JP2004304042A - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】弁作用金属からなる陽極体の表面に誘電体皮膜層に、導電性高分子からなる固体電解質層を順次形成した固体電解コンデンサにおいて、
導電性高分子からなる固体電解質層の導電性を向上させ、低ESR化を図った固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】前記固体電解質層が酸化重合により形成され、該固体電解質層形成後に電気化学ドーピングを施すことを特徴とする。前記酸化重合は化学重合、又は電解重合であることが好ましい。また、前記電気化学ドーピングに用いる外部電極は導電性高分子により皮膜されているものを用いることが好ましい。
【選択図】 図1
導電性高分子からなる固体電解質層の導電性を向上させ、低ESR化を図った固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】前記固体電解質層が酸化重合により形成され、該固体電解質層形成後に電気化学ドーピングを施すことを特徴とする。前記酸化重合は化学重合、又は電解重合であることが好ましい。また、前記電気化学ドーピングに用いる外部電極は導電性高分子により皮膜されているものを用いることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性高分子を固体電解質として用いる固体電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パソコン、携帯情報端末(PDA)等の情報通信関連機器は、小型軽量化、高機能化のニーズが高く、回路の高速デジタル化、実装密度の高度化が急速に進んでいる。これに対応して、回路部品は高周波領域での特性の向上、低インピーダンス化、低ESR化等の開発が活発に進められている。パソコンではCPUの高速化に伴い起動時などの電圧変動が大きくなっており、これをサポートする為に大容量、低ESRのコンデンサが必要不可欠になっている。このような、高周波用のコンデンサとしては、マイカコンデンサ、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサなどが使用されているが、大容量化には適しておらず、逆に大容量化に適しているコンデンサとして電解コンデンサ、固体電解コンデンサがある。電解コンデンサは低コストだが電解液を使用しているために、電解液の蒸発による経時変化や高周波数でのインピーダンスが高い等の問題がある。一方、固体電解コンデンサは、電解質に固体の二酸化マンガンや導電性高分子等を用いており、また、陽極体に用いる焼結体の体積当たりのCV値が高いことから小型で大容量、高信頼性のコンデンサを得ることが可能である。
【0003】
このような固体電解コンデンサとして次に示すような構造を有するものが知られている。
【0004】
弁作用金属(タンタル、ニオブ、チタン、アルミニウム等)の焼結体からなる陽極体表面に、該陽極体表面を酸化させた誘電体皮膜層、二酸化マンガン等の導電性無機材料、或いはTCNQ錯塩、導電性高分子等の導電性有機材料からなる固体電解質層、導電性カーボンを含有するカーボン層、銀ペースト等からなる銀層を順次形成してコンデンサ素子を構成し、陽極リード端子及び、前記陰極引出層に陰極リード端子を接続し、前記コンデンサ素子の外側にエポキシ樹脂等の外装樹脂にて被覆密封したものである。
【0005】
上記のような固体電解コンデンサにおいて、固体電解質層として導電性高分子を用いる場合、前記誘電体皮膜層を形成した陽極体上に、化学重合、又は化学重合と電解重合の組み合わせにより導電性高分子を形成していた。特にタンタルのように、弁作用金属を主に焼結体として用いている場合は、化学重合と電解重合を組み合わして用いることが多い(例えば特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−173313号公報(第2頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら化学重合により形成される導電性高分子はその反応制御が非常に困難であり、ドーピングによってなされる導電性の最適値が得られにくいという問題があった。また電解重合の場合は、重合とドーピングが同時に起こるため、膜質とドーピング双方の制御が非常に困難であり、ドーピングによってなされる導電性の最適値が得られにくいという問題があった。このような問題により前記固体電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)の低減には上記の重合時の反応だけでは限界があった。
【0008】
本発明は、導電性高分子からなる固体電解質層の導電性を向上させ、低ESR化を図った固体電解コンデンサを提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
弁作用金属からなる陽極体の表面に誘電体皮膜層、導電性高分子からなる固体電解質層を順次形成する固体電解コンデンサの製造方法において、
前記固体電解質層が酸化重合により形成され、該固体電解質層形成後に電気化学ドーピングを施すことを特徴とする。前記酸化重合としては化学重合、又は電解重合であることが好ましい。
【0010】
また、前記電気化学ドーピングは、ドーパントが溶解された溶液に前記固体電解質層まで形成された陽極体を浸漬し、該陽極体に外部電極を宛がい電流を流すことにより行われ、前記外部電極は導電性高分子により皮膜されているものを用いることを特徴とする
上記方法を用いることにより、固体電解質層の導電性が向上し、固体電解コンデンサ完成品としてのESRを低減することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態を以下に説明する。
【0012】
本発明に用いる弁作用金属として、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハウニウム、バナジウム、チタン、マグネシウム等、またはそれらの窒化物等の中からコンデンサとて誘電率等に優れた物質としてタンタル、ニオブが上げられる。
【0013】
本発明の実施例としては、タンタルからなる焼結体を陽極体として用い、化成処理を行い、前記陽極体表面に誘電体皮膜層を形成する。その後、以下のプロセスを経て成る。
(A)化学重合工程
水等の溶媒に対して重合開始剤を溶解させた溶液を用い、前記誘電体皮膜層を形成した陽極体素子を前記溶液に含浸し、その後、直ちにピロールモノマーに含浸する。前記重合開始剤としては、過酸化水素、過硫化カリウム、亜硝酸、二酸化鉛、三塩化鉄、キノン、ジアゾニウム塩、オゾン、p−トルエンスルホン酸鉄等が用いられる。
【0014】
実施例では、前記重合開始剤として過酸化水素を用いて、ポリピロールからなる固体電解質層を形成した。
(B)電解重合工程
本発明における重合工程の工程図を図2に示す。
【0015】
陽極体素子1をピロールモノマー及び電解質が溶解された溶液5に浸漬し、前記陽極体素子1に外部電極2を宛がい、該外部電極2に対して電流を流すことによりポリピロールからなる固体電解質層を形成すると共に、電解質がポリピロールにドープされ前記固体電解質層の導電性を向上させることができる。
【0016】
本発明に用いる電解質として適当なものとしてはI2、Cl2等のハロゲンや、BF3、SO3等のルイス酸や、H2SO4、HCl等のプロトン酸や、FeCl、TiCl4等の遷移金属化合物、又はCl−、PF6−、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸アニオンを含む電解アニオン等であり、好適なのはp−トルエンスルホン酸等のスルホン酸アニオン等を含む電解質アニオン等を含むピロールモノマーを十分に溶解させる界面活性剤であり、脱ドープの起こりにくい分子径の比較的大きな電解質を用いることが好ましい。
【0017】
本発明に用いる溶媒として適当なものとしては水、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ―ブチルラクトン、γ―バレロラクトン、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルホイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、トリメチルホスフェンド、ジメチロルカーボネート、エチルメチルカーボネート、3−メチルスルホラン等が挙げられる。実施例では電解質にp−トルエンスルホン酸を、溶媒には水を用いる。
(C)電気化学ドーピング工程
本発明における電気化学ドーピングの工程図を図1に示す。本発明における電気化学ドーピング工程は、化学重合工程により形成された固体電解質層、電解重合工程により形成された固体電解質層の一方、もしくは両方に行うことにより、前記固体電解質層の導電性を向上させることができる。
【0018】
固体電解質層が形成された陽極体素子1を、電解質が溶解された溶液4に含浸し、前記陽極体素子1に対して外部電極2を宛がい、該外部電極2に電流を流すことにより電解質がポリピロールにドープされ、導電性を生み出す。前記外部電極2としては導電性をもつ材料であれば特に限定はないが、ステンレスのような金属材料よりも表面が導電性高分子で被覆されているものを用いることが好ましい。これは、導電性高分子よりもはるかに導電率の高い金属を用いると外部電極2表面でのドーパントの反応が優先的に起こり、ドーピング工程初期において導電性の低いポリピロールに対してドーピングが十分に行われず前記固体電解質層の導電性の向上が少ないからである。
【0019】
本発明に用いる電解質として適当なものとしてはI2、Cl2等のハロゲンや、BF3、SO3等のルイス酸や、H2SO4、HCl等のプロトン酸や、FeCl、TiCl4等の遷移金属化合物、又はCl−、PF6−、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸アニオンを含む電解アニオン等であり、溶媒として適当なものとしては水、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ―ブチルラクトン、γ―バレロラクトン、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルホイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、トリメチルホスフェンド、ジメチロルカーボネート、エチルメチルカーボネート、3−メチルスルホラン等が挙げられる。実施例では電解質にp−トルエンスルホン酸を、溶媒には水を用いる。上記装置を用いた電解の方法は、定電流電解、定電圧電解、もしくは定電流電解により所定の電圧に到達した後に、定電圧電解に移行して電解を行う方法がある。これらの方法は、いずれの方法を用いてよい。実施例では定電流電解を行い、陽極体素子1つあたり0.4mAを1時間流すことにより電気化学ドーピングを行う。
【0020】
特開平3−65008号公報に、電解重合により導電性高分子からなる固体電解質層を形成後に、該固体電解質層を脱ドープし、その後電気化学ドーピング工程を行う方法が提案されているが、本発明では脱ドープを行わずに電気化学ドーピング工程を行う。また、電解質に電解重合工程に用いたドーパントと同様のものを用いることで、異種のドーパント同士による反応を抑制できる。
【0021】
(D)外装工程
前記固体電解質層10上にカーボン層11、銀層12を順次形成し、その後、陽極リードフレーム14及び陰極リードフレーム15を取り付け、外装樹脂層13にて封止した。図3には化学重合と電解重合を行った場合の固体電解コンデンサ完成品の縦断面図を例として図示する。
【0022】
(実施例1)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(D)の外装工程を順に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0023】
(実施例2)
上記方法により、(B)の電解重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(D)の外装工程を順に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0024】
(実施例3)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(B)の電解重合工程、(D)の外装工程を順に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0025】
(実施例4)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(B)の電解重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(D)の外装工程を順に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0026】
(実施例5)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(B)の電解重合工程を順に行った後、再び(C)の電気化学ドーピング工程を行い、その後(D)の外装工程を行い固体電解コンデンサを作製した。
【0027】
(実施例6)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(B)の電解重合工程を順に行った後、再び(C)の電気化学ドーピング工程を行い、その後(D)の外装工程を行い固体電解コンデンサを作製した。ただし、電気ドーピングに用いる外部電極は、導電性高分子皮膜のなされていないものを用いた。
【0028】
(比較例1)
上記方法により、(A)の化学重合工程を行い、その後(D)の外装工程を行い固体電解コンデンサを作製した。
【0029】
(比較例2)
上記方法により、(B)の電解重合工程を行い、その後(D)の外装工程を行い固体電解コンデンサを作製した。
【0030】
(比較例3)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(B)の電解重合工程、(D)の外装工程を順に行い固定電解コンデンサを作製した。
【0031】
上記実施例1〜6及び比較例1〜3について、等価直列抵抗(ESR)をそれぞれ測定した。表1においてESRは100Hzで測定されたものである。
【0032】
【表1】
【0033】
表1からわかるように、本発明の実施例における固体電解コンデンサは、比較例に対して低いESR値をえることができた。これは、固体電解質層形成後に電気化学ドーピンを施すことにより前記固体電解質層の導電性が向上し、固体電解コンデンサ完成品としてのESRが低減したものと考えられる。
【0034】
また、化学重合工程後に電気化学ドーピングを施し、その後電解重合工程を行い、再び電気化学ドーピングを施した実施例5の固体電解コンデンサのESRが最も低い値を示した。
【0035】
さらに、本発明では前記記載の(B)電解重合工程と、(C)電気化学ドーピング工程には、同様の装置を用いることができ、新しい機器を導入することなくESRを低減することができる。
【0036】
【発明の効果】
弁作用金属からなる陽極体の表面に誘電体皮膜層、導電性高分子からなる固体電解質層を順次形成する固体電解コンデンサの製造方法において、
導電性高分子からなる固体電解質層の導電性を向上させ、低ESR化を図った固体電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における電気化学ドーピング工程図である。
【図2】実施例及び比較例における電解重合工程図である。
【図3】本発明における固定電解コンデンサの縦断面図である。
【符号の説明】
1 陽極体素子
2 外部電極
3 陰極板
4 電解質が溶解された溶液
5 ピロールモノマー及び電解質が溶解された溶液
6 ドーパントイオン
7 ピロールモノマー
8 電源
9 誘電体皮膜層
10固体電解質層
10a 化学重合層
10b 電解重合層
11 カーボン層
12 銀層
13 外装樹脂層
14 陽極リードフレーム
15 陰極リードフレーム
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性高分子を固体電解質として用いる固体電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パソコン、携帯情報端末(PDA)等の情報通信関連機器は、小型軽量化、高機能化のニーズが高く、回路の高速デジタル化、実装密度の高度化が急速に進んでいる。これに対応して、回路部品は高周波領域での特性の向上、低インピーダンス化、低ESR化等の開発が活発に進められている。パソコンではCPUの高速化に伴い起動時などの電圧変動が大きくなっており、これをサポートする為に大容量、低ESRのコンデンサが必要不可欠になっている。このような、高周波用のコンデンサとしては、マイカコンデンサ、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサなどが使用されているが、大容量化には適しておらず、逆に大容量化に適しているコンデンサとして電解コンデンサ、固体電解コンデンサがある。電解コンデンサは低コストだが電解液を使用しているために、電解液の蒸発による経時変化や高周波数でのインピーダンスが高い等の問題がある。一方、固体電解コンデンサは、電解質に固体の二酸化マンガンや導電性高分子等を用いており、また、陽極体に用いる焼結体の体積当たりのCV値が高いことから小型で大容量、高信頼性のコンデンサを得ることが可能である。
【0003】
このような固体電解コンデンサとして次に示すような構造を有するものが知られている。
【0004】
弁作用金属(タンタル、ニオブ、チタン、アルミニウム等)の焼結体からなる陽極体表面に、該陽極体表面を酸化させた誘電体皮膜層、二酸化マンガン等の導電性無機材料、或いはTCNQ錯塩、導電性高分子等の導電性有機材料からなる固体電解質層、導電性カーボンを含有するカーボン層、銀ペースト等からなる銀層を順次形成してコンデンサ素子を構成し、陽極リード端子及び、前記陰極引出層に陰極リード端子を接続し、前記コンデンサ素子の外側にエポキシ樹脂等の外装樹脂にて被覆密封したものである。
【0005】
上記のような固体電解コンデンサにおいて、固体電解質層として導電性高分子を用いる場合、前記誘電体皮膜層を形成した陽極体上に、化学重合、又は化学重合と電解重合の組み合わせにより導電性高分子を形成していた。特にタンタルのように、弁作用金属を主に焼結体として用いている場合は、化学重合と電解重合を組み合わして用いることが多い(例えば特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−173313号公報(第2頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら化学重合により形成される導電性高分子はその反応制御が非常に困難であり、ドーピングによってなされる導電性の最適値が得られにくいという問題があった。また電解重合の場合は、重合とドーピングが同時に起こるため、膜質とドーピング双方の制御が非常に困難であり、ドーピングによってなされる導電性の最適値が得られにくいという問題があった。このような問題により前記固体電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)の低減には上記の重合時の反応だけでは限界があった。
【0008】
本発明は、導電性高分子からなる固体電解質層の導電性を向上させ、低ESR化を図った固体電解コンデンサを提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
弁作用金属からなる陽極体の表面に誘電体皮膜層、導電性高分子からなる固体電解質層を順次形成する固体電解コンデンサの製造方法において、
前記固体電解質層が酸化重合により形成され、該固体電解質層形成後に電気化学ドーピングを施すことを特徴とする。前記酸化重合としては化学重合、又は電解重合であることが好ましい。
【0010】
また、前記電気化学ドーピングは、ドーパントが溶解された溶液に前記固体電解質層まで形成された陽極体を浸漬し、該陽極体に外部電極を宛がい電流を流すことにより行われ、前記外部電極は導電性高分子により皮膜されているものを用いることを特徴とする
上記方法を用いることにより、固体電解質層の導電性が向上し、固体電解コンデンサ完成品としてのESRを低減することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態を以下に説明する。
【0012】
本発明に用いる弁作用金属として、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハウニウム、バナジウム、チタン、マグネシウム等、またはそれらの窒化物等の中からコンデンサとて誘電率等に優れた物質としてタンタル、ニオブが上げられる。
【0013】
本発明の実施例としては、タンタルからなる焼結体を陽極体として用い、化成処理を行い、前記陽極体表面に誘電体皮膜層を形成する。その後、以下のプロセスを経て成る。
(A)化学重合工程
水等の溶媒に対して重合開始剤を溶解させた溶液を用い、前記誘電体皮膜層を形成した陽極体素子を前記溶液に含浸し、その後、直ちにピロールモノマーに含浸する。前記重合開始剤としては、過酸化水素、過硫化カリウム、亜硝酸、二酸化鉛、三塩化鉄、キノン、ジアゾニウム塩、オゾン、p−トルエンスルホン酸鉄等が用いられる。
【0014】
実施例では、前記重合開始剤として過酸化水素を用いて、ポリピロールからなる固体電解質層を形成した。
(B)電解重合工程
本発明における重合工程の工程図を図2に示す。
【0015】
陽極体素子1をピロールモノマー及び電解質が溶解された溶液5に浸漬し、前記陽極体素子1に外部電極2を宛がい、該外部電極2に対して電流を流すことによりポリピロールからなる固体電解質層を形成すると共に、電解質がポリピロールにドープされ前記固体電解質層の導電性を向上させることができる。
【0016】
本発明に用いる電解質として適当なものとしてはI2、Cl2等のハロゲンや、BF3、SO3等のルイス酸や、H2SO4、HCl等のプロトン酸や、FeCl、TiCl4等の遷移金属化合物、又はCl−、PF6−、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸アニオンを含む電解アニオン等であり、好適なのはp−トルエンスルホン酸等のスルホン酸アニオン等を含む電解質アニオン等を含むピロールモノマーを十分に溶解させる界面活性剤であり、脱ドープの起こりにくい分子径の比較的大きな電解質を用いることが好ましい。
【0017】
本発明に用いる溶媒として適当なものとしては水、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ―ブチルラクトン、γ―バレロラクトン、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルホイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、トリメチルホスフェンド、ジメチロルカーボネート、エチルメチルカーボネート、3−メチルスルホラン等が挙げられる。実施例では電解質にp−トルエンスルホン酸を、溶媒には水を用いる。
(C)電気化学ドーピング工程
本発明における電気化学ドーピングの工程図を図1に示す。本発明における電気化学ドーピング工程は、化学重合工程により形成された固体電解質層、電解重合工程により形成された固体電解質層の一方、もしくは両方に行うことにより、前記固体電解質層の導電性を向上させることができる。
【0018】
固体電解質層が形成された陽極体素子1を、電解質が溶解された溶液4に含浸し、前記陽極体素子1に対して外部電極2を宛がい、該外部電極2に電流を流すことにより電解質がポリピロールにドープされ、導電性を生み出す。前記外部電極2としては導電性をもつ材料であれば特に限定はないが、ステンレスのような金属材料よりも表面が導電性高分子で被覆されているものを用いることが好ましい。これは、導電性高分子よりもはるかに導電率の高い金属を用いると外部電極2表面でのドーパントの反応が優先的に起こり、ドーピング工程初期において導電性の低いポリピロールに対してドーピングが十分に行われず前記固体電解質層の導電性の向上が少ないからである。
【0019】
本発明に用いる電解質として適当なものとしてはI2、Cl2等のハロゲンや、BF3、SO3等のルイス酸や、H2SO4、HCl等のプロトン酸や、FeCl、TiCl4等の遷移金属化合物、又はCl−、PF6−、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸アニオンを含む電解アニオン等であり、溶媒として適当なものとしては水、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ―ブチルラクトン、γ―バレロラクトン、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルホイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、トリメチルホスフェンド、ジメチロルカーボネート、エチルメチルカーボネート、3−メチルスルホラン等が挙げられる。実施例では電解質にp−トルエンスルホン酸を、溶媒には水を用いる。上記装置を用いた電解の方法は、定電流電解、定電圧電解、もしくは定電流電解により所定の電圧に到達した後に、定電圧電解に移行して電解を行う方法がある。これらの方法は、いずれの方法を用いてよい。実施例では定電流電解を行い、陽極体素子1つあたり0.4mAを1時間流すことにより電気化学ドーピングを行う。
【0020】
特開平3−65008号公報に、電解重合により導電性高分子からなる固体電解質層を形成後に、該固体電解質層を脱ドープし、その後電気化学ドーピング工程を行う方法が提案されているが、本発明では脱ドープを行わずに電気化学ドーピング工程を行う。また、電解質に電解重合工程に用いたドーパントと同様のものを用いることで、異種のドーパント同士による反応を抑制できる。
【0021】
(D)外装工程
前記固体電解質層10上にカーボン層11、銀層12を順次形成し、その後、陽極リードフレーム14及び陰極リードフレーム15を取り付け、外装樹脂層13にて封止した。図3には化学重合と電解重合を行った場合の固体電解コンデンサ完成品の縦断面図を例として図示する。
【0022】
(実施例1)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(D)の外装工程を順に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0023】
(実施例2)
上記方法により、(B)の電解重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(D)の外装工程を順に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0024】
(実施例3)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(B)の電解重合工程、(D)の外装工程を順に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0025】
(実施例4)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(B)の電解重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(D)の外装工程を順に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0026】
(実施例5)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(B)の電解重合工程を順に行った後、再び(C)の電気化学ドーピング工程を行い、その後(D)の外装工程を行い固体電解コンデンサを作製した。
【0027】
(実施例6)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(C)の電気化学ドーピング工程、(B)の電解重合工程を順に行った後、再び(C)の電気化学ドーピング工程を行い、その後(D)の外装工程を行い固体電解コンデンサを作製した。ただし、電気ドーピングに用いる外部電極は、導電性高分子皮膜のなされていないものを用いた。
【0028】
(比較例1)
上記方法により、(A)の化学重合工程を行い、その後(D)の外装工程を行い固体電解コンデンサを作製した。
【0029】
(比較例2)
上記方法により、(B)の電解重合工程を行い、その後(D)の外装工程を行い固体電解コンデンサを作製した。
【0030】
(比較例3)
上記方法により、(A)の化学重合工程、(B)の電解重合工程、(D)の外装工程を順に行い固定電解コンデンサを作製した。
【0031】
上記実施例1〜6及び比較例1〜3について、等価直列抵抗(ESR)をそれぞれ測定した。表1においてESRは100Hzで測定されたものである。
【0032】
【表1】
【0033】
表1からわかるように、本発明の実施例における固体電解コンデンサは、比較例に対して低いESR値をえることができた。これは、固体電解質層形成後に電気化学ドーピンを施すことにより前記固体電解質層の導電性が向上し、固体電解コンデンサ完成品としてのESRが低減したものと考えられる。
【0034】
また、化学重合工程後に電気化学ドーピングを施し、その後電解重合工程を行い、再び電気化学ドーピングを施した実施例5の固体電解コンデンサのESRが最も低い値を示した。
【0035】
さらに、本発明では前記記載の(B)電解重合工程と、(C)電気化学ドーピング工程には、同様の装置を用いることができ、新しい機器を導入することなくESRを低減することができる。
【0036】
【発明の効果】
弁作用金属からなる陽極体の表面に誘電体皮膜層、導電性高分子からなる固体電解質層を順次形成する固体電解コンデンサの製造方法において、
導電性高分子からなる固体電解質層の導電性を向上させ、低ESR化を図った固体電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における電気化学ドーピング工程図である。
【図2】実施例及び比較例における電解重合工程図である。
【図3】本発明における固定電解コンデンサの縦断面図である。
【符号の説明】
1 陽極体素子
2 外部電極
3 陰極板
4 電解質が溶解された溶液
5 ピロールモノマー及び電解質が溶解された溶液
6 ドーパントイオン
7 ピロールモノマー
8 電源
9 誘電体皮膜層
10固体電解質層
10a 化学重合層
10b 電解重合層
11 カーボン層
12 銀層
13 外装樹脂層
14 陽極リードフレーム
15 陰極リードフレーム
Claims (7)
- 弁作用金属からなる陽極体の表面に誘電体皮膜層、導電性高分子からなる固体電解質層を順次形成する固体電解コンデンサの製造方法において、
前記固体電解質層が酸化重合により形成され、該固体電解質層形成後に電気化学ドーピングを施すことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 前記酸化重合が化学重合、又は電解重合であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記固体電解質層は化学重合により形成された第1の固体電解質層と、電解重合により形成された第2の固体電解質層とを順次形成したものからなり、前記第1の固体電解質層形成後に、該第1の固体電解質層に電気化学ドーピングを施すことを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記固体電解質層は化学重合により形成された第1の固体電解質層と、電解重合により形成された第2の固体電解質層とを順次形成したものからなり、前記第2の固体電解質層形成後に、該第2の固体電解質層に電気化学ドーピングを施すことを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記固体電解質層は化学重合により形成された第1の固体電解質層と、電解重合により形成された第2の固体電解質層とを順次形成したものからなり、前記第1の固体電解質層形成後に、該第1の固体電解質層に電気化学ドーピングを施し、前記第2の固体電解質層形成後に、該第2の固体電解質層に電気化学ドーピングを施すことを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記電気化学ドーピングは、ドーパントが溶解された溶液に前記固体電解質層まで形成された陽極体を浸漬し、該陽極体に外部電極を宛がい電流を流すことにより行われ、前記外部電極は導電性高分子により皮膜されているものを用いることを特徴とする請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記電解重合及び電気化学ドーピングに用いられるドーパントが同じものであることを特徴とする請求項6に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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- 2003-03-31 JP JP2003096952A patent/JP2004304042A/ja active Pending
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