボネート(VEC)を添加したものを用いた。電解液における六フッ化リン酸リチウムの濃度は1mol/lとし、電解液100質量部に対するビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートの割合は、実施例1〜6で表1に示したように変化させた。また、重合性化合物には、実施例1,3〜6では、化55に示した3つの構造部をa:b:c=2:3:5のモル比で有する化合物を用い、実施例2では、化56に示したトリメチロールプロパントリアクリレートと化57に示したネオペンチルグリコールジアクリレートとを3:7の質量比で混合したものを用いた。
【0092】
【表1】
【0093】
【化55】
【0094】
【化56】
【0095】
【化57】
【0096】
次いで、作製した正極21および負極22を,厚み25μmの微孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータ24を介して密着させた後、長手方向に巻き回して,最外周に保護テープ25を貼付することにより、巻回電極体を作製した.そののち、作製した巻回電極体を、外装部材30A,30Bに挟み、3辺を熱融着した。なお、外装部材30A,30Bには、最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと40μm厚のアルミニウム箔と30μm厚のポリプロピレンフィルムとが積層されてなる防湿性のアルミラミネートフィルムを用いた。そののち、これに電解質用組成物を注入し、減圧下で残りの1辺を熱融着し、密封した。そののち、ガラス板に挟んで75℃で30分間加熱し、重合性化合物を重合させることにより電解質用組成物をゲル化させて高分子電解質23とした。これにより、図1および図2に示した二次電池を得た。
【0097】
また、本実施例に対する比較例1として、重合性化合物のネオペンチルグリコールジアクリレート(化57)を化58に示したポリエチレングリコールジアクリレート(平均n=9)に変えたことを除き、他は実施例2と同様にして二次電池を作製した。更に、本実施例に対する比較例2として、ビニレンカーボネートおよびビニルエチレンカーボネートを添加しなかったことを除き、他は実施例1と同様にして二次電池を作製した。
【0098】
【化58】
【0099】
得られた実施例1〜6および比較例1,2の各二次電池について、23℃で100mAの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで15時間行い、次に100mAの定電流放電を終止電圧2.5Vまで行い、初回放電容量を求めた。そののち、各二次電池に対して、23℃で500mAの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで2時間行い、次に−10℃で500mAの定電流放電を終止電圧2.5Vまで行い、−10℃での放電容量を求めた。更にそののち、各二次電池に対して、23℃で500mAの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで2時間行い、引き続き500mAの定電流放電を終止電圧2.5Vまで行うという充放電を400サイクル行い、500mA放電における1サイクル目の放電容量を100%としたときの400サイクル目の容量維持率を求めた。表1に、初回容量、23℃での放電容量(初回容量)に対する−10℃での放電容量の割合、および容量維持率を示す。
【0100】
表1に示したように、実施例1〜6によれば、初回放電容量が510mAh以上、(−10℃放電容量/23℃放電容量)および容量維持率が75%以上と高い値が得られた。これに対して、比較例1,2では、(−10℃放電容量/23℃放電容量)および容量維持率共に低かった。これは、比較例1ではエーテル基を有する重合性化合物を用いているので、エーテル基にリチウムイオンが配位して移動度が低下したためであると考えられる。また、比較例2では複合皮膜が形成されなかったためにサイクル維持率が低下したものと考えられる。
【0101】
また、実施例1,3〜5を比較すると、実施例5は、実施例1,3,4に比べて、(−10℃放電容量/23℃放電容量)がやや低かった。これは、複合被膜が厚く形成されすぎたために、負極22と高分子電解質23との界面抵抗が増大したためと考えられる。更に、実施例1と実施例2とを比較すると、(−10℃放電容量/23℃放電容量)および容量維持率ともに実施例1の方が優れていた。
【0102】
すなわち、エーテル基を含まない重合性化合物を使用し、なおかつ不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液を使用するようにすれば、低温放電特性およびサイクル寿命特性を向上させることができることが分かった。また、電解液100質量部に対して不飽和化合物の環状炭酸エステルを0.1質量部以上5質量部以下の割合で含有するようにすれば、または、重合性化合物として、化55に示した3つの構造部を有するる化合物を用いるようにすれば、より高い特性を得ることができることが分かった。
【0103】
なお、上記実施例では、電解液、重合性化合物およびパーオキシエステル系重合開始剤についていくつかの例を挙げて具体的に説明したが、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む他の電解液、エーテル基を含まない他の重合性化合物、または他の重合開始剤を用いても、同様の結果を得ることができる。
【0104】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電解質用組成物が電解液と、エーテル基を含まない重合性化合物と、必要に応じて重合開始剤と、添加剤とを含む場合について説明したが、これら以外の他の材料を含んでいてもよい。
【0105】
また、上記実施の形態および実施例では、電解質組成物を加熱して高分子電解質23を作製するようにしたが、加圧しつつ加熱するようにしてもよく、加熱したのち加圧するようにしてもよい。
【0106】
更に、上記実施の形態および実施例では、二次電池の構成について一例を挙げて説明したが、他の構成を有する電池についても適用することができる。例えば、上記実施の形態および実施例では巻回ラミネート型の二次電池について説明したが、単層ラミネート型あるいは積層ラミネート型についても同様に適用することができる。また、いわゆる円筒型、角型、コイン型、ボタン型などについても適用することができる。更に、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
【0107】
加えて、上記実施の形態および実施例では、電解質塩としてリチウム塩を用いる場合について説明したが、ナトリウム塩あるいはカリウム塩などの他のアルカリ金属塩、またはマグネシウム塩あるいはカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、またはアルミニウム塩などの他の軽金属塩を用いる場合についても本発明を適用することができる。その際、正極活物質、負極活物質および非水溶媒などは、その電解質塩に応じて選択される。
【0108】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の電解質用組成物、請求項7ないし請求項12のいずれか1項に記載の高分子電解質、または請求項13ないし請求項19のいずれか1項に記載の電池によれば、エーテル基を含まない重合性化合物を用いるようにしたので、イオンの移動を容易とすることができ、電解液と同等の高いイオン伝導率を得ることができる。また、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液を用いるようにしたので、負極と高分子電解質との界面に、重合性化合物と不飽和化合物の環状炭酸エステルとの複合被膜が形成される。充電状態の負極と電解液とは反応しやすいが、この複合被膜により負極と電解液との副反応が抑制される。よって、サイクル寿命特性を向上させることができる。加えて、不飽和化合物の環状炭酸エステルのみにより形成される被膜では、低温放電特性が低下してしまうが、この複合被膜により、低温放電特性も向上させることができる。
【0109】
特に、請求項2記載の電解質用組成物、請求項8記載の高分子電解質、または請求項14記載の電池によれば、電解液100質量部に対して、不飽和化合物の環状炭酸エステルを0.1質量部以上5質量部以下の割合で含有するようにしたので、また、請求項3記載の電解質用組成物、請求項9記載の高分子電解質、または請求項15記載の電池によれば、重合性化合物として、化1,化2および化3で表される各構造を有する化合物、または、化12,化13および化14で表される各構造を有する化合物、または、化23,化24および化25で表される各構造を有する化合物を用いるようにしたので、より高い効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す分解斜視図である。
【図2】図1に示した電池素子のI−I線に沿った断面図である。
【符号の説明】
11…正極端子、12…負極端子、20…電池素子、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…高分子電解質、24…セパレータ、25…保護テープ、30A,30B…外装部材、31…密着フィルム。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解液と重合性化合物とを含む電解質用組成物、この電解質用組成物を重合することにより得られる高分子電解質、およびそれを用いた電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カメラ一体型VTR(videotape recorder)、携帯電話あるいは携帯用コンピューターなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。それに伴い、電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池の開発が活発に進められている。中でも、リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を実現できるものとして注目されており、薄型で折り曲げ可能な形状の自由度が高いものについても多く研究されている。
【0003】
このような形状の自由度が高い電池には、高分子化合物に電解質塩を溶解させた全固体状の高分子電解質や、あるいは高分子化合物に電解液を保持させたゲル状の高分子電解質などが用いられている。中でも、ゲル状の高分子電解質は、電解液を保持しているために全固体状に比べて活物質との接触性およびイオン伝導率に優れており、また、電解液に比べて漏液が起こりにくいという特徴を有していることから注目を浴びている。
【0004】
このゲル状の高分子電解質を作製する方法としては、例えば、重合性化合物および電解液を混合した電解質用組成物を重合開始剤を用いて重合させてゲル化するもの、または高分子化合物と電解液とを希釈溶媒を用いて混合しキャストしたのち希釈溶媒を揮発させてゲル化するものがある。このうち重合開始剤を用いる方法は、キャストによる方法に比べて電解液の選択肢が広く、また希釈溶媒を使用する必要がないので好ましい。
【0005】
この重合により得られる高分子電解質は、例えば電極を巻回した電池に用いる場合、電極を巻回する前に、電極上に重合性化合物を含む電解質用組成物を塗布して紫外線照射あるいは加熱するか、または、電極を巻回して巻回電極体を作製したのち、巻回電極体に電解質用組成物を注入して加熱することにより作製される(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、高分子電解質と電極およびセパレータとの界面における接合性を向上させることができるので、望ましい。
【0006】
また、高分子電解質の組成についても種々の研究がなされており、例えば、リチウムポリマー二次電池において、ビニレンカーボネートを使用することによって、電池内に重合性化合物が残存するのを防ぐと共に、ビニレンカーボネートにより負極の表面に被膜を形成して、電池の内部抵抗を低減し、電池の放電容量の低下および充放電サイクル寿命の低下を改善したものがある(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特公昭58−56467号公報
【特許文献2】
特開2002−313425号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2に記載されている高分子電解質では、重合性化合物にエーテル基を有しているので、解離により生じたカチオンがエーテル基の酸素に配位してカチオンの移動度が低下し、イオン伝導率が低下してしまい、しかも、エーテル基の部分は耐酸化性も低いので、充放電効率は優れないという問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、電解液と同等の高いイオン伝導率を得ることができ、かつ、サイクル寿命特性および低温放電特性を向上させることができる電解質用組成物、および高分子電解質、並びにそれを用いた電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による電解質用組成物は、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物と、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液とを含有するものである。
【0011】
本発明による高分子電解質は、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物が重合された構造を有する高分子化合物と、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液とを含有するものである。
【0012】
本発明による電池は、正極および負極と共に高分子電解質を備えたものであって、高分子電解質は、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物が重合された構造を有する高分子化合物と、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液とを含有するものである。
【0013】
本発明による電解質用組成物、高分子電解質および電池では、エーテル基を含まない重合性化合物を用いているので、イオンの移動が容易となり、高いイオン伝導率が得られる。また、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液を用いているので、負極と高分子電解質との界面に、重合性化合物と不飽和化合物の環状炭酸エステルとの複合被膜が形成される。充電状態の負極と電解液とは反応しやすいが、この複合被膜により負極と電解液との副反応が抑制される。よって、サイクル寿命特性が向上する。加えて、不飽和化合物の環状炭酸エステルのみにより形成される被膜では、低温放電特性が低下してしまうが、この複合被膜により、低温放電特性も向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本発明の一実施の形態に係る電解質用組成物は、電解液と、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物とを含有している。また、本発明の一実施の形態に係る高分子電解質は、この電解質用組成物を重合させることにより得られたものであり、電解液と、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物が重合された構造を有する高分子化合物とを含有している。なお、本明細書において「電解質用組成物を重合させる」というのは、具体的には「電解質用組成物中の重合性化合物を重合させる」ということを意味しており、電解質用組成物に含まれる電解液などについても重合させるわけではない。
【0016】
電解液は、溶媒と、溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン,γ−バレロラクトン,δ−バレロラクトンあるいはε−カプロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート,プロピレンカーボネート,ブチレンカーボネート,ジメチルカーボネート,エチルメチルカーボネートあるいはジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶媒、1,2−ジメトキシエタン,1−エトキシ−2−メトキシエタン,1,2−ジエトキシエタン,テトラヒドロフランあるいは2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、またはピロリドン類などの非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
電解質塩は、溶媒に溶解してイオンを生ずるものであればいずれを用いてもよく、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。例えばリチウム塩であれば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 ),四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 ),六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 ),過塩素酸リチウム(LiClO4 ),トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 ),ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO2 CF3 )2 ),トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(LiC(SO2 CF3 )3 ),四フッ化アルミン酸リチウム(LiAlCl4 )あるいは六フッ化ケイ酸リチウム(LiSiF6 )などが挙げられ、特に六フッ化リン酸リチウムあるいは四フッ化ホウ酸リチウムが酸化安定性の点から好ましい。電解質塩の濃度は、溶媒1リットル(l)に対して0.1mol〜3.0molが好ましく、より好ましくは0.5mol〜2.0molである。
【0018】
電解液は、また、添加剤として、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含んでいる。負極と高分子電解質との界面に、重合性化合物と不飽和化合物の環状炭酸エステルとの複合被膜を形成し、負極と電解液との副反応を抑制するためである。電解液における不飽和化合物の環状炭酸エステルの割合は、電解液100質量部に対して、不飽和化合物の環状炭酸エステル0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。これよりも少ないと添加による効果を得ることができず、これよりも多いと複合被膜が厚くなり、抵抗の増大により容量が低下してしまうからである。
【0019】
不飽和化合物の環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネートあるいはビニルエチレンカーボネートが挙げられる。なお、不飽和化合物の炭酸エステルは溶媒として機能することもあるが、本明細書では上述した機能に注目し、添加剤として説明している。もちろん、添加されたものの少なくとも一部が上述したような反応に寄与すればよく、反応に寄与しないものは溶媒として機能してもよい。
【0020】
重合性化合物としては、例えば、エーテル基を含有していない単官能アクリレート,単官能メタクリレート,多官能アクリレートあるいは多官能メタクリレートが挙げられる。具体的には、アクリル酸エステル,メタクリル酸エステル,アクリロニトリル,メタクリロニトリル,ジアクリル酸エステル,トリアクリル酸エステル,ジメタクリル酸エステルあるいはトリメタクリル酸エステルなどがこれに該当する。このようにエーテル基を含まない重合性化合物を用いるのは、エーテル基が存在するとエーテル基にカチオンが配位し、それによりカチオン伝導率が低下してしまうからである。
【0021】
特に、重合性化合物として、化34で表される構造と、化35で表される構造と、化36で表される構造との少なくとも3つの構造部を有する化合物を用いるようにすれば、極めて優れた電池特性を得ることができ好ましい。
【0022】
【化34】
【0023】
【化35】
【0024】
【化36】
【0025】
化34ないし化36において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R1は炭素を含みエーテル基を含まない構造部を表し、R2およびR3は水素原子、あるいは炭素を含みエーテル基を含まない構造部を表す。好ましくは、R1はエーテル基を含まないアルキレン基を有し、R2はエーテル基を含まない鎖状あるいは環状のアルキル基を有する。1化合物に含まれる化34ないし化36の各構造部の数は任意であり、2以上の場合、X11,X12,X2,X3,R1,R2あるいはR3は、各構造部において同一でもよく、異なっていてもよい。また、化34ないし化36の各構造部の結合関係も任意である。すなわち、化34ないし化36の各構造部は例えば一定の順番で繰り返し結合していてもよく、順不同に結合していてもよい。
【0026】
このような重合性化合物としては、例えば、化37で表される構造と、化38で表される構造と、化39で表される構造とを有する化合物が好ましい。
【0027】
【化37】
【0028】
【化38】
【0029】
【化39】
【0030】
化37ないし化39において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R21は水素原子、炭素数10以下のアルキル基、あるいは芳香環を有する炭素数12以下の基を表し、R31は水素原子、炭素数10以下のアルキル基、芳香環を有する炭素数12以下の基、化40で表される基、あるいは化41で表される基を表す。
【0031】
【化40】
【0032】
化40において、R32は水素原子、フッ素原子、あるいはフッ化メチル(CF3 )基を表し、aは0以上6以下の整数、bは0以上16以下の整数、cは1または2、dは1または2である。
【0033】
【化41】
【0034】
化41において、R33は2価の連結基を表し、R34は環状カーボネート基を表す。
【0035】
重合性化合物のより具体的な例としては、例えば、化42で表される構造と、化43で表される構造と、化44で表される構造とを有する化合物が挙げられる。
【0036】
【化42】
【0037】
【化43】
【0038】
【化44】
【0039】
化42ないし化44において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R22およびR35は炭素数6以下のアルキル基を表す。
【0040】
また例えば、化45で表される構造と、化46で表される構造と、化47で表される構造とを有する化合物も挙げられる。
【0041】
【化45】
【0042】
【化46】
【0043】
【化47】
【0044】
化45ないし化47において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R22は炭素数6以下のアルキル基を表し、R36は芳香環を有する炭素数12以下の基を表す。R36としては、例えば、化48で表される基が挙げられる。
【0045】
【化48】
【0046】
更に例えば、化49で表される構造と、化50で表される構造と、化51で表される構造とを有する化合物も挙げられる。
【0047】
【化49】
【0048】
【化50】
【0049】
【化51】
【0050】
化49ないし化51において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R22は炭素数6以下のアルキル基を表し、R32は水素原子、フッ素原子、あるいはフッ化メチル基を表し、aは0以上6以下の整数、bは0以上16以下の整数、cは1または2、dは1または2である。
【0051】
加えて例えば、化52で表される構造と、化53で表される構造と、化54で表される構造とを有する化合物も挙げられる。
【0052】
【化52】
【0053】
【化53】
【0054】
【化54】
【0055】
化52ないし化54において、X11,X12,X2およびX3は水素原子またはメチル基を表し、R22は炭素数6以下のアルキル基を表す。
【0056】
重合性化合物はいずれか1種を単独で用いてもよいが、単官能体と多官能体を混合するか、または、多官能体を単独あるいは2種類以上混合して用いることが望ましい。このように構成することにより、重合した高分子電解質の機械的強度と電解液保持性とが両立させやすくなるからである。
【0057】
電解液に対する重合性化合物あるいはそれを重合させた構造を有する高分子化合物の割合は、電解液100質量部に対して、重合性化合物あるいは高分子化合物が3質量部以上10質量部以下であることが好ましい。重合性化合物あるいは高分子化合物が少ないと十分な機械的強度を得ることができず、重合性化合物あるいは高分子化合物が多いとイオン伝導率が低くなってしまうからである。
【0058】
電解質用組成物は、更に、必要に応じて重合開始剤を含んでいる。重合開始剤としては、例えばパーオキシエステル系重合開始剤を用いることが好ましい。パーオキシエステル系重合開始剤を用いるようにすれば、ゲル化時における気体の発生を抑制することができると共に、重合性化合物の割合を少なくしても十分にゲル化させることができ、十分な機械的強度を得ることができるからである。
【0059】
パーオキシエステル系重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、あるいはt−ブチルパーオキシアセテートが挙げられる。パーオキシエステル系重合開始剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
電解質用組成物における重合開始剤の割合は、電解液100質量部に対して、重合開始剤が0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましい。この範囲内において、高分子電解質の機械的強度とイオン伝導率とを共に高くすることができるからである。
【0061】
なお、本実施の形態に係る高分子電解質は、この電解質用組成物を加熱することにより得られる。その際、加熱温度は、90℃以下とすることが好ましく、75℃以下とすればより好ましい。加熱温度が高すぎると、電解液に含まれる電解質塩が分解してしまう恐れがあるからである。
【0062】
この高分子電解質は、例えば、次のようにして電池に用いられる。
【0063】
図1は本実施の形態に係る高分子電解質を用いた二次電池を分解して表すものである。この二次電池は、正極端子11および負極端子12が取り付けられた電池素子20をフィルム状の外装部材30A,30Bの内部に封入したものである。正極端子11および負極端子12は、外装部材30A,30Bの内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極端子11および負極端子12は、例えば、アルミニウム(Al),銅(Cu),ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されている。
【0064】
外装部材30A,30Bは、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に張り合わせた矩形状のラミネートフィルムにより構成されている。外装部材30A,30Bは、例えば、ポリエチレンフィルム側と電池素子20とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材30A,30Bと正極端子11および負極端子12との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム31が挿入されている。密着フィルム31は、正極端子11および負極端子12に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極端子11および負極端子12が上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0065】
なお、外装部材30A,30Bは、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムなどにより構成するようにしてもよい。
【0066】
図2は、図1に示した電池素子20のI−I線に沿った断面構造を表すものである。電池素子20は、正極21と負極22とが本実施の形態に係る高分子電解質23およびセパレータ24を介して対向して位置し、巻回されているものであり、最外周部は保護テープ25により保護されている。
【0067】
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面あるいは片面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。正極集電体21Aには、長手方向における一方の端部に正極活物質層21Bが設けられず露出している部分があり、この露出部分に正極端子11が取り付けられている。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
【0068】
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて導電剤および結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料としては、例えば、硫化チタン(TiS2 ),硫化モリブデン(MoS2 ),セレン化ニオブ(NbSe2 )あるいは酸化バナジウム(V2 O5 )などのリチウムを含有しない金属硫化物あるいは金属酸化物など、またはリチウムを含有するリチウム複合酸化物、またはポリアセチレンあるいはポリピロールなどの高分子化合物が挙げられる。
【0069】
中でも、リチウム複合酸化物は、高電圧および高エネルギー密度を得ることができるものがあるので好ましい。このようなリチウム複合酸化物としては、例えば、化学式Lix MIO2 あるいはLiy MIIPO4 で表されるものが挙げられる。式中、MIおよびMIIは1種類以上の遷移金属を表し、特にコバルト(Co),ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。化学式Lix MIO2 で表されるリチウム複合酸化物の具体例としては、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LiNiz Co1−z O2 (0<z<1))、あるいはリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 O4 )などが挙げられる。
【0070】
負極22は、例えば、正極21と同様に、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面あるいは片面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
【0071】
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料および金属リチウムのいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて導電剤および結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料,金属酸化物あるいは高分子化合物が挙げられる。炭素材料としては、難黒鉛化炭素材料あるいは黒鉛系材料などが挙げられ、より具体的には、熱分解炭素類,コークス類,黒鉛類,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,炭素繊維あるいは活性炭などがある。このうち、コークス類にはピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。また、金属酸化物としては、酸化鉄,酸化ルテニウムあるいは酸化モリブテンなどが挙げられ、高分子化合物としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0072】
リチウムを吸臓および離脱することが可能な負極材料としては、また、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物も挙げられる。なお、合金には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうち2種以上が共存するものがある。
【0073】
このような金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム,インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr)およびイットリウム(Y)が挙げられる。これらの合金あるいは化合物としては、例えば化学式Mas Mbt で表されるものが挙げられる。この化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはMa以外の元素のうちの少なくとも1種を表す。sおよびtの値はそれぞれs>0、t≧0である。
【0074】
中でも、長周期型周期表における14族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるいは化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0075】
このような合金あるいは化合物について具体的に例を挙げれば、LiAl、AlSb、CuMgSb、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Mg2 Sn、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2)、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSiOあるいはLiSnOなどがある。
【0076】
セパレータ24は、例えば、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜など、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を有する絶縁性の薄膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0077】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層21Bからリチウムイオンが離脱し、高分子電解質23を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウムイオンが離脱し、高分子電解質23を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。その際、リチウムイオンの移動度は高分子電解質23に含まれる電解液に依存する。本実施の形態では、エーテル基を含まない重合性化合物を用いているので、リチウムイオンの移動が容易となり、高いイオン伝導率が得られる。
【0078】
また、電解液に不飽和化合物の環状炭酸エステルを用いているので、負極22と高分子電解質23との界面に、重合性化合物と不飽和化合物の環状炭酸エステルとの複合被膜が形成される。充電状態の負極22と電解液とは反応しやすいが、この複合被膜により負極22と電解液との副反応が抑制される。
【0079】
この二次電池は例えば次のようにして製造することができる。
【0080】
まず、正極21を作製する。例えば、粒子状の正極活物質を用いる場合には、正極活物質と必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて正極合剤スラリーを作製する。そののち、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層21Bを形成する。
【0081】
また、負極22を作製する。例えば、粒子状の負極活物質を用いる場合には、負極活物質と必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて負極合剤スラリーを作製する。そののち、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層22Bを形成する。
【0082】
次いで、正極21に正極端子11を取り付けると共に、負極22に負極端子12を取り付けたのち、セパレータ24,正極21,セパレータ24および負極22を順次積層して巻回し、最外周部に保護テープ25を接着して巻回電極体を形成する。続いて、この巻回電極体を外装部材30A,30Bで挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とする。
【0083】
そののち、上述した電解液と重合性化合物と必要に応じて重合開始剤とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材30A,30Bの開口部から巻回電極体の内部に注入して、外装部材30A,30Bの開口部を熱融着し封入する。次いで、電解質用組成物を注入した巻回電極体を外装部材30A,30Bの外部から加熱して重合性化合物を重合させることにより、ゲル状の高分子電解質23を形成する。その際、加熱温度は上述したように90℃以下、更には75℃以下とすることが好ましい。これにより図1および図2に示した二次電池が完成する。
【0084】
なお、この二次電池は次のようにして製造してもよい。例えば、巻回電極体を作製してから電解質用組成物を注入するのではなく、正極21および負極22の上に電解質用組成物を塗布したのちに巻回し、外装部材30A,30Bの内部に封入して加熱するようにしてもよい。また、正極21および負極22の上に電解質用組成物を塗布し、加熱して高分子電解質23を形成したのちに巻回し、外装部材30A,30Bの内部に封入するようにしてもよい。但し、外装部材30A,30Bの内部に封入してから加熱するようにした方が好ましい。加熱して高分子電解質23を形成したのちに巻回すると、高分子電解質23とセパレータ24との界面接合が不十分となり、内部抵抗が高くなってしまう場合があるからである。
【0085】
このように本実施の形態では、エーテル基を含まない重合性化合物を用いるようにしたので、イオンの移動を容易とすることができ、電解液と同等の高いイオン伝導率を得ることができる。また、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液を用いるようにしたので、負極22と高分子電解質23との界面に、重合性化合物と不飽和化合物の環状炭酸エステルとの複合被膜が形成される。充電状態の負極22と電解液とは反応しやすいが、この複合被膜により負極22と電解液との副反応が抑制される。よって、サイクル寿命特性を向上させることができる。加えて、不飽和化合物の環状炭酸エステルのみにより形成される被膜では、低温放電特性が低下してしまうが、この複合被膜により、低温放電特性も向上させることができる。
【0086】
特に、電解液100質量部に対して、不飽和化合物の環状炭酸エステルを0.1質量部以上5質量部以下の割合で含有するようにすれば、または、重合性化合物として、化34,化35および化36で表される各構造を有する化合物を用いるようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0087】
加えて、パーオキシエステル系重合開始剤を用いるようにすれば、ゲル化時における気体の発生を抑制することができると共に、重合性化合物の割合を少なくしても十分にゲル化させることができ、十分な機械的強度を得ることができる。
【0088】
【実施例】
更に、本発明の具体的な実施例について図1および図2を参照して詳細に説明する。
【0089】
(実施例1〜6)
まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )0.5molに対して炭酸コバルト(CoCO3 )1molの割合で混合し、空気中において900℃で5時間焼成することにより、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。次いで、得られたリチウムコバルト複合酸化物85質量部と、導電剤である黒鉛5質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して正極合剤を調製し、さらにこれを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。続いて、この正極合剤スラリーを厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成形して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製した。そののち、正極21に正極端子11を取り付けた。
【0090】
また、粉砕した黒鉛粉末を負極活物質として用意し、この黒鉛粉末90質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤を調製し、さらにこれを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させ負極合剤スラリーとした。次いで、この負極合剤スラリーを厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成形して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製した。続いて、負極22に負極端子12を取り付けた。
【0091】
更に、電解液100質量部に対して、重合性化合物溶液を5質量部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカノエートを0.1質量部の割合で混合し、電解質用組成物を作製した。その際、電解液にはエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとをエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7の質量比で混合した溶媒に六フッ化リン酸リチウムおよびビニレンカーボネート(VC)またはビニルエチレンカーボネート(VEC)を添加したものを用いた。電解液における六フッ化リン酸リチウムの濃度は1mol/lとし、電解液100質量部に対するビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートの割合は、実施例1〜6で表1に示したように変化させた。また、重合性化合物には、実施例1,3〜6では、化55に示した3つの構造部をa:b:c=2:3:5のモル比で有する化合物を用い、実施例2では、化56に示したトリメチロールプロパントリアクリレートと化57に示したネオペンチルグリコールジアクリレートとを3:7の質量比で混合したものを用いた。
【0092】
【表1】
【0093】
【化55】
【0094】
【化56】
【0095】
【化57】
【0096】
次いで、作製した正極21および負極22を,厚み25μmの微孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータ24を介して密着させた後、長手方向に巻き回して,最外周に保護テープ25を貼付することにより、巻回電極体を作製した.そののち、作製した巻回電極体を、外装部材30A,30Bに挟み、3辺を熱融着した。なお、外装部材30A,30Bには、最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと40μm厚のアルミニウム箔と30μm厚のポリプロピレンフィルムとが積層されてなる防湿性のアルミラミネートフィルムを用いた。そののち、これに電解質用組成物を注入し、減圧下で残りの1辺を熱融着し、密封した。そののち、ガラス板に挟んで75℃で30分間加熱し、重合性化合物を重合させることにより電解質用組成物をゲル化させて高分子電解質23とした。これにより、図1および図2に示した二次電池を得た。
【0097】
また、本実施例に対する比較例1として、重合性化合物のネオペンチルグリコールジアクリレート(化57)を化58に示したポリエチレングリコールジアクリレート(平均n=9)に変えたことを除き、他は実施例2と同様にして二次電池を作製した。更に、本実施例に対する比較例2として、ビニレンカーボネートおよびビニルエチレンカーボネートを添加しなかったことを除き、他は実施例1と同様にして二次電池を作製した。
【0098】
【化58】
【0099】
得られた実施例1〜6および比較例1,2の各二次電池について、23℃で100mAの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで15時間行い、次に100mAの定電流放電を終止電圧2.5Vまで行い、初回放電容量を求めた。そののち、各二次電池に対して、23℃で500mAの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで2時間行い、次に−10℃で500mAの定電流放電を終止電圧2.5Vまで行い、−10℃での放電容量を求めた。更にそののち、各二次電池に対して、23℃で500mAの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで2時間行い、引き続き500mAの定電流放電を終止電圧2.5Vまで行うという充放電を400サイクル行い、500mA放電における1サイクル目の放電容量を100%としたときの400サイクル目の容量維持率を求めた。表1に、初回容量、23℃での放電容量(初回容量)に対する−10℃での放電容量の割合、および容量維持率を示す。
【0100】
表1に示したように、実施例1〜6によれば、初回放電容量が510mAh以上、(−10℃放電容量/23℃放電容量)および容量維持率が75%以上と高い値が得られた。これに対して、比較例1,2では、(−10℃放電容量/23℃放電容量)および容量維持率共に低かった。これは、比較例1ではエーテル基を有する重合性化合物を用いているので、エーテル基にリチウムイオンが配位して移動度が低下したためであると考えられる。また、比較例2では複合皮膜が形成されなかったためにサイクル維持率が低下したものと考えられる。
【0101】
また、実施例1,3〜5を比較すると、実施例5は、実施例1,3,4に比べて、(−10℃放電容量/23℃放電容量)がやや低かった。これは、複合被膜が厚く形成されすぎたために、負極22と高分子電解質23との界面抵抗が増大したためと考えられる。更に、実施例1と実施例2とを比較すると、(−10℃放電容量/23℃放電容量)および容量維持率ともに実施例1の方が優れていた。
【0102】
すなわち、エーテル基を含まない重合性化合物を使用し、なおかつ不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液を使用するようにすれば、低温放電特性およびサイクル寿命特性を向上させることができることが分かった。また、電解液100質量部に対して不飽和化合物の環状炭酸エステルを0.1質量部以上5質量部以下の割合で含有するようにすれば、または、重合性化合物として、化55に示した3つの構造部を有するる化合物を用いるようにすれば、より高い特性を得ることができることが分かった。
【0103】
なお、上記実施例では、電解液、重合性化合物およびパーオキシエステル系重合開始剤についていくつかの例を挙げて具体的に説明したが、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む他の電解液、エーテル基を含まない他の重合性化合物、または他の重合開始剤を用いても、同様の結果を得ることができる。
【0104】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電解質用組成物が電解液と、エーテル基を含まない重合性化合物と、必要に応じて重合開始剤と、添加剤とを含む場合について説明したが、これら以外の他の材料を含んでいてもよい。
【0105】
また、上記実施の形態および実施例では、電解質組成物を加熱して高分子電解質23を作製するようにしたが、加圧しつつ加熱するようにしてもよく、加熱したのち加圧するようにしてもよい。
【0106】
更に、上記実施の形態および実施例では、二次電池の構成について一例を挙げて説明したが、他の構成を有する電池についても適用することができる。例えば、上記実施の形態および実施例では巻回ラミネート型の二次電池について説明したが、単層ラミネート型あるいは積層ラミネート型についても同様に適用することができる。また、いわゆる円筒型、角型、コイン型、ボタン型などについても適用することができる。更に、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
【0107】
加えて、上記実施の形態および実施例では、電解質塩としてリチウム塩を用いる場合について説明したが、ナトリウム塩あるいはカリウム塩などの他のアルカリ金属塩、またはマグネシウム塩あるいはカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、またはアルミニウム塩などの他の軽金属塩を用いる場合についても本発明を適用することができる。その際、正極活物質、負極活物質および非水溶媒などは、その電解質塩に応じて選択される。
【0108】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の電解質用組成物、請求項7ないし請求項12のいずれか1項に記載の高分子電解質、または請求項13ないし請求項19のいずれか1項に記載の電池によれば、エーテル基を含まない重合性化合物を用いるようにしたので、イオンの移動を容易とすることができ、電解液と同等の高いイオン伝導率を得ることができる。また、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液を用いるようにしたので、負極と高分子電解質との界面に、重合性化合物と不飽和化合物の環状炭酸エステルとの複合被膜が形成される。充電状態の負極と電解液とは反応しやすいが、この複合被膜により負極と電解液との副反応が抑制される。よって、サイクル寿命特性を向上させることができる。加えて、不飽和化合物の環状炭酸エステルのみにより形成される被膜では、低温放電特性が低下してしまうが、この複合被膜により、低温放電特性も向上させることができる。
【0109】
特に、請求項2記載の電解質用組成物、請求項8記載の高分子電解質、または請求項14記載の電池によれば、電解液100質量部に対して、不飽和化合物の環状炭酸エステルを0.1質量部以上5質量部以下の割合で含有するようにしたので、また、請求項3記載の電解質用組成物、請求項9記載の高分子電解質、または請求項15記載の電池によれば、重合性化合物として、化1,化2および化3で表される各構造を有する化合物、または、化12,化13および化14で表される各構造を有する化合物、または、化23,化24および化25で表される各構造を有する化合物を用いるようにしたので、より高い効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す分解斜視図である。
【図2】図1に示した電池素子のI−I線に沿った断面図である。
【符号の説明】
11…正極端子、12…負極端子、20…電池素子、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…高分子電解質、24…セパレータ、25…保護テープ、30A,30B…外装部材、31…密着フィルム。
Claims (19)
- アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物と、
不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液と
を含有することを特徴とする電解質用組成物。 - 前記電解液100質量部に対して、前記環状炭酸エステルを0.1質量部以上5質量部以下の割合で含有することを特徴とする請求項1記載の電解質用組成物。
- 前記重合性化合物は、化4で表される構造と、化5で表される構造と、化6で表される構造とを有する化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の電解質用組成物。
- 前記電解液は、前記環状炭酸エステルとしてビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートを含むことを特徴とする請求項1記載の電解質用組成物。
- アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物が重合された構造を有する高分子化合物と、
不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液と
を含有することを特徴とする高分子電解質。 - 前記電解液100質量部に対して、前記環状炭酸エステルを0.1質量部以上5質量部以下の割合で含有することを特徴とする請求項7記載の高分子電解質。
- 前記高分子化合物は、化15で表される構造と、化16で表される構造と、化17で表される構造とを有する重合性化合物が重合された構造を有することを特徴とする請求項7記載の高分子電解質。
- 前記電解液は、前記環状炭酸エステルとしてビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートを含むことを特徴とする請求項7記載の高分子電解質。
- 正極および負極と共に高分子電解質を備えた電池であって、
前記高分子電解質は、アクリレート基あるいはメタクリレート基を有しかつエーテル基を含まない重合性化合物が重合された構造を有する高分子化合物と、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含む電解液とを含有することを特徴とする電池。 - 前記高分子電解質は、前記電解液100質量部に対して、前記環状炭酸エステルを0.1質量部以上5質量部以下の割合で含有することを特徴とする請求項13記載の電池。
- 前記高分子化合物は、化26で表される構造と、化27で表される構造と、化28で表される構造とを有する重合性化合物が重合された構造を有することを特徴とする請求項13記載の電池。
- 前記電解液は、前記環状炭酸エステルとしてビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートを含むことを特徴とする請求項13記載の電池。
- 前記正極,負極および高分子電解質は外装部材の内部に収納されており、前記高分子化合物は外装部材の内部において重合されたことを特徴とする請求項13記載の電池。
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