JP2004310976A - 光ピックアップ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】対物レンズに樹脂材料を用いた場合、温度変化に屈折率変化、形状変化によって発生する収差を補正する光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】光源が、温度により発振波長がほぼ単調に変化する特性を持つこと、及び、対物レンズに、光源の常温での発振波長をλとして、そのλのほぼ自然数倍の位相差を光束に与える機能を持たせるよう、光軸を中心とする輪状の段差部を一つ以上設けることで、収差を補正するよう構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、レーザ光をCD(コンパクトディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)及び青色レーザ光ディスク等の光ディスクの情報記録面上に集光することにより光情報を再生又は記録する光ピックアップ装置に関する。CDとは記録可能なCD−R(コンパクトディスク レコーダブル)を含むものとする。また、本発明における対物レンズは、射出成形又は射出圧縮成形で成形される製造方法で作成されるのに適する樹脂製レンズである。
光ピックアップ装置に樹脂製の対物レンズを用いた場合、周囲温度変化による対物レンズの、樹脂の屈折率の変化、樹脂の膨張又は収縮が生じる。その結果、対物レンズに球面収差が発生し、集光性能を劣化させ、低温又は高温での使用ときに、その性能を十分に発揮できない問題があった。
この問題に対して、コリメータレンズと対物レンズとを樹脂製にして、周囲温度が変化しても、集光性能を劣化させにくい光学系が報告されている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、周囲温度変化により樹脂製コリメータレンズの焦点距離が変化するのにしたがい、本来平行光になるはずの、樹脂製コリメータレンズの出射光束をやや発散光束又はやや収束光束にすることにより、樹脂製対物レンズに発生する球面収差を補正している。
特開平10−40569号公報(特許請求の範囲、図1)
温度変化による集光性能の劣化を抑えるために、上記従来例では、コリメータレンズが必須の構成要件となる。近年、装置の小型化又はコストダウン化のためにコリメータレンズを用いないで、対物レンズのみで光源からの光束を情報記録面に集光させる有限系の光学系を採用する傾向がある。
しかし、このような有限系では、コリメータレンズがないため、コリメータレンズとの組み合わせによる温度特性の改善ができず、対物レンズのみでの対策の必要に迫られていた。
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、温度変化に対して集光性能の劣化の少ない光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
本発明は、光ディスクを記録又は再生する際に、光源からの光を対物レンズを通過させて光ディスクの情報記録面に集光させて光ディスクの情報記録面からの反射光を受光素子に受光させ、対物レンズには光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる機能を有する位相シフタが設けられている光ピックアップ装置において、
光源の周囲温度が上昇するときに光源からの光の波長が長くなる場合に、位相シフタの一部又は全部により生ずる位相差が、光源の周囲温度の上昇にしたがって大きくなるようにすることを特徴とする光ピックアップ装置を提供する。
また、2つの光ディスクのそれぞれを記録又は再生する際に、それぞれの光ディスクに対して異なる波長の光源からの光を対物レンズを通過させて、それぞれの光ディスクの情報記録面に集光させ、それぞれの情報記録面からの反射光を受光素子に受光させ、対物レンズには光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる機能を有する位相シフタが設けられている光ピックアップ装置において、
第1の光ディスクを記録又は再生する際には第1の波長が用いられ、第2の光ディスクを記録又は再生する際には第2の波長が用いられ、
光源の周囲温度が上昇するときに光源からの第2の光の波長が長くなる場合に、位相シフタの一部又は全部により、光源の周囲温度の上昇にしたがって第2の光の位相差が大きくなるようにすることを特徴とする光ピックアップ装置を提供する。
また、2つの光ディスクのそれぞれを記録又は再生する際に、それぞれの光ディスクに対して異なる波長の光源からの光を対物レンズを通過させて、それぞれの光ディスクの情報記録面に集光させ、それぞれの情報記録面からの反射光を受光素子に受光させ、対物レンズには光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる機能を有する位相シフタが設けられている光ピックアップ装置において、
第1の光ディスクを記録又は再生する際には第1の波長が用いられ、第2の光ディスクを記録又は再生する際には第2の波長が用いられ、
光源の周囲温度が上昇するときに光源からの第1の光の波長が長くなる場合に、位相シフタの一部又は全部により、光源の周囲温度の上昇にしたがって第1の光の位相差が大きくなり、
光源の周囲温度が上昇するときに光源からの第2の光の波長が長くなる場合に、位相シフタの一部又は全部により、光源の周囲温度の上昇にしたがって第2の光の位相差が大きくなるようにすることを特徴とする光ピックアップ装置を提供する。
また、光ディスクを記録又は再生する際に、光源からの光を対物レンズを通過させて光ディスクの情報記録面に集光させて光ディスクの情報記録面からの反射光を受光素子に受光させ、対物レンズには光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる機能を有する位相シフタが設けられている光ピックアップ装置において、
光源の周囲温度が下降するときに光源からの光の波長が短くなる場合に、位相シフタの一部又は全部により、光源の周囲温度の下降にしたがって生ずる位相差が大きくなるようにすることを特徴とする光ピックアップ装置を提供する。
本発明の光ピックアップ装置によれば、対物レンズ以外に、周囲温度変化に応じて光学特性が変化するレンズ、例えば、コリメータレンズ又は補助レンズ等を用いることなく周囲温度変化に対して、集光性能の劣化の少ない光ピックアップ装置を提供することができ、構造が簡単でコンパクトな光ピックアップ装置をえることができる。
図1は、本発明の光ピックアップ装置の一実施例を示す構成図であり、図2は図1に示す対物レンズ3の断面図である。図1、2において、1は光源、2はハーフミラー、3は対物レンズ、4は光軸、6は光ディスク、6aは光ディスクの透明基板、6bは光ディスクの情報記録面、9は絞り、11は受光素子、Sは光源1と対物レンズ3の第1面との距離、12は対物レンズ3の第1面の頂点を含む非球面、13は対物レンズ3の第1面の2番目の輪帯非球面、14は対物レンズ3の第1面の3番目(最外周)の輪帯非球面である。
は光ディスクの厚さ、tは対物レンズ3の中心厚、dは作動距離(対物レンズ3の第2面の頂点と光ディスク6の光源側の面との距離)、φ11は第1面(使用時光源に近いほうの面)の光軸4に最も近い輪状の(1番目の輪状)の直径、φ12は第1面の光軸4から数えて2番目の輪状の直径、γ1,12は第1面の1番目の輪状の段差の落差である。
なお、以下の説明において、特に記載のない場合、距離、間隔、厚み等の寸法の単位はmm(ミリメートル)とする。図1では、方向は図面上での方向(A4を縦方向で見る場合、左側を上方とし、下方が光源側とする)をいうものとする。
本発明の光ピックアップ装置は、例えば、2種以上の光ディスクのそれぞれの記録又は再生をする場合には、それぞれの光ディスクに対して異なる波長の光源からの光をそれぞれの光ディスクの情報記録面に集光させ、それぞれの情報記録面からの反射光を受光素子に受光させることが好ましい。集光精度を向上させるため、本発明における対物レンズは両面に非球面を有する。なお、本発明の光ピックアップ装置を1種の光ディスクの記録又は再生用の光ピックアップ装置としてもよい。
本発明における対物レンズには光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる機能を有する位相シフタが設けられている。本発明の光ピックアップ装置を1種の光ディスクの記録又は再生用の光ピックアップ装置として用いる場合には、光源の周囲温度が上昇するときに光源からの光の波長が長くなる場合に、対物レンズに設けられている位相シフタにより、光源の周囲温度の上昇にしたがって位相差が大きくなるようにする。
光源の周囲温度が上昇するにしたがって対物レンズの屈折率が変化にすることにより位相差が大きくなるようにすることが好ましい。また、前記光源の周囲温度が常温のときの、光源からの光の波長をλとするとき、光源の周囲温度が常温(20℃)のときの位相差をλ・(0.9〜1.1)の自然数(i)倍にすることが好ましい。
波長λの光について生ずる位相差が0.9λ〜1.1λのi倍になるようにするには、位相シフタの各輪状の段差部が有する落差γと、λにおける対物レンズ3の素材の屈折率nとが以下の式(5)を満たすことが好ましい。なお、落差については後述する。
波長λの光について生ずる位相差が自然数倍のときには、位相差がない場合と同じで何ら作用しないが、光源の波長が変化した場合には、位相が自然数倍からずれて端数を有するため、波面に段差が生じ、球面収差が発生することになる。なお、位相シフトは、通常、対物レンズの片面又は両面に設けられる。
Figure 2004310976
本願発明において、対物レンズの材料の、前記周囲温度の変化に対する屈折率の変化(dn)/(dT)の絶対値|(dn)/(dT)|が0.00005(/deg)以上であることが好ましい。
光源1は、温度変化に対してほぼ単調に発振波長が変化する光源であり、例えばレーザ光源が挙げられる。CD用としては、例えば常温での発振波長780nmのレーザ光源、DVD用としては、例えば常温での発振波長650nmのレーザ光源が挙げられる。また2つの波長を同時に又は選択的に発振させるものでもよい。そのような例として特開平11−39684号に記載されている光モジュールが挙げられる。
周囲温度の変化に対する、前記光源からの光の波長変化(dλ)/(dT)が下記式(6)を満たすことが好ましい。
Figure 2004310976
ハーフミラー2は、光源1からの発散光を透過させる機能を有する。また、ハーフミラー2は、該発散光が絞り9で絞られて通過し、対物レンズ3で集光され光ディスク6の情報記録面6bに照射されて反射され戻ってきた光を受光素子11に導く機能を有する。
対物レンズ3は、例えば、射出成形法又は射出圧縮成形法により成形された樹脂製のレンズである。光ディスク6としては、例えば、青色レーザ光ディスク、DVD、CD又はCD−Rが挙げられる。絞り9は開口数(NA)を規定する機能を有する。
以下、このような光ピックアップ装置において、温度変化に対して、光ディスクの情報記録面への光束の集光性能の劣化を如何に抑えることができるか説明する。
本発明では、光の波長を縦軸とし、周囲温度を横軸とする座標平面において、前記光源の周囲温度が上昇すると前記光の波長がほぼ直線的に又は直線的に長くなっていることが好ましい。また、位相シフタは、例えば、対物レンズの片面又は両面に輪帯状に、段差、凸部及び凹部から選ばれる少なくとも1つが設けられることにより、構成されている。
図1に示す例では、有限系光学系を取上げたが、無限系光学系でもまったく同様の原理で温度特性の向上が図れる。無限系の場合、コリメータレンズに樹脂製レンズ又はガラス製レンズを用いることができる。
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されず、本発明の要旨を損なわない限り、各種の改良や変更も本発明に含まれる。図1に示すような光ピックアップ装置を想定した。なお、以下の図3、4、6、7、8、9に示す収差特性は計算値である。
対物レンズ3の有する非球面の形状は、下記式(7)によって決定した。式(7)において、iは非球面次数を示し、2,4,6,8であり、jは面番号を示し、1,2であり、hは光軸からの高さであり、zは第j面非球面の頂点の接平面からその非球面上の高さhの点までの距離であり、r、k、ai,jは第j面の各係数である。
Figure 2004310976
「例1(比較例)」
例1は、DVD専用の光ピックアップ装置とした。対物レンズの形状は両面が非球面形状で表面に凹凸が設けられてなく、位相シフタが設けられていないものを想定した。対物レンズの材質は非晶質ポリオレフィン樹脂とし、後述する例2でも同様とした。
表1に非球面係数、焦点距離f、開口数(NA)、レンズ中心厚d、常温(20℃)での使用波長λ、そのときのレンズ材料の屈折率nを示す。表1において、αはレンズ材料の線膨張係数、OIは物像間距離である。E−1は10−1を意味する。
図3に対物レンズの波面収差の波長依存特性を示し、図4に光源の周囲温度が変化しても波長が変化しない場合の対物レンズの波面収差の温度依存特性を示す。なお、図4の波長は、658nmである。
また、図5に光の波長と光源の周囲温度との関係を示す。さらに、図5に示す光源を用いる場合の、図4に示す波面収差の温度依存特性を有する対物レンズの波面収差の温度依存特性を図6に示す。
図3、4、6において、実線はトータル(すべての種類の収差を含む)波面収差RMS値、破線は3次球面収差RMS値を示す。なお、各波長、各周囲温度での屈折率は表2記載の数値を用いた。
「例2(実施例)」
図1に示すような光ピックアップ装置を想定し、図2に示すような対物レンズを想定した。段差は光源の常温(20℃)での発振波長λとして前記式(5)を満足するものとする。これによりλのほぼ自然数倍の位相差を光束に与える機能を持たせることができる。
焦点距離f、開口数(NA)、対物レンズ中心厚d、常温での使用波長λ、対物レンズのレンズ材料の屈折率n、対物レンズの材料の線膨張係数α及び物像間距離OIを表3に示す。
非球面12の諸数値を表4上段に示す。輪帯非球面13の諸数値を表4中段に示す。輪帯非球面14の諸数値を表4下段に示す。第2面の非球面の諸数を表5に示す。また、γ、φ11及びφ12を表6に示す。
図7に対物レンズの波面収差の波長依存特性を示し、図8に光源の周囲温度が変化しても波長が変化しない場合の対物レンズの波面収差の温度依存特性を示す。また、図9に光の波長と光源の周囲温度との関係を示す。図7、8、9において、実線はトータル(すべての種類の収差を含む)波面収差RMS値、破線は3次球面収差RMS値を示す。なお、各波長、各周囲温度での屈折率は表2記載の数値を用いた。
例1では、波長に対して収差特性がほとんど変化せず、周囲温度変化により、対物レンズの屈折率が変化すること、及び、対物レンズの膨張又は収縮により対物レンズの樹脂の有する線膨張係数にしたがって対物レンズの形状が変化することから球面収差が発生する。
したがって、光源の波長特性を考慮しても、温度に対する収差特性は、光源の波長特性を考慮しない場合とほとんど変らない。これに対して、例2では、周囲温度変化により、対物レンズの屈折率が変化すること、及び、対物レンズの膨張又は収縮により対物レンズの樹脂の有する線膨張係数にしたがって対物レンズの形状が変化しても、対物レンズに設けられた段差が、光源の波長変化に対して、球面収差を発生することになり、この収差が周囲温度変化に対して発生する球面収差を相殺する。
Figure 2004310976
Figure 2004310976
Figure 2004310976
Figure 2004310976
Figure 2004310976
Figure 2004310976
「例3(比較例)」
例3は、図10に示すCD、DVD互換の光ピックアップ装置とした。図10において、
1は光源、2はハーフミラー、3は対物レンズ、4は光軸、6は光ディスク、6aは光ディスクの透明基板、6bは光ディスクの情報記録面、7aは6aとは厚さの異なる光ディスクの透明基板、7bは6bとは厚さの異なる光ディスクの情報記録面、10は開口制限素子、11は受光素子、t、tはそれぞれの光ディスクの厚さ、tは対物レンズ3の中心厚、dは作動距離である。
対物レンズの形状は両面が非球面形状で表面に位相シフタを目的とした凹凸が設けられているものを想定した。対物レンズの材質は非晶質ポリオレフィン樹脂とし、後述する例4でも同様とした。
表7にDVD用、CD用それぞれの焦点距離f、開口数(NA)、常温(20℃)での使用波長λ、そのときのレンズ材料の屈折率nを示す。表7において、αはレンズ材料の線膨張係数、OIは物像間距離である。
Figure 2004310976
表8に非球面係数、レンズ中心厚dを示す。表8において、E−1は10−1を意味する。
Figure 2004310976
表9に各輪帯の直径を示す。
Figure 2004310976
なお、φijについては図11に示すように、iを面番号、jを各面の輪帯の内側からの番号とした。
表10に各輪帯の落差を示す。
Figure 2004310976
図12、図13に対物レンズの波面収差の波長依存特性を示す。図12はDVDの特性、図13はCDの特性である。
図14、15に光源の周囲温度が変化しても波長が変化しない場合の対物レンズの波面収差の温度依存特性を示す。なお、波長は、DVD用が658nm(図14)、CD用が785nm(図15)である。
DVD用の光源として図5に示す温度特性を持つ光源を、CD用の光源として図16に示す特性を持つ光源を用いた場合の、波面収差の温度依存特性を図17、18に示す。図17がDVDの特性、図18がCDの特性である。
図12、13、14、15、17、18において、実線はトータル(すべての種類の収差を含む)波面収差RMS値、破線は3次球面収差RMS値を示す。なお、各波長、各周囲温度での屈折率は表2記載の数値を用いた。
「例4(実施例)」
図10に示すような光ピックアップ装置を想定し、図19に示すような対物レンズを想定した。
DVD用、CD用それぞれの焦点距離f、開口数(NA)、常温(20℃)での使用波長λ、そのときのレンズ材料の屈折率nは例3と同様である。(表7)また、レンズ材料の線膨張係数、物像間距離も同様である。
表11に非球面係数、レンズ中心厚dを示す。表11において、E−1は10−1を意味する。
Figure 2004310976
表12に各輪帯の直径を示す。
Figure 2004310976
表13に各輪帯の落差を示す。
Figure 2004310976
図20、図21に対物レンズの波面収差の波長依存特性を示す。図20はDVDの特性、図21はCDの特性である。
図22、23に光源の周囲温度が変化しても波長が変化しない場合の対物レンズの波面収差の温度依存特性を示す。なお、波長は、DVD用が658nm(図22)、CD用が785nm(図23)である。
DVD用の光源として図5に示す温度特性を持つ光源を、CD用の光源として図16に示す特性を持つ光源を用いた場合の、波面収差の温度依存特性を図24、25に示す。図24がDVDの特性、図25がCDの特性である。
図20、21、22、23、24、25において、実線はトータル(すべての種類の収差を含む)波面収差RMS値、破線は3次球面収差RMS値を示す。なお、各波長、各周囲温度での屈折率は表2記載の数値を用いた。
例3のレンズは、図12、13に示すように、波長に対して収差特性がほとんど変化せず、一方、図14、15に示すように周囲温度変化により球面収差が発生する。したがって、光源の波長特性を考慮しても、温度に対する収差特性は、光源の波長特性を考慮しない場合とほとんど変らない。
これに対して、例4のレンズは、例3のレンズとは、第1面第2輪帯の落差を変更している。また、最外周の輪帯を分割して第6の輪帯を設け、その落差を異なるものとしている。このことにより、例4のレンズは、図20、21に示すように、波長依存性を例3のレンズに比べて大きくでき、光源の波長変化に対して、球面収差を発生することになり、周囲温度変化に対して発生する球面収差(図22、23)を打ち消すことができる。
ここで、上記落差の決め方について説明する。
まず、例3レンズの第1面第2輪帯の落差は表10に示すように0.0013であるが、これは、温度20℃(常温)で波長658nmに対して位相差がゼロになるように決めた数値である。すなわち式5において、i=1、λ0=658nm、n=1.5050を代入すれば、落差γ=0.0013mmとなり、この数値を用いて、波長658nmの光(DVD)では、位相差を生じさせず、波長785nmの光(CD)では位相差を発生させて収差の補正に用いているのである。
一方、例4レンズでは、表13に示すように、−0.0065としている。これは、式5で、i=6、λ0=658nm、n=1.5050とした数値と、i=5、λ0=785nm、n=1.5031とした数値が0.0078と同一となることから、落差を0.0078変更しても、収差特性が変わらないことを利用して、例3レンズの落差から0.0078を引いた量として決定している。
同様に例4の第1面第6輪帯についても、例3のレンズで落差ゼロのところを0.0078ずらして0.0078とすることで、常温(20℃)での収差変化を起こさせずに波長変化に対する感度を高めている。
すなわち、波長λ1の光について生ずる位相差がλ1のほぼ自然数倍であり、かつ、波長λ2の光について生ずる位相差がλ2のほぼ自然数倍になるような、段差の設定を行うことで波長感度を変えている。
本発明の光ピックアップ装置によれば、対物レンズ以外に、周囲温度変化に応じて光学特性が変化するレンズ、例えば、コリメータレンズ又は補助レンズ等を用いることなく周囲温度変化に対して、集光性能の劣化の少ない、構造が簡単でコンパクトな光ピックアップ装置を提供でき、当該産業分野で大いに利用され得る。
本発明の光ピックアップ装置の一実施例を示す構成図。 図1に示す対物レンズの断面図。 例1に用いた対物レンズの波面収差の波長依存特性図。 例1に用いた光源の周囲温度が変化しても波長が変化しない場合の対物レンズの波面収差の温度依存特性図。 例1に用いた光の波長と光源の周囲温度との関係図。 図5に示す光源を用いる場合の、例1に用いた対物レンズの波面収差の温度依存特性図。 例2に用いた対物レンズの波面収差の波長依存特性図。 例2に用いた光源の周囲温度が変化しても波長が変化しない場合の対物レンズの波面収差の温度依存特性図。 図5に示す光源を用いる場合の、例2に用いた対物レンズの波面収差の温度依存特性図。 本発明の光ピックアップ装置の他の実施例を示す構成図。 例3に示す対物レンズの断面図。 例3に用いた対物レンズの波面収差のDVDに関する波長依存特性図。 例3に用いた対物レンズの波面収差のCDに関する波長依存特性図。 例3に用いた光源の周囲温度が変化しても波長が変化しない場合の対物レンズの波面収差のDVDに関する温度依存特性図。 例3に用いた光源の周囲温度が変化しても波長が変化しない場合の対物レンズの波面収差のCDに関する温度依存特性図。 例3に用いたCD用の光源の波長と周囲温度との関係図。 図5に示す光源を用いる場合(DVD)の、例3に用いた対物レンズの波面収差の温度依存特性図。 図16に示す光源を用いる場合(CD)の、例3に用いた対物レンズの波面収差の温度依存特性図。 例4に示す対物レンズの断面図。 例4に用いた対物レンズの波面収差のDVDに関する波長依存特性図。 例4に用いた対物レンズの波面収差のCDに関する波長依存特性図。 例4に用いた光源の周囲温度が変化しても波長が変化しない場合の対物レンズの波面収差のDVDに関する温度依存特性図。 例4に用いた光源の周囲温度が変化しても波長が変化しない場合の対物レンズの波面収差のCDに関する温度依存特性図。 図5に示す光源を用いる場合(DVD)の、例4に用いた対物レンズの波面収差の温度依存特性図。 図16に示す光源を用いる場合(CD)の、例4に用いた対物レンズの波面収差の温度依存特性図。
符号の説明
1:光源
2:ハーフミラー
3:対物レンズ
4:光軸
6a:DVD用光ディスクの透明基板
6b:DVD用光ディスクの情報記録面
7a:CD用光ディスクの透明基板
7b:CD用光ディスクの情報記録面
9:絞り
10:開口制限素子
11:受光素子
S:光源1と対物レンズ3の第1面との距離

Claims (27)

  1. 光ディスクを記録又は再生する際に、光源からの光を対物レンズを通過させて光ディスクの情報記録面に集光させて光ディスクの情報記録面からの反射光を受光素子に受光させ、対物レンズには光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる機能を有する位相シフタが設けられている光ピックアップ装置において、
    光源の周囲温度が上昇するときに光源からの光の波長が長くなる場合に、位相シフタの一部又は全部により生ずる位相差が、光源の周囲温度の上昇にしたがって大きくなるようにすることを特徴とする光ピックアップ装置。
  2. 前記光源の周囲温度が上昇するにしたがって対物レンズの屈折率が変化にすることにより位相差が大きくなるようにする請求項1記載の光ピックアップ装置。
  3. 前記光源の周囲温度が基準温度のときの、光源からの光の波長をλとするとき、光源の周囲温度が基準温度のときの位相差をλ・(0.9〜1.1)の自然数倍にする請求項1又は2記載の光ピックアップ装置。
  4. 光の波長を縦軸とし、周囲温度を横軸とする座標平面において、前記光源の周囲温度が直線的に上昇すると、前記光の波長も直線的又はほぼ直線的に長くなる請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  5. 前記対物レンズの片面又は両面に輪帯状に、段差、凸部及び凹部から選ばれる少なくとも1つが設けられることにより、前記位相シフタが構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の対物レンズ。
  6. 前記周囲温度の変化に対する、前記光源からの光の波長変化(dλ)/(dT)が下記式(1)を満たす請求項1〜5のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
    Figure 2004310976
  7. 2つの光ディスクのそれぞれを記録又は再生する際に、それぞれの光ディスクに対して異なる波長の光源からの光を対物レンズを通過させて、それぞれの光ディスクの情報記録面に集光させ、それぞれの情報記録面からの反射光を受光素子に受光させ、対物レンズには光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる機能を有する位相シフタが設けられている光ピックアップ装置において、
    第1の光ディスクを記録又は再生する際には第1の波長が用いられ、第2の光ディスクを記録又は再生する際には第2の波長が用いられ、
    光源の周囲温度が上昇するときに光源からの第1の光の波長が長くなる場合に、位相シフタの一部又は全部により、光源の周囲温度の上昇にしたがって第1の光の位相差が大きくなるようにすることを特徴とする光ピックアップ装置。
  8. 前記光源の周囲温度の上昇にしたがって前記対物レンズの屈折率が変化にすることにより前記第1の光の位相差が大きくなるようにする請求項7記載の光ピックアップ装置。
  9. 光の波長を縦軸とし、周囲温度を横軸とする座標平面において、前記光源の周囲温度が直線的に上昇すると、前記第1の光の波長も直線的又はほぼ直線的に長くなる請求項7〜8のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  10. 周囲温度の変化に対する、前記光源からの第1の光の波長変化(dλ)/(dT)が下記式(2)を満たす請求項7〜9のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
    Figure 2004310976
  11. 前記位相シフタにより第2の波長の光に対して第2の光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる請求項7〜10のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  12. 2つの光ディスクのそれぞれを記録又は再生する際に、それぞれの光ディスクに対して異なる波長の光源からの光を対物レンズを通過させて、それぞれの光ディスクの情報記録面に集光させ、それぞれの情報記録面からの反射光を受光素子に受光させ、対物レンズには光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる機能を有する位相シフタが設けられている光ピックアップ装置において、
    第1の光ディスクを記録又は再生する際には第1の波長が用いられ、第2の光ディスクを記録又は再生する際には第2の波長が用いられ、
    光源の周囲温度が上昇するときに光源からの第2の光の波長が長くなる場合に、位相シフタの一部又は全部により、光源の周囲温度の上昇にしたがって第2の光の位相差が大きくなるようにすることを特徴とする光ピックアップ装置。
  13. 前記光源の周囲温度が上昇するにしたがって前記対物レンズの屈折率が変化にすることにより前記第2の光の位相差が大きくなるようにする請求項12記載の光ピックアップ装置。
  14. 光の波長を縦軸とし、周囲温度を横軸とする座標平面において、前記光源の周囲温度が直線的に上昇すると、前記第2の光の波長も直線的又はほぼ直線的に長くなる請求項12〜13のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  15. 周囲温度の変化に対する、前記光源からの第2の光の波長変化(dλ)/(dT)が下記式(3)を満たす請求項12〜14のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
    Figure 2004310976
  16. 前記位相シフタにより第1の波長の光に対して第1の光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる請求項12〜15のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  17. 2つの光ディスクのそれぞれを記録又は再生する際に、それぞれの光ディスクに対して異なる波長の光源からの光を対物レンズを通過させて、それぞれの光ディスクの情報記録面に集光させ、それぞれの情報記録面からの反射光を受光素子に受光させ、対物レンズには光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる機能を有する位相シフタが設けられている光ピックアップ装置において、
    第1の光ディスクを記録又は再生する際には第1の波長が用いられ、第2の光ディスクを記録又は再生する際には第2の波長が用いられ、
    光源の周囲温度が上昇するときに光源からの第1の光の波長が長くなる場合に、位相シフタの一部又は全部により、光源の周囲温度の上昇にしたがって第1の光の位相差が大きくなり、
    光源の周囲温度が上昇するときに光源からの第2の光の波長が長くなる場合に、位相シフタの一部又は全部により、光源の周囲温度の上昇にしたがって第2の光の位相差が大きくなるようにすることを特徴とする光ピックアップ装置。
  18. 前記光源の周囲温度が上昇するにしたがって前記対物レンズの屈折率が変化にすることにより前記第1の光の位相差及び前記第2の光の位相差が大きくなるようにする請求項17記載の光ピックアップ装置。
  19. 光の波長を縦軸とし、周囲温度を横軸とする座標平面において、前記光源の周囲温度が直線的に上昇すると前記第1の光の波長及び前記第2の光の波長が直線的に又はほぼ直線的に長くなる請求項17〜18のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  20. 周囲温度の変化に対する、前記光源からの第1の光の波長変化(dλ)/(dT)が下記式(4)を満たし、
    前記光源からの第2の光の波長変化(dλ)/(dT)が下記式(4)を満た
    す請求項17〜19のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
    Figure 2004310976
  21. 前記位相シフタが第1の波長の光に対して第1の光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる第1の位相シフタと、第2の波長の光に対して第2の光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる第2の位相シフタを含む請求項7〜20のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  22. 前記光源が第1の波長の光及び第2の波長の光を出射できる機能を有する請求項7〜21のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  23. 第1の波長の光を出射する第1の光源と、第2の波長の光を出射する第2の光源とを備える請求項7〜22のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  24. 前記対物レンズの片面又は両面に光軸を中心とする輪状に、凸部及び凹部から選ばれる少なくとも1つが設けられることにより、位相シフタが構成されている請求項1〜23のいずれかに記載の対物レンズ。
  25. 前記対物レンズの材料の、前記周囲温度の変化に対する屈折率の変化(dn)/(dT)の絶対値|(dn)/(dT)|が0.00005(/deg)以上である請求項1〜24のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  26. 光ディスクを記録又は再生する際に、光源からの光を対物レンズを通過させて光ディスクの情報記録面に集光させて光ディスクの情報記録面からの反射光を受光素子に受光させ、対物レンズには光ディスクの記録又は再生のときの収差を低減させる位相差を生じさせる機能を有する位相シフタが設けられている光ピックアップ装置において、
    光源の周囲温度が下降するときに光源からの光の波長が短くなる場合に、位相シフタの一部又は全部により、光源の周囲温度の下降にしたがって生ずる位相差が大きくなるようにすることを特徴とする光ピックアップ装置。
  27. 前記基準周囲温度が常温である請求項2記載の光ピックアップ装置。
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