JP2004307673A - 変性ポリイミド樹脂組成物ならびにそれを用いたプリプレグおよび積層板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)ポリマレイミド化合物と
(B)分子中に少なくとも2個以上のOH基および少なくとも1つのナフタレン骨格を有するフェノール樹脂と
(C)下記一般式[2]および/または[3]で示される、分子中に少なくとも3個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂
【化2】
(式中、Gはグリシジル基を、mは0〜5の整数を表す)
【化3】
(式中、Gはグリシジル基を、nは1〜10の整数を表す)を含有変性ポリイミド樹脂組成物および、上記樹脂組成物を溶剤に溶かしたワニスを基材に含浸乾燥させたプリプレグ、およびこのプリプレグを一枚または複数枚積層形成してなる積層板、および最外層の片面または両面に金属箔または金属板を積層一体化してなる積層板。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子・電気部品、プリント配線板、半導体基板、IC封止材等の電子材料分野に関わり、特に高耐熱性と低誘電率が要求されるプリント配線板、半導体基板用として好適な樹脂組成物、これを用いたプリプレグおよび積層板に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来電子材料分野における耐熱材料としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられてきており、その用途ならびに要求特性により使い分けられている。
【0003】
このなかでもエポキシ樹脂は、耐熱性の他、誘電特性、低吸湿性、接着性、靭性等の要求性能に対してバランス良く良好な性能を有しているため、幅広い用途で用いられている。またポリイミド樹脂は、特に耐熱性、誘電特性に優れていることから高耐熱用途に使用されると共に、エポキシ樹脂や芳香族ジアミン等との組み合わせにより性能改良がなされた変性樹脂も広く使用されている。
【0004】
近年、半導体基板分野では、COB、PGA、BGA、MCM基板等、基板上へ半導体チップを直接実装する実装方法が普及してきているため、使用する材料として実装工程内の高温処理などに耐えうる高度の耐熱性および耐湿熱性(吸湿後の耐熱性)が要求されている。また最近の環境問題への意識の高まりに伴い、部品−部品間あるいは部品−基板間の接続時に使用するハンダを、環境に有害な重金属成分特に鉛を含まない(鉛フリー)ハンダとする傾向にある。これら鉛フリーハンダを使用する場合従来のハンダを使用する場合に比してプロセス温度の上昇が見込まれており、これに伴って部品、基板材料に対してさらなる耐熱性向上の要求が強まっている。現在のプリント配線板用銅張積層板のハンダ耐熱性試験温度は260℃が一般的だが、鉛フリーハンダの場合20℃〜60℃より高い温度が必要との見方がある。汎用的に使用されているエポキシ樹脂はこれら耐熱性・耐湿熱性向上への要求に対応するには限界があり、各種耐熱性樹脂材料が検討されている。
【0005】
一般に耐熱性の高い樹脂は吸湿率が高く、高温高湿条件下での吸湿率が高く、加速試験でミーズリング、デラミネーションといった不具合を生じる。また耐熱性の高い樹脂ほど金属箔との接着強度が低く、微細配線回路を形成した場合に回路部分が剥離する、といった不具合が生じやすい。剥離強度としては18ミクロンの銅箔を使用した場合1.2kN/m程度以上は一般的に必要とされる。
【0006】
一方、ビスマレイミドと芳香族ジアミンからなるポリアミノビスマレイミド樹脂(特許文献1参照)やビスマレイミド−トリアジン樹脂(特許文献2参照)、これらのエポキシ変性物による基板材料の使用が検討されているが耐熱性、吸湿性、剥離強度など個々に欠点を有しており、全般の性能を満足できる樹脂組成物が望まれている。
【0007】
また本出願人らもビスマレイミドと特定のフェノール樹脂、特定のエポキシ樹脂、特定の化合物とを反応させた変性イミド樹脂を報告しているが(特許文献3参照)、更なる耐湿熱性、耐湿性、剥離強度の改善が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−200149号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平6−345864号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平6−263843号公報
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ポリマレイミド化合物を、分子中に少なくとも二つ以上のOH基を有し、少なくとも一つのナフタレン骨格を有するフェノール樹脂、特定の骨格を持ち、かつ少なくとも3個以上のグリシジル基を持つエポキシ樹脂で変性することにより高い耐熱性、機械的強度、と同時に高度の耐湿性、接着性を有する積層板用樹脂材料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)下記一般式[1]で示されるポリマレイミド化合物(A)と
【0013】
【化4】
(式中、R1はk価の有機基、Xa、Xbは水素原子、ハロゲン原子および有機基から選ばれた同一または異なる一価の原子または基、kは2以上の整数を表わす)
(B)分子中に少なくとも2個以上のOH基および少なくとも1つのナフタレン骨格を有するフェノール樹脂と
(C)下記一般式[2]および/または[3]で示される、分子中に少なくとも3個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂
【0014】
【化5】
(式中、Gはグリシジル基を、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基のいずれかを示し、mは0〜5の整数を表す)
【0015】
【化6】
(式中、Gはグリシジル基を、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基のいずれかを、nは1〜10の整数を表す)
を含有することを特徴とする変性ポリイミド樹脂組成物。
【0016】
(2)(D)分子中に少なくとも1つのナフタレン骨格を有し、少なくとも2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂をさらに加える(1)記載の変性ポリイミド樹脂組成物。
(3)(1)〜(2)いずれかに記載の変性ポリイミド樹脂組成物を溶剤に溶解させた変性ポリイミド樹脂ワニス。
(4)(3)記載の変性ポリイミド樹脂ワニスを基材に塗布または含浸させ、さらに溶剤を除去乾燥して製造したプリプレグ。
(5)(4)記載のプリプレグを1枚または2枚以上を積層し、加熱加圧してなる複合材。
(6)(5)記載の複合材の最外層の片面または両面に金属箔または金属板を積層一体化してなる積層板に関するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物の使用原料について説明する。
【0018】
本発明に係る樹脂組成物は、
(A)前記一般式[1]で示されるポリマレイミド化合物と
(B)分子中に少なくとも2個以上のOH基および少なくとも1つのナフタレン骨格を有するフェノール樹脂と
(C)前記一般式[2]および/または[3]で示される、分子中に少なくとも3個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂とを含んでいるものである。
【0019】
(A)のポリマレイミド化合物
本発明で用いられるポリマレイミド化合物(A)は下記一般式[1]で示される1分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物である。
【0020】
【化7】
式中、R1はk価の有機基、Xa、Xbは水素原子、ハロゲン原子および有機基から選ばれた同一または異なる一価の原子または基、kは2以上の整数であり、好ましくは2〜10である。
【0021】
好ましいポリマレイミド化合物としては、一般式[1]中のR1が下記一般式[4]
【0022】
【化8】
(式中、Zは―CY2―、―CO―、―O―、―、―S―、―S O2−を示し、Yは−CH3、−CF3、CH3CH2−、CH3 O―、―OH、−NH2、Br−、F−または水素原子を示し、同一であっても異なってもよい。またrは1〜10の整数を表わす)からなる群より選ばれたものである。
【0023】
一般式(1)中、Xa又はXbのハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子などが例示でき、有機基としてはメチル基などのアルキル基が例示できる。
【0024】
このようなポリマレイミド化合物としては、例えば、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−[1,3−(2−メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−(1,4−フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4−マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(4−マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン等があげられ、また一般式[5]
【0025】
【化9】
(式中、sは平均値で0〜10である)
で表されるポリマレイミド化合物、および一般式[6]
【0026】
【化10】
(式中、tは平均値で0〜10である)
で表されるポリマレイミド化合物、および一般式[7]
【0027】
【化11】
(式中、uは平均値で0〜6である)
で表されるポリマレイミド化合物等も挙げられる。また、これらのポリマレイミド化合物は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
(B)のフェノール樹脂
本発明で用いられるフェノール樹脂(B)は、分子中に少なくとも2個以上のOH基を有し、少なくとも1つのナフタレン骨格を有するフェノール樹脂である。
【0029】
これらについて例示すると、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のヒドロキシナフタレン類、またはこれらのヒドロキシナフタレン類とフェノール、クレゾール、レゾルシノール等のフェノール類との混合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、グリオキザール、アルカンジアール等のアルデヒド類との反応生成物であるノボラック樹脂、および上記ナフトール類、フェノール類とアラルキルアルコール誘導体またはアラルキルハライド誘導体との反応生成物であるアラルキル樹脂等が挙げられる。また上記のアラルキルアルコール誘導体としては、p−キシリレングリコール、p−キシリレングリコールジメチルエーテル類が、アラルキルハイドライド誘導体としてはp−キシリレンジクロライドが好ましい。これらフェノール樹脂は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
(C)のエポキシ樹脂
本発明で用いられるエポキシ樹脂(C)は、上記一般式[2]および/または[3]で示される分子中に少なくとも3個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限を受けない。
【0031】
一般式[2]で表されるエポキシ樹脂は、特開平5−125149、特開平5−262851などに記載の、フェノール、クレゾールなどのフェノール化合物をp−ヒドロキシベンズアルデヒドなどのヒドロキシベンズアルデヒドと反応させて得られる多価フェノール化合物にエピクロルヒドリンを反応させることにより製造する方法で製造することができる。
【0032】
一般式[3]で表されるエポキシ樹脂はビスフェノールAをホルムアルデヒド等のアルデヒド類と反応させて得られる3個以上のOH基をもつフェノール化合物(一般式[9])にエピクロルヒドリンを反応させることにより得られる。
【0033】
【化12】
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基のいずれかを示し、nは1〜10の整数を表す)
これらのエポキシ樹脂は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
一般式[2]中、mは、0〜5の整数であり、好ましくは0〜4である。また、一般式[3]中、nは、1〜10の整数であり、好ましくは1〜5である。一般式[2]及び[3]中、Rは水素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基等のアルキル基を示す。
【0035】
尚、これらの化合物は上記方法により得ることもできるが、使用可能な市販品として、ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート157、1032S等を使用することも可能である。
【0036】
樹脂組成物
本発明に係る樹脂組成物は、
(A)上記一般式[1]で示されるポリマレイミド化合物と
(B)分子中に少なくとも2個以上のOH基および少なくとも1つのナフタレン骨格を有するフェノール樹脂と
(C)上記一般式[2]および/または[3]で示される分子中に少なくとも3個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂を含んでいる。
【0037】
本発明に係る樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内において、上記(A)、(B)および(C)以外のほかの樹脂成分(以下単に「他の樹脂成分」ともいう。)を含有してもよい。ポリマレイミド化合物(A)は、樹脂成分[(A)+(B)+(C)+他の樹脂成分]の質量の合計に対して、含有量が好ましくは20.0質量%以上90.0質量%以下、より好ましくは25.0質量%以上80.0質量%以下の範囲であることが望ましい。樹脂組成物中のポリマレイミド(A)の含有量が上記範囲内にあると得られる樹脂組成物から得られる基板、積層板などは十分な耐熱性および耐湿熱性を有する。
【0038】
フェノール樹脂(B)とエポキシ樹脂(C)の合計の含有量は、樹脂成分[(A)+(B)+(C)+他の樹脂成分]の質量の合計に対して好ましくは10.0〜80.0質量%、より好ましくは20.0〜75.0質量%の範囲にあることが好ましい。フェノール樹脂(B)とエポキシ樹脂(C)の合計の含有量が10.0質量%以下である場合得られる樹脂組成物からなる積層板における金属箔や金属板との接着強度が著しく劣る場合があり、また80.0質量%を上回ると十分な耐熱性が得られない場合がある。
【0039】
フェノール樹脂(B)とエポキシ樹脂(C)の配合比には特に制限はないが、フェノール樹脂(B)のOH基に対するエポキシ樹脂(C)のグリシジル基のモル比が好ましくは0.2〜5.0の範囲、より好ましくは0.3〜3.0の範囲である。フェノール樹脂(B)のOH基に対するエポキシ樹脂(C)のグリシジル基のモル比が、0.2より小さいか5.0より大きい場合は、樹脂組成物の硬化が不完全になるため硬化物の曲げ強度が著しく低下する場合がある。
【0040】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(D)
本発明に係る樹脂組成物は少なくとも1つのナフタレン骨格を有し、少なくとも2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂(D)を加えることができる。少なくとも1つのナフタレン骨格を有し、少なくとも2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂としては特に制限はないが、具体例を示すと一般式[10]および/または一般式[11]で表されるエポキシ樹脂、
【0041】
【化13】
(式中Gはグリシジル基を、q1、q2は1以上の整数を表し、かつq1+q2≦8である)
【0042】
【化14】
(式中、Gはグリシジル基を、pは1または2、nは1〜10の整数を表す)
などが挙げられる。尚、これらは特開平2−88621号公報、あるいは特開平5−025247号公報などに記載の方法を用いて製造することが可能である。これらのエポキシ樹脂は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。尚、一般式[10]及び一般式[11]は、購入することも可能であり、市販品の大日本インキ化学(株)製:エピクロンHP4032(商品名)、新日鐵化学(株)製:ESN175(商品名)等が使用可能である。
【0043】
本発明に係る樹脂組成物に(D)のエポキシ樹脂を加える場合はフェノール樹脂(B)、(C)のエポキシ樹脂および(D)のエポキシ樹脂の合計の含有量が、樹脂成分の合計に対し好ましくは10.0〜80.0質量%、より好ましくは20.0〜75.0質量%の範囲にするのが好ましい。
【0044】
フェノール樹脂(B)、(C)のエポキシ樹脂および(D)のエポキシ樹脂の含有量が、樹脂成分の合計に対し10.0質量%以下である場合、得られる樹脂組成物からなる積層板における金属箔や金属板との接着強度が著しく劣る場合があり、また80.0質量%を上回ると十分な耐熱性が得られない場合がある。
【0045】
フェノール樹脂(B)、(C)のエポキシ樹脂、および(D)のエポキシ樹脂の配合比には特に制限はないが、フェノール樹脂(B)のOH基に対する(C)のエポキシ樹脂と(D)のエポキシ樹脂のグリシジル基のモル比が好ましくは0.2〜5.0の範囲、より好ましくは0.3〜3.0の範囲であるようにするのが好ましい。フェノール樹脂(B)のOH基に対する(C)のエポキシ樹脂と(D)のエポキシ樹脂のグリシジル基のモル比が、0.2より小さいか5.0より大きい場合は、樹脂組成物の硬化が不完全になるため硬化物の曲げ強度が著しく低下する場合がある。
【0046】
硬化促進剤
本発明に係る樹脂組成物は、硬化促進剤を含有することが望ましい。硬化促進剤としては、例として2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類;トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等のアミン類、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩類;1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7およびその誘導体;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オレイン酸錫、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等の有機金属塩が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよく、また必要に応じて有機過酸化物やアゾ化合物を併用することもできる。好ましくは2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類が挙げられる。
【0047】
これら硬化促進剤の含有量は、後述するワニスまたはプリプレグの所望するゲル化時間が得られるように配合するのが望ましいが、一般的には、樹脂成分の合計に対し0.005〜10質量%の範囲で用いられる。
【0048】
反応性稀釈剤
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて反応性稀釈剤を含むことが望ましい。
反応性稀釈剤としては、例としてグリシドール、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂に対して一般的に使用される反応性稀釈剤や、ジアリルフタレート、0,0’−ジアリルビスフェノールA、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールAジシアネート等のイミド樹脂に対して一般的に使用される反応性稀釈剤が挙げられる。これらの反応性稀釈剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
これら反応性稀釈剤の含有量は、樹脂成分に対して0.1〜30質量%の範囲で用いられることが望ましい。0.1質量%未満では反応性稀釈剤としての効果が小さい可能性があり、30質量%以上では樹脂組成物からなる樹脂ワニスの粘度が著しく低下するために作業性に劣る場合がある。
【0050】
難燃剤
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて難燃剤を含むことが望ましい。難燃剤としては、例としてブロム化エポキシ樹脂等のブロム化合物、および縮合リン酸エステル等のリン化合物といった有機難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、スズ化合物、アンチモン化合物等の無機難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。難燃剤は一般に少量の添加で求められる難燃性を得ることができるものが好ましく、有機難燃剤としてはブロム化エポキシ樹脂が、無機難燃剤としては水酸化アルミニウムが好ましい。水酸化アルミニウムとしては不純物としてのNa2Oが0.3%以下であるものがより好ましい。Na2Oが0.3%以上の場合ナトリウムイオンとして残留し、硬化物の電気的特性を悪化させる場合がある。
【0051】
これら難燃剤の含有量は樹脂組成物の耐熱性、耐湿熱性を損なわずに十分な難燃性(例えばUL94規格におけるV−0条件合格)を持つために必要十分な量含有することが望ましいが、有機難燃剤の場合一般的には有機難燃剤を含めた樹脂成分の合計に対し1〜20質量%の範囲で、無機難燃剤の場合、樹脂成分に対して10〜300質量%の範囲で用いられることが望ましい。
【0052】
その他の成分
本発明の樹脂組成物は、上記各主成分の他、必要に応じてシリカ、フィラー等の充填剤;各種シリコーンオイル;熱可塑性樹脂、その他適宜添加剤等を配合しても良い。配合量としては樹脂成分の合計に対し充填剤1〜500質量%、その他添加剤0.1〜20質量%程度が好ましい。
【0053】
(樹脂組成物の調整方法)
本発明に係る組成物は、例えばポリマレイミド化合物(A)と、フェノール樹脂(B)とエポキシ樹脂(C)とを、同時に80〜200℃で、0.1〜10時間加熱混合することにより調整することができる。
【0054】
樹脂ワニス
本発明に係る樹脂ワニスは、
(A)上記一般式[1]で表されるポリマレイミド化合物と、
(B)分子中に少なくとも2個以上のOH基および少なくとも1つのナフタレン骨格を有するフェノール樹脂と、
(C)上記一般式[2]および/または[3]で示される、分子中に少なくとも2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂を含有してなる樹脂租組成物を溶剤に溶解させたものである。
【0055】
樹脂ワニスに用いられる溶剤としては、例としてエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジオキサン、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、2−ヘプタノン等が使用できるが、溶剤としては比較的沸点の低い物が好ましく、メチルエチルケトン、アセトン、ジオキサンあるいはこれらを主成分とする混合物が好ましく用いられる。
【0056】
樹脂ワニス中には上記樹脂成分が通常40〜80質量%、好ましくは50〜70質量%の範囲で含まれることが望ましい。樹脂ワニスは、上記樹脂組成物を有機溶剤中に溶解させて得ることもできるし、有機溶剤中で上記(A)、(B)および(C)を加熱混合しての樹脂組成物を得ると同時に樹脂ワニスを得ることもできる。この場合、有機溶剤の沸点にもよるが、一般的には、50〜200℃で、0.1〜20時間必要になる。
【0057】
プリプレグ
本発明に係るプリプレグは、上記樹脂ワニスを基材に塗布または含浸させ、次いで乾燥して溶剤を除去することにより製造することができる。
【0058】
基材としては、ガラス不織布、ガラスクロス、炭素繊維布、有機繊維布、紙などの従来プリプレグに用いられる公知の基材が全て使用可能である。上記樹脂ワニスを上記基材に塗布または含浸した後、乾燥工程を経てプリプレグを製造するが、塗布方法、含浸方法、乾燥方法は従来公知の方法が用いられ特に限定されるものではない。乾燥条件については、使用する溶剤の沸点により適宜決められるが、あまり高温は好ましくなく、またプリプレグ中の残存溶剤の量が3質量%以下となることが望ましい。
【0059】
複合材
本発明に係る複合材は、プリプレグ1枚が熱プレスされ加熱硬化されてなるか、または複数枚積層されたプリプレグが熱プレスされ加熱硬化して一体化されてなる。複合材を製造する時の加熱加圧条件は特に限定されるものではないが、加熱温度は好ましくは100〜300℃、より好ましくは150〜250℃、圧力は好ましくは10〜100Kg/cm2、加熱加圧時間は好ましくは10〜300分程度である。
【0060】
積層板
本発明に係る積層板は、複合材の片面または両面に金属箔または金属板が積層一体化されてなる。本発明に係る積層板は、1枚のプリプレグの片面もしくは両面に金属箔もしくは金属板を積層し熱プレスするか、または複数枚積層されたプリプレグの最外層となる片面または両面に金属箔または金属板を積層し熱プレスすることにより、プリプレグを加熱硬化させ一体化させることにより製造することができる。
【0061】
金属箔または金属板としては特に限定はないが、例として銅、アルミニウム、鉄、ステンレス等が使用できる。加熱硬化させる際の条件は、複合材を製造する際の条件と同様の条件が好ましい。また、内層コア材を用いて多層プリント配線板用積層板としてもよい。
【0062】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例における性能の試験方法は次の通りである。
(1)加湿後ハンダ耐熱性:
JIS C−6481に準じて、試験片を121℃、2.1気圧、100%RHの条件下で、6時間吸水処理後、任意の温度のハンダ浴に60秒間フロートし、銅箔部分に膨れがでない最高の温度を耐熱温度とした。
(2)耐湿性:
プレッシャークッカー試験機(PC−422RIII:(株)平山製作所製)を使用し、121℃、2.1気圧、100%RHの条件において保持した際に、外観上のふくれ、白化が生じるまでの時間を測定した。
(3)吸湿率:
プレッシャークッカー試験機(PC−422RIII:(株)平山製作所製)を使用し、121℃、2.1気圧、100%RHの条件において保持した際に、100時間後の重量変化を測定した。
(4)ピール強度:
JIS C−6481に準じて、1cm幅で90℃引張り試験を行った。
【0063】
実施例および比較例では、以下の原料を使用した。
(A)ポリマレイミド化合物;
・BMI−S(三井化学(株)社製)
【0064】
【化15】
・BMI−MP(三井化学(株)社製)
【0065】
【化16】
【0066】
(B)フェノール樹脂;
・α−ナフトールアラルキル樹脂SN485(OH当量215、新日鐵化学(株)社製)
・β−ナフトールアラルキル樹脂SN180(OH当量190、新日鐵化学(株)社製)
・ナフトール・フェノールノボラック樹脂カヤハードNHN(OH当量140、日本化薬(株)社製)
【0067】
(C)エポキシ樹脂;
・多官能型エポキシ樹脂エピコート157(エポキシ当量210、ジャパンエポキシレジン(株)社製:構造は次式)
【化17】
【0068】
・多官能型エポキシ樹脂エピコート1032S(エポキシ当量160、ジャパンエポキシレジン(株)社製:構造は次式)
【化18】
【0069】
・ナフタレン型エポキシ樹脂エピクロンHP4032(エポキシ当量150、大日本インキ化学(株)社製)
・ナフタレン型エポキシ樹脂ESN175(エポキシ当量260、新日鐵化学(株)社製)
・ビスフェノールA型エピコート828(エポキシ当量190、ジャパンエポキシレジン(株)社製)
・硬化促進剤;2−エチル−4メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成(株)社製)
・反応性稀釈剤;アリルグリシジルエーテル(エピオールA、日本油脂(株)社製)
・難燃剤;エピコート5050(エポキシ当量390、ジャパンエポキシレジン(株)社製)
【0070】
実施例1〜9および比較例1〜3
表−1に示す組成(質量部)の配合物を、フラスコ内メチルエチルケトン溶媒中で80℃、5〜8時間溶解し、樹脂ワニスを得た。このようにして得られた樹脂ワニスを均一に攪拌し、108g/m2(厚み約100μm)のガラスクロスに含浸し、150℃で5分間乾燥して、約200g/m2(厚み約100μm)のプリプレグを得た。このプリプレグを5枚重ね合わせ、さらにその上下の最外層に18μの銅箔を配して、40kg/cm2の圧力で、180〜220℃、120分の加熱条件で成形し、0.5〜0.6mm厚みの銅張積層板を得た。このようにして得られた積層板の試験結果も同様に表中に示した。
【0071】
比較のために、表−1に示すような実施例と異なる原料および組成(質量部)の配合物を用いて実施例同様に変性ポリイミド樹脂ワニス、プリプレグ、および両面銅張積層板を作成し、実施例同様の試験を行った。得られた試験結果は表中に示した。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例に比較して、比較例1は、ポリマレイミド化合物を使用していないため耐湿熱性および耐湿性が劣る。比較例2は特定のエポキシ樹脂を使用していないため実施例に比して耐湿熱性および耐湿性が劣る。比較例3は特定のエポキシ樹脂を使用していないため実施例に比して耐湿熱性および接着性が劣る。
【0074】
【発明の効果】
本発明による変性ポリイミド樹脂組成物ならびにそれを用いたプリプレグおよび積層板は、吸湿性が低く、吸湿後のはんだ耐熱性および耐湿性、接着性に優れており新しい積層板用樹脂材料である。
Claims (6)
- (A)下記一般式[1]で示されるポリマレイミド化合物と
(B)分子中に少なくとも2個以上のOH基および少なくとも1つのナフタレン骨格を有するフェノール樹脂と
(C)下記一般式[2]および/または[3]で示される、分子中に少なくとも3個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂
を含有することを特徴とする変性ポリイミド樹脂組成物。 - (D)少なくとも1つのナフタレン骨格を有し、少なくとも2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂をさらに加える請求項1記載の変性ポリイミド樹脂組成物。
- 請求項1〜2いずれかに記載の変性ポリイミド樹脂組成物を溶剤に溶解させた変性ポリイミド樹脂ワニス。
- 請求項3記載の変性ポリイミド樹脂ワニスを基材に塗布または含浸させ、さらに溶剤を乾燥除去して製造したプリプレグ。
- 請求項4記載のプリプレグを1枚または2枚以上を積層し、加熱加圧してなる複合材。
- 請求項5記載の複合材の最外層の片面または両面に金属箔または金属板を積層一体化してなる積層板。
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