JP2004307560A - 環状乳酸オリゴマーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望の縮合度を有する環状乳酸オリゴマーを効率よく得ること。
【解決手段】出発物質の鎖状乳酸m量体オリゴマー(mは、3〜15の整数である。)の末端カルボキシル基に、好ましくは塩基の存在下で、化合物O=R(式中Rは、環状または鎖状の有機基である。)の−OR基と反応させ、次いで好ましくは触媒の存在下でn個の該オリゴマーを環化させる。
生成する環状乳酸オリゴマーの縮合度は、鎖状乳酸m量体オリゴマーの縮合度に規定され、m量体の倍数nとなっている。通常、環状乳酸mn量体オリゴマー(すなわち乳酸単位をmn個有するオリゴマー)の混合物が得られる。
【選択図】なし
【解決手段】出発物質の鎖状乳酸m量体オリゴマー(mは、3〜15の整数である。)の末端カルボキシル基に、好ましくは塩基の存在下で、化合物O=R(式中Rは、環状または鎖状の有機基である。)の−OR基と反応させ、次いで好ましくは触媒の存在下でn個の該オリゴマーを環化させる。
生成する環状乳酸オリゴマーの縮合度は、鎖状乳酸m量体オリゴマーの縮合度に規定され、m量体の倍数nとなっている。通常、環状乳酸mn量体オリゴマー(すなわち乳酸単位をmn個有するオリゴマー)の混合物が得られる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、環状乳酸オリゴマーの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、環化する鎖状乳酸オリゴマーの縮合度の倍数となる縮合度を有する環状乳酸オリゴマーを製造する方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
有用な用途が期待される環状乳酸オリゴマーを得るために、これまで様々な合成方法が提案されてきた。
所望の鎖長を有する単一の環状乳酸オリゴマーを合成するために、たとえば固相上で目的鎖長を有する鎖状オリゴ乳酸まで逐次合成し、最後に環化する試みがなされている(たとえば、非特許文献1参照。)。このような合成法においては、官能基の保護も含め極めて煩雑であり、しかも最終収率も低くなって実用性に欠けるという問題点があった。
【0003】
減圧下で乳酸の脱水縮合反応を行なうことにより、縮合度3〜19の鎖状および/または環状の乳酸オリゴマー混合物が合成されている(たとえば、特許文献1参照。)。この製造方法では生成する環状ポリ乳酸が一定の組成となるように制御することは容易でない。よってその製造方法は、高重合体を含み、分子量分布が広い、鎖状および環状の乳酸重合体の混合物を与えるものであった。
【0004】
鎖状乳酸オリゴマーを含まない環状乳酸オリゴマーを得る製造方法が本出願の出願人により開示されてきた(たとえば、特許文献2および3参照。)。乳酸2分子が脱水縮合して生成するラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)を原料として脱水重合させる製造方法(特許文献2)による場合、アルカリ金属化合物を触媒として使用し、その触媒の種類を選択することにより実質的に環状乳酸オリゴマーのみを選択的に得ることもできる(特許文献3)。その反応生成物は、乳酸単位数が2、3、4、・・・と変化する鎖長となっており、しかも含量も異なる環状乳酸オリゴマーの混合物である。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−227388号公報
【特許文献2】
国際公開第01/21613A1号パンフレット
【特許文献3】
国際公開第01/21612A1号パンフレット
【非特許文献1】
クウィスル O.(Kuisle O.),キノア E.(Quinoa E.)およびリゲラ R. (Riguera R.)有機化学雑誌( J.Org. Chem.)、1999年、64巻 p8063
【0006】
【発明の目的】
単純な重合体組成の生成物を与える環状乳酸重合体の製造方法があれば、これを用いて特定鎖長の環状乳酸オリゴマーを単一化合物として容易に単離できる。したがって、その方法は環状乳酸オリゴマーの新たな用途の開発のためにも有意義である。
【0007】
本発明は、所望の縮合度を有する環状乳酸オリゴマーを合成する方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、特定鎖長を有する環状乳酸オリゴマーを効率よく分離できる生成物を得る方法を提供することを目的とする。
【0008】
【発明の概要】
本発明者らは、一定鎖長を有する環状乳酸オリゴマーを単一化合物として直接的に合成できる製造方法について鋭意検討した。その結果、縮合度が原料の鎖状乳酸オリゴマーの縮合度の倍数となる環状乳酸オリゴマーを選択的に生成する本発明の方法を完成した。
【0009】
本発明の概要は、以下のとおりである。
本発明の製造方法は、
(i)式(1)
【0010】
【化6】
【0011】
で表される鎖状乳酸m量体オリゴマー(mは、3〜15の整数である。)の末端カルボキシル基を、化合物
【0012】
【化7】
【0013】
(式中Rは、環状または鎖状の有機基である。)
と反応させて、
【0014】
【化8】
【0015】
を形成し、
(ii)次いでn個の鎖状乳酸m量体オリゴマー(3)を環化させる
ことを特徴とする、式(4)で表され、乳酸単位をmn個(nは1以上の整数である。)含有する環状乳酸オリゴマーの製造方法である。
【0016】
【化9】
【0017】
本発明の製造方法において、
上記式(2)、O=Rで示される化合物が、下記の式
【0018】
【化10】
【0019】
(式中、R1は置換基を有していてもよい鎖状または環状の有機基であり、R2はハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基またはアミノ基であるか、あるいはR1の原子と結合することにより環構造を形成する鎖状の有機基である。)で表されることを特徴としている。
上記R1は、脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基(これらの基は置換基を有していてもよい。)であってもよい。
【0020】
特に上記R1が、ハロゲン置換フェニル基であり、R2がハロゲン原子である場合が好ましい。
上記式(5)で表される化合物において、R2が窒素原子含有基であり、かつ該窒素原子がR1の炭素原子と結合してヘテロ芳香環を形成していることが好ましい。この場合、式(5)で表される化合物として、特に2−ピリドン類が好ましく用いられる。
【0021】
本発明の環状乳酸オリゴマーの製造方法は、上記(i)を塩基の存在下で行なうことを特徴としている。その塩基としてアミン類またはピリジン誘導体が特に好ましい。
上記(ii)はアミノピリジン類の存在下で行なわれることが好ましい。
あるいは、上記(ii)は芳香族スルホン酸類の存在下で行なわれることが好ましい。
【0022】
本発明の環状乳酸オリゴマーの製造方法において、上記(i)および(ii)を、アルゴンおよび/または窒素の雰囲気下でおこなうことが好ましい。
【0023】
【発明の具体的説明】
本発明に基づく環状乳酸オリゴマーの製造方法は、以下の工程(i)および(ii)を含む。
(i)式(1)
【0024】
【化11】
【0025】
で表される鎖状乳酸m量体オリゴマー(mは、2以上の整数である。)の末端カルボキシル基を、好ましくは塩基の存在下で、化合物
【0026】
【化12】
【0027】
(式中Rは、環状または鎖状の有機基である。)と反応させて、
【0028】
【化13】
【0029】
を形成し、
(ii)次いでn個の鎖状乳酸m量体オリゴマー(3)を環化させる。
上記(ii)の生成物は、乳酸単位をmn個(nは1以上の整数である。)含有する環状乳酸オリゴマー、
【0030】
【化14】
【0031】
である。
所望する鎖長の環状乳酸オリゴマーを得るためには、出発物質である単一の鎖状乳酸オリゴマーの鎖長を、後述するように適切に選択する必要がある。本発明による上記の製造方法は、少なくともエステル形成の工程(i)および環化の工程(ii)を含む。個々の反応の詳細を次に示す。
【0032】
工程(i)において、式(1)で表される鎖状乳酸m量体オリゴマー(mは、2以上の整数である。)の末端カルボキシル基を、O=Rで表される化合物の−OR基と反応させる。この反応は、塩基の存在下で行なうことが好ましい。活性基−ORが鎖状乳酸オリゴマーの末端カルボキシル基に結合して式(3)で表される鎖状乳酸m量体オリゴマーエステルを形成する。
【0033】
次の工程(ii)では、上記鎖状乳酸m量体オリゴマーエステルを、好ましくは触媒の存在下で環化させる。たとえば溶媒が還流する条件において、n個の鎖状乳酸m量体オリゴマーエステルは、その末端カルボキシル基のエステル、−COORから−OR基が脱離する際、1分子となるように重合し、かつ環化する。その結果、生成物である環状乳酸mn量体オリゴマー(式(4)で表される。nは、m量体の倍数を表し、1以上の整数である。)の混合物が生成する。
【0034】
本発明の製造方法によれば、単一化合物である鎖状乳酸m量体オリゴマーを原料に用いて、上記工程(i)および(ii)を行なうことにより、生成物として環状乳酸オリゴマーmn量体(これはm量体のn倍体となっている。nは1以上の整数である)の混合物を選択的に得ることができる。生成する環状乳酸オリゴマーmn量体の縮合度は、平均して3〜60、好ましくは3〜24である。
【0035】
本明細書で「縮合度」とは、乳酸重合体中における反復単位である乳酸単位の個数を意味し、m量体であれば、その縮合度はmとなる。「n倍体」とは、出発物質の乳酸m量体オリゴマー骨格をn個含む乳酸オリゴマーをいう。
具体的には、出発物質として単一化合物の鎖状乳酸3量体オリゴマーを用いて本発明の方法に従って合成するならば、3量体(n=1)、6量体(n=2)、9量体(n=3)、12量体(n=4)・・・、3n量体の環状乳酸オリゴマーを含む混合物が生成する(図1)。ただし、その中に各量体が含まれる割合は互いに同一ではない。同様に鎖状乳酸4量体から出発する場合も、通常、図2に示すような環状乳鎖オリゴマーが主に含まれる混合物を得る。
【0036】
このように縮合度m、倍数nのとり得る数および生成した環状オリゴマーについて、一般的に表すと、次のようになる。出発物質として単一の鎖状乳酸m量体を使用すれば、上記(4)式により表される環状乳酸オリゴマー生成物は、そのm量体に対しn倍体であるオリゴマー、すなわちmn量体オリゴマー(乳酸単位をmn個有するオリゴマー)の混合物となっている。したがって、生成する混合物に含まれる環状乳酸オリゴマーの縮合度は、m、m+1、m+2、m+3・・・のような連続した数をとらず、出発物質である鎖状乳酸m量体オリゴマーの縮合度に規定される。さらに、nは1以上の整数であるが、これらの整数のうち、nは一般に2つ以上の値をとる。
【0037】
このように、本発明の方法により生成する環状乳酸オリゴマーは、特定鎖長の環状乳酸オリゴマー(mn量体)が主に含まれるという特異な組成の混合物となる。そうした比較的単純な組成の混合物から、所望の縮合度を有する、単一の環状乳酸オリゴマーを回収することは、連続した鎖長分布の環状乳酸オリゴマーの混合物から回収する場合に比べると格段に容易であると考えられる。したがって単一の環状乳酸オリゴマーの単離も効率的にできる。さらに出発物質の鎖状m量体乳酸オリゴマーおよび式(2)で表される反応物質の種類を選択することにより、混合物の組成を望みどおりに調節できることは、本発明の利点の一つである。
【0038】
本発明の製造方法で用いる化合物(鎖状乳酸オリゴマーなど)、または生成する環状乳酸オリゴマーは、特に立体異性の区別をせず、異性体の混合物であってもよい。同様に、これらの化合物において、塩(ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩など)、水和物、溶媒和物、結晶多形といった各種の形態を問わない。
【0039】
以下、本発明の製造方法に使用される化合物として、原料物質の鎖状乳酸オリゴマー、式(2)で表される化合物O=R、塩基などの反応助剤および溶媒について詳細に説明し、さらに工程および反応についても詳述する。
鎖状乳酸オリゴマー
本発明の製造方法において、環状乳酸オリゴマー(4)を合成するための出発物質として、式(1)で表される単一の鎖状乳酸オリゴマーを用いる。その鎖状乳酸オリゴマーは、乳酸の任意の鎖状m量体縮合物から出発することができ、mは、2以上の整数である。mとしてたとえば2〜30の整数であり、通常は、3〜15、好ましくは3〜10、より好ましくは、3〜6の整数である。なお、mが1の場合、乳酸の1量体であり、mが2の場合、乳酸ラクトイルである。
【0040】
実際には、所望する鎖長の環状乳酸オリゴマーを得るためには、原料とする単一化合物の鎖状乳酸オリゴマーの鎖長を適切に設定する。上記のように出発物質の縮合度mと、生成物がそのn倍体となる関係を考慮して選択すればよい。
このような特定鎖長を有する鎖状オリゴ乳酸の製造方法については、すでに本出願と同一の出願人により提案されている(特願2002−042009)。この方法によれば、2量体から20量体の間の一定鎖長を有する鎖状乳酸オリゴマーを単一の化合物として直接的に合成することができる。そこで本発明においては、この方法を使用して、出発物質として望ましい鎖状乳酸オリゴマーを直接的に調製することができる。
化合物O=R
鎖状乳酸オリゴマーを環化させる前に、その末端カルボキシル基に特定の保護基を結合させ、該末端を活性化させる。そのための官能基として−OR基を供与できる化合物、すなわち、上記の一般式(2)で表される化合物、O=R(Rは環状または鎖状の有機基である。)が、鎖状乳酸オリゴマーとの反応のために使用される。なお「有機基」とは、有機化合物の中に含まれる原子団であり、基として振舞うものを指すとする。具体的には、炭素および水素を有する鎖状または環状の基(いずれも置換されていてもよい。)であり、脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基あるいはその組み合わせ(これらの基は置換基を有していてもよい。)が挙げられる。たとえば、アルキル基、フェニル基または含窒素芳香族複素環式基(これらの基は置換基を有していてもよい。)であってもよい。
【0041】
−ORで表される活性基を供与し得る化合物、O=R(上記式(2)で示される化合物)は、下記の式(5)で表され、カルボニル基を含有する化合物が好ましい。当該R部分は、式(5)において=C(R1)R2に相当する。
【0042】
【化15】
【0043】
(式中、R1は置換基を有していてもよい鎖状または環状の有機基であり、R2はハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アミノ基であるか、これらの基以外の鎖状または環状の有機基、あるいはR1の原子と結合することにより環構造を形成する鎖状の有機基である。)
本発明の方法では、式(5)で表される化合物として、後述するように特に好適である2つの化合物群およびそれらを使用する好ましい態様の系が確立されている。
【0044】
上記式(5)において、R1は、置換されていてもよい鎖状または環状の有機基である。鎖状または環状の有機基として、好ましくは炭素および水素を有する基、具体的には脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基が挙げられ、これらの基は置換基を有していてもよい。
置換基を有していてもよい脂肪族基として、たとえば低級アルキル基、低級アルケニル基または低級アルキニル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級アルコキシアルキル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基などが挙げられる。脂肪族基の炭素数は、特に限定されないが、一般的には1〜10であり、好ましくは1〜6であり、特に好ましくは1〜4である。またその鎖型も特に限定されないが、直鎖、分岐鎖、環状鎖またはこれらの組み合わせのいずれでもよい。
【0045】
上記の基について次に具体的に示すが、本発明はこれらの例示のみに限定されるものではない。低級アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、これらの異性体である基など;低級アルケニル基として、ビニル、プロペニル、ブテニル基、後二者の基では、二重結合の位置による異性体である基など;低級アルキニル基として、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、これらの異性体である基など;低級シクロアルキル基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクタニル基など;低級ハロアルキル基には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロエチル基、ブロモプロピル基など;低級アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、これらの異性体である基など;低級ハロアルコキシ基として、モノフルオロメトキシ、クロロプロポキシ基、これらの異性体である基など;アルコキシカルボニル基として、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基など;アルキルチオ基として、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、これらの異性体である基;アルキルスルフィニル基として、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、これらの異性体である基など;アルキルスルホニル基として、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、これらの異性体である基などが挙げられる。
【0046】
置換基を有していてもよいアリール基とは、炭素数6〜24、好ましくは6〜12のアリール基であり、このアリール基は1個以上の置換基を有していてもよい。アリール基の具体例として、フェニル基、トリール基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、メシチル基、p−メトキシフェニル基などが挙げられる。
【0047】
置換基を有していてもよいヘテロ環基とは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子などを1個以上含有する5〜10員環の飽和もしくは不飽和の単環もしくは縮合環である。ヘテロ環基の具体例として、たとえば、ピリジル、イミダゾリル、キノリル、イソキノリル、ピリミジニル、ピラジニル、フタラジニル、トリアジニル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、ベンズイミダゾリル、ピロリジノ、モルホリノ、ピラゾロリルなどが挙げられる。これらのヘテロ環は、1個以上の置換基を有していてもよい。
【0048】
上記の脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基が有していてもよい置換基の例として、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオ基、アリールスルホニル基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、スルファモイル基などが挙げられる。鎖状乳酸オリゴマー末端カルボキシル基の保護基となるR1として以上具体的に列挙したが、それらは例示であり本発明がこれらに限定されるものではない。
【0049】
他方、上記式(5)において、R2がとり得る原子または基として、具体的にはハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アシル基、ニトロ基、アミノ基、直鎖または分岐の、鎖状または環状のアルキル基、直鎖または分岐の、鎖状または環状のアルケニル基、直鎖または分岐の、鎖状または環状のアルキニル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、スルファモイル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルオキシ基、N−アシルスルファモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホ基、メルカプト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルチオ基、スルファモイルアミノ基、アリールチオ基、ヘテロ環基(たとえば窒素、酸素およびイオウなどを少なくとも1個以上含み、3〜12員環の単環、縮合環)、ヘテロ環オキシ基またはヘテロ環チオ基などが挙げられる。
【0050】
上記式(5)で表される化合物として、鎖状乳酸オリゴマーの末端カルボキシル基に活性基として結合してそのオリゴマーの末端を活性化し、続く環化に際し都合よく脱離する基として、好ましくは電子吸引性の性格を有する置換基を含むものが好適である。この観点から、式(5)のR2として上記の基のうちハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基またはアミノ基が望ましい。特に酸ハロゲン化物またはこれに類似する化合物が好ましい。
【0051】
具体的には、酸ハロゲン化物またはこれに類似する化合物が好ましい。特に好適な化合物群として、R2がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)であるアシルハライド類が挙げられる。とりわけ、R1が置換されていてもよいフェニル基が好ましく、特にハロゲン、ニトロ基、シアノ基などで1以上置換されたフェニル基が望ましい。
【0052】
具体的にはハロゲン置換フェニル基である化合物が好ましい。これには、たとえば2,6−ジクロロベンゾイルクロライド、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド、4−ヨードベンゾイルクロライド、2,4,6−トリブロモベンゾイルブロミドなどのハロゲン化アシルが挙げられ、好ましくは特に2,6−ジクロロベンゾイルクロライド、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライドが使用される。これらは、単独でまたは2以上の組み合わせで用いられる。そうした化合物は、上記した、特に好適である2つの化合物群のうちの1群を構成する。
【0053】
上記式(5)において、R1の原子とR2の原子とが結合することにより環構造を形成している化合物であってもよい。この場合のR2は、R1の原子と結合することにより環構造を形成する鎖状の有機基である。これにはたとえば置換されていてもよい脂肪族基、ヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、イオウ原子など)を含有する鎖状基などがある。
【0054】
具体的には、R2が窒素原子含有基であり、かつその窒素原子がR1の炭素原子と結合してヘテロ環、とりわけヘテロ芳香環を形成している化合物が好ましく用いられる。そうしたヘテロ芳香環の化合物のうち、当該窒素が水素原子を結合しており、当該窒素に隣接してカルボニル基が存在するものが特に望ましい。これらには、2−ピリドン類、2(3H)−ピラジノン類、オキサゾロン類、2−キノロン類、イソキノロン類、ピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン、1,4−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン類、1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン類、3H−1,2,4−トリアゾール−3,5(4H)−ジオン類などが具体的に挙げられる。
【0055】
これらの化合物のうち、特に好ましく用いられるものとして、2−ピリドン類が示される。この2−ピリドン類は、上記ハロゲン化アシル類と並び、鎖状乳酸オリゴマーの選択的な環化に好都合な基を与え、もう1つの好適な化合物群として位置づけられる。2−ピリドン類は、鎖状乳酸オリゴマーのカルボキシル末端を活性化させる官能基として、ピリジルオキシ基(より好適な活性基は2−フェニルピリジルオキシ基)を供与する。具体的には、6−フェニル−2−ピリドン、4−メチル−6−フェニル−2−ピリドン、6−ベンジル−2−ピリドン、6−トリル−2−ピリドンなどが例示される。これらは、単独でまたは2以上の組み合わせで用いられる。
【0056】
式(1)で表される鎖状乳酸オリゴマーと式(2)で表される化合物との使用量のモル比は、特に限定されず、平衡点、費用などを考慮して設定できる。その比は、好ましくは1:0.7〜1:20、より好ましくは1:1〜1:10である。式(2)で表される化合物としてハロゲン化アシル類を使用する場合、その使用量は、通常、出発物質に対し、1〜5当量、好ましくは1〜3当量、より好ましくは、1〜2.5当量である。また、式(2)で表される化合物としてピリドン類を使用する場合、その使用量は、通常、出発物質に対し1〜20当量、好ましくは5〜12当量、より好ましくは6〜10当量である。
塩基
上記工程(i)の反応は、塩基の存在下で行われることが望ましい。おそらく、その塩基は、鎖状乳酸オリゴマーの末端カルボキシル基がエステル化される際に触媒として作用すると考えられる。このような塩基として、無機塩基または有機塩基のいずれも使用できる。
【0057】
無機塩基として、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水素化物、炭酸塩、炭酸水素塩;マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、水素化物、炭酸塩、炭酸水素塩;ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラートなどのアルカリ金属アルコキシラート;酢酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸水素一カリウムなどのアルカリ金属弱酸塩などが挙げられる。
【0058】
さらに有機塩基としては、アンモニア;ピリジン、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム、4−ジメチルアミノピリジンなどのピリジン誘導体;第4級アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、アニリン、ナフチルアミンまたはその置換体などのアミン類;トルイジン類、キシリジン類、アミノフェノール類、アニリジン類、フェネチジン類、アミノベンズアルデヒド類、アミノベンゾニトリル類、アミノベンゾフェノン類、アミノビフェニル類などが挙げられる。これらのうち、特に好ましい塩基として、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウムなどが示される。これらは、単独でまたは2以上の組み合わせで用いられる。
【0059】
一般式(2)で表される化合物として、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライドといったアシルハライド類を使用する場合に用いる塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのアミン類が好ましい。そのアミン類の使用量は、通常、出発物質に対し、1〜30当量、好ましくは1〜10当量、より好ましくは、1〜3当量である。
【0060】
他方、一般式(2)で表される化合物として、6−フェニル−2−ピリドンといったピリドン類を使用する場合に用いる塩基は、トリエチルアミンなどのアミン類およびピリジニウム塩などのピリジン誘導体(ピリジンも含む)が好ましい。アミン類およびピリジニウム塩の使用量は、通常、出発物質に対し、1〜30当量、好ましくは、10〜20当量、より好ましくは15〜18当量である。
その他の反応助剤
工程(ii)の環化反応において、以下の反応助剤も使用される。
【0061】
一般式(2)で表される化合物として、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライドといったハロゲン化アシルを使用する場合には、アミノピリジン類、特に4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)が一緒に用いられる。DMAPの使用量は、0.01〜10当量、好ましくは、1〜5当量である。
一般式(2)で表される化合物として、6−フェニル−2−ピリドンといったピリドン類を使用する場合、触媒として芳香族スルホン酸類を使用してもよい。芳香族スルホン酸類として、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、ナフタリン−α−スルホン酸などが挙げられる。これらのうち、特に好ましい触媒として、p−トルエンスルホン酸などであり、その使用量は、0.01当量〜1当量である。
有機溶媒
本発明の製造方法による反応は、好ましくは反応溶媒の存在下で実施され、その溶媒としては、原料、反応助剤を溶解し、しかもこれらの物質または生成物と反応しない溶媒であれば特に制限はない。アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;ヘキサン、ベンゼン、アルキルベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メトキシエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ビス(2−(メトキシエチル)エーテル、ビス(2−〔メトキシエトキシ〕エチル)エーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、フェノール、クロロフェノール、クレゾール、アニソール、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレンなどが例示される。特に、反応物質の溶解性に優れ、かつ沸点が比較的低い溶媒が好ましく用いられる。具体的にはトルエン(沸点110℃)、テトラヒドロフラン(沸点66℃)、ジクロロメタン(沸点40.2)、1,2−ジクロロエタン(沸点83.7℃)、トリクロロエチレン(沸点86.4℃)、アセトニトリル(沸点81.6℃)などが好適である。特に、コストを考慮すればベンゼン、トルエン、またはキシレンなどが望ましい。これらの溶媒は、単独でまたは2以上の組み合わせで用いられる。
反応の条件
エステル形成の工程(i)は、通常、4〜40℃、好ましくは室温で行なわれる。次に環化の工程(ii)は、50〜130℃、好ましくは70〜110℃で行なわれる。その際の温度は、生成環状オリゴマーの選択性にも関係する。
【0062】
反応圧力は、特に制約されず、通常は常圧でよい。反応雰囲気として、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気を各工程において使用することができる。反応時間は、一概に決められないが、通常、工程(i)が、2〜20時間、好ましくは2〜12時間が効率的であり、また工程(ii)は1〜24時間、好ましくは5〜12時間が効率的である。
【0063】
生成した環状乳酸オリゴマー混合物から、所望の鎖長を有する環状乳酸オリゴマー単一化合物は、通常の分離方法、たとえば、高速液体クロマトグラフィーなどを利用することにより、未反応の出発物質、副生成物、他の鎖長を有する環状乳酸オリゴマーなどから純粋の状態で得ることができる。
本発明の製造方法に基づいて、特定鎖長を有する環状乳酸オリゴマー混合物が生成する機構は、次のように考えられる。もっとも反応機構を説明する何らかの理論に対し、本発明はいかなる意味においても拘束されることはない。
【0064】
上記工程(i)において式(3)で表されるエステルが生成し、この中間体は通常、分離可能である。
【0065】
【化16】
【0066】
続いて行なわれる工程(ii)において、n個の鎖状乳酸m量体オリゴマーは、1分子を形成するように重合するとともに、おそらく「頭部から尾部への縮合」(head−to−tail condensation)方式の環化も起きる。その際に加わるm量体の分子数(すなわちn)に応じ、n倍体の環状オリゴマーが生成すると考えられる。このような選択的な環化が起きることにより、特異な組成の環状乳酸オリゴマー生成物を与える。
【0067】
本発明の方法による好ましい実施態様を以下に示す。その際、上記式(2)で示される化合物のうち、特に好適な化合物群としてアシルハライド類または2−ピリドン類が使用される。
2,4,6−トリクロロベンゾイル基を活性基とする場合、鎖状乳酸3量体と2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライドとを、トリエチルアミン存在下で反応させ、対応する混酸無水物とした後、単離することなく、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下にトルエンなどの溶媒中で、還流下反応させると、環状化合物3量体、6量体、9量体の3種類を含む混合物を得られる(図1)。3量体、6量体、9量体のNMRスペクトルを測定すると、各々メチルプロトン、メチンプロトンのケミカルシフトに差が見られ、判別可能である。さらにマススペクトルを測定すれば、CI法(イソブタン)により、各々を確認できる。
【0068】
同じく、鎖状乳酸4量体から出発しても、上記と同様にして4量体、8量体、12量体などが生成し(図2)、それらの存在が確認できる。
次に2−フェニルピリジルオキシ基を活性基とする場合、ヨウ化2−クロロ−N−メチルピリジニウム、トリエチルアミンの存在下で、鎖状乳酸4量体と2−フェニルピリドンとを反応させると、下式に示すように対応する2−フェニルピリジルエステルが好収率で得られる。このエステルは単離することは可能であるが、単離することなくトルエンスルホン酸類の存在下、ピリジンなどの溶媒中で還流することにより、環化して環状乳酸4量体などを主成分として含む混合物が生成する。
【0069】
【化17】
【0070】
いずれの場合も、当業者であれば使用物質、使用量、割合、処理内容および手順、反応条件などをそれぞれ適宜に設定もしくは変更することができる。
【0071】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、生成する環状乳酸オリゴマーは、出発物質である鎖状乳酸m量体オリゴマーのn倍体となっており、乳酸単位をmn個有する環状乳酸mn量体オリゴマーの混合物が得られる。
本発明の製造方法によれば、所望の縮合度を有する環状乳酸オリゴマーを効率よく分離できる組成の混合物が得られ、しかも出発物質の鎖状乳酸m量体オリゴマーの縮合度および反応物質の種類を選択することにより生成する混合物の組成を調節できる。
【0072】
【実施例】
本発明を以下の実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されることはない。なお、特にことわらない限り、%は重量%を意味する。
【0073】
【実施例1】
【0074】
【化18】
【0075】
アルゴン雰囲気下、室温で鎖状乳酸3量体0.1170g(0.4996mmol)のTHF(テトラヒドロフラン)溶液5mlに、トリエチルアミン0.1535ml(2当量)を加え、さらに2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド0.2561g(2当量)のTHF溶液5mlを加えて 2時間撹拌した。得られた混合物をアルゴン雰囲気下で濾過した後、トルエン250mlで希釈した。0.3667g(6当量)のDMAPをトルエン50mlで溶かし入れて還流を行なった。高還流状態になったら、これに対して上記混合物の希釈トルエン溶液250mlを、自動滴下装置を用いて5時間以上かけて滴下した。滴下終了後30分間さらに還流を続け、還流終了後に室温まで冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、環状乳酸6量体および環状乳酸9量体の混合物が0.0231g、環状乳酸12量体の分画が0.0066g、これらのオリゴマーを含む混合物が0.0255g得られた。環状乳酸12量体は、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で容易に単離できた。
【0076】
【実施例2】
【0077】
【化19】
【0078】
アルゴン雰囲気下、6−フェニル−2−ピリドン0.2788g(1.6285mmol)、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム0.4078g(1.5962mmol)およびトリエチルアミン0.1632g(1.6128mmol)を乾燥トルエンに溶解し、トルエン溶液30mlとして室温で1時間撹拌した。この溶液を60℃に保ちながら、そこへ鎖状乳酸3量体0.0519g(0.2216mmol)およびトリエチルアミン0.0240g(0.2372mmol)を乾燥トルエンに溶解して溶液18mlとしたものを、自動滴下装置を用いて、9時間かけて滴下した。その後30分間温度を保ち、次に室温に冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン:メタノール=100:3)で単離したところ、鎖状乳酸3量体ピリジルエステル0.0673g(86%)が得られた。
【0079】
p−トルエンスルホン酸を触媒量、30 mlトルエンの溶液として60℃に保ち、これに上記生成物のトルエン溶液25 mlを、自動滴下装置を用いて9時間かけて滴下して加えた。滴下終了後30分間さらにその温度を保ち、次いで室温に冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン:メタノール=100:2)で分離したところ、複数の環状乳酸が0.0015g(環化収率4%)得られた。
【0080】
【実施例3】
【0081】
【化20】
【0082】
アルゴン雰囲気下、室温で鎖状乳酸4量体0.1663g(0.4320mmol)のTHF溶液5mlに、トリエチルアミン(1.1当量)2.5mlTHF溶液を加え、さらに2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド(1当量)のTHF溶液2.5mlを加えて 2時間撹拌した。得られた混合物をアルゴン雰囲気下で濾過した後、濃縮し、トルエン350mlに溶解して還流を行なった。高温状態になったら、0.3677g(6当量)のDMAPをトルエン150mlで溶かし入れ、その後5時間還流を行なった。還流終了後に室温まで冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、81.5%の環状および鎖状の乳酸オリゴマー混合物を得た。環状乳酸16量体を含むフラクションから、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)により、このオリゴマーの単離は可能であった。
【0083】
【実施例4】
【0084】
【化21】
【0085】
アルゴン雰囲気下、室温で鎖状乳酸4量体0.1170g(0.4996mmol)のTHF溶液5mlに、トリエチルアミン、0.1535ml(2当量)を加え、さらに2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド0.2561gのTHF溶液5mlを加えて 2時間撹拌した。得られた混合物をアルゴン雰囲気下で濾過した後、トルエン250mlで希釈した。0.3667g(6当量)のDMAPをトルエン50mlで溶かし入れて還流を行なった。高還流態になったら、これに、上記生成物の希釈トルエン溶液250mlを、自動滴下装置を用いることにより5時間以上かけて滴下した。滴下終了後30分間さらに還流を続け、還流終了後に室温まで冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、環状乳酸8量体および環状乳酸12量体の混合物が0.0231g、環状乳酸16量体が0.0066g得られた。NMRにより求めた両混合物中の環状オリゴマーの合成比率は、55:45であった。環状乳酸16量体はカラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で単離可能であった。
【0086】
【実施例5】
【0087】
【化22】
【0088】
アルゴン雰囲気下、室温で鎖状乳酸4量体0.1101g(0.3595mmol)のTHF溶液10mlに、トリエチルアミン(2.3当量)THF溶液2.5mlを加え、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド(2.2当量)THF溶液2.5ml を加え、さらにDMAP(2.2当量)THF溶液15mlを加えて 2時間撹拌した。得られた混合物を窒素気流中で濾過した後、乾燥トルエン250mlで希釈し還流を行った。5時間還流し、還流終了後に室温まで冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、環状乳酸8量体を含む環状乳酸の混合物が得られた。
【0089】
【実施例6】
【0090】
【化23】
【0091】
アルゴン雰囲気下、室温で鎖状乳酸4量体0.0836g(0.2730mmol)のTHF溶液4.5mlに、トリエチルアミン(2.3当量)THF溶液1.4mlを加え、さらに2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド(2.2当量)THF溶液1.2mlを加えて 2時間撹拌した。得られた混合物を窒素気流中で濾過した後、乾燥トルエン250mlで希釈し、還流を行なった。高温状態になったら0.3677g(6当量)のDMAPをトルエン50mlで溶かし入れ、その後5.5時間還流した。還流終了後に室温まで冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、環状乳酸4量体および環状乳酸8量体の混合物(28%)を得た。
【0092】
【実施例7】
【0093】
【化24】
【0094】
アルゴン雰囲気下、室温で6−フェニル−2−ピリドン0.6815g(3.981mmol)、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム1.0086g(3.948mmol)およびトリエチルアミン0.4079g(4.031mmol)をジクロロメタンに溶解してジクロロメタン溶液75mlとし、1時間撹拌した。この溶液を還流し、高還流状態になったら、そこへ鎖状乳酸4量体0.1435g(0.4685mmol)およびトリエチルアミン0.0543g(0.5366mmol)のジクロロメタン溶液40mlを、自動滴下装置を用いて9時間かけて滴下した。その後30分間還流を継続し、還流終了後は室温に冷却し濃縮した。
【0095】
p−トルエンスルホン酸を触媒量、ジクロロメタン30 mlの溶液にして還流した。高還流状態になったら、濃縮した上記合成物のジクロロメタン溶液20mlを、自動滴下装置を用いて9時間かけて滴下し、その後30分間還流を継続した。還流終了後は室温に冷却し濃縮した。カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、複数の環状乳酸が粗収量0.0037g(環化収率2.6%)得られた。
【0096】
【実施例8】
【0097】
【化25】
【0098】
アルゴン雰囲気下、室温で6−フェニル−2−ピリドン0.3631g(2.121mmol)、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム0.5452g(2.134mmol)およびトリエチルアミン0.2206g(2.180mmol)を35mlのジクロロメタンに溶解して1時間撹拌した。この溶液を還流し高還流状態になったら、そこへ鎖状乳酸4量体0.0872g(0.2847mmol)およびトリエチルアミン0.0283g(0.3419mmol)のジクロロメタン溶液20mlを、自動滴下装置を用いて9時間かけて滴下し、その後30分間還流を継続した。還流終了後は室温に冷却し濃縮した。カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で単離したところ、乳酸4量体ピリドンエステル0.0713g(54%)が得られた。
【0099】
p−トルエンスルホン酸を触媒量、ジクロロメタン30 mlの溶液にして還流し、高還流状態になったら、そこへ自動滴下装置を用いて濃縮した上記合成物のジクロロメタン溶液20mlを9時間かけて滴下し、その後30分間還流を継続した。還流終了後は室温に冷却し濃縮した。これをカラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、複数の環状乳酸が粗収量0.0049g(環化収率6%)得られた。
【0100】
【比較例1】
環状乳酸4量体の合成
【0101】
【化26】
【0102】
アルゴン雰囲気下、室温で6−フェニル−2−ピリドン0.3811g(2.2261mmol)、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム0.5775g(2.2604mmol)およびトリエチルアミン0.2286g(2.2591mmol)をジクロロメタン5mlに溶解し、さらに乾燥トルエン50mlで希釈して1時間撹拌し、この溶液を75℃に保った。そこへ鎖状乳酸4量体0.0883g(0.28831mmol)およびトリエチルアミン0.0370g(0.3656mmol)をジクロロメタン5mlで溶かし、トルエン溶液30mlとしたものを、自動滴下装置を用いて、9時間かけて滴下した。その後30分間温度を保ち、その後室温に冷却した。これを濃縮して、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン:メタノール=100:3)で単離したところ、乳酸4量体ピリジルエステル0.1046g(82%)が得られた。
【0103】
p−トルエンスルホン酸を触媒量、5 mlジクロロメタンに溶かし、さらにトルエン溶液30mlとした。これを75℃に保ち、そこへ自動滴下装置を用いて濃縮した上記合成物のトルエン溶液30mlを10時間かけて滴下し、その後30分間還流を継続した。還流終了後は室温に冷却し濃縮した。カラムクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン:メタノール=100:3)で分離したところ、環状乳酸誘導体はほとんど得られず、乳酸4量体ピリジルエステルが粗収量0.0475g(収率70%)で回収された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、鎖状乳酸3量体からの環状乳酸オリゴマーの合成を示す。
TEAは、トリエチルアミン、DMAPは、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、tolueneはトルエンである。reflは還流を意味する。
【図2】図2は、鎖状乳酸4量体からの環状乳酸オリゴマーの合成を示す。
TEAは、トリエチルアミン、DMAPは、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、tolueneはトルエンである。reflは還流を意味する。
【発明の技術分野】
本発明は、環状乳酸オリゴマーの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、環化する鎖状乳酸オリゴマーの縮合度の倍数となる縮合度を有する環状乳酸オリゴマーを製造する方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
有用な用途が期待される環状乳酸オリゴマーを得るために、これまで様々な合成方法が提案されてきた。
所望の鎖長を有する単一の環状乳酸オリゴマーを合成するために、たとえば固相上で目的鎖長を有する鎖状オリゴ乳酸まで逐次合成し、最後に環化する試みがなされている(たとえば、非特許文献1参照。)。このような合成法においては、官能基の保護も含め極めて煩雑であり、しかも最終収率も低くなって実用性に欠けるという問題点があった。
【0003】
減圧下で乳酸の脱水縮合反応を行なうことにより、縮合度3〜19の鎖状および/または環状の乳酸オリゴマー混合物が合成されている(たとえば、特許文献1参照。)。この製造方法では生成する環状ポリ乳酸が一定の組成となるように制御することは容易でない。よってその製造方法は、高重合体を含み、分子量分布が広い、鎖状および環状の乳酸重合体の混合物を与えるものであった。
【0004】
鎖状乳酸オリゴマーを含まない環状乳酸オリゴマーを得る製造方法が本出願の出願人により開示されてきた(たとえば、特許文献2および3参照。)。乳酸2分子が脱水縮合して生成するラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)を原料として脱水重合させる製造方法(特許文献2)による場合、アルカリ金属化合物を触媒として使用し、その触媒の種類を選択することにより実質的に環状乳酸オリゴマーのみを選択的に得ることもできる(特許文献3)。その反応生成物は、乳酸単位数が2、3、4、・・・と変化する鎖長となっており、しかも含量も異なる環状乳酸オリゴマーの混合物である。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−227388号公報
【特許文献2】
国際公開第01/21613A1号パンフレット
【特許文献3】
国際公開第01/21612A1号パンフレット
【非特許文献1】
クウィスル O.(Kuisle O.),キノア E.(Quinoa E.)およびリゲラ R. (Riguera R.)有機化学雑誌( J.Org. Chem.)、1999年、64巻 p8063
【0006】
【発明の目的】
単純な重合体組成の生成物を与える環状乳酸重合体の製造方法があれば、これを用いて特定鎖長の環状乳酸オリゴマーを単一化合物として容易に単離できる。したがって、その方法は環状乳酸オリゴマーの新たな用途の開発のためにも有意義である。
【0007】
本発明は、所望の縮合度を有する環状乳酸オリゴマーを合成する方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、特定鎖長を有する環状乳酸オリゴマーを効率よく分離できる生成物を得る方法を提供することを目的とする。
【0008】
【発明の概要】
本発明者らは、一定鎖長を有する環状乳酸オリゴマーを単一化合物として直接的に合成できる製造方法について鋭意検討した。その結果、縮合度が原料の鎖状乳酸オリゴマーの縮合度の倍数となる環状乳酸オリゴマーを選択的に生成する本発明の方法を完成した。
【0009】
本発明の概要は、以下のとおりである。
本発明の製造方法は、
(i)式(1)
【0010】
【化6】
【0011】
で表される鎖状乳酸m量体オリゴマー(mは、3〜15の整数である。)の末端カルボキシル基を、化合物
【0012】
【化7】
【0013】
(式中Rは、環状または鎖状の有機基である。)
と反応させて、
【0014】
【化8】
【0015】
を形成し、
(ii)次いでn個の鎖状乳酸m量体オリゴマー(3)を環化させる
ことを特徴とする、式(4)で表され、乳酸単位をmn個(nは1以上の整数である。)含有する環状乳酸オリゴマーの製造方法である。
【0016】
【化9】
【0017】
本発明の製造方法において、
上記式(2)、O=Rで示される化合物が、下記の式
【0018】
【化10】
【0019】
(式中、R1は置換基を有していてもよい鎖状または環状の有機基であり、R2はハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基またはアミノ基であるか、あるいはR1の原子と結合することにより環構造を形成する鎖状の有機基である。)で表されることを特徴としている。
上記R1は、脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基(これらの基は置換基を有していてもよい。)であってもよい。
【0020】
特に上記R1が、ハロゲン置換フェニル基であり、R2がハロゲン原子である場合が好ましい。
上記式(5)で表される化合物において、R2が窒素原子含有基であり、かつ該窒素原子がR1の炭素原子と結合してヘテロ芳香環を形成していることが好ましい。この場合、式(5)で表される化合物として、特に2−ピリドン類が好ましく用いられる。
【0021】
本発明の環状乳酸オリゴマーの製造方法は、上記(i)を塩基の存在下で行なうことを特徴としている。その塩基としてアミン類またはピリジン誘導体が特に好ましい。
上記(ii)はアミノピリジン類の存在下で行なわれることが好ましい。
あるいは、上記(ii)は芳香族スルホン酸類の存在下で行なわれることが好ましい。
【0022】
本発明の環状乳酸オリゴマーの製造方法において、上記(i)および(ii)を、アルゴンおよび/または窒素の雰囲気下でおこなうことが好ましい。
【0023】
【発明の具体的説明】
本発明に基づく環状乳酸オリゴマーの製造方法は、以下の工程(i)および(ii)を含む。
(i)式(1)
【0024】
【化11】
【0025】
で表される鎖状乳酸m量体オリゴマー(mは、2以上の整数である。)の末端カルボキシル基を、好ましくは塩基の存在下で、化合物
【0026】
【化12】
【0027】
(式中Rは、環状または鎖状の有機基である。)と反応させて、
【0028】
【化13】
【0029】
を形成し、
(ii)次いでn個の鎖状乳酸m量体オリゴマー(3)を環化させる。
上記(ii)の生成物は、乳酸単位をmn個(nは1以上の整数である。)含有する環状乳酸オリゴマー、
【0030】
【化14】
【0031】
である。
所望する鎖長の環状乳酸オリゴマーを得るためには、出発物質である単一の鎖状乳酸オリゴマーの鎖長を、後述するように適切に選択する必要がある。本発明による上記の製造方法は、少なくともエステル形成の工程(i)および環化の工程(ii)を含む。個々の反応の詳細を次に示す。
【0032】
工程(i)において、式(1)で表される鎖状乳酸m量体オリゴマー(mは、2以上の整数である。)の末端カルボキシル基を、O=Rで表される化合物の−OR基と反応させる。この反応は、塩基の存在下で行なうことが好ましい。活性基−ORが鎖状乳酸オリゴマーの末端カルボキシル基に結合して式(3)で表される鎖状乳酸m量体オリゴマーエステルを形成する。
【0033】
次の工程(ii)では、上記鎖状乳酸m量体オリゴマーエステルを、好ましくは触媒の存在下で環化させる。たとえば溶媒が還流する条件において、n個の鎖状乳酸m量体オリゴマーエステルは、その末端カルボキシル基のエステル、−COORから−OR基が脱離する際、1分子となるように重合し、かつ環化する。その結果、生成物である環状乳酸mn量体オリゴマー(式(4)で表される。nは、m量体の倍数を表し、1以上の整数である。)の混合物が生成する。
【0034】
本発明の製造方法によれば、単一化合物である鎖状乳酸m量体オリゴマーを原料に用いて、上記工程(i)および(ii)を行なうことにより、生成物として環状乳酸オリゴマーmn量体(これはm量体のn倍体となっている。nは1以上の整数である)の混合物を選択的に得ることができる。生成する環状乳酸オリゴマーmn量体の縮合度は、平均して3〜60、好ましくは3〜24である。
【0035】
本明細書で「縮合度」とは、乳酸重合体中における反復単位である乳酸単位の個数を意味し、m量体であれば、その縮合度はmとなる。「n倍体」とは、出発物質の乳酸m量体オリゴマー骨格をn個含む乳酸オリゴマーをいう。
具体的には、出発物質として単一化合物の鎖状乳酸3量体オリゴマーを用いて本発明の方法に従って合成するならば、3量体(n=1)、6量体(n=2)、9量体(n=3)、12量体(n=4)・・・、3n量体の環状乳酸オリゴマーを含む混合物が生成する(図1)。ただし、その中に各量体が含まれる割合は互いに同一ではない。同様に鎖状乳酸4量体から出発する場合も、通常、図2に示すような環状乳鎖オリゴマーが主に含まれる混合物を得る。
【0036】
このように縮合度m、倍数nのとり得る数および生成した環状オリゴマーについて、一般的に表すと、次のようになる。出発物質として単一の鎖状乳酸m量体を使用すれば、上記(4)式により表される環状乳酸オリゴマー生成物は、そのm量体に対しn倍体であるオリゴマー、すなわちmn量体オリゴマー(乳酸単位をmn個有するオリゴマー)の混合物となっている。したがって、生成する混合物に含まれる環状乳酸オリゴマーの縮合度は、m、m+1、m+2、m+3・・・のような連続した数をとらず、出発物質である鎖状乳酸m量体オリゴマーの縮合度に規定される。さらに、nは1以上の整数であるが、これらの整数のうち、nは一般に2つ以上の値をとる。
【0037】
このように、本発明の方法により生成する環状乳酸オリゴマーは、特定鎖長の環状乳酸オリゴマー(mn量体)が主に含まれるという特異な組成の混合物となる。そうした比較的単純な組成の混合物から、所望の縮合度を有する、単一の環状乳酸オリゴマーを回収することは、連続した鎖長分布の環状乳酸オリゴマーの混合物から回収する場合に比べると格段に容易であると考えられる。したがって単一の環状乳酸オリゴマーの単離も効率的にできる。さらに出発物質の鎖状m量体乳酸オリゴマーおよび式(2)で表される反応物質の種類を選択することにより、混合物の組成を望みどおりに調節できることは、本発明の利点の一つである。
【0038】
本発明の製造方法で用いる化合物(鎖状乳酸オリゴマーなど)、または生成する環状乳酸オリゴマーは、特に立体異性の区別をせず、異性体の混合物であってもよい。同様に、これらの化合物において、塩(ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩など)、水和物、溶媒和物、結晶多形といった各種の形態を問わない。
【0039】
以下、本発明の製造方法に使用される化合物として、原料物質の鎖状乳酸オリゴマー、式(2)で表される化合物O=R、塩基などの反応助剤および溶媒について詳細に説明し、さらに工程および反応についても詳述する。
鎖状乳酸オリゴマー
本発明の製造方法において、環状乳酸オリゴマー(4)を合成するための出発物質として、式(1)で表される単一の鎖状乳酸オリゴマーを用いる。その鎖状乳酸オリゴマーは、乳酸の任意の鎖状m量体縮合物から出発することができ、mは、2以上の整数である。mとしてたとえば2〜30の整数であり、通常は、3〜15、好ましくは3〜10、より好ましくは、3〜6の整数である。なお、mが1の場合、乳酸の1量体であり、mが2の場合、乳酸ラクトイルである。
【0040】
実際には、所望する鎖長の環状乳酸オリゴマーを得るためには、原料とする単一化合物の鎖状乳酸オリゴマーの鎖長を適切に設定する。上記のように出発物質の縮合度mと、生成物がそのn倍体となる関係を考慮して選択すればよい。
このような特定鎖長を有する鎖状オリゴ乳酸の製造方法については、すでに本出願と同一の出願人により提案されている(特願2002−042009)。この方法によれば、2量体から20量体の間の一定鎖長を有する鎖状乳酸オリゴマーを単一の化合物として直接的に合成することができる。そこで本発明においては、この方法を使用して、出発物質として望ましい鎖状乳酸オリゴマーを直接的に調製することができる。
化合物O=R
鎖状乳酸オリゴマーを環化させる前に、その末端カルボキシル基に特定の保護基を結合させ、該末端を活性化させる。そのための官能基として−OR基を供与できる化合物、すなわち、上記の一般式(2)で表される化合物、O=R(Rは環状または鎖状の有機基である。)が、鎖状乳酸オリゴマーとの反応のために使用される。なお「有機基」とは、有機化合物の中に含まれる原子団であり、基として振舞うものを指すとする。具体的には、炭素および水素を有する鎖状または環状の基(いずれも置換されていてもよい。)であり、脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基あるいはその組み合わせ(これらの基は置換基を有していてもよい。)が挙げられる。たとえば、アルキル基、フェニル基または含窒素芳香族複素環式基(これらの基は置換基を有していてもよい。)であってもよい。
【0041】
−ORで表される活性基を供与し得る化合物、O=R(上記式(2)で示される化合物)は、下記の式(5)で表され、カルボニル基を含有する化合物が好ましい。当該R部分は、式(5)において=C(R1)R2に相当する。
【0042】
【化15】
【0043】
(式中、R1は置換基を有していてもよい鎖状または環状の有機基であり、R2はハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アミノ基であるか、これらの基以外の鎖状または環状の有機基、あるいはR1の原子と結合することにより環構造を形成する鎖状の有機基である。)
本発明の方法では、式(5)で表される化合物として、後述するように特に好適である2つの化合物群およびそれらを使用する好ましい態様の系が確立されている。
【0044】
上記式(5)において、R1は、置換されていてもよい鎖状または環状の有機基である。鎖状または環状の有機基として、好ましくは炭素および水素を有する基、具体的には脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基が挙げられ、これらの基は置換基を有していてもよい。
置換基を有していてもよい脂肪族基として、たとえば低級アルキル基、低級アルケニル基または低級アルキニル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級アルコキシアルキル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基などが挙げられる。脂肪族基の炭素数は、特に限定されないが、一般的には1〜10であり、好ましくは1〜6であり、特に好ましくは1〜4である。またその鎖型も特に限定されないが、直鎖、分岐鎖、環状鎖またはこれらの組み合わせのいずれでもよい。
【0045】
上記の基について次に具体的に示すが、本発明はこれらの例示のみに限定されるものではない。低級アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、これらの異性体である基など;低級アルケニル基として、ビニル、プロペニル、ブテニル基、後二者の基では、二重結合の位置による異性体である基など;低級アルキニル基として、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、これらの異性体である基など;低級シクロアルキル基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクタニル基など;低級ハロアルキル基には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロエチル基、ブロモプロピル基など;低級アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、これらの異性体である基など;低級ハロアルコキシ基として、モノフルオロメトキシ、クロロプロポキシ基、これらの異性体である基など;アルコキシカルボニル基として、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基など;アルキルチオ基として、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、これらの異性体である基;アルキルスルフィニル基として、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、これらの異性体である基など;アルキルスルホニル基として、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、これらの異性体である基などが挙げられる。
【0046】
置換基を有していてもよいアリール基とは、炭素数6〜24、好ましくは6〜12のアリール基であり、このアリール基は1個以上の置換基を有していてもよい。アリール基の具体例として、フェニル基、トリール基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェノキシ基、メシチル基、p−メトキシフェニル基などが挙げられる。
【0047】
置換基を有していてもよいヘテロ環基とは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子などを1個以上含有する5〜10員環の飽和もしくは不飽和の単環もしくは縮合環である。ヘテロ環基の具体例として、たとえば、ピリジル、イミダゾリル、キノリル、イソキノリル、ピリミジニル、ピラジニル、フタラジニル、トリアジニル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、ベンズイミダゾリル、ピロリジノ、モルホリノ、ピラゾロリルなどが挙げられる。これらのヘテロ環は、1個以上の置換基を有していてもよい。
【0048】
上記の脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基が有していてもよい置換基の例として、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオ基、アリールスルホニル基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、スルファモイル基などが挙げられる。鎖状乳酸オリゴマー末端カルボキシル基の保護基となるR1として以上具体的に列挙したが、それらは例示であり本発明がこれらに限定されるものではない。
【0049】
他方、上記式(5)において、R2がとり得る原子または基として、具体的にはハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アシル基、ニトロ基、アミノ基、直鎖または分岐の、鎖状または環状のアルキル基、直鎖または分岐の、鎖状または環状のアルケニル基、直鎖または分岐の、鎖状または環状のアルキニル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、スルファモイル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルオキシ基、N−アシルスルファモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホ基、メルカプト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルチオ基、スルファモイルアミノ基、アリールチオ基、ヘテロ環基(たとえば窒素、酸素およびイオウなどを少なくとも1個以上含み、3〜12員環の単環、縮合環)、ヘテロ環オキシ基またはヘテロ環チオ基などが挙げられる。
【0050】
上記式(5)で表される化合物として、鎖状乳酸オリゴマーの末端カルボキシル基に活性基として結合してそのオリゴマーの末端を活性化し、続く環化に際し都合よく脱離する基として、好ましくは電子吸引性の性格を有する置換基を含むものが好適である。この観点から、式(5)のR2として上記の基のうちハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基またはアミノ基が望ましい。特に酸ハロゲン化物またはこれに類似する化合物が好ましい。
【0051】
具体的には、酸ハロゲン化物またはこれに類似する化合物が好ましい。特に好適な化合物群として、R2がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)であるアシルハライド類が挙げられる。とりわけ、R1が置換されていてもよいフェニル基が好ましく、特にハロゲン、ニトロ基、シアノ基などで1以上置換されたフェニル基が望ましい。
【0052】
具体的にはハロゲン置換フェニル基である化合物が好ましい。これには、たとえば2,6−ジクロロベンゾイルクロライド、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド、4−ヨードベンゾイルクロライド、2,4,6−トリブロモベンゾイルブロミドなどのハロゲン化アシルが挙げられ、好ましくは特に2,6−ジクロロベンゾイルクロライド、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライドが使用される。これらは、単独でまたは2以上の組み合わせで用いられる。そうした化合物は、上記した、特に好適である2つの化合物群のうちの1群を構成する。
【0053】
上記式(5)において、R1の原子とR2の原子とが結合することにより環構造を形成している化合物であってもよい。この場合のR2は、R1の原子と結合することにより環構造を形成する鎖状の有機基である。これにはたとえば置換されていてもよい脂肪族基、ヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、イオウ原子など)を含有する鎖状基などがある。
【0054】
具体的には、R2が窒素原子含有基であり、かつその窒素原子がR1の炭素原子と結合してヘテロ環、とりわけヘテロ芳香環を形成している化合物が好ましく用いられる。そうしたヘテロ芳香環の化合物のうち、当該窒素が水素原子を結合しており、当該窒素に隣接してカルボニル基が存在するものが特に望ましい。これらには、2−ピリドン類、2(3H)−ピラジノン類、オキサゾロン類、2−キノロン類、イソキノロン類、ピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン、1,4−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン類、1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン類、3H−1,2,4−トリアゾール−3,5(4H)−ジオン類などが具体的に挙げられる。
【0055】
これらの化合物のうち、特に好ましく用いられるものとして、2−ピリドン類が示される。この2−ピリドン類は、上記ハロゲン化アシル類と並び、鎖状乳酸オリゴマーの選択的な環化に好都合な基を与え、もう1つの好適な化合物群として位置づけられる。2−ピリドン類は、鎖状乳酸オリゴマーのカルボキシル末端を活性化させる官能基として、ピリジルオキシ基(より好適な活性基は2−フェニルピリジルオキシ基)を供与する。具体的には、6−フェニル−2−ピリドン、4−メチル−6−フェニル−2−ピリドン、6−ベンジル−2−ピリドン、6−トリル−2−ピリドンなどが例示される。これらは、単独でまたは2以上の組み合わせで用いられる。
【0056】
式(1)で表される鎖状乳酸オリゴマーと式(2)で表される化合物との使用量のモル比は、特に限定されず、平衡点、費用などを考慮して設定できる。その比は、好ましくは1:0.7〜1:20、より好ましくは1:1〜1:10である。式(2)で表される化合物としてハロゲン化アシル類を使用する場合、その使用量は、通常、出発物質に対し、1〜5当量、好ましくは1〜3当量、より好ましくは、1〜2.5当量である。また、式(2)で表される化合物としてピリドン類を使用する場合、その使用量は、通常、出発物質に対し1〜20当量、好ましくは5〜12当量、より好ましくは6〜10当量である。
塩基
上記工程(i)の反応は、塩基の存在下で行われることが望ましい。おそらく、その塩基は、鎖状乳酸オリゴマーの末端カルボキシル基がエステル化される際に触媒として作用すると考えられる。このような塩基として、無機塩基または有機塩基のいずれも使用できる。
【0057】
無機塩基として、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水素化物、炭酸塩、炭酸水素塩;マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、水素化物、炭酸塩、炭酸水素塩;ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラートなどのアルカリ金属アルコキシラート;酢酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸水素一カリウムなどのアルカリ金属弱酸塩などが挙げられる。
【0058】
さらに有機塩基としては、アンモニア;ピリジン、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム、4−ジメチルアミノピリジンなどのピリジン誘導体;第4級アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、アニリン、ナフチルアミンまたはその置換体などのアミン類;トルイジン類、キシリジン類、アミノフェノール類、アニリジン類、フェネチジン類、アミノベンズアルデヒド類、アミノベンゾニトリル類、アミノベンゾフェノン類、アミノビフェニル類などが挙げられる。これらのうち、特に好ましい塩基として、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウムなどが示される。これらは、単独でまたは2以上の組み合わせで用いられる。
【0059】
一般式(2)で表される化合物として、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライドといったアシルハライド類を使用する場合に用いる塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのアミン類が好ましい。そのアミン類の使用量は、通常、出発物質に対し、1〜30当量、好ましくは1〜10当量、より好ましくは、1〜3当量である。
【0060】
他方、一般式(2)で表される化合物として、6−フェニル−2−ピリドンといったピリドン類を使用する場合に用いる塩基は、トリエチルアミンなどのアミン類およびピリジニウム塩などのピリジン誘導体(ピリジンも含む)が好ましい。アミン類およびピリジニウム塩の使用量は、通常、出発物質に対し、1〜30当量、好ましくは、10〜20当量、より好ましくは15〜18当量である。
その他の反応助剤
工程(ii)の環化反応において、以下の反応助剤も使用される。
【0061】
一般式(2)で表される化合物として、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライドといったハロゲン化アシルを使用する場合には、アミノピリジン類、特に4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)が一緒に用いられる。DMAPの使用量は、0.01〜10当量、好ましくは、1〜5当量である。
一般式(2)で表される化合物として、6−フェニル−2−ピリドンといったピリドン類を使用する場合、触媒として芳香族スルホン酸類を使用してもよい。芳香族スルホン酸類として、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、ナフタリン−α−スルホン酸などが挙げられる。これらのうち、特に好ましい触媒として、p−トルエンスルホン酸などであり、その使用量は、0.01当量〜1当量である。
有機溶媒
本発明の製造方法による反応は、好ましくは反応溶媒の存在下で実施され、その溶媒としては、原料、反応助剤を溶解し、しかもこれらの物質または生成物と反応しない溶媒であれば特に制限はない。アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;ヘキサン、ベンゼン、アルキルベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メトキシエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ビス(2−(メトキシエチル)エーテル、ビス(2−〔メトキシエトキシ〕エチル)エーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、フェノール、クロロフェノール、クレゾール、アニソール、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレンなどが例示される。特に、反応物質の溶解性に優れ、かつ沸点が比較的低い溶媒が好ましく用いられる。具体的にはトルエン(沸点110℃)、テトラヒドロフラン(沸点66℃)、ジクロロメタン(沸点40.2)、1,2−ジクロロエタン(沸点83.7℃)、トリクロロエチレン(沸点86.4℃)、アセトニトリル(沸点81.6℃)などが好適である。特に、コストを考慮すればベンゼン、トルエン、またはキシレンなどが望ましい。これらの溶媒は、単独でまたは2以上の組み合わせで用いられる。
反応の条件
エステル形成の工程(i)は、通常、4〜40℃、好ましくは室温で行なわれる。次に環化の工程(ii)は、50〜130℃、好ましくは70〜110℃で行なわれる。その際の温度は、生成環状オリゴマーの選択性にも関係する。
【0062】
反応圧力は、特に制約されず、通常は常圧でよい。反応雰囲気として、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気を各工程において使用することができる。反応時間は、一概に決められないが、通常、工程(i)が、2〜20時間、好ましくは2〜12時間が効率的であり、また工程(ii)は1〜24時間、好ましくは5〜12時間が効率的である。
【0063】
生成した環状乳酸オリゴマー混合物から、所望の鎖長を有する環状乳酸オリゴマー単一化合物は、通常の分離方法、たとえば、高速液体クロマトグラフィーなどを利用することにより、未反応の出発物質、副生成物、他の鎖長を有する環状乳酸オリゴマーなどから純粋の状態で得ることができる。
本発明の製造方法に基づいて、特定鎖長を有する環状乳酸オリゴマー混合物が生成する機構は、次のように考えられる。もっとも反応機構を説明する何らかの理論に対し、本発明はいかなる意味においても拘束されることはない。
【0064】
上記工程(i)において式(3)で表されるエステルが生成し、この中間体は通常、分離可能である。
【0065】
【化16】
【0066】
続いて行なわれる工程(ii)において、n個の鎖状乳酸m量体オリゴマーは、1分子を形成するように重合するとともに、おそらく「頭部から尾部への縮合」(head−to−tail condensation)方式の環化も起きる。その際に加わるm量体の分子数(すなわちn)に応じ、n倍体の環状オリゴマーが生成すると考えられる。このような選択的な環化が起きることにより、特異な組成の環状乳酸オリゴマー生成物を与える。
【0067】
本発明の方法による好ましい実施態様を以下に示す。その際、上記式(2)で示される化合物のうち、特に好適な化合物群としてアシルハライド類または2−ピリドン類が使用される。
2,4,6−トリクロロベンゾイル基を活性基とする場合、鎖状乳酸3量体と2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライドとを、トリエチルアミン存在下で反応させ、対応する混酸無水物とした後、単離することなく、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下にトルエンなどの溶媒中で、還流下反応させると、環状化合物3量体、6量体、9量体の3種類を含む混合物を得られる(図1)。3量体、6量体、9量体のNMRスペクトルを測定すると、各々メチルプロトン、メチンプロトンのケミカルシフトに差が見られ、判別可能である。さらにマススペクトルを測定すれば、CI法(イソブタン)により、各々を確認できる。
【0068】
同じく、鎖状乳酸4量体から出発しても、上記と同様にして4量体、8量体、12量体などが生成し(図2)、それらの存在が確認できる。
次に2−フェニルピリジルオキシ基を活性基とする場合、ヨウ化2−クロロ−N−メチルピリジニウム、トリエチルアミンの存在下で、鎖状乳酸4量体と2−フェニルピリドンとを反応させると、下式に示すように対応する2−フェニルピリジルエステルが好収率で得られる。このエステルは単離することは可能であるが、単離することなくトルエンスルホン酸類の存在下、ピリジンなどの溶媒中で還流することにより、環化して環状乳酸4量体などを主成分として含む混合物が生成する。
【0069】
【化17】
【0070】
いずれの場合も、当業者であれば使用物質、使用量、割合、処理内容および手順、反応条件などをそれぞれ適宜に設定もしくは変更することができる。
【0071】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、生成する環状乳酸オリゴマーは、出発物質である鎖状乳酸m量体オリゴマーのn倍体となっており、乳酸単位をmn個有する環状乳酸mn量体オリゴマーの混合物が得られる。
本発明の製造方法によれば、所望の縮合度を有する環状乳酸オリゴマーを効率よく分離できる組成の混合物が得られ、しかも出発物質の鎖状乳酸m量体オリゴマーの縮合度および反応物質の種類を選択することにより生成する混合物の組成を調節できる。
【0072】
【実施例】
本発明を以下の実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されることはない。なお、特にことわらない限り、%は重量%を意味する。
【0073】
【実施例1】
【0074】
【化18】
【0075】
アルゴン雰囲気下、室温で鎖状乳酸3量体0.1170g(0.4996mmol)のTHF(テトラヒドロフラン)溶液5mlに、トリエチルアミン0.1535ml(2当量)を加え、さらに2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド0.2561g(2当量)のTHF溶液5mlを加えて 2時間撹拌した。得られた混合物をアルゴン雰囲気下で濾過した後、トルエン250mlで希釈した。0.3667g(6当量)のDMAPをトルエン50mlで溶かし入れて還流を行なった。高還流状態になったら、これに対して上記混合物の希釈トルエン溶液250mlを、自動滴下装置を用いて5時間以上かけて滴下した。滴下終了後30分間さらに還流を続け、還流終了後に室温まで冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、環状乳酸6量体および環状乳酸9量体の混合物が0.0231g、環状乳酸12量体の分画が0.0066g、これらのオリゴマーを含む混合物が0.0255g得られた。環状乳酸12量体は、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で容易に単離できた。
【0076】
【実施例2】
【0077】
【化19】
【0078】
アルゴン雰囲気下、6−フェニル−2−ピリドン0.2788g(1.6285mmol)、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム0.4078g(1.5962mmol)およびトリエチルアミン0.1632g(1.6128mmol)を乾燥トルエンに溶解し、トルエン溶液30mlとして室温で1時間撹拌した。この溶液を60℃に保ちながら、そこへ鎖状乳酸3量体0.0519g(0.2216mmol)およびトリエチルアミン0.0240g(0.2372mmol)を乾燥トルエンに溶解して溶液18mlとしたものを、自動滴下装置を用いて、9時間かけて滴下した。その後30分間温度を保ち、次に室温に冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン:メタノール=100:3)で単離したところ、鎖状乳酸3量体ピリジルエステル0.0673g(86%)が得られた。
【0079】
p−トルエンスルホン酸を触媒量、30 mlトルエンの溶液として60℃に保ち、これに上記生成物のトルエン溶液25 mlを、自動滴下装置を用いて9時間かけて滴下して加えた。滴下終了後30分間さらにその温度を保ち、次いで室温に冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン:メタノール=100:2)で分離したところ、複数の環状乳酸が0.0015g(環化収率4%)得られた。
【0080】
【実施例3】
【0081】
【化20】
【0082】
アルゴン雰囲気下、室温で鎖状乳酸4量体0.1663g(0.4320mmol)のTHF溶液5mlに、トリエチルアミン(1.1当量)2.5mlTHF溶液を加え、さらに2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド(1当量)のTHF溶液2.5mlを加えて 2時間撹拌した。得られた混合物をアルゴン雰囲気下で濾過した後、濃縮し、トルエン350mlに溶解して還流を行なった。高温状態になったら、0.3677g(6当量)のDMAPをトルエン150mlで溶かし入れ、その後5時間還流を行なった。還流終了後に室温まで冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、81.5%の環状および鎖状の乳酸オリゴマー混合物を得た。環状乳酸16量体を含むフラクションから、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)により、このオリゴマーの単離は可能であった。
【0083】
【実施例4】
【0084】
【化21】
【0085】
アルゴン雰囲気下、室温で鎖状乳酸4量体0.1170g(0.4996mmol)のTHF溶液5mlに、トリエチルアミン、0.1535ml(2当量)を加え、さらに2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド0.2561gのTHF溶液5mlを加えて 2時間撹拌した。得られた混合物をアルゴン雰囲気下で濾過した後、トルエン250mlで希釈した。0.3667g(6当量)のDMAPをトルエン50mlで溶かし入れて還流を行なった。高還流態になったら、これに、上記生成物の希釈トルエン溶液250mlを、自動滴下装置を用いることにより5時間以上かけて滴下した。滴下終了後30分間さらに還流を続け、還流終了後に室温まで冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、環状乳酸8量体および環状乳酸12量体の混合物が0.0231g、環状乳酸16量体が0.0066g得られた。NMRにより求めた両混合物中の環状オリゴマーの合成比率は、55:45であった。環状乳酸16量体はカラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で単離可能であった。
【0086】
【実施例5】
【0087】
【化22】
【0088】
アルゴン雰囲気下、室温で鎖状乳酸4量体0.1101g(0.3595mmol)のTHF溶液10mlに、トリエチルアミン(2.3当量)THF溶液2.5mlを加え、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド(2.2当量)THF溶液2.5ml を加え、さらにDMAP(2.2当量)THF溶液15mlを加えて 2時間撹拌した。得られた混合物を窒素気流中で濾過した後、乾燥トルエン250mlで希釈し還流を行った。5時間還流し、還流終了後に室温まで冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、環状乳酸8量体を含む環状乳酸の混合物が得られた。
【0089】
【実施例6】
【0090】
【化23】
【0091】
アルゴン雰囲気下、室温で鎖状乳酸4量体0.0836g(0.2730mmol)のTHF溶液4.5mlに、トリエチルアミン(2.3当量)THF溶液1.4mlを加え、さらに2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド(2.2当量)THF溶液1.2mlを加えて 2時間撹拌した。得られた混合物を窒素気流中で濾過した後、乾燥トルエン250mlで希釈し、還流を行なった。高温状態になったら0.3677g(6当量)のDMAPをトルエン50mlで溶かし入れ、その後5.5時間還流した。還流終了後に室温まで冷却した。これを濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、環状乳酸4量体および環状乳酸8量体の混合物(28%)を得た。
【0092】
【実施例7】
【0093】
【化24】
【0094】
アルゴン雰囲気下、室温で6−フェニル−2−ピリドン0.6815g(3.981mmol)、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム1.0086g(3.948mmol)およびトリエチルアミン0.4079g(4.031mmol)をジクロロメタンに溶解してジクロロメタン溶液75mlとし、1時間撹拌した。この溶液を還流し、高還流状態になったら、そこへ鎖状乳酸4量体0.1435g(0.4685mmol)およびトリエチルアミン0.0543g(0.5366mmol)のジクロロメタン溶液40mlを、自動滴下装置を用いて9時間かけて滴下した。その後30分間還流を継続し、還流終了後は室温に冷却し濃縮した。
【0095】
p−トルエンスルホン酸を触媒量、ジクロロメタン30 mlの溶液にして還流した。高還流状態になったら、濃縮した上記合成物のジクロロメタン溶液20mlを、自動滴下装置を用いて9時間かけて滴下し、その後30分間還流を継続した。還流終了後は室温に冷却し濃縮した。カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、複数の環状乳酸が粗収量0.0037g(環化収率2.6%)得られた。
【0096】
【実施例8】
【0097】
【化25】
【0098】
アルゴン雰囲気下、室温で6−フェニル−2−ピリドン0.3631g(2.121mmol)、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム0.5452g(2.134mmol)およびトリエチルアミン0.2206g(2.180mmol)を35mlのジクロロメタンに溶解して1時間撹拌した。この溶液を還流し高還流状態になったら、そこへ鎖状乳酸4量体0.0872g(0.2847mmol)およびトリエチルアミン0.0283g(0.3419mmol)のジクロロメタン溶液20mlを、自動滴下装置を用いて9時間かけて滴下し、その後30分間還流を継続した。還流終了後は室温に冷却し濃縮した。カラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で単離したところ、乳酸4量体ピリドンエステル0.0713g(54%)が得られた。
【0099】
p−トルエンスルホン酸を触媒量、ジクロロメタン30 mlの溶液にして還流し、高還流状態になったら、そこへ自動滴下装置を用いて濃縮した上記合成物のジクロロメタン溶液20mlを9時間かけて滴下し、その後30分間還流を継続した。還流終了後は室温に冷却し濃縮した。これをカラムクロマトグラフィー(溶出液:ベンゼン:酢酸エチル=15:4)で分離したところ、複数の環状乳酸が粗収量0.0049g(環化収率6%)得られた。
【0100】
【比較例1】
環状乳酸4量体の合成
【0101】
【化26】
【0102】
アルゴン雰囲気下、室温で6−フェニル−2−ピリドン0.3811g(2.2261mmol)、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム0.5775g(2.2604mmol)およびトリエチルアミン0.2286g(2.2591mmol)をジクロロメタン5mlに溶解し、さらに乾燥トルエン50mlで希釈して1時間撹拌し、この溶液を75℃に保った。そこへ鎖状乳酸4量体0.0883g(0.28831mmol)およびトリエチルアミン0.0370g(0.3656mmol)をジクロロメタン5mlで溶かし、トルエン溶液30mlとしたものを、自動滴下装置を用いて、9時間かけて滴下した。その後30分間温度を保ち、その後室温に冷却した。これを濃縮して、カラムクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン:メタノール=100:3)で単離したところ、乳酸4量体ピリジルエステル0.1046g(82%)が得られた。
【0103】
p−トルエンスルホン酸を触媒量、5 mlジクロロメタンに溶かし、さらにトルエン溶液30mlとした。これを75℃に保ち、そこへ自動滴下装置を用いて濃縮した上記合成物のトルエン溶液30mlを10時間かけて滴下し、その後30分間還流を継続した。還流終了後は室温に冷却し濃縮した。カラムクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン:メタノール=100:3)で分離したところ、環状乳酸誘導体はほとんど得られず、乳酸4量体ピリジルエステルが粗収量0.0475g(収率70%)で回収された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、鎖状乳酸3量体からの環状乳酸オリゴマーの合成を示す。
TEAは、トリエチルアミン、DMAPは、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、tolueneはトルエンである。reflは還流を意味する。
【図2】図2は、鎖状乳酸4量体からの環状乳酸オリゴマーの合成を示す。
TEAは、トリエチルアミン、DMAPは、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、tolueneはトルエンである。reflは還流を意味する。
Claims (10)
- 上記R1が、脂肪族基、アリール基またはヘテロ環基(これらの基は置換基を有していてもよい。)であることを特徴とする、請求項2に記載の環状乳酸オリゴマーの製造方法。
- 上記R1が、ハロゲン置換フェニル基であり、R2はハロゲン原子であることを特徴とする、請求項2または3に記載の環状乳酸オリゴマーの製造方法。
- 上記式(5)で表される化合物において、R2が窒素原子含有基であり、かつ該窒素原子がR1の炭素原子と結合してヘテロ芳香環を形成していることを特徴とする、請求項2に記載の環状乳酸オリゴマーの製造方法。
- 上記式(5)で表される化合物が、2−ピリドン類である、請求項5に記載の環状乳酸オリゴマーの製造方法。
- 上記(i)を塩基の存在下で行なうことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の環状乳酸オリゴマーの製造方法。
- 上記塩基が、アミン類またはピリジン誘導体であることを特徴とする、請求項7に記載の環状乳酸オリゴマーの製造方法。
- 上記(ii)がアミノピリジン類の存在下で行なわれることを特徴とする、請求項1または2に記載の環状乳酸オリゴマーの製造方法。
- 上記(ii)が、芳香族スルホン酸類の存在下で行なわれることを特徴とする、請求項1または2に記載の環状乳酸オリゴマーの製造方法。
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